使い捨てパンツ
【課題】排尿等により少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が認識し易く、肌トラブルを生じることなく、おむつ離れを促進するトレーニングを効率よく行うことができる使い捨てパンツを提供すること。
【解決手段】本発明の使い捨てパンツは、液透過性の表面シート2、防漏シート3及びこれら両シート間に介在された吸収体4を具備し、前記表面シート2は、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されたシート状物からなる下層23とを有し、該上層22と該下層23とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部24が形成されており、該上層22は、実質的に平坦であり、該下層23は、接合部24以外の部分が吸収体4側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部5を形成している。
【解決手段】本発明の使い捨てパンツは、液透過性の表面シート2、防漏シート3及びこれら両シート間に介在された吸収体4を具備し、前記表面シート2は、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されたシート状物からなる下層23とを有し、該上層22と該下層23とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部24が形成されており、該上層22は、実質的に平坦であり、該下層23は、接合部24以外の部分が吸収体4側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部5を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備する使い捨てトレーニングパンツが知られている。使い捨てトレーニングパンツは、おむつ離れを促進させるために、排尿をして濡れた感触を着用者である幼児が容易に認識できるようにしたものである。
例えば、特許文献1には、液透過性内面シート、不透液性外面シート及びこれら両シート間に介在された吸収性コアを具備し、前記内面シート上に湿潤保持シートを、該内面シートに部分的に接合させると共に該内面シートから部分的に浮き上がった状態に設けたトレーニングパンツが記載されている。
特許文献1には、湿潤保持シートにおける、内面シートから浮き上がった部分に吸収された排泄液は、コアに吸収されることが少なく、その浮き上がり部分にほとんど残留するため、幼児がその浮き上がり部分から湿潤を感知することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−59601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のトレーニングパンツは、湿潤保持シートに肌側に向けて突出する凸部が多数形成されており、湿潤保持シートと肌との接触面積が小さいため、湿潤保持シートに多量の液が吸収されないと、排尿による湿潤状態を幼児にしっかりと認識させることができない。また、幼児が湿潤状態をしっかりと認識できる状態が、湿潤保持シートが多量の液を保持した状態であるため、排尿あるいは湿潤を幼児が認識するまでの間に、液が長時間肌に接触して、肌に悪影響を与える恐れがある。
【0005】
従って、本発明の目的は、排尿等により少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が認識し易く、肌トラブルを生じることなく、おむつ離れを促進するトレーニングを効率よく行うことができる使い捨てトレーニングパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備する使い捨てパンツにおいて、前記表面シートは、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層と、前記吸収体側に配されたシート状物からなる下層とを有し、該上層と該下層とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、該上層は、実質的に平坦であり、該下層は、前記接合部以外の部分が前記吸収体側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部を形成している部分を有する、使い捨てパンツを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、請求項1記載の使い捨てパンツの製造方法であって、前記表面シートの製造工程が、周面が凹凸形状となっている第1のロールと、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロールとの間に噛み込ませて、立体賦形された下層を得る工程、及び立体賦形された下層を、第1又は第2のロールの周面に保持しつつ、上層と合流させ、該ロールの凸部と周面が平滑な第3のロールとの間で、上層及び下層を加熱及び加圧し、前記接合部を形成する工程を含む、使い捨てパンツの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の使い捨てパンツによれば、排尿等により少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が認識し易く、肌トラブルを生じることなく、おむつ離れを促進するトレーニングを効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である使い捨てトレーニングパンツ1(以下、単にトレーニングパンツ1ともいう)は、図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の防漏シート3及び両シート2、3間に介在配置された吸収体4を有する吸収性本体8と、該吸収性本体8の防漏シート3側に位置して該吸収性本体8を固定している外装体9とを備えている。トレーニングパンツ1は、着用者の腹側に配される腹側部31と背側に配される背側部32とその間に位置する股下部33とを有しており、腹側部31の両側縁部31a,31bと背側部Bの両側縁部32a,32bとが互いに接合されることによって、図1に示すように、一対のサイドシール部34,34、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成されている。
【0010】
表面シート2、防漏シート3及び吸収体4は、それぞれ矩形状をなし、一体化されて縦長の吸収性本体8を形成している。防漏シート3及び吸収体4としては、それぞれ、従来、この種の物品や使い捨ておむつ等に用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、吸収体4としては、パルプ繊維等の繊維の集合体又はこれに高吸水性ポリマーが保持されたものを、ティッシュペーパや透水性不織布等の被覆シートで被覆したもの等を用いることができる。本実施形態のトレーニングパンツ1における吸収性本体8の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性のシート材から構成された側方カフス7、7が設けられている。各側方カフス7は、自由端に沿って伸長状態で配した側方カフス弾性部材71が縮むことにより起立し、幅方向への液の流出を阻止する。外装体9は、2枚の不織布91,92が積層された構造を有し、2枚の不織布91,92間に、ウエスト部弾性部材51及びレッグ部弾性部材61が、接着剤を介して伸長状態で固定されている。
【0011】
本実施形態のトレーニングパンツ1における表面シート2は、図3(b)に示すように、着用者の肌側に向けられたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されたシート状物からなる下層23とを有し、該上層22と該下層23とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部24が形成されている。上層22は実質的に平坦である。他方、下層23は、接合部4以外の部分が吸収体4側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部25を形成している。
【0012】
図4には、本実施形態に用いた表面シート2を、上層22を下方に向け、下層23を上方に向けた状態で示してある。図4に示すように、本実施形態における凸部25はその底面が略矩形である。また凸部25は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、接合部24も矩形となっている。
【0013】
凸部25及び接合部24は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては図4に示すように、同図中X方向に沿って凸部25及び接合部24が交互に配置され列をなしている。この方向は、表面シート2の製造工程における流れ方向と一致し、また表面シート2がトレーニングパンツ1に組み込まれたときの、トレーニングパンツ1の前後方向(図2の上下方向)又はそれと直交する方向(図2の左右方向)と一致する。凸部25及び接合部24からなる列は、図4中Y方向に亘って多列に配置されている。Y方向に隣り合う列において、凸部25及び接合部24は、X方向の位置がずれている。より具体的には、隣り合う2つの列において、接合部は半ピッチずつずれて配置されている。つまり、接合部24は千鳥格子状に配置されており、凸部25も同様に千鳥格子状に配置されている。
【0014】
凸部25及び接合部24が、このように配置されていることで、表面シート2が厚み方向に潰れにくくなり、湿潤状態の上層22を幼児の肌がある程度の力で押しても、該上層22に保持された液が、下層23、更にはその下の吸収体4に移行しにくくなる。これにより、幼児の肌を湿潤状態の上層22にしっかりと接触させることができ、湿潤感を幼児にしっかりと感知させることができる。
【0015】
