説明

使い捨てのおむつ

【課題】排泄物によって肌を汚すことのない使い捨てのおむつ。
【解決手段】使い捨てのおむつ1において、透液性のトップシート32の内面側に肌当て用のシート片32bが設けられる。肌当て用のシート片32bの前後方向Aには、排泄物をトップシート32に向かって通過させる開口部38,39が形成され、開口部38,39の幅方向Bの両側それぞれにおけるシート片32bの側部40には、前後方向Aへ伸長状態で延びる弾性部材37が取り付けられる。肌当て用シート片32bの幅方向Bの外側には、防漏堤58が形成されていて、肌当て用シート片32bの側部40が防漏堤58に対して防漏堤58の基縁部と自由縁部との間において接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨てのおむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てのおむつにおいて、排泄物によっておむつ着用者の肌が汚れないようにするための構造は、特開2002−11044号公報(特許文献1)や特表平9−510385号公報(特許文献2)等によって公知である。
【0003】
特開2002−11044号公報に開示のおむつはパンツ型のもので、吸収体を被覆している透液性トップシートの上方にスキンコンタクトシートを有する。このスキンコンタクトシートは、長手方向両端部がトップシートまたはバックシートに接合されていて、股下域に便を通過させるための開口部を有し、弾性部材がその開口部を囲むようにスキンコンタクトシートに伸長状態で取り付けられている。おむつを着用すると、スキンコンタクトシートがトップシートから浮き上がり、着用者の肌に接触可能になる。
【0004】
特表平9−510385号公報に開示のおむつは開放型のもので、縦方向対称軸の両側に縦方向に長い可撓性フラップを有している。フラップのそれぞれは縦方向の側縁のうちの一方に沿って内側ケーシングシートに接続されており、また縦方向対称軸に向かっておむつの横方向へ広がる部分がおむつの股下域においてもう一方のフラップに接合している。ただし、フラップの縦方向の側縁どうしは、便排泄点の中心で最大6cm離間している。
【特許文献1】特開2002−11044号公報
【特許文献2】特表平9−510385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のおむつは、スキンコンタクトシートによって、便等の排泄物が肌に触れることを防止できるのであるが、開口部を通過した排泄物がトップシートの上で横方向へ流れたときにおむつの脚周りから漏れることを防止するための積極的な手段を有していない。それゆえ、このおむつでは、排泄物によって脚周りの肌を汚すという問題が生じかねない。
【0006】
特許文献2に開示のおむつは、縦方向対称軸の両側に設けられた可撓性フラップの側縁のうちの一方が内側透液性ケーシングシートに接続されているから、その透液性ケーシングシートの上で横方向へ流れる排泄物が脚周りから漏れることを防止できる。しかしながら、このおむつでは、フラップのもう一方の側縁どうしを股下域において接合しているから、おむつを着用したときに透液性シートから起立しておむつ着用者の脚周りに接触すべきそのフラップが透液性ケーシングシートに向かって倒伏してしまい、脚周りの肌との間に隙間が生じて排泄物が脚周りから漏れ易くなるという問題が生じかねない。また、その結果として、排泄物が脚周りの肌に触れるという問題も生じかねない。
【0007】
この発明が課題とするところは、従来のおむつにおける前記諸問題の解消を可能にする使い捨てのおむつの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、前後方向と幅方向とを有する股下域と、前記股下域の前方に形成された前胴周り域と、前記股下域の後方に形成された後胴周り域とを有し、前記股下域の内面側に設けられた透液性シートと外面側に設けられた不透液性シートとの間には体液吸収性芯材が介在し、前記透液性シートのさらに内側には、排泄物を通過させることが可能な開口部を有していて前記前後方向へ延びる肌当て用のシート片が、前記前後方向の両端部分を前記前胴周り域と前記後胴周り域とに固定される一方、前記開口部の周辺が前記透液性シートから離間して前記開口部の周辺においての前記透液性シートと肌との接触を防ぐことが可能な使い捨てのおむつである。
【0009】
