説明

作業用足場台付エスカレータ

【課題】作業用足場台付エスカレータにおいて、作業用足場台の設置作業および作業用足場台を使用する作業を一人で行えるようにするとともに、作業用足場台が踏段板に対しずれるのをより有効に防止することである。
【解決手段】エスカレータ11に設ける2個の踏段板12のそれぞれに、開口部34を設ける。2個の踏段板12のそれぞれにおいて、開口部34の下側に、箱形の収納部を固定する。収納部に脚部固定部38を支持ピンにより揺動可能に結合する。脚部固定部38のそれぞれに、段違い足場台26を構成する2本の脚立部材14a、14bの下部を、ボルト52およびナットにより取り外し可能に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏段板を有するエスカレータに作業用足場台を取り外し可能に結合している作業用足場台付エスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エスカレータの踏段部に作業用足場台を設置することが考えられている。作業用足場台は、エスカレータの天井部の照明設備等を保守点検するために、エスカレータの踏段部に設置した状態で作業者が利用する。
【0003】
例えば、図7は、特許文献1に記載されたエスカレータに設置する作業用足場台を示す斜視図である。図7に示す作業用足場台である、段違い脚立10は、エスカレータ11の踏段部を構成する2個の踏段板12上に設置し、作業者が段違い脚立10に乗ることにより、天井部の照明設備等を保守点検できるようにしている。段違い脚立10は、2個の脚立部材14a、14bを備える。2個の脚立部材14a、14bは、互いに長さが異なり、2個の脚立部材14a、14bのそれぞれに人が昇降するための複数の踏み桟16を設けている。2個の脚立部材14a、14bの頂部は、連結棒18により連結している。また、2個の脚立部材14a、14bの脚部を、脚部固定手段20により2個の踏段板12に固定している。
【0004】
脚部固定手段20は、段違い脚立10の脚部を挿入し固定する脚固定部22と、下面に踏段板12上面の凹部と嵌合する凸部(図示せず)を有する固定板24とから構成している。固定板24の下面に設けたT字溝(図示せず)に移動板(図示せず)を配設し、図示しない移動レバーにより移動板を固定板24に対し移動させることにより、固定板24の凸部の側面と踏段板12の凹部の側面とを接触可能としている。これにより、固定板24は、踏段板12に対して固定され、固定板24が踏段板12上で動かなくなる。すなわち、固定板24を踏段板12に固定する場合には、固定板24の凸部と移動板の凸部とを踏段板12の凹部の両側面に当接させ互いに反対方向に押圧することにより、固定板24と移動板とを踏段板12上に固定する。
【0005】
【特許文献1】特開平8−143260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された作業用足場台である段違い脚立10をエスカレータ11上に設置する場合、踏段板12の凹部と固定板24および移動板の凸部との間で発生する摩擦力により、固定板24を踏段板12に固定して、段違い脚立10を踏段板12に固定している。このため、踏段板12にごみ等の異物や油分が付着している場合には、踏段板12の凹部と固定板24および移動板の凸部との間に異物や油分が入り込むことにより、凹部と凸部との間での摩擦力を十分に確保できず、踏段板12に対し固定板24がずれて、段違い脚立10が不安定になるのを有効に防止できない可能性がある。
【0007】
例えば、天井部の照明設備等の保守点検を行う際に、作業者が段違い脚立10の上で、作業中にバランスを崩し、段違い脚立10の固定板24に、踏段板12に対し固定板24をずらせるような大きな力が加わった場合には、段違い脚立10の脚部が踏段板12上でずれるのを有効に防止することが難しくなる。これに対して、凹部と凸部との間での摩擦力を十分に大きくするために、凹部と凸部とでの接触面積を大きくするとともに、摩擦力を大きくするために凸部を凹部に大きな力で押し付けるための押圧機構を、固定板24部分に設けることも考えられる。ただし、この場合には、移動板および固定板24が大きくなり、段違い脚立10を設置するための運搬作業を一人で行えなくなる可能性がある。
【0008】
