説明

使い捨て吸収性物品

【課題】排泄液の拡散性が良好で排泄液を効率よく吸収でき、また、装着者の肌への排泄液の逆戻りを防止できる使い捨て吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面シート3と、裏面シート4と、これら表面シート3と裏面シート4との間に位置する吸収体5とを有する吸収性物品本体2を具備する。吸収性物品本体2は、前側部6と、中央部7と、後側部8とを長手方向に沿って順次備える。吸収体5は、表面シート3側に位置する上層吸収体11と、裏面シート4側に位置する下層吸収体12とを有する。上層吸収体11の長手方向に沿って上層開孔部13を設ける。下層吸収体12の長手方向に沿って下層溝部14を設ける。また、吸収体5は、上層開孔部13と下層溝部14との一部を重ねて形成した吸収体凹部15と、上層吸収体11の上層開孔部13以外の部分と下層溝部14との一部を重ねて形成した通液部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供用、大人用或いは失禁用の使い捨て吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿などの排泄液を吸収する使い捨て吸収性物品では、表面側に位置する液透過性の表面シートを透過した排泄液が吸収体で吸収され、裏面側に位置する液不透過性の裏面シートによって、裏面側からの排出液の漏出を防止している。
【0003】
このような使い捨て吸収性物品において、吸収体にて吸収した排泄液を拡散させて吸収体全体を有効に活用することにより、吸収力を向上させて、配設液の漏出を防止するため吸収体が、表面シート側に位置する上層吸収体と、裏面シート側に位置する下層吸収体と、これら上層吸収体と下層吸収体との間に配設された液拡散性シートとを有し、前記上層吸収体は、長手方向の一端部および他端部のいずれかに変位した位置に長手方向に沿って開口部が形成され、この開口部では、前記表面シートと前記液拡散性シートとが接合された構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−167196号公報(第3−4,7−8頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、上層吸収体の開口部および液拡散性シートによって、排泄液を拡散するものの、下層吸収体では、排泄液を充分に拡散できず、排泄液を効率よく吸収できない場合が考えられる。また、排泄液が、上層吸収体で拡散しやすいため、想定している上層吸収体の吸収量より排泄液の量が多い場合には、上層吸収体の広範囲にて排泄液が装着者の肌へ逆戻りしてしまう場合が考えられる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、排泄液の拡散性が良好で排泄液を効率よく吸収でき、また、装着者の肌への排泄液の逆戻りを防止できる使い捨て吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された使い捨て吸収性物品は、表面側に位置する表面シートと、裏面側に位置する裏面シートと、これら表面シートと裏面シートとの間に位置する吸収体とを有する吸収性物品本体を具備し、前記吸収体は、前記表面シート側に位置し、上層開孔部が設けられた上層吸収体と、前記裏面シート側に位置し、前記上層開孔部に少なくとも一部が重なった下層溝部が設けられた下層吸収体と有し、前記上層開孔部と前記下層溝部とが重なって吸収体凹部が形成され、前記上層吸収体の前記上層開孔部以外の部分と前記下層溝部とが重なって通液部が形成されたものである。
【0008】
請求項2に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項1に記載された使い捨て吸収性物品において、吸収性物品本体は、装着者の前側に配置される前側部と、装着者の股下に配置される中央部と、装着者の後側に配置される後側部とを長手方向に沿って順次備え、吸収体は、中央部における幅方向の長さが、前側部および後側部における幅方向の長さより短く形成され、上層開孔部は、上層吸収体の幅方向中央に位置し、前記上層吸収体の長手方向に沿って少なくとも前記前側部から前記中央部にわたって設けられ、下層溝部は、下層吸収体の幅方向中央に位置し、前記下層吸収体の長手方向に沿って少なくとも前記中央部から前記後側部にわたって設けられ、吸収体凹部は、少なくとも前記中央部に形成され、通液部は、少なくとも前記中央部から前記後側部にわたって形成されたものである。
