説明

作業用ベスト

【課題】工具用収納体を装備するベルトを腰部や腹部に負担をかけることなく取付ける。
【解決手段】作業用ベスト10は、肩部11aと肩部11aを肩に乗せるようにして装着した装着者の腰周りを包囲する胴部11bとを有するベスト本体11と、胴部11bに胴周り方向に取付けられた帯状の緩衝材21と、緩衝材21に設けられ緩衝材21に重合するように胴部11bに周回されたベルト31を緩衝材21に固定するベルト通し36とを備える。帯状の緩衝材21がスライドファスナ22を介してベスト本体11の胴部11bに取外し可能に取付けられる。ベルト通し36は、帯状の緩衝材21の上縁又は下縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を緩衝材21の下縁又は上縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装工事業、電気工事業、一般建築業等の作業に携わる作業者が作業中に装着する作業用ベストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内装工事業、電気工事業、一般建築業等の作業においては、作業用工具(例えば、ドライバー、カッター、メジャー、ニッパー、ペンチ、金槌、鑿等)を腰の周囲に装備しておき、それらがすぐ手に取れるようにしておけば、各種の作業が円滑かつ迅速に行える。このため、普通のものよりやや頑丈に作ったベルトに作業用工具を収納可能に構成された工具用収納体を装備させ、そのベルトを作業者の腰部や腹部に締め付けることによりそのベルトとともに工具用収納体を作業者の腰の周囲に装着することが行われている。そして、このようにベルトを介して工具用収納体を装着し、その工具用収納体に作業用工具を収納することにより、作業用工具を作業者の腰の周囲に装備するようにしている。
【0003】
一方、作業者が必要とする作業用工具は、その作業内容によりその種類が異なる。そして、作業用工具の種類が異なるとそれを収納する工具用収納体の種類も異なる。このため、作業現場等において、ベルトを腰部や腹部に締め付けたまま、作業用工具を収納する工具用収納体をそのベルトに装備させたり、装備された工具用収納体を取外したり、またベルトに予め装備された工具用収納体の位置を変更することができるようにして、工具用収納体の変更が比較的容易に行うことができる作業用ベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−188665号公報(明細書[0006]〜[0009])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業用ベルトは、作業者の腰部や腹部に締め付けたベルトに工具用収納体を装備させるので、その工具用収納体に収納された工具の重量は作業者の腰部や腹部に直接加わることになる。そして、複数の工具用収納体をベルトに装備させると、それらの全てに作業用工具が収納された場合における重量は比較的大きなものになり、装備された複数の工具の重量の全てが作業者の腰部や腹部に加わることになる。このため、作業者の腰部や腹部に加わる負担が過大となる不具合があった。
【0005】
また、複数の工具用収納体を装備したベルトを作業者の腰部や腹部に取付けることは、その重量が比較的大きいものになることから、ベルトの滑落を防止するためにそのベルトを比較的強い力で作業者の腰部や腹部に締め付けることが必要となる。そして、そのベルトに装備させた工具用収納体がベルトの内側に回り込まれて吊り下げられているような場合にはベルトの内側に凹凸が生じ、ベルトを強く締め付けるとそのベルトの内側に生じた凹凸が作業者の腰部や腹部に食い込む不具合もある。従って、例えば、腰痛を常日頃から感じている作業者にあっては、工具用収納体を装備したベルトを腰部や腹部に締めつけること自体が負担になるような場合もあった。
【0006】
更に、工具用収納体を装備するベルトは、ズボンを止めるウエストベルトとは別に、そのズボンを含む作業着の上から作業者の腰部や腹部に締め付けられることも多い。このため、ズボンを止めるウエストベルトの上に工具用収納体を装備したベルトが重なるような事態も発生し、このような場合にそのベルトを作業者の腰部や腹部に比較的強い力で締め付けると、そのベルトがズボンを止めるウエストベルトや、作業着に形成された膨らみ等とともに締め付けられるような事態も生じる。すると、ベルトを締め付けた作業者の体にウエストベルトや作業着の膨らみ等が食い込んで、その者に著しい負担を与えるような場合もあった。
【0007】