上層22及び下層23は同一の又は異なる繊維材料のシート状物からなる。好ましくは、このシート状物は実質的に非伸縮性であるほうがよい。この様なシート状物を用いることによって、所望する寸法の凹凸形状を形成するにあたり、後述する第1及び第2の凹凸ロールの凹凸形状にほぼ即した形状に賦形された表面シートを安定的に且つ再現性良く製造できる。実質的に非伸縮性であるシート状物とは、引張破断伸びが80%以下のものをいう。引張破断伸びの測定方法は、前記シート状物を所定の条件で引っ張ったときの、破断時の伸び量と引張前の長さとの比であり百分率で表示する。例えば、試験片は長さ100mm、幅50mmとして切り出し、チャック間50mmで、両端をテンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC−1210A」)のチャックに挟み、300mm/minの速度で長手方向に引っ張り測定することができる。
【0016】
前記シート状物としては、使い捨てトレーニングパンツや使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造に用いられる各種の材料で、特に制限無く使用することができる。例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、開口手段によって液透過可能とされたフィルム等も使用することができる。
上層22を構成するシート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜10dtex、特に1〜3dtexであることが、液残り、肌触りの向上等の点から好ましい。
下層23を構成するシート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に2〜10dtexであることが、空間の強度確保の点から好ましい。
【0017】
上層22及び下層23を構成するシート状物は、親水化処理した繊維からなることが、表面シートへの液残りの点から好ましい。シート状物は、親水化処理した繊維を50〜100質量%、特に75〜100質量%含む不織布であることが好ましい
また、上層22を構成するシート状物は、繊度が小さく且つ坪量が大きい方が、液残り・液の拡散性の点から好ましい。
また、下層23を構成するシート状物は、繊度や坪量が大きい方が、空間保持性・クッション性の点から好ましい。
下層23より上層22の繊度が小さくまた坪量が大きいほうが、上層シートへの液残りの点から好ましい。
【0018】
表面シート2は、図3(a)及び図3(b)に示すように、下層23側を吸収体4側に向けて、吸収体4上に配置されている。表面シート2は、吸収性本体8の長手方向の略全長に亘って配されており、その両側部は、吸収体4の側部を覆って巻き下げられ、側方カフス7を構成するシート材72と共に、吸収体4と防漏シート3との間又は防漏シート3と外装体9との間に固定されている。
【0019】
表面シート2は、凸部5の先端部と吸収体4とが、排尿される付近は表面シート2が吸収体4と接着されていないほうが好ましい。例えば、吸収体中心から前側に30mmから150mmの部分は接着しなく、その他の部分は接着されているような、排尿される付近のみが表面シート2が吸収体4と接着されていないほうが好ましい。この際、上層シートと下層シート共に吸収体から離れた状態になるので液残りしやすく、また表面シートが浮いた状態になり肌と接触しやすいため、濡れた感じが幼児に伝わりやすくなる。
【0020】
本実施形態のトレーニングパンツ1は、通常のパンツ型使い捨ておむつと同様にして着用することができる。
本実施形態のトレーニングパンツ1によれば、肌当接面を形成する、表面シート2の上層22が平坦であることや、該上層22と吸収体4との非接触状態が安定に維持されること、更には上層22と下層23との間に空洞を有していること、上層22と下層23が熱融着により接合され上層22が部分的にフィルム化されていること等から、排尿後に上層22上又は上層22中を平面方向に拡散し易く、また上層22中に液残りし易いため、表面シート2に広範囲に液残りを有する状態になる。また、上層22が平坦であるため、湿潤状態の上層22が広い面積で肌に接触する。そのため、パンツ1が少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が容易に感知することができる。
他方、座った時・就寝時などに、表面シート2により高い圧力が加わった場合には、加圧下でも空間形状が維持されるため、上層22中に残った液は凸部25の側面を介して吸収体に移行するが、吸収体からの液戻りの影響を受けにくい。そのため、尿が肌に長時間接触することなく肌トラブルも生じにくい。
【0021】
また、本実施形態のトレーニングパンツ1においては、表面シート2における上層22は、下層23との接合部24の周囲に、繊維密度が、該上層22の凸部25の頂部に対応する部分22aよりも高い高密度部22bが形成されている。高密度部22bは、接合部24の周囲に環状に形成されていることが好ましい。高密度部とは繊維間距離が、不織布の平均繊維間距離の3分の1以下になっている領域である。高密度部22bの存在により、表面シート2中に液が残り易く、排尿時により一層湿潤感を付与することができる。
上層22は、下層23に接合されている部分(接合部24)が、繊維の溶融によりフィルム化していることが好ましい。フィルム化していることによって、上層22上を液が一層拡散しやすくなり湿潤領域が広がるので、濡れたことを幼児が容易に感知することができる。
【0022】
上層22の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
下層23の坪量は、伸長時(凸部形成前)10〜100g/m2、特に10〜30g/m2、凸部形成時10〜150g/m2、特に10〜40g/m2、であり伸長時に上層シートより坪量が小さいことが、表面シートの液残りの点から好ましい。
上層22及び下層23を含めた表面シート2の全体の坪量は、20〜300g/m2(凸部形成時)、特に20〜60g/m2(凸部形成時)であることが好ましい。
【0023】
表面シート2は、凸部5の高さH(図4参照)が、0.3〜10mm、特に0.5〜3mmであることが好ましい。また、X方向(MD)に沿う凸部5の底部寸法Aは1.5〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。Y方向(CD)に沿う底部寸法Bは1.5〜30mm、特に2〜10mmであることが好ましい。また、凸部5の底面積は2.25〜900mm2、特に4〜50mm2であることが好ましい。
X方向(MD)での凸部5,5間の長さC(図4参照)は、0.1〜20mm、特に0.5〜5mmであることが好ましい。
【0024】
次に、表面シート2の好ましい製造方法を図5及び図6を参照しながら説明する。図5に示すように、先ず、上層22の原反22’から上層22を繰り出す。これとは別の下層23の原反23’から下層23を繰り出す。繰り出された下層23を、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて下層23を凹凸賦形する。
【0025】
図6には、第1のロール11の要部拡大図が示されている。第1のロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、表面シート2の凸部25におけるY方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1のロール11は、その周面が凹凸形状となる。
【0026】
第1のロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔13が形成されている。この歯溝部は、第1のロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔13は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1のロール11と第2のロール12との噛み合い部から上層22と下層23との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1のロールと第2のロールとの噛み合いによって凹凸賦形された下層23は、吸引孔13による吸引力によって第1のロール周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。この場合、図5に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、下層23に無理な伸長力や、ロールの凹凸噛み合いによる切断効果を加えることなく下層23を第1のロール11の周面に密着させられる。空隙Gは歯車の全歯たけや下層23の坪量にもよるが、0.1〜50mm、特に0.1〜5mm程度であれば、下層23に破断や損傷を与えることなく密着を行うことができる。
【0027】
次いで、図5に示すように、下層23を第1のロール11の周面に引き続き密着させた状態下に、別に繰り出されている上層22を重ね合わせ、その重ね合わせたものを第1のロール11と、平滑な周面を有するアンビルロール(第3のロール)14との間で挟圧する。このとき、第1のロール11とアンビルロール14の両方又はアンビルロール14のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1のロール11における凸部上、つまり各歯車の歯の上に位置する下層23が上層22と熱融着によって接合される。これにより、上述した表面シート2が得られる。
本実施形態のトレーニングパンツ1は、このようにして得た表面シート2を、下層23側が吸収体4側となるようにして吸収体4上に配置する以外は、常法に従って製造することができる。
【0028】
図7及び図8は、本発明に用い得る他の表面シート2Aを示す斜視図である。
図7に示す表面シート2Aは、着用者の肌側に向けられたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されシート状物からなる下層23とを有する。表面シート2Aにおいては、該表面シート2Aの一方向(X方向)に、凹部26及び凸部25とが交互に且つ一列をなすように形成されていると共に該列が前記一方向と直交する方向(Y方向)に多列に形成されている。隣り合う列における凹部26及び凸部25の位置は、それぞれX方向に半ピッチ分ずれている。
