便器洗浄水供給装置
【課題】上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制した便器洗浄水供給装置の提供。
【解決手段】給水源に接続された給水管31と、給水管31から便器洗浄水タンク10へ向けた吐水・止水を切替える給水バルブ32と、上下動に伴って給水バルブ32による吐水・止水の切替えを行うフロート部33とを有する便器洗浄水供給装置100において、給水管31に固定され、フロート部33の外周を囲繞し、フロート部33の上下動をガイドするフロートガイド36を有する。
【解決手段】給水源に接続された給水管31と、給水管31から便器洗浄水タンク10へ向けた吐水・止水を切替える給水バルブ32と、上下動に伴って給水バルブ32による吐水・止水の切替えを行うフロート部33とを有する便器洗浄水供給装置100において、給水管31に固定され、フロート部33の外周を囲繞し、フロート部33の上下動をガイドするフロートガイド36を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備えた便器洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、〔特許文献1〕に記載されているように、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備えた便器洗浄水供給装置が知られている。
【0003】
従来のフロート部は、給水管に挿通された環状部を有し、便器洗浄水タンク内の水位の変動に応じて環状部が給水管に沿って上下することで、上下動するようになっている。フロート部には、給水バルブを開閉するアームが取付けられ、フロート部の上下動に応じてアームが動くことで給水バルブの開閉が行われる。
【0004】
アームは、一端側が給水バルブに回動自在に取付けられており、他端側がフロート部に取り付けられている。よって、フロート部は、その上下動の際に、アームの回転半径に起因して、給水管との距離が変動する。この変動を許容するため、環状部は、給水管の径に対して、かかる回転半径に応じた余裕を持たせ、大きくしてある。
【0005】
【特許文献1】中国実用新案登録CN2453203Y号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるフロート部は、給水管に対する位置決めがかかる環状部によって行なわれるため、給水管の周囲を回転するように動くことがある。この場合、水面の波によるフロート部の揺れによりアームがねじれの力を受けて、止水が不安定な状態になって吐水・止水を繰り返すいわゆるハンチングといわれる状態となり、最悪の場合には共振等により振動が大きくなって部品が破壊されることもある。
【0007】
また、環状部が給水管の径に対して大きいため、上下動の際にがたつきを生じ、上下動がスムーズに行われず、前記と同様に給水バルブを閉じて止水すべき場合であっても止水が完全に行われなくなる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制した便器洗浄水供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、給水源に接続された給水管と、前記給水管から便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替える給水バルブと、上下動に伴って前記給水バルブによる前記吐水・止水の切替えを行うフロート部とを有する便器洗浄水供給装置において、前記給水管に固定され、前記フロート部の外周を囲繞し、前記フロート部の上下動をガイドするフロートガイドを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記給水管の放射方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隙は、前記給水管を回る方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきをより良好に抑制することができ、フロート部の上下動が滑らかに行われ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記フロートガイドと前記フロート部との少なくとも一方は、何れか一方が他方に対向する位置に、左右方向に幅狭の複数の突部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また突部によってフロートガイドとフロート部との摩擦が抑制されていることでフロート部の上下動が滑らかに行われ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記フロート部は、水平面での断面が略矩形状であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、装置の大型化を抑制しつつフロート部の体積を確保することでフロート部の性能を向上させることができるとともに、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記フロート部は、前記給水管に対向する部分が前記給水管の外面に沿った形状をなしていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、装置の大型化を抑制することができるとともに、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを外周面全体で抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、前記給水バルブからの吐水を受けるとともに、同吐水をオーバーフローさせながら前記桶貯水部と便器洗浄水タンクとに分岐させる注水ヘッダーを有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、注水ヘッダーにより水圧差が消されてヘッド高さ(圧力)で統一されて、止水変動を抑制することができるとともに、注水ヘッダーから便器洗浄水タンクに分岐した水によって発生する波に対してもフロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。なお、止水変動とは、水圧差によるタンク水面の止水位置の差のことで、差が大きくなると便器の排水性能に差を生じるため、少ない方が良いとされる。
【0021】
請求項7記載の発明は、前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、前記給水バルブからの吐水の水圧によって前記フロート部を押し下げることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進できることで、押し力が増して止水が安定することにより、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0023】
請求項8記載の発明は、前記給水バルブからの吐水を行う吐水管を有し、前記吐水管は、吐水を行う方向に向けて口径が広がった形状をなしていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えること及び吐水管から吐出される水の流速が減じられ、水跳ねを抑えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進でき、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0025】