また、段違い脚立10が踏段板12上でずれる可能性を考慮して、段違い脚立10上で作業する作業者とは別の補助者が段違い脚立10を下から支えるようにすることも考えられるが、この場合には別の補助者が必要になり、保守点検に要するコストが上昇する可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、作業用足場台付エスカレータにおいて、作業用足場台の設置作業および作業用足場台を使用する作業を一人で行えるようにするとともに、作業用足場台が踏段板に対しずれるのをより有効に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作業用足場台付エスカレータは、踏段板を有するエスカレータに作業用足場台を取り外し可能に結合している作業用足場台付エスカレータであって、踏段板に設けられた開口部と、踏段板において、開口部の下側に固定された踏段板下側固定部と、踏段板下側固定部に結合された脚部固定部と、を備え、脚部固定部に脚立部の下部を取り外し可能に結合していることを特徴とする作業用足場台付エスカレータである。
【0011】
また、好ましくは、踏段板下側固定部は、脚部固定部を収納する収納部であり、エスカレータから作業用足場台を取り外した状態で、収納部の上部開口を、踏段板構成カバーにより閉塞可能とする。
【0012】
また、より好ましくは、作業用足場台は、2本の脚立部の頂部を連結部により連結し、2本の脚立部は互いに長さが異なり、2本の脚立部のうち、少なくとも一方の脚立部に、人が昇降するための踏み桟を設ける。
【0013】
また、より好ましくは、踏段板下側固定部を構成する壁板部に支持したピンに脚部固定部を、ピンを中心とする揺動可能に支持する。
【0014】
また、より好ましくは、脚部固定部は複数のスライド要素により構成し、少なくとも1個のスライド要素に別のスライド要素を、1個のスライド要素に対する摺動可能に支持することにより、脚部固定部の全長を伸縮可能とする。
【0015】
また、より好ましくは、脚部固定部を構成する少なくとも1個のスライド要素に長さ調節用の複数の第1調節用孔を形成するとともに、別のスライド要素に第2調節用孔を形成し、第1調節用孔および第2調節用孔に係合部材を挿通し、第1調節用孔および第2調節用孔から係合部材が抜け出るのを阻止する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る作業用足場台付エスカレータによれば、作業用足場台をエスカレータから取り外した状態で、作業用足場台を設置する場合に、踏段板下側固定部に予め結合した脚部固定部に脚立部の下部をボルト等により結合すればよく、作業用足場台の設置作業を行う毎に踏段板に脚部固定部を結合する必要がない。また、脚部固定部は開口部の下側に位置するため、脚部固定部を踏段板に対し取り外し容易となるように結合する必要がない。このため、脚部固定部は、踏段板下側固定部に対し、取り外しを容易とするための摩擦力を使用する結合構造ではなく、十分な結合強度を持つ結合構造で結合できる。このため、作業用足場台上で作業者が作業する際に、作業用足場台を下から補助者が支える必要がなく、しかも、作業用足場台が踏段板に対しずれるのをより有効に防止できる。また、特許文献1に記載された段違い脚立をエスカレータに設置する場合と異なり、作業用足場台と踏段板との結合強度に、踏段板に付着したごみ等の異物や油分による結合部分の摩擦力の低下が影響を与えることがない。この結果、作業用足場台を使用する作業を一人で容易に行えるとともに、作業時の安全をより有効に確保できる。
【0017】
また、本発明に係る作業用足場台付エスカレータによれば、上記の特許文献1に記載された段違い脚立をエスカレータに設置する場合と異なり、作業用足場台を踏段板に結合する際の大きな結合強度を得るために、大きな摩擦力を得るための押圧機構や大きい固定板および移動板を使用する必要がなく、作業用足場台の運搬および設置作業を一人で容易に行える。
【0018】
また、踏段板下側固定部は、脚部固定部を収納する収納部であり、エスカレータから作業用足場台を取り外した状態で、収納部の上部開口を、踏段板構成カバーにより閉塞可能とする構成によれば、エスカレータの乗員が踏段板構成カバーに乗ることができ、エスカレータの通常の使用が、脚部固定部により妨げられることがない。
【0019】
また、作業用足場台は、2本の脚立部の頂部を連結部により連結し、2本の脚立部は互いに長さが異なり、2本の脚立部のうち、少なくとも一方の脚立部に、人が昇降するための踏み桟を設ける構成によれば、エスカレータの踏段板が段違いとなるのにもかかわらず、作業者が作業用足場台上にバランスよく乗ることを容易に行え、より安定して作業を行える。
