説明

使い捨て着用物品

【課題】比較的に腕力の低い高齢者であっても容易にウエスト開口を横方向へ引っ張ってウエスト開口を所要の大きさに拡げることができ、また、その着用中において、ウエスト域がずり下がったりするおそれのない、比較的に肌当たりの良い着用物品。
【解決手段】ウエスト弾性要素36は、約2.5〜3.0倍に前記横方向Xへ伸長された、太さが約850〜1000dtexのストランド状又はストリング状の弾性部材から形成されており、横方向Xにおいて互いに隣り合うウエスト弾性要素36どうしの縦方向Yにおける離間寸法は約5.5〜6.0mmである。ウエスト弾性要素36が配設されたウエスト伸縮域38は、横方向Xにおける255%伸長時の伸長応力が約4.5〜6.0N/35mmであって、横方向Xにおける167%伸長時の伸長応力が少なくとも約1.7〜2.1N/35mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、前後ウエスト域において、ウエスト回り方向に延びる複数のウエスト弾性要素が配設されている大人用の使い捨て着用物品、使い捨ておむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁パンツなどの使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域においてウエスト回り方向に延びる複数条のウエスト弾性要素が配設された使い捨て着用物品は公知である。たとえば、特許文献1には、着用物品の外形を形成するシャーシの前後ウエスト域において、シャーシの縦方向において互いに所与寸法離間し、かつ、横方向へ延びる複数条のウエスト弾性要素が配設された使い捨て着用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−290279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された使い捨て着用物品は、前後ウエスト域のウエスト周りの長さ寸法が、前後ウエスト域の縦方向の長さ寸法の複数倍の大きさを有する。したがって、着用時において、着用者の胴回りに対して、ウエスト開口縁部を比較的に大きく拡げることができ、着用者の身体に対する着用操作が容易となる。また、前後ウエスト域の一部においてウエスト弾性要素を密に配設することによって、フィット性を高めて、着用中における着用者の身体からのずり下がりを防止している。
【0005】
しかし、ウエスト回りの長さ寸法を比較的に大きくした場合には、そのずり下がりを防止するために、ウエスト開口縁部に比較的に高い伸長力を有するウエスト弾性要素を配設しなければならない。その場合には、この種の着用物品においては、所定幅を有する平ゴムが好適に使用されるが、所要の伸長応力を有する平ゴムが面状に着用者の胴回りに当接して強く締め付け、着用者の肌にゴム痕がついたり着用感を損ねるおそれがある。また、着用者が高齢者の場合には、その収縮力に抗してウエスト開口縁部を横方向へ引っ張ってウエスト開口を十分に拡げることができず、着用に手間取るおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、従来の使い捨て着用物品の改良であって、比較的に腕力の低い高齢者であっても容易にウエスト開口縁部を横方向へ引っ張ってウエスト開口を所要の大きさに拡げることができ、また、その着用中において、ウエスト域がずり下がったりするおそれはなく、比較的に肌当たりの良い使い捨て着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、縦方向及びそれに直交する横方向を有し、肌対向面及びその反対側の非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシと、前記シャーシの前記肌対向面側に配置され、前記クロッチ域を中心として前記前後ウエスト域に延びる吸液性構造体とを含む使い捨て着用物品である。
【0008】
本発明の特徴とするところは、前記シャーシは、前記肌対向面側に位置する内面シートと、前記非肌対向面側に位置する外面シートとを有し、前記内外面シート間には、前記シャーシのウエスト開口縁部に沿って前記横方向へ延びる複数条のウエスト弾性要素が配設されており、前記ウエスト弾性要素は、約2.5〜3.0倍に前記横方向へ伸長された、太さが約800〜1000dtexのストランド状又はストリング状の弾性材料から形成されており、前記横方向において互いに隣り合う前記ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法は約5.5〜6.0mmであって、前記ウエスト弾性要素が配設されたウエスト伸縮域は、前記横方向における255%伸長時の伸長応力が約4.5〜6.0N/35mmであって、前記横方向における167%伸長時の伸長応力が約1.7〜2.1N/35mmであることにある。
【0009】
本発明の実施態様の一つにおいては、前記内面シートは、質量約10〜25g/mのSMS繊維不織布から形成されており、前記外面シートは、質量約15〜25g/mのスパンボンド不織布から形成されており、前記ウエスト弾性要素は、その全周縁又は一部に塗布されたホットメルト接着剤を介して前記内外面シート間に取り付けられている。
【0010】
