説明

使い捨ての着用物品

【課題】発汗や肌の蒸れを抑えることが可能な使い捨ての着用物品。
【解決手段】使い捨ての着用物品の前後胴回り域6,7の内面の少なくとも一部分が弾性シート37,38によって形成される。弾性シート片37,38は、弾性繊維と非弾性繊維との混合物であって、凸状部と凹条部とを有する。弾性シート37,38が胴回り方向へ弾性的に伸長・収縮を反復すると、凸条部における弾性シートの厚さが減少と復元とを反復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨てのおむつを一例とする使い捨ての着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
前後胴回り域と股下域とを有する使い捨ての着用物品であって、その前後胴回り域の少なくとも一方に弾性的に伸長・収縮する不織布やプラスチックフィルム等の弾性シートを使用したものは公知ないし周知である。また、弾性シートに代えて糸ゴムや帯ゴム等の複数条の弾性材料を使用した着用物品も周知である。そのような弾性材料は、一般的に胴回り方向へ伸長した状態でその胴回り域に取り付けられ、その胴回り域は非弾性的なシート片によって形成されている。
【0003】
例えば、特開平3−162854号公報(JP H03−162854A、特許文献1)に記載の使い捨て着用物品は開放型のおむつやパンツ型のおむつ、トレニングパンツ等の着用物品を含み、伸縮性トップシートと、伸縮性バックシートとを有するもので、トップシートおよびバックシートの間にはプラスチックフィルムで形成された伸縮性バリヤーシートが介在している。
【0004】
特開平4−166150号公報(JP 1992−166150A、特許文献2)に記載の使い捨ておむつは、吸収体が配置された領域におけるトップシートとバックシートとの間に複数の帯状の胴回り弾性部材を有する。胴回り弾性部材は、胴回り方向へ伸長した状態でおむつに取り付けられていて、収縮したときに胴回りにギャザーを形成する。トップシートには、例えばポリプロピレン繊維からなる不織布が使用され、バックシートにはポリエチレンフィルムが使用されている。
【0005】
特開平4−289201号公報(JP 1992−289201A、特許文献3)に記載の使い捨てブリーフでは、トップシートおよび/またはバックシートに複数本の弾性リボンが接合してある。弾性リボンの収縮によって、ブリーフには多数のしわが生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−162854号公報(JP H03−162854A)
【特許文献2】特開平4−166150号公報(JP 1992−166150A)
【特許文献3】特開平4−289201号公報(JP 1992−289201A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
胴回り方向へ弾性的に伸長・収縮する弾性シートが着用物品の着用者の肌と対向するように使用されている着用物品では、その弾性シートが肌によく密着するので着用物品はフィット性のよいものになる。しかしその反面、弾性シートが密着した肌は、汗をかき易くまた蒸れ易い。
【0008】
また、弾性シートに代えて糸ゴム等の弾性材料をトップシートとバックシートとの間に介在させた着用物品では、その弾性材料が胴回り方向において収縮することによって、胴回り域には上下方向へ延びる多数のギャザーが生じる。トップシートとバックシートとは、ホットメルト接着剤等の接合手段を介して接合されることが普通であるから、トップシートとバックシートとは一体となって一層構造のギャザーを形成する。そのようなギャザーを有する着用物品は、それをギャザーの延びる方向と直交する方向へ折り曲げたり、丸めたりしようとすると、ギャザーが抵抗となって折り曲げにくいとか、丸めにくいということがある。そうしたことの結果として、着用物品は、それを手に持ったときに、柔らかさやしなやかさが乏しいという感じのものになるという場合がある。
【0009】
この発明では、胴回り域に弾性シートや糸ゴム等の弾性部材が使用されている着用物品において、こうした問題の発生を防ぐことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、前胴回り域と後胴回り域と股下域とを有し、これら各域が肌に対向する内面と、その反対面である外面とを有し、前記前後胴回り域が胴回り方向へ弾性的に伸長・収縮可能であって、前記前後胴回り域における前記内面の少なくとも一部分が弾性的に伸長・収縮可能な弾性シートによって形成されている使い捨ての着用物品である。
【0011】
