説明

使用

【課題】 2型糖尿病及び/又は肥満を治療及び/又は予防するための方法及び/又は手段を提供すること。
【解決手段】 本発明は、2型糖尿病及び/又は肥満の治療又は予防のための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞の使用、並びに放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を被験体に投与することにより被験体において2型糖尿病及び/又は肥満を治療又は予防する方法を提供する。好ましくは、細菌は、例えば、次の属:ゴルドニア属、ロドコッカス属、ツカムレラ属、ノカルジア属、ディエツィア属、及びマイコバクテリウム属の1以上の属に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2型糖尿病の治療及び/又は予防のための組成物及び/又は医薬組成物、2型糖尿病を治療及び/又は予防するために組成物及び/又歯医薬組成物で被験体を処置する方法、並びに組成物及び/又は医薬組成物を含む医薬パックに関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病)は、特に先進国において急速に増加している一般的な代謝性障害である。これは、インスリン抵抗性、インスリン欠乏及び高血糖の特徴がある。2型糖尿病と関連する因子としては、高コレステロール、肥満及び高血圧が挙げられる。
【0003】
2型糖尿病は、その症候が散発性であり、1型糖尿病に付随するものよりも確実に軽度であるため、長年にわたって診断されないことがある。しかしながら、処置を受けていない2型糖尿病罹患者では、その高血糖値のために、腎臓、眼及び心血管系の機能障害に至る可能性がある。
【0004】
マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、例えばマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、及びマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)など、の全細胞が1型糖尿病の治療に有効であることが教示されている。しかしながら、かかる細菌は2型糖尿病の予防及び/又は治療に関連があるとされていない。
【0005】
誤解を避けるために、1型インスリン依存性真性糖尿病(IDDM又はT1糖尿病)と2型糖尿病はその原因が異なる。
【0006】
1型は、膵島におけるインスリン産生細胞の免疫攻撃を特徴とするものである。NODマウス(日本で誘導された近交系)における研究によって、NODマウスは、自己反応性T細胞によって媒介される膵島の破壊のために高比率で1型糖尿病を自然発症し、ヒトの疾患とよく似ていることが示された。
【0007】
自己免疫疾患の発生は、第一に、免疫原性刺激の増強よりもむしろこれらの自己抗原に対する寛容原性応答の弱さを反映していると考えられる。消失及びアネルギーの細胞内因性応答によって媒介される寛容に加えて、胸腺における自己抗原による刺激によって誘導される調節性/サプレッサー細胞によって寛容が媒介される可能性があると長い間考えられている。
【0008】
対照的に、2型糖尿病は、インスリン抵抗性を補償するβ細胞の障害によって引き起こされると考えられている。高カロリー食及び不十分な筋肉労働は肥満及び2型糖尿病の発病に関与する重要な環境因子であるとみられている。環境因子は、2つの主要な標的を介して作用するようである。1つは、大部分の組織においてインスリン及び他のホルモンによって調節される、グルコース、脂肪酸及び他の代謝産物の処理であり、もう1つはβ細胞の機能である。
【0009】
肥満は、公衆衛生上の大きな問題となっている。肥満によって生じる又は悪化する健康状態としては、高血圧、真性糖尿病、睡眠時無呼吸、肥満に関連する低換気、背中及び関節の問題、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、及び胃食道逆流性疾患がある。
【0010】
ボディ・マス・インデックス(BMI)(身長(m)の二乗で体重(kg)を除することで計算される)は、過体重及び/又は肥満に関する一般的に最も受け入れられている測定値である。BMIが25を超えると過体重とみなされ、肥満は、BMIが30以上と定義され、BMIが35以上は重篤な共存症と判断され、BMIが40以上は病的肥満と判断される。
【特許文献1】WO2004/022093号
【特許文献2】WO2005/049056号
【特許文献3】WO2002/032455号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の独創的な発見は、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を投与することにより、特に、好気性放線菌類の細菌の全細胞を投与することにより、2型糖尿病の治療及び/又は予防及び/又は低減を行いうるということである。
【0012】
本発明の別の独創的な発見は、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を投与することにより、特に、好気性放線菌類の細菌の全細胞を投与することにより、肥満の治療及び/又は予防及び/又は低減を行いうるということである。
【0013】
一態様では、本発明は、2型糖尿病及び/又は肥満、好ましくは2型糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物、好ましくは医薬組成物を被験体に投与することを含む、被験体において2型糖尿病及び/又は肥満を治療又は予防する方法を提供する。
【0015】
好適には、有効量の組成物、好ましくは医薬組成物は、単回用量として投与可能である。あるいは、有効量の組成物、好ましくは医薬組成物は、複数回(反復)用量、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、10回以上、20回以上の反復用量で投与可能である。
【0016】
他の態様では、本発明は、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物、好ましくは医薬組成物を被験体に投与することを含む、2型糖尿病及び/又は肥満から被験体を保護(免疫感作を含む)する方法を提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの区画が放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む、2型糖尿病及び/又は肥満の治療に使用するための医薬パックを提供する。
【0018】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性、インスリン欠乏及び/又は高血糖が特徴といえる。本明細書において使用する「それに関連した症状」という用語は、2型糖尿病を特徴付ける症状、例えばインスリン抵抗性、インスリン欠乏、高血糖、及びメタボリックシンドロームなどを意味する。
【0019】
本発明のさらなる態様において、2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上の治療又は予防のための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用を提供する。
【0020】
本明細書で使用する「メタボリックシンドローム」という用語は、耐糖能異常、すなわち糖尿病、及び/又はインスリン抵抗性であって、以下のリスク因子の2以上を一緒に示すものと定義することができる。そのリスク因子は、グルコース調節障害、すなわち糖尿病;インスリン抵抗性;160/90mmHg以上の高動脈圧;高血漿トリグリセリド(1.7mmol/L以上)及び/又は低HDLコレステロール(男性0.9mmol/L未満、女性1.0mmol/L未満);中心性肥満(腰回りと胴回りの比率、男性0.9以上、女性0.85以上)、及び/又はボディ・マス・インデックス(BMI)30以上、並びに微量アルブミン尿である(Diabet Med, 1998;15:539-553)。
【0021】
本発明のまたさらなる態様において、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、被験体において2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上を治療又は予防(好ましくは治療)する方法を提供する。
【0022】
好適には、上述した使用及び方法に加えて及び/又はそれとは別に、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用によって、2型糖尿病に関連するランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズの低減を治療又は予防することができる。
【0023】