請求項9記載の発明は、前記フロート部は、その上部に位置し上方に向けた開口を備え前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を前記開口から供給される桶貯水部と、前記開口の少なくとも一部を塞ぐ蓋とを有し、前記蓋は、前記給水バルブから吐水される位置の周辺において前記開口を塞ぐことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進でき、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっているとともに、桶貯水部に供給された水が外部に飛散すること及び桶貯水部に水を供給することに起因する騒音を防止して、使用感に優れた便器洗浄水供給装置となっている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1に本発明を適用した便器洗浄水供給装置の概略を示す。
【0029】
図1に示すように、便器洗浄水供給装置100は、便器洗浄水タンク10と、便器洗浄水タンク10内に蓄えられた水を図示しない便器に向けて排出する排水装置20と、便器洗浄水タンク10内に水を供給して蓄える給水装置30と、便器洗浄水タンク10の上部開口11を覆う図示しないタンク上蓋とを有している。
【0030】
排水装置20は、便器洗浄水タンク10の側壁に回転自在に支持された操作レバー21と、一端を操作レバー21に固定され便器洗浄水タンク10内に延在し操作レバー21の回転に伴って回転する回転軸22とを有している。
【0031】
排水装置20はまた、回転軸22の他端から垂下されたチェーン23と、チェーン23の下端が係止された弁体24と、便器洗浄水タンク10の底部に配設され弁体24によって開閉される排水口25とを有している。
【0032】
排水装置20はまた、便器洗浄水タンク10の底部から上方に向けて延設され、その下端部において弁体24を回動自在に支持し、またその上端の開口から便器洗浄水タンク10内の過剰な水を排水する円筒形状のオーバーフロー管26と、排水口25及びオーバーフロー管26を便器に接続して水を便器に導く図示しない配管とを有している。
【0033】
よって、排水装置20においては、操作レバー21を回転させると、回転軸22の回転を介してチェーン23が上方に引き上げられ、これによって弁体24が開いて排水口25が開放され、便器洗浄水タンク10内の水が排水口25から排水され、配管により便器に導かれる。
【0034】
排水によって水位が低下し、弁体24が水面上に露出するまでは、弁体24はその浮力により排水口25を開放した姿勢を維持し、弁体24が水面上に露出すると、弁体24はその浮力が小さくなるため排水口25を閉じる。
【0035】
図2は、給水装置30の斜視図である。
同図に示すように、給水装置30は、便器洗浄水タンク10の底部から鉛直上方に向けて延設された給水管31と、給水管31の上端部に配設され給水管31から便器洗浄水タンク10へ向けた吐水・止水を切替える給水バルブ32と、上下動に伴って給水バルブ32による吐水・止水の切替えを行なうフロート部33とを有している。
【0036】
給水装置30はまた、給水バルブ32の上端にその一端を回動自在に支持され、回動によって給水バルブ32の開閉を切替えることで給水バルブ32からの吐水・止水を切替えるテコ式レバー34と、テコ式レバー34の他端にその上端を支持され、フロート部33に螺合した調節軸35とを有している。
【0037】
給水装置30はまた、給水管31の周面に上下動可能に固定され、フロート部33の外周を囲繞し、フロート部33の上下動をガイドするフロートガイド36と、給水バルブ32の側面に突設され給水バルブ32からの吐水をフロート部33に向けて下方に吐出する吐水管37とを有している。
【0038】
給水管31は略円筒形状をなしている。給水管31は、図示しない給水源に接続され、給水源からの水圧によって、便器洗浄水タンク10へ向けて吐水を行うようになっている。ここで、給水源とは、水道管、止水栓、これらを接続した配管、止水栓と給水管31とを接続した接続管等をいう。
【0039】
給水管31は、便器洗浄水タンク10内における下端部近傍に、給水バルブ32が開いたときに給水源から供給される余剰の水、すなわち吐水管37から吐出しきれない分の水を、フロート部33を介さず便器洗浄水タンク10内に直接吐水する排水口38を有している。
【0040】
給水バルブ32は、ダイヤフラム式の弁を内蔵したものであって、テコ式レバー34が略水平方向に延在し、背圧室に通じる背圧抜き穴を塞ぐときに止水を行ない、またかかる状態からテコ式レバー34の先端が下方に向けて回動し、背圧室に通じる背圧抜き穴を開放すると吐水を行うようになっている。
【0041】
テコ式レバー34は、調節軸35を垂下するように回動自在に支持している。
調節軸35は、周面に螺旋状の溝を有し、その延在方向を中心として回動することで、フロート部33との相対位置が同延在方向において可変するようになっている。
テコ式レバー34は、調節軸35のかかる回動を許容するように、調節軸35を回動自在に支持している。よってテコ式レバー34は調節軸35を2方向に回動自在に支持している。
【0042】
フロートガイド36は、水平面での断面が略矩形状をなしフロート部33を挿通した、上下方向に所定の幅を有するガイド部41と、ガイド部41と一体をなし給水管31の周面に嵌合した位置決め部42と、後述する複数のリブ60とを有している。
【0043】
ガイド部41の、給水管31に対向した部分は、給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。ガイド部41はその上縁にリブ43を有しており、フロート部33をガイドする際や、便器洗浄水タンク10内の水の水面に生じる波の影響等によって変形することが抑制されている。
【0044】
位置決め部42は、かかる凹んだ部分に突設された環状体であって、給水管31を挿通されている。位置決め部42は、給水管31の外周面に給水管31の延在方向に沿って直線状に配設されたリブ44に嵌合するようになっている。
【0045】
リブ44は給水管31の外周面において放射状に複数条が突設されており、そのうちの1つには、図1に示すようにノッチ45が形成されている。これにより、位置決め部42は、同延在方向において多段階に位置決めされ固定されるようになっている。
【0046】
吐水管37は、吐水を行う方向である下方に向けて口径が漸増して広がった形状をなしている。このように、先広がりの形状となっていることにより、吐水管37は、その吐出する水の流速が過剰になることを抑制している。
【0047】
図3は、フロート部33の一部及び調節軸35の斜視図である。図4は、フロート部33の一部及び調節軸35の構成を示しており、(a)はその断面図、(b)はその平面図である。図5は給水装置30の平面図である。
【0048】
同図に示すように、フロート部33は、その外壁面が、水平面での断面がフロートガイド36よりも小さな相似形をなしている。すなわち、フロート部33は、水平面での断面が、略矩形状をなしているとともに、給水管31に対向した部分は、給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。
【0049】
フロート部33は、その上部に形成され給水バルブ32からの吐水が給水管31によって供給される桶貯水部51と、その下部に形成され下方が開放された、フロート部33に浮力を与えるためのエア溜まり部52と、エア溜まり部52を複数のエア溜まり部52a、52bに区画する区画壁53とを有している。
【0050】
フロート部33はまた、区画壁53によって区画された各エア溜まり部52a、52bのうち、給水管31と反対側のエア溜まり部52aとその直上に位置する桶貯水部51とを連通させる第1の排水口54と、桶貯水部内の水をフロート部33の外壁面の外面に沿って排出する第2の排水口55とを有している。
