説明

使い捨てのパンツ型おむつ

【課題】尿と便との混合を防ぐためのセパレータを有する使い捨てのパンツ型おむつの横漏れ防止性能を向上させる。
【解決手段】使い捨てのパンツ型おむつ1が、体液吸収部22を覆う透液性内面側シート23とおむつ着用者の肌との間に介在する最内側シート部材21を有する。最内側シート部材21は、内面側シート23と最内側シート部材21とで形成する排泄物収容部25に通じる前部開口31と後部開口32とを有し、これらの開口31と開口32との間に延びる部分がおむつ1の中心線P−P上にある接合域37で接合されるとともに内面側シート23に向かって垂下してセパレータ36を形成する。最内側シート部材21は、前部開口31の頂部31tと接合域37との間および後部開口32の頂部32tと接合域37との間に横方向Bへ伸長・収縮する弾性域71,72を有し、弾性域71と弾性域72との間に非弾性域73を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨てのパンツ型おむつに関し、より詳しくは、尿と便とが混合されることを防ぐセパレータの形成された前記おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型の使い捨ておむつにおいて、股下域で尿と便とが混合されることを防ぐ手段を有するものは公知である。例えば、特開2002−11044号公報(特許文献1)に開示のパンツ型おむつは、吸収体を覆う液透過性トップシートの上にスキンコンタクトシートを有する。スキンコンタクトシートは、トップシートから離間可能に形成されている部分に尿または便を通過させることが可能な開口部を有する。その開口部を囲むように弾性部材がスキンコンタクトシートに伸長状態で取り付けられている。加えて、股下域には、尿と便との混合を防ぐための堰部が設けられることがある。また特表平10−513071号公報(特許文献2)に開示の吸収性パンツは、パンツ層と、パンツ層の外側に配置された外方バリヤ層と、パンツ層と外方バリヤ層との間に配置された吸収体とを有する。パンツ層の股部分には、尿または便を吸収体に向かって通過させるための開口が形成されている。パンツ層は弾性であって、パンツ層の前方ウエスト部分と後方ウエスト部分は横方向へ予め伸長した状態で形成され、股部分は縦方向に予め伸長した状態で形成されている。このようなパンツ層では、前方ウエスト部分と後方ウエスト部分とが主にウエスト開口の周方向において作用する弾性力を有している。
【特許文献1】特開2002−11044号公報
【特許文献2】特表平10−513071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示のおむつのスキンコンタクトシートは、前後端部のそれぞれが前後胴周り域のそれぞれにおけるトップシートに固定されているが、前後端部の間にある中間部はトップシートに固定されることなく股下域において宙吊りの状態にあるから、このおむつを着用したときにスキンコンタクトシートが股下域で大きく動いたり変形したりする可能性がある。スキンコンタクトシートが大きく動けば、スキンコンタクトシートの開口は外性器や肛門の位置からずれるということがある。そのようになったときには、セパレータとしての堰が本来の機能を発揮することができない。特許文献2に開示のパンツは、尿と便との混合を防ぐためのセパレータを有するものではないが、開口を有するパンツ層は、尿と便とが肌に触れた状態で混合されることを防いでいる。しかるに、このパンツ層は弾性であって、股部分が縦方向に予め伸長されれば、その股部分は脚開口の周方向で伸長・収縮することが難しくなって、着用者の脚周りへの密着が弱くなるということがある。また、股部分が脚開口の周方向で伸長・収縮できるようにするときには、弾性のパンツ層の股部分が予め横方向に伸長されることになる。そのような股部分は幅方向へ収縮しようとするとものであるから、その股部分を有するパンツでは、それを着用したときに股部分が鼠蹊部から離れるように動くことがある。パンツからの横漏れを防ぐうえにおいて、股部分がそのように動くことは一般的に好ましいことではない。
【0004】