【0020】
また、踏段板下側固定部を構成する壁板部に支持したピンに脚部固定部を、ピンを中心とする揺動可能に支持する構成によれば、脚部固定部に作業用足場台を結合する場合に、脚部固定部を、ピンを中心として揺動させることにより、脚部固定部の向きを、脚部固定部に脚立部を結合しやすいように容易に変えることができる。このため、作業用足場台をエスカレータにより容易に結合できる。また、作業用足場台をエスカレータから取り外した状態で、脚部固定部を、ピンを中心として揺動させることにより、脚部固定部を開口部よりも下側に退避させることができる一方、作業用足場台をエスカレータに結合する場合には、脚部固定部を揺動させ、開口部の上側に突出させることにより、作業用足場台を脚部固定部に結合しやすくできる。
【0021】
また、脚部固定部は複数のスライド要素により構成し、少なくとも1個のスライド要素に別のスライド要素を、1個のスライド要素に対する摺動可能に支持することにより、脚部固定部の全長を伸縮可能とする構成によれば、エスカレータの通常の使用状態で、収納部に脚部固定部を収納できるようにし、しかも、エスカレータに作業用足場台を結合する場合には、脚部固定部の全長を大きくできるので、作業用足場台の脚立部の長さを短くできる。このため、作業用足場台の運搬作業をより容易に行える。
【0022】
また、脚部固定部を構成する少なくとも1個のスライド要素に長さ調節用の複数の第1調節用孔を形成するとともに、別のスライド要素に第2調節用孔を形成し、第1調節用孔および第2調節用孔に係合部材を挿通した状態で、第1調節用孔および第2調節用孔から係合部材が抜け出るのを阻止する構成によれば、係合部材を挿入する第1調節用孔の位置を変えることにより、脚部固定部の全長が調節可能となる。このため、作業用足場台の脚立部の長さを変えることなく、作業者の作業時の高さ位置を天井部の高さ等に応じて容易に変えることができ、作業用足場台上での作業を行いやすくできる。また、作業用足場台の脚立部の頂部同士を作業台により連結する場合でも、作業台の上面を水平にすることを行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図5は、本発明の第1の実施の形態の作業用足場台付エスカレータを示している。図1は、作業用足場台付エスカレータの部分斜視図である。図1に示すように、作業用足場台付エスカレータは、複数の踏段板12を有するエスカレータ11に、作業用足場台である段違い足場台26を取り外し可能に結合して構成している。複数の踏段板12のそれぞれの片側(図1の右側)にクリートライザ28を設けている。
【0024】
段違い足場台26は、2本の脚立部である脚立部材14a、14bの頂部を連結部30により連結している。例えば、連結部30は、2本の脚立部材14a、14bのそれぞれの頂部に設けた孔に挿通した連結ピンとする。2本の脚立部材14a、14bは、互いに長さが異なり、長い方の脚立部材14aの下部を下側の踏段板12に、短い方の脚立部材14bの下部を上側の踏段板12に、それぞれ結合している。2本の脚立部材14a、14bのそれぞれに人が昇降するための1個以上の踏み桟16を設けている。踏み桟16は、2本の脚立部材14a、14bの一方のみに設けることもできる。また、長い方の脚立部材14aを構成する2本の脚部の上部は、連結フレーム32により連結している。
【0025】
また、エスカレータ11において、2本の脚立部材14a、14bのそれぞれの下部を結合する2個の踏段板12に、それぞれ幅方向(図2の斜め上下方向)両側に分かれた2個ずつの開口部34を設けている。そして、開口部34を設けた2個の踏段板12のそれぞれにおいて、開口部34の下側に、図2から図5に示すように、踏段板下側固定部である収納部36を固定している。
【0026】
図2から図5は、踏段板12と収納部36と後述する脚部固定部38とを、段違い足場台26(図1)を取り外した状態で示す断面図である。図2に示すように、収納部36は、上端が開口した箱形としている。収納部36は、断面矩形状の筒状壁部と、筒状壁部の下端を塞ぐ底板部とを備える。また、筒状壁部を構成し、互いに対向する2個の壁板部40(図5参照)に、支持ピン42を水平方向に支持している。そして、支持ピン42に対し支持ピン42を中心とする揺動を可能に、脚部固定部38を支持している。
【0027】
