説明

便器固定構造

【課題】 施工が容易で、施工者に負担のかからない便器固定構造を提供すること。
【解決手段】 Tボルトの頭部が下側に入り込むことによりTボルトを係止するリブ3が床フランジ1に配設され、Tボルトの頭部より大きめの大きさを有するTボルトの挿入穴6とこの挿入穴に連続する長穴7が便器底部5に穿設されており、床フランジの上方から便器が配置され、頭部を下に向けて便器底部の挿入穴に差し込まれたTボルトの長穴に沿ったスライドによりTボルトの頭部が床フランジのリブの下側に入り込み、Tボルトがリブに係止され、長穴から上方に突き出るTボルトのネジ部にナットが螺合されて便器が床フランジに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、便器固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
便器は、排水の受け口となる床フランジを介して床に固定される。本出願人は、次のような便器固定構造を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
図5の要部断面図に示したように、床50に固定された床フランジ51にフランジ孔52が穿設され、このフランジ孔52に断面T字型の形状を有するTボルト53の頭部53aが嵌入されてTボルト53のネジ部53bが床50に立設される。便器の底部54にはボルト孔が穿設され、このボルト孔にブッシュ55が取り付けられる。ブッシュ55は、内部に係止片56を有しており、ブッシュ55の内部にTボルト53のネジ部53bを通して便器を床50の上に配置すると、ブッシュ55の係止片56がTボルト53のネジ部53bに係合する。この係合により便器は床フランジ51を介して床50に固定される。便器の底部54より上方に突き抜けるTボルト53のネジ部53bには化粧キャップ57がねじ込み式で装着される。
【特許文献1】特開2004−278252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5に示した先に提案した便器固定構造は、便器の固定にナットを不要とし、ナットの締め付けに起因して生じやすい便器および床フランジ51の割れという問題を解消することができるという利点を有する反面、施工上の問題が指摘される。
【0005】
通常、Tボルト53は床フランジ51の2箇所に設けられ、便器の底部には2本のTボルト53に対応してボルト孔が2箇所形成されている。このため、各々のボルト孔に装着したブッシュ55にTボルト53のネジ部53bを通す作業は実際には容易ではない。トイレルームは一般に狭い空間であり、便器によってTボルト53のネジ部53bが見えなくなってしまうからである。無造作に作業を行うと便器または床フランジ51に破損を生じさせる可能性がある。しかも、図5に示した便器固定構造の場合、Tボルト53のネジ部53bは立設されているため、ネジ部53bを便器の底部54のボルト孔に装着されたブッシュ55に通す際には、便器を上方に突出するネジ部53bの高さ以上に持ち上げる必要があり、施工者の負担が大きくなっている。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、施工が容易で、施工者に負担のかからない便器固定構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記の課題を解決するために、第1には、Tボルトの頭部が下側に入り込むことによりTボルトを係止するリブが床フランジに配設され、Tボルトの頭部より大きめの大きさを有するTボルトの挿入穴とこの挿入穴に連続する長穴が便器底部に穿設されており、床フランジの上方から便器が配置され、頭部を下に向けて便器底部の挿入穴に差し込まれたTボルトの長穴に沿ったスライドによりTボルトの頭部が床フランジのリブの下側に入り込み、Tボルトがリブに係止され、長穴から上方に突き出るTボルトのネジ部にナットが螺合されて便器が床フランジに固定されることを特徴としている。
【0008】
本願発明は、第2には、挿入穴が便器底部の側面部に穿設され、長穴が便器底部の側面部から上面部にかけて穿設されていることを特徴としている。
【0009】
