使い捨ておむつ
【課題】吸汗機能を付加しつつ蒸れ難い使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート30と液不透過性シート11との間に吸収体56が介在されるとともに、吸収体56の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部BEを備えた使い捨ておむつにおいて、延出部BEから吸収体56の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層がトップシート30ではなく、トップシート30とは別体の吸汗シート20により構成されるとともに、吸汗シート20より製品外面側にトップシート30が延在され、かつこれら吸汗シート20とトップシート30との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟まれて固定されており、かつ、吸汗シート20は、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものとする。
【解決手段】液透過性のトップシート30と液不透過性シート11との間に吸収体56が介在されるとともに、吸収体56の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部BEを備えた使い捨ておむつにおいて、延出部BEから吸収体56の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層がトップシート30ではなく、トップシート30とは別体の吸汗シート20により構成されるとともに、吸汗シート20より製品外面側にトップシート30が延在され、かつこれら吸汗シート20とトップシート30との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟まれて固定されており、かつ、吸汗シート20は、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエスト側端部に吸汗シートを備えた使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの多くは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素が介在する部分である吸収性本体部と、この吸収性本体部の前側及び後側に延出する部分であって、且つ吸収要素を有しない部分である腹側及び背側延出部とを有している。いわゆる止着式(テープ式)のものでは、背側の両側部にファスニング片がそれぞれ設けられており、これらファスニング片を腹側外面に係止することで装着を行い、パンツ型のものでは背側の両側部と腹側の両側部とがそれぞれ接合され、ウエスト開口部及び脚開口部が予め形成されており、脚開口部に脚を通して胴回りまで引き上げることにより装着を行う。
使い捨ておむつにおいては、背側上端部及び腹側上端部からなる胴回り部分が肌により密着するため、この部分において発汗し易くなり、蒸れによる不快感や、おむつかぶれをもたらすことがある。そこで、これを解決するために、背側上端部及び腹側上端部の少なくとも一方の内面に吸汗シートを貼り付けることが提案されている。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−189454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものは一般的な構造のおむつに対して単に吸汗シートを付加しただけであったため、汗を吸うことはできるものの、吸汗シートを付加した部分において資材積層数の増加により蒸れ易くなるという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸汗機能を付加しつつ蒸れ難い使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
液透過性のトップシートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、吸収体の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部を備えた、使い捨ておむつにおいて、
前記延出部から前記吸収体の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層が前記トップシートではなく、前記トップシートとは別体の吸汗シートにより構成されるとともに、前記吸汗シートより製品外面側に前記トップシートが延在され、かつこれら吸汗シートとトップシートとの間にウエスト部弾性伸縮部材が挟まれて固定されており、かつ、
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0006】
(作用効果)
使い捨ておむつでは、パンツ型はもちろんのことテープ式のものにおいても、ウエスト側端部を身体にフィットさせるために、ウエスト側端部を構成するシート状資材層の間にウエスト部弾性伸縮部材を挟んで固定することが一般的となっている。本発明は、この構造を利用し、ウエスト部弾性伸縮部材を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シートで構成し、ウエスト部弾性伸縮部材の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも、蒸れ易くなるのを防止したものである。
また、従来の吸汗シートは、汗を吸収するだけのものであったため、装着者が実際に発汗したかどうかまでは判らず、不快感の解消やかぶれ等の防止を図り難いという問題点があった。しかし、本項記載のように、吸汗シートが汗を吸収したときに色変化を起すように構成すれば、おむつ外面からその色変化を視認することにより発汗の有無等を知ることができ、不快感の解消やかぶれ等の防止を図ることができるようになる。特に、外面側層における吸汗シートと重なる部分に複数の貫通孔を形成する場合において、貫通孔の位置が吸汗シートの色変化部分と重なる位置にあると、汗を吸収した吸汗シートの色変化を、おむつ外面から視認し易くなるため好ましい。
また、本項記載のように、延出部から吸収性本体部のウエスト側端部にわたる部分に、吸汗シートからなる最内層、外面側層及びウエスト部弾性伸縮部材を有し、且つ外面側層が透液性トップシートにより形成されている構造にすると、ウエスト部弾性伸縮部材によって延在部及び吸収性本体部のウエスト側端部までの部分が装着者の腰に弾性的にフィットするようになるとともに、上述した本発明の作用効果を発揮させることができるため好ましい。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記外面側層は、複数のシート状資材が貼り合わされて形成されているものであり、この複数のシート状資材のうち内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が前記吸汗シートのウエスト側端部より股間側に位置している、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
このような構造を採用することにより、外面側層内の資材間に胴回り部弾性伸縮部材を挟持できる構造でありながら、ウエスト側端部におけるシート状資材層数を更に減らすことができるようになり、本発明の蒸れ防止効果がより一層のものとなる。特に、吸汗シートが汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである場合においては、吸汗シートの色変化をおむつ外面から視認し易くなるため好ましい。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層してなるものである、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
このような構造を有していると、発汗量が少ない場合には汗が外側の層まで到達せず、色変化の発生する層数が少なくなり、反対に発汗量が多い場合には汗がより外側の層まで到達し、色変化の発生する層数が多くなるため、発汗量の多少により吸汗シート全体としての色変化に違いが出るようになる。よって、本項記載の発明によれば発汗の程度を判別できるようになる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記外面側層は、酸化チタン含有量が0〜1重量%の不織布により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
ウエスト側端部を構成するシート状資材としては不織布が広く採用されており、不透明度や白色度を上げるために原料繊維中に酸化チタンを含有するものが広く採用されている。しかし、外面側層に不織布を用いる場合において酸化チタン含有量が高過ぎると、吸汗シートの色変化が視認し難くなる。よって、外面側層に不織布を用いる場合にはその酸化チタン含有量が本項記載の範囲内にあるのが好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記ウエスト部弾性伸縮部材は、酸化チタン含有量が3重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
ウエスト部弾性伸縮部材としては、合成ゴム(ポリウレタン樹脂)が広く採用されており、不透明度や白色度を上げるため、あるいは糸状ゴムの場合は紡糸性を向上させるために原料樹脂中に酸化チタンを含有するものが広く採用されている。しかし、酸化チタン含有量が高過ぎると、吸汗シートの色変化の視認の妨げとなる。よって、ウエスト部弾性伸縮部材として合成ゴムを用いる場合には、その酸化チタン含有量が本項記載の範囲内にあるのが好ましい。そして、このように透明度が高いと、弾性伸縮部材内部の光の乱反射により、インジケータの色彩がより鮮やかに視認できるようにもなるため、好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸汗シートは、高吸収性ポリマーを含有する層と、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を含む層を含む複数層からなる積層体であり、前記高吸収性ポリマーを含有する層が、前記冷却物質を含む層よりも肌側に位置する面に位置するよう構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
従来の吸汗シートは、伸縮性を要する部位に取り付けられるため、吸収体のような高目付で嵩高のものは使用できず、吸収量には限界があった。これを補うために、本項記載のように、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を吸汗シートに含有させ、発汗を抑制するのは、好ましい構成である。さらに、高吸収性ポリマーを含有する層が肌側に配置されていると、冷却物質により冷却された汗を肌近傍に止め、冷却効果の持続性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、吸汗機能を付加しつつ蒸れ難い使い捨ておむつとなる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】止着式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図5】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図6】図1の6−6断面図である。
【図7】図1の7−7断面図である。
【図8】図1の8−8断面図である。
【図9】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図10】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図11】製品状態の正面図である。
【図12】製品状態の背面図である。
【図13】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図14】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図15】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図16】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図17】各種の吸汗インジケータの形態を示す概略図である。
【図18】吸汗シートの他の形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、止着式とパンツ型の使い捨て紙おむつの形態について順に説明する。以下の説明において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側(前側)の両側部と背側(後側)両側部とを重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0020】
<止着式使い捨ておむつの一形態>
図1〜図3は止着式使い捨ておむつの一例を示している。図2及び図3は、図1における2−2線断面及び3−3線断面をそれぞれ示した図である。この止着式使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシート30と、外面側に位置する液不透過性シート11との間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側延出部FE及び背側延出部BEとを有するものである。
【0021】
また、この止着式使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニング片130がそれぞれ設けられている。
【0022】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0023】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60,60が設けられており、この側部バリヤーカフス60,60を形成するバリヤーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0024】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
【0025】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0026】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0027】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0028】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0029】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0030】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0031】
(側部バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60、60を設けるのは好ましい。
【0032】
この側部バリヤーカフス60は、実質的に幅方向に連続するバリヤーシート62と、このバリヤーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このバリヤーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0033】
バリヤーシート62は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、バリヤーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0034】
脚周りにおいては、側部バリヤーカフス60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部バリヤーカフス60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0035】
図示形態と異なり、バリヤーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0036】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。包被シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0037】
