説明

作業機械

【課題】高所にある果実を、当該果実が不意に落下するのを防ぎながら容易に採取できるようにする。
【解決手段】本体機12に起伏可能にブーム24が連結され、このブーム24の先端に回動可能にアーム26が連結され、このアーム26の先端部に果樹採取装置40が取付けられる。果樹採取装置40は、果実を把持するために開閉するグリップ46と、果樹と果実との境界部分を切断するために開閉する鋏48と、これらグリップ46及び鋏48を支持する支持部材42〜44とを含み、この支持部材がアーム26の先端部に取付けられる。ブーム24、アーム26の少なくとも一方は伸縮可能であり、その伸縮により果実採取装置40の移送範囲が広げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーム等の果樹からその果実を切り取るための果樹採取装置を備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果樹からの果実の採取は、作業者が直接手作業で行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記果樹の中には、例えばパームのようにかなり高い位置(背が届かない位置)に果実がなるものがある。このような果実を採取するのに、従来は、例えば長い棒の先端に鎌を固定し、この鎌で葉や果実を伐採するといった方法がとられているが、このような長尺で特殊な道具を使っての作業には相当の熟練が必要であり、作業効率も悪い。さらに、切断完了と同時に果実がいきなり落下するので、安全性の確保が難しく、また、落差が大きいと着地の衝撃で果実が飛散したり傷んだりするおそれもある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、不意に果実が落下するのを防ぎながらその採取を容易に行うことができる果樹採取装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、走行可能な本体機と、この本体機に起伏可能に連結されたブームと、このブームの先端に回動可能に連結されたアームと、果樹からその果実を切り取るための果樹採取装置とを備え、この果樹採取装置は、前記果実を把持するための開閉可能なグリップと、このグリップを開閉駆動する把持駆動手段と、前記果樹と果実との境界部分を切断するための開閉可能な鋏と、この鋏を開閉駆動する切断駆動手段と、前記グリップが把持する果実と果樹との境界またはその近傍の部分を前記鋏が切断可能となる位置にこれらグリップ及び鋏を支持する支持部材とを含み、この支持部材が前記アームの先端部に取付けられるとともに、前記ブーム、アームの少なくとも一方が伸縮可能であり、かつ、その伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えている作業機械である。
【0006】
この作業機械によれば、前記ブーム及びアームの動きによって果実採取装置を果実の把持及び切断が可能な位置まで簡単に移送することができ、この位置で、前記果実採取装置の把持駆動手段によりグリップを閉じて当該グリップにより果実を把持しながら(すなわち果実の位置を固定した状態で)、この果実と果樹との境界またはその近傍部分を切断駆動手段による鋏の駆動で切断することにより、当該果樹から果実を簡単に切り取ることができる。また、切断時にグリップで果実を把持することから、当該果実が切断完了時に高所から不意に落下するおそれがなく、例えばこれをグリップで把持したまま地上まで静かに下ろすといったことも可能である。
【0007】
しかも、前記ブーム、アームの少なくとも一方が伸縮可能であり、かつ、その伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えているので、果実採取装置の移送範囲が広がり、例えば高所の果実も難なく採取することが可能になる。
【0008】
例えば、前記ブームを伸縮可能とし、かつ、当該ブームが直立可能となるように前記本体機に支持されている構成とすれば、複雑な操作や制御を用いることなく容易に果樹採取装置を略鉛直方向に昇降させることができ、狭所での高さ調整も容易に行うことが可能になる。
【0009】
すなわち、前記ブームが例えば自走式クレーンのように本体機の後部に枢支されて当該枢支点から前方に延びるような構造では、高さ調整を行うのに必ずブームの起伏操作をしなければならず、当該起伏操作を行いながら果樹採取装置と果樹との距離をほぼ一定に保つ(すなわち果樹採取装置を略鉛直方向に上昇させる)ためには複雑な操作や制御が必要になるが、前記のようにブームが本体機から直立する状態にしておけば、当該状態のままブームを伸縮させるだけで難なく果樹採取装置の高さ調整ができることになる。