かかる使い捨てのおむつにおいて、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記肌当て用のシート片は、前記開口部の前記幅方向における両側それぞれに前記前後方向へ延びる側部を有し、前記側部には前記開口部の側方を通って前記前後方向へ伸長状態で延びる少なくとも一条の弾性部材が取り付けられている。前記股下域と前記前後胴周り域とにはまた、前記幅方向における前記前肌当て用のシート片の外側に前記前後方向へ延びる防漏堤が形成されている。前記防漏堤は、前記前後方向へ固定された状態で延びる基縁部分と、前記基縁部分に並行して延びていて変形が自由な自由縁部分と、前記前後方向の両端部分それぞれを形成する前後固定端部分のそれぞれとを有し、前記自由縁部分には前記前後方向へ延びる弾性部材が伸長状態で取り付けられている。前記肌当て用のシート片の前記側部は、前記防漏堤に対して前記基縁部分と前記自由縁部分との間において接合している。
【0010】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記肌当て用のシート片には、前記前後方向において互いに離間するように前記開口部が二つ形成されている。
【0011】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記肌当て用のシート片は、前記透液性シートと向かい合う面が内側となるように前記側部の一部分が前記中心線に並行する折曲案内線に沿って折曲されていて、前記側部は、折曲されている前記一部分において前記透液性シートに接合し、折曲されていない部分において前記防漏堤に接合している。
【0012】
この発明の好ましい実施態様のさらに他の一つにおいて、前記おむつの前後方向における中央部分では前記肌当て用のシート片の前記側部が前記防漏堤に対して非接合状態にある。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る使い捨てのおむつでは、それを着用するときに、肌当て用のシート片がその側部に取り付けられた弾性部材の収縮によって股下域における透液性シートから離間するように吊り上げられた状態になると、肌当て用のシート片は、その側部が防漏堤に接合しているので、防漏堤の起立を促進することができる。防漏堤が起立すれば、その自由縁部分は、おむつ着用者の脚周りへの接触が容易となり、脚周りからの排泄物の漏れを防ぐ能力が向上する。
【0014】
肌当て用のシート片に開口部が二つ形成されている態様のこの発明のおむつでは、開口部それぞれに、おむつ着用者の外性器と肛門とのそれぞれをのぞかせることができる。
【0015】
肌当て用のシート片の側部が前後方向へ延びる折曲案内線に沿って折曲されていて、折曲されている部分では透液性シートに接合し、折曲されていない部分では防漏堤に接合している態様のこの発明では、肌当て用のシート片によって排泄物の幅方向への流れを止めるバリアの形成が可能になる。
【0016】
おむつの前後方向における中央部分で肌当て用のシート片と防漏堤とが非接合状態にあるこの発明のおむつでは、肌当て用のシート片と防漏堤とがその中央部分において互いの動きを拘束することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨てのおむつの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0018】
図1,2は、おむつ1の部分破断斜視図と、その斜視図のII−II線断面図である。図1のおむつ1は、それが着用されたときの状態にあって、前後方向と幅方向と高さ方向とがA,B,Cで示されており、パンツ型に形成されている被覆部2と、被覆部2の内側に形成されている体液吸収部3とを有する。被覆部2は、内側被覆シート6と、外側被覆シート7と、これらシート6,7間に介在する不透液性の防漏シート8とによって形成されていて、股下域11と、股下域11の前方に位置する前胴周り域12と、股下域11の後方に位置する後胴周り域13とを有する。前後胴周り域12,13は、互いの側縁部15,16が合掌状に重なり合い、図1の高さ方向Cへ間欠的に並ぶ複数の部位17において接合して胴周り開口18を形成するとともに股下域11と協働して一対の脚周り開口19を形成している。胴周り開口18と脚周り開口19の周縁部では、複数条の胴周り弾性部材21と脚周り弾性部材22とが内側被覆シート6と外側被覆シート7との間にあって、これらシート6,7の少なくとも一方に伸長状態で接合している。