そこで、この発明は、尿と便との混合を防ぐためのセパレータを有する使い捨てのパンツ型おむつについての改良を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、互いに直交する前後方向と横方向と縦方向とを有し、股下域の前方に前胴周り域が形成され、前記股下域の後方に後胴周り域が形成されており、前記股下域が透液性の内面側シートと不透液性の外面側シートとの間に体液吸収性の芯材を介在させた体液吸収部を含んでおり、前記股下域にはまた尿と便とを分離可能なセパレータが形成されている使い捨てのパンツ型おむつである。
【0006】
かかるおむつにおいて、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記体液吸収部は、前記芯材の前記横方向における外側に形成されたサイドフラップと前記縦方向における外側に形成されたエンドフラップとを有しており、前記パンツ型おむつの着用者の肌と前記内面側シートとの間に介在するように前記サイドフラップと前記エンドフラップとに接合されていて前記股下域と前記前後胴周り域とに広がっている最内側シート部材と前記内面側シートとが前記縦方向において互いに離間可能に形成されている部分において排泄部収容部を形成している。前記最内側シート部材には前記排泄物収容部への尿の進入を可能にする前部開口と便の進入を可能にする後部開口とが形成されている。前記最内側シート部材はまた、前記おむつの前記横方向の寸法を二等分する中心線上において前記前部開口と前記後部開口との間に延びる部分が、前記肌と向かい合う面を内側にして前記横方向へ延びる折曲線に沿って折曲されていて、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されることにより、その接合された部分から前記内面側シートに向かって前記縦方向の下方へ延びる前記セパレータが形成されている。前記最内側シート部材はさらにまた、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分と前記前部開口の前記縦方向における頂部との間および前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分と前記後部開口の前記縦方向における頂部との間に前記横方向へ弾性的に伸長・収縮可能な弾性域を含む一方、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分よりも下方の部分が前記弾性域を含むことのない非弾性的な部分である。
【0007】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記弾性域が前記股下域において前記横方向へ延びていて、前記体液吸収部の前記サイドフラップに伸長状態で接合されている。
【0008】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記最内側シート部材がパンツ型に形成されている。
【0009】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記サイドフラップには、前記前後方向へ延びる弾性部材が伸長状態で取り付けられており、前記弾性域と前記弾性部材とが互いに交差して重なり合った状態にある。
【0010】
この発明の好ましい実施形態のさらに他の一つにおいて、前記弾性域と前記弾性部材とは、前記互いに交差して重なり合った状態にある部分において互いに接合されている。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る使い捨てのパンツ型おむつでは、最内側シート部材に前部開口と後部開口とが形成されており、股下域において、これら両開口の間に延びる部分が内面側シートに向かって下方へ延びるように折曲され、接合されていて、セパレータを形成しているから、前部開口を通過した尿と後部開口を通過した便とは透液性の内面側シートの上で混合されるということがない。最内側シート部材はまた、前後方向で対向して接合されている部分と前部開口の頂部との間、およびその部分と後部開口の頂部との間に横方向へ弾性的に伸長・収縮可能な弾性域を含む一方、その部分よりも下方の部分が非弾性的な部分であることによって、最内側シート部材は股下域を横方向へ縮めることがなく、おむつを着用したときに股下域の側縁部は鼠蹊部から外れることがない。
【0012】
この発明において、最内側シート部材がパンツ型に形成されているときには、おむつを着用したときに、前部開口と後部開口とを外性器と肛門とに一致させることが容易になる。