【0029】
図8は、表面シート2Aを下層23側から見た状態を示す平面図である。図8に示すように、凸部25と凹部26とが交互に配置されてなる列(図8中、X方向の列)と直交する方向(即ち、Y方向)に関して、凹部26には、接合部6a、非接合部6b及び接合部6aがこの順で形成されている。X方向に関して、非接合部6bは一直線上に位置している。図8に示すように、1つの凸部25は、6つの接合部6aによって取り囲まれている。
【0030】
表面シート2Aも、上述した表面シート2と同様に、下層23側が吸収体4側となるようにして吸収体4上に配置する。表面シート2Aを用いた使い捨てトレーニングパンツによっても、上述した使い捨てトレーニングパンツと同様の効果が得られる。尚、表面シート2Aに関し、表面シート2と同様の点には、同一の符号を付して説明を省略する。表面シート2Aに関して特に説明しない点は、表面シート2と同様である。
【0031】
図9及び図10に、表面シート2Aの製造に用いる第1のロール11が示されている。
図9に示す第1のロール11は、同モジュールの平歯車からなる第1の歯車11c及び第2の歯車11dを複数枚組み合わせ、これらの歯車を回転軸15に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。各歯車11c,11dは何れも同じ歯幅を有している。各歯車11c,11dはその中心が開口しており、その開口部に回転軸15が挿入される。各歯車11c,11d及び回転軸15にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって各歯車11c,11dの空回りが防止される。
【0032】
スペーサー11dは、略円環状の中心部11fと、中心部11fの周縁から放射状に延びる多数のビーム11eとから構成され、星型形状になっている。スペーサー11dにおける各ビーム11eは、その長さがいずれも同じになっている。各ビーム11eの先端を結ぶことで仮想的に形成される円の直径を便宜的に歯先円直径と定義すると、該歯先円直径は、歯車11cの歯先円直径よりも小さくなっている。また歯車11cの歯数はスペーサー11dにおけるビーム11e数の整数倍となっている。
【0033】
図9に示す第1のロール11においては、1枚の第2の歯車11dに対してその両側にそれぞれ1枚ずつの第1の歯車11cが配されて、これらの3枚の歯車を一組とした歯車群16が複数組配されている。各歯車群16においては、第1の歯車11c及び第2の歯車11dは、各歯車11c,11dの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群16においては、ロール11の回転方向に沿って凸部17と凹部18とが交互に形成される。凸部17は、3枚の歯車(つまり2枚の第1の歯車11cと1枚の第2の歯車11d)それぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか(図9中、符号17aで示す)、或いは2枚の第1の歯車11cの歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである(図9中、符号17bで示す)。一方、凹部18は、2枚の第1の歯車11cの歯間で形成されたものである。凸部17の幅は、表面シート2の凸部25におけるY方向の寸法を決定する。
【0034】
歯車群16は二組以上用いられる。各歯車群16は、隣り合う歯車群16,16における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては、隣り合う歯車群16,16は凹凸部が半ピッチずれている。
【0035】
各歯車群16においては、2枚の第1の歯車11c間に、ロール11の回転方向に沿って、一定の間隔をおいて空隙部19が複数形成されている。各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cと、これらの間に位置する第2の歯車11dとで形成されている。更に詳細には、各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cの相対向する側面と、第2の歯車11dにおける隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部19は、第2の歯車11dの歯数と同数形成されることになる。空隙部19は、先に述べた凹部18において外部に向かって開口している。
【0036】
第1の歯車11cには、回転軸15が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の開口部20が形成されている。各開口部20は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う開口部20,20と歯車の中心とがなす角度は何れも等しくなっている。各歯車11cにおける開口部20の個数は、第2の歯車11dの歯数と同数になっている。そして、各歯車群16を組み付ける場合には、各開口部20が、第2の歯車11dにおける隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、第1及び第2の歯車11c,11dを配置する。このように各歯車群16を組み付け、更にそれぞれの歯車群16を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの第1の歯車11cの開口20が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路21がロール11の内部に形成される。そして各吸引路21は、先に述べた空隙部19と連通する。
【0037】
吸引路21の少なくとも一端は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じている。従って、吸引源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部19から吸引路21を通じて空気が吸引される。
【0038】
本実施形態のロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効である。小ピッチで且つ歯の大きさが小さい歯車である低モジュールな平歯車を用いて、図6に示すようなロール11を構成した場合、歯溝部に形成させ得る吸引孔13の面積は小さくなってしまう。その結果、下層23をロール11の周面上へ吸引保持する力が低下し、安定的な凹凸形成が損なわれてしまう。これに対して図9に示すロール11では、低モジュールな平歯車を用いても、第2の歯車11dの歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくすることにより空隙部19を大きくできる。その結果、吸引孔の面積を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
【0039】
第2のロール12の構造に関しては、第1のロール11と噛み合い形状である限り特に制限はない。一般的には、第1のロール11と同様に、複数の歯車を集積させてロール12を構成することが、ロール12の構造に自由度を与えられる点から好ましい。
表面シート2Aは、図9に示す第1のロール11及び周面に第1のロール11の凹凸形状と噛み合い形状となっている第2のロール12を用いる以外は、表面シート2と同様にして製造することができる。
【0040】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されない。
例えば上述した表面シート2においては、凸部25及び接合部24の列は、隣り合う列と凸部25の位置が半ピッチずつずれて配置されていたが、半ピッチ以外のピッチでずれた状態、散点状に配置されていてもよい。また、上述した表面シート2Aにおいては、凸部25及び凹部26の列は、隣り合う列と凸部25の位置が半ピッチずつずれて配置されていたが、半ピッチ以外のピッチでずれた状態、散点状に配置されていてもよい。
また、表面シートの下層23によって形成される凸部25は、上述した表面シート2,2Aの凸部25のように、散点状に形成されたものに代えて、凸条部と、凸条部間の溝部とを有するであっても良い。
【0041】
また、表面シート2においては、接合部24の前後及び左右が凸部25で取り囲まれて閉じた凹部となっていたが、この凹部は閉じておらず、その一部が他の凹部とつながっていてもよい。
【0042】
本発明の表面シートは、全域に、上層22及び下層23の積層構造や凸部25、接合部24を有するものに限られず、着用者の液排泄部に対向する部位等の一部分のみに、そのような構造を有するものであっても良い。例えば、図11中の斜線を付した部分Pのみがそのような構造を有するものであっても良い。
【0043】
図12〜図14は、本発明の他の実施形態における図3(a)相当図である。
図12に示す実施形態のように、表面シート2において、下層23を構成するシートの幅は、上層22を構成するシートの幅より小さくても良い。その場合、形成された凹凸形状部の幅は吸収体の幅より小さく吸収体中央部にあることが、排尿部のみ液残りが生じ幼児は濡れたことがわかる一方、排尿部以外は液残りが少なく肌トラブルが生じにくくなることの点から好ましい。
【0044】
図13に示す実施形態のように、表面シート2は、その幅を吸収体幅より小さくし、その両端に別の不織布2S,2Sを接着させて液透過性内面シートとすることもできる。その場合、表面シートの両端に撥水性不織布を用いると、表面シート2からのみ液が透過するため、表面シート2への液残り量が多くなり幼児は濡れたことがよくわかる。
【0045】
図14に示す実施形態のように、表面シート2は、液透過性内面シート2U上に配置することもできる。また、表面シート2を液透過性内面シート上に排尿部のみに部分的に配置することで、表面シート2が液透過内面シートより肌側に向けて突出し肌と接触し易く、且つ排尿部のみ液残りが生じ幼児は濡れたことがよくわかるが、排尿部以外の領域は液残りが少なくなり肌トラブルが生じにくくなる。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
