説明

使い捨て吸収性物品

【課題】排尿知覚用のシートが肌に接触し易く、十分な接触面積を確保でき、体の動きに追従して接触状態を維持し易い使い捨て吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、表面シート30の表面に、尿との接触により接着性が失われる接着剤b1のみを介して分離シート20が接着されており、排尿時、分離シート20と表面シート30とを接着する接着剤b1の接着性が失われることにより、分離シート20全体が表面シート30から完全に分離するように構成されている、ことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂トイレトレーニングに用いられる使い捨ておむつ、使い捨て吸収パッド等の、使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーニング用の使い捨ておむつとしては、装着者に排尿を知覚させるために、尿を肌に接触させ、湿潤による不快感を強調する工夫を施したものが一般的であり、その効果をより確実化するために、排尿に接すると瞬時に収縮して幼児の背腰側又は腹側の肌に弾発的に衝接する別体の排尿知覚用シートを設けた使い捨てトレニングパンツ(例えば特許文献1参照)や、ソルビトール等のように尿との接触により尿に温度変化をもたらす物質を含む排尿知覚用シートを表面シート上に設けたものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−104177号公報
【特許文献2】特開2008−006277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の排尿知覚用シートは、分離したシートが肌に接触し難い、又は接触面積が少ないものであり、また、体の動きに追従して接触状態を維持することが困難であるという問題点があった。そしてその結果、従来のものは装着者が排尿を知覚して申告する率が低くなっていた。
そこで、本発明の主たる課題は、排尿知覚用のシートが肌に接触し易く、十分な接触面積を確保でき、体の動きに追従して接触状態を維持し易い使い捨て吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題点について鋭意研究した結果、次のような知見を得た。すなわち、従来のものは、排尿時にシートが分離するといっても、一部は物品に連結されたままであるため、分離シートは体に接触する部分が少なくなるだけでなく、体の動きに追従して接触状態を維持することができなかったのである。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0005】
<請求項1記載の発明>
液透過性表面シートと裏面側シートとの間に吸収体が介在されてなる、使い捨て吸収性物品において、
前記表面シートの表面に、尿との接触により接着性が失われる接着剤のみを介して分離シートが接着されており、
前記接着剤の接着性が失われることにより、前記分離シート全体が前記表面シートから完全に分離するように構成されている、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明の使い捨て吸収性物品では、排尿により、分離シートと表面シートとを接着する接着剤が接着性を失い、それにより分離シート全体が表面シートから完全に分離する。分離したシートは尿により濡れているため肌に付着し、装着者に排尿を知覚させる。この際、分離シートはその全体がおむつから完全に分離して自由に動くことができるため、分離シートが肌に接触し易く、十分な接触面積を確保でき、肌に付着後も体の動きに追従して接触状態を維持し易くなる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
物品前後方向中央より前側に延在し、腹側を覆う前側部分と、物品前後方向中央より後側に延在し、背側を覆う後側部分とを有する使い捨ておむつであって、
前記分離シートは、幅方向寸法よりも前後方向寸法のほうが大きく、物品前後方向中央から前側に物品全長の20〜25%の位置から後側に物品全長の0〜30%の位置までの前後方向範囲に収まり、且つ物品幅方向中央から左側に吸収体の全幅の15〜40%の位置から右側に吸収体の全幅の15〜40%の位置までの幅方向範囲に収まるように設けられている、請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
本発明は使い捨ておむつに適しているものであるが、使い捨ておむつはウエスト側に近い部分ほど肌に密着し、尿が供給され難いため、このような部分に分離シートが位置していても、その機能を十分に発揮し難い。また、幅方向においても幅方向中央から遠くなるほど同様の傾向がある。よって、分離シートの位置・寸法は上記範囲にあるのが望ましい。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記分離シートは、物品前後方向中央から前側に物品全長の0〜10%の位置あるいは物品前後方向中央から後側に物品全長の0〜20%の位置から後側の部分が、後側に向うにつれて幅が狭くなる形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
本発明の分離シートは、おむつから完全に分離して肌に付着する機能を有するものであるため、その形状は身体表面に沿う形状であると、より肌に付着し易くなるため好ましい。特に上述の使い捨ておむつの場合、分離シートは股間部を含む範囲に前後方向に沿って延在しており、股間から臀裂にわたる凹部への付着が困難となり易い。よって、分離シートが上記のような形状を有していると、臀裂部位へ入り込み易くなり、より一層付着し易くなる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記分離シートにおける幅方向中央に沿って、細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張状態で固定されるとともに、前記分離シート及び前記細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張した状態で前記表面シートの表面に接着されている、請求項2又は3記載の使い捨て吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