かかる着用物品において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記弾性シートは、弾性的な伸長性を有する弾性繊維と非弾性的な伸長性を有する非弾性繊維との混合物であって、前記肌に向かって凸となる凸条部と凹となる凹条部とが前記弾性繊維と前記非弾性繊維とによって形成されている。前記凸条部と前記凹条部とが前記着用物品の上下方向へ互いに並行して延びるとともに前記着用物品の胴回り方向において交互に並び、前記弾性シートの前記胴回り方向への弾性的な伸長・収縮の反復に伴って前記凸条部における前記弾性シートの厚さが減少と復元とを反復する。
【0012】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記着用物品が前記股下域において前記前後胴回り域方向へ延びる体液吸収性パネルを有し、前記前後胴回り域の少なくとも一方において、前記弾性シートが前記着用物品の内側から前記パネルの端部を被覆して前記胴回り方向へ延びている。
【0013】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記弾性シートの前記外面は、前記着用物品の外面の少なくとも一部を形成する外面シートに前記着用物品の内側から接合し、前記外面シートが非弾性的な伸長性を有する非弾性繊維によって形成された不織布であって、前記外面シートには前記胴回り方向において起伏を反復するギャザーが形成されている。
【0014】
この発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記弾性シートが20〜50g/mの質量を有するスパンボンド不織布であって、前記弾性繊維が2〜6dtexの繊度を有するポリウレタン繊維のフィラメントであり、前記非弾性繊維が2〜6dtexの繊度を有するポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維のフィラメントのうちの少なくとも一つのフィラメントであって、前記弾性繊維と前記非弾性繊維との重量混合比が40:60〜60:40の範囲にある。
【0015】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記外面シートは、前記非弾性繊維が捲縮した状態にあるものである。
【0016】
この発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記着用物品は、パンツ型のものであって、前記前後胴回り域の側縁部どうしが合掌状に重なり合い、前記側縁部に分散するように形成された複数のスポット状の接合部において互いに接合しており、前記接合部それぞれの大きさが1mm四方の大きさに納まる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る使い捨ての着用物品は、着用者の肌に対向する内面の少なくとも一部分が弾性シートによって形成され、その弾性シートには肌に向かって凸となる凸条部と肌に向かって凹となる凹条部とが着用物品の上下方向へ延びていて、胴回り方向において交互に並んでいる。着用物品が着用されたときの弾性シートは、その凸条部が肌に接触するときに、凹条部は肌との間に上下方向へ延びる通気性の空隙を形成することが可能になる。その空隙の存在によって、着用者における発汗や肌の蒸れが抑えられる。胴回り域を弾性的に伸長・収縮させるための弾性シートが着用物品の外面シートに接合される場合には、外面シートに糸ゴムを接合して胴回り域を弾性的に伸長・収縮させる場合に比べて、ホットメルト接着剤の使用量を少なくすることが可能で、ホットメルト接着剤の影響で着用物品の柔らかさやしなやかさが乏しくなるという問題の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】使い捨ての着用物品の一例として示すパンツ型おむつの斜視図。
【図2】展開おむつの部分破断平面図。
【図3】展開おむつの分解斜視図。
【図4】図1の部分IVの拡大図。
【図5】(a)と(b)とによって、図2のV−V線切断面とその切断面が収縮している状態とを模式的に示す図。
【図6】弾性ウエブの製造工程の部分図。
【図7】延伸ロールの側面図。
【図8】延伸ロールの歯の形状を示す図。
【図9】弾性ウエブの側面を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
使い捨てのパンツ型おむつを例にとり、この発明に係る使い捨ての着用物品の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0020】
