説明

使い捨てチップ型フローセルとそれを用いたフローサイトメーター

【課題】従来のフローサイトメーターおよびセルソーターの有していた、バイオハザード上の課題を解決すること。
【解決手段】本発明は、微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、前記試料液中の前記該粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、前記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該粒子を解析する手段とを備える液体中微粒子解析装置において、前記フローセルは平板状基板に流路が形成されたものであって、流路側面に反射面が形成されており、その反射面はフローセルの流路内で発生した光のうち基板面内方向に進行する光をフローセル表面の特定領域に導き、前記光検出器は前記特定領域から外部に出てきた光を検出することを特徴とする液体中微粒子解析装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメーターなどの生体粒子の解析機能またはセルソーターなどの分離機能を有する装置、それを用いる新規な機能を実現する測定方法、および使い捨てフローセルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメーターは、種々のタイプの細胞および生物学的流体を鑑別するために一般に用いられている。従来のフローサイトメーターは、通常、石英から作製され、それを通って個々に識別されるべき細胞の流れが流れるように流路が形成された光学的に透明なフローセルを備えている。この流路を通る細胞の流れは、この細胞の流れを同心的に取り囲むシース液体によって、流路の中央部に集中して流れる。この流路の中央部は、レーザービームで照射され、細胞がその照射領域を通過したときに、細胞の大きさ、形、屈折率に依存した光散乱が生じる。このレーザー光の波長は、蛍光色素で特異的に染色した細胞を蛍光で検出するために、蛍光色素の種類との組み合わせで決定される。このように、個々の細胞について散乱光のほかに蛍光を波長別に複数の光検出器で検出することによって、細胞を多角的に解析することが可能となっている。上記のフローサイトメーターの技術は特許文献1に記載されている。また平板状のフローセルについては特開平2003-302330(特許文献13)と米国特許第7105355号(特許文献14)に記載されている。フローサイトメーターの照射方式として流路内でレーザービームを走査することで正確な信号光強度を計測する方法が特許文献2,3,4に記載されている。
【0003】
次にセルソーティング方法の公知例について述べる。米国特許第3710933号(特許文献1)または米国特許第3826364号(特許文献5)に記述されている方法が現在一般的な製品に使用されている分離方法であって、液滴形成用ノズルから空気中に試料液を液滴として吐出し、分離対象の細胞を含む液滴は液滴単位で電場によって分離するという方法である。特開昭64−3541(特許文献6)は、フローセルを流れる試料液の周囲にシース流を流し、試料液に電場を加えることで帯電した粒子を試料流からシース流の法へシフトさせて分離計測する方法である。特開平1−170853(特許文献7)は、フローセルを流れる粒子に圧力パルスを与えて、フローセル内の定常的に流れている流路ではない流路に粒子を分離する方法が記載されている。国際公開番号WO98/10267(特許文献8)は、フローセル内に周囲をシース流でしぼって流した微粒子に場を与えて微粒子の流れをシフトさせて分離するという技術が公開されている。国際公開番号WO2004/101731(特許文献9)において、フローセル内の流路の両側に設置したゲル電極によって液体中で帯電している細胞を電場で分離する方法が公開されている。米国特許US6808075(特許文献10)において、粒子の流れに対して垂直にメニスカスを形成するバブルバルブにより圧力パルスを加えて流れをシフトさせて分離する方式が公開されている。PCT/US2006/000237 (特許文献11)は、特許文献8と同様に圧力パルスを与えるが目的とする粒子を含む水滴単位で射出してコンテナに回収方法である。米国特許第4756427号(特許文献12)には、シース流で絞られた試料液の流れの中の粒子を計測しターゲットとなる粒子であると判断した場合に、パルス流で別流路に導入して分離する方法が記載されている。抗体をコーティングした磁気粒子を利用して、特定の細胞に磁気粒子を吸着させ勾配磁場で分離する方法が知られている(特許文献15)。温度によって凝集制御可能な熱応答性磁性ナノ粒子が公開されている(特許文献16)。熱応答性磁性ナノ粒子を利用して細胞を分離する方法が公開されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3710933号
【特許文献2】特開昭63-1952
【特許文献3】特開平3-150446
【特許文献4】特開平4-55740
【特許文献5】米国特許第3826364号
【特許文献6】特開昭64−3541
【特許文献7】特開平1−170853
【特許文献8】国際公開番号WO98/10267
【特許文献9】国際公開番号WO2004/101731
【特許文献10】米国特許第6808075号
【特許文献11】PCT/US2006/000237
【特許文献12】米国特許第4756427号
【特許文献13】特開平2003-302330
【特許文献14】米国特許第7105355号
【特許文献15】国際公開番号 WO96/28732
【特許文献16】特開平2007-56094
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hoshino A, et al. Biotechnology Progress, 2007,23,1513-1516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフローサイトメーターおよびセルソーターは、バイオハザード上の課題が存在する。すなわち、測定サンプルへの外部異物の混入や測定サンプルの外部への拡散が生じる構造となっているからである。すなわち、試料液のリザーバーおよび送液パイプ、フローセルを含めた送液系は、簡単に取り替えることは不可能であり、従来のフローサイトメーターは、キャリーオーバーを防止するためには異なる試料の測定ごとに洗浄しなければならない。このことは、フローサイトメーターに粒子分離機能を追加した装置であるセルソーターについても同様である。その解決策の一つとして、フローセルを使い捨て可能とすることである。使い捨て可能とするためには、フローセルがスライドガラスのような平板状構造であると都合がよい。つまり、射出成形などで流路パターンの形成が容易かつ安価に量産できる構造であるためである。平板状のフローセルを用いる場合は、表面から垂直に照射レーザーを入射する方法が都合よい。しかしながら、平板の面内方向への散乱光つまり側方散乱光の検出に問題が存在する。通常のフローサイトメーターのフローセルはフローセルの断面が正四角であることが一般的であって、レーザーの照射方向と垂直方向の散乱光を計測することは問題がなく前方散乱光と同時に計測される。しかし、平板型のフローセルを用いた場合は、側方散乱光の方向にフローセル基板が存在するので、フローセルの平板構造自体が測定の障害となる。この課題を解決する方法として、特許文献14にフローセルの流路の側面に光ファイバーを設置し流路内で発生した光を光検出器まで導く方法が記載されている。しかし、この場合は光ファイバーがフローセルに接続しているために測定ごとのフローセル交換には適さないので、使い捨て用途のフローセルに適用することはできない。
【0007】
また、フローセルを安価に製造できなければ、使い捨てにすることは困難になる。安価に製造するためには、透明樹脂製であることが都合良い。しかしながら、樹脂は波長500nmより短波長領域ではわずかながら光吸収帯が存在し蛍光を発生するので、計測の背景ノイズとなる。つまり、使い捨てとして都合が良い透明樹脂製のフローセルの場合は、自家蛍光が計測の障害である。
【0008】
次に、微粒子分離方法の課題について述べる。第一の課題としてバイオハザード対策上の問題がある。特許文献1または特許文献5に記述されているジェットノズルによる液滴と出方式は、バイオハザード対策上問題がある。つまりサンプルが病原性のウイルスや細菌に汚染された細胞の場合、非常に危険なものをエアロゾルとして大気中に拡散させてしまうというリスクを有している。第一の課題を解決する方式としては、エアロゾルを大気中に拡散せずフローセル内に閉じ込めたまま分離する方法が考えられる。このような方法として、次のいくつかの技術が公開されている。特許文献6はフローセルを流れる試料液の周囲にシース流を流し、試料液に電場を加えることで帯電した粒子を試料流からシース流の法へ電場でシフトさせて分離計測する方法である。特許文献7は、フローセルを流れる粒子に圧力パルスを与えて、フローセル内の定常的に流れている流路ではない流路に粒子を分離する方法であるが、分離した粒子がまたもとの流路に戻らないためのプロセスが面倒という課題が存在する。特許文献8は、フローセル内に周囲をシース流でしぼって流した微粒子に電場や磁場などの場を与えて微粒子の流れをシフトさせて分離するという技術である。この方法において場として電場を適用する場合は、上記特許文献6の内容に相当するが、特許文献9における方法と同じで電場を利用する方法は、電気分解による気泡発生を何らかの方法で防止したとしても、細胞の有する電荷は周囲の電解質中に含まれるイオンによってシールドされ、粒子に作用する力が低下するという問題が存在するので、電解質中での分離には実用的でない。特許文献10は、チップ内でのソーティングする技術である。一個の微粒子を分離するのにメニスカスの往復運動が必要であり、行きと帰りで逆方向の流れが生じるため、粒子が十分に遠ざかるのをまったのちにメニスカス位置を元に戻す必要があるという点で問題がある。特許文献11は、特許文献7と同様に圧力パルスを与えて目的とする細胞を含む領域を水滴単位で射出してコンテナに回収方法となっている。これは使い捨てフローセルチップ内で実現できる内容ではなく、他のサンプルとのコンタミネーションが存在するという問題が存在する。特許文献12は、そのままでは使い捨てチップに適用できない。
【0009】
次に示す第二の課題を説明する。ソーティングのターゲットとなる細胞の密度に比較して非ターゲット細胞の密度が非常に高く、たとえば100倍以上ある場合を考えると、現在の最高性能でも分離性能が95%程度であるため分離した細胞群には非ターゲット細胞の方がターゲット細胞より多く含まれるという問題が生じる。
