説明

作物植付装置および作物植付作業車

【課題】 植付け後の作物に土を被せることのできる作物植付装置の提供。
【解決手段】 作物植付機構100は、開口上方端部40Aと排出用下方端部40Bを有する植付ホルダー40と、植付ホルダー40を循環させる循環機構200と、作物Gを下方へ押し出す押出し杆部6と、これを上下動させる上下動機構500とを備えてなる。さらに、地面の土を吸い上げる吸土部30と、吸い上げられた土を作物植付け後の地面に落とすための排土部33とからなる土掛け機構300を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車に係り、特に、ニンニク等の鱗茎類野菜・芋類・球根等の塊状形状の作物の植付けを効率的に行うことのできる、作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニク等の鱗茎類野菜・芋類・球根等の植付けは、発根・発芽部位が適正な位置となるように姿勢を揃えて植え付ける必要があり、労力のかかる作業である。かかる状況を改善するために、あるいは改善し得るものとして、従来種々の提案がなされている。
【0003】
たとえば後掲特許文献1では、細長いシートの下端部に発根側部位を下にした姿勢で固定した球根等をシートが起立する姿勢で各セルに収容したセルトレイを備えた植付機を、また特許文献2では、生分解性のテープを用いた種ニンニクテープを用いたニンニク植付機を、それぞ開示している。
【0004】
しかしこれらの技術は、装置として構成が複雑あるいは大掛かり、あるいは植付けのための準備作業がかえって煩雑という難点がある。より簡便な構造にて圃場において植付け作業の省力化を図れる手段の観点から本願発明者は先に、新規なる植付け機構を提案した(特許文献3、4、5)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−033010「球根等の植付機」
【特許文献2】特開平10−117520「ニンニク植付機」
【特許文献3】特開特開2006−034170「植付け物植付け機構および植付け物ホルダー」
【特許文献4】特開2006−166755「土壌被覆資材切断除去装置
【特許文献5】特開2007−175009「作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献3〜5に開示した発明によって、従前よりもさらに簡素な構成とし、かつ植付物をセットする際の損傷を相当程度防止でき、さらに作業効率を高めることができた。そして、植付装置としての実用性を、従前以上に向上させることができた。
【0007】
しかし以上の発明においてもなお、植付装置としての機能を十全に果たし、かつ実用性をより一層高めるためには、下記のとおり、さらなる改善が望ましい点が複数あった。
<a> 従来の押出し杆部では、作物を植え付けるとき、作物を土壌中に押し込んだ後、上昇させる際に、作物が押出し杆部の先端部に一緒に付いて来てしまい、土壌から出てしまう、あるいは予定の植付け深度よりも浅くなってしまうということがあった。
<b> 従来は、植付け位置において植付けホルダーと押出し杆部の軸とが合わずに、植付けホルダー中の作物が適切な押出し作用を受けないで、作物の損傷が発生したり、植付けのための押出しがなされない事態が発生することがあった。
<c> 植付けホルダー自体によって植付け用の穴を穿つ従来の装置では、土壌に地面被覆資材が用いられている際、植付けホルダーによって切除された被覆資材の切除片が、押出し杆部が上昇したり植付けホルダーが植付け位置を離れたりする際に、一緒に付いて来てしまい、その後の植付け作業に支障を来す場合があった。
<d> 従来の装置では、植付け後に植え付けられた作物の上から土を被せる機構がなく、作物保護のためには、事後に土を被せる作業を別途しなくてはならなかった。
【0008】
本願発明は、これら従来技術の問題点を除き、下記各事項を実現できる、ニンニク等の鱗茎類野菜・芋類・球根等の塊状形状の作物の植付けのための、作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車を提供することである。
【0009】
<A> 押出し杆部を改良する。具体的には、作物を植え付けるとき、作物を土壌中に押し込んだ後で上昇させる際に、作物が押出し杆部の先端部に一緒に付いて来て土壌から出てしまうことや、予定の植付け深度よりも浅くなってしまうことを、防止する。
<B> 押出し杆部と植付けホルダーの位置決めに関する改良をする。具体的には、植付けホルダー中の作物が適切な押出し作用を受けられるよう、植付け位置における植付けホルダーと押出し杆部の軸とが確実に合うようにして、作物の損傷発生や、植付けのための押出しがなされない事態の発生を防止する。
<C> 土壌被覆資材対応として、穴を開けた後に、その穴の切除片が装置運転の障害とならず、その後の植付け作業に支障を来さないような改良をする。具体的には、植付けホルダーによって切除された被覆資材の切除片が、押出し杆部が上昇したり植付けホルダーが植付け位置を離れたりする際に、一緒に付いて来ることを防止する。