【0051】
フロート部33はまた、エア溜まり部52a、52bのうち第1の排水口54が形成されたエア溜まり部52aとフロート部33の外部とを連通させるエア抜き孔56と、図2に示すように、桶貯水部51の上方に形成された開口57を塞ぐ蓋58と、図3(b)、図4(a)に示すように、第1の排水口54内に嵌合により固定され、調節軸35が螺合する態様で挿入された雌ねじ部材59とを有している。なお、雌ネジ部材59はフロート部33と一体に形成されていても良い。
【0052】
桶貯水部51は吐水管37の下方に位置している。すなわち、吐水管37は、開口57の上方に位置している。
蓋58は、開口57の一部のみを塞いでいる。蓋58が開口57を塞いでいる位置は、吐水管37を介して給水バルブ32から吐水される位置の周辺部である。これは、蓋58が、吐水による飛沫が外部に飛散することを防止するために設けられるためである。
【0053】
そのため、上記の周辺部とは、かかる飛散を防止する範囲を意味する。蓋58は、かかる周辺部を塞ぐため、吐水が通過する通過部58aを有している。なお、飛沫は、給水管31から吐水管37を経て吐出された水が桶貯水部51を構成しているフロート部33の壁部に衝突する際やすでに桶貯水部51に蓄えられた水と衝突する際に生じるものである。
蓋58は、かかる飛散を防止するために開口57の少なくとも一部を塞ぐように設けられれば良いのであって、開口57の全体を塞いでも良い。
【0054】
蓋58は、桶貯水部51への給水時に生じる騒音を抑制することにおいても利点がある。騒音は、上述の飛散と同じく、吐水管37からの吐水と桶貯水部51と衝突や水同士の衝突によって生じる。
【0055】
上述のように、吐水管37は、吐出する水の流速が過剰になることを防止するため、先広がりの形状となっているが、これも、かかる飛散や騒音を防止するものである。
かかる飛散を防止していることは、便器洗浄水供給装置100に何らかの不具合が生じ便器洗浄水タンク10の上部開口11を開放して作業を行う際に、作業者が不用意に濡れてしまうことを防止する利点がある。
【0056】
第1の排水口54と、エア抜き孔56とは、複数のエア溜まり部52a、52bのうちの同一のエア溜まり部52aに形成されている。これは、桶貯水部51内の水が第1の排水口54からエア溜まり部52aに流れ込み便器洗浄水タンク10に供給される際に、エア溜まり部52aに流れ込んだ水の体積分の空気をエア抜き孔56を通じてエア溜まり部52aの外部に逃がしてやることで、水が桶貯水部51からエア溜まり部52aに流れ込み易くするためである。
【0057】
ただし、かかる排水は、桶貯水部51に水を蓄えておく必要がなくなったときのみ行われるようにする必要がある。そのためには、かかるとき以外は、エア抜き孔56を塞いでおくことが望ましい。第2の排水口55は、桶貯水部51に供給された水をエア抜き孔56を塞ぐことに利用するために形成されている。
【0058】
そのため、第2の排水口55は、桶貯水部51を形成しているフロート部33の外壁面のうち、給水管31と反対側の外壁面に形成されているものであって、第2の排水口55の形状は、下方に向けて幅狭となった略V字状をなしており、第2の排水口55の下端部は、エア抜き孔56の鉛直上方に位置している。
【0059】
このような構成により、桶貯水部51に供給された水は、第2の排水口55の下端部から溢れ出て、かかる外壁面の外面に沿って排出されて流下し、エア抜き孔56を塞ぐ。これにより、桶貯水部51内の水は、第1の排水口54から排出されることが抑制されるため、桶貯水部51内には、第2の排水口55の下端部位置を水面として、安定して水が蓄えられる。
【0060】
ここで、空気は弾性体であるため、エア溜まり部52a内の空気も多少伸縮する。伸縮が生じると、桶貯水部51内の水が第1の排水口54からエア溜まり部52a内に流れ込み易くなる。このような流れ込みを抑制するためには、エア溜まり部52aの体積を可及的に小さくし、エア溜まり部52a内の空気の体積変化を抑制することが望ましい。
【0061】
そこで、エア溜まり部52aの体積が可及的に小さくなるように、エア溜まり部52は区画壁53によって区画されており、エア溜まり部52aの体積は、エア溜まり部52bの体積よりも小さくされている。
【0062】
なお、本形態では、区画壁53によって、エア溜まり部52を、2つのエア溜まり部52a、52bに区画しているが、エア溜まり部52は、必要に応じて、3つ以上に区画しても良い。区画数が増加しても、同一のエア溜まり部に第1の排水口54及びエア抜き孔56を設け、このエア溜まり部の体積は可及的に小さくする。
【0063】
エア溜まり部52は、第2の排水口55から流出した水がエア抜き孔56を閉塞することで、フロート部33に安定した浮力を与えるようになっている。
既に述べたように、操作レバー21を回転させると、便器洗浄水タンク10内の水が排水口25から排水される。そうすると、水位の低下に伴ってフロート部33が下降し、テコ式レバー34が下方に回動して給水バルブ32が開き、吐水管37から吐水が開始され、桶貯水部51へ給水が開始される。
【0064】
図6に示すように、給水が開始されると桶貯水部51に水が蓄えられ、蓄えられた水の水面が第2の排水口55の下端部を越えると、同下端部から水のオーバーフローが始まり、エア抜き孔56が閉塞される。
【0065】
給水の継続により便器洗浄水タンク10内の水位が上昇するのに伴い、エア溜まり部52の浮力によってフロート部33は上昇するが、この上昇は、エア溜まり部52の浮力が安定していることにより、スムーズに行われる。
【0066】
かかる上昇時においては、上昇に伴い、テコ式レバー34が回転する。よって、フロート部33は、上動の過程において、テコ式レバー34の回転半径に起因して、給水管31との距離が変動する。
【0067】
本形態において、テコ式レバー34がほぼ水平となり給水バルブ32を閉じる状態がフロート部33の変位の上限であるため、給水管31とフロート部33との距離は、止水時に最大となり、フロート部33が下降するにつれ小さくなる。
【0068】
ここで、かりに、フロートガイド36とフロート部33との間に隙間がない状態で、フロートガイド36がフロート部33をガイドしているとすると、かかる距離の変動を許容できず、フロート部33の上下動が妨げられる。
【0069】
そこで、本形態では、給水管31の放射方向、言い換えると給水管31に接離する方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間には、かかる距離の変動を許容するための間隙が形成されている。一方で、給水管31の周囲を回転する方向に大きな間隙を設けると、水面の波によるフロート部33の揺れによりテコ式レバー34がねじれの力を受けて、止水が不安定な状態になって吐水・止水を繰り返すいわゆるハンチングといわれる状態となり、最悪の場合には共振等により振動が大きくなって部品が破壊されることもある。
【0070】
そのため、給水管31の周囲を回転する方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙は、フロート部33が上下動するのに最低限必要な大きさに留めるとともに、給水管31の放射方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙は、かかる最低限必要な大きさよりも大きくし、テコ式レバー34の回転半径に応じた余裕を持たせてある。
【0071】
前者の間隙は、0.5mmであり、後者の間隙は、1.5mmである。図5には、フロート部33が下降し、給水管31に近接する方向に変位し、給水管31に対向する側の部分におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙が大きくなった状態を示している。