【0013】
また、最内側シート部材の横方向へ伸長・収縮可能な弾性域と体液吸収部のサイドフラップにおける弾性部材とが交差しているときのおむつでは、これら弾性域と弾性部材とによって着用者の脚周りへのフィットが可能になる。
【0014】
これら弾性域と弾性部材とが交差する部位において最内側シート部材とサイドフラップとが互いに接合しているときのおむつでは、それを着用したときのサイドフラップが、鼠蹊部に接触し易くなるように、芯材の側部に沿って折曲される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨てのパンツ型おむつの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0016】
図1は、着用状態にある使い捨てのパンツ型おむつ1の部分破断斜視図であって、おむつ1の前後方向と横方向と縦方向とが互いに直交する双頭矢印A,B,Cで示されている。おむつ1は、股下域6と、股下域6の前方に位置する前胴周り域7と、股下域6の後方に位置する後胴周り域8とを有していて、前後胴周り域7,8の側縁部7a,8aが合掌状に重なり合い、縦方向Cに間欠的に形成された接合部位9において互いに溶着している。おむつ1はまた、胴周り開口11と一対の脚周り開口12とを有し、着用者(図示せず)の肌と向かい合う最内側シート部材21と、最内側シート部材21の外面21bに取り付けてられている体液吸収部22とを含んでいる。最内側シート部材21は、前後胴周り域7,8を形成している部位が横方向Bに弾性的に伸長・収縮可能に形成されており、股下域6を形成している部位の大部分が横方向Bに弾性的にも非弾性的にも伸長することがないように形成されている。最内側シート部材21は、好ましくはその全体が不透液性であり、より好ましくはその全体が通気不透液性であるが、前後胴周り域7,8を形成している部位が不透液性であり股下域6を形成している部位が透液性であるように作ることもできる。
【0017】
図1における体液吸収部22は、透液性の内面側シート23と不透液性の外面側シート24とこれら両シート23,24の間に粉砕パルプ等の体液吸収性材料とそれを被覆するティシュペーパとからなる芯材26を介在させたもので、芯材26の周縁から延出するこれら両シート23,24は互いに接合されて一対のサイドフラップ22aと一対のエンドフラップ22bとを形成している。ただし、これらサイドフラップ22aとエンドフラップ22bとは最内側シート部材21に接合されている(図2,3参照)。例えば、股下域6では、サイドフラップ22aと最内側シート部材21とが重なり合って接合されていて側縁部27を形成している。その側縁部27では、内面側シート23と外面側シート24との間にあって側縁部27に沿って延びる脚周り弾性部材28が、これらシート23,24のうちの少なくとも一方に伸長状態で接合されていて脚周り弾性域の一部分を形成している。ただし、横方向Bにおける側縁部27どうしの間では、内面側シート23と最内側シート部材21とが縦方向Cにおいて離間していて、内面側シート23と最内側シート部材21との間に排泄物収容部25が形成されている。体液吸収部22のエンドフラップ22bは、最内側シート部材21の外面21bに接合しているから、おむつ1においてはフラップとしての機能が失われている。
【0018】
このように使用されている最内側シート部材21は、おむつ1の前後方向Aの寸法を二等分して横方向Bへ延びる横中心線Qよりも前方に前部開口31が形成されており、横中心線Qよりも後方に後部開口32が形成されている。前部開口31はそこにおむつ着用者の外性器をのぞかせることができるような位置にあり、後部開口32はそこにおむつ着用者の肛門をのぞかせることができるような位置にあるから、おむつ着用者の尿や便は最内側シート部材21を介することなく直接的に排泄物収容部25に進入する。排泄物収容部25に進入した尿と便とは、互いに離間している最内側シート部材21と内面側シート23との間に入ることによって、おむつ着用者の肌に接触することがない。また、これら排泄物を吸収して湿潤状態にある内面側シート23は最内側シート部材21によって覆われていて肌に接触することがない。
【0019】