体液吸収部3は、股下域11において前後方向Aへ延びるように形成されているもので、吸液性パネル33aと肌当て用シート33bとを含んでいる。吸液性パネル33aは吸水材31aをティシューペーパ31bで包むことによって形成された体液吸収性芯材31と、芯材31の表面のうちの少なくとも着用者の肌と向かい合う表面を覆う透液性の内面シート32とを含み、肌当て用シート33bは内面シート32よりもさらに内側に設けられている。図2の前後方向Aにおいて、肌当て用シート33bは前端部分34と後端部分36とが前後胴周り域12,13において内面シート32に固定される一方、中間部分35が股下域11において内面シート32からその上方へ離間している。また、図2において、芯材31は、内面シート32と防漏シート8との間に介在していて、その防漏シート8によっておむつ1の外側から被覆された状態にあり、芯材31に吸収された体液はおむつ1から漏れることがない。
【0019】
図3は、図1の部位17における前後胴周り域12,13の接合を外し、おむつ1を前後方向Aと幅方向Bとに展開して得られるおむつ1’の平面図であって、胴周り域弾性部材21で総称される前後の胴周り弾性部材21,21、脚周り弾性部材22によって総称される左右の脚周り弾性部材22,22、および肌当て用シート33bに伸長状態で取り付けられていて股下域弾性部材37によって総称される左右の股下域弾性部材37,37が鎖線で示されている。なお、この発明においての左右とは、おむつ1の着用者にとっての左右を意味しており、おむつ1’は、幅方向Bの寸法を二等分する縦中心線P−Pと、前後方向Aの寸法を二等分する横中心線Q−Qとを有し、縦心線P−Pに関して左右対称である。 図3において、被覆部2は砂時計型に形成されており、体液吸収部3は矩形に形成されている。体液吸収部3における肌当て用シート33bは、不織布やプラスチックフィルム等のシート片によって形成されていて、好ましくは不透液性であり、吸液性パネル33aの両側縁33,33に沿って前後方向Aへ延びる両側部40,40を有し、これら両側部40,40が中間部分35によってつながれている。これら両側部40,40と中間部分35とは、股下域11から前胴周り域12に向かって延びるU字形の前方開口部38を画成するとともに、股下域11から後胴周り域13に向かって延びるU字形の後方開口部39を画成している。前方開口部38は、側縁71で総称される左右両側縁71,71と、これら両側縁71,71をつなぐ湾曲した底縁72とを有する。また、後方開口部39は、側縁73で総称される左右両側縁73,73と、これら両側縁73,73をつなぐ湾曲した底縁74とを有する。肌当て用シート33bの股下域弾性部材37,37は、好ましくは各一条の糸ゴムで形成されていて、前方開口部38と後方開口部39それぞれの側方を通って前後方向Aへ延びている。おむつ1の股下域11が図1,2の如く前後方向Aにおいて湾曲すると、これら弾性部材37、37は前後方向Aへ収縮して、肌当て用シート33bの前後方向Aの寸法を縮め、中間部分35を内面シート32からその上方へ離間させるように作用する(図2参照)。
【0020】
体液吸収部3にはまた、肌当て用シート33bの両側部40、40に重なって前後方向Aへ延びており、防漏堤58で総称される一対の防漏堤58,58が形成されている。
【0021】
図4は、おむつ1’の分解組立図である。外側被覆シート7は不織布やプラスチックフィルムで形成されており、その内面(図における上面)には、胴周り弾性部材21と脚周り弾性部材22とがホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸長状態で取り付けられる。その内面にはまた、不透液性のプラスチックフィルムで形成された防漏シート8が接着または溶着により接合される。外側被覆シート7と防漏シート8との内面には、外側被覆シート7と同形同大で不織布またはプラスチックフィルムで形成された内側被覆シート6が接着または溶着により接合される。内側被覆シート6の内面(図における上面)にはホットメルト接着剤(図示せず)を介して体液吸収部3における吸液性パネル33aの外面(図における下面)のほぼ全体が接合される。
【0022】
図1のおむつ1を着用するときには、図3に示されている前方開口部38に着用者の外性器がのぞき、後方開口部39に肛門がのぞき、中間部分35が外性器と肛門との間において肌に当接するように着用状態を整える。その着用状態を実現するうえにおいて、前方開口部38における底縁72は横中心線Q−Qよりも前方に位置し、後方開口部39における底縁74は横中心線Q−Qの上、または横中心線Q−Qの付近に位置していることが好ましい。