分離シートを固定する接着剤が接着性を失うだけでは、分離シートに剥離力が加わらないため、分離が不十分となるおそれがある。よって、上記のように分離シートに弾性伸縮部材を設けることにより、接着剤が接着性を失ったとき、分離シートが弾性伸縮部材の収縮にともなって収縮し、その収縮力が表面シートからの剥離力となるように構成すると、分離シートの剥離が促進されるため好ましい。しかも、細長状弾性伸縮部材を上記の配置で設けることにより、分離シートの幅方向中央部が股間部に入り込むように隆起し、身体表面に沿う形状となるため、肌に対する付着性に優れるようになる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記分離シートにおける幅方向両端縁に沿って、細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張状態で固定されるとともに、前記分離シートの幅方向両端部が前記表面シートから離間している、請求項2又は3記載の使い捨て吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
分離シートが大きいと、特に前後方向に大きな寸法を有すると、1回の排尿では尿が分離シートを固定する接着剤全体に行き渡らない、あるいは時間がかかることがある。よって、上記のような構造とすることで分離シートの幅方向両端部がバリヤーカフス様構造を形成し、尿がおむつ表面の幅方向中央部を前後方向に沿って流れやすくなるため、分離シート20の接着剤b1全体に素早く尿が行き渡り、分離シートの剥離が促進されるため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記分離シートは、尿との接触により温度変化を発生させる温度変化物質を含む親水性不織布である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
排尿を装着者に知覚させる一つの手段として温度変化物質の使用が知られている。この場合、温度変化が体に伝達されることが重要であり、温度変化物質を含む部分が体から離間していたのでは知覚効果が乏しくなるが、本発明では、分離シートは物品から完全に分離して身体に付着するため、上記のように分離シートに温度変化物質を含有させることにより、温度変化物質による温度変化を確実に体に伝達させることができる。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記分離シートは、糸状、紐状、帯状又はシート状の連結材を介して物品に連結されており、この連結は尿との接触により解除されないように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
本発明は、分離シート全体が物品から完全に分離し、身体に付着するものであるが、そのままでは物品の廃棄時に、物品とは別に身体に付着した分離シートを除去しなければならず、手が汚れる、煩雑であるといった問題点がある。これに対して、上記のように、分離シートを連結材で連結しておけば、分離シート全体が分離するものでありながら、廃棄時には物品を外すのに伴って分離シートを身体から取り除くことができ、手が汚れる、煩雑であるといった問題点が解決されるため好ましい。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記連結材は、前記分離シートと前記表面シートとの間に介在し、一端部が前記分離シートの前後方向いずれか一方の側の端部に固定され、他端部が前記分離シートの前後方向中央より前後方向他方の側の前記表面シートに固定されている、請求項7記載の使い捨て吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
このように連結材が設けられていると、分離シートがおむつから分離する前は連結材は表面シートと分離シートとの間に収納されて着用者に違和感を与えることがなく、おむつから分離した後は分離シートが自由に動くのを連結材が妨げることがない。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、排尿知覚用のシートが肌に接触し易く、十分な接触面積を確保でき、体の動きに追従して接触状態を維持し易い使い捨て吸収性物品となる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、パンツ型使い捨ておむつ(トレーニングパンツ)の例を引いて説明するが、本発明はテープ式の使い捨ておむつやパッド型の吸収性物品等にも適用できることはいうまでもない。
<パンツ型使い捨ておむつの基本構造例>
図1〜図9は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0023】
このパンツ型使い捨ておむつは、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁と背側外装シート12Bの幅方向両側縁とが、上下方向全体にわたりヒートシールや超音波溶着等により溶着接合されて筒状の胴回り部100が形成されるように構成されている。符号12Aは個々の溶着部を示しており、この溶着部12Aの群がサイドシール部を構成するものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが溶着部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側延出部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、溶着部12Aは小さな溶着部の集合からなり、溶着部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは溶着部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0024】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。図示しないが、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間部で連続した形態、つまり腹側から背側までを一体的な外装シートにより連続的に覆う形態を採用することもできる。
【0025】
図7及び図8からも判るように、胴回り部100の上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各溶着部12Aを剥がして展開した状態では、図1に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を装着者に対して支持する部分である。