【0010】
また、前記ブーム、アームの双方を伸縮可能とし、かつ、それぞれの伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えることにより、果実採取装置の移送範囲はさらに広がる。
【0011】
また、前記アームの先端に前記果樹採取装置の支持部材が回動可能に取付けられ、かつ、その回動を行わせる回動駆動手段を備えているものにおいては、例えば果実が傾いた状態で果樹についている場合でも、ブームやアームに大きな動作をさせることなく、支持部材の回動によってグリップや鋏の向きを自在に調節することができ、果実の採取がより簡単になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、アームの先端部に取付けられる果樹採取装置を利用して、不意に果実が落下するのを防ぎながらその採取を容易に行うことができる。しかも、前記ブーム、アームの少なくとも一方が伸縮可能であり、かつ、その伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えているので、果実採取装置の移送範囲が広がり、例えば高所の果実も難なく採取することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3に示す作業機械は、左右のクローラ10を有する下部走行体12と、この下部走行体12上で垂直軸回りに旋回する上部旋回体14とを備え、これら下部走行体12及び上部旋回体14によって本体機が構成されている。
【0015】
上部旋回体14の略中央部にはキャノピ16が設けられている。上部旋回体14の前端には、前記キャノピ16よりも低い位置にブーム支持ブラケット18が固定され、これにスイングブラケット20が垂直軸回りに回動可能に取付けられている。このスイングブラケット20は図略のスイングシリンダによって前記垂直軸回りに左右方向に回動駆動されるようになっている。
【0016】
前記スイングブラケット20には、水平ピン22を介してブーム24の下端が取付けられている。このブーム24と前記スイングブラケット20には油圧シリンダからなるブームシリンダ26の両端が連結され、このブームシリンダ26の伸縮によりブーム24が前記水平ピン22回りに回動駆動される(すなわち起伏駆動される)とともに、同ブーム24が図1に示すような直立姿勢をとることが可能となっている。
【0017】
前記ブーム24は、いわゆるテレスコープ型の伸縮可能な構成とされている。具体的には、前記スイングブラケット20及びブームシリンダ26に連結された中空の下側部材24aと、この下側部材24a内に嵌挿される上側部材24bとを有し、下側部材24a内には前記上側部材24bを軸方向に駆動する(すなわちブーム24全体を伸縮させる)ための油圧シリンダからなるブーム伸縮シリンダ(伸縮駆動手段)28が収納されている。
【0018】
前記上側部材24bの先端には、水平ピン30を介してアーム32が取付けられている。このアーム32と前記ブーム24の上端には油圧シリンダからなるアームシリンダ34の両端が連結され、このアームシリンダ34の伸縮によりアーム32がブーム24に対して前記水平ピン30回りに相対的に回動駆動されるようになっている。
【0019】
このアーム32も、前記ブーム24と同様、いわゆるテレスコープ型の伸縮可能な構成とされている。具体的には、前記ブーム24の上側部材24b及びアームシリンダ34に連結された中空の後側部材32aと、この後側部材32a内に嵌挿される前側部材32bとを有し、後側部材32a内には前記前側部材32bを軸方向に駆動する(すなわちアーム32全体を伸縮させる)ための油圧シリンダからなるアーム伸縮シリンダ(伸縮駆動手段)36が収納されている。
【0020】
なお、本発明は必ずしもブーム24、アーム32の双方が伸縮可能であるものに限られない。いずれか一方のみが伸縮可能であってもよい。
【0021】
この実施の形態では、本発明にかかる果樹採取装置が図4〜図9に示すような果樹採取アタッチメント(以下単に「アタッチメント」と称する。)40として構成され、同アタッチメント40が前記アーム32における前側部材32bの先端に取付けられている。
【0022】
この果樹採取アタッチメント40は、本体部42と、グリップ支持部43と、鋏支持部44とからなる支持部材を備え、前記グリップ支持部43に、果実(図例ではパームの実)を把持するグリップ46が支持され、鋏支持部44に、前記果実と果樹との境界部分を切断するための鋏48が支持されている。グリップ46及び鋏48は後述のように開閉式のものであり、これらグリップ46及び鋏48が略同一の向き(前向き)に開口するように、その支持が行われている。
【0023】