脚部固定部38は、図2に示すように、複数のスライド要素である、基端側スライド要素44と、先端側スライド要素46とを備える。基端側スライド要素44は、基端部(図2の下端)に支持ピン42を挿通する支持孔を有し、先端側部分(図2の上端側部分)に、図5に示すような断面矩形状の外側筒部48を有する。また、先端側スライド要素46は、図5に示すような断面矩形状の内側筒部50を有する。
【0028】
基端側スライド要素44の外側筒部48の内側に、先端側スライド要素46の内側筒部50を嵌合し、外側筒部48に対し内側筒部50を長さ方向(図2の上下方向、図3、図4の左右方向、図5の表裏方向)に摺動可能としている。すなわち、基端側スライド要素44に先端側スライド要素46を、基端側スライド要素44に対する摺動可能に支持している。これにより、脚部固定部38の全長が伸縮可能となる。
【0029】
また、図2に示すように、先端側スライド要素46の内側筒部50を構成し、互いに対向する2個の壁板部に、係合部材であるボルト52を挿通するための長さ調節用の3個ずつの第1調節用孔54を形成している。また、基端側スライド要素44の外側筒部48を構成し、互いに対向する2個の壁板部に、ボルト52を挿通するための1個ずつの第2調節用孔56を形成している。
【0030】
そして、先端側スライド要素46の壁板部に3個ずつ形成した第1調節用孔54のうち、いずれか1個ずつの第1調節用孔54と、基端側スライド要素44の壁板部に1個ずつ形成した第2調節用孔56とにボルト52を挿通した状態で、ボルト52の先端部(図4の上端部)にナット58(図4、図5)を結合することにより、第1調節用孔54および第2調節用孔56からボルト52が抜け出るのを阻止している。これにより、脚部固定部38の全長が調節可能となる。
【0031】
例えば、図2に示すように、脚部固定部38の全長を大きくする場合には、先端側スライド要素46の壁板部に3個ずつ形成した第1調節用孔54のうち、支持ピン42側(図2の下側、図3、図4の右側)の第1調節用孔54と、第2調節用孔56とにボルト52を挿通する。また、図3、図4に示すように、脚部固定部38の全長を小さくする場合には、壁板部に3個ずつ形成した第1調節用孔54のうち、先端側スライド要素46の引き出し方向側(図2の上側、図3、図4の左側)の第1調節用孔54と、第2調節用孔56とにボルト52を挿通する。また、脚部固定部38の全長を中間の長さとする場合には、壁板部に3個ずつ形成した第1調節用孔54のうち、中間の第1調節用孔54と、第2調節用孔56とにボルト52を挿通する。
【0032】
なお、図2は、脚部固定部38に段違い足場台26(図1参照)を結合する際に、脚部固定部38を、支持ピン42を中心に上方に向くように揺動させて、先端側スライド要素46を基端側スライド要素44に対し引き出した状態を示している。図1に示すように、段違い足場台26の下部を脚部固定部38に結合する場合には、脚立部材14a、14bの下部に設けた断面矩形状の筒部60を、先端側スライド要素46の上部外側に嵌合させた状態で、筒部60に形成した通孔と、先端側スライド要素46(図2等参照)の第1調節用孔54とを整合させる。そして、脚立部材14a、14bの筒部60に形成した通孔と、第1調節用孔54とにボルト52を挿通した状態で、ボルト52の先端部にナット(図示せず)を結合することにより、脚部固定部38のそれぞれに、脚立部材14a、14bの脚部下部を取り外し可能に結合している。これにより、作業用足場台付エスカレータを構成している。エスカレータ11の天井の照明設備等を保守点検する際には、この状態で作業者が段違い足場台26に乗って作業を行う。
【0033】
これに対して、エスカレータ11から段違い足場台26を取り外す場合には、脚部固定部38と脚立部材14a、14bとを結合しているボルト52とナット58とを取り外す。そして、図3から図5に示すように、脚部固定部38の全長を小さくし、脚部固定部38に長さ調節用のボルト52およびナット58(図4、図5)を結合した状態で、脚部固定部38を、支持ピン42を中心に収納部36の長さ方向(図2から図4の左右方向)に向くように揺動させ、脚部固定部38を収納部36に収納する。
【0034】
さらに、図3に示すように、収納部36の上部に踏段板構成カバー62を装着可能としている。図3は、図4において、収納部36の上部を踏段板構成カバー62により塞いだ状態を示すA−A断面図であり、図4は、図3において、踏段板構成カバー62を取り外した状態で上方から見た図であり、図5は図4のB−B断面図である。
【0035】