【0009】
請求項3に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項1または2に記載された使い捨て吸収性物品において、上層開孔部は、幅方向の長さが下層溝部の幅方向の長さより長く形成され、下層溝部は、下層吸収体の長手方向の両端部より内側に位置しているものである。
【0010】
請求項4に記載された使い捨て吸収性物品は、請求項1ないし3のいずれかに記載された使い捨て吸収性物品において、吸収体は、上層吸収体と下層吸収体との間に通液部を覆う液透過性の上下層分離シートが設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、上層吸収体に上層開孔部が設けられ、下層吸収体に下層溝部が設けられ、また、吸収体凹部および通液部が形成されたことにより、排泄液が、上層開孔部を通って上層吸収体で拡散され、吸収体凹部を通って上層開孔部から下層溝部へ移動し通液部へ流入し、この通液部を通って下層吸収体で拡散されるので、排泄液の拡散性を向上でき、排泄液を効率よく吸収できる。
【0012】
また、吸収体に吸収体凹部および通液部が形成されたことにより、排泄液を下側吸収体にて拡散しやすいので、下層吸収体にて排泄液を吸収しやすく、排泄液の装着者の肌への逆戻りを防止できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、上層開孔部は、上層吸収体の幅方向中央に位置し、少なくとも前側部から中央部にわたって設けられたことにより、上層開孔部が装着者の排尿部位に対応して、排泄液が上層開孔部に流入しやすく、下層溝部は、下層吸収体の幅方向中央に位置し、少なくとも中央部から後側部にわたって設けられたことにより、通液部が少なくとも中央部から後側部に形成されて排泄液を下層吸収体の後側部に拡散しやすいので、排泄液の拡散性を向上でき、排泄液を効率よく吸収できる。
【0014】
また、吸収体は、中央部における幅方向の長さが、前側部および後側部における幅方向の長さより短く形成されたことにより、装着した際に吸収体が変形しにくいので、上層開孔部、下層溝部、吸収体凹部および通液部が潰れることを防止でき、装着した際の拡散性の低下を防止できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、上層開孔部の幅方向の長さが下層溝部の幅方向の長さより長く形成されたことにより、排泄液が上層開孔部に流入しやすいので、吸収体は、より確実に排泄液を拡散できる。
【0016】
また、下層溝部が下層吸収体の長手方向の両端部より内側に位置しているので、通液部を通って拡散する排泄液が下層吸収体の長手方向の端部から流出することを防止できる。
【0017】
請求項4に記載された発明によれば、上層吸収体と下層吸収体との間に上下層分離シートが設けられたことにより、これら上層吸収体と下層吸収体とを分離できるので、上層吸収体が下層溝部に入り込み、吸収体凹部および通液部が潰されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に使い捨て吸収性物品の一部を切り欠いて示す平面図である。
【図2】同上使い捨て吸収性物品の幅方向に沿った断面図を示し、(a)は図1のA−A断面図であり、(b)は図1のB−B断面図であり、(c)は図1のC−C断面図である。
【図3】同上使い捨て吸収性物品の長手方向に沿った断面図を示し、(a)は図1のD−D断面図であり、(b)は図1のE−E断面図であり、(c)は図1のF−F断面図である。
【図4】(a)および(b)は本発明の第2の実施の形態の使い捨て吸収性物品の断面図である。
【図5】(a)および(b)は本発明の第3の実施の形態の使い捨て吸収性物品の断面図である。