【0072】
かかる1.5mmの間隔は、フロート部33が最も下降したときと、テコ式レバー34が水平となったときとにおける、給水管31に対するフロート部33の水平方向における移動距離に一致している。0.5mmの間隔は、フロート部33がフロートガイド36に密着して上下動が妨げられることのない、上下動に最低限必要な大きさである。これらの大きさの間隔により、がたつきが抑制され、フロート部33のハンチングの発生を防止している。
【0073】
なお、前者の間隙も後者の間隙も、その大きさは、テコ式レバー34の回転半径、フロート部33の上下方向における変位距離や範囲、その他フロート部33とフロートガイド36との摩擦の大きさ等に応じて適宜決められるものである。
【0074】
かかる間隙は、フロートガイド36に備えられた突部としてのリブ60によって規定されている。リブ60は、フロートガイド36の内周面に、フロート部33側に向けて複数突設されている。リブ60は、左右方向に幅狭であって、上下方向に延在している。
【0075】
かかる間隙をリブ60によって規定したのは、フロートガイド36とフロート部33との間の摩擦を可及的に減じるためである。そのために、リブ60は、左右方向に幅狭の形状とされている。
【0076】
リブ60は、左右方向に幅狭であればフロートガイド36とフロート部33との間の摩擦を減じる作用を生ずるため、必ずしも上下方向において延在する必要はなく、上下方向においても幅狭の形状としても良い。ただし、上下方向に延在する場合には、フロート部33の強度を向上し、フロート部33の変形を抑制してその作用を良好に奏する利点がある。
【0077】
また、リブ60は、フロートガイド36とフロート部33との少なくとも一方に備えられ、これらの何れか一方が他方に対向する位置に配設されていればよいため、本形態のようにフロートガイド36でなく、フロート部33側に形成しても良いし、フロートガイド36及びフロート部33に形成しても良い。
ただし、リブ60は、第2の排水口55からオーバーフローした水がエア抜き孔56を閉塞する妨げとならない位置に配設する。
【0078】
このような構成により、フロート部33は、便器洗浄水タンク10内の水位の変動に伴って滑らかに上下動する。
給水時には、フロート部33は便器洗浄水タンク10内の水位の上昇に伴って上動し、テコ式レバー34がほぼ水平となると、給水バルブ32が閉じ始め、吐水量が低下する。
【0079】
このとき、フロート部33の浮力と、テコ式レバー34がフロート部33を押し下げる力、言い換えると、止水のためにテコ式レバー34に与えて給水バルブ32を閉じるための力とでは、後者のほうが僅かに大きく、略等しい状態となっている。
【0080】
吐水量が低下すると第2の排水口55からオーバーフローする水の量も減少し、オーバーフローした水によって閉塞されていたエア抜き孔56が開放される。エア抜き孔56が開放されると、桶貯水部51内に蓄えられていた水は、第1の排水口54を通ってエア溜まり部52aに速やかに排出される。
【0081】
第1の排水口54は、排水量が、給水バルブ32の吐水時には過剰とならずに桶貯水部51に水が十分に蓄えられ、かつ、吐水を停止すべきときには桶貯水部51に蓄えられた水が速やかに排出されるようにその口径、形状等が設定されている。
【0082】
桶貯水部51内に水が蓄えられている状態では、フロート部33は、かかる水を錘とすることで、桶貯水部51が空の場合に比べて水に沈んだ状態となっているが、桶貯水部51から水が排出されると、排出された分の浮力を得て上昇する。
この排出された分の浮力が、フロート部33の浮力に加わるため、止水のためにテコ式レバー34に与えて給水バルブ32を閉じるための力よりも大きくなる。
【0083】
そして、桶貯水部51からの排出が速やかに行われるため、フロート部33はかかる浮力を短時間に得てその浮上動作が促進されて一気に上昇し、テコ式レバー34を押し上げて給水バルブ32の止水を確実且つ強固に行なう。このようなテコ式レバー34を押し増しする動作を行うフロート部33を用いた給水装置30は、桶貯水式と呼ばれる。
【0084】
フロート部33は、桶貯水式であるため、給水バルブ32を閉じる作用が助長され、上述のように止水がより確実に行われるようになっているが、本形態では、かかる助長作用をさらに促進するため、給水時においては、給水バルブ32からの吐水の水圧を利用して、フロート部33を押し下げるようになっている。
【0085】
すなわち、吐水管37から吐水される、給水バルブ32からの水の圧力、言い換えると吐水圧により、桶貯水部51を押し下げる力を与え、これにより、フロート部33をさらに押し下げる。
【0086】
止水を行なうべきときには給水バルブ32からの吐水の圧力が減少するため、フロート部33はかかる圧力から開放され、その吐水圧力の反作用で生じる浮力がさらに大きくなって浮上動作が増加(アシスト)され、給水バルブ32の止水をより確実且つ強固に行なうようになっている。
【0087】
上述のように、吐水管37は先広がりの形状として吐出する水の流速を落としているが、その吐水圧は、かかるアシスト作用を十分に生ずる大きさとされている。
なお、このように給水バルブ32からの吐水の水圧によってフロート部33を押し下げるものを、以降「水圧アシストタイプ」と呼ぶ。
【0088】
また、ガイド部41は、給水によって便器洗浄水タンク10内の水面に生じる波が、フロート部33の上動に与える影響を抑制するようになっている。すなわち、ガイド部41は、かかる水面位置がガイド部41の上下方向における配設位置にあるときには、かかる波によってフロート部33が搖動することを防止することで、フロート部33の上動が安定して行われるようにする。
【0089】
このように、ガイド部41はフロート部33に対する防波作用を有する。この防波作用を大きくするには、ガイド部41の上下方向における幅を大きくすることが望ましい。しかし、リブ60を、本形態のように、ガイド部41の上下方向における全幅に亘って形成する場合には、リブ60とフロート部33との摩擦が大きくなり、フロート部33の上下動に影響を与えるため、ガイド部41の幅を大きくするにも限度がある。
【0090】
ただし、上述のように、リブ60を上下方向においても幅狭の形状とする場合には、ガイド部41の幅にかかわらず、リブ60による摩擦を抑制できるため、ガイド部41の幅は、リブ60をガイド部41の上下方向の全体に形成するときよりも、大きくできる。
【0091】
また、既に述べたように、フロート部33並びにガイド部41は、水平面での断面が略矩形状をなしているとともに、給水管31に対向した部分が給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。
【0092】
このように構成することで、給水管31に対するフロート部33及びガイド部41の距離を大きくすることなく、すなわち給水バルブ32を開閉するための力点であるテコ式レバー34の先端位置を給水バルブ32から遠ざけることなく、かかる断面形状を例えば円形状とする場合に比して、桶貯水部51及びエア溜まり部52の水平面での断面積を大きくし、これに伴ってこれらの体積を大きくして、桶貯水部51及びエア溜まり部52の上述した作用が大きく働くようになっている。
【0093】
例えば、桶貯水部51についていえば、これに貯えられ錘となる水の量が多く、よって、排水時に得られる浮力が大きい。またエア溜まり部52についていえば、これ自身による浮力が大きい。よって、給水バルブ32を開閉するための力点であるテコ式レバー34の先端位置を給水バルブ32から遠ざけず、給水装置30の大型化を抑制しながら、これらの作用が大きく得られる。
【0094】