図2は、図1のII−II線断面図であって、このII−II線はおむつ1の横方向Bの寸法を二等分して前後方向Aへ延びる前後方向中心線Pに一致している。前後胴周り域7,8における最内側シート部材21は、おむつ1の前後方向Aの寸法を二等分して縦方向Cへ延びる縦中心線Rに平行して互いに接合していて、脚周り開口12の上縁部34を形成している。股下域6では、最内側シート部材21にタック36が形成されている。タック36は、最内側シート部材21どうしが縦中心線Rに沿って向かい合い、接合域37において接着または溶着されることにより形成されているもので、その最内側シート部材21は前部開口31と後部開口32との間において最内側シート部材21が着用者の肌(図示せず)と向かい合う内面21aを内側にして縦中心線Rに沿うように折り重ねられた状態にある。換言すると、タック36は、内面側シート23から離間した状態にある部分の最内側シート部材21から内面側シート23に向かって垂下するように作られていて、横中心線Q(図1参照)の上にある。タック36の接合域37は、縦方向Cにおいて少なくともタック36の頂部38に形成されているが、タック36の底部39に向かって適宜の寸法だけ広げることができる。横方向Bにおける接合域37の寸法は、股下域6の幅の寸法よりも小さいが、接合域37がおむつ1の容易な着用の妨げにならない程度において大きくすることができる。例えば、おむつ1が乳幼児用のものである場合には、その寸法を10〜70mmにすることが好ましい。タック36はまた、その底部39の外面を接着剤等の接合手段41によって内面側シート23に接合することができる。底部39は、横方向Bの中央部分だけを内面側シート23に接合することができるほかに、横方向Bの全体を内面側シート23に接合することもできる(図4参照)。
【0020】
最内側シート部材21と内面側シート23との間には、タック36によって前後に二分される排泄物収容部25が形成されている。すなわち、排泄物収容部25は、横方向中心線Qよりも前方に位置する前方排泄物収容部25aと横中心線Qよりも後方に位置する後方排泄物収容部25bとに分けられていて、これら両部25a,25bの間ではタック36が内面側シート23から上方へ延びている。最内側シート部材21における前部開口31は、前方排泄物収容部25aの内外に通じていて、尿をここへ進入させる。後部開口32は、後方排泄物収容部25bに通じていて、便をここへ進入させる。
【0021】
図3は、図1,2のおむつ1において、前後胴周り域7,8の部位9における接合を外すとともに、タック36の接合域37における最内側シート部材21どうしの接合を外し、股下域6と前後胴周り域7,8とを前後方向Aと横方向Bとに伸展して得られる分解おむつ1aの部分破断平面図である。ただし、分解おむつ1aの部位のうちでおむつ1の部位と共通している部位には、おむつ1と同じ参照符号が使用されている。
【0022】
最内側シート部材21は、前後方向Aへ延びる一対の側縁21aと、前端縁21bと、後端縁21cとによって画成される砂時計型の形状を有するもので、前後方向Aにおいて、少なくとも股下域6の中央部分を形成している第1シート51と、少なくとも前胴周り域7を形成している第2シート52と、少なくとも後胴周り域8を形成している第3シート53とを含んでいる。第1シート51は、弾性的に伸長・収縮するということがないもので、図示例では内面側シート23と向かい合うように使用されていて、最内側シート部材21と同じ形状と寸法とを有している。すなわち、第1シート51の側縁と前端縁と後端縁とは、最内側シート部材21の側縁21aと前端縁21bと後端縁21cとに一致している。第2シート52は、横方向Bへ弾性的に伸長・収縮するもので、図示例では第1シート51の内面に対して横方向Bへ伸長された状態でホットメルト接着剤56を介して接合されている。第2シート52は、一対の側縁52aと、前端縁52bと、後端縁52cとを有し、側縁52aと前端縁52bとが第1シート51の側縁51aと前端縁51bとにほぼ一致している。第2シート52の後端縁52cは股下域6にあって、前部開口31を横切るように延びている。第3シート53も横方向Bへ弾性的に伸長・収縮するもので、図示例では第1シート51の内面に対して横方向Bへ伸長された状態でホットメルト接着剤56を介して接合されている。第3シート53は、一対の側縁53aと、前端縁53bと、後端縁53cとを有し、側縁53aと後端縁53cとが第1シート51の側縁51aと後端縁51cとにほぼ一致している。