本発明の目的は、工具用収納体を装備するベルトを腰部や腹部に負担をかけることなく取付け得る作業用ベストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、肩部11aと肩部11aを肩に乗せるようにして装着した装着者の腰周りを包囲する胴部11bとを有するベスト本体11と、胴部11bに胴周り方向に取付けられた帯状の緩衝材21と、緩衝材21に設けられ緩衝材21に重合するように胴部11bに周回されたベルト31を緩衝材21に固定するベルト通し36とを備えた作業用ベストである。
【0009】
この請求項1に記載された作業用ベストでは、ベルト通し36を介して緩衝材21にベルト31を固定するようにすれば、そのベルト31に装備された工具用収納体に工具を収納させても、それらの重量は緩衝材21が取付けられたベスト本体11を装着した装着者の肩で支持することになる。このため、ベスト本体11を装着した装着者の腰部又は腹部にベルト31を強い力で締め付けることを必要としない。従って、複数の工具における重量の全てが装着者の腰部や腹部に直接加わるような事態は回避され、作業者である装着者の腰部や腹部に負担をかけることなく、工具用収納体を装備するベルト31をベスト本体11の装着者である作業者の腰部又は腹部に取付けることが可能になる。
【0010】
また、この請求項1に記載された作業用ベストでは、ベルト31は帯状の緩衝材21に重合するようにその緩衝材21に固定されるので、工具用収納体がベルト31の内側に回り込まれて装備されているような場合では、そのベルト31の内側に凹凸を生じさせる場合があるけれども、その凹凸は緩衝材21に埋没して吸収される。このため、ベルト31をベスト本体11の装着者の腰部又は腹部に締め付けても、ベルト31の内側に生じた凹凸がその者の腰部や腹部に食い込むようなことはない。
【0011】
更に、この請求項1に記載された作業用ベストでは、ベルト31をベスト本体11を装着する装着者の腰部又は腹部に強く締め付けることを必要としないので、そのベルト31を装着者の腰部又は腹部に余裕を持って締め付けることが可能になる。そして、ベルト31を余裕を持って締め付けると、例えばズボンを止めるウエストベルトの上にこのベルト31が重なるような事態が生じても、そのウエストベルトや作業着の膨らみ等がベルト31を締め付けた装着者の体に食い込むような事態を有効に回避することができる。このため、装着者が腰痛を常日頃から感じている者であったとしても、ベルト31を締め付けることに起因する負担を解消することが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、帯状の緩衝材21がスライドファスナ22を介してベスト本体11の胴部11bに取外し可能に取付けられたことを特徴とする。
この請求項2に記載された作業用ベストでは、例えば、この作業用ベストを洗浄する場合には、緩衝材21を取外してベスト本体11と緩衝材21を別々に洗浄することが可能になり、その洗浄が比較的容易になる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図4に示すように、ベルト通し36が、帯状の緩衝材21の上縁又は下縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を緩衝材21の下縁又は上縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39とを備えたことを特徴とする。
この請求項3に記載された作業用ベストでは、バンド38の他端を帯状の緩衝材21の下縁又は上縁から離脱させて、帯状の緩衝材21にベルト31を重合させた後にバンド38をそのベルト31の上で横断させ、そのバンド38の他端を帯状の緩衝材21の下縁又は上縁に取付手段37,39を介して再び取付けることにより、そのベルト31を帯状の緩衝材21に固定することができる。よって、工具用収納体を複数装備したベルト31をベルト通し36に通すことなく、そのベルト31を工具用収納体が装備された状態で緩衝材21に直接固定することが可能になる。このため、工具用収納体を複数装備したベルト31の固定作業を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の作業用ベストでは、肩部とその肩部を肩に乗せるようにして装着した装着者の腰周りを包囲する胴部とを有するベスト本体と、胴部に胴周り方向に取付けられた帯状の緩衝材と、帯状の緩衝材に設けられ帯状の緩衝材に重合するように胴部に周回されたベルトを帯状の緩衝材に固定するベルト通しとを備えるので、ベルト通しを介して緩衝材にベルトを固定するようにすれば、そのベルトに工具用収納体を装備させても、それらの重量はベスト本体を装着した装着者の肩で支持することになる。このため、工具用収納体を装備したベルトを作業着の上から装着者の腰部や腹部に比較的強い力で締め付けることが不要になり、装着者の腰部や腹部に負担をかけることなく工具用収納体を装備するベルトを取付けることができる。