エアースルー不織布A(芯PET/鞘PE・坪量;18g/m2・繊度;2.2dtex)を上層に用い、エアースルー不織布B(芯PET/鞘PE・坪量;18g/m2・繊度;4.4dtex(67%)、2.2dtex(33%))を下層に用いて、表面シートを製造した。尚、上層に用いた不織布A、下層に用いた不織布Bは、何れも親水化処理したものを用いた。
【0047】
具体的には、先ず、下層を、周面が凹凸形状の第1及び第2ロール間に噛み込ませて、凸部5が千鳥状に多数形成された立体形状に賦形した。そして、その立体賦形された下層を、第1のロールの周面に保持させた状態のまま、実質的に平坦な上層に合流させ、合流させた上層と下層との間を、第1のロールの凸部と平滑な周面を有するアンビルロールとの間に挟んで熱融着させ、図4に示す形態の表面シートを製造した。
得られた表面シートを、吸収体上に、凸部を有する下層側を吸収体側に向けて積層し、評価用サンプルを得た。吸収体には、パルプ繊維(坪量;130g/m2)と高吸水性ポリマー(坪量;104g/m2)を混合しティッシュペーパで被覆したものを用いた。
【0048】
〔比較例1〕
比較例1は、上層繊維と下層繊維の熱融着によるぬれ感への影響を確かめるために作製した。実施例1と同様にして得た表面シートを、吸収体上に、平坦な上層側を吸収体側に向けて積層し、さらにその上に、実施例1で上層に用いた不織布Aを積層(層間は非接合)して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
【0049】
〔比較例2〕
比較例2は、クッション性による加圧後のさらっと感への影響を確かめるために作製した。エアースルー不織布(芯PET/鞘PE・坪量;25g/m2・繊度;3.3dtex(48%)、2.2dtex(52%))を、一対のロール間に噛み込ませて凸部5が溝状に連なった形状に立体賦形した。得られた不織布を、吸収体上に積層し、さらにその上に、実施例1で上層に用いた不織布Aを、層間は非接合にして積層して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。尚、不織布は親水化処理したものを用いた。
【0050】
〔比較例3〕
比較例3は、空洞や熱融着部のぬれ感への影響を確認するために作製した。実施例1で上層、下層に用いた不織布をそれぞれ上層、下層に用い、吸収体上に積層して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
〔比較例4〕
比較例4は、空洞のぬれ感への影響と熱融着部による液広がりへの影響を確認するために作製した。実施例1で上層、下層に用いた不織布をそれぞれ上層、下層に用いて積層し、さらに下層側から直径1mmの円状に5mmの間隔で熱融着させて表面シートを作製した。得られた表面シートを吸収体上に積層し、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
【0051】
〔評価1〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの湿潤領域の広さを、表面シートに残った液の面積Sより評価した。
〔評価基準〕
大:S>30cm2
中:25 cm2<S≦30 cm2
小:S≦25 cm2
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:41cm2(大)
比較例1:20cm2(小)
比較例2:26cm2(中)
比較例3:17cm2(小)
比較例4:34cm2(大)
【0052】
〔評価2〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの濡れ性を、30秒間加圧(3.5kPa)したときにろ紙に吸収される液量の測定より評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:2.4g
比較例1:1.4g
比較例2:3.1g
比較例3:2.9g
比較例4:3.1g
【0053】
〔評価3〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの濡れ性を、手触りにより評価した。(N=1)
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:◎よく濡れている
比較例1:△湿っている
比較例2:○濡れている
比較例3:○濡れている
比較例4:◎よく濡れている
【0054】
〔評価4〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置し、30秒間加圧した。その後、各サンプルの加圧後のさらっと感を、30秒間加圧(3.5kPa)したときにろ紙に吸収される液量により評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:0.1g
比較例1:0.1g
比較例2:2.0g
比較例3:1.1g
比較例4:2.0g
【0055】
〔評価5〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置し、30秒間加圧した。その後、各サンプルのさらっと感を、手触りにより評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:◎さらっとしている
比較例1:◎さらっとしている
比較例2:×濡れている
比較例3:×濡れている
比較例4:×濡れている
【0056】
評価1〜5の結果を表1に纏めて示した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1は、液拡がり面積が大きく、よく濡れている状態であった。また、加圧をすることにより、さらっとした状態になった。
比較例1は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積が小さくなり、湿っている状態であった。また加圧をすることにより、実施例1と同様に空間形状が維持されるため、表面シートに残った液が吸収体に移行され、また吸収体から戻ってくる液の影響を受けにくく、さらっとした状態になった。
比較例2は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積がやや小さくなり、濡れている状態であった。また加圧により、実施例1と異なり空間形状がつぶれてしまい吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
比較例3は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積が小さくなり、湿っている状態であった。実施例1と異なり空間が存在しないため、加圧により吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
比較例4は、熱融着部が存在するため、液拡がり面積が大きくなり、よく濡れている状態であった。しかしながら、実施例1と異なり空間が存在しないため、加圧により吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の使い捨てトレーニングパンツの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すトレーニングパンツの展開状態を示す一部破断平面図である。
【図3】図3(a)は、図2のIII−III線に沿う断面図であり、図3(b)は、図3(a)における、表面シート及び吸収体を拡大して示す断面図である。
【図4】図1に示すトレーニングパンツに用いた表面シートの要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4に示す表面シートを製造する方法を示す模式図である。
【図6】図5における第1のロールの要部拡大図である。
【図7】本発明の使い捨てトレーニングパンツに用い得る他の表面シートを示す斜視図である。
【図8】図7の表面シートをその下層側から見た平面図である。
【図9】図7に示す表面シートの製造に好ましく用いられる第1のロールの要部を示す斜視図である。
【図10】図9に示すロールの一部の分解斜視図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態を示す図〔図2相当図〕である。
【図12】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【図13】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【図14】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【符号の説明】
【0060】
1 使い捨てトレーニングパンツ(使い捨てパンツ)
2,2A 表面シート
22 上層
23 下層
24 接合部
25 凸部
26 凹部
3 防漏シート
4 吸収体
5 ウエスト開口部
6 レッグ開口部
7 側方カフス
8 吸収性本体
9 外装体
11 第1のロール
12 第2のロール
13 吸引孔
14 アンビルロール(第3のロール)
15 回転軸
16 歯車群
17 凸部
18 凹部
19 空隙部
20 開口部
21 吸引路
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備する使い捨てトレーニングパンツが知られている。使い捨てトレーニングパンツは、おむつ離れを促進させるために、排尿をして濡れた感触を着用者である幼児が容易に認識できるようにしたものである。
例えば、特許文献1には、液透過性内面シート、不透液性外面シート及びこれら両シート間に介在された吸収性コアを具備し、前記内面シート上に湿潤保持シートを、該内面シートに部分的に接合させると共に該内面シートから部分的に浮き上がった状態に設けたトレーニングパンツが記載されている。