【図6】(a)および(b)は同上使い捨て吸収性物品の断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の使い捨て吸収性物品の断面図である。
【図8】(a)ないし(c)は本発明の第5の実施の形態の使い捨て吸収性物品の平面図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態の使い捨て吸収性物品の一部を切り欠いて示す平面図である。
【図10】同上使い捨て吸収性物品の断面図を示し、図9のG−G断面図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態の使い捨て吸収性物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1ないし図3を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1において、1は使い捨て吸収性物品を示し、この使い捨て吸収性物品1は、略矩形状の吸収性物品本体2を備えている。
【0021】
吸収性物品本体2は、使い捨て吸収性物品1が装着された装着状態で表面側である装着者側に位置する表面シート3と、装着状態で裏面側である装着者とは反対側の衣類側に位置する裏面シート4と、これら表面シート3と裏面シート4との間に位置する吸収体5とを有している。
【0022】
また、吸収性物品本体2は、装着状態で装着者の前側である腹側に配置される前側部6と、装着状態で装着者の股下に配置される中央部7と、装着状態で装着者の後側である背側に配置される後側部8とが長手方向に沿って順次設けられている。
【0023】
表面シート3は、例えば尿などの液状の排泄液を透過可能な略矩形状の液透過性シートであり、また、裏面シート4は、排泄液が透過しない液不透過性(疎水性)シートであって、これら表面シート3および裏面シート4は、例えば織布、不織布、フィルムおよび合成繊維などのシート材にて適宜形成される。
【0024】
また、表面シート3と裏面シート4とは、吸収体5を挟むように周縁部が例えば接着剤などにて接合されて吸収体5が封着されており、装着者の排泄液が表面シート3を透過して吸収体5に吸収され、裏面シート4にて吸収体5から裏面側への排泄液の漏出を防止する。
【0025】
吸収体5は、表面シート3側に位置する上層吸収体11と、裏面シート4側に位置する下層吸収体12とを有している。これら上層吸収体11および下層吸収体12は、例えばパルプなどの吸収性繊維および高分子吸収材などから形成されたり、吸収体5の保形または吸収拡散等のためにティッシュなどのクレープ紙でパルプを挟んで形成されたりするもので、排泄液を十分に吸収できる。
【0026】
下層吸収体12は、吸収性物品本体2の中央部7における幅方向の長さが前側部6および後側部8の幅方向の長さより短く、中央部7が幅方向に円弧凹状に切り欠かれた略砂時計形状に形成されている。また、下層吸収体12の幅方向の長さは、表面シート3および裏面シート4の幅方向の長さより短く形成され、下層吸収体12の長手方向の長さは、表面シート3および裏面シート4の長手方向の長さより短く形成されている。
【0027】
上層吸収体11は、略矩形状であり、長手方向の長さが下層吸収体12の長手方向の長さと略同一に形成され、幅方向の長さが中央部7における下層吸収体12の幅方向の長さより短く形成されている。
【0028】
そして、下層吸収体12の幅方向の中央に上層吸収体11が配設されて吸収体5が構成される。すなわち、この吸収体5は、吸収性物品本体2の中央部7における幅方向の長さが前側部6および後側部8の幅方向の長さより短く形成された略砂時計形状であり、表面シート3および裏面シート4の略中央に配設されている。
【0029】
ここで、図1および図2(a)ないし(c)に示すように、上層吸収体11には上層開孔部13が設けられ、下層吸収体12には上層開孔部13に一部が重なった下層溝部14が設けられている。
【0030】