一態様において、本発明は、ランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズの低減を治療又は予防するための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、被験体におけるランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズの低減を治療又は予防する方法を提供する。
【0025】
用語「ランゲルハンス島のサイズの低減」とは、健常個体におけるランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズと比較して、ランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズが低減していることを意味する。典型的には、ランゲルハンス島のサイズの低減は、2型糖尿病などの糖尿病を有する個体によって生じるとされている。
【0026】
従って、言い換えれば、上述した使用及び方法に加えて及び/又はそれとは別に、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用によって、2型糖尿病を有する個体におけるランゲルハンス島のサイズ、好ましくは平均サイズを増大させることができる。好適には、ランゲルハンス島は、健常個体が通常有するサイズにまで増大する。
【0027】
直径が膵腺房1個から3個未満の間で変動する直径を有するランゲルハンス島は小さいと定義することができるが、膵腺房3個以上の直径を示す島は大きいとみなされる。
【0028】
放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物で処置された個体において、小さい島に対する大きい島の割合が増大することが好ましい。この増大は、未処置対照個体における割合と比較する。
【0029】
本明細書で使用する「2型糖尿病」という用語は、非インスリン依存性真性糖尿病を意味する。
【0030】
本明細書で使用する「放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞」という用語は、細菌の1以上の菌株の全細胞を包含する。好適には、全細胞が細菌の2以上の菌株に由来する場合、それらの菌株は、同じ属の1以上の種及び/又は1以上の属に由来するものである。好適には、全細胞が2以上の属に由来する場合、それらの属は、1以上の科に由来するものとしうる。したがって、単なる例示目的であるが、この用語は、特定の1菌株に由来する全細胞(例えば、ゴルドニア・ブロンキアリス(Gordonia bronchialis)の特定の菌株の全細胞)、並びに/あるいは、好気性生物の2以上の種及び/又は属に属する細菌の全細胞(例えば、単なる例示目的であるが、ゴルドニア・ブロンキアリス及びロドコッカス・コプロフィラス(Rhodococcus coprophilus)の種に属する菌株の全細胞)を包含する。
【0031】
好気性放線菌属に属する細菌の全細胞は、免疫媒介性損傷に対して矯正作用を有しうる。
【0032】
他の実施形態では、好適には、本発明に係る使用に供される放線菌目の好気性生物は、ノカルジオ型(Nocardioform)放線菌でありうる(例えば、Bergy's Manual of Determinative Bacteriology, Ninth Editionのグループ22に挙げられている細菌。例えば、ミコール酸含有細菌など)。
【0033】
好ましくは、好気性生物は、ミコール酸含有細菌である(例えば、Bergy's Manual of Determinative Bacteriology, Ninth Editionのグループ22のサブグループ1に属する細菌。例えば、ツカムレラ(Tsukamurella)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ノカルジア(Nocardia)属、及びゴルドニア(Gordonia)属など)。
【0034】
理論に拘束されることを望まないが、上記のような細菌に存在する独特の細胞壁脂質(1又はそれ以上)が、2型糖尿病、肥満及び/又はそれに関連した症状の治療及び/又は予防に有効である可能性があると考えられる。
【0035】
好ましくは、細菌は、次の属:ゴルドニア(Gordonia)属(例えば、ゴルドニア・ブロンキアリス(G. bronchialis)、ゴルドニア・アマラエ(G. amarae)、ゴルドニア・スプティ(G. sputi)、及びゴルドニア・テラエ(G. terrae)、好ましくはゴルドニア・ブロンキアリス);ロドコッカス(Rhodococcus)属(例えば、ロドコッカス・ルベル(Rhodococcus ruber)(以前は、ノカルジア・ルブラ(Nocardia rubra)として知られていた)、ロドコッカス・ロドニー(R. rhodnii)、ロドコッカス・コプロフィラス(R. coprophilus)、ロドコッカス・オパカス(R. opacus)、及びロドコッカス・エリソポリス(R. erythopolis)、好ましくは、ロドコッカス・コプロフィラス);ツカムレラ(Tsukamurella)属(例えば、ツカムレラ・インコネンシス(T. inchonensis)及びツカムレラ・パウロメタボラ(T. paurometabola)、好ましくはツカムレラ・インコネンシス);並びにノカルジア(Nocardia)属(例えば、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)及びノカルジア・ブラジリエンシス(N. brasiliensis))の1以上に属するものとしうる。
【0036】
さらに他の実施形態では、好適には、本発明に係る使用に供される放線菌目の細菌は、細胞壁の成分としてミコール酸を含有する1若しくは複数の属に属しうる。そのような属の例としては、ツカムレラ属、マイコバクテリウム属、ディエツィア(Dietzia)属、ロドコッカス属、ノカルジア属、及びゴルドニア属が挙げられる。
【0037】
好ましくは、本発明に係る使用に供される放線菌目の細菌は、次の属:ゴルドニア属(例えば、ゴルドニア・ブロンキアリス、ゴルドニア・アマラエ、ゴルドニア・スプティ、及びゴルドニア・テラエ、好ましくはゴルドニア・ブロンキアリス);ロドコッカス属(例えば、ロドコッカス・ルベル(以前は、ノカルジア・ルブラとして知られていた)、ロドコッカス・ロドニー、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、及びロドコッカス・エリソポリス、好ましくはロドコッカス・コプロフィラス);ツカムレラ属(例えば、ツカムレラ・インコネンシス及びツカムレラ・パウロメタボラ、好ましくはツカムレラ・インコネンシス);マイコバクテリウム属(例えば、マイコバクテリウム・バッカエ及びマイコバクテリウム・オブエンセ、好ましくはマイコバクテリウム・オブエンセ);ディエツィア属(例えば、ディエツィア・マリス(Dietzia maris));並びにノカルジア属(例えば、ノカルジア・アステロイデス及びノカルジア・ブラジリエンシス)の1以上に属する。
【0038】
好適には、細菌は、ゴルドニア属に属しうる。好ましくは、細菌は、次の種:ゴルドニア・ブロンキアリス、ゴルドニア・アマラエ、ゴルドニア・スプティ、及びゴルドニア・テラエの1以上に属する。好ましくは、ゴルドニア・ブロンキアリスである。
【0039】
本明細書で使用するゴルドニア属はまた、ゴルドニア(Gordonia)と称することもある。明細書中では、これらの用語は、同義であるものとする。
【0040】
好適には、細菌は、ロドコッカス属から選択可能である。好適には、細菌は、次の種:ロドコッカス・ルベル(以前は、ノカルジア・ルブラとして知られていた)、ロドコッカス・ロドニー、ロドコッカス・コプロフィラス、ロドコッカス・オパカス、及びロドコッカス・エリソポリスのいずれか1以上から選択可能であり、好ましくは、ロドコッカス・コプロフィラスから選択可能である。
【0041】
好適には、細菌は、ツカムレラ属に属しうる。細菌は、好ましくはツカムレラ・インコネンシス及び/又はツカムレラ・パウロメタボラであり、好ましくはツカムレラ・インコネンシスである。
【0042】
好適には、細菌は、マイコバクテリウム属に属しうる。細菌は、好適にはマイコバクテリウム・バッカエ及び/又はマイコバクテリウム・オブエンセであり、好ましくはマイコバクテリウム・オブエンセでありうる。
【0043】
本発明に係る使用に供されるマイコバクテリウム・オブエンセ菌株は、受託番号NCTC13365として2005年7月14日付でthe National Collection of Type Cultures (NCTC)(Central Public Health Laboratory, 61 Colindale Avenue, London, NW9 5HT)に特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいてBioEos Limited(67 Lakers Rise, Woodmansterne, Surrey, SM7 3LA)により寄託されている。