【0026】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図4及び図5にも示すようにシート状資材12,12を2枚貼り合せてなるものであり、内側に位置する内側シート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側に位置する外側シート状資材12は内側シート状資材12のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在され、対向面にホットメルト接着剤等により固定されている。シート状資材12としては溶着により接合できるものであれば特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0027】
そして、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bには、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。各外装シート12F,12Bの両シート状資材12,12の貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定にはホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12F,12B全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0028】
より詳細には、背側外装シート12Bは、溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0029】
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0030】
背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、図6に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0031】
背側本体部13は、上下方向において概念的に上端部(ウエスト部)Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上端部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0032】
背側本体部13の上端部(ウエスト部)Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0033】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0034】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0035】
また、背側延出部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0036】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0037】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。
【0038】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wおよび下側部分Uのうち、上端部Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材12の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0039】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0040】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0041】
図示形態の腹側外装シート12Fは、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0042】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200と外装シート12F,12Bが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側延出部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0043】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えるとともに、表面シート30の表面に、尿との接触により接着性が失われる接着剤b1のみを介して分離シート20が接着されている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30と吸収要素50との間に、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させる中間シート40(セカンドシート)を設けることもできるが、肌への熱伝達が阻害されるため、表面シート30と吸収要素50との間には、少なくとも後述するポケット部57と重なる部分、好ましくは全体にわたり、他の部材を設けないのが好ましい。さらに、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート12F,12Bに対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0044】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特に、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつさらっと感に優れるため好適である。
【0045】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせてなるものであってもよい。
【0046】
表面シート30を不織布から構成する場合、その厚みが0.1〜3mm程度、特に0.5mm以下、且つ目付けが10〜40g/m2程度、特に25g/m2以下であるように構成すると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。
【0047】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0048】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0049】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0050】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40が幅方向側部から吸収体56の裏面側まで回り込み、ホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
