説明

作業車のキャビン用空調構造

【課題】枠組みフレームの内側に空調ユニットを配置して、枠組みフレームで空調ユニットを保護できるようにする。
【解決手段】環状のアッパフレーム6の後部の横フレーム6Bを、複数の縦向きフレーム2,2のうちの最も機体後方側の左右の縦向きフレーム2,2よりも機体後方側に平面視でU字状に出っ張らせて、最も機体後方側の左右の縦向きフレーム2,2の後側で横フレーム6Bの前側に形成された空間に空調ユニットAを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席をキャビン内に備えるとともに、前記キャビンのルーフ部に空調用のダクトと、空気に調整を加え前記空調用ダクトにその調整済み空気を送り込む空調ユニットとを配置してある作業車のキャビン用空調構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調ユニットを配置するに、ルーフ部の前半部を下向きに膨出する下り天井部に形成するとともに、その下り天井部の前端部に空調ユニットを配置していた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−1537号公報(段落番号〔0016〕、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、空調ユニットを収納する為に、ルーフ部を下り天井部に形成してあるので、前方上方視界が狭められる虞があった。そうすると、フロントローダ作業を行う際に、運転席に座った状態ではバケットで掬い上げた作業部位の確認が難しい面があるところから、作業性が低下する虞があった。
また、路上走行時に信号機が見え難くなることもあった。
【0005】
本発明の目的は、空調ユニットの配置構成に工夫を凝らすことによって、前方上方視界の良好化を図った作業車のキャビン用空調構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成) 請求項1に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、前記空調ユニットを前記運転席の着座部の後端より機体後方側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
(作用効果) 空調ユニットを前記運転席の着座部の後端より機体後方側に配置することとしたので、キャビンのルーフ部における前部側に、空調ユニットを収納するための下り天井部を形成する必要がなく、前面ウインド位置を高く採ることができる。これによって、前方上方視界を良好なものにすることができた。
しかも、空調ユニット位置が運転席の着座部の後端位置より機体後方側に設定してあるので、ルーフ部の後部に空調ユニットを収納する為に、下り天井部を形成するとしても、運転席に着座した運転者の前方視界を狭めるものとならず、頭上スペースを狭めることを緩和することができる。
【0008】
(構成) 請求項2に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1に係る発明において、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前記ルーフ部の後部に配設されている横フレームより機体前方側に、前記空調ユニットを配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
(作用効果) 請求項1に係る作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、横フレームを空調ユニットの取り付けに利用することができるとともに、枠組みフレームの内側に空調ユニットを配置できて、横フレームで空調ユニットを保護することができる。
【0010】
(構成) 請求項3に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1に係る発明において、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前記ルーフ部の後部に配設されている横フレームにおける空調ユニット取付部分を、前記空調ユニット取付部分に隣接する両隣部分より低く配置し、前記空調ユニット取付部分の上側に前記空調ユニットを取付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
(作用効果) 請求項1に係る作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、空調ユニット取付け部分に空調ユニットを取り付けた状態で、空調ユニットが隣接する両隣部分に落とし込み状態となるので、空調ユニットは両隣部分を保護材として活用できるとともに、空調ユニットの取り付け高さを高くすることがなく、ルーフ部の高さを抑えることができる。