【0044】
好適には、細菌は、ディエツィア属に属しうる。好適には、細菌は、ディエツィア・マリスでありうる。
【0045】
好適には、細菌は、ノカルジア属から選択可能である。好適には、細菌は、次の種:ノカルジア・アステロイデス及び/又はノカルジア・ブラジリエンシスのいずれか1以上から選択可能である。
【0046】
好ましくは、本発明に使用するための細菌は、使用前に死滅させる。従って、好ましい実施形態において、死滅全細胞細菌の使用が好ましい。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明に係る医薬パックは、2型糖尿病及び/又は肥満の予防又は治療に使用するのに好適であることを示すラベルをさらに含む。
【0048】
一実施形態において、本発明に係る医薬パックは、2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上の予防又は治療における使用に好適であることを示すラベルを含んでもよい。
【0049】
組成物は、単回用量として又は複数回用量で被験体に投与可能である。一実施形態において、組成物は複数回用量で被験体に投与されることが好ましい。
【0050】
組成物は、1回を超える用量で投与することができる。これらの用量は、逐次的に、さらには異なる投与経路でも送達することができる。
【0051】
一実施形態においては、最初に組成物を少なくとも2回の用量で投与する。単なる例示目的であるが、組成物は、1週間毎、2週間毎、3週間毎、1ヶ月毎、6週間毎、2ヶ月毎、3ヶ月毎又は4ヶ月毎に投与することができる。組成物は、4週間毎に少なくとも1回投与しうる。
【0052】
一実施形態において、組成物は、被験体の生涯にわたって投与してもよい。好適には、被験体に、1年当たり最大3回又は4回の用量を投与することができる(すなわち、被験体には、例えば3ヶ月毎又は4ヶ月毎に投与する)。
【0053】
特定の実施形態において、最初に組成物を一定間隔(例えば毎週又は毎月の間隔)で被験体に投与し、後に、3又は4ヶ月の間隔で投与を行うことができる。例えば、被験体には、毎月の間隔で3回の用量(又はおそらく2週間間隔で6回の用量)を投与し、後に3ヶ月間隔で用量を投与する。
【0054】
好ましくは、各用量は注射として投与される。
【0055】
本明細書で使用する「治療」及び/又は「治療する」という用語は、2型糖尿病、肥満及び/又はそれに関連した症状、好ましくは2型糖尿病及び/又は肥満の「制御」を含む。例えば、本明細書で使用する用語「治療」及び/又は「治療する」は、緩和又は予防であってもよい。すなわち、組成物を投与する場合に、被験体は、2型糖尿病及び/又はそれに関連した症状が完全に治療されなくてもよいが、2型糖尿病及び/又はそれに関連した症状が寛解状態となる。
【0056】
いくつかの実施形態において、用語「治療」及び/又は「治療する」は、2型糖尿病及び/又はそれに関連した症状、好ましくは2型糖尿病が制御されることを意味する。
【0057】
本明細書で使用する「予防する」及び/又は「予防」という用語は、被験体が本発明に係る組成物の投与を受けていない被験体と比較して2型糖尿病並びに/又はそれに関連した疾患及び/若しくは障害に対して感受性が低いこと、そして/あるいは、被験体が本発明に係る組成物の投与を受けていない被験体と比較して2型糖尿病並びに/又はそれに関連した疾患及び/若しくは障害をより多く阻止若しくは克服できることを意味する。
【0058】
本明細書で使用する「全細胞(whole cell)」という用語は、無傷又は実質的に無傷の細菌を意味する。特に、本明細書で使用する「無傷」という用語は、全細胞、特に全生細胞に存在するすべての成分で構成されている細菌、及び/又はそれから1以上の成分を除去するための特別な処理が行われていない細菌を意味する。本明細書で使用する「実質的に無傷」という用語は、細菌の取得に使用される単離及び/又は精製のプロセスにより、例えば、細胞のわずかな変化及び/又は細胞の成分の1以上の除去が起こる可能性があったとしても、そのような変化及び/又は除去が起こる程度が有意でないことを意味する。特に、本発明において実質的に無傷の細胞では、それから1以上の成分を除去するための特別な処理が行われていない。
【0059】
誤解を避けるために、好ましい実施形態において、細菌は、粉砕された細菌ではない、又は投与前に破砕されたものではない。
【0060】
誤解を避けるために、例えば熱処理により使用前に細菌を死滅させる場合、そのような熱処理は、細菌の成分を不活性化又は破壊する可能性がある。そのような死滅細菌、例えば熱処理された細菌は、本発明においては、依然として実質的に無傷の全細胞とみなしうる。
【0061】
WO2004/022093号及びWO2005/049056号(これらの参考文献はいずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする)には、ロドコッカス属、ゴルドニア属、ノカルジア属、ディエツィア属、ツカムレラ属、及びノカルディオイデス(Nocardioides)属に属する細菌の全細胞を含む組成物(例えば医薬組成物)が開示されている。しかしながら、これらの文献のいずれにも、2型糖尿病を治療及び/又は予防するためのそのような免疫モジュレーター組成物又は医薬組成物の使用に関する教示や提案はなされていない。
【0062】
マイコバクテリウム・バッカエ又はその一部(WO2002/032455号に教示されている)は、マイコバクテリア症(例えば結核)に対するワクチンにおいて使用されてきた。しかしながら、2型糖尿病の予防又は治療におけるマイコバクテリウム・バッカエの使用については、以前に教示も提案もなされていない。
【0063】
好適には、本発明において使用する組成物又は医薬組成物は、製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含みうる。
【0064】
好適には、組成物及び/又は医薬組成物は、2種以上の全細胞を含みうる。より好ましくは、多数種の全細胞を含む。
【0065】
一態様では、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物及び/又は医薬組成物は、少なくとも1種の(又は少なくとも1種のさらなる)抗原又は抗原決定基をさらに含んでもよい。
【0066】
好適には、本発明に係る使用に供される組成物は、放線菌目の好気性生物属に属する2種以上又は3種以上の細菌を含みうる。
【0067】
好ましくは、本発明に係る使用に供される細菌は、培地(低抗原性培地、好ましくは非抗原性培地)上で増殖可能な種である。単なる例示目的にすぎないが、好適な非抗原性培地は、ソートン(Sauton)培地である。
【0068】
本明細書で使用する「被験体」という用語は、ヒト及び/又は動物を意味する。好ましくは、被験体は、哺乳動物、例としてはペット動物(ネコ及びイヌなど)、並びに/又はヒトなどである。しかしながら、2型糖尿病及び/又は肥満が他の被験体、例えば異なる動物で確認された場合、本明細書に教示される組成物及び/又は医薬組成物は、他の被験体において、例えば他の動物において、2型糖尿病及び/又は肥満を治療及び/又は予防するのに有効であると考えられる。一実施形態では、好ましくは、被験体はヒトである。好ましくは、被験体は成人である。
【0069】
被験体は、2型糖尿病又は2型糖尿病の素因を有することが好ましい。本明細書で使用する「2型糖尿病の素因」という用語は、健常被験体と比較して2型糖尿病を発症する可能性が高い被験体を意味する。例えば、本発明において2型糖尿病の素因を有する被験体としては、高コレステロール、高血圧、肥満又は遺伝的素質の1以上を有する被験体が挙げられる。
【0070】
好ましくは、本発明の組成物は、該組成物を糖尿病を有する被験体に投与することによって、2型糖尿病の治療に使用される。
【0071】
好適には、本発明の組成物は、該組成物を肥満の被験体に投与することによって、肥満の治療に使用される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、被験体は、過体重被験体(例えばBMIが25を超える、好ましくは30を超える)、及び/又は(例えば、被験体の食事、又は代謝の理由若しくは薬物治療の副作用などの医学的理由のために)肥満となるリスクのある被験体でありうる。
【0073】
好適には、本発明の組成物は、被験体が肥満になるのを予防しうる。「予防」とは、本発明の組成物が、本発明の組成物の投与を受けていない被験体と比較して、被験体が肥満にならないようにする又は肥満の発症を遅延させる(すなわち、被験体が肥満になる速度を低減する)ことを意味する。
【0074】
それに加えて又はそれとは別に、被験体は、ウイルス感染症(例えば体重増加に伴うウイルス感染)を有していてもよい。
【0075】
好ましくは、本発明に係る細菌を使用前に死滅させる。
【0076】
好ましくは、それを熱処理することにより、例えば、オートクレーブ中121℃で15分間熱処理することにより、本発明に係る細菌を死滅させる。
【0077】
