説明

侵入物検出方法および侵入物検出装置

【課題】侵入禁止領域の境界部における侵入物の状態を正確に把握することが可能な、侵入物検出方法を提供する。
【解決手段】侵入物検出方法は、作業が行なわれる領域を含む侵入禁止区域60へ侵入しようとする侵入物80を、監視領域50で検出する方法であって、監視領域50の中央位置を含む領域に侵入禁止区域60を特定する境界部20が設定されている、当該監視領域50を監視する監視ステップ(ステップS2)と、侵入物80が監視領域50内の境界部20を越えて侵入しようとしていることを検出する検出ステップ(ステップS7)と、を有している、ことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入物の侵入を検出するための侵入物検出方法、およびこの侵入物検出方法に準拠した侵入物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、侵入物を監視するために、危険源である監視対象領域を見下ろす高さにカメラを取り付け、カメラの視野の周縁部に危険源を写し出すようにした装置が開示されている。この装置によれば、危険源から離れている段階の侵入物を早期に察知することが可能であると共に、カメラの真下が最もクリアーに写る部分であり、この部分においては、より正確に侵入物を監視することが可能になる。これにより、装置は、カメラから得られた画像情報を基に、信頼性の高い侵入物監視を行うことが可能である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−296154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置における技術では、危険源に近づきつつある侵入物を、カメラ直下で正確に検知することが可能であるが、カメラの視野の周縁部に位置する危険源に入った侵入物の状態を正確に把握するということに関しては不十分であった。即ち、侵入物検出の観点から考察すると、侵入物が危険源に入ったか否かが重要であり、この点において、従来技術では、危険源近傍における侵入物の状態を正確に把握しきれない、という課題を残していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る侵入物検出方法は、作業が行なわれる領域を含む侵入禁止区域へ侵入しようとする侵入物を、監視領域で検出する方法であって、前記監視領域の中央位置を含む領域に前記侵入禁止区域を特定する境界部が設定されている、前記監視領域を監視する監視ステップと、前記侵入物が前記監視領域内の前記境界部を越えて侵入しようとしていることを検出する検出ステップと、を有している、ことを特徴とする。
【0007】
この侵入物検出方法によれば、監視ステップで監視している監視領域は、その中央位置を含む領域に侵入禁止区域(背景技術における危険源)の境界部が位置するような設定となっている。境界部は、監視領域の中央位置の近傍にあって、侵入禁止区域と侵入禁止区域外とを区分して、侵入禁止区域を特定するために設けられている。つまり、侵入物が、境界部を越えて侵入禁止区域に入りそうか否か(入ったか否か)の重要な監視を、監視領域内の最も監視しやすい中央位置で行なうことが可能である。このような設定であれば、検出ステップにおいて、侵入物が境界部を越えそうな場合には、その状態を監視領域の中央位置で検出することになる。つまり、侵入物をそのほぼ直上で検出することができ、背景技術のように、危険源が監視領域の周辺部にあって、危険源付近の侵入物を斜め方向から観察する場合に比べて、境界部付近での侵入物の状態を正確に把握することが可能である。本侵入物検出方法によれば、侵入禁止区域の境界部が監視領域の中央に位置している設定であることにより、侵入物が境界部を越えて侵入しそうな状態を、監視領域の中央位置で確実に検出することが可能である。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る侵入物検出方法において、前記撮像手段は、前記監視ステップでは、撮像手段により前記監視領域の画像を取得して監視し、前記画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向が前記境界部の延在する方向に準じて沿った設定である、ことが好ましい。
【0009】