図3に示すように、踏段板12の開口部34周辺部で支持ピン42側(図3の右側)において、踏段板12の下面側に凹部を形成し、踏段板12の開口部34周辺部で先端側スライド要素46の引き出し側(図3の左側)において、踏段板12の上面側に段部を形成している。そして、踏段板構成カバー62の長さ方向(図3の左右方向)両端部の、下面側と上面側とに設けた凸部64,66を、凹部と段部とに係合させた状態で、収納部36の上部の開口部34を、踏段板構成カバー62により塞いでいる。
【0036】
また、踏段板12の開口部34周辺部に位置する段部上面にねじ孔68(図4)を形成し、踏段板構成カバー62(図3)の端部を貫通したビス70を、ねじ孔68にねじ結合している。これにより、踏段板12に踏段板構成カバー62が固定される。この状態で、踏段板12と踏段板構成カバー62との上面は、ほぼ面一、すなわち、単一の仮想平面上にほぼ位置する。また、踏段板構成カバー62は、踏段板12を構成する材料と同様の材料により構成している。
【0037】
このように、本実施の形態では、エスカレータ11から段違い足場台26(図1)を取り外した状態で、収納部36の上部の開口部34を、踏段板構成カバー62(図3)により閉塞可能としている。エスカレータ11の通常の使用時には、乗員が踏段板構成カバー62に支障なく乗ることができる。また、天井の照明設備等の保守点検等を行うために、エスカレータ11に段違い足場台26(図1)を設置する場合には、踏段板構成カバー62固定用のビス70(図3)を取り外し、踏段板構成カバー62を踏段板12から取り外す。
【0038】
なお、段違い足場台26の高さを調節する場合に、まず、脚立部材14a、14bの脚部の下部を脚部固定部38に、ボルト52およびナット(図示せず)で結合してから、基端側スライド要素44から先端側スライド要素46を引き出す等により、脚部固定部38の全長を変えることもできる。なお、先端側スライド要素46に形成する第1調節用孔54は、3個に限定するものではなく、2個または、4個以上の複数個とすることもできる。
【0039】
このような本実施の形態の作業用足場台付エスカレータによれば、段違い足場台26をエスカレータ11から取り外した状態で、段違い足場台26を設置する場合に、収納部36(図2から図5)に予め結合している脚部固定部38に、脚立部材14a、14bの下部をボルト52およびナットにより結合すればよく、段違い足場台26の設置作業を行う毎に踏段板12に脚部固定部38を結合する必要がない。また、脚部固定部38は開口部34の下側に位置するため、脚部固定部38を踏段板12に対し取り外し容易となるように結合する必要がない。このため、脚部固定部38は、収納部36に対し、取り外しを容易とするための摩擦力を使用する結合構造ではなく、十分な結合強度を持つ結合構造で結合できる。このため、段違い足場台26上で作業者が作業する際に、段違い足場台26を下から補助者が支える必要がなく、しかも、段違い足場台26が踏段板12に対しずれるのをより有効に防止できる。
【0040】
また、特許文献1に記載された段違い脚立をエスカレータに設置する場合と異なり、段違い足場台26と踏段板12との結合強度に、踏段板12に付着したごみ等の異物や油分による結合部分の摩擦力の低下が影響を与えることがない。この結果、段違い足場台26を使用する作業を一人で容易に行えるとともに、作業時の安全をより有効に確保できる。
【0041】
また、本実施の形態の作業用足場台付エスカレータによれば、上記の特許文献1に記載された段違い脚立をエスカレータに設置する場合と異なり、段違い足場台26を踏段板12に結合する際の大きな結合強度を得るために、大きな摩擦力を得るための押圧機構や大きい固定板および移動板を使用する必要がなく、段違い足場台26の運搬および設置作業を一人で容易に行える。
【0042】
また、本実施の形態では、踏段板下側固定部を、脚部固定部38を収納する収納部36とし、エスカレータ11から段違い足場台26を取り外した状態で、収納部36の上部の開口部34を、踏段板構成カバー62により閉塞可能としている。このため、エスカレータ11の乗員が踏段板構成カバー62に乗ることができ、エスカレータ11の通常の使用が、脚部固定部38により妨げられることがない。
【0043】
また、段違い足場台26は、2本の脚立部材14a、14bの頂部を連結部30により連結し、2本の脚立部材14a、14bは互いに長さが異なり、2本の脚立部材14a、14bに、人が昇降するための踏み桟16をそれぞれ設けているので、エスカレータ11の踏段板12が段違いとなるのにもかかわらず、作業者が段違い足場台26上にバランスよく乗ることを容易に行え、より安定して作業を行える。