特許文献1には、湿潤保持シートにおける、内面シートから浮き上がった部分に吸収された排泄液は、コアに吸収されることが少なく、その浮き上がり部分にほとんど残留するため、幼児がその浮き上がり部分から湿潤を感知することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−59601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のトレーニングパンツは、湿潤保持シートに肌側に向けて突出する凸部が多数形成されており、湿潤保持シートと肌との接触面積が小さいため、湿潤保持シートに多量の液が吸収されないと、排尿による湿潤状態を幼児にしっかりと認識させることができない。また、幼児が湿潤状態をしっかりと認識できる状態が、湿潤保持シートが多量の液を保持した状態であるため、排尿あるいは湿潤を幼児が認識するまでの間に、液が長時間肌に接触して、肌に悪影響を与える恐れがある。
【0005】
従って、本発明の目的は、排尿等により少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が認識し易く、肌トラブルを生じることなく、おむつ離れを促進するトレーニングを効率よく行うことができる使い捨てトレーニングパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備する使い捨てパンツにおいて、前記表面シートは、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層と、前記吸収体側に配されたシート状物からなる下層とを有し、該上層と該下層とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、該上層は、実質的に平坦であり、該下層は、前記接合部以外の部分が前記吸収体側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部を形成している部分を有する、使い捨てパンツを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、請求項1記載の使い捨てパンツの製造方法であって、前記表面シートの製造工程が、周面が凹凸形状となっている第1のロールと、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロールとの間に噛み込ませて、立体賦形された下層を得る工程、及び立体賦形された下層を、第1又は第2のロールの周面に保持しつつ、上層と合流させ、該ロールの凸部と周面が平滑な第3のロールとの間で、上層及び下層を加熱及び加圧し、前記接合部を形成する工程を含む、使い捨てパンツの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の使い捨てパンツによれば、排尿等により少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が認識し易く、肌トラブルを生じることなく、おむつ離れを促進するトレーニングを効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である使い捨てトレーニングパンツ1(以下、単にトレーニングパンツ1ともいう)は、図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は撥水性の防漏シート3及び両シート2、3間に介在配置された吸収体4を有する吸収性本体8と、該吸収性本体8の防漏シート3側に位置して該吸収性本体8を固定している外装体9とを備えている。トレーニングパンツ1は、着用者の腹側に配される腹側部31と背側に配される背側部32とその間に位置する股下部33とを有しており、腹側部31の両側縁部31a,31bと背側部Bの両側縁部32a,32bとが互いに接合されることによって、図1に示すように、一対のサイドシール部34,34、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6が形成されている。
【0010】
表面シート2、防漏シート3及び吸収体4は、それぞれ矩形状をなし、一体化されて縦長の吸収性本体8を形成している。防漏シート3及び吸収体4としては、それぞれ、従来、この種の物品や使い捨ておむつ等に用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、吸収体4としては、パルプ繊維等の繊維の集合体又はこれに高吸水性ポリマーが保持されたものを、ティッシュペーパや透水性不織布等の被覆シートで被覆したもの等を用いることができる。本実施形態のトレーニングパンツ1における吸収性本体8の長手方向の左右両側には、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性のシート材から構成された側方カフス7、7が設けられている。各側方カフス7は、自由端に沿って伸長状態で配した側方カフス弾性部材71が縮むことにより起立し、幅方向への液の流出を阻止する。外装体9は、2枚の不織布91,92が積層された構造を有し、2枚の不織布91,92間に、ウエスト部弾性部材51及びレッグ部弾性部材61が、接着剤を介して伸長状態で固定されている。
【0011】
本実施形態のトレーニングパンツ1における表面シート2は、図3(b)に示すように、着用者の肌側に向けられたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されたシート状物からなる下層23とを有し、該上層22と該下層23とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部24が形成されている。上層22は実質的に平坦である。他方、下層23は、接合部4以外の部分が吸収体4側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部25を形成している。
【0012】
図4には、本実施形態に用いた表面シート2を、上層22を下方に向け、下層23を上方に向けた状態で示してある。図4に示すように、本実施形態における凸部25はその底面が略矩形である。また凸部25は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、接合部24も矩形となっている。
【0013】
凸部25及び接合部24は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては図4に示すように、同図中X方向に沿って凸部25及び接合部24が交互に配置され列をなしている。この方向は、表面シート2の製造工程における流れ方向と一致し、また表面シート2がトレーニングパンツ1に組み込まれたときの、トレーニングパンツ1の前後方向(図2の上下方向)又はそれと直交する方向(図2の左右方向)と一致する。凸部25及び接合部24からなる列は、図4中Y方向に亘って多列に配置されている。Y方向に隣り合う列において、凸部25及び接合部24は、X方向の位置がずれている。より具体的には、隣り合う2つの列において、接合部は半ピッチずつずれて配置されている。つまり、接合部24は千鳥格子状に配置されており、凸部25も同様に千鳥格子状に配置されている。
【0014】
凸部25及び接合部24が、このように配置されていることで、表面シート2が厚み方向に潰れにくくなり、湿潤状態の上層22を幼児の肌がある程度の力で押しても、該上層22に保持された液が、下層23、更にはその下の吸収体4に移行しにくくなる。これにより、幼児の肌を湿潤状態の上層22にしっかりと接触させることができ、湿潤感を幼児にしっかりと感知させることができる。
【0015】
上層22及び下層23は同一の又は異なる繊維材料のシート状物からなる。好ましくは、このシート状物は実質的に非伸縮性であるほうがよい。この様なシート状物を用いることによって、所望する寸法の凹凸形状を形成するにあたり、後述する第1及び第2の凹凸ロールの凹凸形状にほぼ即した形状に賦形された表面シートを安定的に且つ再現性良く製造できる。実質的に非伸縮性であるシート状物とは、引張破断伸びが80%以下のものをいう。引張破断伸びの測定方法は、前記シート状物を所定の条件で引っ張ったときの、破断時の伸び量と引張前の長さとの比であり百分率で表示する。例えば、試験片は長さ100mm、幅50mmとして切り出し、チャック間50mmで、両端をテンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC−1210A」)のチャックに挟み、300mm/minの速度で長手方向に引っ張り測定することができる。
【0016】
前記シート状物としては、使い捨てトレーニングパンツや使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造に用いられる各種の材料で、特に制限無く使用することができる。例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、開口手段によって液透過可能とされたフィルム等も使用することができる。
上層22を構成するシート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜10dtex、特に1〜3dtexであることが、液残り、肌触りの向上等の点から好ましい。
下層23を構成するシート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に2〜10dtexであることが、空間の強度確保の点から好ましい。
【0017】
上層22及び下層23を構成するシート状物は、親水化処理した繊維からなることが、表面シートへの液残りの点から好ましい。シート状物は、親水化処理した繊維を50〜100質量%、特に75〜100質量%含む不織布であることが好ましい
また、上層22を構成するシート状物は、繊度が小さく且つ坪量が大きい方が、液残り・液の拡散性の点から好ましい。
また、下層23を構成するシート状物は、繊度や坪量が大きい方が、空間保持性・クッション性の点から好ましい。
下層23より上層22の繊度が小さくまた坪量が大きいほうが、上層シートへの液残りの点から好ましい。
【0018】
表面シート2は、図3(a)及び図3(b)に示すように、下層23側を吸収体4側に向けて、吸収体4上に配置されている。表面シート2は、吸収性本体8の長手方向の略全長に亘って配されており、その両側部は、吸収体4の側部を覆って巻き下げられ、側方カフス7を構成するシート材72と共に、吸収体4と防漏シート3との間又は防漏シート3と外装体9との間に固定されている。