【0051】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0052】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0053】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0054】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
本実施の形態では、図3及び図4にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0055】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0056】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0057】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0058】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0059】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0060】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0061】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さL6は、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0062】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0063】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0064】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部分69における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0065】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61を表面シート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60を表面シート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0066】
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0067】
(吸収要素)
本例の吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有するものとなっているが、包装シート58は省略することもできる。
【0068】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば120〜200g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0069】
吸収体56は、前後方向中央CLから前側に物品全長L6の30〜47%、及び後側に物品全長L6の30〜47%延在している。吸収体56は長方形形状でも良いが、図6にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0070】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0071】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0072】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56中にはその全体にわたり高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0073】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0074】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0075】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0076】
高吸収性ポリマー粒子の含有量は、170〜220g/m2の範囲内で、パルプ繊維と高吸収性ポリマーとの重量比が6.6〜6.9:9.2〜10.3となるように設定するのが好ましい。ポリマーの含有量が170g/m2未満では、吸収量が不十分であり、220g/m2を超えると吸収体が膨張しすぎて分離シート20が分離しにくくなる。
【0077】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0078】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないような目の細かいシートであるのが望ましく、薄く低目付けのものが適当である。厚みは0.05〜3mm程度、特に0.2mm以下、且つ目付けが5〜25g/m2程度、特に15g/m2以下であると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
【0079】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0080】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
【0081】
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
【0082】
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0083】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0084】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0085】
(分離シート)
分離シート20の素材は特に限定されず、不織布、フィルム、紙、布等を用いることができるが、接着剤b1全体に素早く尿を行き渡らせるために、液透過性を有しており液拡散性の高いものが好ましく、更に親水性を有しており液保持性に優れる繊維集合素材が好適である。