細菌を死滅させるのに好適な他の処理としては、紫外線照射若しくは電離線照射、又はフェノール、アルコール、若しくはホルマリンのような化学物質による処理が挙げられる。好適には、Co60線源から2.5メガラド(Mrad)を照射することにより電離線照射を行いうる。
【0078】
好ましくは、本発明に係る細菌を精製及び/又は単離する。
【0079】
好ましくは、本発明に係る細菌を水性溶液(水又は緩衝生理食塩水など、好適にはpH8のホウ酸緩衝生理食塩水)中に懸濁させる。好ましくは、細菌は油中に存在させて投与されない。
【0080】
好適には、本発明の組成物は、既存の症状を有する個体に投与されてその症状を低減若しくは最小限に抑える、又はその症状の免疫病理的結果を防止する、「治療用」組成物でありうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
過体重/肥満
ヒトについては、ボディ・マス・インデックス(BMI)(身長(m)の二乗で体重(kg)を除することで計算される)が過体重及び/又は肥満に関する一般的に最も受け入れられている測定値である。
【0082】
BMIが25を超えると過体重とみなされる。
【0083】
肥満は、BMIが30以上と定義され、BMIが35以上は重篤な共存症と判断され、BMIが40以上は病的肥満と判断される。
【0084】
本明細書で使用する「肥満」という用語には、肥満、共存症肥満及び病的肥満が含まれる。従って、本明細書で使用する用語「肥満」は、BMIが30を超える又はそれに等しい被験体と定義される。
【0085】
いくつかの実施形態において、好適には、肥満被験体は、BMIが30を超える又はそれに等しく、好適には35であり、好適には40である。
【0086】
本明細書で使用する「過剰な体重(excess weight)」という用語は、被験体の過剰な体重を意味する。本明細書で使用する用語「過剰な体重」は、被験体が過体重(overweight)とみなされることを意味する。本明細書で使用する用語「過体重」は、BMIが25を超える被験体を意味する。
【0087】
過剰な体重及び/又は肥満は、BMIを用いて測定することができる。従って、過剰な体重及び/又は肥満の低減もBMIを用いて測定することができる。
【0088】
一実施形態において、肥満の治療では、被験体のBMIは、5単位(すなわち、BMI単位が35から30に、又はBMI単位が30から25に)、好ましくは10単位低減しうる。
【0089】
好適には、肥満の治療では、被験体のBMIは、28未満に、好ましくは25未満に、より好ましくは20未満に低減しうる。
【0090】
同様に(又は別法において)、過剰な体重及び/又は肥満の低減は、対照、並びに/あるいは本発明に従った微生物及び/又はその代謝産物の投与前後と比較して、被験体の体重を測定することによって簡単に測定することができる。
【0091】
理論に拘束されることを望まないが、血清又は血中炎症マーカー(例えばC反応性タンパク質及び/若しくはインターロイキン6及び/若しくはTNF−RIIなど)と肥満とは関連している可能性もある。さらに、血清又は血中炎症マーカーとBMIとの相関の可能性もある。従って、一実施形態においては、肥満及び/又は被験体における肥満の低減を判定するために、血中炎症マーカーを測定することも可能である。
【0092】
同様に、動物(例えばネコ及びイヌなどのペット動物)が過体重及び/又は肥満であるかどうかを判定する方法は周知である。例えば、主な脂肪沈着のサイズ及び位置、有形無形骨格構造、並びに/又は動物の全体の形などの簡単な基準に従って評価を行うネコ及びイヌにおけるボディ・コンディション・スコアを使用することができる。(Diez, The Royal Canin cut-out and keep guide to body condition scoring in cats and dogs, 2006, Volume 16, No. 1参照)。
【0093】
過剰な体重及び/又は肥満に関連する又はそれによって生じる障害/疾患
肥満によって生じる又は悪化する健康状態(すなわち障害及び/又は疾患)としては、高血圧、真性糖尿病(例えば2型糖尿病)、睡眠時無呼吸、肥満に関連する低換気、背中及び関節の問題、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、及び胃食道逆流性疾患がある。
【0094】
本発明の好適な組成物によって、肥満に関連する又はそれによって生じる症状を緩和及び/又は改善することができる。
【0095】
投与
典型的には、個々の被験体に最も好適な組成物又は医薬組成物の実際の用量は、医師により決定されるであろう。それは、特定の被験体の年齢、体重、及び応答によって異なるであろう。以下の用量は、平均的なケースを例示したものである。もちろん、より多量又はより少量の用量範囲を用いるのがよい個々の事例が存在しうる。
【0096】
好ましくは、使用される実際の用量では、被験体に対して最小限の毒性を生じる。
【0097】
本発明に係る組成物は、直接注射により投与可能である。組成物は、非経口投与、粘膜投与、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与、眼内投与、皮内投与、又は経皮投与に供すべく製剤化可能である。
【0098】
好適には、本発明に係る組成物は、10〜1011個の生物、好ましくは10〜1010個の生物、より好ましくは10〜10個の生物、より好ましくは10〜10−5×10個の生物、さらにより好ましくは10〜2×10個の生物の用量で投与可能である。典型的には、本発明に係る組成物は、ヒト及び動物に使用する場合、10〜2×10個の細菌の用量で投与可能である。好適には、これらの投与量は、本発明において「有効量」とみなされる。
【0099】
好ましくは、組成物は、10〜1010個の生物の用量で投与される。好適には、これらの投与量は、本発明において「有効量」とみなされる。
【0100】
当業者であれば容易にわかるであろうが、投与される用量は、用量の投与対象の生物に依存するであろう。例えば、ヒトにおいて典型的な用量は、1mg/0.1mlまで及び/又はその範囲でありうる。
【0101】
本明細書で使用する「投与」という用語は、医薬の提供を目的とした本発明に係る細菌の投与を意味する。好ましくは、「投与」は、2型糖尿病及び/又はその症候(例えば血糖値の上昇)の予防、治療、及び/又は抑制を目的とした投与に関係する。言い換えれば、一実施形態では、「投与」という用語は、細菌を(好ましくは医薬として)被験体に与えることを意味する。すなわち、被験体が細菌を自然に含有又は取得しうる状況を包含しない。
【0102】
「投与」という用語は、注射、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクチン、カチオン性表面両親媒性物質(CFA; cationic facial amphiphile)、及びそれらの組合せ、又はさらにはウイルス送達をはじめとする送達機序による送達を包含する。そのような送達機序の経路としては、粘膜経路、鼻経路、経口経路、非経口経路、胃腸経路、局所経路、又は舌下経路が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
「投与」という用語は、粘膜経路(例えば、鼻噴霧剤若しくは吸入用エアロゾル剤として又は摂取可能な溶剤として);注射可能な形態で送達が行われる非経口経路(例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、又は皮下経路など)による送達を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0104】
「共投与」という用語は、免疫系の必要なモジュレーションが達成されるように本発明に係る組成物、アジュバント、抗原、及び/又は抗原決定基のそれぞれの投与の部位及び時間が設定されることを意味する。したがって、同一時点でかつ同一部位に組成物と抗原及び/又はアジュバントのいずれかとを投与しうるのであれば、アジュバントと異なる時間でかつ異なる部位に組成物及び/又は抗原及び/又は抗原決定基を投与することに利点が存在しうる。組成物及び/又は抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントとを同一の送達ビヒクルで送達することさえも可能であり、しかも抗原及び/又は抗原決定基とアジュバントとの結合及び/又は非結合並びに/あるいは遺伝子的結合及び/又は遺伝子的非結合が可能である。単なる例示目的にすぎないが、本発明に係る組成物は、1種以上の抗原又はさらなる抗原の投与前、投与時、又は投与後に投与可能である。
【0105】
組成物は、単回用量として又は複数回用量で被験体に投与可能である。好ましくは、組成物は複数回用量で投与される。
【0106】
本発明に係る使用に供される組成物及び/又は医薬組成物は、注射(非経口注射、皮下注射、皮内注射、及び筋肉内注射を包含する)、鼻腔内投与、粘膜投与、経口投与、腟内投与、尿道投与、又は眼投与のような、多くの異なる経路により投与可能である。
【0107】