【0044】
また、収納部36を構成する壁板部40(図5)に支持した支持ピン42に脚部固定部38を、支持ピン42を中心とする揺動可能に支持しているので、脚部固定部38に段違い足場台26を結合する場合に、脚部固定部38を、支持ピン42を中心として揺動させることにより、脚部固定部38の向きを、脚部固定部38に脚立部材14a、14bを結合しやすいように容易に変えることができる。このため、段違い足場台26をエスカレータ11により容易に結合できる。また、段違い足場台26をエスカレータ11から取り外した状態で、脚部固定部38を、支持ピン42を中心として揺動させることにより、脚部固定部38を開口部34よりも下側に退避させることができる一方、段違い足場台26をエスカレータ11に結合する場合には、脚部固定部38を揺動させ、開口部34の上側に突出させることにより、段違い足場台26を脚部固定部38に結合しやすくできる。
【0045】
また、脚部固定部38を、基端側スライド要素44と先端側スライド要素46とにより構成し、基端側スライド要素44に先端側スライド要素46を、基端側スライド要素44に対する摺動可能に支持することにより、脚部固定部38の全長を伸縮可能としている。このため、エスカレータ11の通常の使用状態で、収納部36に脚部固定部38を収納できるようにし、しかも、エスカレータ11に段違い足場台26を結合する場合には、脚部固定部38の全長を大きくできるので、段違い足場台26の脚立部材14a、14bの長さを短くできる。このため、段違い足場台26の運搬作業をより容易に行える。
【0046】
また、脚部固定部38を構成する先端側スライド要素46に長さ調節用の3個の第1調節用孔54を形成するとともに、基端側スライド要素44に第2調節用孔56を形成し、第1調節用孔54および第2調節用孔56にボルト52を挿通した状態で、第1調節用孔54および第2調節用孔56からボルト52が抜け出るのを阻止している。このため、ボルト52を挿入する第1調節用孔54の位置を変えることにより、脚部固定部38の全長が調節可能となる。この結果、段違い足場台26の脚立部材14a、14bの長さを変えることなく、作業者の作業時の高さ位置を天井部の高さ等に応じて容易に変えることができ、段違い足場台26上での作業を行いやすくできる。
【0047】
[第2の発明の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態の作業用足場台付エスカレータの部分略斜視図を示している。図6に示すように、本実施の形態の場合、2本の脚立部材14a、14bの頂部同士を、連結部である略平板状の作業台72により連結している。作業台72は、それぞれの脚立部材14a、14bの上部に対し、図示しないピン等の連結部により揺動可能に支持している。
【0048】
また、本実施の形態の場合も、上記の図2から図5に示した第1の実施の形態と同様に、脚部固定部38を構成する先端側スライド要素46の壁板部に長さ調節用の3個ずつの第1調節用孔54を形成するとともに、基端側スライド要素44の壁板部に第2調節用孔56を形成し、第1調節用孔54および第2調節用孔56にボルト52を挿通した状態で、ボルト52の先端部にナット58を結合している。このため、ボルト52を挿入する第1調節用孔54の位置を変えることにより、脚部固定部38の全長が調節可能となるとともに、本実施の形態のように、段違い足場台26の脚立部材14a、14bの頂部同士を略平板状の作業台72により連結する場合でも、作業台72の上面を水平にすることを行いやすくなる。このため、作業性の向上を図れる。
その他の構成および作用は、上記の第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示ならびに説明を省略する。
【0049】
なお、図示は省略するが、本発明において、脚部固定部を結合する踏段板下側固定部は、上記の各実施の形態を構成する収納部36のように箱形に限定するものではなく、例えば、2個ずつの板状部材等でもよい。2個ずつの板状部材に脚部固定部を結合する場合には、例えば、踏段板の開口部周辺部の下側に平行な2個ずつの板状部材を鉛直方向に固定するとともに、板状部材に支持ピンの端部を支持し、支持ピンに対し支持ピンを中心とする揺動可能に脚部固定部の基部を支持する。この場合、板状部材は、壁板部に相当する。また、踏段板の開口部周辺部の下側に、脚部固定部の先端寄り部分を引っ掛けるための係合部を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る作業用足場台付エスカレータを示す部分斜視図である。
