説明

作業車両

【課題】フロアシートをフロアの凸部の形状に適合させて載置するとともに、作業者の操縦部への昇降を安全に誘導するフロアシートを備える作業車両を提供する。
【解決手段】車体の後部側に運転席15を備えると共に、車体前部には操縦機構10を備え、運転席15と操縦機構10との間にフロアシート24を配設したフロア13を備え、フロア13は、このフロア13の中央近傍に、上方に向けた突設部21と、フロア13の左右端部近傍に平坦部22とを設け、突設部21から平坦部22へ向かって折曲する折曲部23を設けるとともに、フロアシート24は、フロア13の突設部21上方に配設される突設シート部25と、フロア13の平坦部22上方に配設される平坦シート部26と、折曲部23上方に配設される折曲シート部27とを備え、折曲シート部27には、機体前後方向に向けた複数の溝32,32´を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後部側に運転席を備えると共に、車体前部には操縦機構を備え、運転席と操縦機構との間にフロアシートを配設したフロアを備える作業車両に関し、より詳細には、フロアの中央近傍に、上方に向けた突設部と、フロアの左右端部近傍に平坦部とを設け、突設部から平坦部へ向かって折曲する折曲部を設けるとともに、フロアシートは、フロアの突設部上方に配設される突設部用シート部と、フロアの平坦部上方に配設される平坦部用シート部と、折曲部上方に配設される折曲部用シート部とを備え、折曲部用シート部には、機体前後方向に向けた複数の溝を備える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタなど作業車両には、機体に配設した操縦部の前部にハンドルを突設させたダッシュボードを設置するとともに、操縦部の後部に運転席を設置し、これらハンドルと、運転席との間のフロア上にフロアシートを備えるものがあり、このフロアマットの上面が左右方向中央部から左右方向に向けて徐々に下降傾斜する斜面部を設け、フロアマットの水はけを良くした(特許文献1)とものや、フロアシートに位置決め突起を設け、固定フロアプレートに穿孔した位置決め孔に嵌合させることで、フロアシートを位置決めし固定する(特許文献2)というものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−315100号公報
【特許文献2】特開2008−56097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両では、フロア下方に配置されるミッションケースの上部が、フロアの中央近傍から上方に向け突設し、凸部を形成しているため、フロアシートをフロア上に載置する載、フロアシートの中央近傍が、フロアの凸部により浮き上がった状態となり、フロアシートの位置ずれを引き起こしたり、操縦部内の作業者が足元に違和感を感じ、作業環境が低下するという問題があった。
そこで、この発明の目的は、フロアシートをフロアの凸部の形状に適合させて載置できるフロアシートを備える作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、車体の後部側に運転席を備えると共に、車体前部には操縦機構を備え、前記運転席と前記操縦機構との間にフロアシートを配設したフロアを備える作業車両において、前記フロアは、該フロアの中央近傍に、上方に向けた突設部と、前記フロアの左右端部近傍に平坦部とを設け、前記突設部から前記平坦部へ向かって折曲する折曲部を設けるとともに、前記フロアシートは、前記フロアの前記突設部上方に配設される突設シート部と、前記フロアの平坦部上方に配設される平坦シート部と、前記折曲部上方に配設される折曲シート部とを備え、前記折曲シート部には、機体前後方向に向けた複数の溝を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記折曲シート部の溝を、車両正面視で波状に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車体の後部側に運転席を備えると共に、車体前部には操縦機構を備え、運転席と操縦機構との間にフロアシートを配設したフロアを備える作業車両において、フロアは、このフロアの中央近傍に、上方に向けた突設部と、フロアの左右端部近傍に平坦部とを設け、突設部から平坦部へ向かって折曲する折曲部を設けるとともに、フロアシートは、フロアの突設部上方に配設される突設シート部と、フロアの平坦部上方に配設される平坦シート部と、折曲部上方に配設される折曲シート部とを備え、折曲シート部には、機体前後方向に向けた複数の溝を備えるので、フロアシートの折曲シート部が、フロアの突設部の左右端部に沿って溝により容易に折曲するため、フロアシートを、フロア突設部の形状に適合させてフロア上に安定して載置させることができる。従って、作業環境を向上させた作業車両を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、折曲シート部の溝を、車両正面視で波状に設けるので、突設部下方のミッションケースの大きさや形状など機種の違いによる突設部の大きさに対応して、フロアシートの折曲シート部の波状溝を延伸させることで、フロアシートをフロアの突設部の形状に適合させてフロア上に安定して載置させることができる。従って、作業環境を向上させた作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る農作業車両としての、ホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】フロアシートの平面図である。
【図3】フロアシートの斜視図である。
【図4】折曲部の正面断面図である。
【図5】機体後方から見たフロアの斜視図である。
