使い捨て着用物品
【課題】着用者の股間部近傍におけるフィット性を高めて、装着感の悪化や漏れの発生を抑制することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】 本発明に係る使い捨て着用物品1は、吸収体の股下領域の幅方向中央には、吸収体が内方向に凸に曲がるように中央曲部44、45が形成され、中央曲部の幅方向Wにおける外側には、吸収体が外方向に凸に曲がるように前後方向に沿って一対の第1曲部46が形成され、第1曲部の幅方向における外側には、吸収体40が内方向に凸に曲がるように前後方向に沿って一対の第2曲部47が形成されており、第1曲部に対する長手方向外側の吸収体には、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部55が形成されており、第2曲部は、凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されている。
【解決手段】 本発明に係る使い捨て着用物品1は、吸収体の股下領域の幅方向中央には、吸収体が内方向に凸に曲がるように中央曲部44、45が形成され、中央曲部の幅方向Wにおける外側には、吸収体が外方向に凸に曲がるように前後方向に沿って一対の第1曲部46が形成され、第1曲部の幅方向における外側には、吸収体40が内方向に凸に曲がるように前後方向に沿って一対の第2曲部47が形成されており、第1曲部に対する長手方向外側の吸収体には、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部55が形成されており、第2曲部は、凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、吸収体を曲げることができる曲部を有する使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型おむつなどの使い捨て着用物品では、着用者の装着感向上や排泄物の漏れ防止を図るため、様々な工夫がなされている。例えば、吸収体を着用者側に曲げることができる曲部を吸収体に形成した使い捨て着用物品が知られている。例えば、特許文献1には、着用者の排泄物を吸収する吸収体に、吸収体の前後方向に沿った溝部を形成した使い捨て着用物品が記載されている。
【0003】
この使い捨て着用物品では、吸収体に曲部としての3本の溝部が形成され、着用時に各溝部の周辺部分がそれぞれ曲がる。中央の溝部周辺部分は、着用者の排泄口に向けて凸状となる、中央の溝部よりも幅方向外側に位置する中間の溝部周辺部分は、中央の溝部周辺部分と逆側に凸状、すなわち排泄口に対して凹状となる。
【0004】
すなわち、吸収体には、幅方向に沿って、凸状部分と凹状部分とが交互に隣接して形成される。吸収体の中央部分が股間部分に当接するため、吸収性能を高めることができる。また、複数の曲部によって吸収体が股間部分に沿って曲がり易くなるため、フィット性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4092319号公報(図2及び図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の使い捨て着用物品においては、以下の問題があった。
【0007】
吸収体を凸状に変形させる曲部は、着用者の股間に当てられる股下領域のみならず、股下領域よりも後方や前方に位置する後胴回り領域や前胴回り領域にも設けられている。例えば、股下領域よりも後方の後胴回り領域は、着用者の臀部に接するように配置される。この後胴回り領域に凹状部分や凸状部分が形成されていると、身体に沿って吸収体が配置されず、フィット性が低下するおそれがある。
【0008】
また、上述の使い捨て着用物品において、体液の吸収性能を高めようとすると、吸収体の厚みを厚くすることが考えられる。しかし、吸収体の厚みを厚くすると、吸収体が折り曲がり難くなり、フィット性が低下するおそれがある。また、吸収体の厚みを厚くすることなく吸収性能を高めようとすると、吸収体の幅を長くすることが考えられる。しかし、吸収体の幅を長くすると、股下領域に配される吸収体の面積が大きくなり、吸収体を股間部の下方にコンパクトに配置し難くなることがある。よって、股間部近傍における違和感から装着性が悪化したり、横漏れが発生したりするおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、吸収性能を確保しつつ、着用者の股間部近傍におけるフィット性を高めて、装着感の悪化や漏れの発生を抑制することができる使い捨て着用物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る使い捨て着用物品は、着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向(幅方向W)と、着用者に向かう内方向(内方向IN)と、前記内方向と反対側に向かう外方向(外方向OUT)とを有する吸収体(吸収体40)を備え、前記吸収体は、前記着用者の股間部に当てられる股下領域(股下領域S3)と、前記股下領域の前方に配置される前胴回り領域(前胴回り領域S1)と、前記股下領域の後方に配置される後胴回り領域(後胴回り領域S2)と、を有する使い捨て着用物品であって、前記股下領域の幅方向中央には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように中央曲部(中央開口部45、中央弾性材44)が形成され、前記股下領域の前記中央曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記外方向に凸に曲がることができるように第1曲部(第1サイドスリット46)が形成され、前記股下領域の前記第1曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように第2曲部(第2サイドスリット、サイド弾性材48)が形成されており、前記第1曲部に対する前記長手方向外側の前記吸収体には、前記吸収体の幅方向外側端部から前記幅方向内側に向かって凹んだ凹み部(凹み部55)が形成されており、前記第2曲部は、前記凹み部の前記幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特徴によれば、股下領域に、内方向に凸に曲がることができるように形成された中央曲部、外方向に凸に曲がることができるように形成された第1曲部、及び内方向に凸に曲がることができるように形成された第2曲部を備えているため、股下領域を中心に吸収体を変形させて、身体に吸収体をフィットさせることができる。
【0012】
更に、第1曲部に対する長手方向外側の吸収体には、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部が形成されており、その凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に第2曲部が配置されている。すなわち、第2曲部よりも長手方向外側に凹み部が形成されている。
【0013】
よって、第2曲部による変形が、凹み部よりも長手方向外側に伝達し難くなり、股下領域のみを変形させて、股下領域よりも長手方向外側を変形させ難くすることができる。股下領域のみを凸に変形させ易くなるため、吸収性能を高めるために吸収体の幅を長くしたり、吸収体の面積を大きくしたりした場合であっても、吸収体を股下領域にコンパクトに配置することができる。よって、股間部近傍における違和感を抑制し、装着性を向上させることができ、かつ横漏れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
【図2】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。
【図3】図2に示すX1-X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図4】図2に示すX2-X’2線に沿った使い捨ておむつ1の長手方向断面図である。
【図5】図2に示すX3-X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図6】実施の形態に係る吸収体の平面図である。
【図7】実施の形態に係る吸収体の斜視図である。
【図8】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示すX1-X’1線に沿った断面図である。
【図9】第1実施形態に係る使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示す断面図(閉脚時)である。
【図10】変形例に係る使い捨ておむつ1の吸収体の平面図である。
【図11】変形例に係る使い捨ておむつ1の吸収体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る使い捨ておむつ1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0016】
本実施形態に係る使い捨て着用物品の吸収体は、吸収体を凸に曲がることができるように構成された中央曲部、第1曲部及び第2曲部と、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部と、が形成されており、凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に第2曲部が配置されていることを特徴とする。
【0017】
(1)使い捨て着用物品の全体概略構成
図1は、本実施形態において使い捨て着用物品を構成する使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。図3は、図2に示すX1−X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。図4は、図2に示すX2−X’2線に沿った使い捨ておむつ1の長手方向断面図である。図5は、図2に示すX3−X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。使い捨ておむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつである。
【0018】
使い捨ておむつ1は、図2に示すように、吸収性物品1の長手方向Lにおいて、着用者の前胴回りに対応する前胴回り領域S1と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、前胴回り領域S1と後胴回り領域S2との間に位置する股下領域S3と、を有する。股下領域S3は、着用者の股間部で脚を閉じたときに最も幅が狭くなる幅狭領域S32と、幅狭領域S32と前胴回り領域S1の間に位置する中間股下部(腹側)S31と、幅狭領域S32と後胴回り領域S2の間に位置する中間股下部(尻側)S33と、を有する。
【0019】
前胴回り領域S1の吸収性物品1の幅方向W外側に位置する前胴回り縁部4が、後胴回り領域S2の幅方向Wの外側に位置する後胴回り縁部6と接合され、かつ前胴回り縁部4’が、後胴回り縁部6’と接合されることによって、使い捨ておむつ1がパンツ型に形成される。
【0020】
使い捨ておむつ1は、表面シート10、吸収体40、サイドシート60、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100、前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80R等を備えており、これらは互いに、接着剤や熱融着などによって接合されている。
【0021】
前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、前側外装バックシート80F、後側外装バックシート80R、及び外装センターシート100は、使い捨ておむつ1の外装部分を構成するシートである。前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100の内側(肌当接面側)には、綿状パルプと高分子吸水性ポリマーから構成される吸収体40が設けられる。
【0022】
表面シート10は、着用者の肌に直接的に接し得る肌当接面を形成するシートである。表面シート10は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成されている。本実施の形態に係る表面シート10は、ポリプロピレンからなる目付20g/m2の親水性スパンボンド不織布によって形成されている。
【0023】
表面シート10の非肌当接面側には、セカンドシート15が接合されている。セカンドシート15は、表面シート10と吸収体表面被覆シート20との間に配置される。セカンドシート15を設けることにより、体液の吸収速度を速くすることができ、かつ吸収後における体液の逆戻りを抑制することができる。本実施の形態に係る吸収性物品の吸収体は、着用者の股間部に密着する構造であるため、吸収後の体液の逆戻りを抑制することにより、排泄後の快適性を向上させることができる。セカンドシート15は、例えば、エアスルー不織布や、開孔フィルムなどが用いられる。本実施の形態のセカンドシート15は、エアスルー不織布50g/m2(親水性)によって形成されている。
【0024】
セカンドシート15の幅方向の両側部は、第1サイドスリット46とほぼ同じ位置(望ましくは、第1サイドスリット46よりも内側端部)に位置している。セカンドシート15が配置された領域と、セカンドシート15が配置されていない領域(セカンドシート15の幅方向の両側部よりも幅方向外側の領域)は、剛性が異なる。セカンドシートの有無による剛性差を設けることにより、第1サイドスリット46によって構成される第1曲部を基点に曲がり易くなる。なお、本実施の形態においては、第1サイドスリット46の幅を10mmとし、一対の第1サイドスリット46の幅方向内側端部同士の間隔を76mmとし、セカンドシートの幅を80mmとしている。
【0025】
吸収体表面被覆シート20は、表面シート10と吸収体40との間に設けられている。吸収体表面被覆シート20は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布、ティッシュなどの液透過性のシートによって形成されている。吸収体裏面被覆シート30は、吸収体40の非肌当接面側に設けられている。吸収体裏面被覆シート30は、液不透過性フィルムなど(例えば、ポリエチレン)のシートによって形成されている。
【0026】