【0015】
また、本発明の作業用ベストでは、ベルトは帯状の緩衝材に重合するようにその緩衝材に固定するので、そのベルトに装備させた工具用収納体等によりベルトの内側に凹凸が生じたとしても、その凹凸は緩衝材に埋没して吸収される。このため、ベルトを装着者の腰部又は腹部に締め付けても、ベルトの内側に生じた凹凸が装着者の腰部又は腹部に食い込むようなことはない。また、ベルトを装着者の腰部又は腹部に余裕を持って締め付けることが可能になるので、ベルトを余裕を持って締め付けることにより、例えばズボンを止めるウエストベルトの上にそのベルトが重なるような事態が発生しても、そのウエストベルトや作業着の膨らみ等がベルトを装着した装着者の体に食い込むような事態を有効に回避することができる。このため、腰痛を常日頃から感じている装着者であったとしても、ベルトを締め付けることに起因する著しい負担を解消することが可能となる。
【0016】
また、スライドファスナを介して帯状の緩衝材をベスト本体の胴部に取外し可能に取付ければ、例えば、この作業用ベストを洗浄する場合には、緩衝材を取外してベスト本体と緩衝材を別々に洗浄することが可能になり、その洗浄が比較的容易になる。そして、ベルト通しが、帯状の緩衝材の上縁又は下縁に一端が取付けられたバンドと、バンドの他端を帯状の緩衝材の下縁又は上縁に離脱可能に取付ける取付手段とを備えたようなものであれば、バンドの他端を帯状の緩衝材の下縁又は上縁から離脱させて、帯状の緩衝材にベルトを重合させた後に、取付手段を介してそのバンドの他端を帯状の緩衝材の下縁又は上縁に再び取付けることにより、そのベルトを帯状の緩衝材に固定することができる。よって、工具用収納体を複数装備するベルトをベルト通しに通すことなく、そのベルトを工具用収納体が複数装備された状態で緩衝材に直接固定することが可能になる。このため、そのベルトの固定作業を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の作業用ベスト10はベスト本体11を備える。このベスト本体11は、肩部11aと肩部11aを肩に乗せるようにして装着した装着者の腰周りを包囲する胴部11bとを有する。ベスト本体11の肩部11aは前身頃12の上縁と後身頃13の上縁が互いに連結されて形成される。前身頃12及び後身頃13を構成する生地は、化学繊維や、合成繊維等からなる種々の生地が採用され、使用される環境により、例えば透湿性防水生地等を前身頃12及び後身頃13として採用しても良い。この前身頃12及び後身頃13は、肩部11aを肩に乗せるようにして装着した装着者の腰部及び腹部を前後から覆うような所定形状に上記生地を裁断することにより作られ、それらの脇部にて縫い合わされて胴部11bが形成される。また、前身頃12及び後身頃13の周囲には縁取りテープ14が縫合され、この縁取りテープ14により前身頃12及び後身頃13の周囲における縁部が補強される。
【0018】
図3に示すように、前身頃12は、右前身頃12a及び左前身頃12bとを有し、これらは左右対称に形成される。右前身頃12aと左前身頃12bの間の重なり合う部分には複数のホック16が取り付けられており、これにより、右前身頃12aと左前身頃12bとは着脱自在に構成され、前身頃12はこのホック16により前面中央部で開閉自在に構成される。
【0019】
右前身頃12a及び左前身頃12bには腰ポケット部17と胸ポケット18がそれぞれ形成される。これらのポケット部17,18は、前身頃12を構成する生地と同様の生地を右前身頃12a及び左前身頃12bに縫いつけることによって構成され、生地の両側と下縁が縫いつけられたポケット本体17a,18aと、そのポケット本体17a,18aの開放された上縁を覆うカバー17b,18bとを備える。ポケット本体17a,18aの上縁を覆うカバー17b,18bはその上縁が右前身頃12a及び左前身頃12bに縫いつけられる。そして、そのカバー17b,18bと、そのカバー17b,18bにより覆われるポケット本体17a,18aの上部には、ホック16が設けられる。そして、そのホック16を外して、カバー17b,18bを持ち上げることによりポケット本体17a,18aの上縁を開放させることができるように構成される。