【0023】
この発明に係る使い捨てのおむつは、それが乳幼児用のものであるか大人用のものであるかによって、おむつの各部の寸法は大きく異なる。また、そのおむつが図示例のパンツ型のおむつ1であるか、それとも開放型のおむつであるかということによっても各部の寸法は大きく異なる。しかし、一般的には、おむつ1における縦中心線P−P上における中間部分35の前後方向Aの寸法D(図3参照)は、20〜70mmであることが好ましい。前方開口部38と後方開口部39の幅方向Bにおける最大寸法D,D(図3参照)は、50〜400mmであることが好ましい。
【0024】
図5〜8は、体液吸収部3の詳細を示す図であって、図5は、図4に示した体液吸収部3を拡大するとともに部分的に破断した状態で示しており、図6〜8は図5におけるVI−VI線、VII−VII線、VIII−VIII線に沿う切断面を示している。なお、VIII−VIII線は、横中心線Q−Qに一致している。
【0025】
図5〜8において、体液吸収部3の吸液性パネル33aは、粉砕パルプや粉砕パルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等からなる吸水材31aの集合体とティシューペーパ31bとで形成された芯材31と、内面シート32とを含んでいる。吸液性パネル33aに対しては、おむつ1’の縦中心線P−Pと横中心線Q−Qも示されている。肌当て用シート33bは、それを形成している不織布の図における下面に股下域弾性部材37,37を縦中心線P−Pに関して対称となるようにホットメルト接着剤(図示せず)を使用して伸長状態で取り付けたものである。股下域弾性部材37は、前方開口部38の側縁71と後方開口部39の側縁73とに沿う第1,第2部分81,82がほぼ直状に延びていて、中間部分35において底縁72と74とに沿う第3部分83が縦中心線P−Pに向かって凸となるように湾曲している。もう一方の股下域弾性部材37は、前方開口部38の側縁71と後方開口部39の側縁73とに沿う第1,第2部分81,82がほぼ直状に延びていて、中間部分35において底縁72と74とに沿う第3部分83が縦中心線P−Pに向かって凸となるように湾曲している。肌当て用シート33bの幅方向Bにおいて、弾性部材37と37とは、中間部分35で最も接近した状態にある。肌当て用シート33bの両側部40,40それぞれは、前後方向Aにおいて、ホットメルト接着剤49を介して内面シート32に接合している前後端部分34,36と、両側部40,40をつないで前後方向Aに寸法D1(図4参照)を有する中間部分35と、前端部分34と中間部分35との間にある前方域78と、後端部分36と中間部分35との間にある後方域79とを有する。
【0026】
さらに、図5において、体液吸収部3に設けられる防漏堤58,58は、不織布やプラスチックフィルム等のシート片をZ字型または逆Z字型に折り重ねることによって形成されていて、好ましくは不透液性である。防漏堤58,58には前後方向Aへ伸長状態で延びていて弾性部材63で総称される弾性部材63,63が含まれている。図6〜8には、その防漏堤58のうちの逆Z字型に折り重ねられた防漏堤58が示されている。
【0027】
図6は、肌当て用シート33bの後端部分36を横切る切断面を示している。なお、肌当て用シート33bの前端部分34を横切って図6の切断面に平行する切断面は、図6とほぼ同じ状態にある。図6において、後端部分36は、その幅方向のほぼ全体がホットメルト接着剤49を介して内面シート32に接合している。防漏堤58は、幅方向Bにおいて肌当て用シート33bの外側に形成されているもので、その底辺59aがホットメルト接着剤61aを介して吸液性パネル33aの外面に接合し、中間辺59bがホットメルト接着剤61dを介して肌当て用シート33bに接合している。防漏堤58の中間辺59bと頂辺59cとはホットメルト接着剤61eを介して接合している。また、図5において明らかなように、防漏堤58の前後端部分59d、59eにおける中間辺59bが肌当て用シート33bから前後方向Aへ延出する部分において、ホットメルト接着剤61dを介して内面シート32に固定されている。
【0028】