吸収体表面被覆シート20は、第1サイドスリット46が形成された部分において、吸収体裏面被覆シート30と接合されるように構成してもよい。このように構成することで、吸収体40が変形して第1サイドスリット46が閉じたり、吸収体表面被覆シート20等と吸収体40とがずれたりすることを抑制できる。また、吸収体40が液体を吸収して膨らんだ場合において、第1サイドスリット46が閉じることを防止できるため、第1サイドスリット46によって凸状部分を確実に形成することが可能となる。
【0027】
吸収体40は、吸収体表面被覆シート20及び吸収体裏面被覆シート30との間に配置されている。吸収体40は、前胴回り領域S1から後胴回り領域S2に向かう長手方向Lと、長手方向Lに直交する幅方向Wとを有する。さらに、吸収体40は、使い捨ておむつ1を着用する着用者に向かう内方向INと、内方向と反対側に向かう外方向OUTとを有する。吸収体40は、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの混合粉体で形成される。
【0028】
吸収体40は、着用者との非肌当接面側に位置する第1層41と、第1層41と重ねられ、かつ着用者の肌当接面側に位置する第2層42と、によって構成されている(図7参照)。吸収体40の第1層41には、幅方向Wにおける中央に中央開口部45が形成される。中央開口部45の幅方向における両外側には、一対の第1サイドスリット46が形成される。一対の第1サイドスリット46の幅方向における両外側には、一対の第2サイドスリット47が形成される。なお、吸収体40の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0029】
吸収性物品1は、吸収性物品1の厚み方向Tにおいて中央開口部45に重なるように配置された中央弾性材44と、厚み方向Tにおいて第2サイドスリット47と少なくとも一部が重なるように配置されたスリット弾性材48と、を有する。
【0030】
吸収体40に形成されたこれらの弾性材やスリット等によって、使い捨ておむつ1が着用された際に吸収体40が曲がるように構成されている。本実施形態において、中央弾性材44及び中央開口部45は中央曲部を構成し、第1サイドスリット46は第1曲部を構成し、第2サイドスリット47及びスリット弾性材48は、第2曲部を構成する。
【0031】
サイドシート60は、吸収体40の幅方向Wの両側端において、表面シート10、吸収体表面被覆シート20及び吸収体裏面被覆シート30を一体に包むように設けられる。サイドシート60は、液不透過性の不織布などのシートによって形成されており、サイドシート60とサイド弾性材90とによって排泄物の横漏れを防止する防漏壁が構成される。
【0032】
外装トップシートは、前胴回り領域S1及び中間股下部(腹側)S31に形成される前側外装トップシート70Fと、後胴回り領域S2及び中間股下部(尻側)S33に形成される後側外装トップシート70Rとを備える。厚み方向Tにおいて、前側外装トップシート70Fは、前側外装バックシート80Fと吸収体40との間に配置される。厚み方向Tにおいて、後側外装トップシート70Rは、後側外装バックシート80Rと吸収体40との間に配置される。長手方向Lにおいて、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとの間には、外装センターシート100が配置されている。
【0033】
外装センターシート100の前端部は、前側外装トップシート70Fの後端部と接合され、外装センターシート100の後端部は、後側外装トップシート70Rの前端部と接合される。外装センターシート100は、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとを跨って配置されている。外装センターシート100は、連続的にスロットコーターで塗工されたホットメルト型接着剤によって、外装トップシートの表面側に対して接合される。
【0034】
外装センターシート100は、不織布などによって構成される。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布によって構成されている。外装センターシート100は、着用時において外装トップシートよりも内側(肌当接面側)に位置する。
【0035】
前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、幅方向Wの幅が他の領域よりも大きく形成されている。前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布によって構成されている。
【0036】
前側外装バックシート80Fは、前胴回り領域S1において前側外装トップシート70Fよりも非肌当接面側に設けられる。後側外装バックシート80Rは、後胴回り領域S2において後側外装トップシート70Rよりも非肌当接面側に設けられる。長手方向Lにおける前側外装バックシート80F(後側外装バックシート80R)の一端は、肌当接面側に折り返され、前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)の長手方向Lにおける端部を包むように設けられる。
【0037】
前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、ポリプロピレンからなる目付17g/m2のスパンボンド不織布によって構成されている。
【0038】
吸収体裏面被覆シート30は、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R及び外装センターシート100に対して部分的に接着されている。
【0039】
前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2には、ウエストギャザー3が設けられる。ウエストギャザー3は、吸収体40の幅方向Wに沿って伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長いウエスト弾性材3Aを有する。ウエスト弾性材3Aは、使い捨ておむつ1の幅方向Wに対して伸長された状態で接着剤(例えばホットメルト接着剤)によって、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。
【0040】
ウエストギャザー3は、前胴回り領域S1における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の前胴回り縁部4から他方の前胴回り縁部4‘まで連続し、後胴回り領域S2における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の後胴回り縁部6から他方の前胴回り縁部6‘まで連続する。
【0041】
後側外装バックシート80Rの中間股下縁部8には、レッグギャザー5が形成される。レッグギャザー5は、着用者の脚部に沿うように形成される。レッグギャザーは、伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長い脚回り弾性材5によって形成されている。脚回り弾性材5は、前胴回り領域S1から中間股下部(腹側)S31に配置された前脚回り弾性材5Fと、後胴回り領域S2から中間股下部(尻側)S33に配置された後脚回り弾性材5Rと、によって構成されている。
【0042】
脚回り弾性材5は、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。後脚回り弾性材5Rは、後胴回り縁部6から中間股下部(尻側)S33まで延びており、幅狭領域S32の手前で分断されている。前脚回り弾性材5Fは、前胴回り縁部4から中間股下部(尻側)S31まで延びており、幅狭領域S32の手前で分断されている。
【0043】
レッグギャザーを構成する前脚回り弾性材5F及び後脚回り弾性材5Rは、例えば、外装センターシート100を前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)と接合する前に、前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)と前側外装バックシート80F(後側外装バックシート80R)の股下端部よりはみ出した箇所の弾性部材をカットすることで分断されている。
【0044】
脚回り弾性材5は、予め外装トップシートに塗工したホットメルト型接着剤によって固定されている。ホットメルト型接着剤は、スパイラルスプレーによって塗工される。脚回り弾性材5の塗工量は、7g/m2とした。外装表面シートの端部付近(端部から約5mmの位置)の少なくとも脚回り弾性材5と重なる位置には、スロットコーターで接着剤が塗工されている。このように接着剤を塗工することにより、外装表面シートの端部から脚回り弾性材5が抜けることを防止できる。
【0045】
また、非接触型のスパイラルスプレーで接着剤を塗工すると、外装表面シートの端部付近の接着剤がはみ出して、製造上の不具合が発生するおそれがある。しかし、接触型のスロットコーターで塗工することにより、接着剤のはみ出しを防止することができる。なお、スロットコーターの塗工量は、10g/m2とした。
【0046】
サイドシート60の幅方向における端部は、サイドシート同士が重なり合っている。サイドシート同士が重なり合う部分には、長手方向Lに沿って伸長した状態でサイド弾性材90(図3参照)が設けられている。サイド弾性材90は、中間股下部(尻側)S33から幅狭領域S32を経て中間股下部(腹側)S31まで連続している。サイド弾性材90は、伸縮性を有する合成ゴムなどによって形成されている。
【0047】
中央弾性材44は、長手方向Lに沿って設けられて、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて中央開口部45と重なる位置に設けられている。中央弾性材44は、内方向INに凸、つまり、吸収体40が着用者に向けて凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に重なるように形成されている。中央弾性材44は、吸収性物品の幅方向中心において長手方向に沿って、伸長状態で配置されている。中央弾性材44は、幅狭領域S32を中心に、中間股下部(腹側)S31から中間股下部(尻側)S33に向かって配置される。
【0048】
スリット弾性材48は、長手方向Lにおいて、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて第2サイドスリット47と重なる位置に設けられている。スリット弾性材48は、幅方向Wに3本並列した状態で配置されている。スリット弾性材48は、内方向INに凸、つまり、吸収体40が着用者に向けて凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に重なるように形成されている。
【0049】
中央弾性材44は、弾性材被覆シート43と、吸収体裏面被覆シート30の間に、伸長された状態で設けられている。中央弾性材44は、1.2〜2.5倍の伸長倍率で配置される。本実施の形態に係る中央弾性材は、620dtexの太さ、1.8倍の伸長倍率で7本伸長固定される。中央弾性材の間隔は、5mmである。中央弾性材44の長手方向Lの長さは約120mmである。
【0050】
中央弾性材44は、スパンデックスであり、Vスロット方式でホットメルト型接着剤を塗工される。中央弾性材44には、伸縮性不織布など用いてもよい。弾性材被覆シート43は、不織布などのシートで構成され、本実施形態では、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布(疎水性)を用いた。
【0051】
スリット弾性材48は、吸収体裏面被覆シート30とサイドシート60との間に、接着剤によって接合されている。実施の形態に係るスリット弾性材48は、620dtexの太さ、2.0倍の伸長倍率で2本伸長固定される。スリット弾性材48は、スパンデックスである。スリット弾性材48には、リットノズル塗工による直接塗工方法でホットメルト型接着剤が塗工される。
【0052】
なお、スリット弾性材48は、吸収体40が凸に曲がる前の状態で、中央弾性材44よりも低い伸長応力となるように構成されている。吸収体が凸に曲がる前の状態とは、換言すれば、図2に示す、着用物品を平面に伸ばした状態である。スリット弾性材48を中央弾性材44よりも低い伸長応力となるように構成することで、中央弾性材44によって形成される凸状部分の高さが、スリット弾性材48によって形成される凸状部分よりも高くなる。よって、着用時において中央領域の凸状部分を着用者の排泄口側に密着させることが可能となる。
【0053】
中央弾性材44の前端部44Fは、スリット弾性材48の前端部48Fよりも後方に配置されている。すなわち、中央曲部の前端部は、第2曲部の前端部よりも後方に設けられる。このような構成によれば、股間部において着用者の前方に空間が形成され易くなり、股間部の前側が圧迫されることによる装着感の悪化を抑制することができる。
【0054】
中央弾性材44及びスリット弾性材48の素材には、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、スパンデックス、発泡ポリウレタン等を挙げることができる。その他、中央弾性材44及びスリット弾性材48の材料としては、伸縮不織布などの弾性シートを用いてもよい。
【0055】
側端部弾性材49は、吸収体の幅方向における両側部において、吸収体裏面被覆シート30とサイドシート60との間に接着剤によって接合されている。側端部弾性材49は、長手方向Lに沿って配置されており、股下領域S3の中間股下部(尻側)S33及び幅狭領域S32に跨って配置される。側端部弾性材49は、スリット弾性材48よりも後方かつ幅方向外側に配置されている。側端部弾性材49は、幅狭領域よりも後方の吸収体の側部を着用者側に引き上げ、着用者のお尻を包み込むように吸収体を変形させる。このように吸収体を変形させることにより、中間股下部(尻部)からの漏れを防ぐことができる。実施の形態に係る側端部弾性材49は、780dtexの太さ、2.3倍の伸長倍率で2本伸長固定される。
【0056】
なお、弾性材の伸長応力は、例えば、次のようにして測定することができる。
【0057】
(1)凸状部分を形成する弾性材を幅方向にすべて含むように、弾性材を挟み込んだ資材ごと切り出す。具体的には、本実施例に係る着用物品においては、5mm間隔で3本ずつ配置された中央弾性材及びスリット弾性材を挟み込んだ資材をたるみがないように伸長させた状態で、幅13mm×長さ100mmを切り出す。同じく伸長させた状態で長手方向両端部からそれぞれ10mm内側にマーキングする。伸長応力の測定には、インスロンジャパンカンパニィリミテッド社製の引張り試験機(例えば、型式:5564)、又は株式会社島津製作所製オートグラフ(例えば、型式:AGS-1kNG)を使用した。