第3シート53の前端縁53bは、股下域6にあって、後部開口32を横切るように延びている。かようにして、最内側シート部材21には、第2シート52によって横方向Bへ弾性的に伸長・収縮可能な前方弾性域71が形成され、第3シート53によって横方向Bへ弾性的に伸長・収縮可能な後方弾性域72が形成されている。また、最内側シート部材21の前後方向Aにおいては、第2シート52の後端縁52cと第3シート53の前端縁53bとの間に横方向Bへ弾性的に伸長・収縮することのない弾性域73が形成されている。第1シート51の内面で複数のドットが集合して形成している一対の部位57は、図2における接合域37を形成する部位であって、横中心線Qに関して対称な位置にある。
【0023】
体液吸収部22では、芯材26をサンドウィッチしている内面側シート23と外面側シート24とが芯材26の周縁から延出する部分で重なり合いホットメルト接着剤58を介して接合されていて、サイドフラップ22aとエンドフラップ22bとを形成している。また、分解おむつ1aにおける股下域側縁部27では、脚周り弾性部材28が内面側シート23と外面側シート24との間にあって、伸長状態で前後方向Aへ延びている。内面側シート23は、サイドフラップ22aとエンドフラップ22bとを形成している部分がホットメルト接着剤59を介して最内側シート部材21の外面21bに接合している。外面側シート24は、内面側シート23と同形同大であるか、または内面側シート23よりも僅かに大きく作られていることが好ましいもので、内面側シート23よりも大きく作られている場合の外面側シート24は、内面側シート23から延出する部分が最内側シート部材21の外面21bに接合されていることがより好ましい。
【0024】
図3の分解おむつ1aからおむつ1を得るには、分解おむつ1aを最内側シート部材21が内側になるようにして横中心線Qに沿って折り重ね、第1シート51における部位57どうしを接合するとともに、最内側シート部材21における前胴周り域7の側縁部7aと後胴周り域8の側縁部8aとを部位9(図1参照)において接合する。
【0025】
このように形成されるおむつ1が図1の如き着用状態にあると、股下域6における最内側シート部材21は、体液吸収部22におけるサイドフラップ22aとエンドフラップ22bとの内側において内面側シート23から離間していることによって、尿や便を肌に触れることがないように収容する排泄物収容部25を形成するとともに、尿や便で汚れていたり湿っていたりする内面側シート23と肌との接触を防ぐバリヤとして機能する。最内側シート部材21はまた、タック36を形成している部分と、タック36から横方向Bの両側へ延びる部分とが、前方排泄物収容部25aと後方排泄物収容部25bとに対する仕切り壁となって尿と便との混合を防ぐセパレータとして機能する。それゆえに、おむつ1では、便が尿と混合されて流動性を増し、肌を広い範囲にわたって便で汚すというトラブルが解消する。最内側シート部材21はさらにまた、図3において前後方向中心線Pに沿って延びる長さが、図1,2のおむつ1ではタック36を形成している寸法だけ短くなった状態にあるので、股下域6で大きなしわを作るということがない。最内側シート部材21に形成されている前方弾性域71と後方弾性域72とにおいては、第2、第3シート52,53のそれぞれが前後胴周り域7,8のそれぞれに存在することによって、これら両胴周り域6,7の着用者に対する良好なフィット性を得ることができる。第2,第3シート52,53はまた、股下域6に形成されている部分が第1シート51における前部開口31と後部開口32との周縁部76,77それぞれの少なくとも一部分を形成していることによって、これら周縁部76,77を外性器や肛門の周囲に弾性的にフィットさせ、尿や便を排泄物収容部25へ確実に進入させることができる。
【0026】
おむつ1はまた、分解おむつ1aで明らかなように、体液吸収部22において前後方向Aへ延びる脚周り弾性部材28が、最内側シート部材21において横方向Bへ伸長・収縮可能な前方弾性域71と後方弾性域72とのそれぞれとに交差している。また、図1において明らかなように、前方弾性域71と後方弾性域72とは、部位9において接合している前後胴周り域7,8の側縁部7aと8aとの間において胴周り方向へ実質的に連続した状態にある。それゆえ、側縁部7a,8aの近傍にある前方弾性域71と、後方弾性域72と、これらと交差する弾性部材28とは着用者の脚周りを囲むことのできる弾性域を形成している。