(吸収体)
吸収体56は、繊維52,52の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0038】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、図2に示すように高吸収性ポリマー粒子54,54…を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0039】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0040】
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0041】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0042】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0043】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0044】
この包被シート58は、図2のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0045】
(ファスニング片)
ファスニング片130は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるファスニング基材130Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック要素130Aが設けられている。フック要素130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0046】
本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、ファスニング片130の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さは、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニング片130の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さは20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニング片130の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニング片130の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック要素130Aに代えて、ファスニング片130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0047】
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニング片を腹側F外面の適所に係止する。ファスニング片130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁F1との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0048】
腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所には、係止を容易にするためにターゲットテープ74を設けるのが好ましい。ターゲットテープ74は、係止部がフック要素130Aの場合、フック要素の係合突起が絡まるようなループ糸が表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なフィルム状のものを用いることができる。
【0049】
また、腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニング片130の係止部がフック要素130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック要素130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。
【0050】
ファスニング片130は、背側延出部BEと吸収要素50の境界線上にファスニング片130の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニング片130の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側延出部BEの前後方向長さは、ファスニング片130の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0051】
(延出部)
延出部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側延出部FEであり、後側の延出部分が背側延出部BEである。
【0052】
背側延出部BEの前後方向長さは、ファスニング片130の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収体56とが近接しすぎると、吸収体56の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0053】
腹側延出部FE及び背側延出部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0054】
(背側伸縮部)
特徴的には、おむつ背側部におけるフィット性を向上させるために、背側のウエスト側端部における両側部バリヤーカフス60,60間に、幅方向に弾性伸縮する背側伸縮部が設けられている。すなわち、背側のウエスト側端部における両側部バリヤーカフス60,60間の部分は、幅方向に沿って延在する帯状の吸汗シート20からなる最内層と、この最内層の外面側に位置するトップシート30、液不透過性シート11、外装シート12からなる外面側層と、これら最内層20と外面側層30,11,12との間に幅方向沿って伸張した状態で挟持固定されたウエスト部弾性伸縮部材21とを有している。符号HMは、吸汗シート20及びトップシート30を接合し、ウエスト部弾性伸縮部材21を固定するためのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。この接着剤HMは、例えばスパイラル塗布やスロット塗布により塗布されるものである。
【0055】
吸汗シート20は肌に接触して汗を吸収する、保水性を有するものである。吸汗シート20は、表面シート30よりも保水量が高いもの、特に保水量が1.5倍以上のものが好ましく、具体的な保水量としては、1.0g/100cm2以上であるものが好ましく、3.0g/100cm2以上であるものがより好ましく、5.0g/100cm2以上であるものが特に好ましい。なお、保水量の測定は、JIS L 1906附属書の「3.2 保水率」に基づき測定し、湿潤前後の重量差を保水量とする。なお、試験液とする水の温度は、35℃のものを用いる。
【0056】
吸汗シート20は、吸汗機能を有するシートであれば不織布、紙、樹脂フィルムなど特に限定されないが、不織布が好適である。不織布を構成する繊維としては、親水性の繊維や、パルプ、レーヨン、コットン、セルロースアセテート等のセルロース繊維や、いわゆる高吸水性ポリマー(SAP)を繊維状にしたあるいは通常の繊維と複合させたSAP繊維といった、いわゆる吸汗繊維が特に好適である。また、高吸収性ポリマー粒子を層間に含有させたシートとしてもよい。不織布の場合、前記吸汗繊維を50%以上、好ましくは70%以上含むものが好ましく、繊維の繊度は1.0〜5.0dtex、繊維の目付けは10〜100g/m2、厚みは0.1〜5.0mm程度のものが好適である。吸汗シート20は、幅方向よりも上下方向の液拡散性に優れたシートであることが好ましい。これにより、吸汗シートが吸収した汗を非接着部分の広い上側に輸送し、効率よく放湿することができる。具体的には、繊維を主に上下方向に配向したり、上下方向に連続した無数の細かな溝を設けたり、親水度を上側に向かって高くしたりすることにより、上下方向の(特に上側に向けての)優れた液拡散性が得られる。また、吸汗シート20に吸収された汗によって着用者の肌が長時間湿った状態にさらされることがないよう、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、好ましい。吸汗シート20の形状は適宜定めることができ、図示形態のような長方形状とする他、楕円状、長円状、瓢箪状等を採用することができる。
【0057】
吸汗シート20の寸法も適宜定めることができる。特に図示形態では、吸汗シート20が背側延出部BEの上端部から吸収性本体部10のウエスト側端部まで延在しており、延出部BEのみならず吸収体本体部10と重なる部分においても、吸汗シート20とトップシート30との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟持固定された伸縮構造を有しているが、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材21は背側延出部BE内に収まるように構成されていても良い。また、おむつ幅方向においては、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材21の両端は、両ファスニング片130の取り付け部分と重なる部位まで延在されており、トップシート30の幅方向両側では吸汗シート20とバリヤーシート62との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟持固定されているが、これに限定されるものではなく、例えばトップシート30と同幅にすることもできる。
【0058】
ウエスト部弾性伸縮部材21としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良く、図示のような細長状(糸状又は紐状等)のものの他、有孔シート状、網状等のものも用いることができる。ウエスト部弾性伸縮部材21として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔21dで5〜15本程度設けるのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材21は150〜250%程度の伸張状態で固定されているのが好ましい。
【0059】
また、ウエスト部弾性伸縮部材21は一部が吸収体56を横断するように配置されていると、吸収体56のフィット性が向上するため好ましいが、この場合、ウエスト部弾性伸縮部材21のうち吸収体56と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収体56の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0060】
なお、上記例においては、弾性伸縮部材21は吸汗シート20とトップシート30との間に挟持固定したが、吸汗シート20と同じ寸法の弾性伸縮部材押さえ用のシート(以下押さえシートと呼ぶ)を用い、吸汗シート20と押さえシートとの間に弾性伸縮部材21を挟持固定した背側伸縮シートを形成し、これをおむつ背側部に配置するようにすると、紙おむつ製造時において、おむつ背側部に背側伸縮部を構成する各部材を順次取付けて背側伸縮部を形成する製造方法だけでなく、予め背側伸縮シートを形成する製造方法を採ることもできるようになり、製造工程の自由度が向上するため、好ましい。また、押さえシートは、吸汗シート20と一体的に吸汗機能を発揮できるように、液透過性のシートであることが好ましく、前述のような吸汗機能を有するシートであることが特に好ましい。
【0061】
このような背側伸縮部においては、ウエスト部弾性伸縮部材21を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シート20で構成し、ウエスト部弾性伸縮部材21の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも蒸れ難くなり、また資材コストも低減することができるようになる。他の応用例については後述する。
【0062】
<パンツ型使い捨ておむつの一形態>
図4〜図12は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。このパンツ型使い捨ておむつは、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁の接合部12Aと背側外装シート12Bの幅方向両側縁の接合部12Aとが、ヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の胴回り部100が形成されているものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが接合部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側カバー部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側カバー部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、接合部12Aは小さな溶着部の集合からなり、接合部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは接合部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0063】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離Yは150〜250mm程度とすることができる。
【0064】
図11及び図12からも判るように、胴回り部100の上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各接合部12Aを剥がして展開した状態では、図4に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を装着者に対して支持する部分である。
【0065】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図7及び図8にも示すように内装体200の外面に固定された部分と、内装体200のウエスト側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である延出部BE,FEとを有するものであり、不織布等のシート状資材12,12を2枚貼り合せて形成されるとともに、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状の胴回り部弾性伸縮部材15,16,19が所定の伸張率で設けられているものである。これらのシート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していない。
【0066】
特徴的には、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bの両者において、延出部BE,FEが、幅方向に沿って延在する帯状の吸汗シート20からなる最内層と、この最内層の外面側に位置する外装シート12F,12Bからなる外面側層と、これら最内層20と外面側層12F,12Bとの間に幅方向沿って伸張した状態で挟持固定されたウエスト部弾性伸縮部材17,18とを有している。符号HMは、吸汗シート20及びトップシート30を接合し、ウエスト部弾性伸縮部材17,18を固定するためのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。この接着剤HMは、例えばスパイラル塗布やスロット塗布により塗布されるものである。
【0067】
吸汗シート20としては、基本的に、止着式の形態で例示したものを用いることができる。ただし、パンツ型使い捨ておむつの場合、図示のように腹側の幅方向両側部12Aと背側の両側部12Aとが溶着により接合される形態が広く採用されているため、このような形態において、吸汗シート20が溶着による接合部に位置する場合に、吸汗シート20も含めて溶着する必要を生ずる。よって、このような場合には、吸汗シート12Aとして熱融着性繊維を20〜50%程度含む不織布を用いるのが好ましい。