【図6】フロア上に組付けた状態を示すフロアシートの斜視図である。
【図7】波状に設けた折曲部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一実施例に係るホイール式トラクタの左側面図である。なお、図に例示したトラクタは、ロプス仕様のホイール式トラクタに限定されず、キャビン仕様や、クローラ式などであってもよい。
【0011】
この例のホイール式のトラクタ1は、前輪2および後輪3を備え、前輪2の上方であって車体フレーム4上にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6を配置するとともに、このエンジン6の後方には順にクラッチハウジング7およびミッションケース8が備えられる。
【0012】
そして、ボンネット5に連設したダッシュボード9の後方である車体前部には、上方にステアリングハンドル11を突設させたステアリングコラム12の下方、かつフロア13上には、フートアクセルペダルfなどの操作部材14などを配設した操縦機構10を配置するとともに、この操縦機構10の後部には、運転席15などが設けられる。なお、符号20は、機体後部に設けられたロプスフレームである。
【0013】
また、この運転席15は、後輪3の上方であって、前部を下方に屈曲させた形状の左右フェンダ16間に配置され、この運転席15の後方には燃料タンク17が配設される。また左右フェンダ16は、例えば、副変速レバーやPTOレバーなどの各種操作レバー18の下部を内設し、それら操作レバー18の上部を突出させる、左右フェンダ16の上面に左右操作レバーガイド19が形成される。
【0014】
次に、本願発明の特徴である、フロアシートについて、その具体的構成を説明する。図2はフロアシートの平面図、図3はフロアシートの斜視図、図4は折曲部の正面断面図、図5は機体後方から見たフロアの斜視図、図6はフロア上に組付けた状態を示すフロアシートの斜視図、図7は波状に設けた折曲部の正面断面図である。
【0015】
まず、フロア13は、上述したように、車体前部に設けられた操縦機構10と、車体後部側に設けられた運転席15との間の底部に備えられる。そして、このフロア13の中央近傍の下方であって、車体フレーム4上には、ミッションケース8が配設される。
【0016】
このため、図5に示すように、フロア13の中央は、ミッションケース8の上部が位置するため、フロア13にミッションケース8の上部が接触しないように、フロア13の中央を上方に向けて突出させた突設部21が形成されており、この突設部21内にミッションケース8の上部が嵌設されている。
【0017】
また、フロア13は、中央部を挟んで左右に平坦部22を形成するとともに、突設部21から平坦部22へ向かって折曲する左右の折曲部23が形成される。なお、図5はフロアシートを装着しないフロア13を示したものである。
【0018】
そして、上記のような凸形状の突設部21を有するフロア13の上面に、フロアシート24が覆設される。このフロアシート24は、図2〜3に示すように、フロア13上面の形状に合わせた平面視略コ字状の、弾性材からなる薄いシートであり、この材質としては、例えば、塩化ビニル樹脂などの防水性および可塑性を有する樹脂などが用いられる。
【0019】
このフロアシート24は、フロア13の突設部21上方に配設される突設シート部25と、フロア13の左右平坦部22上方に配設される左右の平坦シート部26と、折曲部23上方に配設される左右の折曲シート部27とから構成される。
【0020】
そして、これら各部の周縁部における適宜位置に設けた複数の穴部28を介して、フロアシート24をフロア13上にボルト締めなどすることによって、フロアシート24の位置ずれが防止される。なお、符号hは、フートアクセルペダルfなどを突設させる突設穴である。
【0021】
また、突設シート部25の上面には、作業者の足の滑り止めを兼ねた水はけ溝として、例えば、左右方向に長い凸部29が機体前後方向に等間隔で複数本(例えば5本〜10本)フロアシート24に一体成形して設けられる。なお、この凸部29の厚み(上下方向の高さ)t1は、5.0mm程度にすることができる。
【0022】
さらに、フロアシート24の左右平坦シート部26の上面にも、例えば、機体外方に向けて上述同様に凸部30が機体前後方向に等間隔で複数本(例えば、10本〜20本)、フロアシート24に一体成形して設けられる。
【0023】
このとき、左右平坦シート部26の後部には、左右フェンダ12が位置し、これら左右フェンダ12が、フロア13後部と機体外方とを遮断するため、凸部30は、左右平坦シート部26の内側から、機体外方に開放されている昇降ステップs側の左右平坦シート部26前部に向けて屈設される。なお、この凸部30の厚みt2も、5.0mm程度とすることができる。
【0024】
また、左右平坦シート部26の外側端部には、フロア13の昇降時における作業者の滑り止めとして、例えば、略正方形の凸部31が、凸部30に続くようにして機体前後方向に2列などで等間隔に複数、フロアシート24に一体成形して設けられる。なお、この凸部31の厚みt3も、5.0mm程度とすることができる。また、これら凸部29,30,31の形状は上述に限定されず、適宜形状に形成することができる。
【0025】
次に、左右の折曲シート部27は、突設部21の高さに略等しい、平面視機体左右方向の長さを有し、正面視の厚み(上下方向の高さ)は、突設シート部25および平坦シート部26の厚みよりも略半分程度で形成される。
【0026】
また、左右折曲シート部27の上面には、機体前後方向に複数の溝32が等間隔で、フロアシート22に一体成形して並設される。そして、図4に示すように、この溝32の凹凸の厚みt4は、2.5mm程度とすることができる。なお、図4は、左右いずれかの折曲シート部27を示したものである。
【0027】
