説明

作物の生育方法及び農業機械

【課題】肥料の利用効率の高い施肥方法である局所施肥において、作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする作物の生育方法を提供する。
【解決手段】作物の植栽位置直下の深層部(植栽位置から縦に離隔する位置)ではなく、作物の植栽位置から横に離隔する位置に肥料を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の生育方法、特に肥料の施用方法及びこの肥料の施用方法に用いるための農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、土地の生産力を維持増進し作物の生長を促進させるために、肥料が施用される。肥料の施用方法として、例えば、圃場の全面に肥料を散布して土とかき混ぜる「全面施肥」などの肥料の施用方法がある。全面施肥では、圃場全体に肥料がいきわたることとなるので、作物の種類や作物植栽位置に関わらず容易に肥料を施用することができる。しかしながら、作物の根が到達しない領域の肥料が利用され難く、肥料の利用効率が良くない。
【0003】
これに対して、肥料を作物の根の周辺に局所的に施用する「局所施肥」と呼ばれる肥料の施用方法がある。局所施肥は、局所的に肥料濃度を高くし、肥料の利用効率を高めることで、全体としての肥料の施用量を減少させることができる。肥料の施用量を減少させることにより、肥料の購入費を削減できるとともに、作物に利用されなかった肥料が雨等で流出して水質を悪化させるなどの悪影響を軽減できる。
【0004】
ただし、局所施肥においては、局所的に肥料濃度が高いので、肥料によって作物に濃度障害が起こる場合がある。濃度障害とは、肥料の濃度が濃すぎるために、根が傷んでしまうことをいう。濃度障害が起こると、作物が生育不良となったり、枯れたりする原因となる。そこで、濃度障害を回避する観点から、局所施肥においては、作物の種類、肥料の種類等に応じて、施肥する位置等を調整する必要がある。
【0005】
施肥する位置の調整について、作物の植栽位置直下の深層部に施肥を行う「深層施肥」や、作物の植栽位置直下の深層部と浅層部との上下二段に施肥を行う「二段施肥」などの施肥方法がある。また、このような二段施肥を行う農業機械として、特許文献1のような施肥装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−061319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、作物の植栽位置直下の深層部に施肥を行う場合、適切な深さに肥料を配置するためには、十分な深さまで土を掘り起こす必要がある。しかしながら、深い位置まで土を掘り起こすことは、手作業では労力が大きい。また、農業機械を用いた場合は耕耘できる深さに限界がある。このため、適切な深さに肥料を配置することが困難な場合がある。
【0008】
さらに、深層に施肥を行ってから畝を形成する場合には、畝の高さによって施肥位置が異なることとなるので、畝の高さを考慮し、適切な高さの畝を形成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本願出願人は、作物の植栽位置直下の深層部(植栽位置から縦に離隔する位置)ではなく、作物の植栽位置から横に離隔する位置に肥料を配置することを特徴とする作物の生育方法及び農業機械を提案する。
【0010】
具体的には、以下の作物の生育方法及び農業機械を提案する。
【0011】
第一の発明として、生育初期の作物に対して、生育土壌の、この作物植栽位置から横に離隔する位置に初期肥料を配置し、少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする作物の生育方法、を提案する。
【0012】
第二の発明として、生育土壌は畝であり、前記初期肥料配置位置は、前記畝の両側の連続的又は断続的な二列であり、前記生育初期の作物の作物植栽位置は、前記畝の略中央である、第一の発明に記載の作物の生育方法、を提案する。
【0013】
第三の発明として、生育土壌は畝であり、前記初期肥料配置位置は、前記畝の両側と畝内の連続的又は断続的な複数列であり、前記生育初期の作物の作物植栽位置は、前記肥料配置がされる列と列の略中央である、第一の発明に記載の作物の生育方法、を提案する。
【0014】
第四の発明として、前記生育初期の作物の作物植栽位置の生育土壌中に、前作の残肥料又は/及びわずかな肥料が含まれるようにした第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の作物の生育方法、を提案する。
【0015】
第五の発明として、肥料を作物の生育土壌に配置するための農業機械であって、肥料を同時に所定の間隔で複数列に連続的又は断続的に配置する肥料配置部を有する農業機械、を提案する。
【0016】
第六の発明として、前記肥料配置部は、前記所定の間隔を調節する調節部を有する第五の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0017】
第七の発明として、前記調節部は、生育土壌に対して肥料を落下させる肥料排出管と、肥料排出管の肥料排出口の間隔を変更する間隔変更機構と、からなる第六の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0018】
第八の発明として、前記調節部は、生育土壌に対して肥料を面状に落下させる肥料面状排出管と、肥料面状排出管から生育土壌に対して落下した肥料を所定の間隔を隔てて分布させる分布板と、からなる第六の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0019】
第九の発明として、肥料配置部にて所定の間隔で複数列に連続的または断続的に配置された肥料を生育土壌の土の一部を削って覆う肥料被覆機構をさらに有する第六の発明から第八の発明のいずれか一に記載の農業機械、を提案する。
【0020】
第十の発明として、肥料被覆機構は、前記複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列外側の生育土壌の土の一部を削って畝とする外側利用機構である第九の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0021】
第十一の発明として、肥料被覆機構は、前記複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列内側の生育土壌の土の一部を削る内側利用機構である第九の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0022】
第十二の発明として、前記肥料配置部は、肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の側方へ案内する側方案内鋤手段と、前記側方案内鋤手段に設けられ、掘った溝に肥料を落下させる第一肥料排出口と、側方案内鋤手段により側方へ案内された土を配置された肥料に被せる覆土手段と、を有する第五の発明又は第六の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0023】
第十三の発明として、前記肥料配置部は、肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の後方端から落下させる後方案内鋤手段を有し、前記後方案内鋤手段は、前記後方端から落下させられる土により覆土されるように掘った溝に肥料を落下させる第二肥料排出口を有する第五の発明又は第六の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0024】
第十四の発明として、前記肥料配置部は、肥料を配置するために掘る溝の深さを調整するための深浅調整手段を有する第十二の発明又は第十三の発明に記載の農業機械、を提案する。
【0025】
第十五の発明として、作物植栽又は種まきのための土壌掘起又は畝作りをする耕作部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こし又は積み上げをするために設けられている第五の発明から第十四の発明のいずれか一に記載の農業機械を、提案する。
【0026】
第十六の発明として、苗を配置するための苗配置部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをするために設けられている第五の発明から第十五の発明のいずれか一に記載の農業機械を、提案する。