以上述べた形態では、給水バルブ32からの吐水を全て一旦桶貯水部51で受けてから便器洗浄水タンク10に供給しているが、桶貯水部51は、給水バルブ32からの吐水の少なくとも一部を供給されるものであっても良い。
図8は、桶貯水部51が給水バルブ32からの吐水の一部を供給される構成とされた給水装置30の斜視図である。図9はかかる給水装置30の平面図である。
【0095】
この給水装置30は、吐水管37の代わりに、給水バルブ32からの吐水を受けるとともに、受けた吐水をオーバーフローさせながら桶貯水部51と便器洗浄水タンク10とに分岐させる注水ヘッダー61と、給水バルブ32からの吐水を注水ヘッダー61に供給する給水管62とを有している。
【0096】
図10は、注水ヘッダー61の斜視図である。図11は、注水ヘッダー61の構成を種々の態様で説明する図である。
注水ヘッダー61は、給水管62に接続される接続管63と、接続管63から供給された水が下方に落下する縦穴部64と、縦穴部64の底部に接続され縦穴部64に落下した水を水平方向に送るとともにオーバーフローさせる導水部65とを有している。
【0097】
注水ヘッダー61はまた、導水部65からオーバーフローした水を桶貯水部51に向けて落下させる給水孔66と、導水部65からオーバーフローしたものの給水孔66から落下しきれない余剰の水を溢れさせ便器洗浄水タンク10に直接落下させる開口67とを有している。
【0098】
注水ヘッダー61はまた、図に示すように、開口67をカバーするとともに開口67から溢れ出た水を便器洗浄水タンク10に向けて落下させる図示しない開口を備えたカバー部68を有している。
【0099】
なお、説明の便宜のため、カバー部68の図示は、図10及び図11においては省略している。また、図8ないし図11において、注水ヘッダー61の各部の大きさは必ずしも一致しない。
【0100】
開口67は、かかる余剰の水を落下させるものであるため、図11(d)において符号69で示すように、導水部65から給水孔66に向けて水がオーバーフローする位置よりも、その下端が高い位置を占めている。
【0101】
このような構成の給水装置30では、給水バルブ32からの吐水は、注水ヘッダー61を経た上で、桶貯水部51、フロート部33を介して間接的に、また開口67から直接的に、便器洗浄水タンク10に供給される。
【0102】
この際、注水ヘッダー61では、給水バルブ32からの吐水を受けるとともに、受けた吐水をオーバーフローさせてから桶貯水部51に供給するので、給水バルブ32からの吐水の流勢が弱められて桶貯水部51に至るため、給水源からの給水圧が変動しても、常に略一定圧(ヘッド圧)が桶貯水部51に供給される。
【0103】
給水圧は一般に地域によって変動するため、上述の水圧アシストタイプの給水装置30では、給水圧によってフロート部33の上下方向における止水時の位置が水面位置に対して変動する、いわゆる止水変動といわれる現象が生じる。この止水変動が生じると、便器洗浄水タンク10内の排水量が変化して、便器の洗浄力に影響を与えることとなるため、止水変動は少ないほうが望ましい。
【0104】
しかしながら、注水ヘッダー61を用いたこの構成の給水装置30では常に略一定圧の水が桶貯水部51に供給されるため、地域に拠らず、便器洗浄水タンク10内の水面に対するフロート部33の止水時の位置を略一定に保ち、給水バルブ32の開閉動作、言い換えると吐水・止水動作が行われる。
【0105】
よって、給水源からの給水圧が変動しても、フロート部33の上下方向における位置は水面位置に対して安定しており、便器に対して一定量の水が供給されるため、便器の洗浄性能が安定している。
【0106】
このように、かかる構成の給水装置30では、給水バルブ32からの吐水圧を止水時におけるフロート部33の浮上動作の促進に利用することがないため、上述の給水装置30とは異なっている。
【0107】
かかる構成の給水装置30は、上述の水圧アシストタイプの給水装置30に対してヘッダータイプと呼ばれ、一般的に水圧アシストタイプの給水装置がハイシルエットの便器洗浄水供給装置に用いられるのに対し、ヘッダータイプの給水装置は止水変動の要求が厳しいローシルエットの便器洗浄水供給装置に用いられる。
【0108】
これは、ハイシルエットの給水装置は、便器洗浄水タンクの高さが高いので、その分、同タンクの水平面における断面積が小さくなるため、止水変動の影響を受けにくく、止水変動を抑制する必要性が低いのに対し、ローシルエットの給水装置は、便器洗浄水タンクの高さが低いので、その分、同タンクの水平面における断面積が大きくなるため、止水変動の影響を抑制する必要があるからである。
【0109】
また、このヘッダータイプの構成の給水装置30は、桶貯水部51への吐水圧が比較的低いので、桶貯水部51での水の飛散や騒音が生じにくいため、上述の給水装置30に備えられている蓋58を備えていないが、かかる飛散や騒音をよりいっそう低減するために、蓋58を備えていても良い。
【0110】
なお、このヘッダータイプの給水装置30は、上述のアシストタイプの給水装置30よりも、フロート部33が縦長となっているが、フロート部33の長さ、幅、体積等は、必要とされる浮力、アシスト力、上下動のストローク等に応じて適時選択される。
【0111】
以上説明した給水装置30では、第2の排水口55が形成されているフロート部33の外壁面の外面は平面をなしているが、第2の排水口55からオーバーフローした水によってエア抜き孔56をより確実に閉塞するため、かかる外面は、第2の排水口55からオーバーフローした水をエア抜き孔56に導く形状とすることがより好ましい。
【0112】
図12は、フロート部33の外面形状を、第2の排水口55からオーバーフローした水をエア抜き孔56に導くように構成した例を示す斜視図である。
同図に示すフロート部33は、第2の排水口55からその外面に沿って排出された水をエア抜き孔56に導く導水部70を同外面に有している。
【0113】
図12(a)において、導水部70は、第2の排水口55の下端部から鉛直下方に向けて延びる態様でフロート部33の外面に凹設された溝71によって構成された形状となっている。
【0114】
エア抜き孔56は、溝71の延在方向における中途部において、溝71内に位置している。この導水部70では、第2の排水口55からオーバーフローした水が溝71に沿って落下し、効率よくエア抜き孔56に導かれ、エア抜き孔56をより確実に閉塞する。
【0115】
図12(b)において、導水部70は、第2の排水口55の下端部から鉛直下方に向けて延びる態様でフロート部33の外面にエア抜き孔56の径と略同じ大きさの間隔をもって突設された1対のリブ72によって構成された形状となっている。
【0116】
エア抜き孔56は、リブ72の延在方向における中途部において、1対のリブ72の間に位置している。この導水部70では、第2の排水口55からオーバーフローした水がリブ72の間を落下し、効率よくエア抜き孔56に導かれ、エア抜き孔56をより確実に閉塞する。
【0117】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0118】
例えば、図12(b)に示した導水部70を構成するリブ72を、リブ60として説明した突部として用いてもよい。第2の排水口55、エア抜き孔56はフロート部33の上下動を安定して行うための必須の要件ではない。
【0119】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明を適用した便器洗浄水供給装置の外観図であって、(a)は断面の斜視図、(b)は断面の正面図である。
【図2】図1に示した便器洗浄水供給装置に備えられた給水装置の斜視図である。