【0068】
特に図示形態では、吸汗シート20が延出部BE,FEの上端から内装体200のウエスト側端部まで延在しているが、吸汗シート20は延出部BE,FE内に収まるように構成されていても良い。また、おむつ幅方向においては、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材17,18の両端は、おむつの両側縁まで延在されているが、これに限定されるものではなく、例えば内装体200の幅方向両側縁と接合部12A内装体200との間までしか延在させなくても良い。
【0069】
このように、ウエスト部弾性伸縮部材17,18を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シート20で構成し、ウエスト部弾性伸縮部材17,18の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも蒸れ難くなり、また資材コストも低減することができるようになる。他の応用例については後述する。
【0070】
外装シート12F,12Bを構成するシート状資材12としては特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。また、胴回り部及びウエスト部弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良く、図示のような細長状(糸状又は紐状等)のものの他、有孔シート状、網状等のものも用いることができる。
【0071】
より詳細には、背側外装シート12Bは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側カバー部14とを有している。背側カバー部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0072】
背側カバー部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側カバー部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0073】
背側カバー部14の寸法は適宜定めることができるが、図9に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側カバー部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側カバー部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0074】
背側本体部13は、上下方向において概念的にウエスト部Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、ウエスト部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0075】
背側本体部13のウエスト部Wにおける外装シート12F,12Bと吸汗シート20との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。この背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、第1及び第2の細長状弾性伸縮部材15,16に対して太さや伸張率の大小関係無く、自由に定めることができる。
【0076】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0077】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0078】
また、背側カバー部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間においては、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0079】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0080】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側カバー部14を有していないものである。
【0081】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fのウエスト部Wおよび下側部分Uのうち、ウエスト部Wにおける外装シート12F,12Bと吸汗シート20との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0082】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0083】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0084】
図示形態の腹側外装シート12Fは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0085】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体と外装シートが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側カバー部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0086】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図6に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート20に対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0087】
なお、内装体200の幅方向両側部、特に内装体200の幅方向両側縁と腹側外装シート12Fの下端縁との交点近傍及び背側外装シート12Bの下端縁との交点近傍では、内装体200の剛性(剛度)が15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmであると、後述するようなバリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が更に安定するため好ましい。一方、それ以外の部分、例えば幅方向中間部については柔軟性を考慮して、剛性を5〜35cN/50mm、好ましくは10〜25cN/50mmと低くするのが好ましい。なお、剛性を高くする範囲は、幅方向には内装体200の幅方向両側縁から中央側に5〜30mmの範囲、前後方向には内装体200と腹側外装シート12F,背側外装シート12Bの交点から前後方向にそれぞれ50mm以内(吸収体56の括れ部56Nと重複する部分は含まない)とするのが好ましい。
【0088】
剛性(剛度)は、JIS K 7171(プラスチック‐曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体200の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体200から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を50mmとして、互いに平行に且つ両先端部の高さ位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重‐たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0089】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0090】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0091】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0092】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0093】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0094】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40が幅方向側部から吸収体56の裏面側まで回り込み、ホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
【0095】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0096】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。また、液不透過性シート11を表面シート30側面の両側部まで延在させる代わりに、バリヤーカフスに上記のような液不透過性のシートを取付けて、あるいは内在させて、側部の防漏性を高めても良い。
【0097】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の接触により模様及び色彩の少なくとも一方が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0098】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
【0099】
本形態では、図7及び図8にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0100】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0101】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0102】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0103】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0104】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0105】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0106】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0107】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0108】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0109】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図6に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0110】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図10に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61をトップシート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0111】
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0112】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。
【0113】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0114】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図9にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0115】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
【0116】
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0117】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0118】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0119】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0120】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0121】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0122】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0123】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0124】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0125】
この包被シート58は、図6に示すように、吸収体56全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0126】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0127】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
【0128】
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
【0129】
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0130】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0131】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0132】
<他の応用例:吸汗シートの取付部分に関して>
図13に示すように、外面側層における吸汗シート20と重なる部分に複数の貫通孔hが形成されていると通気性が向上し、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなるため好ましい。貫通孔hの大きさは特に限定しないが、1個の開口面積が1〜10mm2であるのが好ましく、2〜7mm2であるのがより好ましい。また、貫通孔hの開口面積の合計が吸汗シート20の総面積に対して占める割合は、10〜70%であるのが好ましく、20〜50%であるのがより好ましい。図13に示す例は、上述したパンツ型使い捨ておむつの形態への適用例であるが、止着式の使い捨ておむつにおいても適用でき、この場合、トップシート30、液不透過性シート11、外装シート12の少なくとも一つに貫通孔を形成することができる。
【0133】
また、図13(b)に示すように、外面側層が複数のシート状資材12,12が貼り合わされて形成されている場合、内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置していると、ウエスト側端部におけるシート状資材層数を更に減らすことができるようになり、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなるため好ましい。図13に示す例は、上述したパンツ型使い捨ておむつの形態への適用例であり、外面側層を構成するシート状資材間に胴回り部弾性伸縮部材15,19が挟まれて固定されているものであるが、止着式の使い捨ておむつにおいても適用でき、この場合、トップシート30又は液不透過性シート11の少なくとも一方におけるウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置される。(ウエスト部の通気性向上の観点から、液不透過性シート11のウエスト側端縁を、股間側に位置させるのがより好ましい。)
【0134】