上層開孔部13は、平面視略矩形状であり、下層溝部14より幅方向の長さが長く形成されている。また、上層開孔部13は、上層吸収体11の幅方向の略中央において、上層吸収体11の長手方向に沿って、前側部6における上層吸収体11の長手方向端部から中央部7における上層吸収体11の長手方向略中央にわたって、装着者の排尿部位に対応する位置に設けられている。さらに、上層開孔部13は、上層吸収体11の表面シート3側から下層吸収体12側へ断面方向に貫通して設けられている。なお、図2(c)に示すように後側部8において上層開孔部13は設けられていない。
【0031】
下層溝部14は、上層開孔部13より幅方向の長さが短い平面視略矩形状であり、下層吸収体12の幅方向の略中央において、下層吸収体12の長手方向に沿って、中央部7から後側部8における下層吸収体12の長手方向端部よりやや内側の部分にわたって、装着者の股下から背側に対応する位置に設けられている。また、下層溝部14は、下層吸収体12の上層吸収体11側から裏面シート4側へ断面方向に貫通して設けられている。なお、図2(a)に示すように、前側部6において下層溝部14は設けられていない。
【0032】
図3(a)に示すように、吸収体5の幅方向の中央では、上層開孔部13が前側部6から中央部7にわたって位置し、下層溝部14が中央部7から後側部8にわたって位置している。また、下層溝部14より後側の端部には、下層吸収体12が位置しており、この下層吸収体12と上層吸収体11の一部とが重なっている。すなわち、吸収体5の幅方向の中央では、後側部8の端部でのみ上層吸収体11と下層吸収体12とが重なっている。
【0033】
そして、この吸収体5の幅方向の略中央では、上層開孔部13に連通した吸収体凹部15と、この吸収体凹部15に連通した通液部16とが設けられている。
【0034】
吸収体凹部15は、中央部7に位置しており、上層開孔部13の長手方向の中央部7側と下層溝部14の長手方向の中央部7側とが重なって形成されている。また、吸収体凹部15は、図2(b)に示すように、上層開孔部13に対応する上層吸収体11の内側面と、上層開孔部13に対応する下層吸収体12の上層吸収体11側すなわち上側面と、下層溝部14に対応する下層吸収体12の内側面と、下層溝部14に対応する裏面シート4の下層吸収体12側すなわち上側面とによって、吸収体5の断面方向に凹状に形成されている。
【0035】
通液部16は、中央部7の略中央から後側部8側の下層吸収体12の端部よりやや内側にわたって位置し、上層吸収体11における上層開孔部13より後側部8側の上層開孔部13以外の非開孔部分と下層溝部14とが重なって形成されている。また、通液部16は、図2(c)に示すように、下層溝部14に対応する上層吸収体11の下層吸収体12側すなわち下側面と、下層溝部14に対応する下層吸収体12の内側面と、下層溝部14に対応する裏面シート4の下層吸収体12側すなわち上側面とによってトンネル状に形成されている。
【0036】
なお、図3(b)に示すように、吸収体5の幅方向の中央より外側の上層吸収体11が配設され、上層開孔部13が設けられていない部分では、吸収体5の長手方向の全域にわたって上層吸収体11と下層吸収体12とが重なっている。
【0037】
また、図3(c)に示すように、吸収体5の幅方向の中央よりやや外側であり、図3(a)にて示す部分と図3(b)にて示す部分との間では、前側部6から中央部7にわたって上層開孔部13が設けられ、この上層開孔部13より後側部8側では、上層吸収体11と下層吸収体12とが重なっている。
【0038】
次に、上記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0039】
使い捨て吸収性物品1を装着する際には、吸収性物品本体2の表面シート3を内側すなわち装着者側とし、吸収性物品本体2の裏面シート4を外側とするとともに、前側部6が装着者の腹側に位置し、中央部7が装着者の股下に位置し、後側部8が背側に位置するように、例えばおむつなどのパンツ型吸収性物品の内側面に配設して、パンツ型吸収性物品を装着する。
【0040】
使い捨て吸収性物品1の装着状態では、前側部6が装着者の腹側に位置するので、吸収体5の上層開孔部13が装着者の排尿部位に対応する。
【0041】