【0086】
具体的には、分離シート20としては、レーヨンやコットン、パルプ等のセルロース系繊維を含む不織布が親水性の高さから好適である。また、水平方向の拡散性の高さから、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルーポイント不織布などのように、表面にエンボス加工を施した不織布が好適であり、中でも、しなやかで肌へのフィット性、剥がれやすさに優れる点でスパンボンド不織布が最も好ましい。スパンボンド不織布を用いる場合、そのエンボス率(エンボスによる加圧部分の面積率)、個々の加圧部分の大きさは特に限定されないが、通常の場合、エンボス率は10〜20%、個々の加圧部分の大きさ(面積)は1.5mm2以下であるのが好ましい。さらに、分離シート20として不織布を用いる場合、繊維配向が分離シート20の長さ方向に沿っているのが好ましく、さらに繊維自体がその長さ方向に沿って液を拡散する性質に富むものである(例えば、繊維の長さ方向に平行に溝がある構造となっているフィラメント等)のが好ましい。
【0087】
また、分離シート20の接着剤b1全体に素早く尿を行き渡らせるために、裏面側の部材との間に親水性または液透過性の差を持たせるのも好ましい。例えば、表面シート30、中間シート40、又はこの両方に、分離シート20よりも親水性または液透過性の低い素材を用いると、尿が表面シート30を通過する前により広範囲に尿が拡散し、接着剤の接着性の消失が促進される。また、分離シート20と表面シート30の間、表面シート30と中間シート40との間、中間シート40と包装シート58との間、包装シート58と吸収体56の表面との間、吸収体56内部のいずれか、またはこれらのうち複数の部位に、液透過性の低い吸収抑制シートを設けたり、液不透過性の吸収抑制シートを部分的に設けたり、中間シート40を液透過性の低い吸収抑制シート又は液不透過性の吸収抑制シートとしたりすることでも、同様の効果が期待である。このような吸収抑制シートを用いる場合、分離シート20の裏側に全体が隠れるような寸法及び位置で設けると、吸収の妨げを最小限に抑えることができる。
【0088】
分離シート20を表面シート30と接着する接着剤b1としては、澱粉、PVA、糖等からなる水溶性接着剤を用いる。接着剤b1の塗布パターンは適宜定めることができ、分離シート20の全面にベタ塗布しても良いが、排尿時の分離シート20の剥離性や、肌がべとつかないように、縦縞、横縞、散点状、スパイラル状等の間欠的な塗布パターンとし、使用量を抑えるのも好ましい。具体的な接着剤b1の塗布量としては、2.0〜5.0g/m2程度とするのが好ましい。
【0089】
分離シート20を設ける位置及び寸法は適宜定めることができるが、寸法は幅方向寸法よりも前後方向寸法のほうが大きいほうが好ましい。また、分離シート20は、物品前後方向中央CLから前側に物品全長L6の20〜25%の位置から後側に物品全長L6の0〜30%の位置までの前後方向範囲20Lに収まり、且つ物品幅方向中央から左側に吸収体56の全幅W2の15〜40%の位置から右側に吸収体56の全幅W2の15〜40%の位置までの幅方向範囲20Wに収まるように設けられていると好ましい。使い捨ておむつはウエスト側に近い部分ほど肌に密着し、尿が供給され難いため、このような部分に分離シート20が位置していても、その機能を十分に発揮し難い。また、幅方向においても幅方向中央から遠くなるほど同様の傾向がある。よって、分離シート20の位置・寸法は上記範囲にあるのが望ましい。
【0090】
分離シート20の形状は、矩形状、三角形状、円状、楕円状等、適宜の形状とすることができるが、図示例のように、物品前後方向中央CLから前側に物品全長L6の0〜10%の位置あるいは物品前後方向中央CLから後側に物品全長L6の0〜20%の位置から後側の部分が、後側に向うにつれて幅が狭くなる形状を有していると、分離シート20が、おむつから完全に分離して肌に付着する際、股間から臀裂にわたる凹部へ入り込み易くなり、より一層付着し易くなる。
【0091】
かくして構成されたおむつにおいては、排尿により、分離シート20と表面シート30とを接着する接着剤b1が接着性を失い、それにより分離シート20全体が表面シート30から完全に分離する。分離した分離シート20は尿により濡れているため肌に付着し、装着者に排尿を知覚させる。この際、分離シート20はその全体がおむつから完全に分離して自由に動くことができるため、分離シート20が肌に接触し易く、十分な接触面積を確保でき、肌に付着後も体の動きに追従して接触状態を維持し易くなる。
【0092】
分離シート20を固定する接着剤b1が接着性を失うだけでは、分離シート20に剥離力が加わらないため、分離が不十分となるおそれがある。よって、分離シート20に弾性伸縮部材21を伸張状態で固定するとともに、分離シート20及び弾性伸縮部材21が伸張した状態で表面シート30の表面に接着固定することにより、接着剤が接着性を失ったとき、分離シート20が弾性伸縮部材21の収縮にともなって収縮し、その収縮力が表面シート30からの剥離力となるように構成すると、分離シート20の剥離が促進されるため好ましい。
【0093】
弾性伸縮部材21としては、糸状、ひも状、シート状、網状等、適宜のものを用いることができ、分離シート20における配設位置も適宜定めることができるが、特に図示形態のように、分離シート20における幅方向中央に沿って、細長状弾性伸縮部材21が前後方向に沿って伸張状態で固定されるとともに、分離シート20及び前記細長状弾性伸縮部材21が前後方向に沿って伸張した状態で表面シート30の表面に接着されていると、分離シート20の幅方向中央部が股間部に入り込むように隆起し、身体表面に沿う形状となるため、肌に対する付着性に優れるようになる。さらに、分離シート20における幅方向両端部にも、細長状弾性伸縮部材21を前後方向に沿って伸張状態で設けると、これらと幅方向中央部の細長状弾性伸縮部材21との収縮によって、分離シート20が臀部の膨らみ沿う椀状をなし、臀部に対する付着性が良好となる。細長状弾性伸縮部材21の本数が多いほど分離シート20が剥がれ易くなるが、細長状弾性伸縮部材21の数が多すぎたり、分離シート20に対する固定時の伸張率を高くしたりすると、分離シート20に皺が多くなり、排尿時に肌に付着し難くなるため、細長状弾性伸縮部材21は、図10(a)に示すように分離シート20の幅方向中央のみ、若しくは図10(b)に示すように幅方向中央部及び両端部のみとするのが好ましく、分離シート20に対する固定時の伸張率は150〜230%程度とするのが好ましい。