【0058】
(2) (1)の試料を、マーキング部がチャック内側端部になるように上部チャックで挟むとともに、他方のマーキング部がチャック内端部になるように下部チャックで挟む。チャック間における試料の長さ寸法は、80mmとなる。なお、弾性材のギャザーとして効いている長さが100mmより短い場合は、ギャザーとして効いている弾性材の長さうち最も短い長さより20mm短い長さをチャック間における試料の長さに設定する。初期のチャック間距離は初期に試料のテンションが掛からないようにするため、試料が縮んだときの長さ(自然長)よりも短く設定する。それらチャックが互いに離間するように試料を100mm/minの条件で上下方向へ引っ張り、試料を伸長する。
【0059】
(3) 試料を、弾性部材を挟み込んだ資材がたるみなく伸長したときの試料のチャック間における長さ寸法を100%として、試料のチャック間の長さ寸法が90%になるまで試料を伸ばし、そのときの試料の伸長時応力を測定し、弾性材の伸長応力とする。すなわち上記本実施例では試料の100%長さ寸法80mmに対して90%の72mmまで試料を伸ばしたときの伸長時応力を測定する。
【0060】
また、吸収体40の厚さは、吸収体40の製品長及び製品幅に伸ばされた状態(つまり、しわの入らないように平坦な状態)で厚さ測定器に測定したい部分を挟み込んで測定する。使用可能な測定装置としては、例えば、PEACOCK製厚み計(測定部:直径5mm、測定時圧力:163g/cm2)を用いることができる。
【0061】
なお、上述した使い捨ておむつ1を構成する各部材は、例えば、特開2006−346439号公報に記載された材料を用いてもよい。
【0062】
(2)吸収体の構造
図7は、吸収体40の平面図であり、図8は、吸収体40の斜視図である。図7及び図8に示すように、吸収体40は、第1層41と、第1層41と重ねられる第2層42とを有する。第1層41は、着用者の非肌当接面側に位置し、第2層42は、着用者の肌当接面側に位置する。第1層41の長手方向の長さは、第2層42の長手方向の長さよりも長い。第1層41は、前胴回り領域S1から後胴回り領域S2に跨って配置されている。
【0063】
第1層41と、第2層42とは、綿状パルプと高分子吸収性ポリマー(SAP)とから構成されている。吸収体40は、例えば、パルプ0〜500g/m2とSAP0〜500g/m2とを混合させて形成することができる。本実施の形態に係る第1層41は、パルプ250g/m2とSAP150g/m2とを混合させて形成されており厚さは約2.5mmである。本実施の形態に係る第2層42は、パルプ200g/m2とSAP90g/m2とを混合させて形成されており、厚さは約2.0mmである。
【0064】
第2層42は、幅方向Wの中央に向かって凹み、幅方向Wにおいて所定の幅を有する幅狭部42Nと、長手方向Lにおける幅狭部42Nの両端に形成され、幅狭部の幅よりも幅が長い幅広部42FL及び幅広部42BLと、を有している。幅狭部42Nは、股下領域S3の幅狭領域S32に形成されている。幅広部42FLは、中間股下部(腹側)S31に形成され、幅広部43BLは、中間股下部(尻側)S33に形成されている。幅狭部42Nの側端、幅広部42FLの側端、及び幅広部42BLの側端は、曲線で結ばれており、第2層42は砂時計型の平面形状を有する。
【0065】
第1層41は、中間股下部(腹側)S31から幅狭領域S32に向かって幅方向の長さが短くなり、かつ中間股下部(尻側)S33から股下領域S3に向かって幅方向の長さが短くなっている。
【0066】
第1層41の中間股下部(腹側)S31及び中間股下部(尻側)S33には、吸収体40の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部55が形成されている。凹み部55は、幅狭領域S32よりも前方であって、第1曲部を構成する第1サイドスリット46よりも前方に位置する前側凹み部55Fと、幅狭領域S32よりも後方であって、第1曲部を構成する第1サイドスリット46よりも後方に位置する後部凹み部55Bと、を有する。前側凹み部55Fは、後方に向かって幅方向外側から幅方向内側に延びる形状であり、後側凹み部55Bは、前方に向かって幅方向外側から幅方向内側に延びる形状である。
【0067】
第1層41には、中央開口部45、一対の第1サイドスリット46及び一対の第2サイドスリット47が形成されている。中央開口部45は、幅方向Wの中央部に形成されている。中央開口部45は、長手方向Lに沿って延在する縦長の形状を有し、幅狭領域S32、中間股下部(腹側)S31及び中間股下部(尻側)S33に跨って形成されている。このように中央開口部45を形成することにより、中央部分40Cを着用者側である内方向INに凸に曲がり易くすることができる。また、吸収体の前後方向への体液等の拡散性を高め、広い範囲において体液等を拡散させて、吸収性能を向上させることができる。
【0068】
第1サイドスリット46及び第2サイドスリット47は、中央開口部45よりも幅方向外側に形成されている。第1サイドスリット46及び第2サイドスリット47は、長手方向Lに沿って延在する縦長の形状を有し、幅狭領域S32に形成されている。
【0069】
一対の第1サイドスリット46は、外方向OUTに凸、つまり吸収体40が中央開口部45と逆の凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に形成されている。一対の第2サイドスリット47は、内方向INに凸、つまり吸収体40が中央開口部45と同じ凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に形成されている。
【0070】
第1サイドスリット46は、前側凹み部55F及び後側凹み部55Bの幅方向内側端部55FI,55BIよりも幅方向内側に配置されている。第2サイドスリット47は、前側凹み部55F及び後側凹み部55Bの幅方向内側端部55FI,55BIよりも幅方向外側に配置されている。
【0071】
吸収体40は、長手方向における前側凹み部55Fと後側凹み部55Bとの間に位置する延出領域S51を有する。延出領域S51は、延出領域S51は、前側凹み部55Fの幅方向における内側端部と後側凹み部55Bの内側端部間を結ぶ仮想線EL3よりも、幅方向外側に張り出した領域である。第1サイドスリット46は、延出領域S51よりも幅方向内側に配置され、第2サイドスリット47は、延出領域S51よりも幅方向外側に配置されている。延出領域S51は、図6において斜線が付された領域である。
【0072】
延出領域S51には、第2曲部を構成する第2サイドスリット47が形成されている。第2サイドスリット47の非肌当接面側には、第2曲部を構成するスリット弾性材48が配置されている。よって、延出領域S51は、第2曲部によって内方向に凸に変形する。
【0073】
第1曲部を構成する第1サイドスリット46及びスリット弾性材48の長手方向外側に、凹み部55が形成されているため、第1曲部による変形を長手方向外側に伝達し難くすることができる。よって、第1曲部よりも長手方向外側の吸収体を凸状に変形することを抑制し、吸収体を着用者の肌に沿わせて配置することができる。また、吸収体の前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2が変形した場合であっても、その変形が股下領域に伝達し難くなるため、股下領域を安定的に凸状に折り曲げることができる。
【0074】
また、吸収体40に凹み部55が形成されているため、例えば、吸収性能を確保するために吸収体の面積を大きくした場合であっても、股下領域S3の吸収体40を適切に折り畳み、吸収体40と排泄口とが密着させることができる。吸収性能を確保しつつ、股間部近傍の違和感を抑制することができる。
【0075】
更に、延出領域S51は、幅方向内側から幅方向外側に向かって長手方向内側から長手方向外側に広がる形状である。前側凹み部55Fの幅方向における内側端部と後側凹み部55Bの内側端部間を結ぶ仮想線の長さよりも、仮想線より幅方向外側に張り出した延出領域の長手方向における最大長さが長くなるように構成されている。このように、延出領域S51が幅方向外側に向かって拡開する形状であるため、凸状に曲げて着用者の股間部に配置する吸収体の面積を大きくすることができ、吸収性能を高めることができる。
【0076】
凹み部の幅方向における外側端部から幅方向における内側端部を結ぶ第1仮想線EL1(図2参照)は、第1サイドスリット46に沿った第2仮想線EL2と交差するように構成されている。このように、凹み部を形成することにより、第1曲部となる第1サイドスリット46から凹み部に繋がる仮想線を境界にして、吸収体40が肌当接面側に曲がるように構成される。なお、凹み部の形状は、吸収体の幅方向に沿って延びる形状であってもよいし、長手方向端部に向けて広がるような形状であってもよい。
【0077】
吸収体の幅は、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、120〜250mmが好ましく、股下領域S3で120mm〜250mmが好ましい。本実施の形態に係る吸収体の幅は、いずれの領域においても196mmである。
【0078】
中央開口部45の長手方向における長さは、第1サイドスリット46の長手方向における長さよりも長く、かつ第2サイドスリット47の長手方向における長さよりも長い。中央開口部45の幅方向における長さは、第1サイドスリット46の幅方向における長さよりも長く、かつ第2サイドスリットの幅方向における長さよりも長い。本実施の形態では、中央開口部の幅は、40mmであり、第1サイドスリット及び第2サイドスリットの幅は、それぞれ10mmである。
【0079】
本実施の形態では、中央開口部45の幅方向中心から第1サイドスリット46の幅方向内側端部までの距離をa、第1サイドスリット46の幅方向外側端部から第2サイドスリット47の幅方向内側端部までの距離をb、第2サイドスリット47の幅方向外側端部から吸収体の幅方向外側端部までの距離をcとしたとき、a=38mm、b=20mm、c=20mmとした。
【0080】
すなわち、中央曲部を構成する中央弾性材44と第1曲部を構成する第1サイドスリット46との幅方向における距離が、第1サイドスリット46と第2曲部を構成する第2サイドスリット47との幅方向における距離よりも長い。したがって、中央曲部の凸状部分の高さは、第2曲部の凸状部分の高さよりも高い。このため、使い捨ておむつ1の着用時において、着用者の排泄口に向けて凸状となる中央曲部は、排泄口と密着し易い。また、第1曲部は、凹部を形成するため、当該凹部に排泄物が入り込み易く、着用者の肌と排泄物が直接接触することを抑制できる。
【0081】
また、aとbの差、及びaとcの差は、それぞれ3mm以上が好ましく、より好ましくは、7〜25mmである。本実施の形態では、aとbの差、及びaとcの差を18mmとした。例えば、差が小さい場合は、吸収体が上方に持ち上がり難くなって、吸収体の幅方向中央が着用者の股間に密着し難くなることがある。一方、差が大きい場合には、吸収体の幅方向中央から幅方向外側に向かって体液が流れ易くなり、横漏れが発生するおそれがある。
【0082】
股下領域S3において、第2層42の幅方向における外側端部42Wは、前後方向に沿って配置されている。吸収体40の外側端部42Wよりも幅方向外側は、第1層41のみによって構成され、外側端部42Wよりも内側は、中央開口部45が形成された部分を除いて、第1層41と第2層42とによって構成される。よって、第2層42の外側端部42Wを境界として、吸収体40の剛性及び厚みが変化する。本実施の形態では、剛性等が変化する第2層の外側端部42Wを境界として、吸収体が曲がる。
【0083】
第2層42の外側端部42Wは、第1サイドスリット46が形成された第1層の端部41Wと厚み方向において重なっている。吸収体は、第2層42の外側端部42W及び第1層の端部41Wを基点に外方向に向かって凸形状に曲がる。なお、第2層42の幅方向における外側端部42W及び第1層の端部41Wは、前後方向に沿った辺である。よって、第1曲部は、前後方向に沿って形成される。
【0084】
このような第1層41と第2層42とによって構成される吸収体40は、図3に示すように、中央部分40C、中間部分40M、及び側端部分40Sを有する。中央部分40Cは、幅方向Wにおける吸収体40の中央部に形成される。中間部分は、中央部分40Cと側端部分40Sとの間に位置する。中央部分40Cには、中央曲部による凸状部分が形成される。中間部分40Mには、第1曲部による凸状部分が形成される。側端部分には、第2曲部による凸状部分が形成される。
【0085】
本実施形態では、第1層41と第2層42とは、厚さ方向Tに沿って押圧されることによって一体となっている。なお、第1層41と第2層42とは、接着剤や熱融着などによって一体化されていてもよい。また、吸収体40は、第1層41が非肌当接面側に位置し、第2層42が肌当接面側に位置しているが、第2層42が非肌当接面側に位置し、第1層41が肌当接面側に位置してもよい。
【0086】
(3)吸収体の形状変化
図8は、使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示す断面図(図1のX1−X’1線基準)である。図8に示すように、使い捨ておむつ1が着用されると、吸収体の股下領域S3は、着用者の股間に当てられる。着用者の脚等によって、吸収体には、幅方向外側から幅方向内側に向かって力が掛かる。吸収体40は、中央弾性材44及び中央開口部45と、第1サイドスリット46と、第2サイドスリット47及びスリット弾性材48とを基点として吸収体40が曲がり、使い捨ておむつ1の幅方向Wに沿った断面形状は、波状に変形する。よって、吸収体40の股下領域S3の幅狭領域S32は、規則的に折り畳まれた状態となる。
【0087】
吸収体40は、中央弾性材44によって内方向INに凸となった吸収体40の頂面が着用者の股間部に当接する。また、変形した状態の吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mよりも着用者の身体に近接した上側領域40Uには、中央部分40Cが位置する。一方、仮想線Mよりも着用者の身体から離隔した下側領域40Dには、中間部分40M、及び側端部分40Sが位置する。
【0088】
中央曲部による凸状部分が形成される中央部分40Cは、第2層42のみによって構成されており、比較的厚みが薄い。中間部分40Mにおける中央曲部による凸状部分と第1曲部による凸状部分との間は、第1層41と第2層42とが重なっており、比較的厚みが厚く、剛性が高い。中央曲部と第1曲部との間の剛性が高い部分によって中央曲部による凸状部分を支持することができ、中央曲部による凸形状の安定性を向上させることができる。
【0089】