【0010】
そのため、分離した細胞の純度を上げるために回収した試料に対して再度ソーティング処理が必要となる。しかし、ターゲット細胞の絶対個数が少ないので、この処理を繰り返すとターゲット細胞を消失する確率が高くなる。そのため繰り返し分離は解決策にはならない場合が多い。
【0011】
次にある特定の抗体をコーティングした磁気粒子を利用して、それに対応する抗原を有する細胞に磁気粒子を吸着させ、その細胞を勾配磁場で分離する方法の課題をのべる。課題の一つは、分離精度は1種類の抗原抗体反応の特異性のみで決定されるので、多種類の抗原抗体反応を利用して分離精度を向上させることは困難であることである。すなわち、ある抗体をコーティングした磁気粒子でラベルした細胞を勾配磁場で分離し、さらにその分離細胞から別の抗体をコーティングした磁気粒子でさらに特定の細胞を分離することは困難である。なぜならば、複数の磁気粒子を選択的に分離することができないという事と、分離した細胞から磁気粒子を取り外すことが困難であるからである。いずれにせよ、従来の磁気粒子を利用して細胞を分離する方法は、1種類の抗原抗体反応の特異性が分離精度の限界を決めている。第2の課題は、磁気粒子による分離細胞は、本当に分離されているという保証がないということである。そのため、分離後にフローサイトメーターで解析し分離細胞を認定する必要がある。しかし、通常のフローサイトメーターは多量のシース液を使用するために、分離後の測定細胞液が少なくとも1000程度は希釈されるため、細胞数が微量な場合は細胞を失うリスクが高いという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記状況を鑑み、以下の使い捨てフローセルを使用して生体粒子を解析し識別する装置またはさらに分離する装置、さらに使い捨てフローセルを提供する。
(1)微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
上記フローセルの上記流路を流れる上記試料液に光を照射する手段と、
上記試料液中の上記該粒子から発生する散乱光および/または蛍光を波長別に検出するための光検出器と、
上記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該粒子を解析する手段と
を備える液体中微粒子解析装置において、
上記フローセルは平板状基板に流路が形成されたものであって、流路側面に反射面が形成されており、その反射面はフローセルの流路内で発生した光のうち基板面内方向に進行する光をフローセル表面の特定領域に導き、上記光検出器は上記特定領域から外部に出てきた光を検出することを特徴とする液体中微粒子解析装置。
(2)上記(1)に記載の液体中微粒子解析装置おいて、
上記流路側面に形成された上記反射面は上記流路側面と気体との間の界面からなる面であって、流路側から進行してきた光を全反射する面であることを特徴とする液体中微粒子解析装置。
(3)上記(1)に記載の液体中微粒子解析装置において、
上記フローセルは平板状であって、平板状のフローセル基板の表面に対してほぼ垂直に流路内に照射光が照射する構造を有し、流路内で発生し流路側方へ向かう側方散乱光は、フローセル基板内に内蔵した反射面を利用してフローセルの特定の領域から外部に導かれた光として検出され、前方散乱光は、前方にフローセルを透過して外部に出た光として検出されることを特徴とする液体中微粒子解析装置。
(4)試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
フローセル内部に流路側面の外側に流路の方向から進行してきた光を全反射する面が形成されており、該反射面はフローセル母材と気体との間の界面からなる反射面であることを特徴とするフローセル。
(5)上記(4)に記載のフローセルおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成された構造であって、該反射面は流路内で発生した散乱光や蛍光を基板表面方向または裏面方向へ反射することを特徴とするフローセル。
(6)上記(4)に記載のフローセルおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成されている構造であって、該反射面はフローセルに入射した照射光を反射して基板面内方向から流路に光照射するための反射面として機能することを特徴とするフローセル。
(7)試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成されている構造であって、フローセル基板内の光反射面として、平板状基板の表裏面のフラット面における気体との間の界面、あるいは、基板表面または裏面に形成した溝構造の側面であって、流路内部で発生して平面基板の面内方向に進行する光をフローセルの特定の外部表面へ導く構造であることを特徴とするフローセル。
(8)上記(7)に記載のフローセルおいて、
光反射面は流路脇の基板表面に約45度の斜面として形成されたものであり、流路内で発生した光のうち基板の面内方向に進行した光を基板表面あるいは裏面方向に反射する構造であることを特徴とするフローセル。
(9)上記(7)に記載のフローセルおいて、
光照射する流路を含む特定の局所的な領域のフローセルの厚さが、その周囲より薄くなっていることを特徴とするフローセル。
(10)上記(7)に記載のフローセルおいて、
該フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、フローセルを流れる液体が上流のリザーバーと流路と下流のリザーバーの系に閉じ込められている構造となっていることを特徴とするフローセル。
(11)試料粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
上記フローセルの上記流路を流れる上記試料液に光を照射する手段と、
上記試料液中の上記試料粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、
上記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該試料粒子を識別する手段とを備える液体微粒子計測装置装置において、
上記フローセルは平板状基板中に基板面内方向にアレイ状に複数の流路を形成したものであって、上記光を照射する手段は照射ビーム光を基板面内方向から複数流路に横断する方向に照射し、上記光検出器は複数流路を流れる試料微粒子から発生する光信号を流路ごとに区別して計測することを特徴とする液体中微粒子計測装置。
(12)試料粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
上記フローセルの上記流路を流れる上記試料液に光を照射する手段と、
上記試料液中の上記試料粒子から発生する散乱光および/または蛍光を波長別に検出するための光検出器と、
上記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該試料粒子を識別する手段とを備える液体中微粒子計測装置において、
上記フローセルは複数流路がアレイ状に配置した構造をしており、上記光を照射する手段は照射ビーム光をその複数の流路に対して流路を横断する方向に相対的に走査する機構を有し、ビームサイズは各流路幅より小さく、走査周期は光検出信号の応答周波数より高く、上記光検出器の検出光学系は結像光学系であって流路の結像面にアレイ型検出器を設置することにより流路毎に区別して複数流路を同時並列に計測することを特徴とする液体中微粒子計測装置。
(13)試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
上記フローセルは平板状であって、平板基板上に複数の試料液リザーバーと複数の試料液に共通のシース液リザーバーが形成されており、試料液リザーバーは共通のリザーバー内に形成され、液体が混在しないようになっており、各試料液リザーバーに試料液用流路が接続しており、各試料液流の左右からシース流が合流した流路を形成し、合流した流路は平行な等間隔に形成されており、最下流はフローセル上に形成した共通のリザーバーに接続する構造となっており、複数の流路には一個流路のみ照射されるサイズの光ビームを順次ステップアンドリピード方式で、照射光またはフローセルを移動させることで、複数の試料を計測することを特徴とするフローサイトメーターおよびそのフローセル。
(14)上記(12)に記載の液体中微粒子計測装置おいて、フローセルは複数のキャピラリーをアレイ状に配列した構造であることを特徴とする液体中微粒子計測装置。
(15)微粒子を含む試料液をフローセル中の流路に流した状態で光を照射し、該微粒子から発生する散乱光や蛍光を検出しそれらの信号強度にもとづいて該生体粒子を識別し分離する装置において、
該フローセルは平板基板内に流路を形成した構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、光照射領域より下流側に少なくとも合流流路の一つの側面に流路Sが接続し、粒子が光照射領域を通過したときに発生する光信号によって分離すべき粒子か否かを判断し、分離すべき粒子であると判断される場合はその粒子が流路Sと接続箇所を通過中に流路Sを通して合流流路内を流れる当該微粒子に対してパルス流をフローセルの外部に設置したポンプから与えることにより、当該粒子の合流流路内での流れる位置をシフトさせ、もし分離する必要がない粒子と判断した場合はパルス流を発生させないので流れ位置がシフトしない、そのシフトの有り無しで下流の複数の分岐流路に分離することを特徴とする微粒子分離装置。
(16)微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
上記フローセルの上記流路を流れる上記試料液に光を照射する手段と、
上記試料液中の上記微粒子から発生する散乱光および/または蛍光を波長別に検出するための光検出器と、
上記光検出器で検出した複数の信号強度にもとづいて該生体粒子を識別し分離する手段とを備える微粒子分離装置において、