【0012】
(構成) 請求項4に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1に係る発明において、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前記ルーフ部の後部に配設されている横フレームにおける空調ユニット取付部分を、前記空調ユニット取付部分に隣接する両隣部分より高く配置し、前記空調ユニット取付部分の下側に前記空調ユニットを支持してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
(作用効果) 請求項1に係る作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、空調ユニット取付け部分に空調ユニットを取り付けた状態で、空調ユニットが隣接する両隣部分と上方の空調ユニット取付け部分とで守られ、直接、空調ユニット自体が傷むことを少なくできる。しかも、空調ユニット取付け部分を隣接する両隣部分より持ち上げているので、後方視界を狭めることがなく、運転者の頭上スペースを狭めることにはならない。
【0014】
(構成) 請求項5に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1に係る発明において、前記空調ユニットを、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前記ルーフ部の後部に配設されている横フレームより機体後方側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
(作用効果) 請求項1に係る作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、空調ユニットを横フレームより更に機体後方側に位置させているので、運転席に座った操縦者から横フレームまでの後方スペースに空調ユニットを配置する必要がないので、その部分の天井面を高く採ることができ、十分なスペースを確保することができる。
【0016】
(構成) 請求項6に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明において、前記空調ユニットに、送風用のファン、エバポレータ及びヒータを備え、機体の左右一方に送風用のファンを配置し、左右他方にエバポレータとヒータとを機体前後方向に隣接する状態で配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
(作用効果) 請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明における作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、送風用のファン、エバポレータ及びヒータを、上下方向ではなく左右横並びに配置してあるので、空調ユニットとして高さを抑えた構成にできる。しかも、容積量の大きな送風用のファンに対してそのファンに比較して容積量の小さなエバポレータ及びヒータを並設する構成としたので、機体前後方向、及び、機体横方向においてもコンパクトな配置構成とできた。そして、このようにファンからの空気を受けて空調を施すエバポレータ及びヒータを隣接する状態で配置できるので、ファンとエバポレータとが離間した状態に設けている場合に必要となる、ファンからの空気をエバポレータ等に誘導する配管等を必要とせず、空調ユニットをルーフ部に収納するに相応しい構成のものとできた。
【0018】
(構成) 請求項7に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項3に係る発明において、空調ユニットの送風用のファンを、前記横フレームの空調ユニット取付部分の上側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
(作用効果) 請求項1に係る作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、回転部分を備える送風用のファンを横フレームの上側に配置し、その送風用のファンの重量と回転運動による振動等を横フレームの空調ユニット取付け部分に持たせることができ、安定した支持と振動伝播の抑制を効果的に行うことができる。
【0020】
(構成) 請求項8に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明において、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前面ウインドを支持する左右の前支柱の上端を、前記枠組みフレームのうちのルーフ部の横側部に位置する前後向きフレームより高い位置に配置して、前記前面ウインドの上端位置をサイドウインドの上端位置より高くしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