また、図14に示すように、背側外装シート12Bをウエスト側端縁において内面側(肌側)に折り返し、この折り返し部分12rの股間側端部により吸汗シート20のウエスト側端部の内面を覆うように構成することもできる。この場合、腹側外装シート12Fの幅方向両側部と背側外装シート12Bの幅方向両側部とを溶着接合する際、それらの間に融着性に乏しい吸汗シート20を挟んで溶着しても、特に強い力が加わるウエスト側端部では折り返し部分12rの溶着により接合強度を確保できる。なお、図14に示す例では、図13(b)に示す例と同様に、背側外装シート12Bの内面側に位置する内面側シート状資材12のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置しているが、これに限られるものではなく、図13(a)に示す例と同様に、内面側シート状資材12のウエスト側端縁が背側外装シート12Bのウエスト側端縁まで延在していても良い。また、図14に示す例の吸汗シート20は、一枚のシート状資材を筒状に折り畳み、内空部に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでいるが、これに限られるものではなく、図13(a)に示す例と同様の構造としても良い。
【0135】
また、図15に示すように、外面側層(背側外装シート12B)全体のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置している形態も採用できる。この場合、ウエスト側端部が吸汗シート20のみにより構成されるため、シート状資材層数を更に減らすことができるようになり、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなる。なお、図15に示す例の吸汗シート20は、一枚のシート状資材を筒状に折り畳み、内空部に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでいるが、これに限られるものではなく、シート状資材を二枚張り合わせて吸汗シート20を形成するとともに、シート状資材間に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでも良く、また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17を設けない形態等においては、一枚のシート状資材により形成しても良い。さらに発展させて、図16に示すように、外面側層(図示例では外側シート状資材12)のウエスト側端部に、吸汗シート20を構成する一枚のシート状資材を継ぎ足し、このシート状資材をおむつのウエスト側端縁において内面側(肌側)に折り返し、この折り返し部分と外面側部分との間に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟持させることもできる。図示例では、吸汗シート20の折り返し部分は内装体200のウエスト側端部を覆う程度まで股間側に延在しているが、これに限られるものではない。
【0136】
<吸汗インジケータ>
吸汗シート20は、汗を吸収したときに色変化を起す機能、つまり吸汗インジケータ機能を有するように構成する。これにより、おむつ外面からその色変化を視認することにより発汗の有無等を知ることができ、不快感の解消やかぶれ等の防止を図ることができるようになる。
【0137】
このような色変化を起す吸汗シート20は、例えば、汗との接触により色が変化(無色から有色への変化を含む)するインジケータ物質を吸汗シート20(好ましくは外面)に付与することにより形成することができる。インジケータ物質の例としては、水分との接触により呈色反応を示すような着色剤や、水分中のpHを検知して呈色反応を示すような着色剤を挙げることができる。水分との接触により呈色反応を示すような着色剤としては、水溶性、水分解性染料又はロイコ染料と該ロイコ染料を発色させるフェノール性化合物、酸性物質、電子受容性物質等の顕色剤とからなる着色剤を使用できる。水分中のpHを検知して呈色反応を示すような着色剤としては、ブロモフェノールブルー、メチルレッド等の指示薬を使用できる。
【0138】
これらのインジケータ物質は、溶媒に分散した状態の塗工液として吸汗シート20に塗布することができる他、ホットメルト接着剤に含有させた状態であるいは熱可塑性の親水性ポリマーに含有させたホットメルトタイプの化合物として吸汗シート20に塗布することもでき、後者の場合、吸汗シート20を外面側層に固定するホットメルト接着剤HMにインジケータ物質を含有させることもできる。なお、インジケータ物質を含有するホットメルト接着剤の塗布量は20〜30g/m2であることが好ましい。20g/m2より少量であるとインジケータとしての機能が損なわれ、30g/m2より多いと接着剤の硬化によるゴワ付き感が生じる。
【0139】
また、吸汗シート20に、水性インクを用いて模様又は色彩を印刷し、吸汗時に汗の水分により水性インクが滲むことを利用して色変化を発生させるインジケータとすることもできる。この場合、油性インクを組み合わせて用いることで、滲まない模様又は色彩を付与することができる。
【0140】
なお、インジケータの着色剤やインクが水分に溶出する特性を有する場合、肌に接する吸汗シート20から着色剤やインクが肌に転移し、肌が着色してしまうおそれがある。そこで、前述のように、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、肌の着色を防止できるようになる。
【0141】
図17は、吸汗シート20におけるインジケータ物質付与部分(変色領域)22の各種形態を示したものである。図17(a)に示す形態はウエスト端部に近づくほど変色領域が大きくなり、かつインジケータ物質による着色が濃くなる形態であり、図17(b)に示す形態は幅方向中央側ほどインジケータ物質による変色部分の面積が大きくなる形態であり、図17(c)に示す形態はインジケータ物質により変色する斜線部分が幅方向に複数列設けられているものであり、図17(d)に示す形態はインジケータ物質により変色する縦線部分が幅方向に複数列設けられているものであり、図17(e)に示す形態はインジケータ物質により変色する点線状の横線部分が縦方向に間隔を空けて複数列設けられているものである。
【0142】
吸汗インジケータ機能を付加する場合、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層して吸汗シート20を構成すると、発汗量が少ない場合には汗が外側の層まで到達せず、色変化の発生する層数が少なくなり、反対に発汗量が多い場合には汗がより外側の層まで到達し、色変化の発生する層数が多くなるため、発汗量の多少により吸汗シート20全体としての色変化に違いが出るようになる。よって、発汗の程度を判別できるようになる。
【0143】
外面側層に不織布を用いる場合において吸汗シート20に吸汗インジケータ機能を付加する場合、外面側層の不織布における酸化チタン含有量が0〜1重量%、特に0〜0.5重量%であると、不透明度が抑えられることにより、吸汗シート20の色変化が視認し易くなるため好ましい。
【0144】
色彩が変化する吸汗インジケータ機能を付加する場合は、ウエスト部弾性伸縮部材21には酸化チタン含有量が3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは酸化チタン含有量が0重量%の合成ゴム(ポリウレタン樹脂)を用い、吸汗シートのインジケータの少なくとも一部がウエスト部弾性伸縮部材21と接触するように配置すると、吸汗インジケータの色変化の視認の妨げにならないだけでなく、透明度の高い樹脂内の光の乱反射により、インジケータの色彩がより鮮やかに視認できるため、好ましい。またこの場合は、前述のインジケータ物質を含むホットメルト接着剤あるいはホットメルト化合物を弾性伸縮部材21に直接塗布すると、乱反射による効果がより鮮やかなものとなる。この場合、弾性伸縮部材21の太さは、620dtex以上のものが好ましく、925dtex以上のものがより好ましく、弾性伸縮部材21の主におむつ内面側の面にインジケータを塗布することが好ましい。
【0145】
前述の止着式使い捨ておむつの形態において、あるいはパンツ型おむつの形態で吸汗シート20が内装体200のウエスト側端部までを覆うように延在する場合においては、液不透過性シート11の内側に設ける排泄インジケータ80を、液不透過性シート11のウエスト側端部にまで延在させてもよい。このように構成すると、排泄インジケータ80と吸汗シート20との間には液透過性のシートしか存在しないため、吸汗シート20に吸収された汗は排泄インジケータ80にまで浸透する。よって、インジケータ80は汗の接触によって模様あるいは色彩が変化する、吸汗インジケータとしても機能することができる。こうすると、吸汗インジケータと排泄インジケータを個別に設ける必要が無い点で好ましい。またこの場合、排泄インジケータ80はウエスト側端部にまで延在し、吸収体の存在しない端部フラップ部にも設けられることになるが、吸汗シート20によって被覆されているため、インジケータの色素が水分に溶出してトップシート30側に滲出しても、着用者の肌には付着し難い。そして、前述のように、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、肌の着色防止の効果はより一層のものとなる。
【0146】
<他の応用例:吸汗シートの抗菌に関して>
吸汗シート20には抗菌剤を含有させることができ、特に肌と接触する内面に含有させるのが好ましい。抗菌剤としては、第4級アンモニウム塩や、繊維金属を含む錯体、塩、アルカリ及び酸等、公知のものを用いることができる。
【0147】
<他の応用例:吸汗シートによる冷却に関して>
吸汗シート20による吸汗には限界がある。よってこれを補うために、図18に示すように汗との接触により熱を吸収する冷却物質25を吸汗シート20に含有させ、発汗を抑制するのは好ましい。冷却物質25は吸汗シート20の全体に含有されているのが好ましいが、一部のみ、例えば周縁部を除く主要部分のみや、幅方向中央部のみに含有されていても良い。
【0148】
冷却物質25は、汗に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、汗を冷却又は加熱するものである。汗への溶解により熱を吸収する冷却物質25の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は汗素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。汗への溶解により吸熱する物質を用いる場合、汗への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0149】
吸熱反応を起す冷却物質25のうちパラフィン等のように固体から液体への相変化を起すものはマイクロカプセル又は包接体内に封入するのが望ましい。この場合におけるマイクロカプセルのシェル物質としてはメラミン樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。また、マイクロカプセルの粒径としては、0.5〜10μm程度が好適である。包接化合物としてはシクロデキストリンやゼオライト等を用いることができる。
【0150】
冷却物質25は、粒子状(粉体状含む)のものが好適に用いられるが、繊維状、シート状等の他の形状のものを用いることもできる。
【0151】
吸汗シート20における冷却物質25の保持構造は適宜定めることができるが、例えば、図18に示す例のように吸汗シート20を表裏層26,27及びこれらの間の中層28からなる三層構造とし、中層28に冷却物質25を含有させたり、図示しないが吸汗シート20を袋状や筒状に形成してその内部に冷却物質25を封入したりすることができる。また、これらとは別に又はこれらと組み合わせて、冷却物質25をホットメルト接着剤等の接着剤により又は冷却物質25自体の溶融により吸汗シート20の表面又は内部に付着させたりすることができる。
【0152】
冷却物質25による冷却を図る上で、冷却物質25と接触して冷却された汗の挙動は重要である。すなわち、冷却された汗が吸汗シート20全体に、さらにトップシート30を伝って吸収体56に分散され易いと、冷却効果が持続し難くなる。よって、吸汗シート20に高吸収性ポリマー等の高吸収性材料を配置する場合は、吸汗シート20における肌側面(表層表面)近傍に配置し、冷却物質25により冷却された汗を肌近傍に止め、冷却効果の持続性を向上させるのが好ましい。例えば、図示の三層構造の場合、冷却物質25を含む中層28を二層構造とし、肌側を高吸収性材料29を含む層、反対側を冷却物質25を含む層としたり、図示しないが中層28を冷却物質25と高吸収性材料29とを混合して形成したりすることができる。高吸収性材料29として特に好ましいのは高吸収性ポリマーであり、前述した吸収体56中に含有させるものと同様のものを用いることができるが、特にJIS K 7224に基づく吸水速度が50秒以下のものが好適である。吸水速度が遅いと、冷却された汗が分散し易くなる。
【0153】
図18に示す例のような三層構造においては、表裏各層26,27を薄葉紙や不織布等の液透過性繊維集合シートで形成することができる。表裏各層26,27としては、前記包被シート58と同様のものを用いてもよく、また、溶着による接合を可能とするため、熱融着性繊維を有するものも好ましい。特に肌当接面である表層26には、コットン繊維を含む不織布を用いるのが好ましい。コットンは吸油性を有するため、肌をサラサラに保つことがで、吸汗性との相乗効果で肌をより快適に保つことが可能となる。具体的にコットン繊維を含む不織布としては、コットン繊維を含むスパンレース不織布が柔軟性や吸収性の面で好適である。また、十分な冷却効果を得るためには、次の条件を満足するように構成するのが好ましい。
表層(肌側層)26の素材:コットン繊維を含むスパンレース不織布
表層26の厚み:0.1〜0.5mm
表層26の目付け:10〜45g/m2
中層28の素材:肌側から順に高吸収性ポリマー(高吸収性材料29)、冷却物質25、さらに、これらの層間あるいは周囲にパルプ繊維や合成繊維等の繊維材料を含んでもよい
冷却物質25の種類:汗への溶解により吸熱反応を起すもの。
冷却物質25の溶解度(温度20℃の100mlの水に対する):30g以上、特に50g以上
冷却物質25の目付け:30〜100g/m2
冷却物質25により吸汗シート20に生じうる熱量変化の総量:30cal以上、特に100cal以上
中層28の高吸収性ポリマー29の吸収速度:70秒以下、特に50秒以下
中層28の高吸収性ポリマー29の目付け:20〜150g/m2
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、上記例のような止着式使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつに好適なものであるが、他の形態の使い捨ておむつにも適用できるものである。例えば、パンツ型使い捨ておむつでは、上記例のような腹側外装シートと背側外装シートが離間された構造に限らず、腹側から股間部を経て背側に至る一体的な外装シートを有する構造も当然含み、また、おむつカバー型のおむつとパッド型のおむつを組み合わせて用いるようなその他の形状の使い捨ておむつにも適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
10…吸収性本体部、11…液不透過性シート、12…外装シート、20…吸汗シート、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…繊維、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエスト側端部に吸汗シートを備えた使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの多くは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素が介在する部分である吸収性本体部と、この吸収性本体部の前側及び後側に延出する部分であって、且つ吸収要素を有しない部分である腹側及び背側延出部とを有している。いわゆる止着式(テープ式)のものでは、背側の両側部にファスニング片がそれぞれ設けられており、これらファスニング片を腹側外面に係止することで装着を行い、パンツ型のものでは背側の両側部と腹側の両側部とがそれぞれ接合され、ウエスト開口部及び脚開口部が予め形成されており、脚開口部に脚を通して胴回りまで引き上げることにより装着を行う。