該フローセルは試料液の導入用流路と、その両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路を備え、光照射領域より下流側に合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、粒子が光照射領域を通過したときに粒子から発生する光信号を検出し分離すべき粒子か否かを判断し、分離すべき粒子であると判断される場合はその粒子が流路Sと接続している合流流路の場所を通過中に流路Sを通して合流流路内を流れる当該微粒子に対して、流路Sの下流に接続するフローセル上のリザーバーと密閉した空間の気体を介してパルスポンプから引圧パルスを与えることで微粒子を流路Sに取り込みリザーバーに貯蔵することで、送液系全体を1個のフローセル上に封じ込めた状態で微粒子分離を行うことを特徴とする微粒子分離装置。
(17)微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置するための手段と、
上記フローセルの上記流路を流れる上記試料液に光を照射する手段と、
上記試料液中の上記微粒子から発生する散乱光および/または蛍光を波長別に検出するための光検出器と、
上記光検出器で検出した複数の信号強度にもとづいて上記微粒子を識別し分離する手段とを備える液体中微粒子分離装置において、
上記フローセルの流路中に試料液を流路断面の一部に偏在させて流れさせるための試料流とシース流との合流する流路が形成されており、その合流して試料流が細く絞られて流れている状態に磁場を印加制御可能な電磁石が流路側面近傍に設置されており、磁気を帯びた粒子のみを偏在した試料流から流れる位置をシフトさせ、そのシフトした粒子を導く分岐流路1が形成され、その分岐流路1の途中でレーザーを照射して、粒粒子からの散乱光や蛍光を計測し微粒子を識別し、微粒子が分離対象であると判定した場合に、その下流において分岐流路1に接続する流路Sが形成されており、流路Sの下流側に接続するリザーバーSが存在し、リザーバーSと密閉した空気を介したパルスポンプによる引力パルス流によって、微粒子をリザーバーSに取り込むことを特徴とする液体中微粒子分離装置。
(18)試料液を流路に流した状態で試料液に含まれる微粒子を分離するためのフローセルにおいて、
フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、その合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、流路Sには外部とパイプ接続可能なポートがあり、さらに合流流路の下流には分離用の複数の分岐流路が形成されて複数のリザーバーに接続していることを特徴とする平板状のフローセル。
(19)試料液を流路に流した状態で試料液に含まれる微粒子を分離するためのフローセルにおいて、
上記フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、その合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、流路Sの下流に分離粒子用のリザーバーが接続し、そのリザーバーには外部とパイプ接続可能なポートがあり、さらに合流流路は下流の廃液用リザーバーに接続している構造であることを特徴とするフローセル。
(20)多種類の細胞群から特定の細胞を分離する方法において、凝集と分散の温度がそれぞれ異なる複数の熱応答性磁性粒子を用いて、それぞれの種類の磁性粒子に異なる種類の抗体を結合させ、多種類の細胞群と抗原抗体反応をさせたのちに、勾配磁場による分離を複数の温度で順次行うことで、複数の抗原抗体反応にもとづいて選別分離を行うことを特徴とする細胞分離方法。
(21)上記(1)、(2)、(3)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、または(17)のいずれかにおいて、試料液の温度を制御して計測できることを特徴とする液中微粒子計測装置。
【0013】
以下、本発明の特徴について説明する。
1)使い捨て可能な平板型フローセルを用いて側方散乱信号を検出する手段
試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる物質から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、試料液が流れる流路パターンと流路中で発生した光をフローセルの特定の表面へ導くための光反射面4を形成する。フローセル母材と気体との界面を利用することでフローセル内に全反射面を形成する。すなわち、フローセル母材の屈折率をNfとすると、大気の屈折率は1であるから、全反射条件を満足する臨界入射角度はasin(1/Nf)で求められる。この角度より大きい入射角度はすべて全反射となる。たとえば、Nf=1.42の場合は44.7度となる。具体的な素材の屈折率は、400nmから800nmの波長範囲では、石英の場合はNf=1.45〜1.47、ガラスの場合はNf=1.50〜1.53、アクリルの場合はNf=1.49〜1.50、ポリカーボネートの場合はNf=1.64〜1.7である。したがってこれらの材料は可視光の領域において、45度以上の入射角度ですべて全反射条件を満足することがわかる。
【0014】
この反射面をフローセル内部に形成することにより、流路内で発生した光を高効率で特定のフローセル表面に反射して導くことができる。フローセル母材が高屈折率であるほど臨界入射角度は小さく全反射条件を満たす入射角度範囲が広くなるので、光を効率よく導くためにはフローセル母材として高屈折率のものが適している。図1に示したフローセルは、平板フローセルの表裏面の平面が全反射面として機能する。すなわち、流路5を流れる細胞が照射領域1を通過した瞬間に発生する信号光(散乱光や蛍光)のうち、側方(平板面内方向)へ進行した信号光6は±45度の範囲内において、フローセルの表裏面4で全反射を生じるので、端面の外部に出た光を検出する場合は効率がよい。
【0015】
図2に示した構造では、フローセルの平面基板に溝7を形成することで、その側面4も樹脂と気体との境界となるので全反射面とすることができる。この結果、流路内から発生した光を上下左右の全反射面で効率よく端面に導くことで、端面方向で効率よく側方信号光を検出できるフローセルとなっている。図3や図4示したフローセルは、側方信号光を基板内部や端面に斜面を形成して全反射面として、それを利用して信号光を表面方向あるいは裏面方向へ反射させることで、側方信号光を検出する構造である。以上をまとめると、フローサイトメーターで使用されるフローセルにおいて、全反射をフローセル内に形成することによって、平板型フローセルで側方の信号光の検出を可能とする技術内容である。上記のフローセルの全反射を利用する検出光学系としては、次の手段をとる。
【0016】
図1又は図2に示すように、平板状フローセルに対して平面に対して垂直に流路に照射し、側方の信号を基板の端面方向で検出する場合は、端面から外部に出る信号光を効率よく検出しなければならない。このために、端面の近傍にフレキシブルな光ガイドチューブ17を設置し、光検出器2に導くという手段をとる。これによって、光検出器の自由な配置が可能であり、かつフローセルと検出光学系との位置関係が厳密でなくとも光ガイドの端面に入射すれば高効率に光検出器に導くことができる。
【0017】
次に、上記の側方信号光の検出光学系に加えて、使い捨てフローセルを利用するフローサイトメーターの光学系全体について記述する。
【0018】
図4に示すように、照射光3はフローセル基板に対してほぼ垂直に流路5に対して照射し、試料粒子から発生する散乱光や蛍光の検出は、フローセル基板を透過して基板表面に出た信号光をダイクロイックミラー14とバンドパスフィルター15を用いて波長分離して検出する光学系と、フローセル内に形成した全反射面4を利用してフローセル外部に設置した光ガイド17を用いてバンドパスフィルター15を通して波長分離して検出器2に導いて検出する検出系とを有することで、微粒子ごとに入射光と同じ波長の前方散乱光信号と側方散乱光信号と入射光と異なる波長の蛍光を検出することが可能となる。
【0019】
次に、送液系全体がフローセルとともに交換可能であって、前方散乱光と側方散乱光とを検出可能とする手段は以下のようになる。
【0020】
生体粒子を含む試料液をフローセル中の流路に流した状態で照射光を照射し、該粒子から発生する散乱光や蛍光を光検出器で検出しそれらの信号強度にもとづいて該粒子を識別する装置であって、図7に示すようにフローセルの流路の上端と下端にそれぞれ接続する上流側リザーバーと下流側リザーバーがフローセル基板上に形成されており、両リザーバー間に対して空気を介して圧力を印加することによって上流リザーバーから下流リザーバーへ流れる試料液の流速を制御する機能を有し、当該フローセルは平板基板内部に流路を形成した構造であって、図4に示したように流路内で粒子から発生した光のうち、側方すなわち該基板の面内方向の光については基板に形成した全反射面を利用してフローセル外部に設置した光ガイドに導き基板外部に光検出器で検出し、前方散乱光の検出は、流路からフローセル基板を透過して基板表面に出た散乱光を検出することを特徴とする生体粒子解析分離装置。
【0021】
送液系全体がフローセルに込みこまれていて、自家蛍光低減した側方散乱光を可能とするフローセルは以下の手段による。
【0022】
粒子を含む試料液を流すフローセルにおいて、該フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、上流側の試料リザーバーと接続した試料液導入用流路1と、その両側に配置されてシース液リザーバーに接続している1対のシース液導入用流路2と、これらの流路が合流し試料液を挟んで両側にシース液が層流状態で流れる流路3があり、流路3の一部を含めた領域が図6に示すようにその周囲より基板の厚さが薄くなっており、流路内で発生する散乱光に対して、基板表面と大気との界面からなる全反射面と基板内に形成した空気層と基板材質との界面からなる全反射面を有して、基板端の特定領域に散乱光が導かれる構造となっているフローセル。
【0023】
全反射面を照射光学系に用いても、側方散乱光の検出が可能となる。すなわち、図5に示すように、フローセル内部に形成した全反射面4を利用して面内方向から流路5に照射する場合は、フローセルの基板下の検出光学系は、側方の信号光を検出するからである。この照射系は、次に説明する多検体計測用の手段としても有効である。
【0024】
2)多検体用フローサイトメーターを実現する手段