【0027】
第十七の発明として、種まきするための種まき部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをするために設けられている第五の発明から第十五の発明のいずれか一に記載の農業機械を、提案する。
【発明の効果】
【0028】
本件発明により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は、主に請求項1などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。実施形態5は、主に請求項5などに関する。実施形態6は、主に請求項6などに関する。実施形態7は、主に請求項7などに関する。実施形態8は、主に請求項8などに関する。実施形態9は、主に請求項9などに関する。実施形態10は、主に請求項10などに関する。実施形態11は、主に請求項11などに関する。実施形態12は、その他の実施形態に関する。
【0030】
また、実施形態13は、主に請求項12などに関する。実施形態14は、主に請求項13などに関する。実施形態15は、主に請求項14などに関する。実施形態16は、主に請求項15から17などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0031】
本実施形態の作物の生育方法は、初期肥料配置位置に特徴を有する。すなわち、初期肥料の配置位置が、作物の植栽位置直下の深層部(植栽位置から縦に離隔する位置)ではなく、作物の植栽位置から横に離隔する位置である。本実施形態の作物生育方法は、このような位置に初期肥料を配置することにより、少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする構成となっている。
<実施形態1:構成>
【0032】
図1は、本実施形態の作物の生育方法の初期肥料配置位置を説明するための図である。この図を用いて、初期肥料配置位置について説明する。この図には、生育土壌(0101)、生育初期の作物(0102a)、初期肥料(0103)が示されている。本実施形態の作物生育方法は、生育初期の作物に対して、生育土壌の、この作物植栽位置から横に離隔する位置に初期肥料を配置し、少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする作物の生育方法である。なお、初期肥料の配置されるタイミングと、生育初期の作物の植栽されるタイミングとは、同時であっても、先後してもよい。初期肥料と生育初期の作物とが存在する状態で、以下に述べるような初期肥料配置位置、生育初期の作物の作物植栽位置となっていれば、本実施形態の作物の生育方法に含まれる。
【0033】
「初期肥料配置位置」は、初期肥料(0103)が配置される位置である。この位置は、「生育初期の作物」(0102a)に対する相対的な位置関係である。「生育初期」とは、作物の成長段階に応じて生育初期、生育中期、成熟期(生育後期)に分けた場合の初めの時期をいう。生育初期は、発芽あるいは、苗の植え付け後の1から4週間程度の根の活着時期をいう。この時期の根が濃度の高い肥料に触れると濃度障害が起こる。あるいは、肥料の分解発酵熱による根焼け障害、富栄養化で栄養成長して起こる軟弱徒長等の問題が生じる場合がある。これらの障害により活力のある根が形成されないと、病気や害虫に冒されやすいだけでなく、成熟期に養分、水分を吸収する根の力が弱いために収量、品質に影響を与えることとなる。
【0034】
「初期肥料」とは、作物の植栽(播種を含む。以下、本明細書において同様である。)前に、あるいは、作物の植栽後であっても生育初期において、施される肥料をいう。作物の植栽前に施される肥料を元肥というが、「初期肥料」は、元肥だけでなく、作物の植栽後であっても生育初期において施される肥料を含む趣旨である。また、「肥料」とは、植物の栄養に供すること、または植物の栽培に資するため、土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物をいい、有機肥料、完熟堆肥、化成肥料、土壌改良剤など肥料の種類を問わないが、遅効性の肥料とすることが好ましい。作物の根が成長して肥料に到達する時期に肥料の効果が発揮されると効率が良いからである。
【0035】
本実施形態の作物の生育方法において、初期肥料は、生育土壌に配置される。「生育土壌」は、作物が生育することとなる土壌である。「土壌」は、土に限定されず、砂やプラスチックなどからなる人工培地等を含む。生育土壌は畝であってもよいし、畝を形成せず、平らな生育土壌としていても良い。
【0036】
本実施形態の作物の生育方法において、初期肥料は、作物植栽位置から横に離隔する位置に配置される。「作物植栽位置」は、生育初期の作物が植栽されている位置を指す。
【0037】
「横に離隔する」とは、上から見た場合に、作物植栽位置と初期肥料配置位置との間に距離があることをいう。従来の局所施肥(深層施肥)の初期肥料(0103)配置位置は、図1(c)で示すように、成長初期の作物(0102a)の植付直下である。この図では、成長初期の作物の根が、初期肥料配置位置に到達しているため、濃度障害を起こすおそれがある。これに対し、本実施形態においては、図1(a)で示すように「横に」離隔している。「横に離隔する」とは、水平に離隔している場合(図1(a)で示すように作物植栽位置と初期肥料配置位置とが横から見て同じ高さとなっている場合)に限られず、斜め方向に離隔している場合を含む。例えば、図2A(a)では、成長初期の作物(0202)の作物植栽位置と、初期肥料(0203)の初期肥料配置位置とは、斜め方向に離隔しているが、これも「横に離隔する」ものといえる。
【0038】
初期肥料配置位置は、少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする程度に作物植栽位置と離れている。「作物が成長するまで」とは、生育初期の段階を終えて生育中期の段階に移行するまでの意味である。根の伸びる方向や長さは作物の種類によって異なることから、作物植栽位置と初期肥料配置位置との距離は作物の種類によって異なる。「到達困難とする」とは、作物の根の大部分が初期肥料配置位置に達しないことをいう。ただし、根が、初期肥料配置位置に全く達しないという意味ではなく、わずかに初期肥料配置位置に達する場合があっても良いとの趣旨である。なお、初期肥料配置位置に「達する」とは、図1(b)のように、成長した作物(0102b)の根が初期肥料配置位置に達することをいう。なお、本実施形態の作物の生育方法において、成長した根が初期肥料配置位置に配置された肥料に「達する」か否かは問われない。初期肥料は、初期肥料配置位置から生育土壌中に徐々に染み出し、根が初期肥料配置位置に達しなくとも、初期肥料配置位置付近に到達すれば、根から初期肥料が吸収される場合があるからである。
【0039】
初期肥料配置位置への初期肥料の配置の態様については、特に限定されない。ただし、生育土壌表面に肥料が露出していないことが好ましい。雨などによって肥料が流れると、肥料の利用効率が悪く、また、水質を悪化させるなどの悪影響があるおそれがあるためである。例えば、肥料が露出しないよう、生育土壌中に肥料を埋めたり、生育土壌の一部と混合したり、マルチと呼ばれる薄いフィルム状の被覆材を生育土壌にかぶせたりすると良い。
<実施形態1:効果>
【0040】
本実施形態の作物の生育方法により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。すなわち、本実施形態における初期肥料配置位置は、生育土壌を深く掘り起こさなくとも配置可能な位置となっている。
【0041】
「適切な位置」とは、少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難となるような位置である。
【0042】
局所施肥を適切な位置に行うことにより、生育初期の作物が濃度障害を起こすおそれがなく、健康な根を成長させることが可能である。したがって、作物が生育不良となったり、枯れたりするおそれが減少する。
【0043】
また、局所施肥を適切な位置に行うことにより、生育初期の作物は、栄養を求めて根を十分発達させることとなる。そして、根が十分に発達した段階で肥料に到達することにより、根から効率的に栄養を吸収することが可能となるので、作物の品質向上や、収量の増加が実現できる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0044】
本実施形態の作物の生育方法は、実施形態1を基本としつつ、特に生育土壌が畝であり、この畝の中央に一列に作物が植栽される一条植えの場合の初期肥料配置位置に関する。