また、中央曲部の中央部に長手方向に延びる中央溝やスリットを設けるように構成してもよい。中央曲部の中央部に長手方向に延びる中央溝やスリットを設けることにより、肌当接面側に凸となった中央曲部の幅方向中央部に、非肌当接面側に凹む凹部を設けることもでき、吸収体の幅方向中央部における液拡散効果を得ることができる。例えば、本実施形態のように2層構造の吸収体においては、上側に位置する吸収体の中央部に溝を設け、かつ中央弾性材は、幅方向中心線上の配置を避けて、吸収体の幅方向における中心線から5mm、10mm、15mmずつ離間させて計6本を配置することが望ましい。
【0090】
なお、サイド弾性材90を含む側縁部(レッグスタンディングギャザー)は、図中の厚さ方向Tにおいて、第2曲部を構成する第2サイドスリット47よりも高い位置、つまり、着用者側に位置していることが好ましい。
【0091】
図9は、着用者が脚を閉じた場合における使い捨ておむつ1の着用状態を模式的示す断面図(図2のX1−X’1線基準)である。なお、図中の仮想線は、着用者の股間部及び両脚部を示す。
【0092】
図9に示すように、着用者が両脚を閉じると、使い捨ておむつ1の断面形状は、図8に示した状態から図9に示す状態に変化する。着用者が両脚を閉じた場合、吸収体は、中央曲部、第1曲部及び第2曲部で折り畳まれ、互いに密着した状態で、股間部の下方においてコンパクトに配置される。
【0093】
このとき、中央弾性材44及び中央開口部45によって形成される中央曲部、は、着用者の股間部と当接するように位置する。一方、第1サイドスリット46によって形成される第1曲部は、非肌当接面側に凸状であり、着用者の排泄口と当接しない位置となる。更に、第2サイドスリット47によって形成される第2曲部は、中央曲部よりも低く、着用者の股間部の下方の位置となる。
【0094】
着用者の股間部において吸収体が密着しているので、肌伝いするような尿速の遅い尿が排出された場合であっても、体液の漏れを防止できる。また、折り畳まれた状態で、吸収体の肌から離れた部分の曲部においては、長手方向に延びる凹みが形成されるため、体液を長手方向外側へ拡散させることができ、横漏れを防止することができる。
【0095】
また、使い捨ておむつ1が着用されると、吸収体40の側端部弾性材49に対応する部分が着用者の身体側に持ち上げられる。幅方向Wにおける側端部弾性材の間には、スリット弾性材48が設けられていない。よって、吸収体40は、スリット弾性材48等によって凸状に変形せずに、臀部に沿った曲線形状となる。
【0096】
吸収体に形成した中央開口部45、第1サイドスリット46及び第2サイドスリットを基点に折りまげるため、吸収体40に厚さの薄い部分を形成して凸状部分とする場合と比較して、吸収体40が液体を吸収して膨らんだ場合でも吸収体40が曲がり易くなる。また、使い捨ておむつ1を着用して吸収体40が変形したときの断面形状は、非肌当接面側から肌当接面側に向かって狭くなる先細り形状である。具体的には、変形した状態の吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mより下方の下側領域40Dから、仮想線Mよりも上側(着用者側)に近接した上側領域40Uに向かって狭くなる先細り形状であり、着用者の股間部の隙間に収まり易く違和感を与えにくい。
【0097】
また、中央曲部によって形成される凸状部分は、第2層42のみによって構成されており、第1層41と第2層42とが積層されて構成された部分よりも厚みが薄い。すなわち、中央曲部によって形成される凸状部分は、厚みが薄くかつ高さが高いため、股間部の狭い隙間に挿入され易くなり、排泄口と密着し易くなる。よって、例えば、排尿口と吸収体とが密着するため、排泄された尿を迅速に吸収することができる。また、着用者の股間部の肌に近い部分においては、吸収体の厚みが薄く、肌から遠い部分で厚みが厚くなるように折り畳まれるため、違和感なくフィットさせることができる。
【0098】
吸収体40は、延出領域S51を有するため、排泄口の近傍に位置する股下領域S3における吸収体の面積を広く確保することができ、吸収性能を高めて、股下領域S3における漏れを防止できる。股下領域の面積を大きくした場合であっても、複数の曲部によって折り畳むため、吸収体を股下にコンパクトに配置することができ、吸収性能を確保しつつ、良好な装着感を維持することができる。
【0099】
このように構成された吸収性物品の製造方法としては、例えば、吸収体の第1層を成形する工程と、吸収体の第2層を成形する工程と、第1層と第2層とを合体させる工程と、ベルトコンベア等で吸収体を搬送し、搬送する過程で表面シート等のシート材と接合する工程と、を含む方法によって吸収性物品を製造することができる。なお、その他の工程は、公知の製造方法に従って製造し得る。
【0100】
また、第1層と第2層の両方に、開口部やサイドスリットを設けた場合、第1層と第2層とを重ね合わせるときの位置ずれが生じることがある。例えば、幅方向に位置ずれが生じると、左右に配置された一対のサイドスリットの幅が狭くなり、規則的な変形ができなくなったり、左右アンバランスな吸収体となり、吸収性や装着感に悪影響を及ぼしたりするおそれがある。しかし、第1層と第2層のうちいずれか一方に、開口部やサイドスリットを設けたことにより、サイドスリット等の位置ずれを防止できる。
【0101】
[変形例]
次に、変形例1〜6に係る使い捨ておむつの吸収体40G、40H、40I、40J、40K及び40Lの構成について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る使い捨ておむつ1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。図10は、変形例1〜6に係る使い捨ておむつの吸収体の平面図である。図11は、変形例に係る吸収体の変形前の状態と変形後の状態を示した模式断面図である。図11は、吸収体の幅狭領域S32における断面を示している。
【0102】
変形例1及び変形例4に係る吸収体は、第1層41のみによって構成されている。変形例2、変形例3、変形例5及び変形例6に係る吸収体は、第1層41と第2層42とによって構成されている。
【0103】
変形例1に係る吸収体40Gは、図10(a)に示すように、第1層のみによって形成され、第1層に、凹み部55、中央開口部45、一対の第1サイドスリット46、及び一対の第2サイドスリット47が形成されている。中央開口部45の幅は、実施の形態よりも短く、12mmである。
【0104】
変形例2に係る吸収体40Hには、図10(b)に示すように、本実施の形態と第1層と第2層の形状が逆になっている。すなわち、上側にサイドスリットや凹み部が形成された第1層が配置され、下側にサイドスリット等が形成されていない砂時計形状の第2層が配置されている。
【0105】
変形例3に係る吸収体40Iは、図10(c)に示すように、変形例2に係る吸収体と同様に、第2層に中央開口部等が形成されている。股下領域における第2サイドスリット47の幅方向における内側端部近傍に、第1層41の幅方向における外側端部41Wが配置されている。
【0106】
変形例4に係る吸収体40Jには、図10(d)に示すように、第2サイドスリット47の幅方向外側に、第3サイドスリット56が形成されている。
【0107】
変形例5に係る吸収体40Kは、図10(e)に示すように、第1サイドスリット46の幅方向における内側端部近傍に第1層の幅方向における外側端部が配置されている。更に、第2サイドスリットの幅方向外側に、第3サイドスリット56が形成されている。
【0108】
変形例6に係る吸収体40Lは、図10(f)に示すように、変形例5に係る吸収体と第1層と第2層の形状が逆になっている。更に、第2サイドスリットの幅方向外側に、第3サイドスリットが形成されている。
【0109】
変形例4〜変形例6に係る吸収体のように、第2サイドスリットの幅方向外側に第3サイドスリットを設けることにより、吸収体の折り畳み回数を増やすことができ、よりコンパクトに吸収体を股下に配置することができる。また、より股間部領域の吸収体の幅を広くし吸収容量を増やすことができる。
【0110】
また、中央開口部45の幅方向中心から第1サイドスリット46の幅方向内側端部までの距離をa、第1サイドスリット46の幅方向外側端部から第2サイドスリット47の幅方向内側端部までの距離をb、第2サイドスリット47の幅方向外側端部から第3サイドスリットの幅方向内側端部までの距離をc、第3サイドスリット56の幅方向外側端部から吸収体の幅方向外側端部までの距離をd、としたとき、a>b、a>c、a>dとすることが好ましく、より好ましくは、d≦b、d≦cとする。
【0111】
このような構成の吸収体40によれば、吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mよりも着用者の身体に近接した上側領域40Uに位置する吸収体の断面幅を短くし、仮想線Mよりも着用者の身体から離隔した下側領域40Dの断面幅を長くすることができ、着用者の股間部にフィットしやすくなる
【0112】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0113】
例えば、上述した実施形態では、パンツ型の使い捨ておむつとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、オープン型の使い捨ておむつ、失禁用パッド及び生理用ナプキンなどに適用してもよい。
【0114】
上述した実施形態では、スリット、弾性材又は剛性の変化する境界部分を用いて吸収体が曲がるよう構成したが、吸収体の厚さを薄くしたり、吸収体にエンボス加工を施したりすることによって吸収体が曲がるよう構成してもよい。
【0115】
また、本実施の形態に係る吸収性物品は、側端部弾性材49を備えているが、側端部弾性材49を備えていなくてもよい。また、防漏壁は、股間からの横漏れを防ぐために起立部(サイド弾性材90)有しているが、必ずしもサイド弾性材90を有していなくてもよい。
【0116】
本実施形態では、吸収体40は、第1層41と第2層42との2層構造であるが、本発明に係る着用物品の吸収体40は、1層のみによって構成されていてもよいし、3層以上で構成されていてもよい。
【0117】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0118】
1…使い捨ておむつ(使い捨て着用物品)、3…ウエストギャザー、3A…ウエスト弾性材、4,4’…前胴回り側縁部、5…レッグギャザー、5F…前脚回り弾性材、5R……後脚回り弾性材、6,6’…後胴回り縁部、8…中間股下縁部、10…表面シート、15…セカンドシート、20…吸収体表面被覆シート、30…吸収体裏面被覆シート、40,40G,40H,40I,40J,40K,40L…吸収体、40C…中央部分、40D…下側領域、40M…中間部分、40N…幅狭部、40S…側端部分、40U…上側領域、41…第1層、41BL,41FL…幅広部、41N…幅狭部、41W…外側端部、42…第2層、42N…中央部、42W…外側端部、43…弾性材被覆シート、44…中央弾性材、44C…中央部弾性部材、44F…前端部、44S…中央補助弾性部材、45…中央開口部、46…第1サイドスリット,47…第2サイドスリット、48…スリット弾性材、48F…前端部、49…側端部弾性材、50A…側縁部、55…凹み部、55F…前側凹み部、55R…後側凹み部、56…第3サイドスリット、 60…サイドシート、70F…前側外装トップシート、70R…後側外装トップシート、80F…前側外装バックシート、80R…後側外装バックシート、90…サイド弾性材、100…外装センターシート、 200…製造装置、 210…第1積層装置、 211…積層ドラム、 212…吸収材供給ダクト、 213…ロール、 220…第2積層装置、 221…積層ドラム、 222…吸収材供給ダクト、 223…ロール、 230…搬送コンベア、S1…前胴回り領域、S2…後胴回り領域、S3…股下領域、S31…中間股下部(腹側)、S32…幅狭領域、 S33…中間股下部(尻側)
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、吸収体を曲げることができる曲部を有する使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型おむつなどの使い捨て着用物品では、着用者の装着感向上や排泄物の漏れ防止を図るため、様々な工夫がなされている。例えば、吸収体を着用者側に曲げることができる曲部を吸収体に形成した使い捨て着用物品が知られている。例えば、特許文献1には、着用者の排泄物を吸収する吸収体に、吸収体の前後方向に沿った溝部を形成した使い捨て着用物品が記載されている。
【0003】
この使い捨て着用物品では、吸収体に曲部としての3本の溝部が形成され、着用時に各溝部の周辺部分がそれぞれ曲がる。中央の溝部周辺部分は、着用者の排泄口に向けて凸状となる、中央の溝部よりも幅方向外側に位置する中間の溝部周辺部分は、中央の溝部周辺部分と逆側に凸状、すなわち排泄口に対して凹状となる。
【0004】
すなわち、吸収体には、幅方向に沿って、凸状部分と凹状部分とが交互に隣接して形成される。吸収体の中央部分が股間部分に当接するため、吸収性能を高めることができる。また、複数の曲部によって吸収体が股間部分に沿って曲がり易くなるため、フィット性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4092319号公報(図2及び図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の使い捨て着用物品においては、以下の問題があった。
【0007】
吸収体を凸状に変形させる曲部は、着用者の股間に当てられる股下領域のみならず、股下領域よりも後方や前方に位置する後胴回り領域や前胴回り領域にも設けられている。例えば、股下領域よりも後方の後胴回り領域は、着用者の臀部に接するように配置される。この後胴回り領域に凹状部分や凸状部分が形成されていると、身体に沿って吸収体が配置されず、フィット性が低下するおそれがある。
【0008】