また、分離シート20の幅方向に間隔を空けて複数本の細長状弾性伸縮部材21を設ける場合、幅方向位置に応じて種類や伸張率、太さを変化させることができ、例えば幅方向中央側のものほど伸張率を高くしたり、太さを太くしたり、これらを組み合わせたりするといったことができる。さらに、弾性伸縮部材21は分離シート20の前後方向の一部に設けても良いが、分離シート20は排泄位置から遠ざかるほど尿がいきわたり難くなるので、図示例のように分離シート20の前後方向長さの90%以上の範囲にわたり設けるのが好ましい。細長状弾性伸縮部材21を分離シート20の幅方向両端部に設ける場合は、幅方向両端縁に沿って設け、接着剤b1は分離シート20の幅方向中間部に設け、両端部には設けないようにするのが好ましい。このように構成すると、分離シート20がおむつから分離する前は幅方向両側縁の細長状弾性伸縮部材の収縮により分離シート20の幅方向両端部が表面シート30から起立し、バリヤーカフス様構造を形成し、尿がおむつ表面の幅方向中央部を前後方向に沿って流れやすくなるため、分離シート20の接着剤b1全体に素早く尿が行き渡るようになる。従ってこの場合、分離シート20の幅方向両側部の起立部は、左右それぞれの幅は3〜20mm、特に3〜20mm程度であることが好ましく、左右の起立部の付け根間の幅(内側接着部b1で固定されている部分の総幅)は20〜60mm程度であることが好ましく、さらに、起立部が撥水性あるいは疎水性を有していると尿の前後方向の移動がより良好になるため好ましい。
【0094】
弾性伸縮部材21は、分離シート20の表裏いずれか一方の面(好ましくは図示形態のように裏面)に固定する他、分離シート20を複数枚のシート基材を貼り合わせて形成するとともに、それらシート基材間に弾性伸縮部材21を伸張状態で挟持固定することもできる。分離シート20に対する弾性伸縮部材21の固定は、EVA系ホットメルト接着剤等のように、尿と接触しても固定が解除されない手段により行う。図中の符号b2は弾性伸縮部材21を分離シート20に固定するための接着剤を示している。
【0095】
分離シート20に弾性伸縮部材21を設ける場合、分離シート20を表面シート30に接着するための接着剤b1は、伸縮領域の少なくとも伸縮方向両端部(図示例の場合分離シート20の前後端部)、特に伸縮領域全体に設けるのが好ましい。また、部位に応じて接着剤b1の塗布量を変化させることもでき、例えば上述のように、分離シート20の幅方向に間隔を空けて複数本の細長状弾性伸縮部材21を設ける場合、幅方向外側ほど接着剤量を少なくするか、幅方向外側の所定部分については接着しないようにすると、尿の供給量が少ない部分であってもより確実に分離シート20を分離させることができる。
【0096】
他方、排尿の知覚効果をより一層のものとするために、尿との接触により温度変化を発生させる温度変化物質を分離シート20に含有させるのは好ましい形態である。この場合、温度変化が体に伝達されることが重要であり、温度変化物質を含む部分が体から離間していたのでは知覚効果が乏しくなるが、前述のとおり、分離シート20は物品から完全に分離して身体に付着するため、温度変化物質による温度変化が確実に体に伝達される。
【0097】
温度変化物質は、尿に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、尿を冷却又は加熱するものである。尿への溶解により熱を吸収する温度変化物質の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。尿への溶解により熱を放出する温度変化物質の例としては、塩化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化アルミニウムカリウム等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は尿素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。尿への溶解により吸熱又は放熱する物質を用いる場合、尿への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0098】
尿との反応により熱を吸収又は放出する物質の例としては、オルトエステル類、又はメントンを炭素量が1ないし8のアルコール或いは炭素量が2ないし8のポリオールと反応させて得られるメントンケタルのようなケタル類、及びそれらの構造的又は光学的異性体を挙げることができる。また、尿により膨潤することにより熱を吸収又は放出する温度変化物質の例としては、軽く架橋結合し部分的に中和されたポリアクリル酸を挙げることができる。
【0099】
温度変化物質は、粒子状(粉体状含む)のものが好適に用いられるが、繊維状等の他の形状のものを用いることもできる。温度変化物質は、そのまま用いても良いが、温度変化物質をコアとして水溶性又は液透過性シェルにより包み、マイクロカプセル化したものを用いるのも好ましい。温度変化物質は、分離シート20の表面、裏面及び内部の少なくとも一箇所に設けるか、又は分離シート20を複数枚のシート基材を貼り合わせて形成するとともに、その基材間に挟持することができる。温度変化物質は分離シート20に保持される限り、固定する必要はなく、例えば分離シートが不織布である場合にその繊維間隙に保持させることもできるが、接着剤や溶着等により分離シート20に固定することもできる。この場合における接着剤としては、尿と接触しても接着性が消失しないものでも、消失するものでも用いることができる。
【0100】
温度変化物質を用いる場合、装着者に排尿を明瞭に知覚させるためには、分離シート20の表面において4度以上、特に5度以上の温度変化があると好ましい。具体的に、上述の各形態において、このような温度変化を達成するためには、次の条件を満足するように構成するのが好ましい。
分離シート20の素材:不織布。
分離シート20の厚み:0.1〜0.5mm。
分離シート20の目付けが10〜40g/m2
温度変化物質の種類:尿への溶解により吸熱反応を起し、尿を冷却するもの。
温度変化物質の溶解度(温度20℃の100mlの水に対する):30g以上、特に50g以上。
分離シート20における温度変化物質の目付け(温度変化物質の総使用量を分離シート20の総面積で除した値。他に同じ。):300〜500g/m2
上述したように分離シート20全体が物品から完全に分離し、身体に付着するものであると、そのままでは物品の廃棄時に、物品とは別に身体に付着した分離シート20を除去しなければならず、手が汚れる、煩雑であるといった問題点がある。
【0101】