本発明では、投与が注射により行われることが好ましい。より好ましくは、注射は、皮内、皮下、及び/又は静脈内注射、好ましくは皮内又は皮下注射である。
【0108】
本発明では、投与は、経口的に許容される組成物により行われることが好ましい。
【0109】
投与のために、組成物を、水性溶液、例えば0.1〜0.2mlの水溶液、好ましくは緩衝生理食塩水溶液として提供することができる。好適には、組成物は、非経口的に、例えば皮内接種により投与することが可能である。本発明に係る組成物は、好ましくは皮内注射される。わずかな腫脹及び潮紅、ときにはさらに痒みが、注射部位に見いだされることもある。当業者であれば、投与形態、用量、及び投与回数を公知の方法により最適化することが可能である。
【0110】
抗原
本明細書で使用する場合、「抗原」とは、免疫適合性宿主に導入されたときに、ある物質と結合しうる1種若しくは複数種の特異抗体の産生を改変し、並びに/又はTh2及び/若しくはTh1のような関連するTヘルパー細胞の応答を改変する物質を意味する。抗原は、純粋な物質、物質の混合物、又は可溶性若しくは粒子状の物質でよい(細胞又は細胞断片又は細胞超音波処理物を包含する)。この意味で、この用語は、任意の好適な抗原決定基、交差反応性抗原、同種抗原、異種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン、及び免疫原、又はそれらの一部分、さらにはそれらの任意の組合せを包含し、これらの用語は、本明細書全体を通して同義的に使用される。
【0111】
本明細書で使用する「抗原決定基又はエピトープ」という用語は、抗体又はT細胞レセプターにより認識されるか又はTヘルパー細胞の応答を引き起こす役割を担う抗原上の部位を意味する。好ましくは、それは、タンパク質抗原由来か、又はタンパク質抗原の一部分である短いペプチドである。しかしながら、この用語はまた、グリコペプチド及び炭水化物エピトープを包含することも意図される。この用語はまた、生物個体を認識する応答を刺激するアミノ酸又は炭水化物の改変配列をも包含する。
【0112】
アジュバント
本明細書で使用する「アジュバント」という用語は、免疫応答の影響を増大させたり又はそれに関与したりすることの可能な物質を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を支援したり、増大させたり、ダウンレギュレートしたり、改変したり、又は多様化させたりする任意の物質又は物質の混合物である。
【0113】
本発明に係る組成物及び/又は医薬組成物は、その組成物及び/又は医薬組成物の有効性を向上させる1種以上のアジュバントを含みうる。有効であろうと考えられる追加のアジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、カーボン、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌エンドトキシン、リピドX、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes))、ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)、マイコバクテリウム・バッカエ、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン(インターロイキン2及びインターロイキン12など)、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE−デキストラン、ブロック化コポリマー、又は他の合成アジュバントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのようなアジュバントは、種々の供給元から市販品として入手可能であり、例としては、Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)又はフロイントの不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)が挙げられる。水酸化アルミニウムのみがヒトに使用することが承認されている。他のアジュバントのうちのいくつか、例えばマイコバクテリウム・バッカエなどは、臨床試験に供することが承認されている。
【0114】
好適には、アジュバントは、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞でありうる。
【0115】
当技術分野では、本質的に金粒子に結合されたDNA配列でありかつヘリウム銃により皮膚内に発射されるDNAワクチンが、効率的なワクチン送達系であることが知られている。従来のワクチンとは異なり、こうしたDNAワクチンは、伝統的なアジュバント成分を必要としない。本発明のさらなる態様では、好適には、免疫応答の影響を増大させたり又はそれに関与したりするために、本明細書中に定義される組成物をそのようなDNAワクチンと組み合わせて使用することが可能である。
【0116】
医薬組成物
本発明はまた、治療上有効な量の放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含み、任意に製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤(それらの組合せを包含する)を含んでもよい医薬組成物を提供する。
【0117】
医薬組成物は、2つの成分、すなわち、抗原を含む第1の成分及びそのアジュバントを含む第2の成分を含みうる。第1及び第2の成分は、逐次的に、同時に、又は一緒に、さらには異なる投与経路により送達可能である。
【0118】
好適には、抗原は、疾患過程の一部として宿主組織内で発生する可能性さえもありうる。したがって、抗原は、細菌の侵入、宿主の浸潤、若しくは寄生生物の侵入に由来しうるか、又は組織から放出される物質、例えば、細菌の熱ショックタンパク質と等価なストレスタンパク質若しくは腫瘍抗原でありうる。
【0119】
医薬組成物は、ヒトの医学及び獣医学においてヒト又は動物に使用することが可能であり、典型的には、製薬上許容される希釈剤、担体、又は賦形剤のいずれか1つ以上を含むであろう。治療に使用するための許容される担体又は希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro編 1985)に記載されている。医薬用の担体、賦形剤、又は希釈剤の選択は、意図される投与経路及び標準的な薬務に関連して選択可能である。
【0120】
医薬組成物は、担体、賦形剤、若しくは希釈剤として、又はそれらに加えて、任意の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含みうる。
【0121】
保存剤、安定化剤、染料、さらには風味剤をも、医薬組成物中に提供することが可能である。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁化剤を使用することも可能である。
【0122】
送達系が異なれば、それに依存して組成物/製剤の要件が異なりうる。例として、ミニポンプを用いて又は粘膜経路により(例えば、鼻噴霧剤若しくは吸入用エアロゾル剤若しくは摂取可能な溶剤として)あるいは非経口的に(この場合、組成物は、静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、又は皮下経路などにより送達すべく注射可能な形態で製剤化される)送達すべく本発明に係る医薬組成物を製剤化することが可能である。あるいは、両方の経路により送達すべく製剤を設計することが可能である。
【0123】
本発明では、製剤は、注射可能な形態をとることが好ましい。より好ましくは、製剤は、皮内注射される。
【0124】
本発明では、製剤は、経口的に許容される組成物であることが好ましい。
【0125】
胃腸粘膜を介して薬剤を粘膜送達する場合、それは、胃腸管を通過する間、安定状態を維持できることが望ましい。例えば、それは、タンパク質分解に対して耐性があり、酸性pHで安定であり、かつ胆汁の界面活性作用に対して耐性があることが望ましい。
【0126】
適切であれば、吸入により、坐剤若しくはペッサリーの形態で、局所的に(ローション剤、溶剤、クリーム剤、軟膏剤、若しくは散粉剤の形態で)、皮膚貼付剤を用いて、経口的に(デンプンやラクトースのような賦形剤を含有する錠剤の形態で、又は単独で若しくは賦形剤と混合してカプセル剤若しくはオビュール剤として、又は風味剤若しくは着色剤を含有するエリキシル剤、溶剤若しくは懸濁剤の形態で)、医薬組成物を投与することが可能であるか、あるいは非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、又は皮下に注射することが可能である。非経口投与に供する場合、例えば溶剤を血液と等張にするのに十分な塩や単糖などの他の物質を含有しうる滅菌水溶液剤の形態で最も良好に組成物を使用することが可能である。頬投与又は舌下投与に供する場合、慣用的に製剤化することができる錠剤又はロゼンジ剤の形態で組成物を投与することが可能であるか、あるいは被験体の食料及び/又は飼料に組み込むことにより組成物を投与することが可能である。