【図3】図2に示した給水装置に備えられたフロート部の斜視図であって、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
【図4】図3に示したフロート部の形状を示す図であって、(a)は側断面図、(b)は平面図である。
【図5】図2に示した給水装置の平面図である。
【図6】図3に示したフロート部の動作を説明するための図であって、給水時における側断面図である。
【図7】図3に示したフロート部の動作を説明するための図であって、給水停止時における側断面図である。
【図8】図1に示した便器洗浄水供給装置に搭載可能な別の形態の給水装置を示す斜視図である。
【図9】図8に示した給水装置の平面図である。
【図10】図8に示した給水装置に備えられた給水ヘッダーを示す斜視図であって、(a)は外観の斜視図、(b)は断面の斜視図である。
【図11】図10に示した給水ヘッダーの形状を示す図であって、(a)は平面図、(b)はその一部を背面から見た斜視図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図である。
【図12】他の形態のフロート部の一部の斜視図である。
【符号の説明】
【0121】
10 便器洗浄タンク
31 給水管
32 給水バルブ
33 フロート部
36 フロートガイド
37 吐水管
51 桶貯水部
57 桶貯水部の開口
58 蓋
60 突部
61 注水ヘッダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備えた便器洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、〔特許文献1〕に記載されているように、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備えた便器洗浄水供給装置が知られている。
【0003】
従来のフロート部は、給水管に挿通された環状部を有し、便器洗浄水タンク内の水位の変動に応じて環状部が給水管に沿って上下することで、上下動するようになっている。フロート部には、給水バルブを開閉するアームが取付けられ、フロート部の上下動に応じてアームが動くことで給水バルブの開閉が行われる。
【0004】
アームは、一端側が給水バルブに回動自在に取付けられており、他端側がフロート部に取り付けられている。よって、フロート部は、その上下動の際に、アームの回転半径に起因して、給水管との距離が変動する。この変動を許容するため、環状部は、給水管の径に対して、かかる回転半径に応じた余裕を持たせ、大きくしてある。
【0005】
【特許文献1】中国実用新案登録CN2453203Y号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかるフロート部は、給水管に対する位置決めがかかる環状部によって行なわれるため、給水管の周囲を回転するように動くことがある。この場合、水面の波によるフロート部の揺れによりアームがねじれの力を受けて、止水が不安定な状態になって吐水・止水を繰り返すいわゆるハンチングといわれる状態となり、最悪の場合には共振等により振動が大きくなって部品が破壊されることもある。
【0007】
また、環状部が給水管の径に対して大きいため、上下動の際にがたつきを生じ、上下動がスムーズに行われず、前記と同様に給水バルブを閉じて止水すべき場合であっても止水が完全に行われなくなる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制した便器洗浄水供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、給水源に接続された給水管と、前記給水管から便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替える給水バルブと、上下動に伴って前記給水バルブによる前記吐水・止水の切替えを行うフロート部とを有する便器洗浄水供給装置において、前記給水管に固定され、前記フロート部の外周を囲繞し、前記フロート部の上下動をガイドするフロートガイドを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記給水管の放射方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隙は、前記給水管を回る方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきをより良好に抑制することができ、フロート部の上下動が滑らかに行われ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記フロートガイドと前記フロート部との少なくとも一方は、何れか一方が他方に対向する位置に、左右方向に幅狭の複数の突部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また突部によってフロートガイドとフロート部との摩擦が抑制されていることでフロート部の上下動が滑らかに行われ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記フロート部は、水平面での断面が略矩形状であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、装置の大型化を抑制しつつフロート部の体積を確保することでフロート部の性能を向上させることができるとともに、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記フロート部は、前記給水管に対向する部分が前記給水管の外面に沿った形状をなしていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、装置の大型化を抑制することができるとともに、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを外周面全体で抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、前記給水バルブからの吐水を受けるとともに、同吐水をオーバーフローさせながら前記桶貯水部と便器洗浄水タンクとに分岐させる注水ヘッダーを有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、注水ヘッダーにより水圧差が消されてヘッド高さ(圧力)で統一されて、止水変動を抑制することができるとともに、注水ヘッダーから便器洗浄水タンクに分岐した水によって発生する波に対してもフロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。なお、止水変動とは、水圧差によるタンク水面の止水位置の差のことで、差が大きくなると便器の排水性能に差を生じるため、少ない方が良いとされる。
【0021】
請求項7記載の発明は、前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、前記給水バルブからの吐水の水圧によって前記フロート部を押し下げることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進できることで、押し力が増して止水が安定することにより、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0023】
請求項8記載の発明は、前記給水バルブからの吐水を行う吐水管を有し、前記吐水管は、吐水を行う方向に向けて口径が広がった形状をなしていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えること及び吐水管から吐出される水の流速が減じられ、水跳ねを抑えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進でき、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっている。