<実施形態2:構成>
【0045】
図2Aは、本実施形態の作物の生育方法を説明する図である。本実施形態の作物の生育方法は、生育土壌は畝(0201)であり、前記初期肥料(0203)配置位置は、前記畝の両側の連続的又は断続的な二列であり、前記生育初期の作物(0202)の作物植栽位置は、前記畝の略中央であるように構成される。生育土壌、初期肥料配置位置、生育初期の作物の作物植栽位置については、実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0046】
「畝」(0201)とは、作物の植栽される生育土壌であって、筋状に高く盛り上げられたところをいい、隣接する他の盛り上げられた部分があるか否かを問わない。畝の両側とは、筋状に形成された畝の側面部分(図2A(a)において0204で示した部分付近)をいう。なお、畝の上面の両端付近(畝の肩部)が含まれている場合もある。
【0047】
1つの畝に作物を1列に植栽する作物の植栽方法を一条植えという。一条植えの場合、畝の略中央が作物植栽位置となる。この場合、畝の両側に初期肥料を配置することにより、作物植栽位置から「横に離隔する位置」に初期肥料を配置することができる。
【0048】
なお、図3は、畝の両側への初期肥料の配置の手順を説明するための図である。(a)、(c)、(e)が斜め上からみた斜視図、(b)、(d)、(f)が畝の断面図である。畝の両側への初期肥料の配置の手順としては、例えば、以下のような方法が利用可能である。
(1)図3(a)及び(b)のように、畝立て前に、畝(0301)の両側となるべき位置に肥料(0303)を散布する。(a)には、生育土壌に対して肥料を落下させるための肥料排出管の肥料排出口(0304)も図示されている。
(2)図3(c)及び(d)のように、畝立て後に、畝(0301)の両側に肥料を散布する。(c)には、生育土壌に対して肥料を落下させるための肥料排出管の肥料排出口(0304)も図示されている。なお、この場合には、肥料(0303)が生育土壌表面に露出したままとせず、肥料の上にさらに土をかぶせたり、生育土壌の一部(畝の両側部分)と肥料とを混合したり、畝にマルチをかぶせたりすることが好ましい。
(3)畝立て時に、図3(e)及び(f)のように、畝(0301)の上面に肥料(0303)を散布し、その後、畝の上面を平らにならす際に、畝の上面の肥料及び生育土壌を畝の両側に落下させる。なお、図(e)には、後述する肥料面状排出管(0306)の肥料排出口及び畝の上面の肥料及び生育土壌を畝の両側に落下させるための分布板(0305)も図示されている。
【0049】
あるいは、これら(1)から(3)の方法の二つ以上を組み合わせても良い。
【0050】
「連続的又は断続的な二列」とは、畝を上から見た場合に二列の筋状に初期肥料が配置されていることをいう。また、「連続的」に配置するとは、図2A(b)のように、畝を上から見た場合に肥料が筋状に連続して配置されていること、「断続的」に配置するとは、図2A(c)のように、畝を上から見た場合に肥料が配置されている部分と配置されていない部分とが断続的な筋状となっていることをいう。
<実施形態2:効果>
【0051】
本実施形態の作物の生育方法により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
【0052】
さらに、本実施形態の作物の生育方法のように、畝を形成し、畝の両側に初期肥料を配置する場合には、初期肥料配置位置が分かりやすい。したがって、肥料の配置から日をおいて作物の植栽を行う場合にも、初期肥料配置位置と、作物植栽位置との相対的位置関係を適切に保つことができる。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0053】
本実施形態の作物の生育方法は、実施形態1を基本としつつ、特に生育土壌が畝であり、この畝の中央に複数列に作物が植栽される場合(二条植え、三条植え等)の初期肥料配置位置に関する。
<実施形態3:構成>
【0054】
本実施形態の作物の生育方法は、生育土壌は畝であり、前記初期肥料配置位置は、前記畝の両側と畝内の連続的又は断続的な複数列であり、前記生育初期の作物の作物植栽位置は、前記肥料配置がされる列と列の略中央である点に特徴を有する。生育土壌、畝、初期肥料配置位置、生育初期の作物の作物植栽位置については、実施形態1又は2で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
【0055】
図2Bは、本実施形態の作物の生育方法を説明する図である。1つの畝に作物を2列に植栽する作物の植栽方法を二条植え、3列に植栽する作物の植栽方法を三条植えという。図2B(d)及び(e)は二条植えの場合の初期肥料配置位置を説明するための図である。1つの畝(0201)に生育初期の作物(0202)を2列以上に植栽する場合には、畝の両側だけでなく、条間(植栽された作物の列の間)にも、初期肥料(0203)を配置する方が好ましい。生育初期を終えて、根が初期肥料配置位置に到達する程度に成長した際、肥料配置位置が作物の両側に存在することにより、肥料の吸収が高くなるためである。
【0056】
なお、畝の両側への初期肥料の配置の手順は、前述のとおりである。
【0057】
「畝内」とは、上から見た場合に、畝部分に含まれる位置関係にあることをいう。
【0058】
「畝の両側と畝内の連続的又は断続的な複数列」とは、畝内は一列であって、畝の両側と合わせて複数列となっている場合であってもよい。具体的には、二条植えの場合に、畝の両側と畝内の連続的又は断続的な三列に配置されるといった具合である。あるいは、三条植え、四条植え、五条植えなどでは、同様に、初期肥料が連続的又は断続的な四列、五列、六列に配置されるなどといった具合である。複数列に配置される肥料は、「等間隔で」複数列に配置される必要はない。例えば、一つの畝に異なる種類の作物を植栽する場合には、作物の種類に応じてそれぞれ適切な間隔で肥料を配置すれば良い。
【0059】
畝内への初期肥料の配置の手順としては、例えば以下のような方法が利用可能である。
(1)畝立て前に、畝内となるべき位置に肥料を散布する。
(2)畝立て後に、畝内に肥料を散布する。なお、この場合には、肥料が生育土壌表面に露出したままとせず、肥料の上にさらに土をかぶせたり、生育土壌の一部(畝の両側部分)と肥料とを混合したり、畝にマルチをかぶせたりすることが好ましい。
【0060】
あるいは、これらの方法を組み合わせても良い。
【0061】
本実施形態における生育初期の作物の作物植栽位置は、前記肥料配置がされる列と列の略中央である。
<実施形態3:効果>
【0062】
本実施形態の作物の生育方法により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
【0063】
さらに、本実施形態の作物の生育方法により、畝の両側だけでなく、条間(植栽された作物の列の間)にも、初期肥料が配置できる。これにより、生育初期を終えて、根が初期肥料配置位置に到達する程度に成長した際、肥料配置位置が作物の両側に存在することにより、肥料の吸収が高くなる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>
【0064】
本実施形態の作物の生育方法は、実施形態1から3までのいずれか一を基本としつつ、さらに、前記生育初期の作物の作物植栽位置の生育土壌中に、前作の残肥料又は/及びわずかな肥料が含まれるようにした点に特徴を有する。
【0065】
「前作の残肥料」は、通常の農業で、生育土壌内に残存することとなる程度の肥料をいう。「わずかな」肥料とは、前作の残肥料と同程度とする趣旨である。
<実施形態4:効果>
【0066】
本実施形態の作物の生育方法のように、生育土壌中に、前作の残肥料又は/及びわずかな肥料が含まれていることにより、根の発根が促される。
<<実施例>>
【0067】
実施形態4の作物の生育方法により、ソラマメ、スナップエンドウ及びオクラを栽培した結果は以下のとおりである。
調査期日:平成18年から平成22年
場所 :自社圃場及び近隣圃場(鹿児島県内)
調査方法:調査項目それぞれについて、目視により状態の良い区を100指数とし、対照区との比較をして評価した。なお、実証区は実施形態4の作物の生育方法を行った区であり、慣行区は従前の作物の生育方法(全面施肥または深層施肥、詳細は後述する。)を行った区である。なお、慣行区の評価は、自社圃場の近隣(半径3キロメートル圏内)の圃場約20箇所の平均的な状態を観察したものである。
【表1】

【0068】
