説明

使用済みプロセスオイルの精製方法

本発明では、使用済みプロセスオイルの精製方法が供される。本発明の精製方法は、使用済みプロセスオイルと添加剤を混合する工程を含んで成る。添加剤は、
a)少なくとも1つのアルカノールアミン、および
b)アルカノールアミンa)との混合物が精製方法の実施温度にて液体となるような融点を有し、6〜18の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1つの成分
から成る液体混合物を含んで成り、
アルカノールアミンa)と成分b)との混合物のpH値が5〜8、好ましくは6〜7、より好ましくは6.3であり、また、アルカノールアミンa)と成分b)との混合物がプロセスオイルに実質的に不溶性を有し、添加剤とプロセスオイルとの混合により2相混合物が形成される。本発明の精製方法は、混合工程の後に、プロセスオイルを含んだ相と、汚染物質が吸収されたアルカノールアミンa)と成分b)との混合物を含んだ相とを分離する工程も含んで成る。また、本発明は、使用済みプロセスオイルの精製に用いる混合物の調製に際して、6〜18個の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸を使用すること及びアルカノールアミンを使用することにも関している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのプロセスオイル(即ち、蓄積した固形物または溶存不純物で汚染されているプロセスオイル)を精製する方法に関している。更に、本発明は、使用済みプロセスオイルの精製に際して種々の物質を使用することにも関している。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の全ての特許は、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0003】
例えば製鉄業で使用されるプロセスオイルとしては様々なプロセスオイルが存在している。プロセスオイルを潤滑剤(または平滑剤)として用いる場合では、不純物の蓄積に起因してプロセスオイルが汚染される。これまでのところ、このような汚染されたプロセスオイルを精製する方法として、工業的に利用できる有用な方法は存在していない。
【0004】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる「プロセスオイル」という用語は、一般的には、種々の工業プロセスで用いられるオイルに関している。制限するわけではないが、プロセスオイルの例としては、圧延油(圧延オイル)、ホーニング油(ホーニングオイル)、エンジン潤滑油(エンジン潤滑オイル)、鉱油、パラフィンオイル、および、塩素含有パラフィン油を挙げることができる。プロセスオイルを分解する一般的な方法は、プロセスオイルを燃焼させることによって行うので、分解に伴って環境問題を引き起こすことになる。このことは、プロセスオイルがクロロパラフィンオイルのような塩素含有オイルの場合に特に当てはまることである。
【0005】
現在、製鉄業の多くのプロセスにおいて、高い負荷(重作業の運転)の条件下で効率的な潤滑作用をもたらすようなクロロパラフィンオイルに代わる環境に優しい代替物は存在していない。
【0006】
これまでのところ、帯電している制御ポリマーを含んで成るポリマー混合物および/または有機ポリマーに基づいた相化学方法によって、汚染物質を除去してオイル(野菜または鉱物油に基づいたオイル)を精製できることは知られている(WO95/14752)。このような従来技術の方法は、目的流体と分離添加物との間の分配が、目的流体と、その目的流体/分離添加物の界面(目的物質と分離添加物との界面)との間で主として生じるという点で不利益である。この不利益な点は、界面での化学的な相互作用に起因しており、また、ポリマー/ポリマー混合物と目的物質との密度差が無視できない程に大きいことに起因している。
【0007】
また、SE464306号には、適当な有機溶媒に溶存するジカルボン酸を用いた凝集作用によって、鉱油中の特定の不純物を分離する方法が開示されている。
【0008】
汚染された一般のプロセスオイルおよび環境に優しくない汚染されたプロセスオイル(特にクロロパラフィンオイルなど)をリサイクル可能な程度に精製できるプロセスが望まれている。
【0009】
濾過または遠心分離などの他の従来技術で固形状の分散不純物または溶存物質を流体から分離できない場合では、関連する幾つかの相を用いて分離できる。かかる分離は界面化学現象に一般的に基づいており、適当な分離添加剤が選択される。この分離添加剤は、所定の条件下では、精製される流体に対して実質的に不溶性を有している。化学的な分離法の目的は、処理される目的流体を、少なくとも1種の不純物から分離することである。
【0010】
精製される流体中の物質が、その周囲の分子との相互作用に応じて、分離添加物の方へと移動する場合、上述の分離法は化学的相分離と呼ばれる。この化学的相分離は、2つよりも多い相を伴う工程から構成されており、例えば、種々の幾つかの分離媒体(混和性を有していない分離媒体)を用いて行うことができる。
【0011】
クロロパラフィンオイルの精製を行う化学的相分離は、これまでいずれの文献でも報告されていない。このことは、スチールおよび鉄の機械加工に関連する他の製造の「重作業の運転」に使用され、不純物(滑剤および粒子状不純物)が蓄積したクロロパラフィンオイルの場合に特に当てはまることである。