使い捨ておむつにおいては、背側上端部及び腹側上端部からなる胴回り部分が肌により密着するため、この部分において発汗し易くなり、蒸れによる不快感や、おむつかぶれをもたらすことがある。そこで、これを解決するために、背側上端部及び腹側上端部の少なくとも一方の内面に吸汗シートを貼り付けることが提案されている。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−189454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものは一般的な構造のおむつに対して単に吸汗シートを付加しただけであったため、汗を吸うことはできるものの、吸汗シートを付加した部分において資材積層数の増加により蒸れ易くなるという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、吸汗機能を付加しつつ蒸れ難い使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
液透過性のトップシートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、吸収体の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部を備えた、使い捨ておむつにおいて、
前記延出部から前記吸収体の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層が前記トップシートではなく、前記トップシートとは別体の吸汗シートにより構成されるとともに、前記吸汗シートより製品外面側に前記トップシートが延在され、かつこれら吸汗シートとトップシートとの間にウエスト部弾性伸縮部材が挟まれて固定されており、かつ、
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0006】
(作用効果)
使い捨ておむつでは、パンツ型はもちろんのことテープ式のものにおいても、ウエスト側端部を身体にフィットさせるために、ウエスト側端部を構成するシート状資材層の間にウエスト部弾性伸縮部材を挟んで固定することが一般的となっている。本発明は、この構造を利用し、ウエスト部弾性伸縮部材を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シートで構成し、ウエスト部弾性伸縮部材の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも、蒸れ易くなるのを防止したものである。
また、従来の吸汗シートは、汗を吸収するだけのものであったため、装着者が実際に発汗したかどうかまでは判らず、不快感の解消やかぶれ等の防止を図り難いという問題点があった。しかし、本項記載のように、吸汗シートが汗を吸収したときに色変化を起すように構成すれば、おむつ外面からその色変化を視認することにより発汗の有無等を知ることができ、不快感の解消やかぶれ等の防止を図ることができるようになる。特に、外面側層における吸汗シートと重なる部分に複数の貫通孔を形成する場合において、貫通孔の位置が吸汗シートの色変化部分と重なる位置にあると、汗を吸収した吸汗シートの色変化を、おむつ外面から視認し易くなるため好ましい。
また、本項記載のように、延出部から吸収性本体部のウエスト側端部にわたる部分に、吸汗シートからなる最内層、外面側層及びウエスト部弾性伸縮部材を有し、且つ外面側層が透液性トップシートにより形成されている構造にすると、ウエスト部弾性伸縮部材によって延在部及び吸収性本体部のウエスト側端部までの部分が装着者の腰に弾性的にフィットするようになるとともに、上述した本発明の作用効果を発揮させることができるため好ましい。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記外面側層は、複数のシート状資材が貼り合わされて形成されているものであり、この複数のシート状資材のうち内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が前記吸汗シートのウエスト側端部より股間側に位置している、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
このような構造を採用することにより、外面側層内の資材間に胴回り部弾性伸縮部材を挟持できる構造でありながら、ウエスト側端部におけるシート状資材層数を更に減らすことができるようになり、本発明の蒸れ防止効果がより一層のものとなる。特に、吸汗シートが汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである場合においては、吸汗シートの色変化をおむつ外面から視認し易くなるため好ましい。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層してなるものである、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
このような構造を有していると、発汗量が少ない場合には汗が外側の層まで到達せず、色変化の発生する層数が少なくなり、反対に発汗量が多い場合には汗がより外側の層まで到達し、色変化の発生する層数が多くなるため、発汗量の多少により吸汗シート全体としての色変化に違いが出るようになる。よって、本項記載の発明によれば発汗の程度を判別できるようになる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記外面側層は、酸化チタン含有量が0〜1重量%の不織布により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
ウエスト側端部を構成するシート状資材としては不織布が広く採用されており、不透明度や白色度を上げるために原料繊維中に酸化チタンを含有するものが広く採用されている。しかし、外面側層に不織布を用いる場合において酸化チタン含有量が高過ぎると、吸汗シートの色変化が視認し難くなる。よって、外面側層に不織布を用いる場合にはその酸化チタン含有量が本項記載の範囲内にあるのが好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記ウエスト部弾性伸縮部材は、酸化チタン含有量が3重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
ウエスト部弾性伸縮部材としては、合成ゴム(ポリウレタン樹脂)が広く採用されており、不透明度や白色度を上げるため、あるいは糸状ゴムの場合は紡糸性を向上させるために原料樹脂中に酸化チタンを含有するものが広く採用されている。しかし、酸化チタン含有量が高過ぎると、吸汗シートの色変化の視認の妨げとなる。よって、ウエスト部弾性伸縮部材として合成ゴムを用いる場合には、その酸化チタン含有量が本項記載の範囲内にあるのが好ましい。そして、このように透明度が高いと、弾性伸縮部材内部の光の乱反射により、インジケータの色彩がより鮮やかに視認できるようにもなるため、好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸汗シートは、高吸収性ポリマーを含有する層と、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を含む層を含む複数層からなる積層体であり、前記高吸収性ポリマーを含有する層が、前記冷却物質を含む層よりも肌側に位置する面に位置するよう構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
従来の吸汗シートは、伸縮性を要する部位に取り付けられるため、吸収体のような高目付で嵩高のものは使用できず、吸収量には限界があった。これを補うために、本項記載のように、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を吸汗シートに含有させ、発汗を抑制するのは、好ましい構成である。さらに、高吸収性ポリマーを含有する層が肌側に配置されていると、冷却物質により冷却された汗を肌近傍に止め、冷却効果の持続性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、吸汗機能を付加しつつ蒸れ難い使い捨ておむつとなる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】止着式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図5】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図6】図1の6−6断面図である。
【図7】図1の7−7断面図である。
【図8】図1の8−8断面図である。
【図9】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図10】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図11】製品状態の正面図である。
【図12】製品状態の背面図である。
【図13】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図14】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図15】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図16】他の形態を示す要部拡大断面図である。
【図17】各種の吸汗インジケータの形態を示す概略図である。
【図18】吸汗シートの他の形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、止着式とパンツ型の使い捨て紙おむつの形態について順に説明する。以下の説明において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側(前側)の両側部と背側(後側)両側部とを重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0020】
<止着式使い捨ておむつの一形態>
図1〜図3は止着式使い捨ておむつの一例を示している。図2及び図3は、図1における2−2線断面及び3−3線断面をそれぞれ示した図である。この止着式使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシート30と、外面側に位置する液不透過性シート11との間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側延出部FE及び背側延出部BEとを有するものである。
【0021】
また、この止着式使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニング片130がそれぞれ設けられている。
【0022】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0023】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60,60が設けられており、この側部バリヤーカフス60,60を形成するバリヤーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0024】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
【0025】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0026】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0027】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0028】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0029】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0030】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0031】
(側部バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60、60を設けるのは好ましい。
【0032】
この側部バリヤーカフス60は、実質的に幅方向に連続するバリヤーシート62と、このバリヤーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このバリヤーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0033】
バリヤーシート62は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、バリヤーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0034】
脚周りにおいては、側部バリヤーカフス60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部バリヤーカフス60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0035】
図示形態と異なり、バリヤーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0036】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。包被シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0037】
(吸収体)
吸収体56は、繊維52,52の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0038】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、図2に示すように高吸収性ポリマー粒子54,54…を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0039】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0040】
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0041】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0042】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0043】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0044】
この包被シート58は、図2のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0045】
(ファスニング片)
ファスニング片130は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるファスニング基材130Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック要素130Aが設けられている。フック要素130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0046】
本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、ファスニング片130の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さは、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニング片130の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さは20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニング片130の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニング片130の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック要素130Aに代えて、ファスニング片130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0047】