表1のように、いずれの項目においても、実施形態4の作物の生育方法を行った実証区の方が慣行区よりも状態が良かった。また、上記の各調査項目の指数を平均した平均指数で35の差が示されたことから、対照区である慣行区とは一定の誤差範囲を超えて優れた状態となっているといえる。以下、各作物について、より詳細に述べる。
<実施例1:ソラマメ>
【0069】
実施形態4の作物の生育方法により、「ソラマメ」を栽培した結果は次のとおりである。比較のために、実証区において、本実施例の作物の生育方法によりソラマメを栽培し、慣行区において、従前の作物の生育方法により、ソラマメを栽培した。植付け時期は9月上旬である。以下、実証区、慣行区のそれぞれの肥料配置について説明する。まず、いずれの区についても、生育土壌中に前作の残肥料が含まれている。次に、実証区においては、図11(a)のように、初期肥料(1103)配置位置が、畝(1101)の両側の連続的な二列であり、生育初期の作物(1102)の作物植栽位置が、この畝の略中央であるようにした。畝幅αは概ね70センチメートル、畝高さβは概ね20センチメートル、初期肥料配置位置と作物植栽位置との横方向の間隔γ1は概ね25センチメートルである。他方、慣行区においては、図11(b)のように、作物の植付直下に初期肥料が配置されるようにした。畝幅αは概ね50センチメートル、畝高さβは概ね25センチメートル、初期肥料配置位置と畝上面との間隔γ2は概ね15センチメートルである。なお、実証区、慣行区とも露地栽培であり、実証区、慣行区とも数回程度の追肥を畝の外に行った。
【0070】
生育中期のソラマメを比較した場合、次の表2のような観察結果が得られた。また、図12Aは、実証区及び慣行区のソラマメを栽培している圃場の撮影写真であり、以下の観察結果を確認できる。図12Aで示した写真の撮影時期は、11月下旬である。なお、本図面をカラーで出力したものを、参考資料として物件提出する。
【表2】

<実施例2:スナップエンドウ>
【0071】
実施形態4の作物の生育方法により、「スナップエンドウ」を栽培した結果は次のとおりである。比較のために、実証区において、本実施例の作物の生育方法によりスナップエンドウを栽培し、慣行区において、従前の作物の生育方法により、スナップエンドウを栽培した。植付け時期は9月上旬である。以下、実証区、慣行区のそれぞれの肥料配置について説明する。まず、いずれの区についても、生育土壌中に前作の残肥料が含まれている。次に、実証区においては、図11(a)のように、初期肥料(1103)配置位置が、畝(1101)の両側の連続的な二列であり、生育初期の作物(1102)の作物植栽位置が、この畝の略中央であるようにした。畝幅αは概ね70センチメートル、畝高さβは概ね20センチメートル、初期肥料配置位置と作物植栽位置との横方向の間隔γ1は概ね25センチメートルである。他方、慣行区においては、図11(b)のように、作物の植付直下に初期肥料が配置されるようにした。畝幅αは概ね50センチメートル、畝高さβは概ね25センチメートル、初期肥料配置位置と畝上面との間隔γ2は概ね15センチメートルである。なお、実証区、慣行区とも露地栽培である。後述する図12Bの実証区の写真には、ビニールハウスが写っているが、ビニールをかぶせない状態で栽培(露地栽培)を行ったものである。また、実証区、慣行区とも数回程度の追肥を畝の外に行った。
【0072】
生育中期(収穫最盛期)のスナップエンドウを比較した場合、次の表3のような観察結果が得られた。また、図12Bは、実証区及び慣行区のスナップエンドウを栽培している圃場の撮影写真であり、以下の観察結果を確認できる。図12Bで示した写真の撮影時期は、1月中旬である。なお、本図面をカラーで出力したものを、参考資料として物件提出する。
【表3】

<実施例3:オクラ>
【0073】
実施形態4の作物の生育方法により、「オクラ」を栽培した結果は次のとおりである。比較のために、実証区において、本実施例の作物の生育方法によりオクラを栽培し、慣行区において、従前の作物の生育方法により、オクラを栽培した。植付け時期は2月中下旬である。以下、実証区、慣行区のそれぞれの肥料配置について説明する。まず、いずれの区についても、生育土壌中に前作の残肥料が含まれている。次に、実証区においては、生育初期の作物(オクラ)に対して、生育土壌の、この作物植栽位置から横に離隔する位置に初期肥料を配置し、少なくとも作物(オクラ)が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難となるようにした。具体的には、図11(c)のように、初期肥料配置位置が、畝の両側の連続的な二列とし、畝幅αは概ね70センチメートル、畝高さβは概ね15センチメートル、初期肥料配置位置と作物植栽位置との横方向の間隔γ1は概ね20センチメートルとして、この畝にオクラを二条植えした。他方、慣行区においては、図11(d)のように、畝となるべき部分の生育土壌と肥料を混ぜあわせて畝立てを行う全面施肥とした。畝幅は概ね55センチメートル、畝高さは概ね15センチメートルであり、この畝にオクラを二条植えした。なお、実証区、慣行区ともハウス栽培である。また、数回程度の追肥を、実証区では畝の外に、慣行区では畝内に行った。
【0074】
生育中期のオクラを比較した場合、次の表4のような観察結果が得られた。また、図12Cは、実証区及び慣行区のオクラを栽培している圃場の撮影写真であり、以下の観察結果を確認できる。図12Cで示した写真の撮影時期は、6月中旬である。なお、本図面をカラーで出力したものを、参考資料として物件提出する。
【表4】

<<実施形態5>>
<実施形態5:概要>
【0075】
本実施形態の農業機械は、実施形態1から4のいずれか一に記載の作物の生育方法に利用可能な農業機械である。本実施形態の農業機械は、肥料を同時に所定の間隔で複数列に配置する肥料配置部を有する点に特徴がある。
<実施形態5:構成>
【0076】
図4は本実施形態の農業機械の一例を示す模式図である。
【0077】
「農業機械」は、農業に利用される機械をいい、肥料や農薬等の散布機(土壌消毒機等)、畝立機、被覆機、耕耘機等を含むとともに、耕耘機等に組み合わせて利用可能な肥料散布機など、独立して利用される機械だけでなく、組み合わせ可能な個々の機械を含む。
【0078】
本実施形態の「農業機械」は、肥料を作物の生育土壌に配置するために用いられる。なお、配置するための肥料の運搬が容易となるように、農業機械は車輪を備えていると良い。さらに、エンジン等の内燃機関やバッテリーを動力としていてもよいし、人が乗用して運転する乗用型であっても、人が歩行しつつ手押しして操作する手押型であってもよい。
【0079】
また、本実施形態の農業機械は、肥料配置部を有する。
【0080】
「肥料配置部」は、肥料を同時に所定の間隔で複数列に連続的又は断続的に配置する機能を有する。例えば、肥料を蓄える施肥ホッパ(0401)と、施肥ホッパから肥料を誘導して生育土壌に対して肥料を落下させる肥料排出管(0402)とからなるといった具合である。
【0081】
「所定の間隔」とは、実施形態1から4において説明したような位置関係で肥料を配置可能となるような間隔をいう。また、「同時に」とは所定の間隔で複数列にわたり一度に配置可能であるとの趣旨である。ただし、「複数列」は二列以上をいい、三列以上に配置すべき場合に、まず二列にわたり配置し、次に一列を配置するといったように、配置すべき位置に数回にわたって配置をおこなうこととしても良い。以下、施肥ホッパと肥料排出管の具体的な構成について、図9Aを用いて説明する。
【0082】
図9Aは、本実施形態の施肥ホッパと肥料排出管の構成の一例を示す図である。施肥ホッパに収容された肥料は、施肥ホッパの底部から肥料排出管(肥料面状排出管の場合もある。以下「肥料排出管等」という。)に誘導され、肥料排出管等の肥料排出口から、生育土壌に落下する。所定の間隔で肥料を配置するには、例えば、図9A(a)のように、複数の施肥ホッパ(0901、0901、0901)にそれぞれ1本の肥料排出管(0904、0904、0904)等が結合しており、これらの肥料排出管等の肥料排出口が所定の間隔で配置されていればよい。あるいは、図9A(b)のように、1つの施肥ホッパ(0901)に複数の肥料排出管(0904、0904、0904)等が結合しており、これらの肥料排出管等の肥料排出口が所定の間隔で配置されていればよい。
【0083】