<D> 植付け後の作物に土を被せてこれを保護することのできるように改良する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記各課題について鋭意検討した結果、その全てについて解決策を見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下のとおりである。上記課題に対応させ、(A群)〜(D群)に分けて記載する。
【0011】
(A群)
(A−1) 鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための作物植付機構であって、該機構は該作物を植付前に一旦収容するための、開口している上方端部と作物排出用の下方端部を有する植付ホルダーと、該植付ホルダーを該作物が収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構と、該植付ホルダーが植付位置にある時に該植付ホルダーの上方端部から挿入されて該作物を下方へ押し出すための押出し杆部と、植付位置において該押出し杆部を上下動させる上下動機構とを備えてなり、該押出し杆部はパイプと該パイプ内に上下動可能に挿入して設けられた内部杆とからなる、作物植付機構。
(なお、かかる構成により、収容位置にて該植付ホルダーに作物が収容され、該循環機構によって搬送される該植付ホルダーが植付位置にある時に該上下動機構によって下降する該押出し杆に作物が押され、該植付ホルダーの下方端部から押し出されて、地面への植付がなされる、という基本的な作用がなされる。これは、(A−2)〜(D−4)の各発明にも共通する。)
【0012】
(A−2) 前記押出し杆部は、これがまず特定の位置まで下降することによって少なくとも前記パイプの縁部において前記作物を上方から押し、その後前記内部杆が該パイプに対して相対的に下降することによって作物の中央部を上方から押すように制御されていることを特徴とする、(A−1)に記載の作物植付機構。
(A−3) 前記押出し杆部は、前記内部杆が摺動可能な案内棒を備えてなり、前記パイプ上にはテコ部材が設けられており、該テコ部材の作用点部は該内部杆上部に接しており、該テコ部材の力点部は本押出し杆部移動方向上に設けられた固定端に当接可能に形成されていることを特徴とする、(A−1)または(A−2)に記載の作物植付機構。
(A−4) 前記押出し杆部の下端部には、作物を押圧する際の損傷を防止するために、柔軟性材料、弾性材料またはその他の変形自在な材料からなる当接部を備えていることを特徴とする、(A−1)または(A−3)のいずれかに記載の作物植付機構。
【0013】
(A−5) 前記植付ホルダーの内部には、収容される作物の損傷を防止し、かつ作物を該ホルダー内部の底部よりも上方に支持するために、略軸心部に作物を支持可能な弾性材質あるいは変形自在の中位支持体が設けられていることを特徴とする、(A−1)ないし(A−4)のいずれかに記載の作物植付機構。
(A−6) 前記循環機構は、ワイヤー上に取り付けられた複数の前記植付ホルダーを連続的に循環させるものであることを特徴とする、(A−1)ないし(A−4)のいずれかに記載の作物植付機構。
(A−7) (A−1)ないし(A−6)のいずれかに記載の作物植付機構を備えた作物植付装置。
(A−8) (A−7)に記載の作物植付装置が車両に取り付けられてなる、作物植付作業車。
【0014】
(B群)
(B−1) 鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための作物植付機構であって、該機構は該作物を植付前に一旦収容するための、開口している上方端部と作物排出用の下方端部を有する植付ホルダーと、該植付ホルダーを該作物が収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構と、該植付ホルダーが植付位置にある時に該植付ホルダーの上方端部から挿入されて該作物を下方へ押し出すための押出し杆部と、植付位置において該押出し杆部を上下動させる上下動機構とを備えてなり、該押出し杆部は揺動可能に設けられており、該植付ホルダーには押動部が、また該押出し杆部には該押動部と対応する被押動部が設けられており、かかる構成により、該押動部によって該被押動部が押されることによって該押出し杆部と該植付ホルダーとの間の位置決めがなされるとともに、該押出し杆部ならびに該植付ホルダーの該植付位置への位置設定が可能である、作物植付機構。
(B−2) 前記植付ホルダーの内部には、収容される作物の損傷を防止し、かつ作物を該ホルダー内部の底部よりも上方に支持するために、略軸心部に作物を支持可能な弾性材質あるいは変形自在の中位支持体が設けられていることを特徴とする、(B−1)に記載の作物植付機構。
(B−3) 前記循環機構は、ワイヤー上に取り付けられた複数の前記植付ホルダーを連続的に循環させるものであることを特徴とする、(B−1)または(B−2)に記載の作物植付機構。
(B−4) (B−1)ないし(B−3)のいずれかに記載の作物植付機構を備えた作物植付装置。
(B−5) (B−4)に記載の作物植付装置が車両に取り付けられてなる、作物植付作業車。