図7は、肌当て用シート33bの後方域79を通る切断面を示している。なお、肌当て用シート33bの前方域78を通りVII−VII線に平行する切断面は、図7とほぼ同じ状態にある。図7において、肌当て用シート33bの後方域79は、内面シート32に接合しておらず、内面シート32から離間可能な状態にある。防漏堤58は、底辺59aのうちで、接着剤61aによって吸液性パネル33aに固定されていて前後方向Aへ延びている部分を基縁部分とし、頂辺59cのうちで、弾性部材63が伸長状態で取り付けられていて基縁部分に並行している弾性的に変形自由な部分を自由縁部とするもので、肌当て用シート33bは、これら基縁部分と自由縁部分との間において防漏堤58に接合している。図5の体液吸収部3を有するおむつ1が図1の状態になると、肌当て用シート33bと防漏堤58とは、それぞれの弾性部材37,63が収縮して、図7の仮想線の状態になる。すなわち、図7の肌当て用シート33bが内面シート32から浮き上がるように離間して図の上方へ移動すると、肌当て用シート33bによって防漏堤58の中間辺59bが起立するように引き上げられる。かかる防漏堤58は、おむつ1を着用するときに容易に起立するものである。また、肌当て用シート33bは、それに接合している中間辺59bの幅方向Bにおける動きを拘束しており、防漏堤58が幅方向Bにおいて股下域11の外側へ、即ち図7の右側へ倒れることを防いでいる。その結果として、おむつ1では、幅方向Bへ流れる体液を受け容れ可能なポケット73を内面シート32と防漏堤58との間に確実に形成することができる。そのポケット73は、幅方向Bの内側に向かって開口している。肌当て用シート33bはさらに、それが肌に接触することによって、前方開口部38や後方開口部39の周辺における肌が内面シート32上の排泄物によって汚れることを防ぐことができる。
【0029】
図8は、肌当て用シート33bの中間部分35を通る切断面を示している。肌当て用シート33bと防漏堤58との接合状態は、図7のそれと同じであって、肌当て用シート33bは接着剤61dを介して防漏堤58の中間辺59bに接合しており、その防漏堤58は接着剤61aを介して吸液性パネル33aの外面に接合している。おむつ1が図1の状態にあるときには、図8の肌当て用シート33bと防漏堤58とが仮想線の状態となり、ポケット73が形成される。このポケット73は、前後方向Aにおいて図7のポケット73につながっている。肌当て用シート33bの中間部分35は、吸液性パネル33aを横断するように延びていて、仮想線の状態になると、おむつ着用者の外性器と肛門との間における肌に容易に接触し、排泄物を吸収した吸液性パネル33aと肌との接触を防ぐことができる。図から明らかなように、肌当て用シート33bは、中間部分35においても、防漏堤58の起立が容易となるように作用するとともに防漏堤58が股下域11の外側に向かって倒れることを防いでいる。なお、肌当て用シート33bと防漏堤58との間のこのような関係は、防漏堤58が、それに取り付けられている弾性部材63の収縮によって起立するときに、肌当て用シート33bを内面シート32から離間させるように作用しているということもできる。
【0030】
図9〜11は、おむつ1に使用可能な体液吸収部3の一態様を例示する図5,7,8と同様な図である。図9における体液吸収部3では、肌当て用シート33bの前後端部分34,36において、肌当て用シート33bと防漏堤58と吸液性パネル33aとが図5の場合と同様に接合している。ただし、肌当て用シート33bと防漏堤58とを接合する接着剤61dは、肌当て用シート33bの前方域78と後方域79との一部分に対して塗布されているが、中央部分35とその付近には塗布されていない。すなわち、図10における体液吸収部3では、肌当て用シート33bの後方域79において、肌当て用シート33bと防漏堤58の中間辺59bとが接着剤61dを介して接合し、防漏堤58の底辺59aが接着剤61aを介して体液吸収パネル33aに接合している。そして、図示してはいないが、肌当て用シート33bの前方域78(図9参照)においても、肌当て用シート33bと防漏堤58の中間辺59bとが接着剤61dを介して接合し、防漏堤58の底辺59aが吸液性パネル33aの外面に接着剤61aを介して接合している。しかし、図11における体液吸収部3では、肌当て用シート33bと防漏堤58とが肌当て用シート33bの中間部分35において非接合状態にある。
【0031】