施肥ホッパの構造については、特に限定されないが、例えば、図9C(d)のように、複数の施肥ホッパ(0901、0901、0901)を容器固着ベルト(0902)で固着させてそれぞれに異なる種類の肥料を収容可能としてもよい。あるいは、図9C(f)のように、施肥ホッパ(0901)内部が間仕切り板(0903、0903)によって直列に仕切られており、仕切られたそれぞれの空間に異なる種類の肥料を収容可能としてもよい。あるいは、図9(e)のように間仕切り(0903、0903)が田の字状になっていてもよいし、図9(g)のように間仕切り(0903、0903)が丸十字状になっていてもよい。これらの場合には、複数の異なる種類の肥料を施肥ホッパ内に収容可能とすることができる。なお、ここでは図示されていないが、施肥ホッパの底部は、肥料排出管等とつながっている。肥料排出管等に誘導された肥料は、肥料排出口から生育土壌に落下するが、異なる種類の肥料を収容したそれぞれの施肥ホッパ(または間仕切りされたそれぞれの空間)とつながるそれぞれの肥料排出管等から、異なる種類の肥料を同時に生育土壌に配置可能となるので、作業効率が向上する。
【0084】
肥料排出管は、施肥ホッパから肥料の供給を受ける側と肥料を排出する側とに開口を有する管状の部材であれば、特に形状を問わない。ただし、肥料排出管が曲がっている場合には、肥料の排出時に管内に肥料詰まりが起こらないように、曲がっている部分は、曲率半径の大きな、緩やかなカーブによって形成されていることが好ましい。
<実施形態5:効果>
【0085】
本実施形態の農業機械により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
<<実施形態6>>
<実施形態6:概要>
【0086】
本実施形態の農業機械は、実施形態5を基本としつつ、さらに、肥料が配置される所定の間隔を調節可能となるよう調節部を有していることを特徴とする。作物の種類に応じて生育状況が異なるので、作物が成長するまでは根が初期肥料配置位置に到達困難となるような初期肥料配置位置も、作物の種類により異なる。そこで、様々な作物を植える生育土壌に対しても利用可能となるように、肥料配置部は、以下に説明するように肥料が配置される所定の間隔を調節する調節部をさらに有していると良い。
<実施形態6:構成>
【0087】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部を備え、さらに、肥料配置部は、調節部を有する。調節部による調節は、例えば、肥料排出口から落下する肥料の間隔を以下の構成により調整することにより実現できる。
(調節部の構成の一例)
【0088】
図5は、「調節部」の構成の一例について説明するための図である。図5(a)(b)を用いて、調節部の一例である肥料拡散板によって肥料の間隔を調整する場合について説明する。調節部は、例えば、施肥ホッパ(0501)から供給された肥料を排出する肥料排出管(0502)内部の肥料排出口付近そなえられた肥料拡散板(0503)であってもよい。肥料拡散板は、V字の上側が管口側となるように備えられた逆V字形であって、V字が広くなったり狭くなったりする可動式である。肥料排出管を通る肥料は、肥料拡散板によって二股に分かれて排出されることになる。この図5(a)のように肥料拡散板のV字が広ければ、肥料排出口から生育土壌に落下した肥料(0504)の間隔も広い。一方、図5(b)のように肥料拡散口のV字が狭ければ、肥料排出口から生育土壌に落下した肥料(0504)の間隔も狭い。なお、さらに肥料排出管と施肥ホッパとの結合部付近を回動可能としてもよい。この場合は、例えば、実施形態3において説明した二条植えの場合に畝の両側に肥料を配置した後に、畝の中央に一列に筋状に肥料を配置したい場合にも、同じ農業機械を利用可能となる。
【0089】
次に、図5(c)(d)を用いて、調節部の構成の他の一例について説明する。この図のように、施肥ホッパ(0501)から供給された肥料を排出する肥料排出管は、回動自在の2つの拡散筒(0505、0505)で構成されていてもよい。なお、この図では、0506で示した部分が回動自在に構成されている。なお、拡散筒の各筒口が、本実施形態の肥料排出口に当たることとなる。そして、図5(c)のように、拡散筒が農業機械の進行方向に対して横向きになっていれば、生育土壌に落下した肥料(0504)の間隔も広い。一方、拡散筒が徐々に縦向きとなるよう回動され、図5(d)の状態まで回動させると、生育土壌に落下した肥料(0504)の間隔も狭くなる。なお、さらに回動させて、拡散筒の筒口が農業機械の進行方向に対して直線的に配置されるようにすれば、肥料を一列に筋状に落下させることもできる。この場合は、例えば、実施形態3において説明した二条植えの場合に畝の両側に肥料を配置した後に、畝の中央に一列に筋状に肥料を配置したい場合にも、同じ農業機械を利用可能となる。
【0090】
拡散筒は、施肥ホッパから肥料の供給を受ける側と肥料を排出する側とに開口を有する管状の部材であれば、特に形状を問わない。ただし、拡散筒が曲がっている場合には、肥料の排出時に管内に肥料詰まりが起こらないように、曲がっている部分は、曲率半径の大きな、緩やかなカーブによって形成されていることが好ましい。例えば、図5(c)(d)のように拡散筒(0505、0505)がL字状のL字状拡散筒であってもよい。この場合には、拡散筒の各筒口の間の間隔を広く構成する場合にも、L字の横棒部分を長く構成すれば足り、L字状拡散筒の縦方向の長さは比較的短くできるので、施肥ホッパを低い位置に取り付けても、拡散筒の筒口と生育土壌とが接触してしまうおそれが小さい。あるいは、図5(e)のように、2つの拡散筒の間の空間がV字状に空いていてもよい。この場合は、施肥ホッパの下にPTO軸(0507)があるような位置関係となる場合にも、拡散筒(0505、0505)がPTO軸(0507)と接触するおそれが小さい。さらに、図5(f)のように、拡散筒は、それぞれS字状のカーブを描いており、2つの拡散筒の間の空間が丸みをおびた形状となっていてもよい。この場合は、施肥ホッパの下にPTO軸があるような位置関係となる場合、施肥ホッパとPTO軸との距離が近くとも、拡散筒(0505、0505)がPTO軸(0507)と接触するおそれがさらに小さい。
<実施形態6:効果>
【0091】
本実施形態の農業機械により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
【0092】
さらに、調節部を備えることにより、様々な種類の作物を植栽する生育土壌に対して、本実施形態の農業機械を利用可能となるので、汎用性が増す。
<<実施形態7>>
<実施形態7:概要>
【0093】
本実施形態の農業機械は、実施形態6を基本としつつ、さらに、調節部による肥料の間隔の調整を、肥料排出口の間隔を変更する間隔変更機構により行うことを特徴とする。
<実施形態7:構成>
【0094】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部を備え、さらに、肥料配置部は、調節部を有する。調節部は、さらに、肥料排出管と、間隔変更機構とからなっている。図9Bは、肥料排出管と間隔変更機構との構成の一例を示す図である。この図には、肥料排出管(0904)と、間隔変更機構に該当する支持棒(0905)及び支持バンド(0906)が図示されている。
【0095】
「肥料排出管」は、生育土壌に対して肥料を落下させる機能を有する。材質は金属、合成樹脂など特に限定されないし、複数の素材が組み合わせられていても良い。
【0096】
間隔変更機構は、肥料排出管の肥料排出口の間隔を変更するための機構である。例えば、肥料排出管をゴムホース状の柔らかい管で構成し、複数の肥料排出管(0904、0904、0904)が支持棒(0905)に支持バンド(0906)で所定の間隔に固定したり、取り外したりできるように構成することにより、この支持バンドによる固定位置を変更して肥料排出口の間隔を変更することができる。
<実施形態7:効果>
【0097】
本実施形態の農業機械により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができるとともに、間隔変更機構によって、肥料排出管の肥料排出口の間隔を変更することができる。これにより、様々な種類の作物を植栽する生育土壌に対して、本実施形態の農業機械を利用可能となるので、汎用性が増す。
<<実施形態8>>
<実施形態8:概要>
【0098】
本実施形態の農業機械は、実施形態6を基本としつつ、さらに、調節部による肥料の間隔の調整を、肥料面状排出管と、分布板とにより行うことを特徴とする。本実施形態の農業機械は、特に、生育土壌が畝である場合に、この畝に対して肥料を配置する際に用いられるべきものである。
<実施形態8:構成>