【0127】
医薬の組合せ
本発明に係る薬剤は、1種以上の他の医薬活性物質と共に投与可能である。例として、本発明は、本発明に係る組成物及び/又は医薬組成物と、1種以上のステロイド、鎮痛剤、抗ウイルス剤、IL−2のようなインターロイキン、又は他の医薬活性物質とを用いた同時治療又は逐次治療を包含する。
【0128】
一実施形態において、本発明の組成物は、2型糖尿病の治療に典型的に使用される1以上の医薬活性物質と共に投与することができる。単なる例示目的であるが、そのような医薬活性物質としては、スルホニル尿素系、ビグアニド系(例えばメトホルミン)、チアゾリジンジオン系、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース及び/又はミグリトール)、メグリニチド系(例えばナテグリニド、レパグリニド及び/又はそれらの類似体)、エキセナチド並びに/あるいはプラムリンチドが挙げられる。
【0129】
誤解を避けるために、1以上の医薬活性物質は、本発明で使用する組成物と同じ又は異なる投与経路で投与することができる。
【0130】
これらの投与計画は、逐次的に、同時に、又は一緒に物質を投与することを包含することが理解されよう。
【0131】
免疫増強剤
本明細書で使用する「免疫増強剤」という用語は、被験体に投与したときに同被験体の健康に有益である1種以上の単離された細菌又は培養下の細菌のいずれかを意味する。好ましくは、この有益性は、被験体の細胞性免疫応答の改変により達成される。
【0132】
本発明において、2型糖尿病及び/又は肥満を治療及び/又は予防するために免疫増強剤を使用することが可能である。
【0133】
免疫増強剤は、特別にデザインされた食料に組み込んで、又は動物用飼料、例えば、本発明に係る細菌が追加された動物用飼料に組み込んで摂取により投与可能である。
【0134】
他の経路により、例えば直接注射により、免疫増強剤を投与することも可能である。
【0135】
好ましくは、生製剤を保持する困難を回避したり及び/又は生細菌内に隠蔽されることの多い免疫学的活性物質を顕在化するために、細菌を死滅させる。
【0136】
2型糖尿病の治療に使用可能な細菌の同定
他の態様において、本発明は、2型糖尿病を治療及び/又は予防しうる放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の1以上の全細胞を同定する方法を関する。この方法は、(a)第1群の試験動物に免疫刺激剤を投与するステップ、(b)第2群の試験動物に放線菌目の好気性生物の属に属する細菌と混合された免疫刺激剤を投与するステップ、(c)各試験動物で2型糖尿病の発生回数及び/又は重症度(例えば空腹時血糖値及び/又は糖負荷の2時間後の血糖値など)を測定するステップ、並びに(d)各群の試験動物の結果を比較するステップとを含み、ここで、単独の免疫刺激剤と比較して細菌と混合された免疫刺激剤のほうが2型糖尿病の発生率及び/又は重症度が低ければ(例えば空腹時血糖値の低減など)、本発明に係る使用に好適な細菌であることを示す。
【0137】
本明細書で使用する場合、「試験動物」という用語は、免疫刺激剤に対する細胞性免疫応答を引き起こす任意の動物を意味する。好ましくは、試験動物は、哺乳動物である。
【0138】
好ましくは、細菌は、Tヘルパー細胞の応答を改変する。好適には、細菌は、Th1応答の増大及びTh2応答のダウンレギュレーションによりTヘルパー細胞の応答を改変しうる。
【0139】
好ましくは、免疫刺激剤は、既知のTh1応答及びTh2応答を誘発/増大するであろう。例えば、免疫刺激剤BCGを用いた場合、ツベルクリン反応は、通常、Th1応答の指標であるとき24時間で最大であり、48時間の反応は通常、より少なく、Th2の寄与を含む。BCGは、未処置動物で主にTh1応答を刺激することが知られている。
【0140】
そのような免疫刺激剤を用いることにより、試験細菌のTh1/Th2応答を測定することが可能であり、したがって、特定の疾患及び/又は障害を治療及び/又は予防するのに望ましいTh1/Th2応答を有する1種以上の細菌を同定することが可能である。
【0141】
好ましくは、細胞性免疫応答は、ツベルクリン皮膚試験を用いて測定される。マウスでは、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足蹠上で行われる。主要なTh1反応では、陽性足蹠免疫応答は、24時間で最大であり、48時間で減少する。しかしながら、Th2の反応性が増大するので、48時間での陽性足蹠免疫応答は増大し、24時間での足蹠免疫応答を超えることさえもある。
【0142】
免疫刺激剤(例えばBCG)を用いたワクチン接種を行うと、後で試験したときにツベルクリン(結核菌の可溶性調製物)を用いた皮膚試験に対する応答が誘発される。局所反応は、種々の間隔で、例えば、ツベルクリン注射の24時間後、48時間後、及び72時間後に測定される。簡潔に説明すると、ツベルクリンに対する陽性免疫応答を誘発する免疫刺激剤(例えばBCG)が使用される。試験動物では、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは足蹠上で行われる。主要なTh1反応では、陽性足蹠免疫応答は通常24時間で最大であり、48時間で減少する。しかしながら、Th2の反応性が増大するので、48時間での陽性足蹠免疫応答は増大し、24時間での足蹠免疫応答を超えることさえもある。したがって、このアッセイは、本発明に係る免疫モジュレーター組成物の導入により細胞性免疫応答がモジュレートされるか否かを評価するために使用することができる。
【0143】
好ましくは、免疫刺激剤はBCGである。
【0144】
本発明を実施例によりさらに説明するが、実施例は、当業者が本発明を実施するのを支援する役割を担うように意図されたものであり、本発明の範囲をなんら限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0145】
糖尿病ラットの体重、空腹時血糖値及び糖負荷後の血糖値に対するゴルドニア・ブロンキアリス(Gb)およびロドコッカス・コプロフィラス(Rc)の全細胞の投与の効果を測定した。
【0146】
ヒトにおける事象と似ている自然発生2型糖尿病のラットモデル(eSMTラット:Rat Newsletter 1991; 25: 28-29; Supplement IV、the international Survey on the Supply, Quality and Use of Laboratory Animals, Carshalton, Surrey, UK November 1964及びTarres et al., The eSMT rat: a murine model of type 2 diabetes, proceedings of the international joint meeting twelfth general assembly and conference and seventh FELASA symposium, 26-28 may 1999)において実験を行った。
【0147】
3群の4月齢ラットについて、血糖値評価のために空腹時及び経口糖負荷の120分後に尾静脈穿刺によって採血し、また体重計測を行った(第1評価)。血糖値は、市販のキット(Wiener Laboratories, Argentina)を用いてグルコース−オキシダーゼ酵素法により測定した。
【0148】
その後、各群に、生理食塩水、ホウ酸緩衝生理食塩水中1μg/0.1mlのロドコッカス・コプロフィラス、又はホウ酸緩衝生理食塩水中1μg/0.1mlのゴルドニア・ブロンキアリスを首の根元に注射し、3週間後に2回目として同じものを投与した。
【0149】
3ヵ月後、3群のラットについて、血糖値評価のために空腹時及び経口糖負荷の120分後に採血し、また体重計測を行った(第2評価)。
【0150】
結果
自然発生2型糖尿病のラットモデルにおいて実験を行った。
【0151】
表1は、4ヶ月齢(処置前)及び7ヶ月齢における雄eSMT(糖尿病)ラットの空腹時(G0)及び経口糖負荷後120分(G120)における血糖値、並びに体重を示している。
【0152】
データは平均±SDである。
【表1】

【0153】
表2は、4ヶ月と7ヶ月の結果を比較した場合の相対上昇を示す。
【表2】

【0154】
図1は、4ヶ月(すなわち注射の直前)におけるeSMTラットと比較した7ヶ月(すなわち注射の3ヵ月後)におけるeSMTラットの血糖の相対上昇を示すグラフである。(Gb)はゴルドニア・ブロンキアリスを注射した群を表し、(Rc)はロドコッカス・コプロフィラスを注射した群を表す。
【0155】
図2は、4ヶ月(すなわち注射の直前)におけるeSMTラットと比較した7ヶ月(すなわち注射の3ヵ月後)におけるeSMTラットの体重の相対上昇を示すグラフである。(Gb)はゴルドニア・ブロンキアリスを注射した群を表し、(Rc)はロドコッカス・コプロフィラスを注射した群を表す。