【0027】
ただし、このおむつ1においては、図1,2に示された股下域6の底部76において、最内側シート部材21が非弾性的な状態にあるから、この最内側シート部材21によって股下域6の底部75の幅、すなわち横方向Bの寸法を縮めることがない。そのような股下域6を有するおむつ1では、それを着用したときに、着用者の鼠蹊部にフィットした股下域6の側縁部27をその鼠蹊部よりもさらに内側へ移動させるというような横方向Bへの力が作用しないので、おむつの横漏れを防ぐ効果をあげることができる。
【0028】
図4は、実施形態の一例を示す図3と同様な図である。図4の分解おむつ1aでは、横方向Bに伸長・収縮する第2シート52の後端縁52cが前部開口31と部位57との間にあり、第3シート53の前端縁53bが後部開口32と部位57との間にある。この分解おむつ1aから得られるおむつ1では、それが着用されると、前方弾性域71と後方弾性域72とのうちで前後胴周り域7,8を形成している部分が胴周り方向へ伸長し、股下域6の一部を形成している部分が脚周り方向へ伸長する。前部開口31と後部開口32とは、それらの周縁部76,77の全体が前方弾性域71と後方弾性域72とにあるから、おむつ1が着用されたときには周縁部76,77の全体が肌によくフィットする。一方、分解おむつ1aにおいて、最内側シート部材21の部位57どうしの間には非弾性域73が形成されているから、おむつ1が着用されたときに、側縁部27が鼠蹊部に納まった股下域6の底部75は横方向Bへ収縮することがなく、その側縁部27は、鼠蹊部から外れることがない。
【0029】
図3,4から明らかなように、この発明における第2、第3シート52,53において、後端縁52cは前部開口31と接合域37(図2参照)すなわち部位57との間において横方向Bへ延びているか、前部開口31を横切るように横方向Bへ延びている。また、前端縁53bは、後部開口32と接合域37との間において横方向Bへ延びているか、後部開口32を横切るように横方向Bへ延びている。これらを換言すると、後端縁52cは前部開口31の縦方向Cにおける頂部31tと接合域37との間で横方向Bへ延びており、前端縁53bは後部開口32の頂部32tと接合域37との間で横方向Bへ延びている。
【0030】
なお、図4の分解おむつ1aでは、おむつ1が着用されたときの第2シート52と第3シート53との胴周り開口11の縁部における収縮力を高めるために、複数条の糸状弾性部材78,79が伸長状態で第1シート51に取り付けられている。また、この分解おむつ1aでは、最内側シート部材21と内面側シート23とを接合するための接着剤41が股下域6を横断するように側縁部27にまで延びる例が示されている。この場合の前方排泄物収容部25aと後方排泄物収容部25bとの間は、横方向Bの全体がシールされた状態になる。
【0031】
図示例の最内側シート部材21は、その平面形状が第1シート51の平面形状と同じものであったが、そのような最内側シート部材21に代えて、第1シート51によって股下域6または股下域6の一部分を作り、第2シート52によって前胴周り域7または前胴周り域7と股下域6の一部分とを作ることによって最内側シート部材21を得ることもできる。
【0032】
おむつ1において、最内側シート部材21は、液不透過性であることが好ましく、通気液不透過性であることがより好ましいが、性質の異なるシートを組み合わせることによって、股下域6または股下域6の一部分では液透過性であって前後胴周り域7,8では液不透過性であるように作ることもできる。例えば、最内側シート部材21における第1シート51には熱可塑性合成繊維で形成された不織布や熱可塑性合成樹脂で形成されたフィルムを使用することができる。また、これら不織布どうしを積層したシートや不織布とフィルムとを積層したシート等を使用することができる。第2、第3シート52,53には、ウレタン糸等の弾性糸を含む弾性的に伸長・収縮可能な不織布や天然ゴムや合成ゴム等で形成された弾性的に伸長・収縮可能なフィルムを使用することができる。内面側シート23には透液性の不織布や熱可塑性合成樹脂フィルム、不織布とフィルムとを積層した複合シート等を使用することができる。外面側シート24には、不透液性の不織布や熱可塑性合成樹脂フィルム、不織布とフィルムとを積層した複合シート等を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】使い捨てのパンツ型おむつの部分破断斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】分解おむつの部分破断平面図。