【0020】
このベスト本体11の胴部11bには、その胴周り方向に帯状の緩衝材21が取付けられる。図4に示すように、この緩衝材21は、弾性体や発泡体からなる帯状の芯材21aを布地21bで被覆することにより作られる。帯状の芯材21aとして用いられる弾性体としては、合成ゴムや天然ゴムが挙げられ、それに用いられる発泡体としては合成ゴムの発泡体や、ウレタンやポリエチレン等の樹脂からなる発泡体が挙げられる。また、海綿状のゴム又はウレタンやポリエチレン等の合成樹脂からなるいわゆるスポンジを帯状に加工し、これを帯状の芯材21aとして用いても良い。
【0021】
このような帯状の芯材21aを布地21bで被覆することにより作られる緩衝材21の長さは、図1〜図3に示すように、後身頃13の胴周り方向に延びて両端部が前身頃12の両側部に至るように調整される。そして、この帯状の緩衝材21は後身頃13の幅方向、即ち胴周り方向に延びて両端部が前身頃12の両側部に至るようにベスト本体11の胴部11bに取付けられる。これにより、ベスト本体11の装着者である作業者の作業を行う前身頃12の前側に緩衝材21が回り込むことを防止する。また、この緩衝材21の厚さは、その内部における芯材21aの種類によるけれども、2〜20mmの範囲、特に2〜15mmの範囲であることが作業者の前側における作業空間を狭めないので好ましい。更に、この緩衝材21の幅は、この緩衝材21に重合される後述するベルト31の幅にもよるけれども、後述するベルト31を効果的に固定するために、8〜15cmの範囲、特に8〜12cmの範囲であることが好ましい。
【0022】
この帯状の緩衝材21は、スライドファスナ22を介してベスト本体11の胴部11bに取外し可能に取付けられる。スライドファスナ22は、一対のファスナー片23,24と、一対のファスナー片23,24を咬合させつつ一対のファスナー片23,24上を移動可能なスライダ26を有する。一対のファスナー片23,24は、合成繊維等から形成された布状部材であり、それぞれ対向側縁部に対向方向に突出する複数のフックを備える。この一対のファスナー片23,24のフックは、金属または合成樹脂から形成され相互に噛み合って咬合自在に構成される。このスライドファスナ22は、後述するベルト31に比較的多くの工具用収納体33(図4)を装備するような場合には、比較的多くの荷重を支持し得るように比較的大型のものが選定される。
【0023】
一方、スライダ26は、一対のファスナ片23,24を噛み込みながらファスナ片23,24上を移動自在に配置される噛合部26aと、この噛合部26aを移動させるために把持する把持部26bとを備える。図示しないが、噛合部26aは、両側に側方に開口しそれぞれ一対のファスナ片23,24を収納可能な凹部を有し、一対のファスナ片23,24の長さ方向の図2の破線矢印で示すように一端側から他端側にかけて移動することにより凹部内の一対のファスナ片23,24を互いに咬合させ、一対のファスナ片23,24の長さ方向の図2の実線矢印で示すように他端側から一端側にかけて戻るように移動することにより互いの咬合を解除させて凹部内の一対のファスナ片23,24を分離するように構成される。また、把持部26bは薄板状の部材であり把持しやすいように孔が形成される。
【0024】
一方のファスナー片23は、その幅方向外方縁部がベスト本体11の胴部11bに胴周り方向に縫合されてその胴部11bに固定される。他方のファスナー片24の幅方向外方縁部は帯状の緩衝材21の上縁に縫合されてその緩衝材21に固定される。そして、図2に破線矢印で示すように、一対のファスナ片23,24の一端側から他端側にかけてスライダ26を移動させ、それら一対のファスナ片23,24を互いに咬合させることにより、このスライドファスナ22を介して帯状の緩衝材21はベスト本体11の胴部11bに取付けられる。一方、図2に実線矢印で示すように、一対のファスナ片23,24の他端側から一端側にかけてスライダ26を移動させると、一対のファスナ片23,24を分離することができるので、このように一対のファスナ片23,24を分離することにより帯状の緩衝材21をベスト本体11から取外すことができるように構成される。
【0025】
帯状の緩衝材21には、帯状の緩衝材21に重合するようにベスト本体11の胴部11bに周回されたベルト31(図1〜4に一点鎖線で示す。)をその帯状の緩衝材21に固定するベルト通し36が複数(この実施の形態では3箇所)設けられる。ベルト31は、複数の工具を収納可能な工具用収納体を複数装備可能なものであり、図4に作業用工具であるドライバ32を収納した工具用収納体33を例示する。図4に詳しく示すように、この実施の形態におけるベルト通し36は、帯状の緩衝材21の下縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を帯状の緩衝材21の上縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39とを備える。