また、上述の使い捨て着用物品において、体液の吸収性能を高めようとすると、吸収体の厚みを厚くすることが考えられる。しかし、吸収体の厚みを厚くすると、吸収体が折り曲がり難くなり、フィット性が低下するおそれがある。また、吸収体の厚みを厚くすることなく吸収性能を高めようとすると、吸収体の幅を長くすることが考えられる。しかし、吸収体の幅を長くすると、股下領域に配される吸収体の面積が大きくなり、吸収体を股間部の下方にコンパクトに配置し難くなることがある。よって、股間部近傍における違和感から装着性が悪化したり、横漏れが発生したりするおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、吸収性能を確保しつつ、着用者の股間部近傍におけるフィット性を高めて、装着感の悪化や漏れの発生を抑制することができる使い捨て着用物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る使い捨て着用物品は、着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向(幅方向W)と、着用者に向かう内方向(内方向IN)と、前記内方向と反対側に向かう外方向(外方向OUT)とを有する吸収体(吸収体40)を備え、前記吸収体は、前記着用者の股間部に当てられる股下領域(股下領域S3)と、前記股下領域の前方に配置される前胴回り領域(前胴回り領域S1)と、前記股下領域の後方に配置される後胴回り領域(後胴回り領域S2)と、を有する使い捨て着用物品であって、前記股下領域の幅方向中央には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように中央曲部(中央開口部45、中央弾性材44)が形成され、前記股下領域の前記中央曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記外方向に凸に曲がることができるように第1曲部(第1サイドスリット46)が形成され、前記股下領域の前記第1曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように第2曲部(第2サイドスリット、サイド弾性材48)が形成されており、前記第1曲部に対する前記長手方向外側の前記吸収体には、前記吸収体の幅方向外側端部から前記幅方向内側に向かって凹んだ凹み部(凹み部55)が形成されており、前記第2曲部は、前記凹み部の前記幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特徴によれば、股下領域に、内方向に凸に曲がることができるように形成された中央曲部、外方向に凸に曲がることができるように形成された第1曲部、及び内方向に凸に曲がることができるように形成された第2曲部を備えているため、股下領域を中心に吸収体を変形させて、身体に吸収体をフィットさせることができる。
【0012】
更に、第1曲部に対する長手方向外側の吸収体には、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部が形成されており、その凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に第2曲部が配置されている。すなわち、第2曲部よりも長手方向外側に凹み部が形成されている。
【0013】
よって、第2曲部による変形が、凹み部よりも長手方向外側に伝達し難くなり、股下領域のみを変形させて、股下領域よりも長手方向外側を変形させ難くすることができる。股下領域のみを凸に変形させ易くなるため、吸収性能を高めるために吸収体の幅を長くしたり、吸収体の面積を大きくしたりした場合であっても、吸収体を股下領域にコンパクトに配置することができる。よって、股間部近傍における違和感を抑制し、装着性を向上させることができ、かつ横漏れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
【図2】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。
【図3】図2に示すX1-X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図4】図2に示すX2-X’2線に沿った使い捨ておむつ1の長手方向断面図である。
【図5】図2に示すX3-X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図6】実施の形態に係る吸収体の平面図である。
【図7】実施の形態に係る吸収体の斜視図である。
【図8】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示すX1-X’1線に沿った断面図である。
【図9】第1実施形態に係る使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示す断面図(閉脚時)である。
【図10】変形例に係る使い捨ておむつ1の吸収体の平面図である。
【図11】変形例に係る使い捨ておむつ1の吸収体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る使い捨ておむつ1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0016】
本実施形態に係る使い捨て着用物品の吸収体は、吸収体を凸に曲がることができるように構成された中央曲部、第1曲部及び第2曲部と、吸収体の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部と、が形成されており、凹み部の幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に第2曲部が配置されていることを特徴とする。
【0017】
(1)使い捨て着用物品の全体概略構成
図1は、本実施形態において使い捨て着用物品を構成する使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。図3は、図2に示すX1−X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。図4は、図2に示すX2−X’2線に沿った使い捨ておむつ1の長手方向断面図である。図5は、図2に示すX3−X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。使い捨ておむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつである。
【0018】
使い捨ておむつ1は、図2に示すように、吸収性物品1の長手方向Lにおいて、着用者の前胴回りに対応する前胴回り領域S1と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、前胴回り領域S1と後胴回り領域S2との間に位置する股下領域S3と、を有する。股下領域S3は、着用者の股間部で脚を閉じたときに最も幅が狭くなる幅狭領域S32と、幅狭領域S32と前胴回り領域S1の間に位置する中間股下部(腹側)S31と、幅狭領域S32と後胴回り領域S2の間に位置する中間股下部(尻側)S33と、を有する。
【0019】
前胴回り領域S1の吸収性物品1の幅方向W外側に位置する前胴回り縁部4が、後胴回り領域S2の幅方向Wの外側に位置する後胴回り縁部6と接合され、かつ前胴回り縁部4’が、後胴回り縁部6’と接合されることによって、使い捨ておむつ1がパンツ型に形成される。
【0020】
使い捨ておむつ1は、表面シート10、吸収体40、サイドシート60、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100、前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80R等を備えており、これらは互いに、接着剤や熱融着などによって接合されている。
【0021】
前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、前側外装バックシート80F、後側外装バックシート80R、及び外装センターシート100は、使い捨ておむつ1の外装部分を構成するシートである。前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100の内側(肌当接面側)には、綿状パルプと高分子吸水性ポリマーから構成される吸収体40が設けられる。
【0022】
表面シート10は、着用者の肌に直接的に接し得る肌当接面を形成するシートである。表面シート10は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成されている。本実施の形態に係る表面シート10は、ポリプロピレンからなる目付20g/m2の親水性スパンボンド不織布によって形成されている。
【0023】
表面シート10の非肌当接面側には、セカンドシート15が接合されている。セカンドシート15は、表面シート10と吸収体表面被覆シート20との間に配置される。セカンドシート15を設けることにより、体液の吸収速度を速くすることができ、かつ吸収後における体液の逆戻りを抑制することができる。本実施の形態に係る吸収性物品の吸収体は、着用者の股間部に密着する構造であるため、吸収後の体液の逆戻りを抑制することにより、排泄後の快適性を向上させることができる。セカンドシート15は、例えば、エアスルー不織布や、開孔フィルムなどが用いられる。本実施の形態のセカンドシート15は、エアスルー不織布50g/m2(親水性)によって形成されている。
【0024】
セカンドシート15の幅方向の両側部は、第1サイドスリット46とほぼ同じ位置(望ましくは、第1サイドスリット46よりも内側端部)に位置している。セカンドシート15が配置された領域と、セカンドシート15が配置されていない領域(セカンドシート15の幅方向の両側部よりも幅方向外側の領域)は、剛性が異なる。セカンドシートの有無による剛性差を設けることにより、第1サイドスリット46によって構成される第1曲部を基点に曲がり易くなる。なお、本実施の形態においては、第1サイドスリット46の幅を10mmとし、一対の第1サイドスリット46の幅方向内側端部同士の間隔を76mmとし、セカンドシートの幅を80mmとしている。
【0025】
吸収体表面被覆シート20は、表面シート10と吸収体40との間に設けられている。吸収体表面被覆シート20は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布、ティッシュなどの液透過性のシートによって形成されている。吸収体裏面被覆シート30は、吸収体40の非肌当接面側に設けられている。吸収体裏面被覆シート30は、液不透過性フィルムなど(例えば、ポリエチレン)のシートによって形成されている。
【0026】
吸収体表面被覆シート20は、第1サイドスリット46が形成された部分において、吸収体裏面被覆シート30と接合されるように構成してもよい。このように構成することで、吸収体40が変形して第1サイドスリット46が閉じたり、吸収体表面被覆シート20等と吸収体40とがずれたりすることを抑制できる。また、吸収体40が液体を吸収して膨らんだ場合において、第1サイドスリット46が閉じることを防止できるため、第1サイドスリット46によって凸状部分を確実に形成することが可能となる。
【0027】
吸収体40は、吸収体表面被覆シート20及び吸収体裏面被覆シート30との間に配置されている。吸収体40は、前胴回り領域S1から後胴回り領域S2に向かう長手方向Lと、長手方向Lに直交する幅方向Wとを有する。さらに、吸収体40は、使い捨ておむつ1を着用する着用者に向かう内方向INと、内方向と反対側に向かう外方向OUTとを有する。吸収体40は、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの混合粉体で形成される。
【0028】
吸収体40は、着用者との非肌当接面側に位置する第1層41と、第1層41と重ねられ、かつ着用者の肌当接面側に位置する第2層42と、によって構成されている(図7参照)。吸収体40の第1層41には、幅方向Wにおける中央に中央開口部45が形成される。中央開口部45の幅方向における両外側には、一対の第1サイドスリット46が形成される。一対の第1サイドスリット46の幅方向における両外側には、一対の第2サイドスリット47が形成される。なお、吸収体40の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0029】
吸収性物品1は、吸収性物品1の厚み方向Tにおいて中央開口部45に重なるように配置された中央弾性材44と、厚み方向Tにおいて第2サイドスリット47と少なくとも一部が重なるように配置されたスリット弾性材48と、を有する。
【0030】
吸収体40に形成されたこれらの弾性材やスリット等によって、使い捨ておむつ1が着用された際に吸収体40が曲がるように構成されている。本実施形態において、中央弾性材44及び中央開口部45は中央曲部を構成し、第1サイドスリット46は第1曲部を構成し、第2サイドスリット47及びスリット弾性材48は、第2曲部を構成する。
【0031】
サイドシート60は、吸収体40の幅方向Wの両側端において、表面シート10、吸収体表面被覆シート20及び吸収体裏面被覆シート30を一体に包むように設けられる。サイドシート60は、液不透過性の不織布などのシートによって形成されており、サイドシート60とサイド弾性材90とによって排泄物の横漏れを防止する防漏壁が構成される。
【0032】
外装トップシートは、前胴回り領域S1及び中間股下部(腹側)S31に形成される前側外装トップシート70Fと、後胴回り領域S2及び中間股下部(尻側)S33に形成される後側外装トップシート70Rとを備える。厚み方向Tにおいて、前側外装トップシート70Fは、前側外装バックシート80Fと吸収体40との間に配置される。厚み方向Tにおいて、後側外装トップシート70Rは、後側外装バックシート80Rと吸収体40との間に配置される。長手方向Lにおいて、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとの間には、外装センターシート100が配置されている。
【0033】
外装センターシート100の前端部は、前側外装トップシート70Fの後端部と接合され、外装センターシート100の後端部は、後側外装トップシート70Rの前端部と接合される。外装センターシート100は、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとを跨って配置されている。外装センターシート100は、連続的にスロットコーターで塗工されたホットメルト型接着剤によって、外装トップシートの表面側に対して接合される。
【0034】
外装センターシート100は、不織布などによって構成される。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布によって構成されている。外装センターシート100は、着用時において外装トップシートよりも内側(肌当接面側)に位置する。
【0035】
前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、幅方向Wの幅が他の領域よりも大きく形成されている。前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布によって構成されている。