したがって、装着者が排泄した排泄液は、表面シート3を透過して、上層開孔部13へ流入し、この上層開孔部13を通って吸収性物品本体2の前側部6から中央部7へ向かって移動しながら、上層吸収体11にて吸収される。すなわち、上層吸収体11での排泄液の拡散が上層開孔部13にて促進される。
【0042】
また、上層開孔部13を通って移動する排泄液は、上層開孔部13に連通した吸収体凹部15を通って、下層溝部14へ移動し通液部16へ流入する。
【0043】
通液部16に流入した排泄液は、通液部16を通って吸収性物品本体2の中央部7から後側部8へ向かって移動しながら、下層吸収体12にて吸収される。すなわち、下層吸収体12での排泄液の拡散が通液部16にて促進される。
【0044】
このように使い捨て吸収性物品1は、上層吸収体11に上層開孔部13が設けられ、下層吸収体12に下層溝部14が設けられ、また、吸収体凹部15および通液部16が形成されたことにより、吸収体5に吸収される排泄液が、上層開孔部13を通って上層吸収体11で拡散され、吸収体凹部15を通って上層開孔部13から下層溝部14へ移動して通液部16へ流入し、この通液部16を通って下層吸収体12で拡散されるので、排泄液の拡散性を向上できる。したがって、吸収体5は、排泄液が拡散しやすいので排泄液を効率よく吸収でき、排泄液を充分に吸収して排泄液の漏出を防止できる。
【0045】
また、吸収体凹部15および通液部16が形成されたことにより、排泄液を下層吸収体12にて拡散しやすいので、下層吸収体12によって充分に排泄液を吸収できる。したがって、通液部16の上方に位置する上層吸収体11による排泄液の吸収量を少なくすることができ、吸収した排泄液の装着者の肌への逆戻りを防止できる。よって、排泄液の逆戻りによる装着感の悪化を防止できる。
【0046】
上層開孔部13は、上層吸収体11の幅方向中央に位置し、吸収性物品本体2における前側部6から中央部7にわたって設けられたことにより、上層開孔部13がより確実に装着者の排尿部位に対応して、排泄液が上層開孔部13に流入しやすい。また、下層溝部14は、下層吸収体12の幅方向中央に位置し、吸収性物品本体2における中央部7から後側部8にわたって設けられたことにより、通液部16が後側部8に形成されて排泄液を下層吸収体12の後側部8に拡散しやすい。したがって、吸収体5における排泄液の拡散性を向上でき、排泄液を効率よく吸収できる。
【0047】
ここで、装着状態では、吸収性物品本体2の中央部7が装着者の股下に位置するので、中央部7の両側には装着者の両脚が位置する。すなわち、装着状態において、中央部7は、両脚により幅方向内側への力を受けやすく、中央部7における吸収体5の幅が広いと吸収体5が幅方向内側に変形しやすい。吸収体5が変形することにより、上層開孔部13、下層溝部14、吸収体凹部15および通液部16が潰れてしまう。特に、上層開孔部13が上層吸収体11の幅方向中央に設けられ、下層溝部14が下層吸収体12の幅方向中央に設けられた構成では、上層開孔部13、下層溝部14、吸収体凹部15および通液部16が潰れやすくなってしまう。
【0048】
そこで、吸収体5は、中央部7における幅方向の長さが、前側部6および後側部8における幅方向の長さより短く形成されたことにより、使い捨て吸収性物品1を装着した際に、中央部7において、吸収体5が装着者の脚周りに適応しやすく、吸収体5が幅方向内側への力を受けにくいので、吸収体5が変形しにくい。したがって、装着状態において、上層開孔部13、下層溝部14、吸収体凹部15および通液部16が潰れることを防止でき、装着した際の拡散性の低下を防止できる。
【0049】
特に、中央部7において、吸収体5が幅方向内側へ円弧凹状に形成されることにより、吸収体5が装着者の脚周りに適応しやすく、装着状態にて吸収体5を変形しにくくできる。
【0050】
なお、中央部7における吸収体5の幅方向の長さだけを短くすることにより、前側部6および後側部8における吸収体5の面積は大きく確保できるので、吸収体5の面積の縮小を最低限に抑えることができ、吸収体5の吸収力を充分に確保できる。
【0051】
上層開孔部13は、幅方向の長さが下層溝部14の幅方向の長さより長く形成されることにより、装着者から排泄された排泄液が上層開孔部13に流入しやすいので、吸収体5は、上層開孔部13、下層溝部14、吸収体凹部15および通液部16にて、より確実に排泄液を拡散できる。