本願発明は、第3には、床フランジにTボルトの保持台が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願の第1の発明によれば、便器を配置した後にTボルトを差し込み、リブに係止させることができ、便器の施工が容易となり、また、便器を持ち上げる高さを低くすることができ、施工者の負担が軽減される。
【0011】
本願の第2の発明によれば、Tボルトを横から直線上にスライドさせることによりTボルトの係止が可能となり、便器の固定作業がより容易となる。
【0012】
本願の第3の発明によれば、Tボルトの落下が防止され、施工性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本願発明の便器固定構造の一実施形態を示した要部分解斜視図である。
【0014】
排水の受け口として設けられる床フランジ1には、中央開口部2を挟んで対称位置に平面視U字形状のリブ3が設けられている。リブ3は、その下側に断面T字型の形状を有するTボルトの頭部が入り込めるようになっているとともに、Tボルトの頭部が上側に抜け外れないようになっている。このリブ3はTボルトの保持台4の上側に配設されている。保持台4は床フランジ1の端部まで延設されている。
【0015】
一方、便器の底部5には、上面部に、挿入穴6と挿入穴6に連続する長穴7が穿設されている。挿入穴6と長穴7は、便器の底部5において対称位置に配置されている。挿入穴6はTボルトの略正方形の頭部よりも大きめの大きさを有し、Tボルトの頭部の挿入を可能にしている。一方、長穴7はTボルトが上側に抜け外れることのないように、Tボルトの頭部より小さめの幅を有している。このような挿入穴6と挿入穴6に連続する長穴7は、平面視でT字状の形状の穴を形成している。
【0016】
Tボルトは、便器が床フランジ1の上方から配置された状態で取り付けられる。すなわち、図2に示したように、Tボルト8は、頭部8aを下にし、ネジ部8bを上に向け、便器側から底部5の挿入穴6の中に差し込まれる。Tボルト8の差込みは、頭部8aが図1に示した保持台4の上面に接触するまで行う。Tボルト8の頭部8aが保持台4の上面に接触しないときは、便器の位置をずらし、Tボルト8の頭部8aが確実に保持台4の上面に接触するようにする。このようにして便器の底部5の挿入穴6に上から差し込まれたTボルト8は、挿入穴6に連続して穿設された長穴7に沿ってスライドされる。このスライドによってTボルト8は便器の内側に向かって横方向に移動し、頭部8aが図1に示した床フランジ1のリブ3の下側に入り込み、Tボルト8はリブ3によって係止される。リブ3は保持台4の上側に配設されているため、Tボルト8は下に落ち込むことはなく、また、リブ3による係止によって上側に抜け外れることもない。この状態においてTボルト8のネジ部8bは便器の底部5の長穴7から上方に突き出る。突き出たTボルト8のネジ部8bには、図3に示したようにナット9が螺合される。ナット9の螺合により便器は床フランジ1に固定される。
【0017】
このように、図1に示した便器固定構造では、床フランジ1に設けたリブ3によってTボルト8を係止することができるため、Tボルト8を便器を配置した後に取り付けることができる。したがって、床フランジ1にあらかじめTボルト8を設けておく図5に示した便器固定構造におけるTボルト53のネジ部53bをブッシュ55に通す作業が容易でないという問題が解消される。また、図1に示した便器取付構造では、Tボルト8は便器を配置した後に取り付けられるため、便器を配置する際にTボルト8のネジ部8bが突出せず、このため、便器を持ち上げる高さを図5に示した便器取付構造の場合より低くすることができ、施工者の負担が軽減される。その上、床フランジ1には保持台4が設けられているため、Tボルト8を便器の底部5の挿入穴6に差し込み、長穴7に沿ってスライドさせてリブ3に係止させるときに、Tボルト8は頭部8aが保持台4の上面で支持され、落下してしまうことはない。
【0018】
次に施工手順について説明する。
【0019】
図1に示したような床フランジ1をトイレルームの床の所定位置にネジ等の固定具を用いて固定する。次いで、便器を、固定された床フランジ1の上方から配置する。
【0020】