本体部42は中空で前方に開口する形状を有し、この本体部42の後端が、ピン38を中心として回動可能となるように前記アーム32の前側部材32bに連結されている。さらに、この本体部42の側壁には油圧シリンダ(回動駆動手段)50の一端がピン51を介して連結され、同油圧シリンダ50の他端がピン52を介して前記前側部材32bの先端に連結されており、当該油圧シリンダ50の伸縮によって本体部42ひいては果樹採取アタッチメント40全体がピン38回りに回動駆動されるようになっている。
【0024】
なお、このアタッチメント40の回動方向は特に問わず、例えばアーム32に対してアタッチメント40が捻り動作するように両者を連結してもよい。また、仕様によっては必ずしも回動可能に構成しなくてもよい。
【0025】
グリップ支持部43は、長尺の後側部材43Aと前側部材43Bとがその長手方向(前後方向)に連結されたもので、その後側部材43Aが前記本体部42に対して前後方向に変位可能となるように同本体部42内に嵌挿される一方、前側部材43Bの前端に前記グリップ46が支持されている。
【0026】
同様に、鋏支持部44も、長尺の後側部材44Aと前側部材44Bとがその長手方向(前後方向)に連結されたもので、前記グリップ支持部43と略平行な姿勢で当該グリップ支持部43と近接する位置に設けられている。そして、前記後側部材44Aが前記本体部42に対して前後方向に変位可能となるように同本体部42内に嵌挿される一方、前側部材44Bの前端に前記鋏48が支持されている。
【0027】
一方、本体部42内には、油圧シリンダからなるグリップ移送シリンダ(グリップ移送手段)53及び鋏移送シリンダ(鋏移送手段)54が収納され、各移送シリンダ53,54の後端部(図例ではへッド端部)がピン53a,54aをそれぞれ介して本体部42に連結される一方、各移送シリンダ53,54の前端部(図例ではロッド端部)がピン53b,54bをそれぞれ介して前記後側部材43A,44Aに連結されている。従って、各グリップ移送シリンダ53,54の伸縮により、グリップ支持部43及び鋏支持部44がそれぞれ個別に前後方向に駆動されるようになっている。
【0028】
なお、本発明は必ずしも本体部42に対してグリップ支持部43及び鋏支持部44が相対変位可能であるものに限られず、これらが一体に構成されたものでもよい。また、グリップ支持部43及び鋏支持部44のいずれか一方のみを本体部42に対して相対変位可能にしても、グリップ46と鋏48との相対位置を調節することが可能である。
【0029】
前記グリップ46の構造を図5及び図6に示す。
【0030】
このグリップ46は、左右一対の把持部材60を備える。各把持部材60は、平面視三日月状をなし、その内側面が凹となる向きで左右対称に配置されている。また、当該内側面の先端側位置には、果実Fの胴体(図5及び図6に二点鎖線で図示)に食い込む把持用突起61が内向きに突設されている。
【0031】
各把持部材60の後端は、ピン62を中心として左右方向(開閉方向)に回動可能となるようにグリップ支持部43の前側部材43Bの前端に連結されている。一方、当該前側部材43Bの内部には、油圧シリンダからなる把持駆動シリンダ(把持駆動手段)64が収納され、その後端部(図例ではへッド側端部)がピン66を介して前記前側部材43Bに連結される一方、前端部(図例ではロッド端部)にピン67を介して進退ブロック68が連結されている。
【0032】
この進退ブロック68には、左右に延びる進退リンク70が固定され、この進退リンク70の左右両端部がそれぞれ連結リンク72を介して前記各把持部材60に連結されている。詳しくは、各連結リンク72の後端がピン71を介して前記進退リンク70の左右端部に各々回動可能に連結され、各連結リンク72の前端が前記各把持部材60の背面から突設された連結部73にピン74を介して回動可能に連結されている。そして、前記把持駆動シリンダ64の伸縮による進退ブロック68及び進退リンク70の前後駆動に伴い、各把持部材60が左右対称の姿勢を維持して互いに逆向きに左右方向に回動駆動される(すなわち開閉駆動される)ようになっている。
【0033】
なお、この実施の形態では、前記グリップ支持部43の後側部材43Aと前側部材43Bとが連結ピン56を介して当該ピン56回りに相対回動可能に連結されており、この相対回動によって後側部材43Aに対する前側部材43B及びグリップ60の傾斜角度が可変となっている。
【0034】