この方法によれば、撮像手段が、いわゆるフレームレイトを上げられる構成となっていて、侵入物の挙動の変化を把握するために順次行なっている画像の取得を、より迅速に行なうことが可能である。この場合、画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向は、境界部の延在する方向と一致していることが好ましいが、境界部の延在する方向に準じて沿っていれば良く、即ち、境界部の延在する方向と交叉する方向であっても、ほぼ該延在方向に沿っていれば、フレームレイトを上げる等の効果を奏する。これにより、侵入物検出方法に基づけば、侵入物の動きに遅れることなく、侵入物を瞬時に且つ的確に把握することが可能である。ここで、撮像手段としては、例えばカメラ等が好ましいが、取得した画像は、レンズの歪等により、特に監視領域の周辺部が中央位置より歪んでしまい、精緻さに欠ける傾向となる。従って、監視領域の画像により侵入物を検出する場合、精緻な画像を得られる中央位置に境界部を設けて監視する方法は、理に適っていて効果的である。さらに、撮像手段による監視領域の中央部の画像を、いわゆるROI(Region Of Interest)等の技術を活用して取得する方法等で対応すれば、フレームレイトをより確実に上げられ、より迅速な監視および検出が可能である。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る侵入物検出方法において、前記検出ステップで前記侵入物が検出され、前記侵入物が前記境界部を越えて前記侵入禁止区域へ侵入した場合、前記侵入物の侵入を示す警報処理を行なう警報ステップを、さらに有している、ことが好ましい。
【0011】
この方法によれば、警報ステップでは、侵入物が境界部を越えて侵入禁止区域へ侵入すると、侵入物の侵入を示す警報処理を行なう。これにより、例えば、侵入禁止区域で行なっていた作業を中断して事故防止等を図る、というような処置が可能になり、それ故、侵入物検出方法が警報ステップを有していることは好ましい。これにより、侵入物検出方法は、侵入物の検出に加え、さらに、警報処理を行なう警報ステップも有し、一層の安全を図ることが可能である。
【0012】
[適用例4]本適用例に係る侵入物検出装置は、作業が行なわれる領域を含む侵入禁止区域へ侵入しようとする侵入物を、監視領域で検出するためのものであって、前記監視領域の中央位置を含む領域に前記侵入禁止区域を特定する境界部が設定されている、前記監視領域を監視する監視部と、前記侵入物が前記監視領域内の前記境界部を越えて侵入しようとしていることを検出する検出部と、を有している、ことを特徴とする。
【0013】
この侵入物検出装置によれば、監視部が監視している監視領域は、その中央位置を含む領域に侵入禁止区域の境界部が位置するような設定となっている。境界部は、監視領域の中央位置の近傍にあって、侵入禁止区域と侵入禁止区域外とを区分して、侵入禁止区域を特定するために設けられている。つまり、侵入物が、境界部を越えて侵入禁止区域に入りそうか否か(入ったか否か)の重要な監視を、監視領域内の最も監視しやすい中央位置で行なうことが可能である。このような設定であれば、検出部は、侵入物が境界部を越えそうな場合には、その状態を監視領域の中央位置で検出することになる。つまり、侵入物をそのほぼ直上で検出することができ、背景技術のように、危険源が監視領域の周辺部にあって、危険源付近の侵入物を斜め方向から観察する場合に比べて、境界部付近での侵入物の状態を正確に把握することが可能である。侵入物検出装置は、侵入禁止区域の境界部が監視領域の中央に位置している設定であることにより、侵入物が境界部を越えて侵入しそうな状態を、監視領域の中央位置で確実に検出することが可能である。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る侵入物検出装置において、前記監視部は、撮像手段により前記監視領域の画像を取得して監視し、前記撮像手段は、前記画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向が前記境界部の延在する方向に準じて沿った設定である、ことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、撮像手段が、いわゆるフレームレイトを上げられる構成となっていて、侵入物の挙動の変化を把握するために順次行なっている画像の取得を、より迅速に行なうことが可能である。この場合、画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向は、境界部の延在する方向と一致していることが好ましいが、境界部の延在する方向に準じて沿っていれば良く、即ち、境界部の延在する方向と交叉する方向であっても、ほぼ該延在方向に沿っていればフレームレイトを上げる等の効果を奏する。これにより、侵入物検出装置は、侵入物の動きに遅れることなく、侵入物を瞬時に且つ的確に把握することが可能である。ここで、撮像手段としては、例えばカメラ等が好ましいが、取得した画像は、レンズの歪等により、特に監視領域の周辺部が中央位置より歪んでしまい、精緻さに欠ける傾向となる。従って、監視領域の画像により侵入物を検出する場合、精緻な画像を得られる中央位置に境界部を設けて監視する方法は、理に適っていて効果的である。さらに、撮像手段による監視領域の中央部の画像を、いわゆるROI(Region Of Interest)等の技術を活用して取得する方法等で対応すれば、フレームレイトをより確実に上げられ、より迅速な監視および検出が可能である。