【0052】
また、下層溝部14の幅方向の長さを短くすることにより、排泄液が通液部16にて後側部8の奥側まで移動しやすく、排泄液をより確実に拡散できる。
【0053】
下層溝部14は、下層吸収体12の長手方向の両端部より内側に位置しているので、通液部16を通って拡散する排泄液が、下層吸収体12の長手方向の端部から流出して吸収性物品本体2から漏出することを防止できる。
【0054】
なお、上記第1の実施の形態では、使い捨て吸収性物品1は、パンツ型の吸収性物品の内面側に配設して使用するものとしたが、このような構成には限定されず、パンツ型のものにも上記の構成を適用できる。
【0055】
また、吸収性物品本体2は、前側部6、中央部7および後側部8を有する構成としたが、このような構成には限定されず、前側部6、中央部7および後側部8が特に設定されてない構成にしてもよい。
【0056】
吸収体5は、中央部7における幅方向の長さが、前側部6および後側部8における幅方向の長さより短い構成としたが、このような構成には限定されず、前側部6、中央部7および後側部8における吸収体5の幅方向の長さは適宜設定できる。また、中央部7における吸収体5の幅方向の長さが、前側部6および後側部8における幅方向の長さより短い構成にする場合は、吸収体5の形状は、砂時計形状には限定されず、適宜設計できる。さらに、上層吸収体11および下層吸収体12の形状や大きさが異なる構成には限定されず、上層吸収体11および下層吸収体12の形状や大きさは適宜設定でき、例えば上層吸収体11および下層吸収体12が同形状の構成にしてもよい。
【0057】
吸収体5は、上層開孔部13と下層溝部14とが一部のみ重なった構成には限定されず、上層開孔部13と下層溝部14とが少なくとも一部が重なった構成であればよい。
【0058】
上層開孔部13は、上層吸収体11の幅方向中央に位置する構成には限定されず、また、前側部6から中央部7にわたって設けられた構成には限定されず、上層開孔部13を設ける位置は適宜設定できる。
【0059】
また、上層開孔部13は、平面視略矩形状の形状には限定されず、例えば、前側部6側から中央部7側へ向かって幅方向の長さが順次短く形成された構成などに適宜形成できる。
【0060】
さらに、上層開孔部13の幅方向の長さが下層溝部14の幅方向の長さより長い構成には限定されず、上層開孔部13および下層溝部14の大きさは適宜設定できる。
【0061】
下層溝部14は、中央部7から後側部8にわたって設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、下層溝部14を設ける位置は適宜設定でき、例えば、下層溝部14が前側部6から後側部8にわたって設けられた構成にしてもよい。このような構成にすることにより、排泄液が上層開孔部13から下層溝部14へと流入しやすく、排泄液が通液部16へ拡散しやすい。
【0062】
また、下層溝部14は、下層吸収体12の長手方向の両端部より内側に設けられた構成には限定されず、例えば、下層溝部14の長手方向の端部が後側部8における下層吸収体12の長手方向の端部まで設けられた構成にしてよい。
【0063】
吸収性物品本体2は、表面シート3と裏面シート4との間に吸収体5が設けられていればよく、上記第1の実施の形態において、例えば図4(a)および(b)に示す第2の実施の形態のように、表面シート3が、上層吸収体11および下層吸収体12の凹凸に対応するように配設された構成、すなわち、表面シート3が上層開孔部13および下層溝部14の内部に沿って吸収体5の断面方向に凹むように配設された構成にしてもよい。
【0064】
このように、表面シート3が上層開孔部13および下層溝部14の凹凸に対応して配設されることにより、吸収性物品本体2における吸収体5の位置ずれを防止できる。
【0065】
なお、図4(a)は、第1の実施の形態における図1のA−A断面に相等する部分であり、図4(b)は、第1の実施の形態における図1のB−B断面に相等する部分である。
【0066】
また、吸収体5は、図5(a),(b)および図6(a),(b)に示す第3の実施の形態のように、上層クレープ紙21や下層クレープ紙22を設けた構成にしてもよい。