【0036】
前側外装バックシート80Fは、前胴回り領域S1において前側外装トップシート70Fよりも非肌当接面側に設けられる。後側外装バックシート80Rは、後胴回り領域S2において後側外装トップシート70Rよりも非肌当接面側に設けられる。長手方向Lにおける前側外装バックシート80F(後側外装バックシート80R)の一端は、肌当接面側に折り返され、前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)の長手方向Lにおける端部を包むように設けられる。
【0037】
前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、ポリプロピレンからなる目付17g/m2のスパンボンド不織布によって構成されている。
【0038】
吸収体裏面被覆シート30は、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R及び外装センターシート100に対して部分的に接着されている。
【0039】
前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2には、ウエストギャザー3が設けられる。ウエストギャザー3は、吸収体40の幅方向Wに沿って伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長いウエスト弾性材3Aを有する。ウエスト弾性材3Aは、使い捨ておむつ1の幅方向Wに対して伸長された状態で接着剤(例えばホットメルト接着剤)によって、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。
【0040】
ウエストギャザー3は、前胴回り領域S1における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の前胴回り縁部4から他方の前胴回り縁部4‘まで連続し、後胴回り領域S2における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の後胴回り縁部6から他方の前胴回り縁部6‘まで連続する。
【0041】
後側外装バックシート80Rの中間股下縁部8には、レッグギャザー5が形成される。レッグギャザー5は、着用者の脚部に沿うように形成される。レッグギャザーは、伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長い脚回り弾性材5によって形成されている。脚回り弾性材5は、前胴回り領域S1から中間股下部(腹側)S31に配置された前脚回り弾性材5Fと、後胴回り領域S2から中間股下部(尻側)S33に配置された後脚回り弾性材5Rと、によって構成されている。
【0042】
脚回り弾性材5は、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。後脚回り弾性材5Rは、後胴回り縁部6から中間股下部(尻側)S33まで延びており、幅狭領域S32の手前で分断されている。前脚回り弾性材5Fは、前胴回り縁部4から中間股下部(尻側)S31まで延びており、幅狭領域S32の手前で分断されている。
【0043】
レッグギャザーを構成する前脚回り弾性材5F及び後脚回り弾性材5Rは、例えば、外装センターシート100を前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)と接合する前に、前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)と前側外装バックシート80F(後側外装バックシート80R)の股下端部よりはみ出した箇所の弾性部材をカットすることで分断されている。
【0044】
脚回り弾性材5は、予め外装トップシートに塗工したホットメルト型接着剤によって固定されている。ホットメルト型接着剤は、スパイラルスプレーによって塗工される。脚回り弾性材5の塗工量は、7g/m2とした。外装表面シートの端部付近(端部から約5mmの位置)の少なくとも脚回り弾性材5と重なる位置には、スロットコーターで接着剤が塗工されている。このように接着剤を塗工することにより、外装表面シートの端部から脚回り弾性材5が抜けることを防止できる。
【0045】
また、非接触型のスパイラルスプレーで接着剤を塗工すると、外装表面シートの端部付近の接着剤がはみ出して、製造上の不具合が発生するおそれがある。しかし、接触型のスロットコーターで塗工することにより、接着剤のはみ出しを防止することができる。なお、スロットコーターの塗工量は、10g/m2とした。
【0046】
サイドシート60の幅方向における端部は、サイドシート同士が重なり合っている。サイドシート同士が重なり合う部分には、長手方向Lに沿って伸長した状態でサイド弾性材90(図3参照)が設けられている。サイド弾性材90は、中間股下部(尻側)S33から幅狭領域S32を経て中間股下部(腹側)S31まで連続している。サイド弾性材90は、伸縮性を有する合成ゴムなどによって形成されている。
【0047】
中央弾性材44は、長手方向Lに沿って設けられて、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて中央開口部45と重なる位置に設けられている。中央弾性材44は、内方向INに凸、つまり、吸収体40が着用者に向けて凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に重なるように形成されている。中央弾性材44は、吸収性物品の幅方向中心において長手方向に沿って、伸長状態で配置されている。中央弾性材44は、幅狭領域S32を中心に、中間股下部(腹側)S31から中間股下部(尻側)S33に向かって配置される。
【0048】
スリット弾性材48は、長手方向Lにおいて、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて第2サイドスリット47と重なる位置に設けられている。スリット弾性材48は、幅方向Wに3本並列した状態で配置されている。スリット弾性材48は、内方向INに凸、つまり、吸収体40が着用者に向けて凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に重なるように形成されている。
【0049】
中央弾性材44は、弾性材被覆シート43と、吸収体裏面被覆シート30の間に、伸長された状態で設けられている。中央弾性材44は、1.2〜2.5倍の伸長倍率で配置される。本実施の形態に係る中央弾性材は、620dtexの太さ、1.8倍の伸長倍率で7本伸長固定される。中央弾性材の間隔は、5mmである。中央弾性材44の長手方向Lの長さは約120mmである。
【0050】
中央弾性材44は、スパンデックスであり、Vスロット方式でホットメルト型接着剤を塗工される。中央弾性材44には、伸縮性不織布など用いてもよい。弾性材被覆シート43は、不織布などのシートで構成され、本実施形態では、ポリプロピレンからなる目付15g/m2のSMS不織布(疎水性)を用いた。
【0051】
スリット弾性材48は、吸収体裏面被覆シート30とサイドシート60との間に、接着剤によって接合されている。実施の形態に係るスリット弾性材48は、620dtexの太さ、2.0倍の伸長倍率で2本伸長固定される。スリット弾性材48は、スパンデックスである。スリット弾性材48には、リットノズル塗工による直接塗工方法でホットメルト型接着剤が塗工される。
【0052】
なお、スリット弾性材48は、吸収体40が凸に曲がる前の状態で、中央弾性材44よりも低い伸長応力となるように構成されている。吸収体が凸に曲がる前の状態とは、換言すれば、図2に示す、着用物品を平面に伸ばした状態である。スリット弾性材48を中央弾性材44よりも低い伸長応力となるように構成することで、中央弾性材44によって形成される凸状部分の高さが、スリット弾性材48によって形成される凸状部分よりも高くなる。よって、着用時において中央領域の凸状部分を着用者の排泄口側に密着させることが可能となる。
【0053】
中央弾性材44の前端部44Fは、スリット弾性材48の前端部48Fよりも後方に配置されている。すなわち、中央曲部の前端部は、第2曲部の前端部よりも後方に設けられる。このような構成によれば、股間部において着用者の前方に空間が形成され易くなり、股間部の前側が圧迫されることによる装着感の悪化を抑制することができる。
【0054】
中央弾性材44及びスリット弾性材48の素材には、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、スパンデックス、発泡ポリウレタン等を挙げることができる。その他、中央弾性材44及びスリット弾性材48の材料としては、伸縮不織布などの弾性シートを用いてもよい。
【0055】
側端部弾性材49は、吸収体の幅方向における両側部において、吸収体裏面被覆シート30とサイドシート60との間に接着剤によって接合されている。側端部弾性材49は、長手方向Lに沿って配置されており、股下領域S3の中間股下部(尻側)S33及び幅狭領域S32に跨って配置される。側端部弾性材49は、スリット弾性材48よりも後方かつ幅方向外側に配置されている。側端部弾性材49は、幅狭領域よりも後方の吸収体の側部を着用者側に引き上げ、着用者のお尻を包み込むように吸収体を変形させる。このように吸収体を変形させることにより、中間股下部(尻部)からの漏れを防ぐことができる。実施の形態に係る側端部弾性材49は、780dtexの太さ、2.3倍の伸長倍率で2本伸長固定される。
【0056】
なお、弾性材の伸長応力は、例えば、次のようにして測定することができる。
【0057】
(1)凸状部分を形成する弾性材を幅方向にすべて含むように、弾性材を挟み込んだ資材ごと切り出す。具体的には、本実施例に係る着用物品においては、5mm間隔で3本ずつ配置された中央弾性材及びスリット弾性材を挟み込んだ資材をたるみがないように伸長させた状態で、幅13mm×長さ100mmを切り出す。同じく伸長させた状態で長手方向両端部からそれぞれ10mm内側にマーキングする。伸長応力の測定には、インスロンジャパンカンパニィリミテッド社製の引張り試験機(例えば、型式:5564)、又は株式会社島津製作所製オートグラフ(例えば、型式:AGS-1kNG)を使用した。
【0058】
(2) (1)の試料を、マーキング部がチャック内側端部になるように上部チャックで挟むとともに、他方のマーキング部がチャック内端部になるように下部チャックで挟む。チャック間における試料の長さ寸法は、80mmとなる。なお、弾性材のギャザーとして効いている長さが100mmより短い場合は、ギャザーとして効いている弾性材の長さうち最も短い長さより20mm短い長さをチャック間における試料の長さに設定する。初期のチャック間距離は初期に試料のテンションが掛からないようにするため、試料が縮んだときの長さ(自然長)よりも短く設定する。それらチャックが互いに離間するように試料を100mm/minの条件で上下方向へ引っ張り、試料を伸長する。
【0059】
(3) 試料を、弾性部材を挟み込んだ資材がたるみなく伸長したときの試料のチャック間における長さ寸法を100%として、試料のチャック間の長さ寸法が90%になるまで試料を伸ばし、そのときの試料の伸長時応力を測定し、弾性材の伸長応力とする。すなわち上記本実施例では試料の100%長さ寸法80mmに対して90%の72mmまで試料を伸ばしたときの伸長時応力を測定する。
【0060】
また、吸収体40の厚さは、吸収体40の製品長及び製品幅に伸ばされた状態(つまり、しわの入らないように平坦な状態)で厚さ測定器に測定したい部分を挟み込んで測定する。使用可能な測定装置としては、例えば、PEACOCK製厚み計(測定部:直径5mm、測定時圧力:163g/cm2)を用いることができる。
【0061】
なお、上述した使い捨ておむつ1を構成する各部材は、例えば、特開2006−346439号公報に記載された材料を用いてもよい。
【0062】
(2)吸収体の構造
図7は、吸収体40の平面図であり、図8は、吸収体40の斜視図である。図7及び図8に示すように、吸収体40は、第1層41と、第1層41と重ねられる第2層42とを有する。第1層41は、着用者の非肌当接面側に位置し、第2層42は、着用者の肌当接面側に位置する。第1層41の長手方向の長さは、第2層42の長手方向の長さよりも長い。第1層41は、前胴回り領域S1から後胴回り領域S2に跨って配置されている。
【0063】
第1層41と、第2層42とは、綿状パルプと高分子吸収性ポリマー(SAP)とから構成されている。吸収体40は、例えば、パルプ0〜500g/m2とSAP0〜500g/m2とを混合させて形成することができる。本実施の形態に係る第1層41は、パルプ250g/m2とSAP150g/m2とを混合させて形成されており厚さは約2.5mmである。本実施の形態に係る第2層42は、パルプ200g/m2とSAP90g/m2とを混合させて形成されており、厚さは約2.0mmである。
【0064】
第2層42は、幅方向Wの中央に向かって凹み、幅方向Wにおいて所定の幅を有する幅狭部42Nと、長手方向Lにおける幅狭部42Nの両端に形成され、幅狭部の幅よりも幅が長い幅広部42FL及び幅広部42BLと、を有している。幅狭部42Nは、股下領域S3の幅狭領域S32に形成されている。幅広部42FLは、中間股下部(腹側)S31に形成され、幅広部43BLは、中間股下部(尻側)S33に形成されている。幅狭部42Nの側端、幅広部42FLの側端、及び幅広部42BLの側端は、曲線で結ばれており、第2層42は砂時計型の平面形状を有する。
【0065】
第1層41は、中間股下部(腹側)S31から幅狭領域S32に向かって幅方向の長さが短くなり、かつ中間股下部(尻側)S33から股下領域S3に向かって幅方向の長さが短くなっている。
【0066】
第1層41の中間股下部(腹側)S31及び中間股下部(尻側)S33には、吸収体40の幅方向外側端部から幅方向内側に向かって凹んだ凹み部55が形成されている。凹み部55は、幅狭領域S32よりも前方であって、第1曲部を構成する第1サイドスリット46よりも前方に位置する前側凹み部55Fと、幅狭領域S32よりも後方であって、第1曲部を構成する第1サイドスリット46よりも後方に位置する後部凹み部55Bと、を有する。前側凹み部55Fは、後方に向かって幅方向外側から幅方向内側に延びる形状であり、後側凹み部55Bは、前方に向かって幅方向外側から幅方向内側に延びる形状である。
【0067】