【実施例2】
【0156】
動物
24匹の雄ベータラットを使用した。ベータラット(及び2つの他の亜系eSS及びeSMT)は非インスリン依存性ヒト糖尿病のモデルとして使用されている(Tarres et al., The eSS rat, American Journal of Pathology, September 1992, Vol. 141, No. 3、及びCalderari et al., Rat News Letter, No. 25, July 1991, p28-29;Olguin et al. Diabetes, Nutrition & Metabolism Clinical and Experimental 11: 314-3l9, 1998参照)。ラットは、Dr Maria Tarres、Silvana Montenegro、Maria del Carmen Gayol及びDr Stella Maris Martinez(Catedra de Biologia, Facultad de ciencias Medcas, UNR Santa Fe 3100. 2000 Rosario, Argentina)から入手可能である。
【0157】
被験試薬
ゴルドニア・ブロンキアリスの熱死滅全細胞 ホウ酸緩衝生理食塩水中100μg/0.1ml
ツカムレラ・インコネンシスの熱死滅全細胞 ホウ酸緩衝生理食塩水中100μg/0.1ml
生理食塩水プラシーボ
【0158】
プロトコール
4ヶ月齢の動物の全てにおいて、安静時及び120分(糖負荷後)の血糖値を測定した。
【0159】
全ての動物の体重を測定した。
【0160】
このデータを用いて、動物を無作為化し、12匹のラットを対照とし、6匹のラットには3回の予防用量のゴルドニア・ブロンキアリス(Gb)を投与し、6匹のラットには3回の予防用量のツカムレラ・インコネンシス(Ti)を投与した。
【0161】
予防用量は、ラットが4、5及び6ヶ月齢のときに投与した。
【0162】
7ヶ月齢において再度、ラットの体重を測定し、空腹時及び糖負荷後血糖値を測定した。
【0163】
体重及び血糖値に基づいて、6匹の対照動物を無作為化し、ゴルドニア・ブロンキアリスの注射で処置した。これらは、ラットが7、8及び9ヶ月齢のときに行った。
【0164】
1歳の時点で再び動物の体重を測定し、安静時及び糖負荷後血糖値を測定した。
【0165】
360日目の膵臓を用いてラット膵臓の顕微鏡実験を行い、記載されている方法に従って、100倍率において顕微鏡視野辺りのランゲルハンス島の大きな島と小さな島の数(少なくとも3視野/膵臓)を計数した(Martinez SM, Tarres MC, Picena JC, Montenegro SM, Gagliardino JJ, Gomez Dumm CL, D'Ottavio AE, Naves A, Rabasa SL. eSS rat, an animal model for the study of spontaneous non-insulin-dependent diabetes. Lessons from Animal Diabetes IV. E Shafrir編、Smith-Gordon, London, 75-90, 1993;Martinez SM, Tarres MC, Robledo HA, Liborio MM, Picena JC, Rabasa SL. Modelo murino de la diabetes clinicamente benigna de los jovenes (MODY). Medicina (Buenos Aires) 44: 145-152, 1984;及びMartinez SM, Tarres MC, Montenegro SM, Milo R, Picena JC, Figueroa N, Rabasa SL. Spontaneous diabetes in eSS rats. Acta diabetol lat 25: 303-313, 1988)。
【0166】
直径が膵腺房1個から3個未満の間で変動する直径を有する島は小さいと定義し、膵腺房3個以上の直径を示す島は大きいとみなした。島領域の計算のために、小さな島及び大きな島をそれぞれ1及び3の値で示した。顕微鏡の接眼レンズ(400倍)に設置された較正(ShimadzuR)均等目盛を利用して、小さな島は35目盛りの最大直径(118.3μm)を有し、大きな島が36目盛りの最大直径(121.7μm)を有することがわかった。すなわち、120μmを小さい島と大きな島の境界とした。
【0167】
図3に示すように、小さな島は膵腺房3個未満の直径(120μm未満)を有し、大きな島は膵腺房3個以上の直径(120μmを超える)を有した。
【0168】
分析を行った組織学的標本は、膵臓柔組織のみを含んでいた。
【0169】
結果
表3は、4、6、8及び12ヶ月における雄ベータ(糖尿病)ラットの空腹時血糖値(G0)及び糖負荷120分後の血糖値(G120)、体重(w)、トリグリセリド(TG)及びコレステロール(Col)を示す。A群は、120、150及び180日目にゴルドニア・ブロンキアリス(Gb)を接種した群であり、B群は120、150及び180日目にツカムレラ・インコネンシス(Ti)を接種した群であり、C群は、7、8及び9ヶ月目にゴルドニア・ブロンキアリス(Gb)を接種した群であり、D群は対照群である。データは平均±SDである。
【表3】

【0170】
実験室での実験と一致して、Gb又はTiを投与した動物は、顕微鏡の結果において対照群と比較して大きな島を示す傾向にあった。
【0171】
以上の説明で引用した刊行物はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本発明に係る記載の方法及びシステムの種々の変形及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に自明なものであろう。特定の好ましい実施形態に関連させて本発明について説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるものではないと理解されるべきである。実際上、本発明を実施するための記載の形態の種々の変形のうち生化学・バイオテクノロジー分野又は関連分野の当業者に自明なものは、特許請求の範囲内に含まれるものとみなされる。
【0172】
受託証

【0173】

【0174】

【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】4ヶ月(すなわち注射の直前)におけるeSMTラットと比較した7ヶ月(すなわち注射の3ヵ月後)におけるeSMTラットの血糖の相対上昇を示すグラフである。
【図2】4ヶ月(すなわち注射の直前)におけるeSMTラットと比較した7ヶ月(すなわち注射の3ヵ月後)におけるeSMTラットの体重の相対上昇を示すグラフである。
【図3】糖尿病ラットにおけるランゲルハンス島を示す。Aは、100倍における大きな島(ヘマトキシリン及びエオジン)を示し、Bは200倍における小さな島(ヘマトキシリン及びエオジン)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病及び/又は肥満の治療又は予防のための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用。
【請求項2】
細菌がミコール酸含有細菌である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
細菌が、ゴルドニア(Gordonia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ツカムレラ(Tsukamurella)属、ノカルジア(Nocardia)属、ディエツィア(Dietzia)属、及びマイコバクテリウム(Mycobacterium)属のいずれか1以上の属から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
細菌が、ゴルドニア・ブロンキアリス(Gordonia bronchialis)、ロドコッカス・コプロフィラス(Rhodococcus coprophilus)、ツカムレラ・インコネンシス(Tsukamurella inchonensis)、ツカムレラ・パウロメタボラ(Tsukamurella paurometabola)、ゴルドニア・アマラエ(G. amarae)、ゴルドニア・スプティ(G. sputi)、ゴルドニア・テラエ(G. terrae)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、ノカルジア・ブラジリエンシス(N. brasiliensis)、ディエツィア・マリス(Dietzia maris)、ロドコッカス・ルベル(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・ロドニー(R. rhodnii)、ロドコッカス・オパカス(R. opacus)、ロドコッカス・エリソポリス(R. erythopolis)、マイコバクテリウム・バッカエ(Mycobacterium vaccae)、及びマイコバクテリウム・オブエンセ(M. obuense)の1以上の種から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