図8に示すように、図5に示した方法をマルチ流路のフローセルに適用する。この場合は流路内から発する散乱光や蛍光などの信号光を複数の流路を区別して検出するために、検出光学系としては結像レンズを用いて流路像を結像面26に結像させ、その面にアレイ検出器23を設置する方法をとる。検出面のサイズは結像面における各流路の幅より小さいサイズのものとする。これによって、フローセル中のマルチ流路を流路ごとに区別した信号パルス計測を並列して行う。光吸収部材25は、照射ビームの強い反射光が流路にもどることを防止するためのものである。図9は、フローセル内の全反射面を利用しないで、端面から照射光を入射させて、複数流路に照射する方法である。図10は、複数流路と全反射面を形成した図8のフローセルを上から見た図である。流路側面から照射する場合はシース液が不要であるため、シース液のリザーバーは不要であって、複数の試料用リザーバーに同一の圧力を加えるための加圧気体用リザーバー27が設置してある。
【0025】
図11は照射レーザービームを複数流路にまたがって高速走査することで、複数流路同時に検出する方法である。高速走査するためには、光学音響素子による偏向器を利用する。この方法では複数の流路を区別して計測するために、検出光学系として結像系として上記と同様に結像面にアレイ検出器を設置する。レーザービームの走査周期を、検出器の時間応答周波数より早くすることで、走査しているレーザービームは検出器にとってはあたかも一本のラインビーム照射と同様になる。つまりラインビームの長さを走査幅で制御できる計測系となる。この場合の周波数としては、光学音響素子による偏向器は10MHz以上であり、光検出器の応答周波数は数10KHz程度である。レーザービームの走査周期が、検出器の時間応答周波数より小さい場合は微粒子が照射領域を通過する間にビーム走査により複数回照射されれば、信号パルスが複数回発生することになり、信号処理が複雑になるという欠点がある。これに対して上記の高速走査は微粒子1個に対して発生する信号パルスは1個である。
【0026】
図12は、フローセルまたはレーザービームをステップアンドリピートで、複数流路を流路単位に順次計測する方法である。この場合の検出光学系は流路を区別する必要が無いために、検出器はアレイ検出器である必要はない。図13は、図12に示した装置に適用するフローセルの構造である。この場合はシース液リザーバー9を設置して、試料液の流れを照射光ビームサイズより小さく絞るために、各試料用流路に左右からシース液を合流させる構造とする。計測領域1でレーザービームを等間隔で形成されている各流路の中心位置に順次一定時間滞在後、次の流路に移動するようにする。以上によって、複数試料液の微粒子を順次解析する。下流側では各流路が共通の廃液リザーバーに接続する。この廃液リザーバーがフローセル上の形成されている。
【0027】
次に示す手段は、図14に示すようにマイクロキャピラリーをアレイ状に一体化したものをフローセルとし、前述したレーザービーム高速走査による照射系と組み合わせたものである。この手段の長所は、試料前処理用多穴プレートから直接吸い上げて自動的に順次計測することを目的としている。多穴プレート試料液のアレイ間隔にキャプラリーの間隔を調節する治具35を利用する。1回の計測終了後、自動的に多穴プレートのステージの高さ方向および横方向が移動して、次の試料液のアレイを吸い上げて計測を実行する方式をとる。図15はキャピラリーアレイによるフローセルの断面図である。レーザービームが照射された場合に屈折率のこのたる境界で光が反射するので、キャピラリーアレイの隙間にキャピラリーの母材である石英と同じ屈折率1.42である液体を充填して、ノイズ光の発生を低減する構造としている。
4)使い捨てフローセルによるセルソーター
【0028】
図16に示したフローセルを利用する細胞分離方法を説明する。
【0029】
生体粒子を含む試料液をフローセル中の流路に流した状態でレーザー光を照射し、該生体微粒子から発生する散乱光や蛍光を検出しそれらの信号強度にもとづいて該生体粒子を識別し分離する方法において、該フローセルは上流の試料液リザーバー8に接続する試料液導入用流路45と、シース液リザーバー9に接続する1対のシース液導入用流路46と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる流路5があり、レーザー照射領域1より下流側に粒子分離領域39があり、そこでは流路5の側面に流路47が接続してある。流路47は1組で対応して接続してあり、それぞれの流路47にパルスポンプが接続してある。粒子がレーザー照射領域1を通過したときに発生する光信号によって分離すべき粒子を2種類まで識別し、分離すべき粒子である場合は、図17に示すように流路5内を流れる当該微粒子に対して流路47を通して、予め2種類の分離に対応するパルスポンプからのパルス流を与えることで、当該粒子の流路5内での流れ位置をシフトさせ、そのシフトにもとづいて流路5の下流の分岐流路には、2つのパルスポンプがOFFの場合の粒子と右側のパルスポンプがON時の粒子と左側のパルスポンプがON時の粒子に分離される。この分離の原理は、流路1の最下流は、流路1の上流の合流部分とほぼ対照的に3つに分岐する流路を形成することで、試料液とシース液は3分岐流路で再度分かれて回収されるからであり、通常は中央の流路44に粒子が流れるが、パルス流でシフトした粒子はパルスが押し出す流れの場合は流路42に流れ込み、逆方向のパルス流の場合は流路43に流れこむ。また、パルスポンプとしては、ピエゾポンプが適している。ピエゾに与える電圧によって、1パルス流の量を制御することができる。
【0030】
上記細胞分離方法用のフローセルの構造は、次の要件を満たす必要がある。
【0031】
試料液リザーバー8に接続する試料液導入用流路45と、シース液リザーバー9に接続する1対のシース液導入用流路46と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる流路1があり、レーザー照射領域より下流側に流路1の側面に流路47が接続し、流路1の最下流は、流路1の上流の合流部分とほぼ対照的に3つに分岐する流路を形成している。流路47にはフローセル外部接続するポートがついている。図19は、流路47とパルスポンプが1個のみの手段を示しているが、この場合は1種類の粒子のみ分離が可能である。図17におけるパルスポンプによるパルス流は押し出す方向であるため、パルスポンプにはソーティング用供給液タンクが接続してある。しかし、引き込む方向の場合は、ソーティング用回収液タンクが必要となる。但し、パルス流による引き込む量が多すぎる場合は分離細胞まで引き込んでしまうので、これを防止するためにパルス流量の調節が必要である。バイオハザードの観点からすれば、ウイルスなど感染した細胞を分離する場合は、試料液はフローセルの内部に閉じ込められている状態が望ましいので、パルス流は押し出す方向が望ましいといえる。上記の微粒子分離の原理は微粒子の流れをパルス流でシフトさせて下流の分岐流路で分離する方法といえる。
【0032】
次に、粒子の流れのシフトを利用しない方法を図18と図19で説明する。測定領域1を通過した細胞は、その信号光の解析によって分離対象の細胞か否かをリアルタイムに判断し、流路分岐がある領域39にその細胞が到達した瞬間に、もしその細胞が分離対象細胞である場合は、流路47の下流に接続したパルスポンプによって引圧パルスを発生させて、ターゲット細胞を流路47を介してリザーバー48に回収するという方法である。図20は、フローセルを横から見た断面図である。領域39より上流側はフローセルの中央の断面であるが、領域39より下流側は流路47にそった断面となっている。流路47は分離細胞用リザーバー48に接続し、そのリザーバーは空気を介して密封系でパルスポンプ41に接続する。これによってフローセルの外部に液体が出ない構造としている。この方法は特許文献13に記載されている方法を、使い捨てフローセル上で実現する方法であるといえる。試料液とシース液と廃液と分離した細胞の回収液はすべてフローセル上にあるからである。これによってバイオハザード対応の細胞分離方法が確立した。
【0033】
次に、異なる原理による細胞分離法をフローセル上で多段で行う方法を図21で説明する。
【0034】
この方法は、高密度の夾雑粒子から非常に低密度のターゲット粒子を分離することを目的とした方法である。ここでは、初段の粒子分離としては磁場を用いて、2段目に上記のパルス流による分離の方法を説明する。
【0035】
粒子を含む試料液を流すフローセルにおいて、該フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、上流側の試料リザーバーと接続した試料液導入用流路と、シース液リザーバーに接続しているシース液導入用流路2と、これらの流路が合流し試料液の流れを細く制限して層流状態で流れる流路3がある。流路3の近傍に電磁石が設置されており、試料液を流している間はずっと磁場を発生させている。試料液はフローセルの試料液リザーバーに入れる前にターゲット細胞の標識となる膜たんぱく質の抗体1を表面に付着させた磁気粒子と、さらにターゲット細胞の標識となる別の膜たんぱく質の蛍光抗体2を少なくとも1種類混合しておく。分離のためのターゲット細胞は、磁力線の空間密度が高い領域に吸い寄せられる引力が働く。この力によって、ターゲット粒子は試料液の流れからシース液の流れの方にシフトする。このシフトを利用して、下流側の第1分離用流路50に分離する。この段階で抗体1にもとづく分離が行われており、さらに計測領域1において少なくとも抗体2が付着しているいなかの計測がおこなわれ、抗体2が検出される細胞であると判定された場合に、パルスポンプ41が引圧パルス第2分離流路52を通してターゲット細胞に作用させて分離細胞回収リザーバー54に回収する。以上によって、異なる抗体標識を異なる分離方法に組み合わせることによって、細胞分離精度を向上させる方法である。
【0036】