【0015】
(C群)
(C−1) 鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための作物植付機構と、該作物植付機構の前方に設けられていて植付け対象の地面に予め植付け用穴を形成するための穿孔杆とを備えた作物植付装置であって、該機構は該作物を植付前に一旦収容するための、開口している上方端部と作物排出用の下方端部を有する植付ホルダーと、該植付ホルダーを該作物が収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構と、該植付ホルダーが植付位置にある時に該植付ホルダーの上方端部から挿入されて該作物を下方へ押し出すための押出し杆部と、植付位置において該押出し杆部を上下動させる上下動機構とを備えてなり、該穿孔杆は、該循環機構および該押出し杆部の作動と連動して上下動可能に構成されている、作物植付装置。
(C−2) 前記穿孔杆は、植付け対象地面が地面被覆資材により被覆されている場合にもこれを破って地面への穴形成が可能なように尖端を備えていることを特徴とする、(C−1)に記載の作物植付装置。
【0016】
(C−3) 前記循環機構は、ワイヤー上に取り付けられた複数の前記植付ホルダーを連続的に循環させるものであることを特徴とする、(C−1)または(C−2)に記載の作物植付装置。
(C−4) (C−1)ないし(C−3)のいずれかに記載の作物植付装置が車両に取り付けられてなる、作物植付作業車。
【0017】
(D群)
(D−1) 鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための作物植付機構と、該作物植付機構の後方に設けられていて作物植付け後の地面に土を掛けるための土掛け機構とを備えた作物植付装置であって、該機構は該作物を植付前に一旦収容するための、開口している上方端部と作物排出用の下方端部を有する植付ホルダーと、該植付ホルダーを該作物が収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構と、該植付ホルダーが植付位置にある時に該植付ホルダーの上方端部から挿入されて該作物を下方へ押し出すための押出し杆部と、植付位置において該押出し杆部を上下動させる上下動機構とを備えてなり、該土掛け機構は、地面の土を吸い上げる吸土部と、吸い上げられた土を作物植付け後の地面に落とすための排土部とを備えてなる、作物植付装置。
(D−2) 前記吸土部は前記植付け位置の外側方に位置して、また前記排土部は該植付け位置の延長上に位置して、それぞれ設けられることを特徴とする、(D−1)に記載の作物植付装置。
(D−3) 前記吸土部から前記排土部間には吸い上げられた土を搬送するための搬土部が設けられ、該吸土部および該搬土部はスクリューコンベアにより構成されていることを特徴とする、(D−2)に記載の作物植付装置。
(D−4) (D−1)ないし(D−3)のいずれかに記載の作物植付装置が車両に取り付けられてなる、作物植付作業車。
【0018】
(A群)〜(D群)のいずれの群に属する各発明も、他の群に属する任意の一または複数の発明と組み合わせて、各特徴を兼ね備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車は上述のように構成されるため、これによれば、
〔A〕 特に押出し杆部の改良により、作物を植え付けるとき、作物を土壌中に押し込んだ後で上昇させる際に、作物が押出し杆部の先端部に一緒に付いて来て土壌から出てしまうことや、予定の植付け深度よりも浅くなってしまうことを、防止することができる。つまり、作物を、植え付ける深さに確実に位置させて、植え付けることができる。また、当接部を特定の構造とすることによって、押圧時の作物の損傷を防止することができる。
【0020】
〔B〕 特に、押出し杆部と植付けホルダーの位置決めに関する改良により、植付け位置における植付けホルダーと押出し杆部の軸とを確実に合わせることができ、植付けホルダー中の作物は適切な押出し作用を受けることができる。つまり、作物の損傷発生や、植付けのための押出しがなされない事態の発生を防止することができる。
【0021】
〔C〕 また、特に穿孔杆を設けることにより、土壌被覆資材により被覆された地面への作物植付けの場合、従来のように植付けホルダーによって切除された被覆資材の切除片が、押出し杆部が上昇したり植付けホルダーが植付け位置を離れたりする際に一緒に付いて来る、ということを防止することができる。つまり、被覆資材に穴を開けた後の切除片が装置運転の障害となって、その後の植付け作業に支障を来すような事態の発生を防止することができる。
【0022】
〔D〕 また、特に土掛け機構を設けることにより、人手を要さずにして、簡単にかつ効率的に、植付け後の作物に土を被せてこれを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。なお以下の説明においては、各図で対応する要素には、それらが技術的に異なる特徴を備えている場合であっても、同一の符号を付して説明に供することがある。
図1(A)は、本発明の作物植付機構の構成を示す側面視の説明図である。また、