【0019】
表面シート2は、凸部5の先端部と吸収体4とが、排尿される付近は表面シート2が吸収体4と接着されていないほうが好ましい。例えば、吸収体中心から前側に30mmから150mmの部分は接着しなく、その他の部分は接着されているような、排尿される付近のみが表面シート2が吸収体4と接着されていないほうが好ましい。この際、上層シートと下層シート共に吸収体から離れた状態になるので液残りしやすく、また表面シートが浮いた状態になり肌と接触しやすいため、濡れた感じが幼児に伝わりやすくなる。
【0020】
本実施形態のトレーニングパンツ1は、通常のパンツ型使い捨ておむつと同様にして着用することができる。
本実施形態のトレーニングパンツ1によれば、肌当接面を形成する、表面シート2の上層22が平坦であることや、該上層22と吸収体4との非接触状態が安定に維持されること、更には上層22と下層23との間に空洞を有していること、上層22と下層23が熱融着により接合され上層22が部分的にフィルム化されていること等から、排尿後に上層22上又は上層22中を平面方向に拡散し易く、また上層22中に液残りし易いため、表面シート2に広範囲に液残りを有する状態になる。また、上層22が平坦であるため、湿潤状態の上層22が広い面積で肌に接触する。そのため、パンツ1が少量の液を吸収した状態でも、濡れたことを幼児が容易に感知することができる。
他方、座った時・就寝時などに、表面シート2により高い圧力が加わった場合には、加圧下でも空間形状が維持されるため、上層22中に残った液は凸部25の側面を介して吸収体に移行するが、吸収体からの液戻りの影響を受けにくい。そのため、尿が肌に長時間接触することなく肌トラブルも生じにくい。
【0021】
また、本実施形態のトレーニングパンツ1においては、表面シート2における上層22は、下層23との接合部24の周囲に、繊維密度が、該上層22の凸部25の頂部に対応する部分22aよりも高い高密度部22bが形成されている。高密度部22bは、接合部24の周囲に環状に形成されていることが好ましい。高密度部とは繊維間距離が、不織布の平均繊維間距離の3分の1以下になっている領域である。高密度部22bの存在により、表面シート2中に液が残り易く、排尿時により一層湿潤感を付与することができる。
上層22は、下層23に接合されている部分(接合部24)が、繊維の溶融によりフィルム化していることが好ましい。フィルム化していることによって、上層22上を液が一層拡散しやすくなり湿潤領域が広がるので、濡れたことを幼児が容易に感知することができる。
【0022】
上層22の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
下層23の坪量は、伸長時(凸部形成前)10〜100g/m2、特に10〜30g/m2、凸部形成時10〜150g/m2、特に10〜40g/m2、であり伸長時に上層シートより坪量が小さいことが、表面シートの液残りの点から好ましい。
上層22及び下層23を含めた表面シート2の全体の坪量は、20〜300g/m2(凸部形成時)、特に20〜60g/m2(凸部形成時)であることが好ましい。
【0023】
表面シート2は、凸部5の高さH(図4参照)が、0.3〜10mm、特に0.5〜3mmであることが好ましい。また、X方向(MD)に沿う凸部5の底部寸法Aは1.5〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。Y方向(CD)に沿う底部寸法Bは1.5〜30mm、特に2〜10mmであることが好ましい。また、凸部5の底面積は2.25〜900mm2、特に4〜50mm2であることが好ましい。
X方向(MD)での凸部5,5間の長さC(図4参照)は、0.1〜20mm、特に0.5〜5mmであることが好ましい。
【0024】
次に、表面シート2の好ましい製造方法を図5及び図6を参照しながら説明する。図5に示すように、先ず、上層22の原反22’から上層22を繰り出す。これとは別の下層23の原反23’から下層23を繰り出す。繰り出された下層23を、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて下層23を凹凸賦形する。
【0025】
図6には、第1のロール11の要部拡大図が示されている。第1のロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、表面シート2の凸部25におけるY方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1のロール11は、その周面が凹凸形状となる。
【0026】
第1のロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔13が形成されている。この歯溝部は、第1のロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔13は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1のロール11と第2のロール12との噛み合い部から上層22と下層23との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1のロールと第2のロールとの噛み合いによって凹凸賦形された下層23は、吸引孔13による吸引力によって第1のロール周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。この場合、図5に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、下層23に無理な伸長力や、ロールの凹凸噛み合いによる切断効果を加えることなく下層23を第1のロール11の周面に密着させられる。空隙Gは歯車の全歯たけや下層23の坪量にもよるが、0.1〜50mm、特に0.1〜5mm程度であれば、下層23に破断や損傷を与えることなく密着を行うことができる。
【0027】
次いで、図5に示すように、下層23を第1のロール11の周面に引き続き密着させた状態下に、別に繰り出されている上層22を重ね合わせ、その重ね合わせたものを第1のロール11と、平滑な周面を有するアンビルロール(第3のロール)14との間で挟圧する。このとき、第1のロール11とアンビルロール14の両方又はアンビルロール14のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1のロール11における凸部上、つまり各歯車の歯の上に位置する下層23が上層22と熱融着によって接合される。これにより、上述した表面シート2が得られる。
本実施形態のトレーニングパンツ1は、このようにして得た表面シート2を、下層23側が吸収体4側となるようにして吸収体4上に配置する以外は、常法に従って製造することができる。
【0028】
図7及び図8は、本発明に用い得る他の表面シート2Aを示す斜視図である。
図7に示す表面シート2Aは、着用者の肌側に向けられたシート状物からなる上層22と、吸収体4側に配されシート状物からなる下層23とを有する。表面シート2Aにおいては、該表面シート2Aの一方向(X方向)に、凹部26及び凸部25とが交互に且つ一列をなすように形成されていると共に該列が前記一方向と直交する方向(Y方向)に多列に形成されている。隣り合う列における凹部26及び凸部25の位置は、それぞれX方向に半ピッチ分ずれている。
【0029】
図8は、表面シート2Aを下層23側から見た状態を示す平面図である。図8に示すように、凸部25と凹部26とが交互に配置されてなる列(図8中、X方向の列)と直交する方向(即ち、Y方向)に関して、凹部26には、接合部6a、非接合部6b及び接合部6aがこの順で形成されている。X方向に関して、非接合部6bは一直線上に位置している。図8に示すように、1つの凸部25は、6つの接合部6aによって取り囲まれている。
【0030】
表面シート2Aも、上述した表面シート2と同様に、下層23側が吸収体4側となるようにして吸収体4上に配置する。表面シート2Aを用いた使い捨てトレーニングパンツによっても、上述した使い捨てトレーニングパンツと同様の効果が得られる。尚、表面シート2Aに関し、表面シート2と同様の点には、同一の符号を付して説明を省略する。表面シート2Aに関して特に説明しない点は、表面シート2と同様である。
【0031】
図9及び図10に、表面シート2Aの製造に用いる第1のロール11が示されている。
図9に示す第1のロール11は、同モジュールの平歯車からなる第1の歯車11c及び第2の歯車11dを複数枚組み合わせ、これらの歯車を回転軸15に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。各歯車11c,11dは何れも同じ歯幅を有している。各歯車11c,11dはその中心が開口しており、その開口部に回転軸15が挿入される。各歯車11c,11d及び回転軸15にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって各歯車11c,11dの空回りが防止される。
【0032】
スペーサー11dは、略円環状の中心部11fと、中心部11fの周縁から放射状に延びる多数のビーム11eとから構成され、星型形状になっている。スペーサー11dにおける各ビーム11eは、その長さがいずれも同じになっている。各ビーム11eの先端を結ぶことで仮想的に形成される円の直径を便宜的に歯先円直径と定義すると、該歯先円直径は、歯車11cの歯先円直径よりも小さくなっている。また歯車11cの歯数はスペーサー11dにおけるビーム11e数の整数倍となっている。
【0033】