【0012】
これまでのところ、相化学法を用いて、圧延油またはエンジン潤滑オイルのようなプロセスオイルから、粒子状無機物もしくは粒子状有機物および/または溶存無機物もしくは溶存有機物から成る不純物の分離を促進する方法は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、汚染されたプロセスオイルを精製後にリサイクルすることによって、汚染されたプロセスオイルの不必要な分解に関連した問題を解決している。尚、このことは、既知の技術では達成できないことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、界面化学的な分離法と機械的な分離法とを組み合わせることによって、固形状不純物および溶存不純物を除去してプロセスオイルを精製する方法が供される。ここで、汚染されたプロセスオイルを精製する本発明の方法は、
プロセスオイル中の固形状汚染不純物または溶存汚染不純物を化学的な相互作用によって吸収する特定の分離添加剤を、汚染された精製すべきオイルに加える第1工程、ならびに
静的沈降、遠心分離、真空濾過、プレス濾過、プレコート濾過および遠心濾過から成る群から選択される方法を用いて、分離添加剤および吸収された不純物を分離する第2工程
を含んで成る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1つの態様では、使用済みプロセスオイルを精製する方法であって、
(1)添加剤とプロセスオイルと混合する工程であって、
添加剤が、
a)少なくとも1つのアルカノールアミン、および
b)アルカノールアミンa)との混合物が精製方法の実施温度にて液体となる融点を有し、6〜18の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分、
から成る液体混合物を含んで成り、
アルカノールアミンa)と成分b)との混合物のpH値が5〜8、好ましくは6〜7、より好ましくは6.3であり、また、アルカノールアミンa)と成分b)との混合物がプロセスオイルに実質的に不溶性を有し、添加剤とプロセスオイルとの混合により2相混合物を形成する工程、ならびに
(2)プロセスオイルを含んだ相と、汚染物質が吸収されたアルカノールアミンa)と成分b)との混合物を含んだ相とを分離する工程
を有して成る。
【0016】
本発明の別の好ましい態様は、従属クレームに規定されている。つまり、本発明の方法の別の態様では、アルカノールアミンa)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから成る群から選択されるアルカノールアミンである。
【0017】
本発明の方法の更に別の態様では、アルカノールアミンa)がトリエタノールアミンである。
【0018】
また、本発明の方法の別の態様では、成分b)が、ラウリン酸、オレイン酸、ペンタデカン酸、デセン酸、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸から成る群から選択される成分である。
【0019】
本発明の方法の別の態様では、成分b)が、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸から成る群から選択される成分である。
【0020】
本発明の方法の別の態様では、静的沈降、遠心分離、真空濾過、プレス濾過、プレコート濾過および遠心濾過から成る群から選択される1つの方法または複数の方法の組合せによって、2相を分離する。
【0021】
本発明の方法の別の態様では、加えられるアルカノールアミンa)と成分b)との混合物の量は、使用済みプロセスオイルの重量基準で0.0001重量%〜10重量%である。
【0022】
本発明の方法の別の態様では、添加物が、アルカノールアミンa)および成分b)を含んでいるだけでなく、モノエチレングリコール、ジプロピレンモノエチルエーテル、グリセロールおよびプロピレングリコールから成る群から選択される少なくとも1種の成分c)をも含んでいる。
【0023】
本発明の方法の別の態様では、10℃よりも高い温度、好ましくは周囲温度で本発明の方法を実施する。
【0024】
本発明には、使用済みプロセスオイルの精製に用いる混合物の調製に際して、6〜18個の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分の使用も含まれる。
【0025】
本発明の使用の別の態様では、使用済みプロセスオイルの精製に用いる混合物の調製に際して、少なくとも1種のアルカノールアミンが用いられる。
【0026】
本発明の使用の更に別の態様では、使用済みプロセスオイルの精製のために、
a)少なくとも1種のアルカノールアミン、および
b)アルカノールアミンa)との混合物が精製方法の実施温度にて液体となるような融点を有し、6〜18の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分
から成る液体混合物が使用される。
【0027】
本発明の使用の更に別の態様では、使用済みプロセスオイルは、鉱油、圧延油、ホーニング油、引抜油(drawing oil)、エンジン潤滑油から成る群から選択されるプロセスオイルである。
【0028】