(作用効果) 請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明における作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、枠組みフレームにおける前支柱の高さに変更を加えることによって、前面ウインドの上端高さをサイドウインドの上端高さより高くして、前方上方視界の拡大を図ることができる。
これによって、フロントローダ作業を行う際の作業部位の確認が容易になり、かつ、路上走行時に信号機が見え難いといった面も解消できるに至った。
【0022】
(構成) 請求項9に係る発明の作業車のキャビン用空調構造は、請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明において、前記キャビンを構成する枠組みフレームのうちの前面ウインドを支持する左右の前支柱の上端を、前記前支柱の下端より後方に位置するように構成するとともに、前記前面ウインドの上端位置をサイドウインドの前端位置より後方に位置させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0023】
(作用効果) 請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の発明における作用効果とともに、次のような作用効果を奏する。つまり、前面ウインドの上端とサイドウインドの上端とを同じ高さに設定しながら、前面ウインドの上端位置をサイドウインドの前端位置より後方側に位置させるだけの簡単な改造を施すことによって、前面ウインドの上端位置をサイドウインドの前端位置に一致させた場合より、運転席に着座した操縦者の前方視界の見上げ角度を大きくすることができる。
これによって、フロントローダ作業を行う際の作業部位の確認が容易になり、かつ、路上走行時に信号機が見え難いといった面も解消できるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】第1実施形態における枠組みフレームを示す斜視図
【図3】第1実施形態におけるキャビン内の縦断側面図
【図4】図2におけるインナールーフ部のアウタールーフ側から見た内面を示す横断平面図
【図5】ルーフ部の横側部に配置されたダクトを示す正面図
【図6】第2実施形態における枠組みフレームを示す斜視図
【図7】第2実施形態における空調ユニットの取付構造を示す縦断側面図
【図8】第3実施形態における枠組みフレームを示す斜視図
【図9】第3実施形態における空調ユニットの取付構造を示す縦断側面図
【図10】第4実施形態における枠組みフレームを示す斜視図
【図11】第4実施形態における空調ユニットの取付構造を示す縦断側面図
【図12】空調ダクトの別実施形態を示す横断平面図
【図13】空調ダクトの別実施形態を示す横断平面図
【図14】図13における空調ダクトの配置構成を示す背面図
【図15】アッパーフレームをダクトに兼用した状態を示す縦断側面図
【図16】(イ) 前支柱の上端を前後向きフレームより高くした状態を示す斜視図(ロ) (イ)における操縦者の前方上方視界を示す原理図
【図17】(イ) 前支柱の上端を前後向きフレームの前端より後方に位置させた状態を示す斜視図(ロ) (イ)における操縦者の前方上方視界を示す原理図
【発明を実施するための形態】
【0025】
農用トラクタを作業車の一例として説明する。農用トラクタのキャビン1は、図1及び図2に示すように、骨組みを構成する枠組みフレームBの縦向きフレーム2とその縦向きフレーム2で囲まれた部分を覆う透明ガラス面を備えた乗降用サイドドア3、後サイドウインド4、後面ウインドウ5とを備え、各縦向きフレーム2の上面に亘って設けてある環状のアッパーフレーム6とそのアッパーフレーム6に載置されるルーフ部7とで構成されている。
【0026】
キャビン1内には、運転操縦部8が設けてあり、その運転操縦部8には、エンジンボンネット9側に位置するハンドルポスト10に操縦ハンドル11が設けてあり、ハンドルポスト10の後方に運転席12が配置してある。
ルーフ部7にはキャビン1内を空調する空調ユニットAが配置してある。
【0027】
〔第1実施形態〕
以後、空調ユニットAの取り付け形態の違いに応じて説明していく。まず、第1実施形態として、図2及び図3に示すように、空調ユニットAが、枠組みフレームBを構成すべく縦向きフレーム2の上面に亘って設けてある環状のアッパーフレーム6の後端部の上方側に位置する状態で配置されているものについて説明する。ここに、環状のアッパーフレーム6におけるフード部7における後部に位置する後フレーム部分6Bを横フレームと称する。