次に、磁気粒子による細胞分離において、複数の抗原抗体反応を利用して分離精度を向上させる手段を述べる。この方法も、高密度の夾雑粒子から非常に低密度のターゲット粒子を分離することを目的としている。特許文献16の熱応答性磁性ナノ粒子は、温度によって溶液中で凝集と分散を制御できる粒子である。磁性粒子は0.1ミクロンメートル以下になると粒子一個当りの磁気モーメントが小さくなることと、ブラウン運動による粒子に対する外力の影響が大きくなることによって、磁気分離には強い勾配磁場が必要となる。しかし、凝集した磁気粒子は磁気モーメントが大きい粒子となるので、弱い勾配磁場でも分離が可能となる。熱応答性磁性ナノ粒子は、磁性粒子と熱応答性ポリマーからなり、熱応答性ポリマーの性質によって凝集と分散の境界の温度領域が異なる。そこで、本発明では凝集する温度領域が異なる複数の熱応答性磁性ナノ粒子にそれぞれ異なる抗体を結合させた粒子を利用し、異なる凝集温度で磁気分離を順次行うことを特徴とする、多重の磁気多段の分離方法を提案する。例えば、M抗原とN抗原を両方含む細胞とどちらか一方を含む細胞とどちらも含まない細胞とを含む細胞群から、M抗原とN抗原を両方含む細胞のみを分離する方法は以下のようにする。2種類の熱応答性磁性ナノ粒子をA粒子とB粒子として、温度Aにおいて粒子Aのみが凝集し、温度Bにおいて粒子Bのみが凝集するものとする。粒子AにM抗体を結合させたものをM抗体結合粒子Aとし、粒子BにN抗体を結合したものをN抗体結合粒子Bとする。M抗体粒子AとN抗体粒子Bとを分離前の細胞液に混合し、抗原抗体反応により結合させる。次に温度Aに保持して勾配磁場にさらすことで粒子Aと結合した細胞が分離される。すなわち、M抗原を有する細胞が分離される。次に、その分離した細胞のみを含む液体を温度Bに保持して勾配磁場で分離することでさらにN抗原を有する細胞が分離する。この2段階の分離により、M抗原とN抗原の両方を有する細胞のみが分離される。次にこの分離された細胞液を殆どロスすることなく目的の細胞か否かを認定する方法を述べる。異なる波長の蛍光ラベルしたM抗体とN抗体を、上記の磁気粒子が付着している分離細胞液にいれて、分離された細胞を蛍光染色する。この試料液をフローサイトメーターで測定する。フローサイトメーターとしては図1、2、3,7、16,17、19で示したように上流側と下流側にリザーバーを形成したフローセルを用いた本発明のフローサイトメーターを用いる。その理由は、測定後も試料液が希釈されずに回収できるからである。すなわち、流路が下流側の3分岐流路と上流側の3合流路とがほぼ対象パターンであるため、試料液とその両側をはさんで流れるシース液を下流側の分岐流路において再度分離して流れる。そのため、試料液はシース液によって希釈されることが防止されて中央のリザーバーで回収される。上流の試料リザーバーに磁気分離した細胞液を入れることによって、計測後でも細胞のロスが殆どなく下流で回収することができる。但し、測定温度は、分離に利用した複数種類の熱応答性磁性ナノ粒子が全て分散状態の温度で測定しなければならない。なぜならが凝集した粒子が流路で詰まる可能性があるからである。そこでフローセルの温度を制御する機構を設けた装置とする。この温度制御機構は上記フローセルを設置するための部品をペルチエ素子で加熱冷却する構造とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、シース液のリザーバーを含む送液系全体がフローセルチップとともに交換可能なフローサイトメーターまたはセルソーターが実現する。さらに、多検体の自動同時並列計測を行うフローサイトメーターが実現する。さらに、複数の抗原抗体反応を利用した細胞分離方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の、表面裏面を反射面として流路内で発生した信号光を外部の検出器に導く機能を有するフローセルチップを図示したものである。
【図2】本発明の、表面裏面および溝の側面を反射面として流路内で発生した信号光を外部の検出器に導く機能を有するフローセルチップを図示したものである。
【図3】本発明の、流路側面近傍にフローセルに反射面を形成し、流路内で発生した信号光をフローセル平面に垂直方向に反射させて、外部の検出器に導く機能を有する平面状フローセルを図示したものである。
【図4】本発明の、反射内蔵フローセルチップによる側方散乱光検出と前方散乱光の同時検出を行う装置の光学系を図示したものである。
【図5】本発明の、チップ内の反射面を照射光の反射に利用する光学系を図示したものである。
【図6】フローセル自身から発生する蛍光を低減する構造を図示したものである。
【図7】本発明の、リザーバーと反射面を内蔵したフローセルチップの構造を図示したものである。反射面は2種類を図示している。
【図8】本発明の、チップ内に形成した反射面で反射させてマルチ流路に側面から同時に照射する方法を図示したものである。
【図9】本発明の、チップ外に設置した反射面を利用してマルチ流路に側面から同時照射する方法を図示したものである。
【図10】本発明の、図8に示したフローセルの平面図を図示したものである。
【図11】本発明の、レーザービームを偏向器を用いて高速にビームを走査して、マルチ流路に同時照射して流路毎に区別して計測する方法を図示したものである。
【図12】本発明の、フローセルチップをステップアンドリピートで順次移動して、次々とマルチ流路の計測を行う方法を図示したものである。
【図13】本発明の、複数試料液リザーバーと共通のシース液リザーバーとマルチ流路を形成した多検体用フローセルを図示したものである。
【図14】本発明の、フローセルをキャピラリーアレイとしてレーザービームを走査することで多検体対応とする方式を図示したものである。
【図15】図14のキャピラリーアレイのフローサルの断面を図示したものである。
【図16】本発明の微粒子分分離用フローセルの第1の例を図示したものである。
【図17】図16のフローセルチップを利用する微粒子分離の方法を図示したものである。
【図18】図17の様子をマイクロ流路内で観察した写真である。
【図19】図16の微粒子分離方法でポンプを一個とする例を図示したものである。
【図20】本発明の微粒子分分離用フローセルの第2の例を図示したものである。
【図21】図20のフローセルを利用する微粒子分離方法を図示したものである。
【図22】図20のフローセルの断面図である。
【図23】本発明の微粒子多段分離用フローセルチップの例を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
最初に、平板状フローセル内に反射面を形成することで、使い捨てフローセルの機能を失わずに側方散乱光の計測を達成するフローサイトメーターの実施形態を説明する。
【0040】
図1は、本発明の最も単純なフローセル構造を説明する概略図である。フローセルの材質はアクリル製透明樹脂であって、基板裏面側に射出成形によって凹の流路パターンを形成し、その上に厚さ約100umのシートを貼り付けて流路を形成している。流路断面は、典型的には、幅80マイクロメートル深さ25から50マイクロメートルである。1は照射領域を示しており、照射光であるレーザー光がフローセルの流路中を流れる微粒子に照射する領域に対応する。試料液10は試料液リザーバー8に充填されている。このリザーバー8は試料液流路45に接続している。試料液を細く絞り込んで流すためのシース液13は、シース液リザーバー9内に蓄えられており、リザーバー9はシース液流路46に接続する。シース液流路46は試料液流路45に対して両側から合流し、一本の流路5に流れ込む。図1のAA断面図に示すように、リザーバー9はリザーバー8より高く、リザーバー9は外部から空気を通して圧力がかけられる構造となっている。この空気圧は、試料液10とシース液13に対して同時に加えられる。この圧力値としては2キロパルカルから20キロパスカルの範囲である。この圧力によって試料液とシース液は下流側に流れ合流した後の流路5において、試料液は細く絞られて約10マイクロメートル以下の幅となる。下流側では、上流側の合流した流路パターンと対照的に3つの分岐流路が形成されており、層流であるためシース液と試料液が再び分離して、大気と同じ気圧の廃液リザーバー21と試料液回収リザーバー11に回収される。照射光として、波長が473nmであり出力が10mWの半導体レーザー光源の光をビーム直径約60マイクロメートルに絞って、フローセルの基板に対して上から下に垂直に領域1の流路5の中心に照射する。この照射領域を試料液に含まれる粒子が通過した瞬間に照射波長と同じ散乱光と照射波長より長波長側の蛍光がパルス的に発生する。これらのうち、側方へ発した信号光6はフローセル基板の表裏面4において全反射を繰り返して、高効率で端面に到達する。端面から外部にでる信号光を、近傍に設置した光ガイドにより光検出器にみちびきバンドパスフィルター15で波長選択して検出する。信号はパルス信号であって、パルス高のほかにパルス面積などを粒子ごとに記録する。本発明はこのフローセル内部の全反射を利用して側方の信号光を検出するという内容であり、図1はこの内容のもっとも単純な例である。上記例では、検出器を一個としているが、複数個として波長分離を複数にして散乱光や蛍光を検出することもできる。また、光源として他の波長の例えば640nmの半導体レーザーも同時照射して、この波長で励起される蛍光の信号を別々に検出することも出来る。
【0041】
光ガイドを近傍に設置して光検出器に導く理由は、フローセルを交換した場合の多少の位置ずれの影響の受けにくい検出光学系としたためである。
【0042】
図2は、フローセル基板に1対の溝7を形成することで、基板平面に対して垂直に全反射面4を流路側面近傍から端面まで形成し、流路内で発生した信号光6を基板面内での広がりを制限した光ガイド機能を持たせることで、信号光の検出効率を高めたものである。
【0043】
図3は、流路から発生した側方への信号光をフローセル内に形成した全反射面を利用して、端面方向ではなく表面に設置した検出器で検出する方法を示したものである。この図は表面に反射させる例であるが、裏面の方向でも同じである。この図では、全反射面の位置として基板内と基板端の2種類のものを示している。どちらも樹脂と大気との境界によって全反射面を形成している。基板内の形成する場合は、流路側面近傍に形成することが出来るので側方の信号光が大きく広がる前に検出することができるメリットがある。これに対して、端面を傾斜面とした全反射面の場合は流路から遠ざかるデメリットがあるが斜面形成の製造上の品質管理が容易であるというメリットが大きい。
【0044】
図4は、信号光として前方散乱光のほかに側方散乱光と蛍光の検出を平板型フローセルで可能とした光学系の例である。光源は473nmの半導体レーザーである。側方散乱光はフローセルの端面の全反射面を利用し光ガイドと473nmの照射波長のみ透過させるバンドパスフィルターを介して検出する。前方散乱光の検出は、フローセルの底面を透過した信号光をレンズで平行光にし、473nmを反射させてそれより長波長側の光を透過するダイクロイックミラー14−1で反射させて、照射光の直接透過光を遮光版16でカットしたのち、473nmの照射波長のみ透過させるバンドパスフィルターを介してフォトダイオードなどの光検出器で検出する。蛍光の検出は、前方散乱光と同様にフローセルの底面を透過した信号光のうち、ダイクロイックミラー14-1を透過した信号光からダイクロイックミラー14-2とバンドパスフィルター15-2との組み合わせと、最下流の検出光学系ではバインドパスフィルター15−3で蛍光検出波長を選択して光電子増倍管で検出する。蛍光検出波長の選択枝としては、蛍光試薬がFITCの場合は510から550nm、PIの場合は570から620nm、Cy5の場合は660から720nm、Cy7の場合は750から800nmが適している。図4のフローセルを上から見た概略図が図7である。反射面4は基板端面に形成されている。試料液の流速は上流側のリザーバー9内部の気圧で制御される。