詳しくは、前記後側部材43Aの前端及び前側部材43Bの後端にそれぞれ縦方向に延びる連結板43a,43bが設けられ、これら連結板43a,43bの所定箇所に前記連結ピン56が挿通され、固定されるとともに、当該連結ピン56から外れた位置で各連結板43a,43bにピン挿通孔57,58が設けられている。そして、両連結板43a,43bのピン挿通孔57が合致した状態でこれら挿通孔57に図略のピンを挿通することにより、前側部材43Bが後側部材43Aと一直線状をなす角度位置(図5の実線位置)に固定される一方、両連結板43a,43bのピン挿通孔58が合致した状態でこれら挿通孔58に図略のピンを挿通することにより、前側部材43Bが後側部材43Aに対して若干屈曲する角度位置(鋏支持部44から離れる方向に傾斜する角度位置;図5の二点鎖線位置)に固定されるようになっている。従って、その角度位置の切換により、鋏48とグリップ46との離間距離を変えられるようになっている。
【0035】
前記鋏48の構造を図5及び図7〜図9に示す。
【0036】
この鋏48は、左右方向に開閉可能な一対の開閉部材76を備える。各開閉部材76の内側部には、ボルト77によって切断工具78が固定され、各切断工具78の内側辺には鋸歯状の鋭利な切断刃78aが形成されている。各切断刃78aは、図7の二点鎖線に示すように鋏48が閉じた状態で互いに噛み合うように形状設定されている。
【0037】
なお、本発明において鋏48の具体的な形状や構造は問わず、開閉式のカッタ構造を有するものであればよい。また、グリップ46の開閉方向と鋏48の開閉方向とは必ずしも平行でなくてもよく、両方向が所定角度傾斜していてもよい。
【0038】
各開閉部材76の後端は、ピン80を中心として左右方向(開閉方向)に回動可能となるように鋏支持部44の前側部材44Bの前端に連結されている。同じく各ピン80にはその周囲で回動可能となるように回動リンク81の基端部が取付けられ、この回動リンク81が前記開閉部材76に溶接等で固定されている。従って、この回動リンク81及び前記開閉部材76が一体となって前記ピン80を中心に回動するようになっている。
【0039】
一方、前側部材44Bの内部には、油圧シリンダからなる切断駆動シリンダ(切断駆動手段)82が収納され、その後端部(図例ではへッド側端部)がピン83(図5)を介して前記前側部材44Bに連結される一方、前端部(図例ではロッド端部)にピン84を介して進退ブロック86が連結されている。この進退ブロック86には、左右一対の連結リンク88の後端が連結され、これら連結リンク88の前端がそれぞれピン90を介して前記各回動リンク81の回動端部に連結されている。
【0040】
従って、この構造においては、前記切断駆動シリンダ82の伸縮による進退ブロック86及び連結リンク88の前後駆動に伴い、各開閉部材76が左右対称の姿勢を維持して互いに逆向きに左右方向に回動駆動される(すなわち開閉駆動される)ようになっている。
【0041】
さらに、この実施の形態では、各開閉部材76の開閉回動軸であるピン80の配設位置がかなり外側寄りの位置に設定されており、各開閉部材76が内向きに回動(閉じ方向に回動)するのに伴って各切断工具78の先端が後退するようになっている。
【0042】
一方、前記上部旋回体14のキャノピ16には、図10に示すような運転席92が設けられるとともに、その左右にブーム・アーム操作レバー93L,93Rが設けられ、前方に一対の走行レバー(クローラ操作レバー)94L,94Rが設けられている。さらに、走行レバー94Lの外側にはグリップ操作レバー96Lが、走行レバー94Rの外側には鋏操作レバー96Rがそれぞれ設けられている。
【0043】
前記グリップ操作レバー96Lは、前後左右に操作可能であり、これを前側に操作することによりグリップ移送シリンダ53が伸長し(すなわちグリップ46がその開口方向に前進し)、逆に後側に操作することによりグリップ移送シリンダ53が収縮する(すなわちグリップ46が後退する)ようになっている。また、グリップ操作レバー96Lを外側(運転席92から見て左側)に操作することにより把持駆動シリンダ64が収縮し(すなわちグリップ46が開き方向に駆動され)、逆に内側(運転席から見て右側)に操作することにより把持駆動シリンダ64が伸長する(すなわちグリップ46が閉じ方向に駆動される)ようになっている。
【0044】
前記鋏操作レバー96Rも、前後左右に操作可能であり、これを前側に操作することにより鋏移送シリンダ54が伸長し(すなわち鋏48がその開口方向に前進し)、逆に後側に操作することにより鋏移送シリンダ54が収縮する(すなわち鋏48が後退する)ようになっている。また、鋏操作レバー96Rを外側(運転席92から見て右側)に操作することにより切断駆動シリンダ82が収縮し(すなわち鋏48が開き方向に駆動され)、逆に内側(運転席から見て左側)に操作することにより切断駆動シリンダ82が伸長する(すなわち鋏48が閉じ方向に駆動される)ようになっている。
【0045】
以上の各レバーの操作により図略のコントローラに電気信号(指令信号)が入力され、同コントローラはその入力信号に基づいて油圧回路の電磁弁に制御信号を出力し、各油圧シリンダへの作動油の給排を制御する。