【0028】
空調ユニットAを取り付ける枠組みフレームBの構成について説明すると、図2に示すように、環状のアッパフレーム6における前後向きフレーム部分6Aと横フレームとしての後フレーム部分6Bとの接続曲がり部分に左右の縦向きフレーム2、2を立設して後サイドウインド4の窓枠に兼用するとともに、両縦向きフレーム2、2に渡ってかつ後部フレーム部分6Bより一段下がった高さ位置に支持フレーム6Cを架設してある。
【0029】
この支持フレーム6Cの上面とこの支持フレーム6Cを支える両隣の縦向きフレーム2、2との間に落としこむ状態で空調ユニットAを載置してある。ここに、支持フレーム6Cを空調ユニット取付部分と称する。
図3に示すように、支持フレーム6Cの上面に左右一対のブラケット16,16が前後向き姿勢で取り付けられるとともに、前記ユニットケース24で囲まれた空調ユニットAが左右のブラケット16,16上にボルトで載置固定されている。
【0030】
ルーフ部7の構成について説明する。
図3〜図5に示すように、ルーフ部7は、アウトルーフ部13とインナールーフ部14とからなり、夫々、アッパーフレーム6に取付支持されている。インナールーフ部14は、樹脂の一体成形品であり、運転席12の上方に位置する後半部は下向きに膨出した下り天井部に形成してあり、この下り天井部に空調ユニットAを収納してある。
【0031】
図2及び図3に示すように、アウトルーフ部13は、アッパーフレーム6の上面に載置され、その載置面より広い平板状のものである。アウトルーフ部13の下向き面には、リング状に形成した長方形断面のシールリング19を装着してあり、アウトルーフ部13をアッパーフレーム6上に載置した状態で、シールリング19の断面の一部がそのアッパーフレーム6の上面に当接して、外部との空気の流通を遮断する。
【0032】
図3〜図5に示すように、アウトルーフ部13のアッパーフレーム6の両横側方に突出する横向き庇部13Eの下向き面には外気導入口13B、13Bが形成してあるとともに、シールリング19の内側に位置する部分に前記した外気導入口13Bに連通する外気供給口13Cを形成してある。図中33は、外気導入口13Bに設けてある防塵フィルタである。
外気導入口13Bから取り入れた外気は、アウトルーフ部13の二重壁内に形成した外気導入ダクトとしての連通路bを通して機体前方側に誘導され、前記連通路bの機体前方側に形成した外気供給口13Cより後記する空調ユニットAへ通ずる空間aに吹き出すべく構成されている。
【0033】
インナールーフ部14の内部構造について説明する。図1〜図4に示すように、空調ユニットAは、エバポレータ20とその前方に位置するヒータ21とを備え、エバポレータ20は、図示していないコンプレサー、膨張弁、コンデンサー等と協働して冷媒循環回路を構成している。ヒータ21はエンジンボンネット9内のラジエータ22と配管で繋がっている。
エバポレータ20の右側方には前記した外気供給口13Cより取り込んだ外気をエバポレータ20とヒータ21に向けて送り込むシロッコファン23が設けられてある。
【0034】
外気供給口13Cより導入された外気は、図3に示すように、アウトルーフ部13の下向き面とインナールーフ部14との間に形成された空間aを流通路として、ユニットケース24で囲まれたシロッコファン23の誘導孔24aまで吸引誘導される。
【0035】
図3〜図4に示すように、エバポレータ20とシロッコファン23とはユニットケース24によって囲まれており、ユニットケース24に連続する状態でエバポレータ20の両側端から機体前方側に向けて、空調ユニットAからの空調済み空気を左右横側端に誘導する横向き姿勢の後空調ダクト15Aを設けてあるとともに、後空調ダクト15Aの両側端より前方に向けて横空調ダクト15B、15Bが延出してある。
【0036】
左右の横空調ダクト15B、15Bについて説明する。図3〜図5に示すように、左右各々の横空調ダクト15B、15Bには、内向きの吹出口15b、15bが設けてあり、後側の吹出口15b、15bが運転者の顔近くに適量の涼風を送る位置取りとなっている。一方、横空調ダクト15B、15Bの前端部には、キャビン1の前面ウインド25に向けて空調風を吹き出す前下向きの吹出口15a、15a、その吹出口15a、15aの後方にドアガラスに向けてデフロスト風を吹き出す吹出口15dが形成されている。
【0037】
図2及び図3に示すように、後空調ダクト15Aの両側端より後方側に向けて枝ダクト15C、15Cが延出してあり、延出端に後サイドウインド4、後面ウインド5に空調風を吹き出す吹出口15c、15cが設けてある。上記した横空調ダクト15B等はインナールーフ部14内に位置しており、図5に示すように、インナールーフ部14の両側端に形成してある下り天井部内に設けてある。