【0026】
この実施の形態における取付手段は、帯状の緩衝材21の上縁に取付けられたリング部材37と、バンド38の他端であってリング部材37に掛け回されて重合したバンド38を互いに係止する面ファスナ39により構成される。面ファスナ39は、図示しない被係止部材が複数形成されたファスナ生地39aと、被係止部材に係止する図示しないフックが複数形成されたファスナテープ39bからなる。そして、ファスナ生地39aは帯状の緩衝材21に重合させたベルト31上を横断するバンド38に縫着され、ベルト31の上で横断したバンド38の他端をリング部材37に挿通させた部分にファスナテープ39bが縫着される。そして、バンド38の他端をリング部材37に挿通させて掛け回した後、ファスナテープ39bをファスナ生地39aに重合させることにより、面ファスナ39はリング部材37に掛け回されて重合したバンド38を互いに係止するように構成される。
【0027】
このように構成された作業用ベスト10では、ベルト通し36を介して緩衝材21にベルト31を固定すれば、そのベルト31に工具用収納体33を装備させても、それらの重量はベスト本体11を装着した装着者の肩で支持することになる。このため、ベスト本体11を装着した装着者の腰部又は腹部にベルト31を強い力で締め付けることを必要としない。従って、複数の工具用収納体33のそれぞれに作業用工具32を収納しても、それら作業用工具32における重量の全てが装着者の腰部や腹部に直接加わるような事態は回避される。よって、作業者であるベスト本体22の装着者の腰部や腹部に負担をかけることなく、工具用収納体33を装備するベルト31を作業者の腰部又は腹部に取付けることが可能になる。
【0028】
また、図4に示すように、ベルト31に装備させた工具用収納体33がベルト31の内側に回り込まれて装備されているような場合には、工具用収納体33のベルト31の内側に回り込む部分により、そのベルト31の内側に凹凸が生じ得る。しかし、この作業用ベスト10では、ベルト31を帯状の緩衝材21に重合させてその緩衝材21に固定するので、ベルト31の内側に生じた凹凸は緩衝材21に埋没して吸収される。このため、ベルト31を装着者の腰部や腹部に締め付けても、工具用収納体33を装備するベルト31の内側に生じた凹凸が装着者の腰部や腹部に食い込むようなことはない。そして、この作業用ベスト10では、ベルト31を装着者の腰部や腹部に強く締め付けることを必要としないので、そのベルト31を装着者の腰部や腹部に余裕を持って締め付けることにより、例えばズボンを止めるウエストベルトの上に工具用収納体33を装備するベルト31が重なるような事態が発生しても、そのウエストベルトや作業着の膨らみ等がベスト本体22の装着者の体に食い込むような事態を有効に回避することができる。このため、腰痛を常日頃から感じている装着者であったとしても、工具用収納体33を装備するベルト31を締め付けることに起因する負担を解消することが可能となる。
【0029】
また、帯状の緩衝材21は、スライドファスナ22を介してベスト本体11の胴部11bに取外し可能に取付けられているので、例えば、この作業用ベスト10を洗浄する場合には、緩衝材21を取外してベスト本体11と緩衝材21を別々に洗浄することが可能になり、その洗浄を比較的容易に行うことが可能になる。ここで、スライドファスナ22は比較的大きな荷重を支持することが可能であり、比較的大型のスライドファスナ22を用いることにより、ベルト31に複数の工具用収納体33を装備させて、比較的多くの作業用工具等を作業者の腰の周囲に装備させる場合であっても、そのベルト31を有効に支持することが可能になる。そして、帯状の緩衝材21は後身頃13の幅方向に延びて両端部が前身頃12の両側部に至るようにベスト本体11の胴部11bに取付けたので、前身頃12の前側に緩衝材21が回り込むことは防止され、ベスト本体11を装着した装着者である作業者の作業を行う前方の作業空間に緩衝材21が膨出して、その作業空間を狭めるような事態を有効に回避することができる。
【0030】