本発明の使用の別の態様では、10℃よりも高い温度、好ましくは周囲温度での使用が含まれる。
【0029】
本発明の方法の第1工程では、十分に攪拌することによって分離添加剤と目的流体とを混合する。分離添加剤は、その極性に起因して目的流体には溶解しないので、攪拌によって、小滴状の分離添加剤から成るコロイドが形成される。この分離添加剤から成るコロイドは、化学的相互作用(親水性相互作用、疎水性相互作用および電荷的相互作用)によって、目的流体に含まれる望ましくない固形分または溶存不純物を吸収することができる。分離添加剤は、ほとんどの鉱油(クロロパラフィンオイルおよびそれに由来する他のオイルを除く)よりも高い密度を有しているので、分離添加剤は、重力分離によって、固形分または溶存不純物と共に下相を形成する。尚、分離添加剤が、目的流体よりも低い密度を有していると、分離添加剤はより軽い上相を形成することになる。
【0030】
精製されるオイルに加えられる混合物を分離添加剤と呼ぶ。アルカノールアミンを加えた脂肪酸が、好ましくは分離添加剤として用いられる。分離添加剤は、室温で液体形態となり得る。適当な候補としては、動物の脂肪酸のみならず、野菜に由来する脂肪酸である。脂肪酸は、本発明の方法の実施温度で混合物が液体となるような融点を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種以上の脂肪酸である。本発明の方法の実施温度は、一般的には10℃より高い温度であり、好ましくは周囲温度(室温)である。このような温度は、分離添加剤、精製されるオイル、混合物の他の成分の沸点以下であることが好ましく、分離添加剤は室温で液体形態を有している。
【0031】
適当な脂肪酸は、ラウリン酸、オレイン酸、ペンタデカン酸、デセン酸、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸から成る群から選択される少なくとも1種以上の脂肪酸である。好ましい脂肪酸は、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸であり、その中でも、カプリル酸が特に好ましい。
【0032】
液体混合物のpH値が5〜8となるように、好ましくは6〜7、特に好ましくは6.3となるように、少なくとも1種のアルカノールアミンが脂肪酸に加えられる。例えば6〜7のpH範囲には、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0等の6〜7の範囲の全てのpH値を含むことを発明者は意図している。尚、最適とまではいかないまでも、6〜7の範囲外にある、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1および5.0など、または、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9および8.0などの他のpH値を用いてもよいことを当業者は理解されよう。
【0033】
pHを調整するために、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから成る群から選択される少なくとも1種以上アルカノールアミンが用いられる。モノエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが好ましい。トリエタノールアミンが特に好ましい。
【0034】
少なくとも1種の脂肪酸と少なくとも1種のアルカノールアミンとの混合物は、精製されるオイルに実質的に不溶となる性質を有するものでなければならない。
【0035】
プロセスオイルに加えるべき混合物は、モノエチレングリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールおよびグリセロールから成る群から選択される少なくとも1種以上の物質を更に含んで成る。
【0036】
精製されるオイルに加えられることになる上述の液体混合物を含んで成る分離添加剤の量は、精製されるオイルの重量基準で、0.0001重量%〜10重量%である。多量の固形分を含有するクロロパラフィンオイルに対して加えられる精製混合物の量は、精製されるオイルの重量基準で、例えば約3重量%〜約5重量%または10重量%未満である。その一方、圧延油およびホーニング油に対して加えられる精製混合物の量は、精製されるオイルの重量基準で、例えばわずか約0.0001重量%〜0.0002重量%である。他の場合では、上述の2つの数値範囲の間の量の精製混合物が用いられることになる。
【0037】
分離添加剤と精製されるオイルとの分離は、静的沈降、遠心分離、真空濾過、プレス濾過、プレコート濾過および遠心濾過から成る群から選択される1つの方法または複数の方法の組合せを用いて行われる。
【0038】
以下で説明する実施例は、本発明を更に例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1:固形不純物および溶存不純物を含んだ圧延オイルの精製