【0038】
図3に示すように、インナールーフ部14の空調ユニットAの収納部より機体前方側には、キャビン内の空気を取り入れる為に、循環口14Aを備えている。循環口14Aは、下側インナールーフ部14bの下り天井部を形成する傾斜面の上面から上向きにユニットケース24に沿って壁面を立ち上げ、その立ち上げた部分14cの上端における水平部分に形成されている。ここに、上側インナールーフ部14aの立ち上げ部分14cを内気導入ダクトと称する。
【0039】
一方、外気供給口13Cと循環口14Aとは上下に向き合う状態に位置しており、両者の間には、外気供給口13Cと循環口14Aを開閉する弁機構としては開閉弁体17を設けてある。外気導入口13Bを通して、外気をインナールーフ部14とアウタルーフ部13との間に形成した空間a内に取り込む状態と、外気を遮断しキャビン内の空気を前記空間aとの間で循環させる状態とに切り換えるように構成してある。
弁機構としては、揺動式のものではなく、スライド式のものでもよい。また、図示はしていないが、弁機構を操作する切換操作レバーが運転席12の上方近傍まで立ち下げて設けてある。
【0040】
図3に示すように、インナールーフ部14は、キャビン内の空気を取り入れる為に、循環口14Aを備えているが、その循環口14Aを形成している後上側インナールーフ部分14aとキャビン1の前部側に位置する前側インナールーフ部分14bとを備えて構成されている。インナールーフ部14は、機体前後方向での中間位置でアウタルーフ部13に密着されており、密着された中間位置で後側インナールーフ部分14aと前側インナールーフ部分14bとに隔離される。このような構成になる前側インナールーフ部分14bの空間にCDラジカセ29等を収納設置することによって、循環口14Aから取り入れた室内空気の背圧が直接CDラジカセ29等に作用せず、CDラジカセ29等が埃等を吸い込むことが少なくなる。
【0041】
図3〜図5に示すように、空調ユニットAの近くに外気導入口13Bを配置してあるので、アウタルーフ部13内に外気導入口13Bに連通する状態で形成されている連通路bを短くすることができ、シロッコファン23による吸入抵抗を低減できる。
【0042】
支持フレーム6Cの後方側には支持カバー18が延出してあり、空調ユニットAをカバーしている。支持カバー18の下面で支持フレーム部分6Cには、横軸芯X回りで後方揺動自在に後面ウインド5が支持されており、閉塞状態においては後面ウインド5の後方側への張出しが抑えられており、図示はしていないが、耕耘装置等を支持するリンク機構等との干渉を回避する構成を採ってある。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態として、図6に示すように、空調ユニットAが、環状のアッパーフレーム6の後端部より機体前方側に位置する状態で配置されているものについて説明する。
【0044】
図6及び図7に示すように、空調ユニットAを囲むように、アウトルーフ部13とインナールーフ部14とが配置され、アウトルーフ部13の空調ユニットAの前方側に外気供給口13Cとこの外気供給口13Cに外気を送り込む外気導入口13Bがアウトルーフ部13の機体後方に張出した庇部13Aの下向き面に設けてある。インナールーフ部14には、外気供給口13Cと相対向する状態でキャビン1内の空気を導入する循環口14Aを設けてあり、外気供給口13Cと循環口14Aとの間に外気供給口13Cと循環口14Aを開閉する弁機構としての開閉弁体17を設けてある。外気導入口13Bを通して、外気をインナールーフ部14とアウタルーフ部13との間に形成した空間a内に取り込む状態と、外気を遮断しキャビン内の空気を前記空間aとの間で循環させる状態とに切り換えるように構成してある。
【0045】
空間a内に取り込まれた空気は、空調ユニットAのユニットケース24の上面に形成した誘導孔24aを介してシロッコファン23に吸入されて、エバポレータ20等によって空調を受けた後に、空調ダクト15A、15Bに押し込まれる。
図4に示すように、エバポレータ20の両端より前記したように後空調ダクト部15Aが延出され、その後空調ダクト部15Aの両側端から機体前部に向けて横空調ダクト15B、15Bを延出してあり、第1実施形態と同様に、調整済み空気がキャビン1内に吹出供給されるのである。
【0046】
次に、後サイドウインド4と後面ウインド5の取り付け構造について説明する。図7に示すものは、環状アッパフレーム6の後端部の機体前方側に空調ユニットAを配置したものであり、空調ユニットAを環状のアッパーフレーム6の後端部の機体前方側に配置する構成を採るために、環状のアッパーフレーム6の後端部を後面ウインド5の位置より後方に変位させて設けてある。このために、後面ウインド5と後サイドウインド4との境目に位置する縦向きフレーム2としてのリアピラーとアッパーフレーム6とを継ぎフレーム30で連結して、フレーム同士の連結強度を高めている。尚、後面ウインド5は、アッパーフレーム6の後部フレーム部分6Bに取り付けたブラケット31に枢支した揺動アーム32によって後方に揺動開放可能に支持されている。