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニング片を腹側F外面の適所に係止する。ファスニング片130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁F1との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0048】
腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所には、係止を容易にするためにターゲットテープ74を設けるのが好ましい。ターゲットテープ74は、係止部がフック要素130Aの場合、フック要素の係合突起が絡まるようなループ糸が表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なフィルム状のものを用いることができる。
【0049】
また、腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニング片130の係止部がフック要素130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック要素130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。
【0050】
ファスニング片130は、背側延出部BEと吸収要素50の境界線上にファスニング片130の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニング片130の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側延出部BEの前後方向長さは、ファスニング片130の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0051】
(延出部)
延出部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側延出部FEであり、後側の延出部分が背側延出部BEである。
【0052】
背側延出部BEの前後方向長さは、ファスニング片130の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収体56とが近接しすぎると、吸収体56の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0053】
腹側延出部FE及び背側延出部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0054】
(背側伸縮部)
特徴的には、おむつ背側部におけるフィット性を向上させるために、背側のウエスト側端部における両側部バリヤーカフス60,60間に、幅方向に弾性伸縮する背側伸縮部が設けられている。すなわち、背側のウエスト側端部における両側部バリヤーカフス60,60間の部分は、幅方向に沿って延在する帯状の吸汗シート20からなる最内層と、この最内層の外面側に位置するトップシート30、液不透過性シート11、外装シート12からなる外面側層と、これら最内層20と外面側層30,11,12との間に幅方向沿って伸張した状態で挟持固定されたウエスト部弾性伸縮部材21とを有している。符号HMは、吸汗シート20及びトップシート30を接合し、ウエスト部弾性伸縮部材21を固定するためのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。この接着剤HMは、例えばスパイラル塗布やスロット塗布により塗布されるものである。
【0055】
吸汗シート20は肌に接触して汗を吸収する、保水性を有するものである。吸汗シート20は、表面シート30よりも保水量が高いもの、特に保水量が1.5倍以上のものが好ましく、具体的な保水量としては、1.0g/100cm2以上であるものが好ましく、3.0g/100cm2以上であるものがより好ましく、5.0g/100cm2以上であるものが特に好ましい。なお、保水量の測定は、JIS L 1906附属書の「3.2 保水率」に基づき測定し、湿潤前後の重量差を保水量とする。なお、試験液とする水の温度は、35℃のものを用いる。
【0056】
吸汗シート20は、吸汗機能を有するシートであれば不織布、紙、樹脂フィルムなど特に限定されないが、不織布が好適である。不織布を構成する繊維としては、親水性の繊維や、パルプ、レーヨン、コットン、セルロースアセテート等のセルロース繊維や、いわゆる高吸水性ポリマー(SAP)を繊維状にしたあるいは通常の繊維と複合させたSAP繊維といった、いわゆる吸汗繊維が特に好適である。また、高吸収性ポリマー粒子を層間に含有させたシートとしてもよい。不織布の場合、前記吸汗繊維を50%以上、好ましくは70%以上含むものが好ましく、繊維の繊度は1.0〜5.0dtex、繊維の目付けは10〜100g/m2、厚みは0.1〜5.0mm程度のものが好適である。吸汗シート20は、幅方向よりも上下方向の液拡散性に優れたシートであることが好ましい。これにより、吸汗シートが吸収した汗を非接着部分の広い上側に輸送し、効率よく放湿することができる。具体的には、繊維を主に上下方向に配向したり、上下方向に連続した無数の細かな溝を設けたり、親水度を上側に向かって高くしたりすることにより、上下方向の(特に上側に向けての)優れた液拡散性が得られる。また、吸汗シート20に吸収された汗によって着用者の肌が長時間湿った状態にさらされることがないよう、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、好ましい。吸汗シート20の形状は適宜定めることができ、図示形態のような長方形状とする他、楕円状、長円状、瓢箪状等を採用することができる。
【0057】
吸汗シート20の寸法も適宜定めることができる。特に図示形態では、吸汗シート20が背側延出部BEの上端部から吸収性本体部10のウエスト側端部まで延在しており、延出部BEのみならず吸収体本体部10と重なる部分においても、吸汗シート20とトップシート30との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟持固定された伸縮構造を有しているが、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材21は背側延出部BE内に収まるように構成されていても良い。また、おむつ幅方向においては、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材21の両端は、両ファスニング片130の取り付け部分と重なる部位まで延在されており、トップシート30の幅方向両側では吸汗シート20とバリヤーシート62との間にウエスト部弾性伸縮部材21が挟持固定されているが、これに限定されるものではなく、例えばトップシート30と同幅にすることもできる。
【0058】
ウエスト部弾性伸縮部材21としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良く、図示のような細長状(糸状又は紐状等)のものの他、有孔シート状、網状等のものも用いることができる。ウエスト部弾性伸縮部材21として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔21dで5〜15本程度設けるのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材21は150〜250%程度の伸張状態で固定されているのが好ましい。
【0059】
また、ウエスト部弾性伸縮部材21は一部が吸収体56を横断するように配置されていると、吸収体56のフィット性が向上するため好ましいが、この場合、ウエスト部弾性伸縮部材21のうち吸収体56と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収体56の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0060】
なお、上記例においては、弾性伸縮部材21は吸汗シート20とトップシート30との間に挟持固定したが、吸汗シート20と同じ寸法の弾性伸縮部材押さえ用のシート(以下押さえシートと呼ぶ)を用い、吸汗シート20と押さえシートとの間に弾性伸縮部材21を挟持固定した背側伸縮シートを形成し、これをおむつ背側部に配置するようにすると、紙おむつ製造時において、おむつ背側部に背側伸縮部を構成する各部材を順次取付けて背側伸縮部を形成する製造方法だけでなく、予め背側伸縮シートを形成する製造方法を採ることもできるようになり、製造工程の自由度が向上するため、好ましい。また、押さえシートは、吸汗シート20と一体的に吸汗機能を発揮できるように、液透過性のシートであることが好ましく、前述のような吸汗機能を有するシートであることが特に好ましい。
【0061】
このような背側伸縮部においては、ウエスト部弾性伸縮部材21を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シート20で構成し、ウエスト部弾性伸縮部材21の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも蒸れ難くなり、また資材コストも低減することができるようになる。他の応用例については後述する。
【0062】
<パンツ型使い捨ておむつの一形態>
図4〜図12は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。このパンツ型使い捨ておむつは、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁の接合部12Aと背側外装シート12Bの幅方向両側縁の接合部12Aとが、ヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の胴回り部100が形成されているものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが接合部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側カバー部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側カバー部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、接合部12Aは小さな溶着部の集合からなり、接合部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは接合部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0063】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離Yは150〜250mm程度とすることができる。
【0064】
図11及び図12からも判るように、胴回り部100の上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各接合部12Aを剥がして展開した状態では、図4に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を装着者に対して支持する部分である。
【0065】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図7及び図8にも示すように内装体200の外面に固定された部分と、内装体200のウエスト側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である延出部BE,FEとを有するものであり、不織布等のシート状資材12,12を2枚貼り合せて形成されるとともに、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状の胴回り部弾性伸縮部材15,16,19が所定の伸張率で設けられているものである。これらのシート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していない。
【0066】
特徴的には、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bの両者において、延出部BE,FEが、幅方向に沿って延在する帯状の吸汗シート20からなる最内層と、この最内層の外面側に位置する外装シート12F,12Bからなる外面側層と、これら最内層20と外面側層12F,12Bとの間に幅方向沿って伸張した状態で挟持固定されたウエスト部弾性伸縮部材17,18とを有している。符号HMは、吸汗シート20及びトップシート30を接合し、ウエスト部弾性伸縮部材17,18を固定するためのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。この接着剤HMは、例えばスパイラル塗布やスロット塗布により塗布されるものである。
【0067】
吸汗シート20としては、基本的に、止着式の形態で例示したものを用いることができる。ただし、パンツ型使い捨ておむつの場合、図示のように腹側の幅方向両側部12Aと背側の両側部12Aとが溶着により接合される形態が広く採用されているため、このような形態において、吸汗シート20が溶着による接合部に位置する場合に、吸汗シート20も含めて溶着する必要を生ずる。よって、このような場合には、吸汗シート12Aとして熱融着性繊維を20〜50%程度含む不織布を用いるのが好ましい。
【0068】
特に図示形態では、吸汗シート20が延出部BE,FEの上端から内装体200のウエスト側端部まで延在しているが、吸汗シート20は延出部BE,FE内に収まるように構成されていても良い。また、おむつ幅方向においては、吸汗シート20及びウエスト部弾性伸縮部材17,18の両端は、おむつの両側縁まで延在されているが、これに限定されるものではなく、例えば内装体200の幅方向両側縁と接合部12A内装体200との間までしか延在させなくても良い。
【0069】
このように、ウエスト部弾性伸縮部材17,18を挟持固定する内面側のシート状資材層を、最内層をなす吸汗シート20で構成し、ウエスト部弾性伸縮部材17,18の固定専用のシート状資材層の数を減らすことにより、吸汗機能を付加しつつも蒸れ難くなり、また資材コストも低減することができるようになる。他の応用例については後述する。
【0070】
外装シート12F,12Bを構成するシート状資材12としては特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。また、胴回り部及びウエスト部弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良く、図示のような細長状(糸状又は紐状等)のものの他、有孔シート状、網状等のものも用いることができる。
【0071】
より詳細には、背側外装シート12Bは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側カバー部14とを有している。背側カバー部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0072】
背側カバー部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側カバー部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0073】
背側カバー部14の寸法は適宜定めることができるが、図9に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側カバー部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側カバー部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0074】
背側本体部13は、上下方向において概念的にウエスト部Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、ウエスト部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0075】
背側本体部13のウエスト部Wにおける外装シート12F,12Bと吸汗シート20との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。この背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、第1及び第2の細長状弾性伸縮部材15,16に対して太さや伸張率の大小関係無く、自由に定めることができる。
【0076】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0077】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0078】