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係る侵入物検出装置において、前記検出部が検出した前記侵入物が前記境界部を越えて前記侵入禁止区域へ侵入した場合、前記侵入物の侵入を示す警報処理を行なう警報部を、さらに有している、ことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、警報部は、侵入物が境界部を越えて侵入禁止区域へ侵入すると、侵入物の侵入を示す警報処理を行なう。これにより、例えば、侵入禁止区域で行なっていた作業を中断して事故防止等を図る、というような処置が可能になり、それ故、侵入物検出装置が警報部を有していることは好ましい。これにより、侵入物検出装置は、侵入物の検出に加え、さらに、警報処理を行なう警報部も有し、一層の安全を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】侵入物検出方法に基づくシステム例を示す正面図。
【図2】侵入物検出方法に基づくシステム例を示す平面図。
【図3】侵入物検出装置の構成を主に示すブロック図。
【図4】侵入物を検出する手段を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の侵入物検出方法および侵入物検出装置に関わるシステム例について、添付図面を参照して説明する。このシステム例は、侵入禁止区域が、作業のための動作をするロボットの動作領域を含む区域であり、当該侵入禁止区域への侵入物の侵入を検出するために好適な構成となっている。なお、図面では、分かりやすいように、ロボットや侵入物等をそれぞれ異なった縮尺で描いてある。
(実施形態)
【0020】
図1は、侵入物検出方法に基づくシステム例を示す正面図である。また、図2は、侵入物検出方法に基づくシステム例を示す平面図である。両図に示すように、このシステム例では、載置面8に設置され作業に関わる動作を行なうロボット1と、ロボット1の上方に設けられている2機のカメラ(撮像手段)6(6a,6b)と、ロボット1およびカメラ6を制御する制御部4と、を備えている。
【0021】
ロボット1は、いわゆる双腕構成であって、載置面8にほぼ垂直に載置されている支持部11と、支持部11の一方の側に設けられた関節部13aと、この関節部13aから順に延伸している腕部14a、関節部13a、腕部14aと、を有している。関節部13aは、腕部14aの回動動作の支点となっている。また、ロボット1は、関節部13aに対して支持部11の対極側に設けられた関節部13bと、この関節部13bから順に延伸している腕部14b、関節部13b、腕部14bと、を有している。さらに、最先端の腕部14a,14bには、ワーク等を挟んで保持するためのハンド部15a,15bがそれぞれ設けられている。ロボット1は、ハンド部15a,15bの先端が、正面視(図1)および平面視(図2)において、それぞれ動作軌跡70a,70bのように円弧状に回動し、図に示す動作軌跡70(70a,70b)は、ハンド部15(15a,15b)が最大に回動した場合の軌跡を示している。
【0022】
図1におけるロボット1は、腕部14がY軸方向へ一直線状に延びた状態を表していて、図2におけるロボット1は、腕部14がY軸方向へ一直線状に延びた状態から、そのままX軸方向へ回動した状態を表している。そして、2機のカメラ6のうち、カメラ6aは、図1に示すように、ほぼ垂直に下方を向いていて、関節部13aおよび腕部14aがY軸方向へ延びきった状態におけるハンド部15aの先端を、カメラ視野の中心に据えるように設置されている。同様に、カメラ6bは、ほぼ垂直に下方を向いていて、関節部13bおよび腕部14bが腕部14a等と反対方向のY軸方向へ延びきった状態におけるハンド部15bの先端を、カメラ視野の中心に据えるように設置されている。
【0023】
以上のようなロボット1およびカメラ6の配置において、カメラ6(6a,6b)が撮像する範囲、即ち監視領域50(50a,50b)について説明する。まず、カメラ6aが監視する監視領域50aは、カメラ6aを中心とし各辺がX軸またはY軸に沿った四角形状をなしている。この場合、四角形状は、X軸方向がY軸方向より長く設定されている。同様に、カメラ6bが監視する監視領域50bは、カメラ6bを中心とし各辺がX軸またはY軸に沿った四角形状をなしている。この場合、四角形状は、X軸方向がY軸方向より長く設定されている。カメラ6は、監視領域50を常時撮像し、撮像した画像を制御部4へ送る役目を担っている。なお、この場合の前提として、監視領域50は、侵入物80がロボット1に近づくために通過しなくてはならない領域に、設けられている。
【0024】
また、載置面8において、カメラ6aの直下に該当する点からX軸と平行に引いた線部が境界部20aであり、カメラ6bの直下に該当する点からX軸と平行に引いた線部が境界部20bである。この場合、境界部20は、監視領域50の中央位置に設けられているが、監視領域50の中央位置を含む領域、即ち中央位置の近傍に設けられていれば良い。これら境界部20(20a,20b)を境にして、ロボット1の側にある区域は、ロボット1が動作中の安全を図るために、侵入物80の立ち入りが禁止された、侵入禁止区域60である。つまり、境界部20(20a,20b)は、侵入禁止区域60を特定している線部であり、既述したロボット1の動作軌跡70は、この侵入禁止区域60内に含まれている。