図9〜11に示された態様の体液吸収部3を有するおむつ1において、肌当て用シート33bと防漏堤58とにおける弾性部材37,63が収縮すると、肌当て用シート33bと防漏堤58のそれぞれが、肌当て用シート33bの前方域78と後方域79とでは図7の場合と同様な挙動を示すが、図11に示す中間部分35においては互いに独立して仮想線の如くに図の上方へ移動したり、起立したりする。したがって、肌当て用シート33bの上方への移動距離、換言すると内面シート32からの離間距離が、防漏堤58によって小さく抑えられるということが生じ難くなる。例えば、起立した状態の防漏堤58の高さが低いと、横中心線Q−Qの付近でその防漏堤58に接合している肌当て用シート33bは、上方への移動距離が防漏堤58によって拘束されるという問題を生じかねないが、体液吸収部3が図11の態様にあると、そうした問題が生じ難くなる。図示例の防漏堤58はかように作用するが、肌当て用シート33bの前方域78と後方域79とにおいては肌当て用シート33bに接合しているので、図10,11に示されるようにポケット73を形成することが可能であり、股下域11の外側に向かって倒れるということもない。
【0032】
図12〜15もまた、体液吸収部3の一態様を例示する図5〜8と同様な図である。図12〜15の体液吸収部3における肌当て用シート33bは、両側部40,40における側縁部分48,48が内面シート32と向かい合う面を内側にして縦中心線P−Pに平行な折曲案内線74,74に沿って折曲されている。図中のXIII−XIII線、XIV−XIV線、XV−XV線のそれぞれは、図5のVI−VI線、VII−VII線、VIII−VIII線と同じ位置にあり、肌当て用シート33bと防漏堤58,58とを接合する接着剤61dは、図9における接着剤61dと同じ範囲に塗布されている。
【0033】
図12,13において、肌当て用シート33bは、両側部40,40のうちの折曲されている側縁部分48,48が接着剤49を介して吸液性パネル33aの内面である内面シート32に接合している。肌当て用シート33bはまた、両側部40,40のうちの折曲されていない部分が接着剤61dを介して防漏堤58,58の中間辺59bに接合している。防漏堤58,58は、底辺59aが接着剤61aを介して吸液性パネル33aの外面に接合し、中間辺59bと頂辺59cとが接着剤61eを介して接合している。
【0034】
図14において、肌当て用シート33bは、両側部40,40のうちの折曲されている側縁部分48,48が吸液性パネル33aの内面である内面シート32に接合し、折曲されていない部分が防漏堤58の中間辺59bに接合している。防漏堤58,59は、底辺59aが吸液性パネル33aの外面に接合している。
【0035】
図15において、肌当て用シート33bは側縁部分48が接着剤49を介して吸液性パネル33aの内面である内面シート32に接合している。防漏堤58は、接着剤61aを介して吸液性パネル33aの外面に接合しているが、肌当て用シート33bには接合していない。
【0036】
図12の体液吸収部3を有するおむつ1が図1の状態になると、図14における肌当て用シート33bは、弾性部材37が収縮して内面シート32から浮き上がり、折曲されていた側縁部分48を仮想線の如くに伸展させて、防漏堤58の中間辺59bを起立させるように作用する。それゆえ、おむつ1を着用するときに、防漏堤58は容易に起立する。浮き上がった肌当て用シート33bは排泄物の幅方向Bへの流れを止めるバリア76となる。なお、この肌当て用シート33bはまた、内面シート32と協働してポケット90を形成するということもできる。起立した防漏堤58は内面シート32と協働してポケット73を形成することができる。図14の体液吸収部3で示すように、幅方向Bにおいて、肌当て用シート33bは、接着剤61dから接着剤49までの寸法Lが適宜の値となるように幅方向Bの寸法を調整することが可能であり、防漏堤58は接着剤61dから接着剤61aまでの寸法Lが適宜の値となるように幅方向Bの寸法を調整することが可能である。おむつ1では、これらの寸法Lと寸法Lとの差を調整することによって、肌当て用シート33bが防漏堤58の起立する高さを不必要に拘束したり、それとは反対に防漏堤58が肌当て用シート33bの浮き上がる高さを不必要に拘束したりすることを防ぐことができる。なお、図15において、肌当て用シート33bと防漏堤58とは互いに離間しているが、肌当て用シート33bの前方域78と後方域79とにおいては互いに接合しているので、防漏堤58は股下域11の外側に向かって倒れることがない。肌当て用シート33bに対してそのように接合している防漏堤58は、中間辺59bが縦中心線P−Pに向かって凸となるように緩やかに屈曲することがある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明によれば、排泄部による肌の汚れを防止するための肌当て用シートをおむつの内面から浮き上がらせたり、防漏堤をおむつの内面から起立させたりすることが容易な使い捨てのおむつの生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】使い捨ておむつの部分破断斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1のおむつの展開図。