また、背側カバー部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間においては、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0079】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0080】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側カバー部14を有していないものである。
【0081】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fのウエスト部Wおよび下側部分Uのうち、ウエスト部Wにおける外装シート12F,12Bと吸汗シート20との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0082】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0083】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0084】
図示形態の腹側外装シート12Fは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0085】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体と外装シートが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側カバー部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0086】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図6に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート20に対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0087】
なお、内装体200の幅方向両側部、特に内装体200の幅方向両側縁と腹側外装シート12Fの下端縁との交点近傍及び背側外装シート12Bの下端縁との交点近傍では、内装体200の剛性(剛度)が15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmであると、後述するようなバリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が更に安定するため好ましい。一方、それ以外の部分、例えば幅方向中間部については柔軟性を考慮して、剛性を5〜35cN/50mm、好ましくは10〜25cN/50mmと低くするのが好ましい。なお、剛性を高くする範囲は、幅方向には内装体200の幅方向両側縁から中央側に5〜30mmの範囲、前後方向には内装体200と腹側外装シート12F,背側外装シート12Bの交点から前後方向にそれぞれ50mm以内(吸収体56の括れ部56Nと重複する部分は含まない)とするのが好ましい。
【0088】
剛性(剛度)は、JIS K 7171(プラスチック‐曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体200の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体200から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を50mmとして、互いに平行に且つ両先端部の高さ位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重‐たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0089】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0090】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0091】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0092】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0093】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0094】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40が幅方向側部から吸収体56の裏面側まで回り込み、ホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
【0095】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0096】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。また、液不透過性シート11を表面シート30側面の両側部まで延在させる代わりに、バリヤーカフスに上記のような液不透過性のシートを取付けて、あるいは内在させて、側部の防漏性を高めても良い。
【0097】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の接触により模様及び色彩の少なくとも一方が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0098】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
【0099】
本形態では、図7及び図8にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0100】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0101】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0102】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0103】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0104】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0105】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0106】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0107】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0108】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0109】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図6に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0110】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図10に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61をトップシート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0111】
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0112】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。
【0113】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0114】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図9にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0115】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
【0116】
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0117】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0118】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0119】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0120】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0121】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0122】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0123】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0124】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0125】
この包被シート58は、図6に示すように、吸収体56全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0126】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0127】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
【0128】
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
【0129】
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0130】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0131】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0132】
<他の応用例:吸汗シートの取付部分に関して>
図13に示すように、外面側層における吸汗シート20と重なる部分に複数の貫通孔hが形成されていると通気性が向上し、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなるため好ましい。貫通孔hの大きさは特に限定しないが、1個の開口面積が1〜10mm2であるのが好ましく、2〜7mm2であるのがより好ましい。また、貫通孔hの開口面積の合計が吸汗シート20の総面積に対して占める割合は、10〜70%であるのが好ましく、20〜50%であるのがより好ましい。図13に示す例は、上述したパンツ型使い捨ておむつの形態への適用例であるが、止着式の使い捨ておむつにおいても適用でき、この場合、トップシート30、液不透過性シート11、外装シート12の少なくとも一つに貫通孔を形成することができる。
【0133】
また、図13(b)に示すように、外面側層が複数のシート状資材12,12が貼り合わされて形成されている場合、内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置していると、ウエスト側端部におけるシート状資材層数を更に減らすことができるようになり、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなるため好ましい。図13に示す例は、上述したパンツ型使い捨ておむつの形態への適用例であり、外面側層を構成するシート状資材間に胴回り部弾性伸縮部材15,19が挟まれて固定されているものであるが、止着式の使い捨ておむつにおいても適用でき、この場合、トップシート30又は液不透過性シート11の少なくとも一方におけるウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置される。(ウエスト部の通気性向上の観点から、液不透過性シート11のウエスト側端縁を、股間側に位置させるのがより好ましい。)
【0134】
また、図14に示すように、背側外装シート12Bをウエスト側端縁において内面側(肌側)に折り返し、この折り返し部分12rの股間側端部により吸汗シート20のウエスト側端部の内面を覆うように構成することもできる。この場合、腹側外装シート12Fの幅方向両側部と背側外装シート12Bの幅方向両側部とを溶着接合する際、それらの間に融着性に乏しい吸汗シート20を挟んで溶着しても、特に強い力が加わるウエスト側端部では折り返し部分12rの溶着により接合強度を確保できる。なお、図14に示す例では、図13(b)に示す例と同様に、背側外装シート12Bの内面側に位置する内面側シート状資材12のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置しているが、これに限られるものではなく、図13(a)に示す例と同様に、内面側シート状資材12のウエスト側端縁が背側外装シート12Bのウエスト側端縁まで延在していても良い。また、図14に示す例の吸汗シート20は、一枚のシート状資材を筒状に折り畳み、内空部に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでいるが、これに限られるものではなく、図13(a)に示す例と同様の構造としても良い。
【0135】
また、図15に示すように、外面側層(背側外装シート12B)全体のウエスト側端縁が吸汗シート20のウエスト側端部より股間側に位置している形態も採用できる。この場合、ウエスト側端部が吸汗シート20のみにより構成されるため、シート状資材層数を更に減らすことができるようになり、蒸れ防止効果がより一層のものとなるとともに、後述する吸汗インジケータ機能を付加した場合にその外観変化が視認し易くなる。なお、図15に示す例の吸汗シート20は、一枚のシート状資材を筒状に折り畳み、内空部に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでいるが、これに限られるものではなく、シート状資材を二枚張り合わせて吸汗シート20を形成するとともに、シート状資材間に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟んでも良く、また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17を設けない形態等においては、一枚のシート状資材により形成しても良い。さらに発展させて、図16に示すように、外面側層(図示例では外側シート状資材12)のウエスト側端部に、吸汗シート20を構成する一枚のシート状資材を継ぎ足し、このシート状資材をおむつのウエスト側端縁において内面側(肌側)に折り返し、この折り返し部分と外面側部分との間に背側ウエスト部弾性伸縮部材17を挟持させることもできる。図示例では、吸汗シート20の折り返し部分は内装体200のウエスト側端部を覆う程度まで股間側に延在しているが、これに限られるものではない。
【0136】
<吸汗インジケータ>
吸汗シート20は、汗を吸収したときに色変化を起す機能、つまり吸汗インジケータ機能を有するように構成する。これにより、おむつ外面からその色変化を視認することにより発汗の有無等を知ることができ、不快感の解消やかぶれ等の防止を図ることができるようになる。
【0137】
このような色変化を起す吸汗シート20は、例えば、汗との接触により色が変化(無色から有色への変化を含む)するインジケータ物質を吸汗シート20(好ましくは外面)に付与することにより形成することができる。インジケータ物質の例としては、水分との接触により呈色反応を示すような着色剤や、水分中のpHを検知して呈色反応を示すような着色剤を挙げることができる。水分との接触により呈色反応を示すような着色剤としては、水溶性、水分解性染料又はロイコ染料と該ロイコ染料を発色させるフェノール性化合物、酸性物質、電子受容性物質等の顕色剤とからなる着色剤を使用できる。水分中のpHを検知して呈色反応を示すような着色剤としては、ブロモフェノールブルー、メチルレッド等の指示薬を使用できる。