【図2】第1の実施の形態において、脚部固定部から作業用足場台を取り外して、脚部固定部の全長を大きくした状態を示す断面図である。
【図3】同じく脚部固定部を収納部に収納した状態を示す、図4のA−A断面図である。
【図4】収納部の上部開口から踏段板構成カバーを取り外した状態で、脚部固定部を収納部に収納した状態を示す、図3の上方から見た図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る作業用足場台付エスカレータを示す部分略斜視図である。
【図7】従来構造の1例において、エスカレータに設置する作業用足場台を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10 段違い脚立、11 エスカレータ、12 踏段板、14a、14b 脚立部材、16 踏み桟、18 連結棒、20 脚部固定手段、22 脚固定部、24 固定板、26 段違い足場台、28 クリートライザ、30 連結部、32 連結フレーム、34 開口部、36 収納部、38 脚部固定部、40 壁板部、42 支持ピン、44 基端側スライド要素、46 先端側スライド要素、48 外側筒部、50 内側筒部、52 ボルト、54 第1調節用孔、56 第2調節用孔、58 ナット、60 筒部、62 踏段板構成カバー、64 凸部、66 凸部、68 ねじ孔、70 ビス、72 作業台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段板を有するエスカレータに作業用足場台を取り外し可能に結合している作業用足場台付エスカレータであって、
踏段板に設けられた開口部と、
踏段板において、開口部の下側に固定された踏段板下側固定部と、
踏段板下側固定部に結合された脚部固定部と、を備え、
脚部固定部に脚立部の下部を取り外し可能に結合していることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の作業用足場台付エスカレータにおいて、
踏段板下側固定部は、脚部固定部を収納する収納部であり、
エスカレータから作業用足場台を取り外した状態で、収納部の上部開口を、踏段板構成カバーにより閉塞可能としていることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業用足場台付エスカレータにおいて、
作業用足場台は、2本の脚立部の頂部を連結部により連結しており、
2本の脚立部は互いに長さが異なり、2本の脚立部のうち、少なくとも一方の脚立部に、人が昇降するための踏み桟を設けていることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の作業用足場台付エスカレータにおいて、
踏段板下側固定部を構成する壁板部に支持したピンに脚部固定部を、ピンを中心とする揺動可能に支持していることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の作業用足場台付エスカレータにおいて、
脚部固定部は複数のスライド要素により構成し、
少なくとも1個のスライド要素に別のスライド要素を、1個のスライド要素に対する摺動可能に支持することにより、脚部固定部の全長を伸縮可能としていることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。
【請求項6】
請求項5に記載の作業用足場台付エスカレータにおいて、
脚部固定部を構成する少なくとも1個のスライド要素に長さ調節用の複数の第1調節用孔を形成するとともに、別のスライド要素に第2調節用孔を形成しており、
第1調節用孔および第2調節用孔に係合部材を挿通した状態で、第1調節用孔および第2調節用孔から係合部材が抜け出るのを阻止していることを特徴とする作業用足場台付エスカレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−174377(P2008−174377A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11629(P2007−11629)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】