本発明の他の実施態様の一つにおいては、前記ウエスト弾性要素は、前記ウエスト開口縁部に沿って前記横方向へ延びる第1ウエスト弾性要素と、前記第1ウエスト弾性要素の下方に位置する第2ウエスト弾性要素とを有し、前記第2ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法は、前記第1ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法よりも大きく、前記第1ウエスト弾性要素が配設されて形成された第1ウエスト伸縮域の伸長応力が、前記第2ウエスト弾性要素が配設されて形成された第2ウエスト伸縮域の伸長応力よりも高くなっている。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいては、前記外面シートは、前記内面シートの前後端縁よりも前記縦方向の外方へ延びる延出部位を有しており、内面シートの前記前後端縁に沿って前記延出部位を内方へ向かって折曲し、前記内面シートの前記肌対向面側に位置する前後フラップ接合域を介して前記延出部位と前記内面シートとを互いに接合することによって、前後フラップ部が形成されている。
【0012】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいては、前記前後フラップ接合域は、前記縦方向の外方へ向かって凹となる形状を有しており、前記前後フラップ接合域の両側部間において前記横方向へ延びる非接合部位と重なる領域に、前記ウエスト弾性要素の中央部が位置する。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいては、前記クロッチ域のレッグ開口縁部には、前記前ウエスト域側において内方へ凸曲する前レッグ弾性要素と前記後ウエスト域側において内方へ凸曲する後レッグ弾性要素とが配置されており、前記前後レッグ弾性要素が平ゴムから形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る使い捨て着用物品では、ストランド状のウエスト弾性要素(第1ウエスト弾性要素)が配設されたウエスト伸縮域(第1ウエスト伸縮域)は、前記横方向における255%伸長時の伸長応力が約4.5〜6.0N/35mmであるから、比較的に腕力の小さい高齢者が自分自身で着用操作をするときであっても、ウエスト開口を容易に拡げることができ、スムーズに着用することができる。また、ウエスト伸縮域の前記横方向における167%伸長時の伸長応力が約1.5〜1.7N/35mmであるから、着用中に着用物品のウエスト域がずれ下がって、排泄物が横漏れしたりするおそれはない。さらに、ウエスト弾性要素として平ゴムなどの帯状の弾性材料を使用した場合に比して、圧接面積が小さく、着用者の腹部を必要以上に圧迫せず、柔らかな肌当たりを有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつの斜視図。
【図2】おむつのサイドシーム部を剥離して前後方向へ伸展した状態をその内面から見た一部破断展開平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】シャーシから内面シートを取り除いた状態における、外面シートの前ウエスト域に位置する部分の拡大平面図。
【図5】各接合域の接着パターンを示す、外面シートの内面側の平面図。
【図6】前後フラップ部を展開して、前後フラップ接合域の接合パターンを示す、シャーシの平面図。
【図7】他の実施例における図2と同様の一部展開平面図。
【図8】各おむつから取り出した試料の伸長応力の測定時の様子を示す図。
【図9】試料の伸長応力の測定結果を示すグラフの図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜3に示すとおり、使い捨ておむつ10は、縦軸P及びそれに直交する横軸Q、縦軸Pに平行な縦方向Yと横軸Qに平行な横方向Xと、肌対向面及び非肌対向面を有し、おむつ10の外形を形成するシャーシ11と、シャーシ11の肌対向面側に位置する吸液性構造体12とを含む。
【0017】
シャーシ11は、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、前後ウエスト域13,14間に位置するクロッチ域15と、互いに縦方向Yにおいて対向し、横方向Xへ延びる前後端縁16,17と、互いに横方向Xにおいて対向して縦方向Yへ延びる両側縁18,19とを有する。両側縁18,19は、互いに横方向Xにおいて対向して縦方向Yへ延びる一対の前後側縁20,21と、前後側縁20,21間において着用者の大腿部に沿ってフィットするように凹曲状に延びるクロッチ側縁23とを有する。また、互いに対向する前後側縁20,21どうしは、縦方向Yへ間欠的に延びるサイドシーム部24によって連結されており、ウエスト開口25及び一対のレッグ開口26が形成される(図1参照)。
【0018】
シャーシ11は、透湿性を有する繊維不織布等で形成された、肌対向面側に位置する内面シート30と、内面シート30よりも縦方向Yの長さ寸法の大きい、非肌対向面側に位置する外面シート31とを含む。外面シート31は、内面シート30の前後端縁から縦方向Yの外方へ延出しており、該延出部31aが、内面シート30の前後端縁に沿って横方向Xへ延びる前後折曲ライン32a,32b(前後ウエスト域の前後端縁)からその内方へ折り返されることによって、前後フラップ部33,34が形成される。
【0019】
おむつ10の具体的な寸法について言えば、高齢者を対象とするMサイズの大人用のパンツ型使い捨ておむつの場合、おむつ10の前後端縁16,17間における縦方向の長さ寸法は、約750〜850mm、さらに具体的には、約780mmである。また、両前側縁20間及び両後側縁21間の横方向Xの長さ寸法は、約450〜750mm、さらに具体的には、約550mmである。なお、これらの寸法は、後記の各ウエスト弾性要素をその収縮力に抗して伸長させた状態で測定したものである。
【0020】
内外面シート30,31は、不透液性を有する各種の繊維不織布、例えば、質量約10〜40g/m、好ましくは、10〜20g/mの範囲にある、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、SMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンバンド)不織布、不透液性のプラスチックフィルム、それらのラミネートなどから形成することができる。