図1は、使い捨てのパンツ型おむつ1の斜視図である。おむつ1は、前胴回り域6と、後胴回り域7と、前後胴回り域6,7の間にあって前後方向Zへ延びる股下域8とを有する。前後胴回り域6,7は、両側縁部6a,7aが合掌状に重なり合い、おむつ1の上下方向Yへ間欠的に並ぶ接合部9において一体化している。かようなおむつ1は、胴回り開口11と一対の脚回り開口12とを有している。胴回り開口11を画成している前胴回り域6の縁部6bと後胴回り域7の縁部7bとには上下方向Yへ延びる複数の第1ギャザー21aを含む第1弾性域21が形成され、股下域8には脚回り開口12を画成している縁部8aの少なくとも一部分に上下方向Yへ傾斜して延びる第2ギャザー22aを含む第2弾性域22が形成されている。前後胴回り域6,7における上下方向Yの中央域には、上下方向Yへ延びる複数の第3ギャザー23aを含む第3弾性域23が形成されている。図1には、おむつ1の横方向と上下方向と前後方向とが双頭矢印X,Y,Zで示されている。
【0021】
図2,3において、図2は、おむつ1の接合部9における前後胴回り域6,7の接合を解いた後におむつ1を平面状に展開するとともに第1〜第3ギャザー23a〜23cが実質的に消失するところまで横方向Xと前後方向Zとに伸展して得られる展開おむつ101の部分破断平面図であり、図3は、展開おむつ101の分解斜視図である。展開おむつ101は、横方向Xの寸法を二等分する第1中心線P−Pに関して対称となるように形成されている。また、前後方向Zの寸法を二等分する第2中心線Q−Qに沿って図2の展開おむつ101を折り重ね、前後胴回り域6,7の側縁部6a,7aを接合すると、おむつ1を得ることができる。
【0022】
図2,3によって明らかなように、展開おむつ101は、前胴回り域6と股下域8の一部分とを形成する前パネル31と、後胴回り域7と股下域8の一部分とを形成する後パネル32と、これら両パネル31,32を股下域8において連結している中央パネル33とを含み、これらパネル31,32,33が一体化することによって展開おむつ101およびおむつ1におけるシャシー35が形成される。シャシー35の内面、すなわち図3におけるシャシー35の上面には、前後胴回り域6,7の一部分と股下域8とに広がる中間部シート36がホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合される。シャシー35における前パネル31の内面には、横方向Xへ弾性的に伸長・収縮可能な前方弾性シート片37が横方向Xと前後方向Zとのうちの少なくとも横方向Xにおいて間欠的に塗布されているホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合される、その前方弾性シート片37は、一部分が中間部シート36に重なっている。前方シート片37が接合されたシャシー35の内面には、体液吸収性パネル60と後方弾性シート片38とがホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合される。体液吸収性パネル60は、おむつ1における股下域8を中央にして前胴回り域6の一部分と後胴回り域7の一部分とにまで延びるようにシャシー35に接合される。後方弾性シート片38は、その一部分が図3における展開おむつ101の上方から、すなわち展開おむつ101の内側からシャシー35に取り付けられて、図2に示されているように一部分が体液吸収性パネル60と重なり合っている。
【0023】
このように形成される展開おむつ101において、シャシー35の前パネル31は、おむつ1の外面の少なくとも一部分を形成するシート部材31aを含み、そのシート部材31aの内面には、胴回り方向である図2,3の横方向Xへ伸長状態で延びる複数条の糸状の第1前方弾性部材41aと横方向Xへ伸長状態で延びる複数条の糸状の第2前方弾性部材42aとがホットメルト接着剤(図示せず)を介して取り付けられている。また、シート部材31aのうちでおむつ1の脚回り開口12の縁部8a(図1参照)を形成する部位44のそれぞれには、一条の幅の広いすなわち帯状の前方脚回り弾性部材43がホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸長状態で取り付けられている。前方脚回り弾性部材43と第2前方弾性部材42とが重なり合うときには、前方脚回り弾性部材43がシート部材31aに伸長状態で接合され、第2前方弾性部材42が前方脚回り弾性部材43に伸長状態で接合される。シート部材31aの内面にはまた、不透液性プラスチックフィルムで形成された前方防水シート46が第2前方弾性部材42と前方脚回り弾性部材43とに重なるようにホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合されている。シート部材31aでは、横方向Xへ延びる端縁部47がおむつ1の内側へ折り返されて第1前方弾性部材41aと体液吸収性パネル60の前端部61とを被覆し、端縁部47と向かい合う各部位に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合されている。
【0024】