【0067】
図5(a),(b)に示す構成では、表面シート3と上層吸収体11との間に上層クレープ紙22が設けられ、上層吸収体11と下層吸収体12との間に下層クレープ紙22が設けられている。このように上層クレープ紙21を設ける場合は、図5(a)に示すように、上層開孔部13の表面シート3側である上部に上層クレープ紙21が設けられていない構成、および図5(b)に示すように、上層開孔部13の上部にも上層クレープ紙21が設けられた構成のいずれでもよい。
【0068】
また、図6(a),(b)に示す構成では、上層吸収体11と下層吸収体12との間に下層クレープ紙22が設けられている。このように下層クレープ紙22を設ける場合は、図6(a)に示すように、下層溝部14の上層吸収体11側である上部に下層クレープ紙22が設けられていない構成、および図6(b)に示すように、下層溝部14の上部にも下層クレープ紙22が設けられた構成のいずれでもよい。
【0069】
このように、上層クレープ紙21や下層クレープ紙22が設けられたことにより、上層吸収体11および下層吸収体12の保形性を向上できる。
【0070】
下層吸収体12は、下層溝部14が下層吸収体12を断面方向に貫通して形成された構成には限定されず、図7に示す第4の実施の形態のように、下層溝部14が、下層吸収体12を貫通せず、断面方向に凹状に形成された構成にしてもよい。
【0071】
また、下層吸収体12は、下層溝部14が1つのみ設けられた構成には限定されず、図8(a)ないし(c)に示す第5の実施の形態のように、複数の下層溝部14が設けられた構成にしてもよい。
【0072】
図8(a)に示す構成では、各下層溝部14の幅方向の長さが上層開孔部13より短く形成され、一部が上層開孔部13に重なった複数の下層溝部14が平行に設けられており、両側に位置する下層溝部14の幅方向の外側の端部は、それぞれ上層開孔部13より幅方向外側に位置している。
【0073】
図8(b)に示す構成では、一部が上層開孔部13に重なるように下層吸収体12の長手方向に沿って設けられた1つの下層溝部14の一部を基端に、下層吸収体12の幅方向両側へ向かって略ハ字状に設けられた対をなす下層溝部14が、下層吸収体12の長手方向へ向かって複数対並列して設けられている。
【0074】
図8(c)に示す構成では、上層開孔部13に重なるように下層吸収体12の長手方向に沿って設けられた1つの下層溝部14の後側部8側の端部を基端に、複数の下層溝部14が下層吸収体12の幅方向外側へ向かって略扇状に設けられている。
【0075】
これら図8(a)ないし(c)に示した構成では、複数の下層溝部14が設けられたことにより、下層吸収体12における排泄液の拡散性をより向上でき、下層吸収体12によって、より確実に排泄液を吸収できる。なお、複数の下層溝部14が設けられた構成の場合では、各下層溝部14は、下層吸収体12の幅方向両側縁部より内側に位置している。
【0076】
次に、第6の実施の形態を図9および図10を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図9および図10に示すように、この第6の実施の形態では、吸収体5の上層吸収体11と下層吸収体12との間に通液部16を覆う液透過性の上下層分離シート24が配設されている。
【0078】
上下層分離シート24は、上層吸収体11より幅方向の長さが短い略矩形状の液透過性シートであり、吸収体5の長手方向の両端部にわたって設けられている。
【0079】
このように、通液部16を覆う液透過性の上下層分離シート24が設けられたことにより、上層開孔部13と下層溝部14とを上下層分離シート24にて分離できる。したがって、装着状態などにて、吸収体5に力が加わり、下層溝部14が上層開孔部13側へ圧迫された際に、上層開孔部13に下層溝部14が入り込み、吸収体凹部15および通液部16が潰されることを防止できる。また、上下層分離シート24は、液透過性シートであるので、この上下層分離シート24によって、吸収体凹部15における上層開孔部13から下層溝部14への排泄液の流入が妨げられない。
【0080】