【0025】
請求項9記載の発明は、前記フロート部は、その上部に位置し上方に向けた開口を備え前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を前記開口から供給される桶貯水部と、前記開口の少なくとも一部を塞ぐ蓋とを有し、前記蓋は、前記給水バルブから吐水される位置の周辺において前記開口を塞ぐことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、また止水時に吐水の水圧から開放されることでフロート部の浮上作用を促進でき、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置となっているとともに、桶貯水部に供給された水が外部に飛散すること及び桶貯水部に水を供給することに起因する騒音を防止して、使用感に優れた便器洗浄水供給装置となっている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上下動に伴って給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替えるフロート部を備え、フロートガイドが防波作用を備えることも相俟って、給水管に対するフロート部の回転やがたつきを抑制することができ、給水バルブから便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を良好に切替えることができ、便器の洗浄に好適な便器洗浄水供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1に本発明を適用した便器洗浄水供給装置の概略を示す。
【0029】
図1に示すように、便器洗浄水供給装置100は、便器洗浄水タンク10と、便器洗浄水タンク10内に蓄えられた水を図示しない便器に向けて排出する排水装置20と、便器洗浄水タンク10内に水を供給して蓄える給水装置30と、便器洗浄水タンク10の上部開口11を覆う図示しないタンク上蓋とを有している。
【0030】
排水装置20は、便器洗浄水タンク10の側壁に回転自在に支持された操作レバー21と、一端を操作レバー21に固定され便器洗浄水タンク10内に延在し操作レバー21の回転に伴って回転する回転軸22とを有している。
【0031】
排水装置20はまた、回転軸22の他端から垂下されたチェーン23と、チェーン23の下端が係止された弁体24と、便器洗浄水タンク10の底部に配設され弁体24によって開閉される排水口25とを有している。
【0032】
排水装置20はまた、便器洗浄水タンク10の底部から上方に向けて延設され、その下端部において弁体24を回動自在に支持し、またその上端の開口から便器洗浄水タンク10内の過剰な水を排水する円筒形状のオーバーフロー管26と、排水口25及びオーバーフロー管26を便器に接続して水を便器に導く図示しない配管とを有している。
【0033】
よって、排水装置20においては、操作レバー21を回転させると、回転軸22の回転を介してチェーン23が上方に引き上げられ、これによって弁体24が開いて排水口25が開放され、便器洗浄水タンク10内の水が排水口25から排水され、配管により便器に導かれる。
【0034】
排水によって水位が低下し、弁体24が水面上に露出するまでは、弁体24はその浮力により排水口25を開放した姿勢を維持し、弁体24が水面上に露出すると、弁体24はその浮力が小さくなるため排水口25を閉じる。
【0035】
図2は、給水装置30の斜視図である。
同図に示すように、給水装置30は、便器洗浄水タンク10の底部から鉛直上方に向けて延設された給水管31と、給水管31の上端部に配設され給水管31から便器洗浄水タンク10へ向けた吐水・止水を切替える給水バルブ32と、上下動に伴って給水バルブ32による吐水・止水の切替えを行なうフロート部33とを有している。
【0036】
給水装置30はまた、給水バルブ32の上端にその一端を回動自在に支持され、回動によって給水バルブ32の開閉を切替えることで給水バルブ32からの吐水・止水を切替えるテコ式レバー34と、テコ式レバー34の他端にその上端を支持され、フロート部33に螺合した調節軸35とを有している。
【0037】
給水装置30はまた、給水管31の周面に上下動可能に固定され、フロート部33の外周を囲繞し、フロート部33の上下動をガイドするフロートガイド36と、給水バルブ32の側面に突設され給水バルブ32からの吐水をフロート部33に向けて下方に吐出する吐水管37とを有している。
【0038】
給水管31は略円筒形状をなしている。給水管31は、図示しない給水源に接続され、給水源からの水圧によって、便器洗浄水タンク10へ向けて吐水を行うようになっている。ここで、給水源とは、水道管、止水栓、これらを接続した配管、止水栓と給水管31とを接続した接続管等をいう。
【0039】
給水管31は、便器洗浄水タンク10内における下端部近傍に、給水バルブ32が開いたときに給水源から供給される余剰の水、すなわち吐水管37から吐出しきれない分の水を、フロート部33を介さず便器洗浄水タンク10内に直接吐水する排水口38を有している。
【0040】
給水バルブ32は、ダイヤフラム式の弁を内蔵したものであって、テコ式レバー34が略水平方向に延在し、背圧室に通じる背圧抜き穴を塞ぐときに止水を行ない、またかかる状態からテコ式レバー34の先端が下方に向けて回動し、背圧室に通じる背圧抜き穴を開放すると吐水を行うようになっている。
【0041】
テコ式レバー34は、調節軸35を垂下するように回動自在に支持している。
調節軸35は、周面に螺旋状の溝を有し、その延在方向を中心として回動することで、フロート部33との相対位置が同延在方向において可変するようになっている。
テコ式レバー34は、調節軸35のかかる回動を許容するように、調節軸35を回動自在に支持している。よってテコ式レバー34は調節軸35を2方向に回動自在に支持している。
【0042】
フロートガイド36は、水平面での断面が略矩形状をなしフロート部33を挿通した、上下方向に所定の幅を有するガイド部41と、ガイド部41と一体をなし給水管31の周面に嵌合した位置決め部42と、後述する複数のリブ60とを有している。
【0043】
ガイド部41の、給水管31に対向した部分は、給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。ガイド部41はその上縁にリブ43を有しており、フロート部33をガイドする際や、便器洗浄水タンク10内の水の水面に生じる波の影響等によって変形することが抑制されている。
【0044】
位置決め部42は、かかる凹んだ部分に突設された環状体であって、給水管31を挿通されている。位置決め部42は、給水管31の外周面に給水管31の延在方向に沿って直線状に配設されたリブ44に嵌合するようになっている。
【0045】
リブ44は給水管31の外周面において放射状に複数条が突設されており、そのうちの1つには、図1に示すようにノッチ45が形成されている。これにより、位置決め部42は、同延在方向において多段階に位置決めされ固定されるようになっている。
【0046】
吐水管37は、吐水を行う方向である下方に向けて口径が漸増して広がった形状をなしている。このように、先広がりの形状となっていることにより、吐水管37は、その吐出する水の流速が過剰になることを抑制している。
【0047】
図3は、フロート部33の一部及び調節軸35の斜視図である。図4は、フロート部33の一部及び調節軸35の構成を示しており、(a)はその断面図、(b)はその平面図である。図5は給水装置30の平面図である。