【0045】
図5は、フローセル基板内に形成した全反射面を照射光に用いて、流路5に対してフローセル基板面内方向から照射すると、フローセル底面に透過する光は側方への信号光となる。
【0046】
但し、この場合は後に説明する多検体用のフローセルに適用するメリットの方が大きい。
【0047】
図6は、樹脂製のフローセル自身から発する蛍光を低減する方法を示している。透明樹脂であるアクリルは波長400nm以上でのわずかに光吸収が存在するので、473nmの強いレーザー光を照射すると、アクリルの照射領域全体から蛍光が発生する。この蛍光強度を低減するために、レーザーが透過する照射領域を周囲に比べて薄くするというものである。周囲全体を薄くするとフローセルが変形しやすくなるということと、逆に厚くするとフローセルからの蛍光強度が高くなるという2つの欠点を克服する方法である。この技術はフローセル内に全反射面を形成して側方の信号光を検出する技術と組み合わせることで、側方の信号光検出とくに蛍光検出における背景ノイズ光を低減することができる。
【0048】
次に多検体用フローサイトメーターの実施形態を説明する。
【0049】
図8に示す実施例は図5と同様に、フローセル基板内に形成した全反射面を照射光に用いて、流路5に対してフローセル基板面内方向から照射する方式であり、フローセルには流路が複数形成されているのである。このフローセルを上から見た図が図10である。この場合は、上流側のリザーバー27には液体はいれないで、複数の試料液リザーバー8に共通の空気圧をかけるための加圧空間である。複数の試料液リザーバー8に1対1で接続する流路が等間隔で基板内にアレイ状に形成する。流路幅は80マイクロメートルであり、流路間隔も80マイクロメートルである。照射レーザー光は複数の流路を貫くように照射される。照射光の直接透過光は他方の全反射面で基板面に垂直な方向に反射させて、光吸収部材に吸収させる。もし、この反射面が無いとすると照射光の透過光が端面に照射されて、強いノイズとなる散乱光が発生するからである。また光吸収部材に吸収させる理由は、流路に戻り光が戻ると検出信号波形にその影響が生じるからである。検出光学系は、図8に示すように、個々の流路を区別して検出するために、流路の結像面にアレイ光検出器を配置する方式とする。図9はフローセル内部の全反射を利用しないで外部ミラーを用いる場合である。
【0050】
複数の流路はお互いに平行である。流路界面から発生する回折光が直線状に集中するので、帯状の空間フィルター16で除去しやすくなるからである。これは散乱光信号の検出感度の劣化を防止する方法である。
【0051】
図11に示す実施例は、照射レーザー光を高速走査させることで複数流路を流れる複数の試料液を一度の計測する方法である。レーザー光源は473nmの半導体レーザーを直径1mmのサイズでコリメートし、AO変調素子の偏向器29を用いてレーザー光の向きを高速走査する。偏向器の後段のレンズ18によって、向きが変化したビームを平行にして向きの角度変化の走査を平行移動の走査に変換する。この偏向器による走査の周波数は約40MHzであって、光検出器の信号処理系の応答周波数は約20kHzに設定するので、1000倍以上走査が早いので、検出系からみた照射系は走査幅に伸びたラインビームをして認識される。この場合の複数の流路は、お互いに平行であることが重要である。この理由は、やはり流路壁面からの回折光は流路壁面に垂直な方向に分布するが、複数流路の壁面が平行であると各回折光の分布が直線状となるため、より細い帯状の遮光板で除去することが可能となるからである。この遮光板は前方散乱光検出光学系で照射光の透過光をカットするために用いる空間フィルター16である。
【0052】
検出光学系は、複数の流路を区別して検出するために結像光学系として、流路の結像面26にアレイ検出器23を設置する。図11のフローセルはシース流は不要であり、図8および図10と同じものである。
【0053】
図12に示す実施例は、複数流路を同時並列に計測する方法ではなく順次計測する方法である。この場合は、同時並列の計測に比べて測定時間が長くなるが、検出光学系としては流路を区別する必要がないので、図1と同様に結像光学系とアレイ検出器は不要である。複数流路を順次計測する方法としては、フローセルをステップアンドリピートで移動させる方式と、照射レーザー光の走査をステップアンドリピードにする方式の両方を適用することができる。
【0054】
図13がステップアンドリピート方式に適したフローセル構造である。この場合の照射レーザー光は、図1の場合と同じで単一の流路のみの測定用のビームサイズであるために、複数流路はすべてシース流によって試料液流の幅が10マイクロメートル以下に制限している。レーザー光を移動する領域は領域1である。ステップアンドリピード方式なので、全ての流路は幅が80マイクロメートルであり、間隔も80マイクロメートルと均一にしている。全ての試料流に対して、共通のシース液リザーバー9から各試料液流に対応した1対のシース液導入ポート32をへて供給する。リザーバー9の加圧により、複数の試料液はいっせいに流れるが、試料液が試料液リザーバーからなくなる前に各試料の測定が終了するように、圧力により試料流速と測定時間を調整する。流路幅80マイクロメートルで深さ25マイクロメートルの流路の場合は、リザーバー9の空気圧が20キロパスカルの加圧条件で100マイクロリットルの試料液は30分以上流れ続ける。試料液リザーバーの数を8個として、1試料当りの測定時間を1分、流路間移動を2秒であるので、10分以内には8個の試料の測定が終了する。廃液は、各流路に接続する回収ポート33を介して廃液リザーバー21に蓄えられる。廃液リザーバー21は大気圧としている。
【0055】
図14は、送液系全体をフローセル上に形成したフローサイトメトリーの実施例ではない。しかし、使い捨てフローセルを用いる場合の欠点である多検体の自動計測を実施する例であり、さらに本発明のレーザービーム高速走査を利用する方法であるために本発明の実施例として記載する。ここではマイクロキャピラリーをアレイ状に固定したものをフローセルとし、照射レーザービームをキャピラリーアレイの幅以上の長さで高速走査する方式である。レーザー光源と検出光学系は図11の場合と同様に個々のキャピラリーを区別するために結像光学系とアレイ検出器を用いる。キャピラリーは石英製であり、内径は75マイクロメートルであり、外径は150マイクロメートルである。図15に示すように、8本のキャピラリーを屈折率が1.42の屈折率マッチング液で隙間を満たして2枚の石英板で挟んで固定したものをフローセルとする。これによってキャピラリー表面にレーザー光が照射されたときに発生する反射光や回折光の強度を低減する。多検体の前処理用としては、例えば96穴プレートが用いられる。これは試料を入れる穴が8x12のマトリックス状になっているので、8本のキャピラリーを96穴プレートの8行の間隔に調整治具35によって一致させ、1列の測定のたびにプレートの上下移動と列方向の移動と試料液吸引測定を12回繰り返せば、96種類のサンプル測定が完了する。
【0056】
次に、使い捨てフローセルを用いた細胞分離装置の実施例を説明する。
【0057】
図16は、本発明の微粒子分離用フローセルの第1の例を図示したものである。図1で説明したフローセルと同様にフローセルの材質はアクリル製透明樹脂であって、基板裏面側に射出成形によって凹の流路パターンを形成し、その上に厚さ約100umのシートを貼り付けて流路を形成している。図16のフローセルの構造は図1の構造をベースとして、流路5にソーティング流路47が両側から接続する流路パターンとしたものであり、それぞれの流路47にはフローセル外部のパルスポンプ41がパイプを介して接続している。流路5の流路幅は80マイクロメートルであって深さは25マイクロメートルである。これに対して流路47の流路深さは同じ25マイクロメートルであるが流路幅は深さと同じ25マイクロメートルとした。この理由は射出成形用の金型の加工が溝幅と深さとの比が1という値が現在の実用的加工限界であるためである。流路の深さを50ミクロンメーターとする場合は、流路47の幅を50マイクロメートルとしなければならない。パルスポンプはピエゾ素子の伸縮運動で動作するものである。ピエゾポンプは、最大100Hzまでの時間応答性をもち、パルス圧は約0.9Mパスカルの性能を有する。1パルス当り0.5ナノリッターの流量に調節する。1パルスによる細胞分離の空間分解能は、1パルス流量を流路断面積と流速で割った値で決定され、流路幅80マイクロメートル、深さ50マイクロメートルで200ミリメートル/秒の速度の場合は、125マイクロメートとなる。またピエゾ素子は圧縮応力に対しては強いが、引っ張り応力に対しては破壊しやすいので、圧縮応力がかかる伸びる方向で発生する力による変位のみ利用することができる。したがって、1方向のパルス流発生に一個のピエゾポンプを対応させる必要があった。パルス流は押し出す方向を採用したために、ピエゾポンプにはソーティング用供給液タンクを接続した。このタンクにはPBS緩衝液が入っており、流路5をながれる細胞にパルス流が混合しても細胞が損傷を受けない緩衝液で無ければならない。ピエゾポンプのパルス流を発生させるタイミングは、測定領域1を微粒子が通過した瞬間に発生する散乱光と蛍光の信号を検出してからの遅延時間で設定可能としている。この遅延時間は、検出領域1から分離領域39まで粒子が到達するまでの時間である。したがって、この遅延時間は粒子の速度に依存して設定する。散乱光や蛍光の信号強度の分布に基づいて、ターゲット粒子か否かをリアルタイムに判断し、ターゲット粒子である場合は2種類のターゲットのうち一方に対応するピエゾポンプのみをONとする。このプロセスは、信号光の信号処理の結果にもとづいて、信号検出から一定の遅延時間後に対応するピエゾポンプのピエゾポンプドライバー回路にトリガー信号を送り、ドライバー回路が1パルス分の電圧信号をピエゾポンプに入力してONとする。ターゲット粒子はパルス流を受けて流れる位置がシフトする。図17に示すように下流の3つの分岐流路のうち、中央の分岐流路44は、パルプポンプがOFF状態で粒子がながれこむ流路であって、パルスポンプがON状態ではパルス流によるシフトにより分岐流路42に流れ込む。図18は、パルス流によって流れがシフトした瞬間を観察した写真である。試料液のみにインクを入れることにより試料液の流線を可視化している。ピエゾポンプがOFFの状態では、試料液はシース液にはさまれて流路の中央部を流れるが、下側の側面の流路からパルス流を加えると、試料液の流れがシフトしているのが分かる。