【0047】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態として、空調ユニットAが、図8に示すように、横フレームとしての後部フレーム部分6Bに形成した吊り下げフレーム部分6Dの下方に配置されているものについて説明する。
空調ユニットAを取り付ける枠組みフレームBの構成について説明すると、図8及び図9に示すように、環状のアッパフレーム6における前後向きフレーム部分6Aと後部フレーム部分6Bとの接続曲がり部分に左右の縦向きフレーム2、2を立設して後サイドウインド4の窓枠に兼用するとともに、両縦向きフレーム2、2に渡ってかつ後部フレーム部分6Bより一段上がった高さ位置に吊り下げフレーム部分6Dを架設してある。
【0048】
この吊り下げフレーム部分6Dの下面とこの吊り下げフレーム部分6Dを支える両隣の縦向きフレーム2、2との間に潜りこませる状態で空調ユニットAを吊り下げ支持してある。ここに、吊り下げフレーム部分6Dを空調ユニット取付部分と称する。
図9に示すように、吊り下げフレーム部分6Dの下面に左右一対のブラケット27を前後向き姿勢で取り付けるとともに、ユニットケース24で囲まれた空調ユニットAを左右のブラケット27,27にボルトで固定するように構成してある。
【0049】
図9に示すように、空調ユニットAを囲むように、アウトルーフ部13とインナールーフ部14とを配置してあり、アウトルーフ部13の空調ユニットAの前方側に外気供給口13Cと、この外気供給口13Cに外気を送り込む外気導入口(図示せず)がアウトルーフ部13の機体横側方に張出した庇部(図示せず)に設けてある。インナールーフ部14には、外気供給口13Cと相対向する状態でキャビン1内の空気を導入する循環口14Aを設けてあり、外気供給口13Cと循環口14Aとの間に外気供給口13Cと循環口14Aを開閉する弁機構としての開閉弁体17を設けてある。外気導入口13Bを通して、外気をインナールーフ部14とアウタルーフ部13との間に形成した空間a内に取り込む状態と、外気を遮断しキャビン1内の空気を前記空間aとの間で循環させる状態とに切り換えるように構成してある。
【0050】
空間a内に取り込まれた空気は、空調ユニットAのユニットケース24の上面に形成した誘導孔(図示せず)を介してシロッコファン23に吸入されて、エバポレータ20等によって空調を受けた後に、空調ダクト15A、15Bに押し込まれる。
図4に示すように、エバポレータ20の両端より前記したように、後空調ダクト部15Aが延出され、その後空調ダクト部15Aの両側端から機体前部に向けて横空調ダクト15B、15Bを延出してあり、第2実施形態と同様に、調整済み空気がキャビン1内に吹出供給されるのである。
【0051】
図9に示すように、インナールーフ部14の縦向きフレーム2より後方に張出した部分の下面には後面ウインド5が支持されており、後方側への張出しを抑えて、図示はしていないが、耕耘装置等を支持するリンク機構等との干渉を回避する構成を採ってある。
【0052】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態として、空調ユニットAが、図10に示すように、横フレームとしての後部フレーム部分6Bの更に後方に配置されているものについて説明する。
空調ユニットAを取り付ける枠組みフレームBの構成について説明すると、図10及び図11に示すように、環状のアッパフレーム6における前後向きフレーム部分6Aと後部フレーム部分6Bとの接続曲がり部分に左右の縦向きフレーム2、2を立設して後サイドウインド4の窓枠に兼用する。
【0053】
図11に示すように、後部フレーム部分6Bの下面に左右一対のブラケット27を前後向き姿勢で取り付けるとともに、前記ユニットケース24で囲まれた空調ユニットAを左右のブラケット27,27にボルトで固定するように構成してある。
図11に示すように、後部フレーム部分6Bに取り付けた空調ユニットAを囲むように、後部カバー28をその後部フレーム部分6Bに取り付けて設けるとともに、後部フレーム部分6Bに支持する状態でアウトルーフ部13を設け、後部カバー28に支持する状態でインナールーフ部14を配置してある。
【0054】