【0021】
内外面シート30,31の間には、前後ウエスト域13,14の前後端縁16,17に沿って横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の第1ウエスト弾性要素36が配設されている。また、第1ウエスト弾性要素36とクロッチ側縁23との間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の第2ウエスト弾性要素37が配設されている。第1及び第2ウエスト弾性要素36,37は、内外面シート30,31のうちの少なくとも一方の内面に塗布された後記のホットメルト接着剤を介して横方向Xに収縮可能に取り付けられる。第1及び第2ウエスト弾性要素36,37が配設されていることによって、シャーシ11の前後ウエスト域13,14は少なくとも横方向Xにおいて弾性化されており、第1ウエスト弾性要素36が配設された領域には第1ウエスト伸縮域38、第2ウエスト弾性要素37が配設された領域には、第2ウエスト伸縮域39が形成されている。このように、第2ウエスト伸縮域39のみならず、ウエスト開口縁部に位置する第1ウエスト伸縮域38においても、ストランド状またはストリング状の弾性要素が配設されて弾性伸縮性が付与されているので、かかる領域に平ゴムなどの帯状の弾性材料を配設する場合に比して、ゴムによる圧接面積が小さく、かつ、ゴムを固定するための接着剤の接合面積が小さくなるので、肌当たりが良く柔軟である。特に、着用者が高齢者の場合には、ゴムによる締め付け跡が付き易いので、ウエスト開口縁部がかかる肌当たりの良さ、柔軟性を有することが好ましい。
【0022】
また、内外面シート30,31の間には、前ウエスト域13から横軸Qに向かって凸曲状に延びる前レッグ弾性要素40Aと、後ウエスト域15から横軸Qに向かって、かつ、それよりもさらに前方へ凸曲状に延びる後レッグ弾性要素40Bとが配設されている。前後レッグ弾性要素40A,40Bは、横軸Qよりも前ウエスト域13側において互いに交差しており、内外面シート30,31のうちの少なくとも一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して横方向Xへ収縮可能に取り付けられている。
【0023】
前後レッグ弾性要素40A,40Bは、複数条の弾性糸や平ゴムなどによって形成することができ、例えば、太さ約700〜850dtex、伸長倍率約1.5〜2.5倍の弾性糸(弾性糸)によって形成することができる。前後レッグ弾性要素40A,40Bがクロッチ側縁23に沿って配設されていることによってレッグ開口縁部が弾性化されて着用者の鼠径部にフィットし、レッグ開口26からの排泄物の漏れを防止することができる。特に、前後レッグ弾性要素40A,40Bの交差部位がクロッチ域15の前ウエスト域13側に位置しているので、尿の横漏れを効果的に防止することができる。
【0024】
吸液性構造体12は、前後端縁12a,12bとそれらに直交する両側縁12c,12dとによって画成された、クロッチ域15を中心として前後ウエスト域13,14に延びる略長方形状であって、肌対向面側に位置する透液性のトップシート41と、吸液性コア42をティッシュペーパ等から形成された液拡散性シート43で被覆することによって形成された吸液性芯材44と、吸液性芯材44の下面全体を覆う防漏シート45とを含む。トップシート41の肌対向面には、縦方向Yへ延びる一対のバリアシート46が取り付けられている。
【0025】
トップシート41は、例えば、透液性を有する各種の繊維不織布、例えば、質量約16〜26g/mのエアスルー繊維不織布、多孔プラスチックフィルム、それらのラミネートシート等から形成することができる。
【0026】
吸液性コア42は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子(SAP)、オプションとして熱可塑性樹脂を混合したものを所要の形状に賦型したものであって、その単位面積当たりの質量は、約400〜900g/mである。吸液性芯材44には、縦方向Yへ延びる、互いに所与寸法離間する前後条溝48,49が形成されている。前後条溝48,49が形成されることによって、吸液性コア42の型崩れが防止されるとともに、吸液性構造体12が前後条溝48,49に沿って曲がり易くなり、着用者の身体に対するフィット性が向上する。
【0027】
防漏シート45は、例えば、透湿性および防漏性を有するプラスチックフィルム、疎水性不織布、それらのラミネート等から形成することができ、例えば、不織布としては、質量が10〜30g/mのSMS繊維不織布やスパンボンド繊維不織布等から形成することができる。また、防漏シート45をプラスチックフィルムで形成した場合には、質量が約15〜23g/mであって、その引張強度(JIS K−7127に準拠して測定)が、縦方向Yにおける引張強度約8〜14N/25mm、横方向Xにおける引張強度約1〜5.5N/25mmのものを使用することができる。また、おむつ10内の蒸れを防止するために、防漏シート45の透湿度は、約2200〜3800g/m・24hrsであることが好ましい。
【0028】
防漏シート45は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤から形成された縦方向Yへ延びる複数条の接合ライン51によって吸液性芯材44の下面と接合されている。また、防漏シート45は、内面シート30の肌対向面にホットメルト接着剤を塗布して形成されたインナー接合域52を介して接合されている。具体的には、インナー接合域52は、前後ウエスト域13,14の前後端縁16,17側において横方向Xに延びる前後接合域52a,52bと、前後前後接合域52a,52b間においてクロッチ域15を中心として縦方向Yに延びる中央接合域52cとを有する。このように、防漏シート45の上面は、接合ライン51を介して吸液性芯材44の非肌対向面に部分的に接合されており、かつ、接合域52を介して内面シート30の肌対向面に部分的に接合されており、上下面全体がそれに対向するシートなどと接合されているものではないので、透湿性に優れ、おむつ10内の蒸れを効果的に防止することができる。