【0046】
次に、この作業機械による果樹採取方法の一例を説明する。
【0047】
1)ブーム24を起立させ、ほぼ立直状態にする。そして、本体機を走行させて所望の果樹に接近する。
【0048】
2)ブーム24を伸縮して高さ調整を行う。このとき、ブーム24を図1に示すような立直状態にしておけば、アーム32や果樹採取アタッチメント40と果樹との距離を一定に保ったままその高さを好適に調整することができ、図2に示すような比較的背の高い果樹にも、あるいは図3に示すような比較的背の低い果樹にも難なく対応することができる。また、ブーム24の伸縮にかかわらずアタッチメント40と果樹との距離がほとんど変わらないので、この間隔を維持するための複雑な操作や制御が要らず、特に狭所(例えばパーム林内)での作業にきわめて有効となる。
【0049】
3)グリップ46及び鋏48を開状態にしたまま、アーム32の回動、伸縮、さらには果樹採取アタッチメント40の回動、各支持部43,44の進退によって、前記グリップ46を当該グリップ46が果実Fの胴体を把持できる位置まで移送し、かつ、鋏48を当該鋏48が果実Fと果樹との境界またはその近傍部分を切断できる位置まで移送する。
【0050】
このとき、グリップ移送シリンダ53及び鋏移送シリンダ54の伸縮によってグリップ46及び鋏48がその開口方向と略平行な方向(前後方向;各支持部43,44の長手方向と平行な方向)に駆動されるので、これらグリップ46及び鋏48の位置決めを容易に行うことができる。また、グリップ46と鋏48との相対位置を変えることにより、果実Fの大きさに著しいばらつきがある場合でも前記グリップ46及び鋏48をそれぞれ把持可能位置及び切断可能位置に難なく位置決めすることができる。さらに、図5の実線及び二点鎖線に示すようにグリップ支持部46における後側部材43Aと前側部材43Bとの相対角度を変えることによっても、グリップ46と鋏48との相対位置を調節することができる。
【0051】
4)把持駆動シリンダ64を収縮させてグリップ46を閉じる。すなわち、両把持部材60によって果実Fの胴体を左右両側から挟み込む。
【0052】
5)切断駆動シリンダ82を収縮させて鋏48を閉じる。このとき、各開閉部材76に固定された切断工具78の切断刃78aが果実と果樹との境界またはその近傍部分を切断する。この実施の形態では、前記切断刃78aが鋸歯状であるために切断対象部分を逃がすことなくしっかりと捕捉することができ、確実な切断ができる。また、鋏48が閉じるのに伴って各切断工具78の先端(刃先)が後退するように開閉回動軸であるピン80の位置が設定されているので、切断動作時に前記刃先が誤って果樹の幹などを傷つけてしまう事態を未然に防ぐことができる。
【0053】
しかも、切断動作中にグリップ46が果実Fの胴体を把持しているので、切断が完了した時点で果実Fが不意に落下するおそれはない。
【0054】
6)切断後は、ブーム24やアーム32の操作などによってアタッチメント40を下降し、切り取った果実Fを降ろす(図2及び図3の二点鎖線参照)。この果実Fは、そのままアタッチメント40の操作でバスケットなどに投入するようにしてもよいし、適当に着地させて後から作業機械据え付けのドーザ13(図1等)で一度に回収するようにしてもよい。
【0055】
なお、本発明において鋏48を構成する切断工具78の形状は種々設定が可能である。例えば、図11(a)(b)に示すように、切断工具78の内側縁に設けられる鋸刃状の切断刃78aに加え、各切断工具78の先端部にノミ状の先端刃78bを形成するようにすれば、前記切断刃78aでは切断することが難しい個所の切断部位(例えば果実を取り巻く枝を切除する場合の当該枝の根側の部位)を、鋏48を閉じた状態でその先端刃78bで前記切断部位を突くことにより当該切断を行うことが可能になる(なお、同図(a)において78dは、前述のボルト77が挿通される貫通孔である。)。
【0056】
切断刃78aは前記のような鋸刃状が好ましく、このような形状であれば目標切断部位を逃がさずに確実に噛み込んで切断することが可能となるが、当該切断刃の形状は必ずしも鋸刃状に限られず、例えば図12に示すようなストレート状の切断刃78a′としてもよい。ただし、この形状の切断刃78a′では、例えばヤシの実を取り巻く枝100を切除しようとする場合、当該枝100は図示のような略三角形状をなしていてストレート状の切断刃78a′に沿ってすべり易く、この切断刃78a′からその先端側に逃げてしまって切断が困難となるおそれが高いので、この場合には、図12に示すように切断工具78の先端に内側に向かって突出する鎌状の突出刃78dを形成し、前記枝100等が切断刃78a′に沿って滑る場合でも前記突出刃78dによって逃がさないようにすることがより好ましい。さらに、この突出刃78bを切断部位に対して食い込み易い鋭利な形状とすることにより、当該切断部位を逃がさずに捕獲する機能をさらに高めることが可能になる。