アウトルーフ部13には外気供給口13Cが設けてあり、この外気供給口13Cに外気を送り込む外気導入口(図示せず)がアウトルーフ部13の機体横側方に張出した庇部(図示せず)に設けてある。インナールーフ部14には、外気供給口13Cと相対向する状態でキャビン1内の空気を導入する循環口14Aが設けてあり、外気供給口13Cと循環口14Aとの間に外気供給口13Cと循環口14Aを開閉する弁機構としての開閉弁体17が設けてある。外気導入口13Bから導入した外気をインナールーフ部14とアウタルーフ部13との間を通して後部カバー部28の内部空間a内に取り込む状態と、外気を遮断しキャビン内の空気を前記内部空間aとの間で循環させる状態とに開閉弁体17が切り換えるように構成してある。図中bは外気導入ガイドであり、14cは内気導入ガイドである。
【0055】
空間a内に取り込まれた空気は、空調ユニットAのユニットケース24の上面に形成した誘導孔24aを介してシロッコファン23に吸入されて、エバポレータ20等によって空調を受けた後に、空調ダクト15A、15Bに押し込まれる。
図4に示すように、エバポレータ20の前方に、後空調ダクト部15Aが配置され、その後空調ダクト部15Aの両側端から機体前部に向けて横空調ダクト15B、15Bを延出してあり、第1から3の実施形態と同様に、調整済み空気がキャビン1内に吹出供給されるのである。
インナールーフ部14と後部カバー部28との接続部位の下面には後面ウインド5が支持されており、後方側への張出しを抑えて、図示はしていないが、耕耘装置等を支持するリンク機構等との干渉を回避する構成を採ってある。
【0056】
〔別実施の形態〕
以下に、記載する別実施構造については、上記した第1実施形態から第4実施形態に適用するものとする。
(1)空調ダクト15の別実施構造について説明する。ここでは、キャビン1内のルーフ部7の左右中央にダクト15を配置するものについて説明する。図12に示すように、エバポレータ20とシロッコファン23とはユニットケース24によって囲まれており、ユニットケース24に連続する状態でエバポレータ20の両側端から機体前方側に向けて、空調ユニットAからの空調済み空気を左右横側端に誘導する横向き姿勢の後空調ダクト15Aを設けてあるとともに、後空調ダクト15Aの左右中心部より前方に向けて主空調ダクトとしての中央空調ダクト15Eが延出してある。
図12に示すように、中央空調ダクト15Eには、前後中間位置に左右向きに張出す枝空調ダクトとしての左右の中間枝空調ダクト15F、15Fが設けてあり、中間枝空調ダクト15Fの更に前方側に左右一杯に広がる前空調ダクト15G、15Gが設けてある。左右の中間枝空調ダクト15F、15Fには、夫々、吹出口15f、15fが設けられており、吹出口15f、15fは、後ろ向きに空調風を吹き出して運転者の顔近くに適量の涼風を送る位置取りを行っている。一方、前空調ダクト15G、15Gには、キャビン1の前面ウインド25に向けて空調風を吹き出す前下向きの前吹出口15a、15aが設けられており、その前吹出口15a、15aの後方にドアガラスに向けてデフロスト風を吹き出す吹出口15dが設けられている。
図12に示すように、後空調ダクト15Aの両側端より後方側に向けて枝ダクト15C、15Cが延出してあり、延出端に後サイドウインド4、後面ウインド5に空調風を吹き出す吹出口15c、15cが設けてある。
【0057】
(2)空調ダクト15の別実施構造について説明する。ここでは、キャビン1内のルーフ部7における全面に亘ってダクト15を配置するものについて説明する。図13及び図14に示すように、エバポレータ20とシロッコファン23とはユニットケース24によって囲まれており、ユニットケース24に連続する状態でエバポレータ20の両側端から機体前方側に向けて、空調ユニットAからの空調済み空気を機体前方側に誘導する全面空調ダクト15Hを設けてある。
図13に示すように、全面空調ダクト15Hには、前後中間位置に、吹出口15f、15fが設けられており、吹出口15f、15fは、後ろ向きに空調風を吹き出して運転者の顔近くに適量の涼風を送る位置に設けられている。一方、キャビン1内には、キャビン1の前面ウインド25に向けて空調風を吹き出す前下向きの吹出口15a、15aが設けられており、その吹出口15a、15aの後方にドアガラスに向けてデフロスト風を吹き出す吹出口15d、15dが設けられている。
図13に示すように、全面空調ダクト15Hの両側端に、後サイドウインド4、ドアガラス等に空調風を吹き出す吹出口15b、15bが設けてある。このように略全面に亘って空調ダクト15を設置することによって、任意の位置に吹出口を設けることができる利点がある。
このような構成を採る全面ダクト15Hに外部空気を導入する構造としては、図13及び図14に示すように、アウタールーフ部13の機体横側方側に張出した庇部13Eに外気導入口13Bを形成して構築してある。
【0058】
(3) 図示してはいないが、左右の横空調ダクト15B、15Bと後空調ダクト15Aとの接続部に蛇腹状の繋ぎ部を設けてもよい。そうすると、ダクト自体の伸縮及び製作誤差等を吸収できて、接続状態が安定する。
【0059】