精製することなしに通常のサイクル(12週間)使用されることで汚染された3mの圧延オイル(valsolja−20、スタットオイル(Statoil))を、精製用パイロットプラントへと送液した。このパイロットプラントは、精製機として遠心分離機(MAB 309 Alfa Laval社)を備えた3m容積の貯留タンクから構成されている。圧延オイルは、特にカーボン粒子(その90%が2μmの粒径を有している)および溶存するステアリン酸金属塩(前のプロセス工程における滑剤に起因している)で主に汚染されている。流通させて精製を行う遠心分離機は、「固体壁を備えた機械(solid wall machine)」であり、相互に非混和性の2つの流体相を連続的に分離する分離機である。
【0040】
実験の開始に際して、分離添加剤を含んで成る液体壁(liquid wall)を遠心分離機に仕込んだ。まず、分離添加剤を、スタティックミキサーの上流側の遠心分離機に向かうフィードへと混ぜ合わせた。添加量は、約0.1%であった。分離添加剤は、トリエタノールアミンが加えられたカプリル酸から成り、pH値が6.3であった。添加する前に、70重量%の「トリエタノールアミンを含んだ脂肪酸」を30重量%のエチレングリコールと混ぜ合わせて粘度を下げた。システムは、900l/hの循環流の条件で6時間運転した。圧延オイルに含まれる粒子の減少は、生成物の供給および取り出しを行う分離機出口からサンプリングすることによって、濁度計(HACH)で測定した。溶存していたステアリン酸石鹸成分の減少は、原子発光分析で分析した。
【0041】
結果
表1 試験された圧延オイルに存在する添加剤のFTIR定量分析(フーリエ変換赤外分光法による定量分析)。
サンプルNo.1:未処理の圧延オイル、12週間使用された圧延オイル(使用済み圧延オイル)、および、実施例1に従って精製されたオイル
【表1】

【0042】
表2 本発明に従って精製された圧延オイルの濁度測定で得られた経時的な粒子の減少
【表2】

【0043】
表3 微量成分の存在下での未処理オイルおよび処理オイルの分析
【表3】

【0044】
実施例2 ホーニングオイルの精製

コネクティングロッド(または連接棒、connecting rod)の製造に使用されたホーニングオイル(Castrol Honilo 971)を上述の方法に従って流通プロセスで精製した。容積1000Lの貯留タンクに対して、固体壁を備えた分離機(MAB204、Alfa Laval社)を精製機として取り付けた。分離添加剤の液体壁を供した後、系が180〜240L/hの流れとなるように精製した。分離機に向かって流れるオイルに対して、供給ポンプ(IVAKI)を用いて分離添加剤を添加し、分離添加剤と共にオイルを、遠心ポンプおよびスタティックミキサーを通るように分離機へと供給した。添加速度は約300ml/hであった。分離添加剤は、トリエタノールアミンが加えられたカプリル酸に基づくものであり、pH値が6.3であった。添加する前に、70重量%の「トリエタノールアミンを含んだ脂肪酸」を30重量%のエチレングリコールと混ぜ合わせて粘度を下げた。オイルの粒子濃度は濁度計(HACH)を用いて測定した。
【0045】
結果を表4に示す。
表4 実施例2のまとめ及び分析
【表4】

【0046】
実施例3 潤滑オイルの精製
12000時間使用された25Lの船舶用潤滑オイル(Argina x−40)を、固体壁を備えた分離機(Emmie、Alfa Laval社)たる精製機でもって分離精製した。分離精製される潤滑オイルは、すす粒子および無機粒子でひどく汚染されていた。分離に先立って、オイルを95℃に加熱した。分離添加剤の液体壁で分離機を充填した後、機械ミキサーを用いて潤滑オイルと250ml(1%重量/体積)の分離添加剤とを混合した。分離添加剤として使用された混合物は、トリエタノールアミンが加えられたカプリル酸であり、pH値が6.3であった。添加する前に、70重量%の「トリエタノールアミンを含んだ脂肪酸」を30重量%のエチレングリコールと混ぜ合わせて粘度を下げた。潤滑オイルを分離機を通るように循環させることによって精製を行った。重相出口において重相が見られなくなるまで精製を継続した。このような精製によって、潤滑オイルに加えられた全ての脂肪酸を除去した。n−ペンタンに対して不溶性の不純物の量を、未処理のオイルおよび処理済みオイルにて測定した。潤滑オイル内での分離添加剤の影響は、精製したオイル、未精製のオイルおよび新しいオイルのそれぞれのIR−スペクトルを比較することによって調べた。
【0047】
結果
表5から分かるように、本発明に従って分離添加剤を用いてオイルの抽出および分離を行うことによって、n−ペンタンに不溶性を有する不純物の量は77%減少した。6500〜3577cm−1の波長域では、未精製のオイル、処理済みオイルおよび新しいオイルのそれぞれのIR−スペクトルは同じであった。3577〜3070の波長域では、未処理のオイルのスペクトルと処理済みオイルのスペクトルとの間には僅かな相違が見られた。かかる相違は、おそらくは、未精製のオイルに含まれていた水によって引き起こされたものである。他の波長域では、スペクトルの大きな相違は見られなかった。
【0048】
表5 未処理のオイルおよび本発明に従って処理されたオイルにおけるn−ペンタンに不溶性を有する不純物の残量
【表5】

【0049】
実施例4 クロロパラフィンオイルの精製