シャシー35における後パネル32は、おむつ1の外面の少なくとも一部分を形成するシート部材32aを含み、そのシート部材32aの内面には横方向Xへ伸長状態で延びる複数条の糸状の第1後方弾性部材51aと横方向Xへ伸長状態で延びる複数条の糸状の第2後方弾性部材52aとがホットメルト接着剤(図示せず)を介して取り付けられている。シート部材32aのうちでおむつ1の脚回り開口12の縁部8aを形成する部位54のそれぞれには、一条の幅の広い後方脚回り弾性部材53がホットメルト接着(図示せず)を介して伸長状態で取り付けられている。後方脚回り弾性部材53と第2後方弾性部材52aとが重なり合うときには、後方脚回り弾性部材53がシート部材32aに伸長状態で接合され、第2後方弾性部材52aが後方脚回り弾性部材53に伸長状態で接合される。シート部材32aの内面にはまた、不透液性プラスチックフィルムで形成された後方防水シート56が第2後方弾性部材52aと後方脚回り弾性部材53とに重なるようにホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合されている。シート状部材32aでは、横方向Xへ延びる端縁部57がおむつ1の内側へ折り返されて第1後方弾性部材51aと体液吸収性パネル60の後端部62とを被覆し、端縁部57と向かい合う各部位に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合されている。
【0025】
これら前後パネル31,32において、シート部材31a,32aには、スパンボンド不織布やメルトボンド不織布等の不織布を使用することができるが、繊維長が30〜70mmの熱捲縮性の複合繊維を含むサーマルボンド不織布を使用して、その複合繊維を捲縮させておき、おむつ1の外面の肌触りを柔軟にしておくことが好ましい。第1,第2前方弾性部材41a,42aや第1,第2後方弾性部材51a,52aは、その表面に対して10〜17g/mの割合でホットメルト接着剤を塗布してシート部材31a,32aに接合することができる。前方脚回り弾性部材43と後方脚回り弾性部材53とには、後記前方弾性シート37や後方弾性シート片38と同じ素材、またはこれら弾性シート片37,38の引張弾性率とは異なる引張弾性率を有するものを使用することができる。好ましい前方弾性シート片37と後方弾性シート片38とは、図2,3の前後方向Zに15〜30mmの幅を有するもので、シート部材31a,32a、および後記中間部シート36のそれぞれに対してホットメルト接着剤を2〜5g/mの割合で塗布して接合することができる。ホットメルト接着剤を塗布するときのパターンにはドット状やオメガ状等の形状を採用することができる。シート部材31a,32aが熱捲縮している複合繊維を含む場合には、シート部材31a,32aの地合を安定させるために、加熱下でのエンボス加工を施して複数のスポット状の溶着部を間欠的に形成しておくことができる。
【0026】
シャシー35における中央パネル33は、熱可塑性合成繊維の不織布で形成された外面シート33aと不透液性のプラスチックフィルムで形成された内面シート33とがホットメルト接着剤(図示せず)で接合されたもので、外面シート33aはホットメルト接着剤(図示せず)を介して前後パネル31,32の内面に接合されている。
【0027】
展開おむつ101における中間部シート36は、第1中心線P−Pに向かって凸となるように湾曲している両側縁部66を有し、中間部シート36がシャシー35に重なった状態では、両側縁部66のそれぞれが前パネル31における部位44と後パネル32における部位54とに一致して、おむつ1における脚回り開口12の縁部8a(図1参照)を形成する。かような中間部シート36には、熱可塑性合成繊維で形成された不織布やプラスチックフィルムを使用することができる。好ましい中間部シート36は、撥水性および/または不透液性を有している。
【0028】
展開おむつ101における前方弾性シート片37と後方弾性シート片38とには、弾性的に伸長・収縮する弾性繊維のフィラメント111(図5参照)と非弾性的に伸長する非弾性繊維のフィラメント112(図5参照)との混合物であって、フィラメント111の存在によって横方向Xへ弾性的に伸長・収縮する不織布片が使用されている。両シート片37,38は、それらが重なり合うシャシー35と体液吸収性パネル60とに横方向Xへ伸長した状態で接合されている。図2において明らかなように、前方弾性シート片37は、シャシー35と体液吸収性パネル60との間に介在するように使用され、後方弾性シート片38は、体液吸収性パネル60の後端部62をおむつ1の内側から被覆するように使用されている。ただし、この発明において、展開おむつ101は、両シート片37,38がシャシー35と体液吸収性パネル60との間に介在する態様に代えたり、両シート片37,38が体液吸収性パネル60の前後端部61,62を被覆する態様に代えたりすることもできる。