この後、図2に示したように、Tボルト8を頭部8aが下を向きネジ部8bが上を向くようにして便器の底部5の挿入穴6に差し込む。挿入穴6はTボルト8の頭部8aより大きめの大きさを有しているため、Tボルト8の挿入穴6への差込みは容易に行える。頭部8aが床フランジ1の保持台4に当たらないときは便器の位置をずらし、頭部8aが保持台4の上面に載るようにする。頭部8aが保持台4の上面に載ったときには、Tボルト8から手を離してもTボルト8は落下せず、その位置を安定に保つ。
【0021】
次いでTボルト8を長穴7に沿って便器の内側に向けて横方向にスライドさせる。長穴7はTボルト8の頭部8aの大きさより小さめの幅を有しているため、Tボルト8が長穴7から上に向かって抜け外れることはない。Tボルト8の長穴7に沿った横方向のスライドはスムーズに行える。Tボルト8の頭部8aは保持台4の上面に載って移動し、リブ3の下側に入り込む。そしてTボルト8は、リブ3によって係止され、ネジ部8bが長穴7から上に突き出る。
【0022】
この後、図3に示したように、突き出たTボルト8のネジ部8bにナット9を螺合する。便器は床フランジ1に固定される。仕上がりを見栄えよくするために、たとえば、化粧キャップをTボルト8のネジ部8bの上端から被せ、ナット9を覆い隠すことができる。
【0023】
図4は、本願発明の便器固定構造の別の実施形態を示した要部斜視図である。
【0024】
図4に示した便器固定構造では、図示されていないが、床フランジは、図1に示した床フランジ1と同様な構成を有するものが採用されている。一方、図4に示した便器固定構造では、挿入穴6が便器の底部5の側面部に穿設され、挿入穴6に連続する長穴7が、便器の底部5の側面部から上面部にかけて穿設されている。したがって、図4に示した便器固定構造では、Tボルト8を横から直線上にスライドさせることによりTボルト8の係止が可能となっている。図1に示した便器固定構造では、図2に示したように、Tボルト8を挿入穴6に上から下に差し込んだ後に長穴7に沿って横方向にスライドさせるのに対し、図4に示した便器固定構造では、Tボルト8の差込みも横方向であり、Tボルト8の差込みおよびスライドを連続した作業で行うことができるようになっている。このため、便器の固定作業がより容易となっている。このような図4に示した便器固定構造の施工手順は、Tボルト8の差込み方向が異なるだけで、その他については図1に示した便器固定構造と同様の手順となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明の便器固定構造の一実施形態を示した要部分解斜視図である。
【図2】図1に示した便器固定構造におけるTボルトの取付けについて示した要部斜視図である。
【図3】図1に示した便器固定構造におけるナットの螺合について示した要部斜視図である。
【図4】本願発明の便器固定構造の別の実施形態を示した要部斜視図である。
【図5】先に提案した便器固定構造を示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 床フランジ
2 中央開口部
3 リブ
4 保持台
5 底部
6 挿入穴
7 長穴
8 Tボルト
8a 頭部
8b ネジ部
9 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tボルトの頭部が下側に入り込むことによりTボルトを係止するリブが床フランジに配設され、Tボルトの頭部より大きめの大きさを有するTボルトの挿入穴とこの挿入穴に連続する長穴が便器底部に穿設されており、床フランジの上方から便器が配置され、頭部を下に向けて便器底部の挿入穴に差し込まれたTボルトの長穴に沿ったスライドによりTボルトの頭部が床フランジのリブの下側に入り込み、Tボルトがリブに係止され、長穴から上方に突き出るTボルトのネジ部にナットが螺合されて便器が床フランジに固定されることを特徴とする便器固定構造。
【請求項2】
挿入穴が便器底部の側面部に穿設され、長穴が便器底部の側面部から上面部にかけて穿設されている請求項1記載の便器固定構造。
【請求項3】
床フランジにTボルトの保持台が設けられている請求項1または2記載の便器固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−225964(P2006−225964A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40520(P2005−40520)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】