【0029】
バリアシート46は、質量が約10〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、若しくは、ポリエチレン製のプラスチックシート、又はそれらのラミネートシートから形成することができる。また、バリアシート46では、1つのシートを内方へ折り返して形成された又は複数のシートを積層することによって形成されたスリーブ54内に縦方向Yへ延びるストランド状又はストリング状のカフ弾性要素55が配設されている。かかるスリーブ54は、おむつ10の着用中において、カフ弾性要素55の収縮作用によってトップシート41から離間してバリア又はガスケットカフを形成し、排泄物の横漏れを防止することができる。
【0030】
図2に示すとおり、吸液性構造体12の前後端縁12a,12bは、シャーシ11の前後フラップ部33,34に被覆されている。かかる構成を有することによって、吸液性構造体12の前後端縁12a,12bから滲出した体液が外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0031】
図4は、シャーシ11から内面シート30を取り除いた状態における、第1及び第2ウエスト弾性要素36,37の配置パターンを示す外面シート31の前ウエスト域13に位置する部分の拡大平面図、図5は、クロッチ接合域の接着パターンを示す、外面シート31の内面側の平面図、図6は、前後フラップ部33,4を展開した状態における、シャーシ11の平面図である。図4では、吸液性構造体12および前フラップ部33を仮想線で示している。
【0032】
既述のとおり、シャーシ11を形成する内外面シート30,31間には第1及び第2ウエスト弾性要素36,37が配設され、第1及び第2ウエスト伸縮域38,39が形成されている。第1ウエスト弾性要素36は、複数の弾性糸で形成することができ、各弾性糸は太さ約800〜1000dtex,伸長倍率約2.5〜3.0倍、縦方向Yにおける離間寸法(ピッチ)は、約5.5〜6.0mmとされている。なお、ここでいう、「離間寸法(ピッチ)」とは、隣接する第1ウエスト弾性要素36の中心点間どうしの縦方向Yにおける離間寸法を意味し、本明細書の以降において用いる「ピッチ」も同様の意味を有する。
【0033】
また、第2ウエスト弾性要素37も第1ウエスト弾性要素36と同様に、複数の弾性糸(弾性材料)で形成することができ、各弾性糸は、太さ約700〜1000dtex,伸長倍率約1.8〜3.0倍、縦方向Yにおける離間寸法は、約10.0mmとされている。また、第1ウエスト弾性要素36と第2ウエスト弾性要素37との縦方向Yにおける離間寸法Rは、約8.0〜15.0mm、好ましくは、約10.0〜12.0mmである。
【0034】
第1ウエスト弾性要素36についてさらに詳細を述べると、第1ウエスト弾性要素36には、東レ・オペロンテックス社製のライクラ940DTEXを使用することができる。この弾性糸1本の伸長応力(後記のインストロン ジャパン カンパニーリミテッド社製の引張試験機により測定)は、非伸長状態(100%)から255%伸長時において約0.3〜0.6N、より具体的には、約0.45〜0.55Nであって、255%よりもさらに伸長させた後の収縮時における、255%伸長時の伸長応力は、0.2〜0.4N、より具体的には、0.3〜0.36Nである。
【0035】
第1及び第2ウエスト弾性要素36,37は、その一部またはほぼ全周縁に塗布されたホットメルト接着剤を介して内外面シート30,31に取り付けられている。図5に示すとおり、第1及び第2ウエスト弾性要素35,36が配設された第1及び第2ウエスト伸縮域38,39においては、内外面シート30,31を接合するためのホットメルト接着剤は塗布されておらず、内外面シート30,31は第1及び第2ウエスト弾性要素36,37に塗布されたホットメルト接着剤を介して互いに接合されている。
【0036】
第1及び第2ウエスト弾性要素36,37は、使用されている弾性部材が同じであって、内外面シート30,31に対する接着手段も同様であり、前記のとおり、隣り合う第2ウエスト弾性要素37どうしの縦方向Yの離間寸法は、隣り合う第1ウエスト弾性要素36どうしの縦方向Yの離間寸法よりも大きいので、第2ウエスト伸縮域39の伸長応力は、第1ウエスト伸縮域38のそれよりも低いといえる。
【0037】
一方、第1及び第2ウエスト弾性要素36,37が配設されていない領域、すなわち、クロッチ域14を中心として前ウエスト域13の下端縁と後ウエスト域15の下端縁とまでに延びる領域では、横方向Xに並列された複数条の接合ライン60によって形成されたクロッチ接合域61を介して内外面シート30,31は互いに接合されている。クロッチ接合域61を形成する接合ライン60は、横方向Xへ延びるスパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤から形成されており、質量約2.0〜10.0g/mであって、隣り合う接合ライン60どうしの縦方向Yにおける離間寸法(ピッチ)は、約3.5〜4.5mmである。
【0038】
また、第1ウエスト弾性要素36の両端部36a,36bには、その上面からスパイラル状の塗布パターンを有するホットメルト接着剤から形成されたサイド接合域63が形成されている。サイド接合域63が形成されていることによって、第1ウエスト弾性要素36の両端部36a,36bは外面シート31に安定的に固定され、製造工程中においてそれが外面シート31から外れたり、抜け出たりするおそれはない。