図2(A)は、図1に示す作物植付機構の押出し杆部の構成および動作を示す側面視の説明図である。図2(A)においては、作物押出しの過程を右から左へと示している。これらに図示するように、鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための本作物植付機構100は、作物Gを植付前に一旦収容するための、開口している上方端部40Aと作物排出用の下方端部40Bを有する植付ホルダー40と、植付ホルダー40を作物Gが収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構200と、植付ホルダー40が植付位置にある時に植付ホルダー40の上方端部40Aから挿入されて作物Gを下方へ押し出すための押出し杆部6と、植付位置において押出し杆部6を上下動させる上下動機構500とを備えてなる。そして、特に図2(A)に示すように、押出し杆部6はパイプ64とパイプ64内に上下動可能に挿入して設けられた内部杆65とからなることを、主たる構成とする。
【0024】
さらに詳述すれば本機構100は、図2(A)に示すように、押出し杆部6は、これがまず特定の位置まで下降することによって少なくともパイプ64の縁部において作物Gを上方から押し、その後、内部杆65がパイプ64に対して相対的に下降することによって、作物Gの中央部を上方から押すように制御される構成を備える。
【0025】
かかる構成により、まず基本的には、収容位置にて植付ホルダー40に作物Gが収容され、循環機構200によって搬送される植付ホルダー40が植付位置にある時に上下動機構500によって下降する押出し杆部6に作物Gが押され、植付ホルダー40の下方端部40Bから押し出されて、地面への植付がなされる、という基本的な作用がなされる。
【0026】
そして、特に図2(A)に示すように、押出し杆部6では、パイプ64が作物Gに対して押し付けられた後、あるいはパイプ64およびその内部に設けられた内部杆65とが作物Gに対して押し付けられた後、パイプ64との間で相対的に、内部杆65のみがさらに下降して作物Gに対して押し付けられる。内部杆65は作物Gの中央部を押し付けるものであるため、作物Gとの吸着性は弱い。したがって、押出し杆部6が上昇する際、パイプ64に作物Gが一緒に付いて来ること、あるいは押出し杆部6に作物Gが一緒に付いてくることが防止される。これにより、作物Gが土壌から出て来てしまうことや、予定の植付け深度よりも浅くなってしまうことが防止される。
【0027】
また、図2(A)に示すように本作物植付機構100は、その押出し杆部6が、内部杆65が摺動可能な案内棒62を備えてなり、パイプ64上にはテコ部材63が設けられており、テコ部材63の作用点部は、内部杆65上部に接しており、一方、その力点部は、本押出し杆部6移動方向上に設けられた固定端639に当接可能に形成されている構成、とすることができる。
【0028】
かかる構成により、押出し杆部6の内部杆65は案内棒62上を自在に摺動することができ、パイプ64に収容された内部杆65は、作物G押出しのための円滑な昇降動作することができる。
【0029】
また、パイプ64上のテコ部材63によって、押出し杆部6が下降して行ってその途上で植付けホルダー40中の作物Gに当接してこれを押し下げ、さらに下降して、図2(A)の中図のようにテコ部材63の力点部が固定端639に当接しこれに係止されると、テコ部材63が設けられたパイプ64の下降は止められる。一方、パイプ64とは相互に独立して上下動可能な内部杆65は、その上部に作用点が接しているテコ部材63において固定端639によるテコ作用が生じるため、図2(A)の左図のように、パイプ64とは独立して下降せしめられる。これにより、上述した内部杆65による作物Gの中央部の押出し作用が、円滑かつ確実になされる。
【0030】
図2(A)において、押出し杆部6はその下端部66に、スポンジ等の、柔軟性材料、弾性材料またはその他の変形自在な材料からなる当接部を備えた構成とすることができる(図示せず)。かかる構成により、作物Gを押圧する際の損傷を防止することができる。
【0031】
図3(B)は、本発明の作物植付機構の一例について、その押出し杆部付近の構成および動作を示す側面視の説明図である。図中、作物押出しの過程は左から右へと示される。図示するように本作物植付機構においては、押出し杆部600が揺動可能に設けられ、植付ホルダー40には押動部77が設けられ、そして押出し杆部600には押動部77と対応する被押動部71が設けられた構成とすることができる。押動部77および被押動部71の具体的な構造は、押動作用により変形が生じないような剛性の材料および形状であれば、特に限定されない。
【0032】
かかる構成により、前記循環機構(図示せず)によって植付けホルダー40が植付け位置に接近していくとき、通常植付け位置より手前に待機するよう構成されている押出し杆部600は、植付けホルダー40に設けられた押動部77によってその被押動部71が押され、揺動可能な押出し杆部600は植付けホルダー40の進行方向へと揺動し、適正な植付け位置にセットされる。
【0033】