【0029】
展開おむつ101における体液吸収性パネル60は、透液性の内面シート67と、撥水性より好ましくは撥水性にして不透液性の外面シート68との間に体液吸収性の芯材69を介在させたもので、その芯材69には粉砕パルプや高吸水性ポリマー粒子等の体液吸収性材料の集合体やその集合体をティッシュペーパで被覆したもの等が使用される。体液吸収性パネル60の両側には、前後方向Zへ延びる防漏堤70が形成されている。防漏堤70は、撥水性、より好ましくは撥水性にして不透液性のシート片を折り重ね、重ねたシート片どうしの間に前後方向Zへ延びる糸状の弾性部材71を伸長状態で介在させることにより形成されている。防漏堤70はまた、近位縁72と遠位縁73とを有し、近位縁72は前後方向Zにおける全長が体液吸収性パネル60に固定され、遠位縁73は、前後方向Zの両端部73a,73bのみが防漏堤70の一部分に重なりかつその一部分とともに体液吸収性パネル60に固定されている。おむつ1が着用されて股下域8が前後方向ZにおいてU字形に湾曲すると、弾性部材71が収縮して遠位縁73が体液吸収性パネル60の内面から立ち上がり、使い捨てのおむつの技術分野において周知の立体的な防漏堤となる。なお、体液吸収性パネル60および防漏堤70について固定というときには、ホットメルト接着剤を使用しての部材どうしの接合を意味している。
【0030】
図4は、図1における部分IVの拡大図であって、側縁部6aと7aとを一体化しているドット状の接合部9の態様を例示している。接合部9は、超音波溶接機のホーンを圧接することによって形成された部位であって、底辺eと高さfとが0.7〜1.2mmの範囲にあり、より好ましくは接合部9は1mm四方の大きさに納まるように形成される。また、接合部9どうしの間において横方向Xの離間寸法gは0.3〜0.7mm、上下方向Yの寸法hは0.7〜3.7mmの範囲にあり、横方向Xにおいて接合部9が有する幅iは4〜8mmの範囲にある。おむつ1は、側縁部6aと7aとに対して、好ましくは1mm四方の大きさを越えることのないドット状の接郷部9を分散配置することによって、側縁部6a,7aが接合部の存在によって極度にこわくなるという問題を解消することができて、おむつ1はその全体を上下方向Yへ折り曲げたり、丸めたりすることが容易になる。
【0031】
図5の(a),(b)は、図2のV−V線切断面を模式的に示す図と、その切断面が横方向Xへ収縮したときの状態を示す図であって、そのV−V線は後胴回り域7における第3弾性域23の内側にある。
【0032】
図5の(a)の後パネル32におけるシート部材32aと後方弾性シート片38とは、ホットメルト接着剤110を介して接合されていて、そのホットメルト接着剤110は、図2における横方向Xと前後方向Zとのうちの少なくとも横方向Xにおいて間欠的に分布していて、シート部材32aに対して2〜5g/mの割合で塗布されている。後方弾性シート片38は、弾性的に伸長・収縮するフィラメント111と、非弾性的に伸長するフィラメント112とが混合され、これら両フィラメント111,112が互いに交差する部位のいくつかにおいて溶着することによって形成されている不織布である。後方弾性シート片38は、図1における第3弾性域23では横方向Xへ収縮しているのであるが図4の(a)ではその後方弾性シート片38が横方向Xへ1.5〜3倍にまで伸長された状態にある。かような後方弾性シート片38は、着用者の肌(図示せず)と向かい合う内面116とその反対面である外面117とを有し、図4の(a)においてその内面116はほぼ平坦であるか、または横方向Xにおいてゆるやかな起伏を繰り返している。外面117は、シート部材32aに接合されている。そのシート部材32aはフィラメントまたはステープルの形態にある熱可塑性合成繊維113によって形成されているスパンボンド不織布やメルトボンド不織布等の不織布であって、実質的な意味において弾性的に伸長・収縮することのないものである。
【0033】
図5の(b)は、図5の(a)における後胴回り域7がそれを伸長させている力から解放されて、後方弾性シート片38が横方向Xへ弾性的に収縮したときの後方弾性シート片38とシート部材32aとの切断面を示している。このときの後方弾性シート片38とシート部材32aとの状態は、図1の第3弾性域23における後方弾性シート片38とシート部材32aとの状態に同じである。収縮している後方弾性シート片38の内面116には、肌に向かって凸となる凸条部121と肌に向かって凹となる凹条部122とが横方向Xにおいて交互に現れている。後方弾性シート片38が図5の(a)の状態から(b)の状態になるときには、フィラメント111が弾性的に収縮してフィラメント111の長さが短くなる一方、フィラメント112はその長さが短くなることはなく、たわんだものになる。凸条部121は、そのようにしてたわんだフィラメント112の集積している部位であって、指先が触れれば容易に変形するような柔軟性を有している。凸条部121と凹条部122とは、図2の展開おむつ101においては前後方向Zへ延びていて、図1のおむつ1では上下方向Yへ延びている。ただし、凸条部121と凹条部122とには、図2における後方弾性シート片38の前後方向Zの全長にわたって延びている場合や、その全長のうちの途中で消失している場合などがあり、また全長にわたって延びている場合でも、直状に延びていたり屈曲しながら延びていたりすることがある。そのような形態の凸条部121は、後方弾性シート片38の剛性を高めるような作用に乏しいもので、後方弾性シート片38を柔軟なものにするうえにおいては好ましいものである。