【0058】
以上は、流路5に対して2本のソーティング流路47が対向するように接続しているフローセルで2種類のターゲット粒子を分離するものであるが、図19のように流路47を一本のみとして1種類のターゲット粒子を分離することも可能である。
【0059】
次に、パルス流によるターゲット粒子の流れのシフトを利用するのではなく、パルス流そのものによってターゲット粒子を取り込む例を図20で説明する。図20のフローセルは、測定領域1において分離すべき粒子であると識別された粒子が、粒子分離領域39を通過する瞬間に、流路47内に引き込むパルス流を流路47に接続するパルスポンプによって取り込み、分離した粒子は分離粒子用リザーバー48に蓄える。この分離の様子を図21に示した。図22はこのフローセル構造の断面図である。分離粒子用リザーバー48とパルスポンプとは空気を介して接続してある。これによって、分離粒子は分離粒子用リザーバー48内に蓄えられる。但し、分離粒子リザーバーの体積以上にパルス流を動作させた場合は、分離粒子液はパルスポンプに流れ込むので、これを防止するために1サンプルの分離処理のパルス数に制限をつけた。使用したパルスポンプは1パルス当りの流量は約0.5ナノリットルであり、分離粒子リザーバーが200マイクロリットルであるので、最大分離パルス数を400000回以下に制限した。この対策により、分離対象となる細胞がフローセルの外部に漏れることが無く、バイオハザード対策の細胞分離装置となった。図20は、パルスポンプを1個のみ設置した図であるが、図16と同様に下流の分岐流路を3本にして、両側にリザーバーを介してパルスポンプを設置することにより2種類の粒子分離も可能とした。この場合の信号処理からパルスポンプの動作までのプロセスは図16の実施例と同様である。
【0060】
次に、異なる原理による細胞分離法をフローセル上で多段で行う方法の実施例を説明する。図23は、初段において磁場を利用した分離を行い後段においてパルス流を利用した分離を1個のフローセル内で行う構造を模式的に示したものである。試料液は、各種細胞を含む検体に、分離のターゲットとなる細胞の膜たんぱく質に結合する抗体でコーティングした磁気粒子と、ターゲット細胞の別の膜たんぱく質に結合する蛍光抗体(蛍光試薬はCy5など)と、細胞と生体膜断片を区別するために核の染色剤(SYTO9など)とを混合した液である。図1のフローセルと同様に上流側には、シース液リザーバー9内に試料液リザーバー8が形成されている。但し、シース液用流路46は本実施例では1本で十分である。なぜならば、流路5内で試料液10は流路端に集中させて流せればよく図1のように中央部に集中させる必要がないためである。これによって粒子分離領域39−1において、磁石による発散する磁力線によって、磁気モーメントを有する磁気粒子が磁力線の密度の高い領域に引き寄せられる。磁場の強さは電磁石の電流で調整し、磁場による磁気粒子の泳動の速さが粒子分離領域39−1を通過する間に十分なシフト量を得るように、試料の流速を圧力で調節した。第一分離流路50と廃液用流路53との関係は上流側の流路45と流路46とほぼ対照的に流路を形成してあるので、シース液は下流において流路50に分離して流れる。したがって、磁気粒子が磁場によって流れがシース液側に流れた場合は、第一分離流路50に流れることになる。レーザーを照射する微粒子計測領域1は流路50内に設定した。レーザー光源としては473nmと640nmの2種類の半導体レーザーを用いた。473nmレーザー光はSYTO9を励起するためであり、640nmレーザー光はCy5を励起するためである。この2種類のレーザー光を流路50の流路幅80マイクロメートルより広いビームサイズ160マイクロメートルで流路50を均一に照射した。この領域で蛍光抗体の蛍光と核染色剤の蛍光を発する粒子は、図4に示した検出光学系と同様にダイクロイックミラーとバンドパスフィルターで波長分離して検出した。その下流の第二分離流路52において、接続している流路47からに引きこむパルス流によって分離細胞リザーバー54に蓄えた。パルスポンプは、リザーバー54とは空気を介して接続しており、ポンプ側には分離細胞液が流出しないようにしてある。この対策は、図22に説明したバイオハザード対策と同様である。以上によって、磁気分離と蛍光信号によるパルス流を利用した分離をフローセル上で実現した。
【0061】
次に、複数種類の熱応答性磁性ナノ粒子による多段階磁気分離の実施例を以下に記載する。熱応答性磁性粒子としては、マグナビート株式会社製のTherma-MAX LSA StreptavidinとTherma-MAX UB BiotinとTherma-MAX LB Biotinの3種類を用いた。これらの粒子は平均粒径が約100nmである。Therma-MAX LSA Streptavidinは30℃以上で凝集し20℃以下で分散する性質を有し、粒子表面にストレプトアビジンが結合しており、ビオジンと結合している各種抗体をコーティングできる熱応答性磁性粒子である。Therma-MAX UB Biotinは、10℃以上で分散状態であり4℃以下で凝集する性質を有し、粒子表面にビオチンが結合しており、アビジンと結合している各種抗体をコーティングできる熱応答性磁性粒子である。Therma-MAX LB Biotinは、32℃以下で分散し42℃以上で凝集する性質を有し、粒子表面にビオチンが結合しており、アビジンと結合している各種抗体をコーティングできる熱応答性磁性粒子である。
【0062】
抗体としては、上皮細胞に特異的に発現する表面抗原(EpiCAM)に対するモノクローナル抗体(抗EpiCAM)と、サイトケラチンに対するモノクローナル抗体(抗CK)と、CD45に対するモノクローナル抗体(抗CD45)との3種類を上記の3種類の粒子にそれぞれ対応させて結合させる。これらの磁性粒子を抗EpiCAM粒子、抗CK粒子、抗CD45粒子と呼ぶことにする。10mL以下の血液検体に対して、上記3種類の粒子を混合させ、3種類抗原抗体反応を生じさせる。次に、抗CD45粒子が凝集する42℃で磁石を近づけることで勾配磁場を作用させて抗CD45粒子に吸着した細胞を粒子ごと血液検体から取り除く。その後、残りの液体に対して、抗EpiCAM粒子が凝集する30℃で磁石を近づけることで勾配磁場を作用させて、抗EpiCAM粒子に吸着した細胞を粒子ごと回収し、PBS緩衝液に粒子ごと懸濁する。その液に対して温度4℃で磁石を近づけることで勾配磁場を作用させることにより、抗CK粒子に吸着した細胞を回収し、最終的に100uLのPBS緩衝液に懸濁する。この最終懸濁液には、抗EpiCAM粒子と抗CK粒子が含まれるので、両者が分散する20℃に保持した状態で、本発明でしめした試料液回収可能なフローセルを用いるフローサイトメーターで測定し、細胞の総数を計測し、計測後の細胞を回収する。この細胞は、特開2007−178193によれば血液中に含まれる浮遊細胞であり、転移の原因である血液中を循環するがん細胞に対応する。
【符号の説明】
【0063】
1…光照射領域(測定領域)
2…光検出器
3…照射光
4…光反射面
5…流路
6…信号光(散乱光または蛍光)
7…気体
8…試料液リザーバー
9…シース液リザーバー
10…試料液
11…回収試料液
12…廃液
13…シース液
14…ダイクロイックミラー
15…バンドパスフィルター
16…空間フィルター
17…光ガイド
18…レンズ
19…照射光源
20…チップ母体からの蛍光発生領域
21…廃液リザーバー
22…試料液回収リザーバー
23…アレイ型光検出器
24…複数の流路が形成されている領域
25…光吸収部
26…結像面
27…気体加圧用リザーバー
28…レーザー光源
29…偏向器
30…ミラー
31…加圧空間
32…シース液導入ポート
33…回収ポート
34…キャピラリー
35…間隔調整器具
36…多穴プレート試料容器
37…屈折率マッチング液
38…石英板
39…粒子分離領域
40…ソーティング用供給液タンク
41…パルスポンプ
42…リザーバーA
43…リザーバーB
44…リザーバーC
45…試料液用流路
46…シース液用流路
47…パルス流用流路
48…分離細胞液
49…電磁石
50…第1分離用流路
52…第2分離用流路
53…廃液用流路
54:分離細胞用リザーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、
前記試料液中の前記該粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、
前記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該粒子を解析する手段と
を備える液体中微粒子解析装置において、
前記フローセルは平板状基板に流路が形成されたものであって、流路側面に反射面が形成されており、その反射面はフローセルの流路内で発生した光のうち基板面内方向に進行する光をフローセル表面の特定領域に導き、前記光検出器は前記特定領域から外部に出てきた光を検出することを特徴とする液体中微粒子解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体中微粒子解析装置おいて、
前記流路側面に形成された前記反射面は前記流路側面と気体との間の界面からなる面であって、流路側から進行してきた光を全反射する面であることを特徴とする液体中微粒子解析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体中微粒子解析装置において、
前記フローセルは平板状であって、平板状のフローセル基板の表面に対してほぼ垂直に流路内に照射光が照射する構造を有し、流路内で発生し流路側方へ向かう側方散乱光は、フローセル基板内に内蔵した反射面を利用してフローセルの特定の領域から外部に導かれた光として検出され、前方散乱光は、前方にフローセルを透過して外部に出た光として検出されることを特徴とする液体中微粒子解析装置。
【請求項4】
試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
フローセル内部に流路側面の外側に流路の方向から進行してきた光を全反射する面が形成されており、該反射面はフローセル母材と気体との間の界面からなる反射面であることを特徴とするフローセル。
【請求項5】
請求項4に記載のフローセルおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成された構造であって、該反射面は流路内で発生した散乱光や蛍光を基板表面方向または裏面方向へ反射することを特徴とするフローセル。