更に、ベルト通し36は、帯状の緩衝材21の下縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を帯状の緩衝材21の上縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39とを備えたので、バンド38の他端を帯状の緩衝材21の上縁から離脱させて、帯状の緩衝材21にベルト31を重合させた後にバンド38をそのベルト31の上で横断させ、取付手段37,39を介してそのバンド38の他端を帯状の緩衝材21の上縁に再び取付けることにより、そのベルト31を帯状の緩衝材21に固定することができる。よって、工具用収納体33を複数装備させたベルト31をベルト通し36に通すことなく、工具用収納体33を複数装備させた状態でそのベルト31を緩衝材21に直接固定することが可能になり、そのベルト31の固定作業を簡単にすることができる。
【0031】
例えば、この実施の形態のように、取付手段が、帯状の緩衝材21の上縁に取付けられたリング部材37と、バンド38の他端であってリング部材37に掛け回されて重合したバンド38を互いに係止する面ファスナ39により構成されているような場合には、バンド38をリング部材37から取外して帯状の緩衝材21にベルト31を重合させた後に、バンド38を再びリング部材37に掛け回し、そのリング部材37に掛け回したバンド38の他端をバンド38の一端側に重合させて面ファスナ39により係止させることにより工具用収納体33を複数装備させたベルト31を帯状の緩衝材21に比較的容易に固定することができる。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、ベルト通し36を帯状の緩衝材21に3箇所設けた例を説明したが、そのベルト通し36の数は3カ所に限定されるものではなく、緩衝材21にベルト31を固定可能である限り、そのベルト通し36は2箇所であっても良く、4箇所又は5箇所以上であっても良い。
【0033】
また、上述した実施の形態では、帯状の緩衝材21の下縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を緩衝材21の上縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39を備えるベルト通し36を例示したが、ベルト通しは、帯状の緩衝材21の上縁に一端が取付けられたバンド38と、バンド38の他端を緩衝材21の下縁に離脱可能に取付ける取付手段37,39を備えたものであっても良い。
【0034】
更に、上述した実施の形態では、リング部材37と面ファスナ39からなる取付手段を例示して説明したが、バンド38の他端を帯状の緩衝材21の上縁又は下縁に離脱可能に取付け得る限り、この取付手段は、図示しないホックやフック、又はボタン等からなるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明実施形態に係る作業用ベストの左側面図である。
【図2】その作業用ベストの背面図である。
【図3】その作業用ベストの正面図である。
【図4】その作業用ベストのベルト通し部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 作業用ベスト
11 ベスト本体
11a 肩部
11b 胴部
21 緩衝材
22 スライドファスナ
31 ベルト
36 ベルト通し
37 リング部材(取付手段)
38 バンド
39 面ファスナ(取付手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩部(11a)と前記肩部(11a)を肩に乗せるようにして装着した装着者の腰周りを包囲する胴部(11b)とを有するベスト本体(11)と、
前記胴部(11b)に胴周り方向に取付けられた帯状の緩衝材(21)と、
前記緩衝材(21)に設けられ前記緩衝材(21)に重合するように前記胴部(11b)に周回されたベルト(31)を前記緩衝材(21)に固定するベルト通し(36)と
を備えた作業用ベスト。
【請求項2】
帯状の緩衝材(21)がスライドファスナ(22)を介してベスト本体(11)の胴部(11b)に取外し可能に取付けられた請求項1記載の作業用ベスト。
【請求項3】
ベルト通し(36)が、帯状の緩衝材(21)の上縁又は下縁に一端が取付けられたバンド(38)と、前記バンド(38)の他端を前記緩衝材(21)の下縁又は上縁に離脱可能に取付ける取付手段(37,39)とを備えた請求項1又は2記載の作業用ベスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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