図9に示す第1のロール11においては、1枚の第2の歯車11dに対してその両側にそれぞれ1枚ずつの第1の歯車11cが配されて、これらの3枚の歯車を一組とした歯車群16が複数組配されている。各歯車群16においては、第1の歯車11c及び第2の歯車11dは、各歯車11c,11dの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群16においては、ロール11の回転方向に沿って凸部17と凹部18とが交互に形成される。凸部17は、3枚の歯車(つまり2枚の第1の歯車11cと1枚の第2の歯車11d)それぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか(図9中、符号17aで示す)、或いは2枚の第1の歯車11cの歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである(図9中、符号17bで示す)。一方、凹部18は、2枚の第1の歯車11cの歯間で形成されたものである。凸部17の幅は、表面シート2の凸部25におけるY方向の寸法を決定する。
【0034】
歯車群16は二組以上用いられる。各歯車群16は、隣り合う歯車群16,16における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては、隣り合う歯車群16,16は凹凸部が半ピッチずれている。
【0035】
各歯車群16においては、2枚の第1の歯車11c間に、ロール11の回転方向に沿って、一定の間隔をおいて空隙部19が複数形成されている。各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cと、これらの間に位置する第2の歯車11dとで形成されている。更に詳細には、各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cの相対向する側面と、第2の歯車11dにおける隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部19は、第2の歯車11dの歯数と同数形成されることになる。空隙部19は、先に述べた凹部18において外部に向かって開口している。
【0036】
第1の歯車11cには、回転軸15が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の開口部20が形成されている。各開口部20は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う開口部20,20と歯車の中心とがなす角度は何れも等しくなっている。各歯車11cにおける開口部20の個数は、第2の歯車11dの歯数と同数になっている。そして、各歯車群16を組み付ける場合には、各開口部20が、第2の歯車11dにおける隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、第1及び第2の歯車11c,11dを配置する。このように各歯車群16を組み付け、更にそれぞれの歯車群16を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの第1の歯車11cの開口20が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路21がロール11の内部に形成される。そして各吸引路21は、先に述べた空隙部19と連通する。
【0037】
吸引路21の少なくとも一端は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じている。従って、吸引源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部19から吸引路21を通じて空気が吸引される。
【0038】
本実施形態のロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効である。小ピッチで且つ歯の大きさが小さい歯車である低モジュールな平歯車を用いて、図6に示すようなロール11を構成した場合、歯溝部に形成させ得る吸引孔13の面積は小さくなってしまう。その結果、下層23をロール11の周面上へ吸引保持する力が低下し、安定的な凹凸形成が損なわれてしまう。これに対して図9に示すロール11では、低モジュールな平歯車を用いても、第2の歯車11dの歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくすることにより空隙部19を大きくできる。その結果、吸引孔の面積を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
【0039】
第2のロール12の構造に関しては、第1のロール11と噛み合い形状である限り特に制限はない。一般的には、第1のロール11と同様に、複数の歯車を集積させてロール12を構成することが、ロール12の構造に自由度を与えられる点から好ましい。
表面シート2Aは、図9に示す第1のロール11及び周面に第1のロール11の凹凸形状と噛み合い形状となっている第2のロール12を用いる以外は、表面シート2と同様にして製造することができる。
【0040】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されない。
例えば上述した表面シート2においては、凸部25及び接合部24の列は、隣り合う列と凸部25の位置が半ピッチずつずれて配置されていたが、半ピッチ以外のピッチでずれた状態、散点状に配置されていてもよい。また、上述した表面シート2Aにおいては、凸部25及び凹部26の列は、隣り合う列と凸部25の位置が半ピッチずつずれて配置されていたが、半ピッチ以外のピッチでずれた状態、散点状に配置されていてもよい。
また、表面シートの下層23によって形成される凸部25は、上述した表面シート2,2Aの凸部25のように、散点状に形成されたものに代えて、凸条部と、凸条部間の溝部とを有するであっても良い。
【0041】
また、表面シート2においては、接合部24の前後及び左右が凸部25で取り囲まれて閉じた凹部となっていたが、この凹部は閉じておらず、その一部が他の凹部とつながっていてもよい。
【0042】
本発明の表面シートは、全域に、上層22及び下層23の積層構造や凸部25、接合部24を有するものに限られず、着用者の液排泄部に対向する部位等の一部分のみに、そのような構造を有するものであっても良い。例えば、図11中の斜線を付した部分Pのみがそのような構造を有するものであっても良い。
【0043】
図12〜図14は、本発明の他の実施形態における図3(a)相当図である。
図12に示す実施形態のように、表面シート2において、下層23を構成するシートの幅は、上層22を構成するシートの幅より小さくても良い。その場合、形成された凹凸形状部の幅は吸収体の幅より小さく吸収体中央部にあることが、排尿部のみ液残りが生じ幼児は濡れたことがわかる一方、排尿部以外は液残りが少なく肌トラブルが生じにくくなることの点から好ましい。
【0044】
図13に示す実施形態のように、表面シート2は、その幅を吸収体幅より小さくし、その両端に別の不織布2S,2Sを接着させて液透過性内面シートとすることもできる。その場合、表面シートの両端に撥水性不織布を用いると、表面シート2からのみ液が透過するため、表面シート2への液残り量が多くなり幼児は濡れたことがよくわかる。
【0045】
図14に示す実施形態のように、表面シート2は、液透過性内面シート2U上に配置することもできる。また、表面シート2を液透過性内面シート上に排尿部のみに部分的に配置することで、表面シート2が液透過内面シートより肌側に向けて突出し肌と接触し易く、且つ排尿部のみ液残りが生じ幼児は濡れたことがよくわかるが、排尿部以外の領域は液残りが少なくなり肌トラブルが生じにくくなる。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
エアースルー不織布A(芯PET/鞘PE・坪量;18g/m2・繊度;2.2dtex)を上層に用い、エアースルー不織布B(芯PET/鞘PE・坪量;18g/m2・繊度;4.4dtex(67%)、2.2dtex(33%))を下層に用いて、表面シートを製造した。尚、上層に用いた不織布A、下層に用いた不織布Bは、何れも親水化処理したものを用いた。
【0047】
具体的には、先ず、下層を、周面が凹凸形状の第1及び第2ロール間に噛み込ませて、凸部5が千鳥状に多数形成された立体形状に賦形した。そして、その立体賦形された下層を、第1のロールの周面に保持させた状態のまま、実質的に平坦な上層に合流させ、合流させた上層と下層との間を、第1のロールの凸部と平滑な周面を有するアンビルロールとの間に挟んで熱融着させ、図4に示す形態の表面シートを製造した。
得られた表面シートを、吸収体上に、凸部を有する下層側を吸収体側に向けて積層し、評価用サンプルを得た。吸収体には、パルプ繊維(坪量;130g/m2)と高吸水性ポリマー(坪量;104g/m2)を混合しティッシュペーパで被覆したものを用いた。
【0048】
〔比較例1〕
比較例1は、上層繊維と下層繊維の熱融着によるぬれ感への影響を確かめるために作製した。実施例1と同様にして得た表面シートを、吸収体上に、平坦な上層側を吸収体側に向けて積層し、さらにその上に、実施例1で上層に用いた不織布Aを積層(層間は非接合)して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
【0049】
〔比較例2〕
比較例2は、クッション性による加圧後のさらっと感への影響を確かめるために作製した。エアースルー不織布(芯PET/鞘PE・坪量;25g/m2・繊度;3.3dtex(48%)、2.2dtex(52%))を、一対のロール間に噛み込ませて凸部5が溝状に連なった形状に立体賦形した。得られた不織布を、吸収体上に積層し、さらにその上に、実施例1で上層に用いた不織布Aを、層間は非接合にして積層して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。尚、不織布は親水化処理したものを用いた。
【0050】
〔比較例3〕
比較例3は、空洞や熱融着部のぬれ感への影響を確認するために作製した。実施例1で上層、下層に用いた不織布をそれぞれ上層、下層に用い、吸収体上に積層して、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
〔比較例4〕
比較例4は、空洞のぬれ感への影響と熱融着部による液広がりへの影響を確認するために作製した。実施例1で上層、下層に用いた不織布をそれぞれ上層、下層に用いて積層し、さらに下層側から直径1mmの円状に5mmの間隔で熱融着させて表面シートを作製した。得られた表面シートを吸収体上に積層し、評価用サンプルを得た。吸収体は、実施例1と同じものを用いた。