上下層分離シート24は、上層開孔部13と下層溝部14との分離性および排泄液の透過性を考慮すると、嵩高な不織布であることが好ましいが、吸収体凹部15および通液部16が潰れるの防止でき、かつ排泄液を透過できる液透過性シートであれば、その素材や構成は適宜設定できる。
【0081】
また、上下層分離シート24は、少なくとも通液部16を覆っていれば、配設範囲は適宜設定でき、例えば吸収体5の全長或いは全幅にわたって配設されている必要はない。
【0082】
なお、上記第6の実施の形態において、図11に示す第7の実施の形態のように、クレープ紙が配設された構成の場合にも上下層分離シート24を配設できる。
【0083】
具体的には、表面シート3と上層吸収体11との間に第1上層クレープ紙26が配設され、この第1上層クレープ紙26の下層吸収体12側に上下層分離シート24が配設され、この上下層分離シート24と下層吸収体12との間に下層クレープ紙28が配設されている。
【0084】
このように、第1上層クレープ紙26、第2上層クレープ紙27、上下層分離シート24および下層クレープ紙28が配設されることにより、吸収体5の保形性および上層開孔部13と下層溝部14との分離性を向上でき、かつ、排泄液の拡散性を向上できる。
【符号の説明】
【0085】
1 使い捨て吸収性物品
2 吸収性物品本体
3 表面シート
4 裏面シート
5 吸収体
6 前側部
7 中央部
8 後側部
11 上層吸収体
12 下層吸収体
13 上層開孔部
14 下層溝部
15 吸収体凹部
16 通液部
24 上下層分離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に位置する表面シートと、裏面側に位置する裏面シートと、これら表面シートと裏面シートとの間に位置する吸収体とを有する吸収性物品本体を具備し、
前記吸収体は、
前記表面シート側に位置し、上層開孔部が設けられた上層吸収体と、
前記裏面シート側に位置し、前記上層開孔部に少なくとも一部が重なった下層溝部が設けられた下層吸収体と有し、
前記上層開孔部と前記下層溝部とが重なって吸収体凹部が形成され、
前記上層吸収体の前記上層開孔部以外の部分と前記下層溝部とが重なって通液部が形成された
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
吸収性物品本体は、装着者の前側に配置される前側部と、装着者の股下に配置される中央部と、装着者の後側に配置される後側部とを長手方向に沿って順次備え、
吸収体は、中央部における幅方向の長さが、前側部および後側部における幅方向の長さより短く形成され、
上層開孔部は、上層吸収体の幅方向中央に位置し、前記上層吸収体の長手方向に沿って少なくとも前記前側部から前記中央部にわたって設けられ、
下層溝部は、下層吸収体の幅方向中央に位置し、前記下層吸収体の長手方向に沿って少なくとも前記中央部から前記後側部にわたって設けられ、
吸収体凹部は、少なくとも前記中央部に形成され、
通液部は、少なくとも前記中央部から前記後側部にわたって形成された
ことを特徴とする請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
上層開孔部は、幅方向の長さが下層溝部の幅方向の長さより長く形成され、
下層溝部は、下層吸収体の長手方向の両端部より内側に位置している
ことを特徴とする請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
吸収体は、上層吸収体と下層吸収体との間に通液部を覆う液透過性の上下層分離シートが設けられた
ことを特徴とした請求項1ないし3のいずれか記載の使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−125537(P2011−125537A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287813(P2009−287813)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(391047503)白十字株式会社 (64)
【Fターム(参考)】