【0057】
また、前記各実施の形態では、各部を駆動するためのアクチュエータとして油圧シリンダを用いているが、部位によっては油圧モータを用いてもよいし、あるいは電気アクチュエータを用いるようにしてもよい。
【0058】
また、図例では、幹頂から上向きに生えるパームの実を切り取るために鋏48の上方にグリップ46を配置したものを示したが、これらグリップ46及び鋏48の上下関係は採取対象となる果実の形態によって適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態にかかる作業機械の正面図である。
【図2】前記作業機械により比較的高い果樹の実を採取する様子を示す正面図である。
【図3】前記作業機械により比較的低い果樹の実を採取する様子を示す正面図である。
【図4】(a)は前記作業機械に取付けられる果樹採取アタッチメントの平面図、(b)は正面図である。
【図5】前記果樹採取アタッチメントの要部を示す正面図である。
【図6】前記果樹採取アタッチメントのグリップとその駆動手段を示す平面図である。
【図7】前記果樹採取アタッチメントの鋏とその駆動手段を示す一部断面底面図である。
【図8】図5のA−A線断面図である。
【図9】図7のB−B線断面図である。
【図10】前記作業機械のキャノピ構成を示す平面図である。
【図11】(a)は前記鋏を構成する切断工具の変形例を示す平面図,(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図12】前記鋏を構成する切断工具の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0060】
12 下部走行体(本体機)
14 上部旋回体(本体機)
24 ブーム
32 アーム
40 果樹採取アタッチメント(果樹採取装置)
42 本体部
43 グリップ支持部
44 鋏支持部
46 グリップ
48 鋏
50 油圧シリンダ(回動駆動手段)
60 把持部材
64 把持駆動シリンダ
78 切断工具
78a,78a′ 切断刃
82 切断駆動シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な本体機と、この本体機に起伏可能に連結されたブームと、このブームの先端に回動可能に連結されたアームと、果樹からその果実を切り取るための果樹採取装置とを備え、
この果樹採取装置は、前記果実を把持するための開閉可能なグリップと、このグリップを開閉駆動する把持駆動手段と、前記果樹と果実との境界部分を切断するための開閉可能な鋏と、この鋏を開閉駆動する切断駆動手段と、前記グリップが把持する果実と果樹との境界またはその近傍の部分を前記鋏が切断可能となる位置にこれらグリップ及び鋏を支持する支持部材とを含み、
この支持部材が前記アームの先端部に取付けられるとともに、
前記ブーム、アームの少なくとも一方が伸縮可能であり、かつ、その伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、前記ブームが伸縮可能であり、かつ、当該ブームが直立可能となるように前記本体機に支持されていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1または2記載の作業機械において、前記ブーム、アームがそれぞれ伸縮可能であり、かつ、それぞれの伸縮を行わせる伸縮駆動手段を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の作業機械において、前記アームの先端に前記果樹採取装置の支持部材が回動可能に取付けられ、かつ、その回動を行わせる回動駆動手段を備えていることを特徴とする作業機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−61162(P2006−61162A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292677(P2005−292677)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【分割の表示】特願2001−248250(P2001−248250)の分割
【原出願日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【出願人】(000105682)コベルコ建機エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】