【0138】
これらのインジケータ物質は、溶媒に分散した状態の塗工液として吸汗シート20に塗布することができる他、ホットメルト接着剤に含有させた状態であるいは熱可塑性の親水性ポリマーに含有させたホットメルトタイプの化合物として吸汗シート20に塗布することもでき、後者の場合、吸汗シート20を外面側層に固定するホットメルト接着剤HMにインジケータ物質を含有させることもできる。なお、インジケータ物質を含有するホットメルト接着剤の塗布量は20〜30g/m2であることが好ましい。20g/m2より少量であるとインジケータとしての機能が損なわれ、30g/m2より多いと接着剤の硬化によるゴワ付き感が生じる。
【0139】
また、吸汗シート20に、水性インクを用いて模様又は色彩を印刷し、吸汗時に汗の水分により水性インクが滲むことを利用して色変化を発生させるインジケータとすることもできる。この場合、油性インクを組み合わせて用いることで、滲まない模様又は色彩を付与することができる。
【0140】
なお、インジケータの着色剤やインクが水分に溶出する特性を有する場合、肌に接する吸汗シート20から着色剤やインクが肌に転移し、肌が着色してしまうおそれがある。そこで、前述のように、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、肌の着色を防止できるようになる。
【0141】
図17は、吸汗シート20におけるインジケータ物質付与部分(変色領域)22の各種形態を示したものである。図17(a)に示す形態はウエスト端部に近づくほど変色領域が大きくなり、かつインジケータ物質による着色が濃くなる形態であり、図17(b)に示す形態は幅方向中央側ほどインジケータ物質による変色部分の面積が大きくなる形態であり、図17(c)に示す形態はインジケータ物質により変色する斜線部分が幅方向に複数列設けられているものであり、図17(d)に示す形態はインジケータ物質により変色する縦線部分が幅方向に複数列設けられているものであり、図17(e)に示す形態はインジケータ物質により変色する点線状の横線部分が縦方向に間隔を空けて複数列設けられているものである。
【0142】
吸汗インジケータ機能を付加する場合、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層して吸汗シート20を構成すると、発汗量が少ない場合には汗が外側の層まで到達せず、色変化の発生する層数が少なくなり、反対に発汗量が多い場合には汗がより外側の層まで到達し、色変化の発生する層数が多くなるため、発汗量の多少により吸汗シート20全体としての色変化に違いが出るようになる。よって、発汗の程度を判別できるようになる。
【0143】
外面側層に不織布を用いる場合において吸汗シート20に吸汗インジケータ機能を付加する場合、外面側層の不織布における酸化チタン含有量が0〜1重量%、特に0〜0.5重量%であると、不透明度が抑えられることにより、吸汗シート20の色変化が視認し易くなるため好ましい。
【0144】
色彩が変化する吸汗インジケータ機能を付加する場合は、ウエスト部弾性伸縮部材21には酸化チタン含有量が3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは酸化チタン含有量が0重量%の合成ゴム(ポリウレタン樹脂)を用い、吸汗シートのインジケータの少なくとも一部がウエスト部弾性伸縮部材21と接触するように配置すると、吸汗インジケータの色変化の視認の妨げにならないだけでなく、透明度の高い樹脂内の光の乱反射により、インジケータの色彩がより鮮やかに視認できるため、好ましい。またこの場合は、前述のインジケータ物質を含むホットメルト接着剤あるいはホットメルト化合物を弾性伸縮部材21に直接塗布すると、乱反射による効果がより鮮やかなものとなる。この場合、弾性伸縮部材21の太さは、620dtex以上のものが好ましく、925dtex以上のものがより好ましく、弾性伸縮部材21の主におむつ内面側の面にインジケータを塗布することが好ましい。
【0145】
前述の止着式使い捨ておむつの形態において、あるいはパンツ型おむつの形態で吸汗シート20が内装体200のウエスト側端部までを覆うように延在する場合においては、液不透過性シート11の内側に設ける排泄インジケータ80を、液不透過性シート11のウエスト側端部にまで延在させてもよい。このように構成すると、排泄インジケータ80と吸汗シート20との間には液透過性のシートしか存在しないため、吸汗シート20に吸収された汗は排泄インジケータ80にまで浸透する。よって、インジケータ80は汗の接触によって模様あるいは色彩が変化する、吸汗インジケータとしても機能することができる。こうすると、吸汗インジケータと排泄インジケータを個別に設ける必要が無い点で好ましい。またこの場合、排泄インジケータ80はウエスト側端部にまで延在し、吸収体の存在しない端部フラップ部にも設けられることになるが、吸汗シート20によって被覆されているため、インジケータの色素が水分に溶出してトップシート30側に滲出しても、着用者の肌には付着し難い。そして、前述のように、吸汗シート20を複数層からなる構造とし、その肌に接する層を、撥水性や疎水性の不織布あるいは穴あきフィルムとすると、吸汗シート20から肌への液の戻りを防止することができるため、肌の着色防止の効果はより一層のものとなる。
【0146】
<他の応用例:吸汗シートの抗菌に関して>
吸汗シート20には抗菌剤を含有させることができ、特に肌と接触する内面に含有させるのが好ましい。抗菌剤としては、第4級アンモニウム塩や、繊維金属を含む錯体、塩、アルカリ及び酸等、公知のものを用いることができる。
【0147】
<他の応用例:吸汗シートによる冷却に関して>
吸汗シート20による吸汗には限界がある。よってこれを補うために、図18に示すように汗との接触により熱を吸収する冷却物質25を吸汗シート20に含有させ、発汗を抑制するのは好ましい。冷却物質25は吸汗シート20の全体に含有されているのが好ましいが、一部のみ、例えば周縁部を除く主要部分のみや、幅方向中央部のみに含有されていても良い。
【0148】
冷却物質25は、汗に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、汗を冷却又は加熱するものである。汗への溶解により熱を吸収する冷却物質25の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は汗素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。汗への溶解により吸熱する物質を用いる場合、汗への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0149】
吸熱反応を起す冷却物質25のうちパラフィン等のように固体から液体への相変化を起すものはマイクロカプセル又は包接体内に封入するのが望ましい。この場合におけるマイクロカプセルのシェル物質としてはメラミン樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。また、マイクロカプセルの粒径としては、0.5〜10μm程度が好適である。包接化合物としてはシクロデキストリンやゼオライト等を用いることができる。
【0150】
冷却物質25は、粒子状(粉体状含む)のものが好適に用いられるが、繊維状、シート状等の他の形状のものを用いることもできる。
【0151】
吸汗シート20における冷却物質25の保持構造は適宜定めることができるが、例えば、図18に示す例のように吸汗シート20を表裏層26,27及びこれらの間の中層28からなる三層構造とし、中層28に冷却物質25を含有させたり、図示しないが吸汗シート20を袋状や筒状に形成してその内部に冷却物質25を封入したりすることができる。また、これらとは別に又はこれらと組み合わせて、冷却物質25をホットメルト接着剤等の接着剤により又は冷却物質25自体の溶融により吸汗シート20の表面又は内部に付着させたりすることができる。
【0152】
冷却物質25による冷却を図る上で、冷却物質25と接触して冷却された汗の挙動は重要である。すなわち、冷却された汗が吸汗シート20全体に、さらにトップシート30を伝って吸収体56に分散され易いと、冷却効果が持続し難くなる。よって、吸汗シート20に高吸収性ポリマー等の高吸収性材料を配置する場合は、吸汗シート20における肌側面(表層表面)近傍に配置し、冷却物質25により冷却された汗を肌近傍に止め、冷却効果の持続性を向上させるのが好ましい。例えば、図示の三層構造の場合、冷却物質25を含む中層28を二層構造とし、肌側を高吸収性材料29を含む層、反対側を冷却物質25を含む層としたり、図示しないが中層28を冷却物質25と高吸収性材料29とを混合して形成したりすることができる。高吸収性材料29として特に好ましいのは高吸収性ポリマーであり、前述した吸収体56中に含有させるものと同様のものを用いることができるが、特にJIS K 7224に基づく吸水速度が50秒以下のものが好適である。吸水速度が遅いと、冷却された汗が分散し易くなる。
【0153】
図18に示す例のような三層構造においては、表裏各層26,27を薄葉紙や不織布等の液透過性繊維集合シートで形成することができる。表裏各層26,27としては、前記包被シート58と同様のものを用いてもよく、また、溶着による接合を可能とするため、熱融着性繊維を有するものも好ましい。特に肌当接面である表層26には、コットン繊維を含む不織布を用いるのが好ましい。コットンは吸油性を有するため、肌をサラサラに保つことがで、吸汗性との相乗効果で肌をより快適に保つことが可能となる。具体的にコットン繊維を含む不織布としては、コットン繊維を含むスパンレース不織布が柔軟性や吸収性の面で好適である。また、十分な冷却効果を得るためには、次の条件を満足するように構成するのが好ましい。
表層(肌側層)26の素材:コットン繊維を含むスパンレース不織布
表層26の厚み:0.1〜0.5mm
表層26の目付け:10〜45g/m2
中層28の素材:肌側から順に高吸収性ポリマー(高吸収性材料29)、冷却物質25、さらに、これらの層間あるいは周囲にパルプ繊維や合成繊維等の繊維材料を含んでもよい
冷却物質25の種類:汗への溶解により吸熱反応を起すもの。
冷却物質25の溶解度(温度20℃の100mlの水に対する):30g以上、特に50g以上
冷却物質25の目付け:30〜100g/m2
冷却物質25により吸汗シート20に生じうる熱量変化の総量:30cal以上、特に100cal以上
中層28の高吸収性ポリマー29の吸収速度:70秒以下、特に50秒以下
中層28の高吸収性ポリマー29の目付け:20〜150g/m2
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、上記例のような止着式使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつに好適なものであるが、他の形態の使い捨ておむつにも適用できるものである。例えば、パンツ型使い捨ておむつでは、上記例のような腹側外装シートと背側外装シートが離間された構造に限らず、腹側から股間部を経て背側に至る一体的な外装シートを有する構造も当然含み、また、おむつカバー型のおむつとパッド型のおむつを組み合わせて用いるようなその他の形状の使い捨ておむつにも適用可能である。
【符号の説明】
【0155】
10…吸収性本体部、11…液不透過性シート、12…外装シート、20…吸汗シート、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…繊維、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、吸収体の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部を備えた、使い捨ておむつにおいて、
前記延出部から前記吸収体の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層が前記トップシートではなく、前記トップシートとは別体の吸汗シートにより構成されるとともに、前記吸汗シートより製品外面側に前記トップシートが延在され、かつこれら吸汗シートとトップシートとの間にウエスト部弾性伸縮部材が挟まれて固定されており、かつ、
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外面側層は、複数のシート状資材が貼り合わされて形成されているものであり、この複数のシート状資材のうち内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が前記吸汗シートのウエスト側端部より股間側に位置している、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層してなるものである、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記外面側層は、酸化チタン含有量が0〜1重量%の不織布により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記ウエスト部弾性伸縮部材は、酸化チタン含有量が3重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記吸汗シートは、高吸収性ポリマーを含有する層と、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を含む層を含む複数層からなる積層体であり、前記高吸収性ポリマーを含有する層が、前記冷却物質を含む層よりも肌側に位置する面に位置するよう構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、吸収体の前後方向少なくとも一方側に延び出る延出部を備えた、使い捨ておむつにおいて、
前記延出部から前記吸収体の端部にわたる部分では、身体に接触する最内層が前記トップシートではなく、前記トップシートとは別体の吸汗シートにより構成されるとともに、前記吸汗シートより製品外面側に前記トップシートが延在され、かつこれら吸汗シートとトップシートとの間にウエスト部弾性伸縮部材が挟まれて固定されており、かつ、
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化するものである、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外面側層は、複数のシート状資材が貼り合わされて形成されているものであり、この複数のシート状資材のうち内面側に位置する内面側シート状資材のウエスト側端縁が前記吸汗シートのウエスト側端部より股間側に位置している、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸汗シートは、汗を吸収すると外面側からの色が変化する層を複数積層してなるものである、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記外面側層は、酸化チタン含有量が0〜1重量%の不織布により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記ウエスト部弾性伸縮部材は、酸化チタン含有量が3重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記吸汗シートは、高吸収性ポリマーを含有する層と、汗との接触により熱を吸収する冷却物質を含む層を含む複数層からなる積層体であり、前記高吸収性ポリマーを含有する層が、前記冷却物質を含む層よりも肌側に位置する面に位置するよう構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−228594(P2012−228594A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187302(P2012−187302)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2008−51290(P2008−51290)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2008−51290(P2008−51290)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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