鉄鋼業で使用されたクロロパラフィンオイル(Castrol 5051)を実験室規模で精製した。クロロパラフィンオイルは約1年使用されたものであり、炭素粒子、石灰フィラーおよび潤滑油脂(不純物の約20%を占める)でひどく汚染されていた。まず、ブルックフィールド粘度計を用いて、未精製オイルの粘度を測定した。5重量%の分離添加剤を1kgの汚染オイルに加えた。分離添加剤として、トリエタノールアミンが加えられたカプリル酸(pH値6.3)を用いた。ウォームフードにおいて分離漏斗で混合物を40℃の条件下で18時間静置させた後、重相(クロロパラフィンオイル相)を分離した。オイルが室温になった時に、粘度を測定した。オイルに分離添加剤が残存しているか否かを調べるために、IR分析を実施して、未精製オイルと比較した。
【0050】
結果
表6 新しいオイル、汚染されたオイル、処理されたオイルのそれぞれの粘度測定の結果(実施例4)
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みプロセスオイルの精製方法であって、
(1)添加剤とプロセスオイルとを混合する工程であって、
該添加剤が、
a)少なくとも1種のアルカノールアミン、および
b)アルカノールアミンa)と共に形成される混合物が精製方法の実施温度にて液体となる融点を有し、6〜18の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分
から成る液体混合物を含んで成り、
アルカノールアミンa)と成分b)との混合物のpH値が5〜8、好ましくは6〜7、より好ましくは6.3であり、また、アルカノールアミンa)と成分b)との混合物がプロセスオイルに実質的に不溶性を有し、添加剤とプロセスオイルとの混合により2相混合物を形成する工程、ならびに
(2)プロセスオイルを含んだ相と、汚染物質が吸収されたアルカノールアミンa)と成分b)との混合物を含んだ相とを分離する工程
を有して成る精製方法。
【請求項2】
アルカノールアミンa)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカノールアミンa)が、トリエタノールアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成分b)が、ラウリン酸、オレイン酸、ペンタデカン酸、デセン酸、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
成分b)が、2−エチルヘキサン酸およびカプリル酸から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
静的沈降、遠心分離、真空濾過、プレス濾過、プレコート濾過および遠心濾過から成る群から選択される1つの方法または複数の方法の組合せによって、2相を分離する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
加えられるアルカノールアミンa)と成分b)との混合物の量は、使用済みプロセスオイルの重量基準で0.0001重量%〜10重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
添加物が、アルカノールアミンa)および成分b)を含んでいるだけでなく、モノエチレングリコール、ジプロピレンモノエチルエーテル、グリセロールおよびプロピレングリコールから成る群から選択される少なくとも1種の成分c)を更に含んで成る、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
10℃よりも高い温度、好ましくは周囲温度で実施する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
使用済みプロセスオイルの精製に用いる混合物の調製に際して、6〜18個の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分の使用。
【請求項11】
使用済みプロセスオイルの精製に用いる混合物を調製するに際して、少なくとも1種のアルカノールアミンの使用。
【請求項12】
使用済みプロセスオイルを精製するために、
a)少なくとも1種のアルカノールアミン、および
b)アルカノールアミンa)と共に形成される混合物が精製方法の実施温度にて液体となる融点を有し、6〜18の炭素原子を有するアルカン酸およびアルケン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分
から成る液体混合物の使用。
【請求項13】
使用済みプロセスオイルが、鉱油、圧延油、ホーニング油、引抜油およびエンジン潤滑油から成る群から選択される、請求項10〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
温度が10℃よりも高い温度、好ましくは周囲温度である、請求項10〜13のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2007−538134(P2007−538134A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527108(P2007−527108)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000701
【国際公開番号】WO2005/111181
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506383906)ヴィアテック・システムズ・アクチボラゲット (1)
【氏名又は名称原語表記】VIATECH SYSTEMS AB
【Fターム(参考)】