【0039】
図6に示すとおり、内面シート30の前ウエスト域13側の非肌対向面には、縦方向Yの外方へ向かって凹となる前フラップ接合域65が形成されており、その後ウエスト域14側には、前フラップ接合域65と同様に、縦方向Yの外方へ向かって凹となる後フラップ接合域66が形成されている。前後フラップ接合域65,66は、それぞれ、質量約3.0〜6.0g/mであって、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤から形成された、横方向Xへ延びる複数条の接合ライン68によって形成されている。内面シート30の前後端縁から縦方向Yの外方へ延びる外面シートの延出部31aを内方へ折り返して、前後フラップ接合域65,66を介して内面シート30と接合することによって、前後フラップ部33,34が形成される。
【0040】
また、前後フラップ接合域65,66の両端部65a,65b,66a,66b間に延びるホットメルト接着剤が塗布されていない非接合部位70には、第1ウエスト弾性要素36の中央部36cが位置している。このように、前後フラップ接合域65,66の非接合域70と対応する位置に第1ウエスト弾性要素36の中央部36cが配設されていることによって、第1ウエスト弾性要素35の伸縮作用が阻害されることはなく、後記の所要の伸長応力を十分に発揮することができる。
【0041】
図7を参照すると、本実施例においては、前後レッグ弾性要素40A,40Bが複数条の平ゴムによって形成されており、例えば、幅寸法約1.2〜1.8mm、厚さ寸法0.2〜0.4mm、伸長倍率1.0〜2.5倍の平ゴムを用いることができる。前後レッグ弾性要素40A,40Bの本数は同数または異なるものであってもよいが、同数の場合には、クロッチ域14全体を着用者の身体に沿ってフィットさせ、かつ、着用者の大腿部の動きを阻害しないようにするために、後レッグ弾性要素40Bの伸長倍率が前レッグ弾性要素40Aの伸長倍率よりも高いことが好ましい。この場合には、例えば、前レッグ弾性要素40Aの伸長倍率を約1.6〜1.8倍、後レッグ弾性要素40Bの伸長倍率を約2.0〜2.2倍にすることができる。本実施形態のように、前後レッグ弾性要素40A,40Bが平ゴムから形成されている場合には、それらが着用者の大腿部に面状にフィットするので、比較的に高い伸長応力を有する場合であっても大腿部にゴム痕等を付することなく確実に排泄物の漏れを防止することができる。したがって、第1及び第2ウエスト伸縮域38,39においてストランド状又はストリング状の第1及び第2ウエスト弾性要素36,37を使用して肌当たりを良好にする一方、レッグ開口縁部には平ゴムからなる前後レッグ弾性要素40A,40Bを使用することによって肌を圧迫することなく排泄物の漏れを防止できる。
【0042】
<第1ウエスト伸縮域38の伸長応力の測定>
下記の表1は、本発明に係る使い捨ておむつ10の第1ウエスト伸縮域(おむつのウエスト開口縁部)38、従来品のおむつにおけるそれに相当する領域を所要の長さに伸長した場合における伸長応力を測定した結果を示したものである。
【0043】
【表1】

【0044】
本測定に用いた実施例1及び実施例2、比較例1〜4の使い捨ておむつの構成は、以下のとおりである。なお、実施例1及び2は、本発明に係るおむつ10の基本構成を有するものであって、比較例1〜4の使い捨ておむつは、本発明のおむつ10と同様に、吸液性構造体とシャーシとから構成されたパンツ型のものである。
【0045】
<実施例1>
シャーシ11を構成する外面シート31として質量約17g/mのスパンボンド不織布、内面シート30として質量約15g/mのSMS不織布、第1ウエスト弾性要素36として、東レ・オペロンテックス社製のライクラ940DTEXの弾性糸を5本、ピッチを約6.0mmとして、それらを横方向Xへ約3.0倍に伸長させた状態で両シート30,31間に取り付けたものを使用する。
<実施例2>
第1ウエスト弾性要素36以外の構成は、実施例1とすべて同じであって、第1ウエスト弾性要素36として、東レ・オペロンテックス社製のライクラ940DTEXの弾性糸を6本、ピッチを約6.0mm、横方向Xへ約2.7倍に伸長させた状態で両シート30,31間に取り付けたものを使用する。
【0046】
<比較例1>
外面シート:質量約17g/mのスパンボンド不織布、内面シート:質量約15g/mのSMS不織布、第1ウエスト弾性要素35に相当するウエスト弾性要素:約1.6mmの幅寸法を有するサハユニオン社製JPW−WG−AWの平ゴムを5本、ピッチを約6.0mm、おむつの横方向への伸長倍率を約3.0倍としたものを使用する。
<比較例2>
外面シート:質量約17g/mのエアスル―不織布、内面シート:質量約20g/mのスパンボンド不織布、第1ウエスト弾性要素35に相当するウエスト弾性要素:約2.5mmの幅寸法を有する天然ゴム製の平ゴムを6本、ピッチを約5.0mm、おむつの横方向へ伸長倍率を約3.0倍としたものを使用する。
<比較例3>
外面シート:質量約24g/mのエアスルー不織布、内面シート:質量約21g/mのスパンボンド不織布、第1ウエスト弾性要素35に相当するウエスト弾性要素:約0.1mmの幅寸法を有する天然ゴム製の平ゴムを8本、ピッチを約3.0mm、おむつの横方向への伸長倍率を約2.8倍としたものを使用する。
<比較例4>
外面シート:質量約17g/mのスパンボンド不織布、内面シート:質量約15g/mのSMS不織布、第1ウエスト弾性要素35に相当するウエスト弾性要素:東レ・オペロンテックス社製のライクラ940DTEXの弾性糸を5本、ピッチを約6.0mm、横方向Xへの伸長倍率を約2.5倍としたものを使用する。
【0047】