(4) 図13に示すように、エバポレータ20から排出される結露水を逃がす為に、ユニットケース24からホース26を延出し、そのホース26をユニットケース24に隣接する縦向きフレーム2内を通して機外に排出するように構成する。
【0060】
(5) つぎに、アッパフレーム6を空調ダクト15として使用する形態について説明する。図15に示すように、アウトルーフ部13の後向き庇部(図示せず)に外気導入口(図示せず)を形成するとともに、アウトルーフ部13の連通路bからインナールーフ部14との間に形成した空間a内に取り込み、誘導孔24aを通して、空調ユニットAに導入する。図15に示すように、導入された外気及び内気は、空調ユニットAで調整された状態でユニットケース24の出口24Aから送り出される。その出口24Aをアッパフレーム6の内部空間に連通させて、アッパフレーム6の前後向きフレーム部分6Aを空調ダクト15に構成する。
したがって、図15に示すように、前後向きフレーム部分6Aの内向き面に空調済み空気の吹出口6a、6aを設けて、アッパフレーム6を空調ダクトに兼用したので、別個に空調ダクトを構成する必要はない。
空調ユニットAを支持する形態は、第1実施形態と同様である。
【0061】
(6) キャビン1の枠組み構成としては、つぎのようなものでもよい。図16(イ)(ロ)に示すように、枠組みフレームBにおける前面ウインドウ25を支持する左右の前支柱2,2をアッパフレーム6の左右前向きフレーム部分6A、6Aより上方まで延出し、それら前支柱2,2の上端同士を連結する左右向き前上フレーム部分6Eを左右前向きフレーム部分6A、6Aより上方に位置するように設置する。これによって、左右前向きフレーム部分6A、6Aが上方に位置することになるので、それだけ、前面ウインドウ25を上方まで高く設置することができ、運転操縦者への視界の良好拡大化を図ることができる。
図17(イ)(ロ)に示すように、前支柱2,2を上端部分2A,2Aが後傾姿勢となるように曲げ加工を施して、前支柱2,2を下端部分に比べて後端部分2Aが機体後方側に位置するように構成し、その前支柱2,2の上端同士に亘って前上フレーム部分6Eを架設し、前上フレーム部分6Eと左右前向きフレーム部分6A、6Aとを同一高さ位置に設定してある。
このような構成によって、前上フレーム部分6Eを前支柱2,2の下端部に比べて後方に位置させることができ、運転操縦者の見上げ視界を広角にできて上方まで視認することが容易になる。
【0062】
(7) アウタールーフ部13としては、アッパーフレーム6より横側方又は前後方向にはみだす庇部を形成して、ガラス面の大きなキャビンに直射日光が入るのを阻止する構成を採っても良い。
【0063】
(8) 上記実施の態様においては、農用トラクタに本発明を利用した形態について説明したが、コンバイン等の他の農機や建機に適用してもよい。
【0064】
(9) 横空調ダクト15Bは左右の一方にだけ設けるものでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 キャビン
6A 前後向きフレーム
6B 横フレーム
6C 空調ユニット取付部分
7 ルーフ部
12 運転席
15 空調用のダクト
20 エバポレータ
21 ヒータ
23 送風用のファン
25 前面ウインド
31 カバー体
A 空調ユニット
B 枠組みフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席をキャビン内に備えるとともに、前記キャビンのルーフ部に空調用ダクトと、空気に調整を加え前記空調用ダクトにその調整済み空気を送り込む空調ユニットとを配置してある作業車のキャビン用空調構造であって、
前記空調ユニットを前記運転席の着座部の後端より機体後方側に配置してあり、
前記キャビンを構成する枠組みフレームを、複数の縦向きフレームと、当該複数の縦向きフレームの上端部に亘って設けられた環状のアッパフレームとを備えて構成し、前記環状のアッパフレームの後部の横フレームを、前記複数の縦向きフレームのうちの最も機体後方側の左右の縦向きフレームよりも機体後方側に平面視でU字状に出っ張らせて、
前記最も機体後方側の左右の縦向きフレームの後側で前記横フレームの前側に形成された空間に前記空調ユニットを配置してある作業車のキャビン用空調構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−255919(P2009−255919A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184987(P2009−184987)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2005−251643(P2005−251643)の分割
【原出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】