細菌がゴルドニア属に属する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
細菌がゴルドニア・ブロンキアリス種である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
細菌がロドコッカス属に属する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
細菌がロドコッカス・コプロフィラス種である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
細菌がツカムレラ属に属する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
細菌がツカムレラ・インコネンシス種である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
細菌が死滅している、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
被験体において2型糖尿病及び/又は肥満を治療又は予防する方法であって、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を該被験体に投与することを含む方法。
【請求項13】
細菌がミコール酸含有細菌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細菌が、ゴルドニア属、ロドコッカス属、ツカムレラ属、ノカルジア属、ディエツィア属、及びマイコバクテリウム属のいずれか1以上の属から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
細菌が、ゴルドニア・ブロンキアリス、ロドコッカス・コプロフィラス、ツカムレラ・インコネンシス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ゴルドニア・アマラエ、ゴルドニア・スプティ、ゴルドニア・テラエ、ノカルジア・アステロイデス、ノカルジア・ブラジリエンシス、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニー、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリソポリス、ディエツィア・マリス、マイコバクテリウム・バッカエ、及びマイコバクテリウム・オブエンセの1以上の種から選択される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
細菌がゴルドニア属に属する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
細菌がゴルドニア・ブロンキアリス種である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細菌がロドコッカス属に属する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
細菌がロドコッカス・コプロフィラス種である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細菌がツカムレラ属に属する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
細菌がツカムレラ・インコネンシス種である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
細菌が死滅している、請求項12〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの区画が放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む、2型糖尿病及び/又は肥満の治療に使用するための医薬パック。
【請求項24】
2型糖尿病の予防又は治療における使用に好適であることを示すラベルを含む、請求項23に記載の医薬パック。
【請求項25】
2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖、及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上の予防又は治療における使用に好適であることを示すラベルを含む、請求項23に記載の医薬パック。
【請求項26】
2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖、及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上の治療又は予防のための医薬の製造における放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物の使用。
【請求項27】
被験体において2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖、及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上を治療又は予防する方法であって、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を該被験体に投与することを含む方法。
【請求項28】
2型糖尿病及び/又は肥満の治療又は予防に使用するための、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物。
【請求項29】
細菌がミコール酸含有細菌である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
細菌が、ゴルドニア属、ロドコッカス属、ツカムレラ属、ノカルジア属、ディエツィア属、及びマイコバクテリウム属のいずれか1以上の属から選択される、請求項28又は29に記載の組成物。
【請求項31】
細菌が、ゴルドニア・ブロンキアリス、ロドコッカス・コプロフィラス、ツカムレラ・インコネンシス、ツカムレラ・パウロメタボラ、ゴルドニア・アマラエ、ゴルドニア・スプティ、ゴルドニア・テラエ、ノカルジア・アステロイデス、ノカルジア・ブラジリエンシス、ディエツィア・マリス、ロドコッカス・ルベル、ロドコッカス・ロドニー、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・エリソポリス、マイコバクテリウム・バッカエ、及びマイコバクテリウム・オブエンセの1以上の種から選択される、請求項28〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
細菌がゴルドニア属に属する、請求項28〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
細菌がゴルドニア・ブロンキアリス種である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
細菌がロドコッカス属に属する、請求項28〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
細菌がロドコッカス・コプロフィラス種である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
細菌がツカムレラ属に属する、請求項28〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
細菌がツカムレラ・インコネンシス種である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
細菌が死滅している、請求項28〜37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
2型糖尿病に関連したインスリン抵抗性、2型糖尿病に関連したインスリン欠乏、2型糖尿病に関連した高血糖、及び2型糖尿病に関連したメタボリックシンドロームの1以上の治療又は予防に使用するための、放線菌目の好気性生物の属に属する細菌の全細胞を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−67792(P2009−67792A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−219448(P2008−219448)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508178375)バイオイオス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】