このようにして、押出し杆部600とホルダー40との間の位置決めがなされるとともに、押出し杆部600ならびに植付ホルダー40の植付位置への位置設定が、確実になされるため、植付けホルダー中の作物は適切な押出し作用を受けることができる。
【0034】
なお、植付ホルダー40の内部には、収容される作物Gの損傷を防止し、かつ作物Gを植付けホルダー40内部の底部よりも上方に支持するために、略軸心部に作物を支持可能な弾性材質あるいは変形自在の中位支持体45を設ける構成としてもよい。
【0035】
図4(B)は、本発明の作物植付作業車の構成例について、その構造と作用を示す側面視説明図である。また、
図5(B)は、図4(B)の作物植付作業車の上下動機構設置箇所における直角方向断面視の説明図である。これらに図示するように、循環機構200は、ワイヤー上に取り付けられた複数の前記植付ホルダー40を連続的に循環させる構成である。また、図5(B)においては4列の例が示されているように、本作物植付機構は作物植付装置において複数並列して設けてもよい。
【0036】
図6(C)は、本発明作物植付装置の別の例の構成を示す側面視の説明図である。また、
図7(C)は、図6(C)の装置の穿孔杆設置箇所における直角方向断面視の説明図である。これらに図示するように本装置は、既に述べた本発明の作物植付機構に加えて、作物植付機構(図では100)の前方に設けられていて植付け対象の地面に予め植付け用穴を形成するための穿孔杆16を備えた構成である。そして穿孔杆16は、循環機構200および押出し杆部6の作動と連動して上下動可能に構成されていることを特徴とする。また、図7(C)においては4列の例が示されているように、本穿孔杆は作物植付機構の設置数に合わせて、複数並列して設けられることもある。
【0037】
かかる構成により、穿孔杆16は、上下動500および押出し杆部6による作物の押出し動作がなされるのに先だって、その進行方向前方において、循環機構200および押出し杆部6の作動と連動して上下動し、植付け対象の地面に植付け用穴を形成する。このようにして予め植付け用穴が設けられるため、その後の作物植付の過程は、円滑かつ確実になされる。
【0038】
各図に示すように、穿孔杆16は、植付け対象地面が地面被覆資材により被覆されている場合にもこれを破って地面への穴形成が可能なように、尖端18を備えた構成とすることが望ましい。
【0039】
かかる構成により、土壌被覆資材は尖端18によって切除され、あるいは容易に開口され、切除あるいは開口された部分の被覆資材片は、穿孔杆16の下降によって、土壌中に押し込められるか、あるいは土壌中の植付用穴の側方に押し除けられる。したがって、押出し杆部が上昇したり植付けホルダーが植付け位置を離れたりする際に、被覆資材片が一緒に付いて来ることを防止することができる。
【0040】
図8(D)は、土掛け機構を備えた本発明作物植付装置の要部を示す側面視の説明図である。また、
図9(D)は、車載した図8(D)の装置の要部箇所における直角方向断面視の説明図である。これらに図示するように本装置は、既に説明した作物植付機構に加えて、その後方に設けられており、作物植付け後の地面に土を掛けるための土掛け機構300を備えた構成とすることができる。土掛け機構300は、地面の土を吸い上げる吸土部30と、吸い上げられた土を作物植付け後の地面に落とすための排土部33とを備えて構成される。
【0041】
かかる土掛け機構300の構成により、地面の土は吸土部30によって吸い上げられ、排土部33によって作物植付け後の地面に落とされる。このようにして、簡単にかつ効率的に、植付け後の作物に土を被せてこれを保護することができる。
【0042】
図9(D)に示すように、本土掛け機構300は、吸土部30を植付け位置の外側方に位置させて設けるものとすることができる。かかる構成により、植付後の作物に対する土掛けに要する土を、植付え位置とは無関係の離れた箇所から吸い上げて、供することができる。
【0043】
また、図示するように本土掛け機構300は、排土部33を植付け位置の延長上に位置させて設けるものとすることができる。かかる構成により、植付後の作物に対する土掛けが必要な箇所に、適切に土掛け作用をなすことができる。
【0044】
また、本土掛け機構300の吸土部30から排土部33間には、吸い上げられた土を搬送するための搬土部32を設けることとし、さらに、吸土部30および搬土部32をスクリューコンベアにより構成することができる。かかる構成により、さらに効率的かつ円滑に、土掛け用の土の吸い上げと排土を行うことができる。
【0045】
図10は、本発明の作物植付作業車の構成例を示す側面視の説明図である。本例は、以上述べた各発明を全て含んだ構成である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の作物植付機構、作物植付装置および作物植付作業車によれば、植付装置としての機能を十全に果たし、かつ実用性をより一層高めることができる。したがって、農業分野において利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1(A)】本発明の作物植付機構の構成を示す側面視の説明図である。