【0034】
後方弾性シート片38に接合しているシート部材32aは、後方弾性シート片38が収縮することに伴い、横方向Xにおいて不規則な起伏を繰り返すように変形してギャザー123を形成している。ギャザー123は、シート部材32aだけで形成されている一層構造のもので、シート部材32aと後方弾性シート片38とを含む二層構造のものではない。ギャザー123は、二層構造ではなくて一層構造であるということによって、柔軟になり、指先が触れたときに容易に変形する。そのようなギャザー123は、図1のおむつ1の後胴周り域7において、第3ギャザー23となって現れる。すなわち後パネル32において、後方弾性シート片38の存在する部位は、図1の第3弾性域23を形成している。ちなみに、おむつ1の後胴回り域7における第1ギャザー21は主として第1後方弾性部材51aの収縮によって形成され、その第1後方弾性部材51aの存在する部位とその近傍は、後胴回り域7の第1弾性域21となる。第2ギャザー22は、主として後方脚周り弾性部材53の収縮によって形成され、後方脚周り弾性部材53の存在する部位とその近傍は、第2弾性域22となる。
【0035】
図2の展開おむつ101において互いに重なり合う前方弾性シート片37と前方パネル31におけるシート部材31aとは、図5の(a)における後方弾性シート片38およびシート32aと同じに形成されていて、前方弾性シート片37が収縮した状態にある図1のおむつ1では、前方弾性シート片37の内面に図5の(b)における凸条部121と凹条部122とにほぼ同じ凸状部と凹条部とが現れ、シート部材31aの外面には胴回り方向において不規則な起伏を繰り返す第3ギャザー23(図1参照)が現れる。すなわち、前方パネル31において、前方弾性シート片37の存在する部位は図1の前胴回り域6の第3弾性域23を形成している。また、おむつ1の前胴回り域6における第1ギャザー21は、主として第1前方弾性部材41aの収縮によって形成され、その第1前方弾性部材41aの存在する部位とその近傍は第1弾性域21となる。前胴回り域6の第2ギャザー22は主として前方脚周り弾性部材43の収縮によって形成され、前方脚周り弾性部材43の存在の存在する部位とその近傍は第2弾性域22となる。
【0036】
前方弾性シート片37と後方弾性シート片38とが図示の如く使用されていることによって、着用物品を着用してこれらシート片37,38の凸条部121が肌に接触したときに凹条部122が肌から離間していると、凹条部122と肌との間には間隙が形成されるから、その間隙の内側を空気や水蒸気が動くことによって、発汗や肌の蒸れることを抑えることができる。特に、図2の後胴回り域7において例示した如く後方弾性シート片38が体液吸収性パネル60の内側にあると、おむつ1を着用したときの後胴回り域7では水分を含んだ体液吸収性パネル60が直接肌に密着するということがなく、しかも、肌と後方弾性シート片38との間が凹条部121において通気可能な状態にあるので、おむつの着用による蒸れを効果的に防ぐことができる。
【0037】
また、おむつ1によって例示のこの発明に係る着用物品では、前後胴回り域6,7の側縁部6a,7aどうしの接合部9が図4の如き態様にあることによって、接合部の存在によって側縁部6a,7aが硬くなり、変形し難くなるという問題を解消することができる。その結果として、着用物品を柔らかく、しなやかなものにすることができる。
【0038】
そのおむつ1ではまた、前後胴回り域6,7の第3弾性域23に対して、従来の如く複数条の糸ゴムを使用するのではなく、不織布で形成されていて図1の上下方向Yにおける寸法(幅)が大きい前方弾性シート片37と後方弾性シート片38とを使用し、それら両シート片37,38にはシート部材31aとシート部材32との裏打ちシートをも兼ねている。それゆえ、胴回り域において複数条の糸ゴムを二枚のシート片でサンドウィッチするという従来技術のおむつと比べると、胴回り域において使用するホットメルト接着剤の使用量を減らすことが可能になって、胴回り域がそこに使用されているホットメルト接着剤の影響で硬くなるという問題を解消することができる。
【0039】