【0099】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部を備え、さらに、肥料配置部は、調節部を有する。調節部は、さらに、肥料面状排出管と、分布板とからなる。肥料面状排出管と分布板とによる肥料の配置の様子を説明するため、ここで再び図3(e)及び(f)を参照する。この図には、肥料面状排出管(0306)と、分布板(0305)とが示されている。
【0100】
「肥料面状排出管」(0306)は、生育土壌に対して肥料を面状に落下させる機能を有する。面状とは、畝幅方向にある程度の広がりをもって散布されるとの趣旨である。面状に散布されることで、後述する分布板によって肥料が左右に分布されることとなる。肥料面状排出管は、例えば、肥料排出管の管口部分が扇形に広がっていても良いし、複数の肥料排出管によって構成されていても良い。例えば、図3(e)では、2本の肥料排出管によって肥料面状排出管が構成されている。また「面状」は、面状に均一に散布される場合だけでなく、複数の筋状に散布されることによって、面状に散布することとしても良い。
【0101】
「分布板」(0305)は、肥料面状排出管から生育土壌に対して落下した肥料を所定の間隔を隔てて分布させる機能を有する。分布板は、畝立作業において、畝の上面を均すための成形板と兼用であってもよい。分布板は、進行方向に向かって逆V字形としてもよく、畝の上面に対して面状に落下した肥料は、畝上面の余分な生育土壌とともに、V字の中央部分で左右に分けられて、畝の両側へ落下することとなる。この場合には、畝の形成と肥料の散布とを同時に行うことができて、作業が効率化される。また、肥料が畝の両側に生育土壌とともに落下する際に、肥料と生育土壌とが混合するので、畝立て後に、肥料に土をかぶせたり、マルチで覆ったりしなくとも良いので、作業が効率化される。ただし、後述する肥料被覆機構によって、さらに肥料を覆うこととし、肥料が雨などで、より流されにくくなるようにしていても良い。
【0102】
図8は、分布板の一例である。形成されるまたは形成されている畝の幅や高さに応じて、分布板の幅や分布板の取り付け高さが調節可能であることが好ましい。例えば、分布板(0801)は、必要に応じて拡張板(0802)をスライドさせることにより分布板の幅を調節可能であるとか、0803の部分で取付高さを調節可能であるといった具合である。作物の種類や土壌の状態によって適切な畝幅や高さが異なるので、分布板の幅や分布板の取り付け高さが調節可能であれば、さまざまな作物、土壌に対して、本実施形態の農業機械を利用可能となる。
<実施形態8:効果>
【0103】
本実施形態の農業機械により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。さらに、分布板によって肥料が畝の両側に分けられ、生育土壌とともに落下する際に、肥料と生育土壌とが混合しながら、畝の両側に、畝の上から下まで鉛直方向に長い領域に、肥料が広く分布するので、成長した作物の根が広く肥料に取り付き易くなる。
<<実施形態9>>
<実施形態9:概要>
【0104】
本実施形態の農業機械は、実施形態6から8のいずれか一を基本としつつ、肥料配置部によって配置された肥料が生育土壌表面に露出しないように土で覆うための肥料被覆機構をさらに有する点に特徴を有する。肥料被覆機構を備えることにより、肥料が生育土壌表面に露出したままとせず、生育土壌の土の一部によって覆うことができる。これにより、肥料が雨などで流されてしまい、肥料が無駄になったり、水質が悪化したりするおそれが減少する。
<実施形態9:構成>
【0105】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部と、肥料被覆機構を有する。
【0106】
「肥料被覆機構」は、肥料配置部にて所定の間隔で複数列に連続的または断続的に配置された肥料を生育土壌の土の一部を削って覆う機能を有する。
【0107】
図4を参照して、肥料が生育土壌の土の一部によって覆われる様子について説明する。後述する内側利用機構(0405)によって削られた生育土壌の土の一部は畝の両側に落下するので、畝の両側に配置された肥料(0406)の上を覆土A(0407a)で覆うことができる。さらに、円盤(0408)によって畝の外側の土の一部を削って、肥料の上をさらに覆土B(0407b)で覆うことができる。これらの内側利用機構や、円盤が肥料被覆機構に該当する。
【0108】
なお、この円盤は、畝の外側の土の一部を削るのではなく、内側利用機構によって畝の両側に落とされた土を畝内側に寄せる機能を有している場合もある。この場合には、内側利用機構と協働することにより、畝の両側に落とされた土が、肥料の上を確実に覆うようにすることができる。
【0109】
なお、これらに加えて、さらに確実に肥料の雨等による流出を防止するために、ロール状のマルチ等の被覆材(0409)によって畝を覆うための被覆材被覆機構を備えていても良い。この場合に、前述した円盤により、被覆材の上に土をかぶせることとすれば、被覆材がめくれるおそれがないので、好ましい。
<実施形態9:効果>
【0110】
本実施形態の農業機械により、配置された肥料が生育土壌表面に露出したままとせず、生育土壌の土の一部によって覆うことができる。
<<実施形態10>>
<実施形態10:概要>
【0111】
本実施形態の農業機械は、実施形態9を基本としつつ、さらに、肥料被覆機構は、前記複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列外側の生育土壌の土の一部を削って畝とする外側利用機構である点に特徴を有する。
<実施形態10:構成>
【0112】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部と、肥料被覆機構を有する。さらに、肥料被覆機構は、外側利用機構である。
【0113】
図6は、外側利用機構による肥料被覆の様子を説明するための図である。
【0114】
まず、図6(a)のように、肥料配置部(0603)により、生育土壌(0601)に対して、肥料(0602)を複数列に連続的または断続的に配置する。その後、畝形成のために、畝の外側となる部分の生育土壌の土の一部を削って、畝の内側となる部分に盛り上げることにより、畝を形成する。「外側利用機構」は、生育土壌の畝の外側となる部分の生育土壌の土の一部を削って、畝の内側となる部分に盛り上げるための機構であり、この図では、ロータリー羽根(0604)がこれに当たる。
【0115】
図4を参照する。外側利用機構の一例であるロータリー羽根(0403)によって削られた生育土壌の土の一部は畝立板(0404)によって畝の形状に形成されることとなる。このように、肥料の配置、畝の形成、肥料の覆土を一度に行うことができ、作業効率が良い。
<実施形態10:効果>
【0116】
本実施形態の農業機械により、配置された肥料が生育土壌表面に露出したままとせず、生育土壌の土の一部によって覆うことができる。また、肥料の配置、畝の形成、肥料の覆土を一度に行うことができ、作業効率が良い。
<<実施形態11>>
<実施形態11:概要>
【0117】
本実施形態の農業機械は、実施形態9を基本としつつ、さらに、肥料被覆機構は、前記内側の生育土壌の土の一部を削る内側利用機構である点に特徴を有する。
<実施形態11:構成>
【0118】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部と、肥料被覆機構を有する。さらに、肥料被覆機構は、内側利用機構である。内側利用機構の働きを、図7を用いて説明する。
【0119】
図7のように、筋状に盛り上げられた畝(0701)の両側部分に肥料(0702)を配置する。その後、畝の上面となる部分の生育土壌の土の一部を、内側利用機構(0703)によって削って両側に落とすことにより、肥料の上を土で覆うことができる。このように、「内側利用機構」は、複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列内側部分の生育土壌の土の一部を削って肥料を被覆するための機構である。なお、前述した分布板と兼用することも可能である。
【0120】
なお、前述のとおり、内側利用機構によって畝の両側に落とされた土を畝の両側に寄せるための円盤(0704)をさらに備えていても良い。
<実施形態11:効果>
【0121】
本実施形態の農業機械により、配置された肥料が生育土壌表面に露出したままとせず、生育土壌の土の一部によって覆うことができる。さらに、分布板と内側利用機構とを兼用する場合には、肥料と生育土壌とが混合された状態で畝の両側に肥料を配置することができる。また、畝の形成のために上面をならす際に、肥料の覆土を一度に行うことができ、作業効率が良い。
<<実施形態12>>
<実施形態12:概要>
【0122】