【請求項6】
請求項4に記載のフローセルおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成されている構造であって、該反射面はフローセルに入射した照射光を反射して基板面内方向から流路に光照射するための反射面として機能することを特徴とするフローセル。
【請求項7】
試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
フローセルは透明な平板状基板に流路が形成されている構造であって、フローセル基板内の光反射面として、平板状基板の表裏面のフラット面における気体との間の界面、あるいは、基板表面または裏面に形成した溝構造の側面であって、流路内部で発生して平面基板の面内方向に進行する光をフローセルの特定の外部表面へ導く構造であることを特徴とするフローセル。
【請求項8】
請求項7に記載のフローセルおいて、
光反射面は流路脇の基板表面に約45度の斜面として形成されたものであり、流路内で発生した光のうち基板の面内方向に進行した光を基板表面あるいは裏面方向に反射する構造であることを特徴とするフローセル。
【請求項9】
請求項7に記載のフローセルおいて、
光照射する流路を含む特定の局所的な領域のフローセルの厚さが、その周囲より薄くなっていることを特徴とするフローセル。
【請求項10】
請求項7に記載のフローセルおいて、
該フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、フローセルを流れる液体が上流のリザーバーと流路と下流のリザーバーの系に閉じ込められている構造となっていることを特徴とするフローセル。
【請求項11】
試料粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、
前記試料液中の前記試料粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、
前記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該試料粒子を識別する手段とを備える液体微粒子計測装置において、
前記フローセルは平板状基板中に基板面内方向にアレイ状に複数の流路を形成したものであって、前記光を照射する手段は照射ビーム光を基板面内方向から複数流路に横断する方向に照射し、前記光検出器は複数流路を流れる試料微粒子から発生する光信号を流路ごとに区別して計測することを特徴とする液体中微粒子計測装置。
【請求項12】
試料粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、
前記試料液中の前記試料粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、
前記光検出器で検出した信号の強度にもとづいて該試料粒子を識別する手段とを備える液体中微粒子計測装置において、
前記フローセルは複数流路がアレイ状に配置した構造をしており、前記光を照射する手段は照射ビーム光をその複数の流路に対して流路を横断する方向に相対的に走査する機構を有し、ビームサイズは各流路幅より小さく、走査周期は光検出信号の応答周波数より高く、前記光検出器の検出光学系は結像光学系であって流路の結像面にアレイ型検出器を設置することにより流路毎に区別して複数流路を同時並列に計測することを特徴とする液体中微粒子計測装置。
【請求項13】
試料液をフローセル中の流路に流した状態で試料液に光照射し、該試料液に含まれる試料粒子から発生する光を検出するためのフローセルにおいて、
前記フローセルは平板状であって、平板基板上に複数の試料液リザーバーと複数の試料液に共通のシース液リザーバーが形成されており、試料液リザーバーは共通のリザーバー内に形成され、液体が混在しないようになっており、各試料液リザーバーに試料液用流路が接続しており、各試料液流の左右からシース流が合流した流路を形成し、合流した流路は平行な等間隔に形成されており、最下流はフローセル上に形成した共通のリザーバーに接続する構造となっており、複数の流路には一個流路のみ照射されるサイズの光ビームを順次ステップアンドリピード方式で、照射光またはフローセルを移動させることで、複数の試料を計測することを特徴とするフローサイトメーターおよびそのフローセル。
【請求項14】
請求項12に記載の液体中微粒子計測装置おいて、フローセルは複数のキャピラリーをアレイ状に配列した構造であることを特徴とする液体中微粒子計測装置。
【請求項15】
微粒子を含む試料液をフローセル中の流路に流した状態で光を照射し、該微粒子から発生する散乱光や蛍光を検出しそれらの信号強度にもとづいて該生体粒子を識別し分離する装置において、
該フローセルは平板基板内に流路を形成した構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、光照射領域より下流側に少なくとも合流流路の一つの側面に流路Sが接続し、粒子が光照射領域を通過したときに発生する光信号によって分離すべき粒子か否かを判断し、分離すべき粒子であると判断される場合はその粒子が流路Sと接続箇所を通過中に流路Sを通して合流流路内を流れる当該微粒子に対してパルス流をフローセルの外部に設置したポンプから与えることにより、当該粒子の合流流路内での流れる位置をシフトさせ、もし分離する必要がない粒子と判断した場合はパルス流を発生させないので流れ位置がシフトしない、そのシフトの有り無しで下流の複数の分岐流路に分離することを特徴とする微粒子分離装置。
【請求項16】
微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置する手段と、
前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、
前記試料液中の前記微粒子から発生する散乱光および/または蛍光を波長別に検出するための光検出器と、
前記光検出器で検出した複数の信号強度にもとづいて該生体粒子を識別し分離する手段とを備える微粒子分離装置において、
該フローセルは試料液の導入用流路と、その両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路を備え、光照射領域より下流側に合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、粒子が光照射領域を通過したときに粒子から発生する光信号を検出し分離すべき粒子か否かを判断し、分離すべき粒子であると判断される場合はその粒子が流路Sと接続している合流流路の場所を通過中に流路Sを通して合流流路内を流れる当該微粒子に対して、流路Sの下流に接続するフローセル上のリザーバーと密閉した空間の気体を介してパルスポンプから引圧パルスを与えることで微粒子を流路Sに取り込みリザーバーに貯蔵することで、送液系全体を1個のフローセル上に封じ込めた状態で微粒子分離を行うことを特徴とする微粒子分離装置。
【請求項17】
微粒子を含む試料液を流すための流路を備えたフローセルを載置するための手段と、
前記フローセルの前記流路を流れる前記試料液に光を照射する手段と、
前記試料液中の前記微粒子から発生する散乱光および/または蛍光を検出するための光検出器と、
前記光検出器で検出した複数の信号強度にもとづいて前記微粒子を識別し分離する手段とを備える液体中微粒子分離装置において、
前記フローセルの流路中に試料液を流路断面の一部に偏在させて流れさせるための試料流とシース流との合流する流路が形成されており、その合流して試料流が細く絞られて流れている状態に磁場を印加制御可能な電磁石が流路側面近傍に設置されており、磁気を帯びた粒子のみを偏在した試料流から流れる位置をシフトさせ、そのシフトした粒子を導く分岐流路1が形成され、その分岐流路1の途中でレーザーを照射して、粒粒子からの散乱光や蛍光を計測し微粒子を識別し、微粒子が分離対象であると判定した場合に、その下流において分岐流路1に接続する流路Sが形成されており、流路Sの下流側に接続するリザーバーSが存在し、リザーバーSと密閉した空気を介したパルスポンプによる引力パルス流によって、微粒子をリザーバーSに取り込むことを特徴とする液体中微粒子分離装置。
【請求項18】
試料液を流路に流した状態で試料液に含まれる微粒子を分離するためのフローセルにおいて、
フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、その合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、流路Sには外部とパイプ接続可能なポートがあり、さらに合流流路の下流には分離用の複数の分岐流路が形成されて複数のリザーバーに接続していることを特徴とする平板状のフローセル。
【請求項19】
試料液を流路に流した状態で試料液に含まれる微粒子を分離するためのフローセルにおいて、
前記フローセルは透明基板中に流路が形成されてその流路の上流側と下流側の基板上部にそれぞれリザーバーが形成されている構造であって、試料液の導入用流路とその両側に配置した1対のシース液導入用流路と、これらが合流し試料液を挟んで両側にシース液が流れる合流流路があり、その合流流路のすくなくとも一つの側面に流路Sが接続し、流路Sの下流に分離粒子用のリザーバーが接続し、そのリザーバーには外部とパイプ接続可能なポートがあり、さらに合流流路は下流の廃液用リザーバーに接続している構造であることを特徴とするフローセル。
【請求項20】
多種類の細胞群から特定の細胞を分離する方法において、凝集と分散の温度がそれぞれ異なる複数の熱応答性磁性粒子を用いて、それぞれに異なる種類の抗体を結合させて、多種類の細胞群と抗原抗体反応をさせたのちに、勾配磁場による分離を複数の温度で順次行うことで、複数の抗原抗体反応にもとづく選別分離を行うことを特徴とする細胞分離方法。
【請求項21】
請求項1、2、3、11、12、13、14、15、16、または17のいずれかにおいて、試料液の温度を制御して計測できることを特徴とする液中微粒子計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−181349(P2010−181349A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26794(P2009−26794)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(505281023)株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ (8)