第1層41には、中央開口部45、一対の第1サイドスリット46及び一対の第2サイドスリット47が形成されている。中央開口部45は、幅方向Wの中央部に形成されている。中央開口部45は、長手方向Lに沿って延在する縦長の形状を有し、幅狭領域S32、中間股下部(腹側)S31及び中間股下部(尻側)S33に跨って形成されている。このように中央開口部45を形成することにより、中央部分40Cを着用者側である内方向INに凸に曲がり易くすることができる。また、吸収体の前後方向への体液等の拡散性を高め、広い範囲において体液等を拡散させて、吸収性能を向上させることができる。
【0068】
第1サイドスリット46及び第2サイドスリット47は、中央開口部45よりも幅方向外側に形成されている。第1サイドスリット46及び第2サイドスリット47は、長手方向Lに沿って延在する縦長の形状を有し、幅狭領域S32に形成されている。
【0069】
一対の第1サイドスリット46は、外方向OUTに凸、つまり吸収体40が中央開口部45と逆の凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に形成されている。一対の第2サイドスリット47は、内方向INに凸、つまり吸収体40が中央開口部45と同じ凸に曲がるように、長手方向Lに沿って吸収体40に形成されている。
【0070】
第1サイドスリット46は、前側凹み部55F及び後側凹み部55Bの幅方向内側端部55FI,55BIよりも幅方向内側に配置されている。第2サイドスリット47は、前側凹み部55F及び後側凹み部55Bの幅方向内側端部55FI,55BIよりも幅方向外側に配置されている。
【0071】
吸収体40は、長手方向における前側凹み部55Fと後側凹み部55Bとの間に位置する延出領域S51を有する。延出領域S51は、延出領域S51は、前側凹み部55Fの幅方向における内側端部と後側凹み部55Bの内側端部間を結ぶ仮想線EL3よりも、幅方向外側に張り出した領域である。第1サイドスリット46は、延出領域S51よりも幅方向内側に配置され、第2サイドスリット47は、延出領域S51よりも幅方向外側に配置されている。延出領域S51は、図6において斜線が付された領域である。
【0072】
延出領域S51には、第2曲部を構成する第2サイドスリット47が形成されている。第2サイドスリット47の非肌当接面側には、第2曲部を構成するスリット弾性材48が配置されている。よって、延出領域S51は、第2曲部によって内方向に凸に変形する。
【0073】
第1曲部を構成する第1サイドスリット46及びスリット弾性材48の長手方向外側に、凹み部55が形成されているため、第1曲部による変形を長手方向外側に伝達し難くすることができる。よって、第1曲部よりも長手方向外側の吸収体を凸状に変形することを抑制し、吸収体を着用者の肌に沿わせて配置することができる。また、吸収体の前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2が変形した場合であっても、その変形が股下領域に伝達し難くなるため、股下領域を安定的に凸状に折り曲げることができる。
【0074】
また、吸収体40に凹み部55が形成されているため、例えば、吸収性能を確保するために吸収体の面積を大きくした場合であっても、股下領域S3の吸収体40を適切に折り畳み、吸収体40と排泄口とが密着させることができる。吸収性能を確保しつつ、股間部近傍の違和感を抑制することができる。
【0075】
更に、延出領域S51は、幅方向内側から幅方向外側に向かって長手方向内側から長手方向外側に広がる形状である。前側凹み部55Fの幅方向における内側端部と後側凹み部55Bの内側端部間を結ぶ仮想線の長さよりも、仮想線より幅方向外側に張り出した延出領域の長手方向における最大長さが長くなるように構成されている。このように、延出領域S51が幅方向外側に向かって拡開する形状であるため、凸状に曲げて着用者の股間部に配置する吸収体の面積を大きくすることができ、吸収性能を高めることができる。
【0076】
凹み部の幅方向における外側端部から幅方向における内側端部を結ぶ第1仮想線EL1(図2参照)は、第1サイドスリット46に沿った第2仮想線EL2と交差するように構成されている。このように、凹み部を形成することにより、第1曲部となる第1サイドスリット46から凹み部に繋がる仮想線を境界にして、吸収体40が肌当接面側に曲がるように構成される。なお、凹み部の形状は、吸収体の幅方向に沿って延びる形状であってもよいし、長手方向端部に向けて広がるような形状であってもよい。
【0077】
吸収体の幅は、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、120〜250mmが好ましく、股下領域S3で120mm〜250mmが好ましい。本実施の形態に係る吸収体の幅は、いずれの領域においても196mmである。
【0078】
中央開口部45の長手方向における長さは、第1サイドスリット46の長手方向における長さよりも長く、かつ第2サイドスリット47の長手方向における長さよりも長い。中央開口部45の幅方向における長さは、第1サイドスリット46の幅方向における長さよりも長く、かつ第2サイドスリットの幅方向における長さよりも長い。本実施の形態では、中央開口部の幅は、40mmであり、第1サイドスリット及び第2サイドスリットの幅は、それぞれ10mmである。
【0079】
本実施の形態では、中央開口部45の幅方向中心から第1サイドスリット46の幅方向内側端部までの距離をa、第1サイドスリット46の幅方向外側端部から第2サイドスリット47の幅方向内側端部までの距離をb、第2サイドスリット47の幅方向外側端部から吸収体の幅方向外側端部までの距離をcとしたとき、a=38mm、b=20mm、c=20mmとした。
【0080】
すなわち、中央曲部を構成する中央弾性材44と第1曲部を構成する第1サイドスリット46との幅方向における距離が、第1サイドスリット46と第2曲部を構成する第2サイドスリット47との幅方向における距離よりも長い。したがって、中央曲部の凸状部分の高さは、第2曲部の凸状部分の高さよりも高い。このため、使い捨ておむつ1の着用時において、着用者の排泄口に向けて凸状となる中央曲部は、排泄口と密着し易い。また、第1曲部は、凹部を形成するため、当該凹部に排泄物が入り込み易く、着用者の肌と排泄物が直接接触することを抑制できる。
【0081】
また、aとbの差、及びaとcの差は、それぞれ3mm以上が好ましく、より好ましくは、7〜25mmである。本実施の形態では、aとbの差、及びaとcの差を18mmとした。例えば、差が小さい場合は、吸収体が上方に持ち上がり難くなって、吸収体の幅方向中央が着用者の股間に密着し難くなることがある。一方、差が大きい場合には、吸収体の幅方向中央から幅方向外側に向かって体液が流れ易くなり、横漏れが発生するおそれがある。
【0082】
股下領域S3において、第2層42の幅方向における外側端部42Wは、前後方向に沿って配置されている。吸収体40の外側端部42Wよりも幅方向外側は、第1層41のみによって構成され、外側端部42Wよりも内側は、中央開口部45が形成された部分を除いて、第1層41と第2層42とによって構成される。よって、第2層42の外側端部42Wを境界として、吸収体40の剛性及び厚みが変化する。本実施の形態では、剛性等が変化する第2層の外側端部42Wを境界として、吸収体が曲がる。
【0083】
第2層42の外側端部42Wは、第1サイドスリット46が形成された第1層の端部41Wと厚み方向において重なっている。吸収体は、第2層42の外側端部42W及び第1層の端部41Wを基点に外方向に向かって凸形状に曲がる。なお、第2層42の幅方向における外側端部42W及び第1層の端部41Wは、前後方向に沿った辺である。よって、第1曲部は、前後方向に沿って形成される。
【0084】
このような第1層41と第2層42とによって構成される吸収体40は、図3に示すように、中央部分40C、中間部分40M、及び側端部分40Sを有する。中央部分40Cは、幅方向Wにおける吸収体40の中央部に形成される。中間部分は、中央部分40Cと側端部分40Sとの間に位置する。中央部分40Cには、中央曲部による凸状部分が形成される。中間部分40Mには、第1曲部による凸状部分が形成される。側端部分には、第2曲部による凸状部分が形成される。
【0085】
本実施形態では、第1層41と第2層42とは、厚さ方向Tに沿って押圧されることによって一体となっている。なお、第1層41と第2層42とは、接着剤や熱融着などによって一体化されていてもよい。また、吸収体40は、第1層41が非肌当接面側に位置し、第2層42が肌当接面側に位置しているが、第2層42が非肌当接面側に位置し、第1層41が肌当接面側に位置してもよい。
【0086】
(3)吸収体の形状変化
図8は、使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示す断面図(図1のX1−X’1線基準)である。図8に示すように、使い捨ておむつ1が着用されると、吸収体の股下領域S3は、着用者の股間に当てられる。着用者の脚等によって、吸収体には、幅方向外側から幅方向内側に向かって力が掛かる。吸収体40は、中央弾性材44及び中央開口部45と、第1サイドスリット46と、第2サイドスリット47及びスリット弾性材48とを基点として吸収体40が曲がり、使い捨ておむつ1の幅方向Wに沿った断面形状は、波状に変形する。よって、吸収体40の股下領域S3の幅狭領域S32は、規則的に折り畳まれた状態となる。
【0087】
吸収体40は、中央弾性材44によって内方向INに凸となった吸収体40の頂面が着用者の股間部に当接する。また、変形した状態の吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mよりも着用者の身体に近接した上側領域40Uには、中央部分40Cが位置する。一方、仮想線Mよりも着用者の身体から離隔した下側領域40Dには、中間部分40M、及び側端部分40Sが位置する。
【0088】
中央曲部による凸状部分が形成される中央部分40Cは、第2層42のみによって構成されており、比較的厚みが薄い。中間部分40Mにおける中央曲部による凸状部分と第1曲部による凸状部分との間は、第1層41と第2層42とが重なっており、比較的厚みが厚く、剛性が高い。中央曲部と第1曲部との間の剛性が高い部分によって中央曲部による凸状部分を支持することができ、中央曲部による凸形状の安定性を向上させることができる。
【0089】
また、中央曲部の中央部に長手方向に延びる中央溝やスリットを設けるように構成してもよい。中央曲部の中央部に長手方向に延びる中央溝やスリットを設けることにより、肌当接面側に凸となった中央曲部の幅方向中央部に、非肌当接面側に凹む凹部を設けることもでき、吸収体の幅方向中央部における液拡散効果を得ることができる。例えば、本実施形態のように2層構造の吸収体においては、上側に位置する吸収体の中央部に溝を設け、かつ中央弾性材は、幅方向中心線上の配置を避けて、吸収体の幅方向における中心線から5mm、10mm、15mmずつ離間させて計6本を配置することが望ましい。
【0090】
なお、サイド弾性材90を含む側縁部(レッグスタンディングギャザー)は、図中の厚さ方向Tにおいて、第2曲部を構成する第2サイドスリット47よりも高い位置、つまり、着用者側に位置していることが好ましい。
【0091】
図9は、着用者が脚を閉じた場合における使い捨ておむつ1の着用状態を模式的示す断面図(図2のX1−X’1線基準)である。なお、図中の仮想線は、着用者の股間部及び両脚部を示す。
【0092】
図9に示すように、着用者が両脚を閉じると、使い捨ておむつ1の断面形状は、図8に示した状態から図9に示す状態に変化する。着用者が両脚を閉じた場合、吸収体は、中央曲部、第1曲部及び第2曲部で折り畳まれ、互いに密着した状態で、股間部の下方においてコンパクトに配置される。
【0093】
このとき、中央弾性材44及び中央開口部45によって形成される中央曲部、は、着用者の股間部と当接するように位置する。一方、第1サイドスリット46によって形成される第1曲部は、非肌当接面側に凸状であり、着用者の排泄口と当接しない位置となる。更に、第2サイドスリット47によって形成される第2曲部は、中央曲部よりも低く、着用者の股間部の下方の位置となる。
【0094】
着用者の股間部において吸収体が密着しているので、肌伝いするような尿速の遅い尿が排出された場合であっても、体液の漏れを防止できる。また、折り畳まれた状態で、吸収体の肌から離れた部分の曲部においては、長手方向に延びる凹みが形成されるため、体液を長手方向外側へ拡散させることができ、横漏れを防止することができる。
【0095】
また、使い捨ておむつ1が着用されると、吸収体40の側端部弾性材49に対応する部分が着用者の身体側に持ち上げられる。幅方向Wにおける側端部弾性材の間には、スリット弾性材48が設けられていない。よって、吸収体40は、スリット弾性材48等によって凸状に変形せずに、臀部に沿った曲線形状となる。
【0096】
吸収体に形成した中央開口部45、第1サイドスリット46及び第2サイドスリットを基点に折りまげるため、吸収体40に厚さの薄い部分を形成して凸状部分とする場合と比較して、吸収体40が液体を吸収して膨らんだ場合でも吸収体40が曲がり易くなる。また、使い捨ておむつ1を着用して吸収体40が変形したときの断面形状は、非肌当接面側から肌当接面側に向かって狭くなる先細り形状である。具体的には、変形した状態の吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mより下方の下側領域40Dから、仮想線Mよりも上側(着用者側)に近接した上側領域40Uに向かって狭くなる先細り形状であり、着用者の股間部の隙間に収まり易く違和感を与えにくい。
【0097】
また、中央曲部によって形成される凸状部分は、第2層42のみによって構成されており、第1層41と第2層42とが積層されて構成された部分よりも厚みが薄い。すなわち、中央曲部によって形成される凸状部分は、厚みが薄くかつ高さが高いため、股間部の狭い隙間に挿入され易くなり、排泄口と密着し易くなる。よって、例えば、排尿口と吸収体とが密着するため、排泄された尿を迅速に吸収することができる。また、着用者の股間部の肌に近い部分においては、吸収体の厚みが薄く、肌から遠い部分で厚みが厚くなるように折り畳まれるため、違和感なくフィットさせることができる。
【0098】
吸収体40は、延出領域S51を有するため、排泄口の近傍に位置する股下領域S3における吸収体の面積を広く確保することができ、吸収性能を高めて、股下領域S3における漏れを防止できる。股下領域の面積を大きくした場合であっても、複数の曲部によって折り畳むため、吸収体を股下にコンパクトに配置することができ、吸収性能を確保しつつ、良好な装着感を維持することができる。
【0099】
このように構成された吸収性物品の製造方法としては、例えば、吸収体の第1層を成形する工程と、吸収体の第2層を成形する工程と、第1層と第2層とを合体させる工程と、ベルトコンベア等で吸収体を搬送し、搬送する過程で表面シート等のシート材と接合する工程と、を含む方法によって吸収性物品を製造することができる。なお、その他の工程は、公知の製造方法に従って製造し得る。