本実施形態の農業機械は、実施形態10及び11に記載の内側利用機構及び外側利用機構の双方を備え、複数の肥料配置方法を併用可能であることを特徴とする。
【0123】
図10は、本実施形態の農業機械の一例を示す部分図である。この図では、農業機械の後部タイヤ(1014)よりも後部分が図示されている。肥料を収容した施肥ホッパ(1001)はホッパ架台(1002)によって、農業機械本体に取り付けられている。そして、施肥ホッパ内の肥料を誘導する肥料排出管は、外側利用機構の一例であるロータリー羽根(1003)の前後に二股に分かれている。2本の肥料排出管のうち、進行方向前側のものを前側肥料排出管(1004a)、後側のものを後側肥料排出管(1004b)と呼ぶ。
【0124】
まず、前側肥料排出管の肥料排出口から、肥料A(1005a)が生育土壌に落下する。そして、外側利用機構の一例であるロータリー羽根(1003)が畝の外側の生育土壌の土の一部を削って畝の内側に盛り上げることにより、肥料Aの上に畝が形成される。
【0125】
次に、後側肥料排出管の肥料排出口から、肥料B(1005b)が生育土壌に落下する。そして、内側利用機構(1006)が畝上面の生育土壌の土の一部を削って畝の両側に落下させることにより、肥料Bが土で覆われる。
【0126】
なお、この図には、外側利用機構の一例であるロータリー羽根(1003)の駆動用に動力の一部を取り出すための装置として、PTO軸(1010)、チェーンボックス(1011)も図示されている。また、肥料排出管の排出口付近を固定するための支持棒(1012)、支持バンド(1013)も図示されている。
【0127】
肥料配置方法を複数併用することで、肥料配置位置毎に肥料の種類、量などを細かく調整することができる。
<実施形態12:効果>
【0128】
本実施形態の農業機械により、局所施肥を適切な位置に容易に行うことができる。
<<実施形態13>>
<実施形態13:概要>
【0129】
本実施形態は、実施形態5又は6を基本とし、まず生育土壌に溝を掘り、そこに肥料を配置し、さらに土を覆うことにより肥料が雨水等により流出することを防止するものである。これにより、適切な箇所に配置された肥料が当該箇所に止まり、肥料を無駄にすることのない施肥をすることができる。
<実施形態13:構成>
【0130】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部が、側方案内鋤手段と、第一肥料排出口と、覆土手段とを有する。図13は、本実施形態の肥料配置部の一例を示す概念図である。図13(a)は当該肥料配置部を上方から見た図であり、図13(b)は当該肥料配置部を側方から見た図である。図中の白抜き矢印は、農業機械の進行方向を示す。
【0131】
「側方案内鋤手段」(1301)は、肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の側方へ案内する機能を有する。図示するように上方からみると進行方向に切っ先を向けた楔状の形状を有している。このように構成することにより、土を削り溝を掘りつつ、掘った土(1304)を図中一点鎖線で示すように側方に案内することができる。
【0132】
図13(b)に示すように、側方案内鋤手段の切っ先の下端を、湾曲させつつ進行方向へ突き出すように形成してもよい。このように形成することにより、土を効果的に削り掘ることが容易になるとともに、側方への案内も効果的に行い得る。
【0133】
「第一肥料排出口」(1302)は、側方案内鋤手段に設けられ、掘った溝に肥料を落下させる機能を有する。図示するように側方案内鋤手段により掘られた溝(1306)に肥料(1305)が落下される。図では、農業機械が側方案内鋤手段を保持するための管状部材の管内を経由して肥料が排出されるように構成しているが、該管状部材と別個の部材を用いて排出し得るように構成してもよい。
【0134】
「覆土手段」(1303)は、側方案内鋤手段により側方へ案内された土を配置された肥料に被せるための機能を有する。覆土手段は、例えば、回転自在に取り付けられた円盤などにより具現される。円盤を進行方向に対して傾きをもって取り付けることにより、側方案内鋤手段により一旦側方へ案内された土を再び溝の方向へ案内することができ、その結果、溝に配置された肥料を覆うことができる。また、円盤は、図示したように椀状に湾曲していることが好ましい。側方案内鋤手段により案内された土を椀の内側で受けるように配置することで、受けた土を効率よく案内することができる。また、円盤は必ずしも回転自在でなくともよい。
<実施形態13:効果>
【0135】
本実施形態の農業機械により、配置した肥料が雨水などにより流出することを防止することができ、適正箇所に配置された肥料を止めておくことが可能となる。
<<実施形態14>>
<実施形態14:概要>
【0136】
本実施形態は、実施形態5又は6を基本とし、溝を掘った土を用いて配置された肥料を覆うことで、肥料が雨水等により流出することを防止するものである。とくに、溝を掘る機能と掘った土を覆う機能とを一体的に実現することに特徴を有する。
<実施形態14:構成>
【0137】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部が、第二肥料排出口を有する後方案内鋤手段を有する。図14は、本実施形態の肥料配置部の一例を示す概念図である。図14(a)は当該肥料配置部の斜視図であり、図14(b)は当該肥料配置部を側方から見た図である。図中の白抜き矢印は、農業機械の進行方向を示す。
【0138】
「後方案内鋤手段」(1401)は、肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の後方端から落下させる機能を有するとともに、第二肥料排出口を有する。図示するように、後方案内鋤手段は、進行方向側の端部から上方へ傾斜する背面(1403)を経て後方端にて切り落とされたような形状を有している。進行方向が端部には、硬い土壌や石混じりの土壌であっても溝を掘れるように鋤歯(1404)を備えていてもよい。進行方向に対する両側面は該背面よりも高くなるように形成される。そして、背面において後方端に至る手前の箇所にて、農業機械が後方案内鋤手段を保持するための管状部材(1402)と接合される。
【0139】
「第二肥料排出口」は、後方案内鋤手段に設けられ、後方端から落下させられる土により覆土されるように掘った溝に肥料を落下させる機能を有する。図中では、上記の管状部材を経由して肥料が排出されるように構成しているが、該管状部材と別個の部材を用いて排出し得るように構成してもよい。
【0140】
掘った土の案内と肥料の配置について、とくに図14(b)を用いて説明する。農業機械が図中白抜き矢印で示される進行方向に進む場合、後方案内鋤手段の進行方向側の端部により削られて掘られた土(1406)は、図中破線矢印(1405)で示されるように背面(1403)へ案内されるとともに、背面より高い両側面の作用により側方へ落下することなく後方端から落下する。ここで、後方端より進行方向側に位置する第二肥料排出口の機能を果たす管状部材(1402)から落下される肥料(1407)は、後方端から土が落下する前に溝に配置されることになる。そして、肥料が配置された溝の上に後方端から落下した土が被さり、溝に配置された肥料は土(1408)に覆われることになり、雨水などにより流出してしまうことが防止できる。
【0141】
なお、背面に案内された土が側方へ落下しないように側面を背面より高く構成しているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、進行方向と平行な方向に沿って平面の央部をくぼませるなどして土が両側方へ行きにくいように構成すればよい。
<実施形態14:効果>
【0142】
本実施形態の農業機械により、別途覆土のための手段を講じることなく、溝に配置された肥料に土を被せることができる。
<<実施形態15>>
<実施形態15:概要>
【0143】
本実施形態は、実施形態13又は14を基本とし、肥料を配置するために掘る溝の深さを調整することが可能な農業機械に関する。
<実施形態15:構成>
【0144】
本実施形態の農業機械は、肥料配置部が、肥料を配置するために掘る溝の深さを調整するための深浅調整手段を有する。図15は、本実施形態の肥料配置部の一例を示す概念図である。この例の肥料配置部は、実施形態14の後方案内鋤手段を有するものである。
【0145】
図15において、後方案内鋤手段(1501)に接合される管状部材(1502)は、上下の位置を調整するための部材(1503)と左右の位置を調整するための部材(1505)とともに、農業機械本体に固定されている角柱部材(1504)に取り付けられ、ネジにより固定される。これらの各部材の協働により、肥料を配置するために掘られる溝の深さを調整するための深浅調整手段が具現される。