なお、実施例1及び2において、下記の伸長応力の測定結果を得るために、内面シート30は、質量約10〜25g/mのSMS繊維不織布、外面シート31は、質量約15〜25g/mのスパンボンド不織布から形成されていればよい。また、比較例1〜3のおむつのウエスト弾性要素は、実施例1及び2の第1ウエスト弾性要素36と異なり、その全域にコーター状、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤を介して内外面シート間に固定されている。
【0048】
<伸長応力の測定方法>
図8に示すとおり、各おむつのウエスト開口縁部(実施例1及び2の場合には、第1ウエスト伸縮域38)の伸長応力は、インストロン ジャパン カンパニーリミテッド社製の引張試験機80(INSTRON 型式:5564)を用いて、以下の方法で測定する。なお、引張試験機80において、予め、上下チェックの掴み部品を取り外し、細棒状の上下固定式治具81,82を取り付け、上下固定式治具81,82間の離間距離Lをおむつの平常時の横方向Xの長さ寸法と同じ大きさに設定する。また、引張試験機80は、測定開始30分前に電源スイッチを入れ、サイクルモード(2サイクル)、引張スピード300mm/minの条件下において測定する。
【0049】
まず、実施例1及び2、比較例1〜4の各サンプルとして、通常のMサイズの大きさのおむつ(非伸長時のウエスト回りの長さ寸法:約360mm)を用意し、各おむつにおいて、その端部(前後端縁)から約35mm離間した部位にハサミを入れてその一部を切断し、約35mmの幅寸法を有する環状の測定用試料85を作成する。なお、「約35mm」とは、おむつを着用する際に、着用者又は着用補助者がウエスト開口縁部を把持してウエスト開口を拡げるときの親指の第1関節が当接する範囲の縦方向の長さ寸法を意味し、かかる範囲はウエスト回り方向に伸長される部位であって、実施例1及び2においては第1ウエスト伸縮域38が形成された範囲、比較例1〜4においては、それに相当するウエスト弾性要素が配設されたウエスト開口縁部である。
【0050】
次に、各おむつから切り取った測定用試料85の横方向における一方側部85a(サイドシール部)を下固定式治具82の中央部に引っ掛けて、その内面に下固定式治具82を当接させた状態のまま上方へ引っ張り、他方側部85b(サイドシール部)を上固定式治具81の中央部に引っ掛けて固定する。かかる状態において、上下固定式治具81,82が互いに離間するように測定用試料85を上下方向へ引っ張り、測定用試料85を所要の長さにまで伸長させる。
【0051】
また、初期に設定された、測定用試料85の非伸長時における上下固定式治具81,82間の離間寸法Lを100%とする。上下固定式治具81,82間では測定用試料85を弛まないように引っ張られた状態に維持する。かかる測定条件において、上下固定式治具81,82間の離間寸法Lが約255%となるまで試料を伸長させて、その時の伸長応力(N/35mm)を測定する(1サイクル)。次に、約255%まで伸長させた測定用試料85を次第に収縮させて、上下固定式治具81,82間の離間寸法Lが約167%となったときの伸長応力(N/35mm)を測定する(2サイクル)。
【0052】
着用者のウエスト寸法の適用範囲を600〜850mmとする、非伸長時のウエスト回りの長さ寸法が約360mmである通常のMサイズのおむつの場合において、約255%伸長時のウエスト回りの長さ寸法は、約920mmである。また、着用者のウエスト寸法の適用範囲を750〜1000mmとする、非伸長時のウエスト回りの長さ寸法が約420mmである通常のLサイズのおむつの場合において、約255%伸長時のウエスト回りの長さ寸法は、約1070mmである。ここで、「255%伸長時」とは、各おむつ(Mサイズ)に適応する着用者または着用補助者が、おむつの着用時において、着用者のウエスト回りの大きさに合わせてウエスト域を伸長させてウエスト開口を所要の大きさに拡げるときの最大寸法を意味し、「167%伸長時」とは、Mサイズの適応範囲であるウエスト回り寸法における最小寸法である600mmを基準として、その装着時の伸長状態を意味するものである。
【0053】
また、表1における「着用時におけるウエスト開口の拡げ易さ」、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」は、大人用の使い捨ておむつの着用対象者である年齢約70〜90歳の被験者10名(男女5名ずつ)を対象として、評価したものである。すなわち、被験者が各サンプルのおむつを実際に着用する場合における、そのウエスト回り寸法を255%伸長させたときのウエスト開口縁部の拡げ易さ、また、装着から3時間後のウエスト域のずれの有無を評価したものである。各評価において、「○」印は、それぞれ、被験者がおむつの着用時においてウエスト開口縁部を比較的に強く横方向へ引っ張らなくても伸長できたこと、着用中にウエスト域の大きなずれを感じなかったことを意味する。また、「×」印は、それぞれ、被験者がおむつの着用時において所要の大きさにまでウエスト開口縁部を拡げる際に、比較的に強い力でウエスト開口縁部を横方向へ引っ張って伸長しなければならなかったこと、着用中にウエスト域の大きなずれを感じたことを意味する。なお、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」については、各おむつを着用した状態で1分間歩行した後に、踏み台昇降15回をした後における、運動時におけるウエスト域のずれの有無においても、同様の評価結果が得られた。また、平常時及び運動時におけるウエスト域のずれの有無は、装着時の状態から約15mm以上位置ずれが生じた場合に感じるものであることが分かった。
【0054】