【0025】
さらに、カメラ6は、撮像する監視領域50のうち、境界部20を中心にして境界部20に沿う領域をいわゆるROI(Region Of Interest)領域30とし、他の監視領域部分より精緻に撮像することが可能な形態となっている。カメラ6aでは、画像上において、ROI領域30aが境界部20aに沿って所定の幅を有し、X軸方向へ延在する設定であり、カメラ6bでは、ROI領域30bが境界部20bに沿って所定の幅を有し、X軸方向へ延在する設定である。このROI領域30を設けることにより、侵入禁止区域60へ近づいてくる侵入物80を、侵入禁止区域60へ侵入直前の時点で、最も明瞭に把握することができる。
【0026】
ここで、侵入物80と、監視領域50および境界部20と、の関係について説明する。図2には、人間を侵入物80として表してある。侵入物80bは、監視領域50bへ侵入し始めたところであって、カメラ6bの画像には、監視領域50bの周辺部に侵入物80bの一部が記録されている状態である。一方、侵入物80aは、監視領域50aへ侵入して侵入物80aの一部が境界部20aを越えたところであって、カメラ6aの画像には、境界部20aを越えた侵入物80aの一部がROI領域30aに明瞭に記録されている状態である。これらの場合における処理については、図4を参照して後述する。
【0027】
次に、ロボット1の動作を制御すると共に侵入物検出装置を構成する制御部4について説明する。図3は、侵入物検出装置の構成を主に示すブロック図である。図3に示すロボット1は、厳密には、ロボット駆動に関わる関節部13、腕部14およびハンド部15を指している。図3を参照して、制御部4は、監視領域50を撮像した画像を取得するために監視部としてのカメラ6を制御するカメラ制御部41と、該画像を基にして侵入物80の有無および動向を解析する画像解析部42と、侵入物80の侵入を示す警報処理を行ない、ロボット1の動作を制御するロボット駆動制御部18へ警報を出力する外部出力部(警報部)43と、ロボット1の動作に係るデータ等を有するデータベース部44と、を有している。そして、制御部4は、警報処理を行なうためのプログラム等が記憶されているROM(Read Only Memory)47と、カメラ6から取得した画像を一時的に記憶しておくRAM(Random Access Memory)46と、ROM47に記憶されているプログラムやデータベース部44の情報に基づきカメラ制御部41、画像解析部42および外部出力部43の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)45と、を有している。なお、制御部4は、カメラ6と共に、侵入物検出装置として機能する。
【0028】
以上のようなロボット1およびカメラ6の構成において、侵入物80を検出する具体的手順を説明する。図4は、侵入物を検出する手段を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、初期処理を行なう。これは、CPU45が、侵入物80の監視を行なうために、制御部4の状態を初期化することにより行なわれる。初期化後、ステップS2へ進む。
【0029】
ステップS2において、画像の取得を行なう。これは、制御部4のカメラ制御部41が、カメラ6(6a,6b)を制御して、監視領域50(50a,50b)の全域を写した画像を取得することにより行われる。この場合、カメラ6は、ほぼ垂直に下方を向いていて、カメラ視野の中心位置に境界部20を据えるように設置されていて、所定の監視領域50の画像を取得できる好ましい配置となっている。また、カメラ制御部41は、データベース部44の有する、監視領域50におけるROI領域30に関する情報を参照して、境界部20に沿う領域をROI領域30として設定することができる。つまり、ROI領域30を設定した監視領域50の画像によれば、境界部20を越えて侵入禁止区域60へ侵入しようとする侵入物80を、精緻な画像であるROI領域30の部分において確認することができる。そのため、侵入物検出装置は、境界部20における侵入物80の挙動をはっきりと把握することができる。このステップS2は、監視ステップに該当する。そして、画像の取得後、ステップS3へ進む。
【0030】
ステップS3において、ROIの有無を判断する。ROI領域30が設定されてROI画像が有れば、ステップS4へ進み、一方、ROI画像が無ければ、画像をRAM46に記憶してステップS5へ進む。
【0031】
そして、ROI画像が有る場合、ステップS4において、ROIを切り出す。これは、カメラ制御部41が監視領域50の画像からROI領域30の部分を切り取ることにより行われる。ROI領域30のROI画像を切り取り後、ROI画像をRAM46に記憶してステップS5へ進む。