さらには、前後胴回り域6,7の外面側に形成されるギャザー123は、それが一層構造であることによって、前後胴回り域6,7を柔らかく、しなやかにするように作用する。
【0040】
また、おむつ1において前方弾性シート片37と後方弾性シート片38とが使用されている前後胴回り域6,7の内面は、両シート片37,38における凸条部121がその内面を柔らかく、しなやかにすることができ、シート部材31a,32aに捲縮した繊維が使用されている場合の前後胴回り域6,7の外面では、その捲縮した繊維がその外面を柔らかく、しなやかにすることができる。
【0041】
図5,6,7は、前方弾性シート片37や後方弾性シート片38として使用することのできる弾性ウエブ135の製造工程の一部分を示す図と、その工程で使用するギアロール132,133の部分図と、図6のギアロール132の部分拡大図である。図の右方からはポリウレタン繊維等の弾性繊維のフィラメント111と、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維のフィラメントのうちの少なくとも一つを含む非弾性繊維のフィラメント112との混合物であるウエブ130が機械方向MDの下流に向かって予熱された状態で供給され、複数の案内ロール131を通過する。ここで、ウエブ130について弾性繊維というときには、室温にある長さLの1本または複数本のフィラメントに伸長力を作用させてその長さを2Lにし、その後伸長力を解いて1分経過した後の長さが1.1L以下にまで収縮しているものを意味している。また、ウエブ130について非弾性繊維というときには、室温にある長さLの1本または複数本のフィラメントに伸長力を作用させてその長さを2Lにし、その後伸長力を解いて1分経過した後の長さが1.7L以上であるものを意味している。案内ロール131を通過したウエブ130は所要の温度にまで加熱されている一対のギアロール132,133の間に供給されて所要の倍率にまで、たとえば1.5〜3倍にまで伸長される。
【0042】
伸長されたウエブは、ギアロール132,133を出て送りロール134へ供給される過程またはその過程に続く過程で弾性的に収縮して、伸長前の寸法に近い寸法にまで戻り、弾性ウエブ135となっておむつ1の製造工程(図示せず)に供給される。ただし、弾性ウエブ135では、ウエブ130におけるフィラメント111が伸長した後に弾性的に収縮して伸長前の寸法に近い寸法にまで戻っているが、非弾性繊維のフィラメント112は、非弾性的に伸長してその長さが長くなるように永久変形しているので、フィラメント111が収縮するときに図4の(2)における凸条部121を形成する。かような弾性ウエブ135は、機械方向MDへ所要の倍率にまで弾性的に伸長した状態でシート部材31aや32aとなるべき繊維ウエブに対して機械方向MDにおいて間欠的に接合される。
【0043】
図6に示された一対のギアロール132,133は同一形状のもので、それぞれの周面には、互いにかみ合う上歯136と下歯137とのそれぞれが周方向へ等ピッチで形成されている。ウエブ130は、上歯136と下歯137との間に供給されると、主として、上歯136の頂部と下歯137の頂部との間で伸長され、上歯136の頂部と下歯137の頂部とに接触していた部分は殆ど伸長することがなく、図4の(b)における凹条部122を形成する。
【0044】
図8には、上歯136と下歯137とについての各部位の寸法の具体例が記入されている。この具体例において、上歯136と下歯137とがかみ合う深さは、ウエブ130に対して予定する伸長倍率によって決まる値であるが、例えばウエブ130を2.5〜3倍にまで伸長するときには、一例としてそのかみ合う深さを6mm程度に設定する。
【0045】
図5の工程の一例において、ウエブ130には、一例として繊度が2.5〜6dtexの範囲にあるポリウレタン繊維のフィラメント111とポリプロピレン繊維のフィラメント112とが重量比で40:60〜60:40の割合で混合されていて、単位面積当たりの質量が20〜50g/mであるものが約50℃に予熱した状態で使用される。このウエブ130は、さらに約55℃にまで加熱されてギアロール132,133に供給される。
【0046】
図9は、図6の工程を使用して得られた弾性ウエブ135の一例の断面を60倍に拡大して示す写真である。弾性ウエブ135には凸条部121と凹条部122とが形成されている。凹条部122は、ウエブ135が上歯136の頂部または下歯137の頂部に接触していた部位であり、凸条部121は上歯136と下歯137との間にあって、ウエブ130が伸長された後に収縮した部位である。凸条部121は、永久変形して寸法の長くなった非弾性繊維のフィラメント112が集積してたわむことによって形成されていて、柔軟であり、指先が触れると容易に変形する。図において、凸条部121の厚さは約1.2mmであり、凹条部122の厚さは約0.3mmであって、凸条部121のピッチは約2.2mmである。