【0051】
〔評価1〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの湿潤領域の広さを、表面シートに残った液の面積Sより評価した。
〔評価基準〕
大:S>30cm2
中:25 cm2<S≦30 cm2
小:S≦25 cm2
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:41cm2(大)
比較例1:20cm2(小)
比較例2:26cm2(中)
比較例3:17cm2(小)
比較例4:34cm2(大)
【0052】
〔評価2〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの濡れ性を、30秒間加圧(3.5kPa)したときにろ紙に吸収される液量の測定より評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:2.4g
比較例1:1.4g
比較例2:3.1g
比較例3:2.9g
比較例4:3.1g
【0053】
〔評価3〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置後、各サンプルの濡れ性を、手触りにより評価した。(N=1)
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:◎よく濡れている
比較例1:△湿っている
比較例2:○濡れている
比較例3:○濡れている
比較例4:◎よく濡れている
【0054】
〔評価4〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置し、30秒間加圧した。その後、各サンプルの加圧後のさらっと感を、30秒間加圧(3.5kPa)したときにろ紙に吸収される液量により評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:0.1g
比較例1:0.1g
比較例2:2.0g
比較例3:1.1g
比較例4:2.0g
【0055】
〔評価5〕
得られた各評価用サンプル上に、40gの人工尿をロートを用いて2.7g/sで注入した。1分間放置し、30秒間加圧した。その後、各サンプルのさらっと感を、手触りにより評価した。
〔結果〕
結果を以下に示した。
実施例1:◎さらっとしている
比較例1:◎さらっとしている
比較例2:×濡れている
比較例3:×濡れている
比較例4:×濡れている
【0056】
評価1〜5の結果を表1に纏めて示した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1は、液拡がり面積が大きく、よく濡れている状態であった。また、加圧をすることにより、さらっとした状態になった。
比較例1は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積が小さくなり、湿っている状態であった。また加圧をすることにより、実施例1と同様に空間形状が維持されるため、表面シートに残った液が吸収体に移行され、また吸収体から戻ってくる液の影響を受けにくく、さらっとした状態になった。
比較例2は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積がやや小さくなり、濡れている状態であった。また加圧により、実施例1と異なり空間形状がつぶれてしまい吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
比較例3は、実施例1と異なり熱融着部が存在しないため、液拡がり面積が小さくなり、湿っている状態であった。実施例1と異なり空間が存在しないため、加圧により吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
比較例4は、熱融着部が存在するため、液拡がり面積が大きくなり、よく濡れている状態であった。しかしながら、実施例1と異なり空間が存在しないため、加圧により吸収体から戻ってくる液の影響を受けるため、加圧後もぬれている状態であった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の使い捨てトレーニングパンツの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すトレーニングパンツの展開状態を示す一部破断平面図である。
【図3】図3(a)は、図2のIII−III線に沿う断面図であり、図3(b)は、図3(a)における、表面シート及び吸収体を拡大して示す断面図である。
【図4】図1に示すトレーニングパンツに用いた表面シートの要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】図4に示す表面シートを製造する方法を示す模式図である。
【図6】図5における第1のロールの要部拡大図である。
【図7】本発明の使い捨てトレーニングパンツに用い得る他の表面シートを示す斜視図である。
【図8】図7の表面シートをその下層側から見た平面図である。
【図9】図7に示す表面シートの製造に好ましく用いられる第1のロールの要部を示す斜視図である。
【図10】図9に示すロールの一部の分解斜視図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態を示す図〔図2相当図〕である。
【図12】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【図13】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【図14】本発明の更に他の実施形態を示す断面図〔図3(a)相当図〕である。
【符号の説明】
【0060】
1 使い捨てトレーニングパンツ(使い捨てパンツ)
2,2A 表面シート
22 上層
23 下層
24 接合部
25 凸部
26 凹部
3 防漏シート
4 吸収体
5 ウエスト開口部
6 レッグ開口部
7 側方カフス
8 吸収性本体
9 外装体
11 第1のロール
12 第2のロール
13 吸引孔
14 アンビルロール(第3のロール)
15 回転軸
16 歯車群
17 凸部
18 凹部
19 空隙部
20 開口部
21 吸引路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を
具備する使い捨てパンツにおいて、
前記表面シートは、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層と、前記吸収体側に配されたシート状物からなる下層とを有し、該上層と該下層とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、該上層は、実質的に平坦であり、該下層は、前記接合部以外の部分が前記吸収体側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部を形成している部分を有する、使い捨てパンツ。
【請求項2】
前記上層は、高密度部を有している請求項1記載の使い捨てパンツ。
【請求項3】
前記上層は、前記接合部の周囲に高密度部を有している請求項1又は2記載の使い捨てパンツ。
【請求項4】
前記上層は、前記接合部の周囲に高密度部が環状に形成されている請求項3記載の使い捨てパンツ。
【請求項5】
請求項1記載の使い捨てパンツの製造方法であって、
前記表面シートの製造工程が、周面が凹凸形状となっている第1のロールと、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロールとの間に噛み込ませて、立体賦形された下層を得る工程、及び立体賦形された下層を、第1又は第2のロールの周面に保持しつつ、上層と合流させ、該ロールの凸部と周面が平滑な第3のロールとの間で、上層及び下層を加熱及び加圧し、前記接合部を形成する工程を含む、使い捨てパンツの製造方法。
【請求項1】
液透過性の表面シート、防漏シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を
具備する使い捨てパンツにおいて、
前記表面シートは、着用者の肌側に配されたシート状物からなる上層と、前記吸収体側に配されたシート状物からなる下層とを有し、該上層と該下層とが熱融着により部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、該上層は、実質的に平坦であり、該下層は、前記接合部以外の部分が前記吸収体側に向けて突出して、内部が空洞の多数の凸部を形成している部分を有する、使い捨てパンツ。
【請求項2】
前記上層は、高密度部を有している請求項1記載の使い捨てパンツ。
【請求項3】
前記上層は、前記接合部の周囲に高密度部を有している請求項1又は2記載の使い捨てパンツ。
【請求項4】
前記上層は、前記接合部の周囲に高密度部が環状に形成されている請求項3記載の使い捨てパンツ。
【請求項5】
請求項1記載の使い捨てパンツの製造方法であって、
前記表面シートの製造工程が、周面が凹凸形状となっている第1のロールと、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロールとの間に噛み込ませて、立体賦形された下層を得る工程、及び立体賦形された下層を、第1又は第2のロールの周面に保持しつつ、上層と合流させ、該ロールの凸部と周面が平滑な第3のロールとの間で、上層及び下層を加熱及び加圧し、前記接合部を形成する工程を含む、使い捨てパンツの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−153568(P2009−153568A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332048(P2007−332048)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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