【図2(A)】図1(A)に示す作物植付機構の押出し杆部の構成および動作を示す側面視の説明図である。
【図3(B)】本発明の作物植付機構の一例について、その押出し杆部付近の構成および動作を示す側面視の説明図である。
【図4(B)】本発明の作物植付作業車の構成例について、その構造と作用を示す側面視説明図である。
【図5(B)】図4(B)の作物植付作業車の上下動機構設置箇所における直角方向断面視の説明図である。
【図6(C)】本発明作物植付装置の別の例の構成を示す側面視の説明図である。
【図7(C)】図6(C)の装置の穿孔杆設置箇所における直角方向断面視の説明図である。
【図8(D)】土掛け機構を備えた本発明作物植付装置の要部を示す側面視の説明図である。
【図9(D)】車載した図8(D)の装置の要部箇所における直角方向断面視の説明図である。
【図10】本発明の作物植付作業車の構成例を示す側面視の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
100…作物植付機構
2…駆動軸スプロケット
3…クランク
4…ロッド
9…ローラ
19…レール
200…循環機構
20…駆動軸スプロケット
21…コンベアスプロケット
22…コンベアローラチェーン
300…土掛け機構
30…吸土部
32…搬土部
33…排土部
34…シャッター
40…植付ホルダー
40A…上方端部
40B…下方端部
45…中位支持体
500…上下動機構
11…カム
6、600…押出し杆部
61…防振部材
62…案内棒
63…テコ部材
639…固定端
64、664…パイプ
65…内部杆
66…下端部
5、605…パイプ受け
7…係止具
71…被押動部
77…押動部
16…穿孔杆
14…ローラチェーン
15…ロッド受け
17…ロッド押さえ
18…尖端
25…調製ネジ
G…作物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗茎類野菜・芋類・球根その他塊状形状の作物を植付けるための作物植付機構と、該作物植付機構の後方に設けられていて作物植付け後の地面に土を掛けるための土掛け機構とを備えた作物植付装置であって、該機構は該作物を植付前に一旦収容するための、開口している上方端部と作物排出用の下方端部を有する植付ホルダーと、該植付ホルダーを該作物が収容される位置である収容位置と植付位置との間で循環させるための循環機構と、該植付ホルダーが植付位置にある時に該植付ホルダーの上方端部から挿入されて該作物を下方へ押し出すための押出し杆部と、植付位置において該押出し杆部を上下動させる上下動機構とを備えてなり、該土掛け機構は、地面の土を吸い上げる吸土部と、吸い上げられた土を作物植付け後の地面に落とすための排土部とを備えてなる、作物植付装置。
【請求項2】
前記吸土部は前記植付け位置の外側方に位置して、また前記排土部は該植付け位置の延長上に位置して、それぞれ設けられることを特徴とする、請求項1に記載の作物植付装置。
【請求項3】
前記吸土部から前記排土部間には吸い上げられた土を搬送するための搬土部が設けられ、該吸土部および該搬土部はスクリューコンベアにより構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の作物植付装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の作物植付装置が車両に取り付けられてなる、作物植付作業車。



【図1(A)】
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【図2(A)】
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【図3(B)】
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【図4(B)】
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【図5(B)】
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【図6(C)】
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【図7(C)】
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【図8(D)】
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【図9(D)】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−213362(P2009−213362A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57096(P2008−57096)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(502295582)有限会社川村機械 (8)
【Fターム(参考)】