【図4】図3のおむつの分解組み立て図。
【図5】体液吸収部の拡大図。
【図6】図5のVI−VI線切断面を示す図。
【図7】図5のVII−VII線切断面を示す図。
【図8】図5のVIII−VIII線切断線を示す図。
【図9】体液吸収部の一態様を示す図5と同様な図。
【図10】図9のX−X線切断面を示す図。
【図11】図9のXI−XI線切断面を示す図。
【図12】体液吸収部の一態様を示す図5と同様な図。
【図13】図12のXIII−XIII線切断面を示す図。
【図14】図12のXIV−XIV線切断面を示す図。
【図15】図12のXV−XV線切断面を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1 使い捨てのおむつ
8 不透液性シート(防漏シート)
11 股下域
12 前胴周り域
13 後胴周り域
31 芯材
32 透液性シート(内面シート)
33b 肌当て用のシート片(肌当て用シート)
37,37,37 弾性部材
38 前方開口部
39 後方開口
40,40,40 側部
58,58,58 防漏堤
59a 基縁部分(底辺)
59c 自由縁部分(頂辺)
59d 固定端部分(前端部分)
59e 固定端部分(後端部分)
63,63,63 弾性部材
A 前後方向
B 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向と幅方向とを有する股下域と、前記股下域の前方に形成された前胴周り域と、前記股下域の後方に形成された後胴周り域とを有し、前記股下域の内面側に設けられた透液性シートと外面側に設けられた不透液性シートとの間には体液吸収性芯材が介在し、前記透液性シートのさらに内側には、排泄物を通過させることが可能な開口部を有していて前記前後方向へ延びる肌当て用のシート片が、前記前後方向の両端部分を前記前胴周り域と前記後胴周り域とに固定される一方、前記開口部の周辺が前記透液性シートから離間して前記開口部の周辺においての前記透液性シートと肌との接触を防ぐことが可能な使い捨てのおむつであって、
前記肌当て用のシート片は、前記開口部の前記幅方向における両側それぞれに前記前後方向へ延びる側部を有し、前記側部には前記開口部の側方を通って前記前後方向へ伸長状態で延びる少なくとも一条の弾性部材が取り付けられており、
前記股下域と前記前後胴周り域とにはまた、前記幅方向における前記前肌当て用のシート片の外側に前記前後方向へ延びる防漏堤が形成されていて、前記防漏堤が前記前後方向へ固定された状態で延びる基縁部分と、前記基縁部分に並行して延びていて変形が自由な自由縁部分と、前記前後方向の両端部分それぞれを形成する前後固定端部分のそれぞれとを有し、前記自由縁部分には前記前後方向へ延びる弾性部材が伸長状態で取り付けられており、
前記肌当て用のシート片の前記側部が、前記防漏堤に対して前記基縁部分と前記自由縁部分との間において接合していることを特徴とする前記おむつ。
【請求項2】
前記肌当て用のシート片には、前記前後方向において互いに離間するように前記開口部が二つ形成されている請求項1記載のおむつ。
【請求項3】
前記肌当て用のシート片は、前記透液性シートと向かい合う面が内側となるように前記側部の一部分が前記前後方向へ延びる折曲案内線に沿って折曲されていて、前記側部は、折曲されている前記一部分において前記透液性シートに接合し、折曲されていない部分において前記防漏堤に接合している請求項1または2記載のおむつ。
【請求項4】
前記おむつの前後方向における中央部分では前記肌当て用のシート片の前記側部が前記防漏堤に対して非接合状態にある請求項1〜3のいずれかに記載のおむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−228852(P2008−228852A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69879(P2007−69879)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】