【0047】
この発明の発明者が知見したところによれば、図示例のおむつ1を含むこの発明の着用物品において、前後胴回り域のうちで体液吸収パネルを除くその他の部分における外面シートとそれに接合する弾性シートのやわらかさ、しなやかさの指標としてKES−FB4を用いてその外面シートの表面特性を測定すると、MIU(−):0.5以下、MMD(−):0.013以下、SMD(μm):5.0以下となり、KES−FB2を用いて外面シートとそれに接合する弾性シートの曲げ特性を測定すると、B(gf・cm/cm):0.14以下、2HB(gf・cm/cm):0.2以下、Bwale(gf・cm/cm):0.5以下となるような優れた柔らかさ、しなやかさを特性として持つ着用物品を得ることが可能であることを確認できた。
【0048】
パンツ型の使い捨てのおむつ1を例にとって説明したこの発明は、開放型の使い捨てのおむつや失禁患者用のパンツ、トレーニングパンツ等の使い捨ての着用物品において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 着用物品(おむつ)
6 前胴回り域
7 後胴回り域
8 股下域
23 ギャザー(第3ギャザー)
31a 外面シート(シート部材)
32a 外面シート(シート部材)
37 弾性シート
38 弾性シート
60 体液吸収性パネル
111 弾性繊維(フィラメント)
112 非弾性繊維(フィラメント)
121 凸条部
122 凹条部
123 ギャザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前胴回り域と後胴回り域と股下域とを有し、これら各域が肌に対向する内面と、その反対面である外面とを有し、前記前後胴回り域が胴回り方向へ弾性的に伸長・収縮可能であって、前記前後胴回り域における前記内面の少なくとも一部分が弾性的に伸長・収縮可能な弾性シートによって形成されている使い捨ての着用物品であって、
前記弾性シートが弾性的な伸長性を有する弾性繊維と非弾性的な伸長性を有する非弾性繊維との混合物であって、前記肌に向かって凸となる凸条部と凹となる凹条部とが前記弾性繊維と前記非弾性繊維とによって形成されていて、前記凸条部と前記凹条部とが前記着用物品の上下方向へ互いに並行して延びるとともに前記着用物品の胴回り方向において交互に並び、前記弾性シートの前記胴回り方向への弾性的な伸長・収縮の反復に伴って前記凸条部における前記弾性シートの厚さが減少と復元とを反復することを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記着用物品が前記股下域において前記前後胴回り域方向へ延びる体液吸収性パネルを有し、前記前後胴回り域の少なくとも一方において、前記弾性シートが前記着用物品の内側から前記パネルの端部を被覆して前記胴回り方向へ延びている請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記弾性シートの前記外面は、前記着用物品の外面の少なくとも一部を形成する外面シートに前記着用物品の内側から接合し、前記外面シートが非弾性的な伸長性を有する非弾性繊維によって形成された不織布であって、前記外面シートには前記胴回り方向において起伏を反復するギャザーが形成されている請求項1または2記載の着用物品。
【請求項4】
前記弾性シートが20〜50g/mの質量を有するスパンボンド不織布であって、前記弾性繊維が2〜6dtexの繊度を有するポリウレタン繊維のフィラメントであり、前記非弾性繊維が2〜6dtexの繊度を有するポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維のフィラメントのうちの少なくとも一つのフィラメントであって、前記弾性繊維と前記非弾性繊維との重量混合比が40:60〜60:40の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記外面シートは、前記非弾性繊維が捲縮した状態にあるものである請求項3または4記載の着用物品。
【請求項6】
前記着用物品は、パンツ型のものであって、前記前後胴回り域の側縁部どうしが合掌状に重なり合い、前記側縁部に分散するように形成された複数のスポット状の接合部において互いに接合しており、前記接合部それぞれの大きさが1mm四方の大きさに納まる請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255120(P2011−255120A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134559(P2010−134559)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】