【0032】
ステップS5において、画像の転送を行う。ここでは、ROI画像が有る場合、カメラ制御部41から画像解析部42へ、ROI画像が転送され、ROI画像が無い場合、カメラ制御部41から画像解析部42へ、ステップS2で取得した画像が転送される。また、この場合、カメラ5は、画像を読み出す速度および画像を転送する速度の速い方向が境界部20の延在する方向と一致しており、いわゆるフレームレイトを上げられる構成となっている。そのため、カメラ制御部41は、カメラ6から、より迅速に画像の取得を行なうことができ、画像解析部42は、転送される画像をより迅速に受信できる。これにより、カメラ6および制御部4は、監視領域50へ侵入した侵入物80の動きに遅れることなく、侵入物80を瞬時に且つ的確に把握することができるようになる。なお、画像の読み出し速度および転送速度の速い方向は、境界部20の延在する方向と一致していることが望ましいが、境界部の延在する方向と交叉するような方向であっても、該延在方向にほぼ沿っていれば良い。そして、画像の転送後、ステップS6へ進む。
【0033】
ステップS6において、画像処理を行なう。これは、画像解析部42が、ステップS4におけるROI画像またはステップS2で取得した画像を、解析可能な形態に処理することにより行なわれる。処理後、ステップS7へ進む。
【0034】
ステップS7において、侵入物の有無を判断する。これは、画像解析部42が、検出部として、転送された画像から侵入物80の有無を解析し、その結果を受けて、CPU45が判断することにより行なわれる。ここでの侵入物80は、例えば、図2における侵入物80aのように、侵入物80aの一部が侵入禁止区域60aに入った状態の時点が該当する。このステップS7は、検出ステップに該当する。そして、侵入物80が検出されれば、ステップS8へ進み、一方、侵入物80が検出されなければ、ステップS2へ戻る。
【0035】
ステップS8において、外部出力を行なう。これは、外部出力部43が、ステップS7の検出ステップで侵入物80が検出され、侵入物80が境界部20を越えて侵入禁止区域60へ侵入した場合に、侵入物80の侵入を示す警報をロボット駆動制御部18へ出力する、警報処理をすることにより行われる。これにより、警報を受信したロボット駆動制御部18は、ロボット1に対して、例えば、侵入禁止区域60で行なっていたロボット1の動作を中断して、事故防止を図る等の処理をすることができる。このステップS8は、警報ステップに該当する。以上の各ステップを経てフローが終了する。
【0036】
以上説明した実施形態における侵入物検出方法の主要な効果を述べる。侵入物検出方法では、ステップS2(監視ステップ)で監視している監視領域50の中央位置に、侵入禁止区域60を特定するための境界部20が位置する設定である。この設定であれば、侵入物80が侵入禁止区域60に入ったか否かの重要な判断は、監視領域内の最も監視しやすい中央位置において、行なわれる。そのため、侵入物80は、境界部20へ近づくに従って、周辺部に侵入物80がある場合よりも、歪み等のない画像で把握されることになる。さらに、カメラ6による画像の特性に加え、監視領域50の中央位置近傍がROI領域30であることにより、ROI領域30では、侵入物80をほぼ真上から捉えることができ、侵入物80を斜め方向から捉える場合に比べ、侵入物80の位置等を的確に把握できる。このような侵入物検出方法によれば、侵入物80が境界部20を越えそうな状態を、確実に検出することができる。
【0037】
また、侵入物検出方法および侵入物検出装置は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0038】
(変形例1)侵入物検出のフローチャートにおいて、ステップS7は、侵入物80が境界部20を越えたことを検出しているが、これに限定されるものではない。例えば、侵入物80が境界部20を越えたことを検出することに替えて、侵入物80がROI領域30へ入ってきた状態を検出することをもって、境界部20を越えようとしている、と判断する形態等であっても良い。これによれば、侵入物80の侵入速度が速い場合であっても、ロボット1をより安全に停止させることができる。
【0039】
(変形例2)境界部20は、ロボット1の動作軌跡70の近傍を含んだ直線状をなしている形態であるが、これに限定せず、例えば、円弧状の動作軌跡70そのものを境界部としても良い。この場合、動作軌跡70を監視領域50のほぼ中央位置とするために、動作軌跡70に沿って、カメラ6を増設することが好ましい。
【0040】
(変形例3)カメラ6により取得する画像は、境界部20に沿う一部領域をROI領域30として設定しているが、ROI領域30の設定を行なわなくても良い。境界部20が監視領域50の中央位置にあるため、この中央位置の境界部20近傍に近づいた侵入物80は、カメラ6によって、より歪み等の少ない画像で記録される。
【0041】