表1の結果が示すとおり、実施例1及び2における255%伸長時における伸長応力は、6.0N以下であり、「着用時におけるウエスト開口の拡げ易さ」の評価は「○」であった。また、その場合における167%伸長時の伸長応力は、それぞれ、1.7Nと2.1Nであって、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」の評価は、「○」であった。
【0055】
一方、比較例1〜3においては、255%伸長時における伸長応力は、いずれも6.0N以上であって、その「着用時におけるウエスト開口の拡げ易さ」の評価は、「×」であった。また、その場合における167%伸長時の伸長応力は、いずれも1.7N以上であって、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」の評価は、「○」であった。比較例4においては、255%伸長時における伸長応力は、4.7Nであって、その「着用時におけるウエスト開口の拡げ易さ」の評価が「○」であったのに対し、167%伸長時における伸長応力は、1.4Nであり、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」の評価は、「×」であった。
【0056】
かかる測定結果から、実施例1及び実施例2は、測定用試料85の非伸長状態から255%伸長時における伸長応力が約4.5〜6.0N/35mmの範囲内であって、かつ、167%伸長時における伸長応力が、約1.5N/35mm以上、好ましくは、約1.7〜2.1N/35mmであることによって、「着用時におけるウエスト開口の拡げ易さ」、「着用時におけるウエスト域のずれの有無」のいずれについても評価が「○」であったといえる。なお、本発明のおむつ10は、比較的に腕力の低い高齢者を対象とする大人用の使い捨ておむつに関するものであって、着用時のウエスト開口を拡げるときに要する力として約6.0N以上である場合には、ウエスト開口を拡げ難く、着用時においてウエスト開口縁部に足を引っ掛けてよろけたり、転倒したりするおそれがある。また、動きの大きな乳幼児を対象とする幼児用の使い捨ておむつと異なり、高齢者を対象とする大人用の使い捨ておむつの場合には、装着時の伸長応力は比較的に低く設定することもできるが、その場合であっても、約1.4N以下の場合には、着用中にウエスト域のずれを生じて、排泄物の横漏れを生じるおそれがある。
【0057】
かかる測定結果の相違は、各おむつのシャーシを構成する内外面シートに使用した繊維不織布シートの種類、その単位面積当たりの質量、ウエスト弾性要素の本数、太さ、ピッチ、それらの構成部材どうしを接合するための接着剤の接着パターン、接着剤の単位面積当たりの質量などの種々の構成が関係していると考えられるが、実施例1及び2が第1ウエスト弾性要素36として太さが約940dtexの比較的に細い弾性糸を使用しているのに対し、比較例1〜3では所要の幅寸法を有する平ゴムを使用していたこと、また、前記のように、実施例1及び2では、第1ウエスト弾性要素36の伸縮を極力阻害しないように、外面シート31の折り返し部位31aからなる前後フラップ部33,34を固定するための前後フラップ接合域65,66が縦方向Yの外方へ凹なる形状を有することなどが挙げられる。
【0058】
図9は、前記測定方法によって測定された、実施例1、比較例1〜3の測定用試料85の伸長された寸法とそのときの伸長応力の数値を示すグラフである。横軸は、測定用試料85を横方向へ引っ張った際のウエスト回りの長さ寸法の2等分の大きさを表したもの(mm)(非伸長時のウエスト回りの長さ寸法の2等分の寸法約180mm)、縦軸は、測定用試料85が各長さ寸法にまで引っ張られたときの伸長応力の値(N)である。
【0059】
図9に示すとおり、各測定用試料85において、その伸長応力の測定結果を示すグラフは、それを横方向へ引っ張って伸長させたとき(1サイクル)よりも、かかる引張力から解放されて収縮させるとき(2サイクル)の方が、伸度における伸長応力が低くなるようなヒステリシスを有する伸長応力―伸び曲線となる。図9から明らかなように、実施例1では、1サイクルにおける伸長応力は比較例1〜3よりも低く、2サイクルにおける伸長応力は少なくとも比較例1と同程度のものである。よって、実施例1のおむつ10は、比較例1〜3のおむつとの対比において、おむつの着用時において、比較的に小さな力でウエスト開口を拡げることができ、かつ、着用者のウエスト回りに安定的にフィットし、その着用中にウエスト域がずり下がったりするおそれはないといえる。
【0060】
なお、各接着域に使用するホットメルト接着剤には、公知の各種の接着剤を制限なく用いることができるが、クロッチ接合域61や前後フラップ接合域65,66に使用されるホットメルト接着剤は、第1及び第2ウエスト弾性要素36,37による伸縮性をできるだけ阻害しないようにするために、ゴム系の接着剤、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)系、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系の接着剤を用いることが好ましい。
【0061】
おむつ10の各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、本発明の明細書及び特許請求の範囲において、用語「第1」及び「第2」は、同様の要素、位置などを単に区別するために用いられているものである。
【0062】
前記のとおり、本発明にかかる使い捨ておむつは、高齢者を着用者とする大人用のパンツ型おむつを対象とするものであって、その商品の創作意図、使用目的は以下のとおりである。
【0063】