そして、フロアシート24をフロア13上に組み付ける際、図5に示すように突設部21の形状に沿って、これら左右の折曲シート部27を水平方向から垂直方向、さらに水平方向に折り曲げる必要がある。
【0028】
このとき、上述したように、左右の折曲シート部27の厚みが、突設シート部25および平坦シート部26の厚みよりも薄く、さらにこれら溝32の凹凸形状によって、左右の折曲シート部27を突設部21における左右端部の折曲部23に沿って容易に折り曲げることができ、折曲シート部27を突設部21の形状に沿って確実に適合設置させることができる。
【0029】
このため、フロアシート24が、フロア13上面の凹凸に沿って組み付けられ、突設部21近傍でフロアシート24が浮き上がるなどの不都合が生じなくなり、作業者はフロア13内で違和感なく作業をすることができる。
【0030】
また、フロアシート24は、機体左右方向の厚みが、フロアシート24の中央から左右両端部に向けて除々に薄くなるように形成されているため、フロアシート24設置の際には、フロアシート24の左右方向の上下高さが、中央近傍から左右両端部に向けて除々に低くなる。
【0031】
このため、フロアシート24上に降った雨水や、フロアシート24上面に地面から跳ねて入った泥水などを、突設シート部25上面の凸部29間および平坦シート部26上面の凸部30間に沿ってフロア13の左右側方の機外に確実、かつ容易に排出させることができる。従って、フロア13上に水が溜ることがなく、フロア13内で作業者は快適に作業をすることができる。
【0032】
また、折曲シート部27の溝は、上述した凹凸形状に代えて、伸縮可能な波状の蛇腹構造にすることもできる。この場合、図7に示すように、各折曲シート部27の上下両面には、波状の溝32´が機体前後方向に等間隔でそれぞれ複数本(例えば、10本〜20本)並設される。なお、波状を形成する各湾曲部(各凹凸部)の厚みt5も2.5mm程度とすることができる。
【0033】
このような構成により、上述したフロアシート24をフロア13上に組み付ける際、例えば、機種の違いなどにより突設部21の高さが上述した例に比べて高い場合、折曲シート部27の溝32´の波状が突設部21の高さ方向(機体左右方向)に延伸可能とするため、各折曲シート部27の左右長さを調節することができる。
【0034】
従って、フロアシート24は、フロア13の中央近傍における突設部21の高さに応じて、左右の折曲シート部27を延伸させ、これら折曲シート部27を突設部21の外形に沿って適合設置できるため、突設部21近傍でフロアシート24が浮き上がるなどの不都合が生じなくなり、作業者はフロア13上で違和感なく作業をすることができる。
【0035】
以上詳述したように、この例の作業車両(トラクタ1)は、車体の後部側に運転席15を備えると共に、車体前部には操縦機構10を備え、運転席15と操縦機構10との間にフロアシート24を配設したフロア13を備え、フロア13は、このフロア13の中央近傍に、上方に向けた突設部21と、フロア13の左右端部近傍に平坦部22とを設け、突設部21から平坦部22へ向かって折曲する折曲部23を設けるとともに、フロアシート24は、フロア13の突設部21上方に配設される突設シート部25と、フロア13の平坦部22上方に配設される平坦シート部26と、折曲部23上方に配設される折曲シート部27とを備え、折曲シート部27には、機体前後方向に向けた複数の溝32,32´を備えるものである。
【0036】
加えて、折曲シート部27の溝30´を、車両正面視で波状に設けることができる。
【0037】
なお、凸部29,30,31や溝32,32´、突起部33の設置数やサイズは上述に限定されず、適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
なお、上述の例では、作業車両の一例として、農作業車両のホイール式トラクタについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタやコンバイン、建設作業車両など、操縦部の凹凸を有するフロア上にフロアシートを備えたあらゆる作業車両に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
13 フロア
21 突設部
22 平坦部
23 折曲部
24 フロアシート
25 突設シート部
26 平坦シート部
27 折曲シート部
28 穴部
29,30,31 凸部
32,32´ 溝
33 突起部
h 突設穴
s 昇降ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部側に運転席を備えると共に、車体前部には操縦機構を備え、前記運転席と前記操縦機構との間にフロアシートを配設したフロアを備える作業車両において、
前記フロアは、該フロアの中央近傍に、上方に向けた突設部と、前記フロアの左右端部近傍に平坦部とを設け、前記突設部から前記平坦部へ向かって折曲する折曲部を設けるとともに、
前記フロアシートは、前記フロアの前記突設部上方に配設される突設部用シート部と、前記フロアの平坦部上方に配設される平坦部用シート部と、前記折曲部上方に配設される折曲部用シート部とを備え、前記折曲部用シート部には、機体前後方向に向けた複数の溝を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記折曲シート部の前記溝を、車両正面視で波状に設けることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−195101(P2010−195101A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39826(P2009−39826)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】