(変形例4)実施形態では、ロボット1の双腕に対応して2機のカメラ6a,6bを用いているが、2機より多いカメラで侵入物80の監視を行なっても良い。例えば、X軸方向からも侵入物80の侵入が予想される場合等では、ロボット1のX軸方向にもカメラ6の設置が望ましい。
【0042】
(変形例5)ロボット1は、いわゆる双腕ロボットであるが、これに限定されず、1本腕や3本以上の多腕を有するものであっても良い。また、ロボット1の双腕のそれぞれは、関節部13および腕部14を一組として二組を有する構成であるが、一組、または二組以外の多関節、であっても良い。侵入物検出方法に準拠した侵入物検出装置によれば、これらロボットに対しても、その動作を阻害する侵入物80を的確に検出することができる。
【0043】
(変形例6)カメラ6は、実施形態のように、監視領域50の中央に設置することが最良であるが、境界部20に沿う任意の位置に配置する構成であっても良い。また、監視領域50は、四角形状をなしているが、四角形状以外の円形や楕円形等の形状に設定しても良い。
【0044】
(変形例7)侵入物検出装置の制御部4は、図3に示す構成に限定されるものではなく、例えば、カメラ制御部41が画像解析部42の機能を兼任する構成や、データベース部44を内蔵せずに、必要時にのみ、外部装置としてのデータベース部44を接続する構成等であっても良い。また、カメラ6は、ロボット1へ侵入物80が近づくのを監視しているが、ロボット1だけが対象ではなく、高温炉、化学反応槽、プレス機等の他装置へ侵入物80が近づくのを監視する形態であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…ロボット、4…制御部、6…撮像手段および監視部としてのカメラ、8…載置面、11…支持部、13…関節部、14…腕部、15…ハンド部、20…境界部、30…ROI領域、41…カメラ制御部、42…検出部としての画像解析部、43…警報部としての外部出力部、45…CPU、50…監視領域、60…侵入禁止区域、70…動作軌跡、80…侵入物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業が行なわれる領域を含む侵入禁止区域へ侵入しようとする侵入物を、監視領域で検出する侵入物検出方法であって、
前記監視領域の中央位置を含む領域に前記侵入禁止区域を特定する境界部が設定されている、前記監視領域を監視する監視ステップと、
前記侵入物が前記監視領域内の前記境界部を越えて侵入しようとしていることを検出する検出ステップと、を有している、ことを特徴とする侵入物検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の侵入物検出方法において、
前記監視ステップでは、撮像手段により前記監視領域の画像を取得して監視し、前記撮像手段は、前記画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向が前記境界部の延在する方向に準じて沿った設定である、ことを特徴とする侵入物検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の侵入物検出方法において、
前記検出ステップで前記侵入物が検出され、前記侵入物が前記境界部を越えて前記侵入禁止区域へ侵入した場合、前記侵入物の侵入を示す警報処理を行なう警報ステップを、さらに有している、ことを特徴とする侵入物検出方法。
【請求項4】
作業が行なわれる領域を含む侵入禁止区域へ侵入しようとする侵入物を、監視領域で検出するための侵入物検出装置であって、
前記監視領域の中央位置を含む領域に前記侵入禁止区域を特定する境界部が設定されている、前記監視領域を監視する監視部と、
前記侵入物が前記監視領域内の前記境界部を越えて侵入しようとしていることを検出する検出部と、を有していることを特徴とする侵入物検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の侵入物検出装置において、
前記監視部は、撮像手段により前記監視領域の画像を取得して監視し、前記撮像手段は、前記画像を読み出す速度または転送する速度の速い方向が前記境界部の延在する方向に準じて沿った設定である、ことを特徴とする侵入物検出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の侵入物検出装置において、
前記検出部が検出した前記侵入物が前記境界部を越えて前記侵入禁止区域へ侵入した場合、前記侵入物の侵入を示す警報処理を行なう警報部を、さらに有している、ことを特徴とする侵入物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10161(P2013−10161A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143841(P2011−143841)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】