使い捨ておむつの分野においては、おむつ内部の蒸れ、体液漏れ及び着用者の肌のかぶれ防止などの従来の使い捨ておむつに求められていた基本的機能の他に、近年、大人用の紙おむつを中心として下着のような肌触りの良さや動き易さ、自分で着用操作を行う際の簡便さなどが求められている。特に、大人用の使い捨ておむつの場合には、従来の幼児用の使い捨ておむつと異なり、着用者自らが着用操作を行う必要があり、その操作性の簡便さは重要な課題である。勿論、高齢者であっても着用補助者や介護補助者などによっておむつを着用させることもあるが、本商品は、高齢者や要介護者の排泄処理に関する自立支援を商品の創作意図、使用目的とするものであって、高齢者自らが使い捨ておむつの着用操作を行い、着用中においても安心して着用することができることを目的とするものである。このように、本商品は、高齢者や要介護者の排泄処理に関する自立を促進して、その自尊心を保ち、生き生きとしたライフスタイルを提供することによって、近年我が国が抱える高齢者の増加に伴う社会福祉・介護分野における解決手段の一助となるツールとして開発されたものであって、社会的に有用なものであるといえる。したがって、本発明に係るおむつは、市場のニーズに合致した、いわば、従来既存の幼児用おむつとは一線を画する商品であって、本発明の構成は、かかる商品デザインの使用目的の実現に不可欠なものである。
【符号の説明】
【0064】
10 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
11 シャーシ
12 吸液性構造体
13 前ウエスト域
14 後ウエスト域
15 クロッチ域
30 内面シート
31 外面シート
31a 外面シートの延出部位
33 前フラップ部
34 後フラップ部
36 第1ウエスト弾性要素(ウエスト弾性要素)
36c 第1ウエスト弾性要素の中央部
37 第2ウエスト弾性要素
38 第1ウエスト伸縮域
39 第2ウエスト伸縮域
40A 前レッグ弾性要素
40B 後レッグ弾性要素
61 クロッチ接合域
65 前フラップ接合域
66 後フラップ接合域
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及びそれに直交する横方向を有し、肌対向面及びその反対側の非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシと、前記シャーシの前記肌対向面側に配置され、前記クロッチ域を中心として前記前後ウエスト域に延びる吸液性構造体とを含む使い捨て着用物品において、
前記シャーシは、前記肌対向面側に位置する内面シートと、前記非肌対向面側に位置する外面シートとを有し、
前記内外面シート間には、前記シャーシのウエスト開口縁部に沿って前記横方向へ延びる複数条のウエスト弾性要素が配設されており、
前記ウエスト弾性要素は、約2.5〜3.0倍に前記横方向へ伸長された、太さが約800〜1000dtexのストランド状又はストリング状の弾性材料から形成されており、
前記横方向において互いに隣り合う前記ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法は約5.5〜6.0mmであって、
前記ウエスト弾性要素が配設されたウエスト伸縮域は、前記横方向における255%伸長時の伸長応力が約4.5〜6.0N/35mmであって、前記横方向における167%伸長時の伸長応力が約1.7〜2.1N/35mmであることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記内面シートは、質量約10〜25g/mのSMS繊維不織布から形成されており、前記外面シートは、質量約15〜25g/mのスパンボンド不織布から形成されており、前記ウエスト弾性要素は、その全周縁又は一部に塗布されたホットメルト接着剤を介して前記内外面シート間に取り付けられている請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前記ウエスト弾性要素は、前記ウエスト開口縁部に沿って前記横方向へ延びる第1ウエスト弾性要素と、前記第1ウエスト弾性要素の下方に位置する第2ウエスト弾性要素とを有し、前記第2ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法は、前記第1ウエスト弾性要素どうしの前記縦方向における離間寸法よりも大きく、前記第1ウエスト弾性要素が配設されて形成された第1ウエスト伸縮域の伸長応力が、前記第2ウエスト弾性要素が配設されて形成された第2ウエスト伸縮域の伸長応力よりも高くなっている請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記外面シートは、前記内面シートの前後端縁よりも前記縦方向の外方へ延びる延出部位を有しており、内面シートの前記前後端縁に沿って前記延出部位を内方へ向かって折曲し、前記内面シートの前記肌対向面側に位置する前後フラップ接合域を介して前記延出部位と前記内面シートとを互いに接合することによって、前後フラップ部が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記前後フラップ接合域は、前記縦方向の外方へ向かって凹となる形状を有しており、前後フラップ接合域の両側部間において前記横方向へ延びる非接合部位と重なる領域に、前記ウエスト弾性要素の中央部が位置する請求項4に記載の着用物品。
【請求項6】
前記クロッチ域のレッグ開口縁部には、前記前ウエスト域側において内方へ凸曲する前レッグ弾性要素と前記後ウエスト域側において内方へ凸曲する後レッグ弾性要素とが配置されており、前記前後レッグ弾性要素が平ゴムから形成される請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192165(P2012−192165A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40762(P2012−40762)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】