よって、分離シート20は、図11に示すように、糸状、紐状、帯状又はシート状の連結材25を介しておむつに連結するのが好ましい。この連結は尿との接触により解除されないように、素材の溶着や、尿と接触しても接着性を失わない接着剤(例えばEVA系ホットメルト接着剤等)等の手段により行う。連結材25は分離シート20が分離後に自由に動ける程度の長さを有していればよく、分離シート20の長さに対して30〜120%程度の長さが適当である。連結材25の材料は任意であるが、帯状又はシート状のものを用いる場合は、疎水性あるいは撥水性の、不織布またはプラスチックフィルムが好ましく、目付は10〜30g/m2程度、幅は2〜5mm程度が適当である。図中の符号b3は連結材25をおむつに固定するための接着剤を示している。このように、分離シート20を連結材25で連結しておけば、分離シート20全体が分離するものでありながら、廃棄時には物品を外すのに伴って分離シート20を身体から取り除くことができ、手が汚れる、煩雑であるといった問題点が解決される。なお、連結材25は、図示例のように分離シート20と表面シート30との間に介在し、一端部が分離シート20の後側端部に固定され、他端部は分離シート20の前後方向中央より前側の表面シート30上に固定されている。このように連結材25が設けられていると、分離シート20がおむつから分離する前は連結材25は表面シート30と分離シート20との間に収納されて着用者に違和感を与えることがなく、おむつから分離した後は分離シート20が自由に動くのを連結材25が妨げることがない。また、図示例とは逆に連結材25の一端部が分離シート20の前側端部に固定され、他端部が分離シート20の前後方向中央より後側の表面シート30上に固定されていると、上記効果だけでなく、おむつから分離した分離シート20が臀裂部位へ入り込むように移動するのを連結材25が妨げることがない。
【0102】
装着者に異物感を感じさせないように、連結材25の一端は、分離シート20の裏面(表面シート30側面)に連結し、他端は表面シート30のうち分離シート20により被覆されている部分に連結し、連結材25全体が分離シート20と表面シート30との間に隠れるように構成するのが好ましい。連結材25の長さは適宜定めることができるが、長過ぎると廃棄時の取り扱いが困難となり、短過ぎると分離が阻害されるため、60〜120mm程度とするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、パンツ型やテープ式、あるいはパッド型の吸収性物品等、広範な用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6断面図である。
【図4】図1の7−7断面図である。
【図5】図1の8−8断面図である。
【図6】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】他の分離シート例の平面図である。
【図11】他の形態を示す、図1の8−8断面に相当する断面図である。
【符号の説明】
【0105】
100…胴回り部、11…液不透過性シート、12F…腹側外装シート、12B…背側外装シート、200…内装体、20…分離シート、30…表面シート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート、70…背側伸縮シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性表面シートと裏面側シートとの間に吸収体が介在されてなる、使い捨て吸収性物品において、
前記表面シートの表面に、尿との接触により接着性が失われる接着剤のみを介して分離シートが接着されており、
前記接着剤の接着性が失われることにより、前記分離シート全体が前記表面シートから完全に分離するように構成されている、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
物品前後方向中央より前側に延在し、腹側を覆う前側部分と、物品前後方向中央より後側に延在し、背側を覆う後側部分とを有する使い捨ておむつであって、
前記分離シートは、幅方向寸法よりも前後方向寸法のほうが大きく、物品前後方向中央から前側に物品全長の20〜25%の位置から後側に物品全長の0〜30%の位置までの前後方向範囲に収まり、且つ物品幅方向中央から左側に吸収体の全幅の15〜40%の位置から右側に吸収体の全幅の15〜40%の位置までの幅方向範囲に収まるように設けられている、請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記分離シートは、物品前後方向中央から前側に物品全長の0〜10%の位置あるいは物品前後方向中央から後側に物品全長の0〜20%の位置から後側の部分が、後側に向うにつれて幅が狭くなる形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記分離シートにおける幅方向中央に沿って、細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張状態で固定されるとともに、前記分離シート及び前記細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張した状態で前記表面シートの表面に接着されている、請求項2又は3記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記分離シートにおける幅方向両端縁に沿って、細長状弾性伸縮部材が前後方向に沿って伸張状態で固定されるとともに、前記分離シートの幅方向両端部が前記表面シートから離間している、請求項2又は3記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記分離シートは、尿との接触により尿を冷却又は加熱する温度変化物質を含む親水性不織布である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記分離シートは、細長状の連結材を介して物品に連結されており、この連結は尿との接触により解除されないように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記連結材は、前記分離シートと前記表面シートとの間に介在し、一端部が前記分離シートの前後方向いずれか一方の側の端部に固定され、他端部が前記分離シートの前後方向中央より前後方向他方の側の前記表面シートに固定されている、請求項7記載の使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−68989(P2010−68989A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239261(P2008−239261)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】