【0100】
また、第1層と第2層の両方に、開口部やサイドスリットを設けた場合、第1層と第2層とを重ね合わせるときの位置ずれが生じることがある。例えば、幅方向に位置ずれが生じると、左右に配置された一対のサイドスリットの幅が狭くなり、規則的な変形ができなくなったり、左右アンバランスな吸収体となり、吸収性や装着感に悪影響を及ぼしたりするおそれがある。しかし、第1層と第2層のうちいずれか一方に、開口部やサイドスリットを設けたことにより、サイドスリット等の位置ずれを防止できる。
【0101】
[変形例]
次に、変形例1〜6に係る使い捨ておむつの吸収体40G、40H、40I、40J、40K及び40Lの構成について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る使い捨ておむつ1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。図10は、変形例1〜6に係る使い捨ておむつの吸収体の平面図である。図11は、変形例に係る吸収体の変形前の状態と変形後の状態を示した模式断面図である。図11は、吸収体の幅狭領域S32における断面を示している。
【0102】
変形例1及び変形例4に係る吸収体は、第1層41のみによって構成されている。変形例2、変形例3、変形例5及び変形例6に係る吸収体は、第1層41と第2層42とによって構成されている。
【0103】
変形例1に係る吸収体40Gは、図10(a)に示すように、第1層のみによって形成され、第1層に、凹み部55、中央開口部45、一対の第1サイドスリット46、及び一対の第2サイドスリット47が形成されている。中央開口部45の幅は、実施の形態よりも短く、12mmである。
【0104】
変形例2に係る吸収体40Hには、図10(b)に示すように、本実施の形態と第1層と第2層の形状が逆になっている。すなわち、上側にサイドスリットや凹み部が形成された第1層が配置され、下側にサイドスリット等が形成されていない砂時計形状の第2層が配置されている。
【0105】
変形例3に係る吸収体40Iは、図10(c)に示すように、変形例2に係る吸収体と同様に、第2層に中央開口部等が形成されている。股下領域における第2サイドスリット47の幅方向における内側端部近傍に、第1層41の幅方向における外側端部41Wが配置されている。
【0106】
変形例4に係る吸収体40Jには、図10(d)に示すように、第2サイドスリット47の幅方向外側に、第3サイドスリット56が形成されている。
【0107】
変形例5に係る吸収体40Kは、図10(e)に示すように、第1サイドスリット46の幅方向における内側端部近傍に第1層の幅方向における外側端部が配置されている。更に、第2サイドスリットの幅方向外側に、第3サイドスリット56が形成されている。
【0108】
変形例6に係る吸収体40Lは、図10(f)に示すように、変形例5に係る吸収体と第1層と第2層の形状が逆になっている。更に、第2サイドスリットの幅方向外側に、第3サイドスリットが形成されている。
【0109】
変形例4〜変形例6に係る吸収体のように、第2サイドスリットの幅方向外側に第3サイドスリットを設けることにより、吸収体の折り畳み回数を増やすことができ、よりコンパクトに吸収体を股下に配置することができる。また、より股間部領域の吸収体の幅を広くし吸収容量を増やすことができる。
【0110】
また、中央開口部45の幅方向中心から第1サイドスリット46の幅方向内側端部までの距離をa、第1サイドスリット46の幅方向外側端部から第2サイドスリット47の幅方向内側端部までの距離をb、第2サイドスリット47の幅方向外側端部から第3サイドスリットの幅方向内側端部までの距離をc、第3サイドスリット56の幅方向外側端部から吸収体の幅方向外側端部までの距離をd、としたとき、a>b、a>c、a>dとすることが好ましく、より好ましくは、d≦b、d≦cとする。
【0111】
このような構成の吸収体40によれば、吸収体40の高さ40Tを二分した仮想線Mよりも着用者の身体に近接した上側領域40Uに位置する吸収体の断面幅を短くし、仮想線Mよりも着用者の身体から離隔した下側領域40Dの断面幅を長くすることができ、着用者の股間部にフィットしやすくなる
【0112】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0113】
例えば、上述した実施形態では、パンツ型の使い捨ておむつとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、オープン型の使い捨ておむつ、失禁用パッド及び生理用ナプキンなどに適用してもよい。
【0114】
上述した実施形態では、スリット、弾性材又は剛性の変化する境界部分を用いて吸収体が曲がるよう構成したが、吸収体の厚さを薄くしたり、吸収体にエンボス加工を施したりすることによって吸収体が曲がるよう構成してもよい。
【0115】
また、本実施の形態に係る吸収性物品は、側端部弾性材49を備えているが、側端部弾性材49を備えていなくてもよい。また、防漏壁は、股間からの横漏れを防ぐために起立部(サイド弾性材90)有しているが、必ずしもサイド弾性材90を有していなくてもよい。
【0116】
本実施形態では、吸収体40は、第1層41と第2層42との2層構造であるが、本発明に係る着用物品の吸収体40は、1層のみによって構成されていてもよいし、3層以上で構成されていてもよい。
【0117】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0118】
1…使い捨ておむつ(使い捨て着用物品)、3…ウエストギャザー、3A…ウエスト弾性材、4,4’…前胴回り側縁部、5…レッグギャザー、5F…前脚回り弾性材、5R……後脚回り弾性材、6,6’…後胴回り縁部、8…中間股下縁部、10…表面シート、15…セカンドシート、20…吸収体表面被覆シート、30…吸収体裏面被覆シート、40,40G,40H,40I,40J,40K,40L…吸収体、40C…中央部分、40D…下側領域、40M…中間部分、40N…幅狭部、40S…側端部分、40U…上側領域、41…第1層、41BL,41FL…幅広部、41N…幅狭部、41W…外側端部、42…第2層、42N…中央部、42W…外側端部、43…弾性材被覆シート、44…中央弾性材、44C…中央部弾性部材、44F…前端部、44S…中央補助弾性部材、45…中央開口部、46…第1サイドスリット,47…第2サイドスリット、48…スリット弾性材、48F…前端部、49…側端部弾性材、50A…側縁部、55…凹み部、55F…前側凹み部、55R…後側凹み部、56…第3サイドスリット、 60…サイドシート、70F…前側外装トップシート、70R…後側外装トップシート、80F…前側外装バックシート、80R…後側外装バックシート、90…サイド弾性材、100…外装センターシート、 200…製造装置、 210…第1積層装置、 211…積層ドラム、 212…吸収材供給ダクト、 213…ロール、 220…第2積層装置、 221…積層ドラム、 222…吸収材供給ダクト、 223…ロール、 230…搬送コンベア、S1…前胴回り領域、S2…後胴回り領域、S3…股下領域、S31…中間股下部(腹側)、S32…幅狭領域、 S33…中間股下部(尻側)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、前記着用者に向かう内方向と、前記内方向と反対側に向かう外方向とを有する吸収体を備え、
前記吸収体は、前記着用者の股間部に当てられる股下領域と、前記股下領域の前方に配置される前胴回り領域と、前記股下領域の後方に配置される後胴回り領域と、を有する使い捨て着用物品であって、
前記股下領域の幅方向中央には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように中央曲部が形成され、
前記股下領域の前記中央曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記外方向に凸に曲がることができるように第1曲部が形成され、
前記股下領域の前記第1曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように第2曲部が形成されており、
前記第1曲部に対する前記長手方向外側の前記吸収体には、前記吸収体の幅方向外側端部から前記幅方向内側に向かって凹んだ凹み部が形成されており、
前記第2曲部は、前記凹み部の前記幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されていることを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記凹み部は、前記第1曲部よりも前方に位置する第1凹み部と、前記第1曲部よりも後方に位置する第2凹み部と、を有する、請求項1に記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記第1凹み部と前記第2凹み部との間の前記吸収体は、幅方向内側から幅方向外側に向かって長手方向内側から長手方向外側に広がる形状である、請求項2に記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記吸収体は、
前記着用者との非肌当接面側に位置する第1層と、
前記第1層と重ねられ、かつ前記着用者の肌当接面側に位置する第2層とを有し、
前記中央曲部、前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記第1層及び前記第2層のうち、いずれか一方の層に形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記中央曲部と前記第1曲部との前記幅方向における長さは、前記第1曲部と前記第2曲部との前記幅方向における長さよりも長い、請求項1から請求項4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記凹み部の前記幅方向における外側端部から前記幅方向における内側端部を結ぶ第1仮想線は、前記第1曲部に沿った第2仮想線と交差する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記中央曲部によって前記内方向に凸となった前記吸収体の頂面は、前記股間部に当接するように構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記中央曲部、前記第1曲部、及び前記第2曲部は、前記前後方向に沿って前記吸収体に形成されたスリット又は前記前後方向に沿って配置された弾性材によって構成される、請求項1から請求項7のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項1】
着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、前記着用者に向かう内方向と、前記内方向と反対側に向かう外方向とを有する吸収体を備え、
前記吸収体は、前記着用者の股間部に当てられる股下領域と、前記股下領域の前方に配置される前胴回り領域と、前記股下領域の後方に配置される後胴回り領域と、を有する使い捨て着用物品であって、
前記股下領域の幅方向中央には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように中央曲部が形成され、
前記股下領域の前記中央曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記外方向に凸に曲がることができるように第1曲部が形成され、
前記股下領域の前記第1曲部に対する幅方向外側には、前記吸収体が前記内方向に凸に曲がることができるように第2曲部が形成されており、
前記第1曲部に対する前記長手方向外側の前記吸収体には、前記吸収体の幅方向外側端部から前記幅方向内側に向かって凹んだ凹み部が形成されており、
前記第2曲部は、前記凹み部の前記幅方向における内側端部よりも、幅方向外側に配置されていることを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記凹み部は、前記第1曲部よりも前方に位置する第1凹み部と、前記第1曲部よりも後方に位置する第2凹み部と、を有する、請求項1に記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記第1凹み部と前記第2凹み部との間の前記吸収体は、幅方向内側から幅方向外側に向かって長手方向内側から長手方向外側に広がる形状である、請求項2に記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記吸収体は、
前記着用者との非肌当接面側に位置する第1層と、
前記第1層と重ねられ、かつ前記着用者の肌当接面側に位置する第2層とを有し、
前記中央曲部、前記第1曲部及び前記第2曲部は、前記第1層及び前記第2層のうち、いずれか一方の層に形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記中央曲部と前記第1曲部との前記幅方向における長さは、前記第1曲部と前記第2曲部との前記幅方向における長さよりも長い、請求項1から請求項4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記凹み部の前記幅方向における外側端部から前記幅方向における内側端部を結ぶ第1仮想線は、前記第1曲部に沿った第2仮想線と交差する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記中央曲部によって前記内方向に凸となった前記吸収体の頂面は、前記股間部に当接するように構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記中央曲部、前記第1曲部、及び前記第2曲部は、前記前後方向に沿って前記吸収体に形成されたスリット又は前記前後方向に沿って配置された弾性材によって構成される、請求項1から請求項7のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−13524(P2013−13524A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147784(P2011−147784)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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