<実施形態15:効果>
【0146】
本実施形態の農業機械により、肥料を配置するための溝を所望の深さにすることが可能となる。
<<実施形態16>>
<実施形態16:概要>
【0147】
本実施形態は、実施形態5から実施形態15のいずれか一を基本とし、肥料が配置される複数列の央部に、作物植栽又は種まきのための土壌の掘り起こしや畝立をも行う農業機械である。また、苗を配置したり種をまくことをも行う農業機械である。
<実施形態16:構成>
【0148】
本実施形態の農業機械は、作物植栽又は種まきのための土壌掘起又は畝作りをする耕作部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こし又は積み上げをするために設けられている。
【0149】
耕作部の機能は、例えば、公知の耕耘機やトラクターなどが有する耕耘や畝立を行う機能により実現し得る。このような耕作部を有することにより、畝などの生育土壌をつくることができるとともに、生育土壌の位置と肥料を配置する位置との関係を所望かつ好適に整えることができる。
【0150】
また、農業機械は、苗配置部を設けてもよい。苗配置部は苗を配置するために肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをする。また、苗配置部に替えて種まき部を設けてもよく、種まき部は種をまくために肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをする。
<実施形態16:効果>
【0151】
本実施形態の農業機械により、土壌の掘り起こしや畝立から苗の配置や種まきなどの作物植栽に関わる作業を、配置される肥料と適正な位置において行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】実施形態1の作物の生育方法の初期肥料配置位置を説明するための図
【図2A】実施形態2の作物の生育方法を説明する図
【図2B】実施形態3の作物の生育方法を説明する図
【図3】畝の両側への初期肥料の配置の手順を説明するための図
【図4】実施形態5の農業機械の一例を示す模式図
【図5】調節部の構成の一例を説明するための図
【図6】外側利用機構による肥料被覆の様子を説明するための図
【図7】内側利用機構の働きを説明するための図
【図8】分布板の一例を示す図
【図9A】施肥ホッパと肥料排出管の具体的な構成の一例を示す図
【図9B】肥料排出管と間隔変更機構との構成の一例を示す図
【図9C】施肥ホッパの一例を示す図
【図10】実施形態12の農業機械の一例を示す部分図
【図11】実施例1の肥料の配置位置を説明するための図
【図12A】実施例1のソラマメの生育結果を対比するための図
【図12B】実施例2のスナップエンドウの生育結果を対比するための図
【図12C】実施例3のオクラの生育結果を対比するための図
【図13】実施形態13の肥料配置部の一例を示す概念図
【図14】実施形態14の肥料配置部の一例を示す概念図
【図15】実施形態15の肥料配置部の一例を示す概念図
【符号の説明】
【0153】
生育土壌 0101、0601
生育初期の作物 0102a、0202、1102
成長した作物 0102b
初期肥料 0103、0203、1103
畝 0201、0301、0701、1101
畝の両側 0204
肥料 0303、0406、0504、0602、0702
肥料排出口 0304
肥料面状排出管 0306
分布板 0305、0801
施肥ホッパ 0401、0501、0901、1001
肥料排出管 0402、0502、0904
ロータリー羽根 0403、0604、1003
畝立板 0404
覆土A 0407a
覆土B 0407b
肥料拡散板 0503
拡散筒 0505
肥料配置部 0603
内側利用機構 0405、0703、1006
円盤 0408、0704
被覆材 0409
拡張板 0802
容器固着ベルト 0902
間仕切り板 0903
支持棒 0905、1012
支持バンド 0906、1013
後部タイヤ 1014
ホッパ架台 1002
前側肥料排出管 1004a
後側肥料排出管 1004b
肥料A 1005a
肥料B 1005b
PTO軸 0507、1010
チェーンボックス 1011

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生育初期の作物に対して、
生育土壌の、この作物植栽位置から横に離隔する位置に初期肥料を配置し、
少なくとも作物が成長するまでは、根が初期肥料配置位置に到達困難とする
作物の生育方法。
【請求項2】
生育土壌は畝であり、
前記初期肥料配置位置は、前記畝の両側の連続的又は断続的な二列であり、
前記生育初期の作物の作物植栽位置は、前記畝の略中央である
請求項1に記載の作物の生育方法。
【請求項3】
生育土壌は畝であり、
前記初期肥料配置位置は、
前記畝の両側と畝内の連続的又は断続的な複数列であり、
前記生育初期の作物の作物植栽位置は、
前記肥料配置がされる列と列の略中央である
請求項1に記載の作物の生育方法。
【請求項4】
前記生育初期の作物の作物植栽位置の生育土壌中に、前作の残肥料又は/及びわずかな肥料が含まれるようにした請求項1から3のいずれか一に記載の作物の生育方法。
【請求項5】
肥料を作物の生育土壌に配置するための農業機械であって、
肥料を同時に所定の間隔で複数列に連続的又は断続的に配置する肥料配置部を
有する農業機械。
【請求項6】
前記肥料配置部は、
前記所定の間隔を調節する調節部を有する請求項5に記載の農業機械。
【請求項7】
前記調節部は、
生育土壌に対して肥料を落下させる肥料排出管と、
肥料排出管の肥料排出口の間隔を変更する間隔変更機構と、
からなる請求項6に記載の農業機械。
【請求項8】
前記調節部は、
生育土壌に対して肥料を面状に落下させる肥料面状排出管と、
肥料面状排出管から生育土壌に対して落下した肥料を所定の間隔を隔てて分布させる分布板と、
からなる請求項6に記載の農業機械。
【請求項9】
肥料配置部にて所定の間隔で複数列に連続的または断続的に配置された肥料を生育土壌の土の一部を削って覆う肥料被覆機構をさらに有する請求項6から8のいずれか一に記載の農業機械。
【請求項10】
肥料被覆機構は、前記複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列外側の生育土壌の土の一部を削って畝とする外側利用機構である請求項9に記載の農業機械。
【請求項11】
肥料被覆機構は、前記複数列に連続的または断続的に配置された肥料の列内側の生育土壌の土の一部を削る内側利用機構である請求項9に記載の農業機械。
【請求項12】
前記肥料配置部は、
肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の側方へ案内する側方案内鋤手段と、
前記側方案内鋤手段に設けられ、掘った溝に肥料を落下させる第一肥料排出口と、
側方案内鋤手段により側方へ案内された土を配置された肥料に被せる覆土手段と、
を有する請求項5又は6に記載の農業機械。
【請求項13】
前記肥料配置部は、
肥料を配置するための溝を掘りつつ、掘った土を自身の後方端から落下させる後方案内鋤手段を有し、
前記後方案内鋤手段は、
前記後方端から落下させられる土により覆土されるように掘った溝に肥料を落下させる第二肥料排出口を有する請求項5又は6に記載の農業機械。
【請求項14】
前記肥料配置部は、肥料を配置するために掘る溝の深さを調整するための深浅調整手段を有する請求項12又は13に記載の農業機械。
【請求項15】
作物植栽又は種まきのための土壌掘起又は畝作りをする耕作部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こし又は積み上げをするために設けられている請求項5から14のいずれか一に記載の農業機械。
【請求項16】
苗を配置するための苗配置部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをするために設けられている請求項5から15のいずれか一に記載の農業機械。
【請求項17】
種まきするための種まき部が前記肥料配置部によって配置される複数列の央部に掘り起こしをするために設けられている請求項5から15のいずれか一に記載の農業機械。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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