【図4】実施形態の一例を示す図3と同様な図。
【符号の説明】
【0034】
1 パンツ型おむつ
6 股下域
7 前胴周り域
8 後胴周り域
21 最内側シート部材
22 体液吸収部
22a サイドフラップ
23a エンドフラップ
23 内面側シート
24 外面側シート
25 排泄物収容部
25a 排泄物収容部
25b 排泄物収容部
31 開口部
31t 頂部
32 開口部
32t 頂部
36 セパレータ
37 接合された部分(接合域)
71 弾性域
72 弾性域
73 非弾性的な部分(非弾性域)
A 前後方向
B 横方向
C 縦方向
Q−Q 折曲線(横方向中心線)
P−P 中心線(縦方向中心線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向と横方向と縦方向とを有し、股下域の前方に前胴周り域が形成され、前記股下域の後方に後胴周り域が形成されており、前記股下域が透液性の内面側シートと不透液性の外面側シートとの間に体液吸収性の芯材を介在させた体液吸収部を含んでおり、前記股下域にはまた尿と便とを分離可能なセパレータが形成されている使い捨てのパンツ型おむつであって、
前記体液吸収部が前記芯材の前記横方向における外側に形成されたサイドフラップと前記縦方向における外側に形成されたエンドフラップとを有しており、
前記パンツ型おむつの着用者の肌と前記内面側シートとの間に介在するように前記サイドフラップと前記エンドフラップとに接合されていて前記股下域と前記前後胴周り域とに広がっている最内側シート部材と前記内面側シートとが前記縦方向において互いに離間可能に形成されている部分において排泄部収容部を形成し、前記最内側シート部材には前記排泄物収容部への尿の進入を可能にする前部開口と便の進入を可能にする後部開口とが形成されており、
前記最内側シート部材はまた、前記おむつの前記横方向の寸法を二等分する中心線上において前記前部開口と前記後部開口との間に延びる部分が、前記肌と向かい合う面を内側にして前記横方向へ延びる折曲線に沿って折曲されていて、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されることにより、その接合された部分から前記内面側シートに向かって前記縦方向の下方へ延びる前記セパレータが形成されており、
前記最内側シート部材はさらにまた、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分と前記前部開口の前記縦方向における頂部との間および前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分と前記後部開口の前記縦方向における頂部との間に前記横方向へ弾性的に伸長・収縮可能な弾性域を含む一方、前記前後方向で互いに対向した状態で接合されている部分よりも下方の部分が前記弾性域を含むことのない非弾性的な部分であることを特徴とする前記おむつ。
【請求項2】
前記弾性域が前記股下域において前記横方向へ延びていて、前記体液吸収部の前記サイドフラップに伸長状態で接合されている請求項1記載のおむつ。
【請求項3】
前記最内側シート部材がパンツ型に形成されている請求項1または2記載のおむつ。
【請求項4】
前記サイドフラップには、前記前後方向へ延びる弾性部材が伸長状態で取り付けられており、前記弾性域と前記弾性部材とが互いに交差して重なり合った状態にある請求項1〜3のいずれかに記載のおむつ。
【請求項5】
前記弾性域と前記弾性部材とは、前記互いに交差して重なり合った状態にある部分において互いに接合されている請求項4記載のおむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233036(P2009−233036A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81758(P2008−81758)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】