【0048】
同図に示すように、フロート部33は、その外壁面が、水平面での断面がフロートガイド36よりも小さな相似形をなしている。すなわち、フロート部33は、水平面での断面が、略矩形状をなしているとともに、給水管31に対向した部分は、給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。
【0049】
フロート部33は、その上部に形成され給水バルブ32からの吐水が給水管31によって供給される桶貯水部51と、その下部に形成され下方が開放された、フロート部33に浮力を与えるためのエア溜まり部52と、エア溜まり部52を複数のエア溜まり部52a、52bに区画する区画壁53とを有している。
【0050】
フロート部33はまた、区画壁53によって区画された各エア溜まり部52a、52bのうち、給水管31と反対側のエア溜まり部52aとその直上に位置する桶貯水部51とを連通させる第1の排水口54と、桶貯水部内の水をフロート部33の外壁面の外面に沿って排出する第2の排水口55とを有している。
【0051】
フロート部33はまた、エア溜まり部52a、52bのうち第1の排水口54が形成されたエア溜まり部52aとフロート部33の外部とを連通させるエア抜き孔56と、図2に示すように、桶貯水部51の上方に形成された開口57を塞ぐ蓋58と、図3(b)、図4(a)に示すように、第1の排水口54内に嵌合により固定され、調節軸35が螺合する態様で挿入された雌ねじ部材59とを有している。なお、雌ネジ部材59はフロート部33と一体に形成されていても良い。
【0052】
桶貯水部51は吐水管37の下方に位置している。すなわち、吐水管37は、開口57の上方に位置している。
蓋58は、開口57の一部のみを塞いでいる。蓋58が開口57を塞いでいる位置は、吐水管37を介して給水バルブ32から吐水される位置の周辺部である。これは、蓋58が、吐水による飛沫が外部に飛散することを防止するために設けられるためである。
【0053】
そのため、上記の周辺部とは、かかる飛散を防止する範囲を意味する。蓋58は、かかる周辺部を塞ぐため、吐水が通過する通過部58aを有している。なお、飛沫は、給水管31から吐水管37を経て吐出された水が桶貯水部51を構成しているフロート部33の壁部に衝突する際やすでに桶貯水部51に蓄えられた水と衝突する際に生じるものである。
蓋58は、かかる飛散を防止するために開口57の少なくとも一部を塞ぐように設けられれば良いのであって、開口57の全体を塞いでも良い。
【0054】
蓋58は、桶貯水部51への給水時に生じる騒音を抑制することにおいても利点がある。騒音は、上述の飛散と同じく、吐水管37からの吐水と桶貯水部51と衝突や水同士の衝突によって生じる。
【0055】
上述のように、吐水管37は、吐出する水の流速が過剰になることを防止するため、先広がりの形状となっているが、これも、かかる飛散や騒音を防止するものである。
かかる飛散を防止していることは、便器洗浄水供給装置100に何らかの不具合が生じ便器洗浄水タンク10の上部開口11を開放して作業を行う際に、作業者が不用意に濡れてしまうことを防止する利点がある。
【0056】
第1の排水口54と、エア抜き孔56とは、複数のエア溜まり部52a、52bのうちの同一のエア溜まり部52aに形成されている。これは、桶貯水部51内の水が第1の排水口54からエア溜まり部52aに流れ込み便器洗浄水タンク10に供給される際に、エア溜まり部52aに流れ込んだ水の体積分の空気をエア抜き孔56を通じてエア溜まり部52aの外部に逃がしてやることで、水が桶貯水部51からエア溜まり部52aに流れ込み易くするためである。
【0057】
ただし、かかる排水は、桶貯水部51に水を蓄えておく必要がなくなったときのみ行われるようにする必要がある。そのためには、かかるとき以外は、エア抜き孔56を塞いでおくことが望ましい。第2の排水口55は、桶貯水部51に供給された水をエア抜き孔56を塞ぐことに利用するために形成されている。
【0058】
そのため、第2の排水口55は、桶貯水部51を形成しているフロート部33の外壁面のうち、給水管31と反対側の外壁面に形成されているものであって、第2の排水口55の形状は、下方に向けて幅狭となった略V字状をなしており、第2の排水口55の下端部は、エア抜き孔56の鉛直上方に位置している。
【0059】
このような構成により、桶貯水部51に供給された水は、第2の排水口55の下端部から溢れ出て、かかる外壁面の外面に沿って排出されて流下し、エア抜き孔56を塞ぐ。これにより、桶貯水部51内の水は、第1の排水口54から排出されることが抑制されるため、桶貯水部51内には、第2の排水口55の下端部位置を水面として、安定して水が蓄えられる。
【0060】
ここで、空気は弾性体であるため、エア溜まり部52a内の空気も多少伸縮する。伸縮が生じると、桶貯水部51内の水が第1の排水口54からエア溜まり部52a内に流れ込み易くなる。このような流れ込みを抑制するためには、エア溜まり部52aの体積を可及的に小さくし、エア溜まり部52a内の空気の体積変化を抑制することが望ましい。
【0061】
そこで、エア溜まり部52aの体積が可及的に小さくなるように、エア溜まり部52は区画壁53によって区画されており、エア溜まり部52aの体積は、エア溜まり部52bの体積よりも小さくされている。
【0062】
なお、本形態では、区画壁53によって、エア溜まり部52を、2つのエア溜まり部52a、52bに区画しているが、エア溜まり部52は、必要に応じて、3つ以上に区画しても良い。区画数が増加しても、同一のエア溜まり部に第1の排水口54及びエア抜き孔56を設け、このエア溜まり部の体積は可及的に小さくする。
【0063】
エア溜まり部52は、第2の排水口55から流出した水がエア抜き孔56を閉塞することで、フロート部33に安定した浮力を与えるようになっている。
既に述べたように、操作レバー21を回転させると、便器洗浄水タンク10内の水が排水口25から排水される。そうすると、水位の低下に伴ってフロート部33が下降し、テコ式レバー34が下方に回動して給水バルブ32が開き、吐水管37から吐水が開始され、桶貯水部51へ給水が開始される。
【0064】
図6に示すように、給水が開始されると桶貯水部51に水が蓄えられ、蓄えられた水の水面が第2の排水口55の下端部を越えると、同下端部から水のオーバーフローが始まり、エア抜き孔56が閉塞される。
【0065】
給水の継続により便器洗浄水タンク10内の水位が上昇するのに伴い、エア溜まり部52の浮力によってフロート部33は上昇するが、この上昇は、エア溜まり部52の浮力が安定していることにより、スムーズに行われる。
【0066】
かかる上昇時においては、上昇に伴い、テコ式レバー34が回転する。よって、フロート部33は、上動の過程において、テコ式レバー34の回転半径に起因して、給水管31との距離が変動する。
【0067】
本形態において、テコ式レバー34がほぼ水平となり給水バルブ32を閉じる状態がフロート部33の変位の上限であるため、給水管31とフロート部33との距離は、止水時に最大となり、フロート部33が下降するにつれ小さくなる。
【0068】
ここで、かりに、フロートガイド36とフロート部33との間に隙間がない状態で、フロートガイド36がフロート部33をガイドしているとすると、かかる距離の変動を許容できず、フロート部33の上下動が妨げられる。
【0069】
そこで、本形態では、給水管31の放射方向、言い換えると給水管31に接離する方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間には、かかる距離の変動を許容するための間隙が形成されている。一方で、給水管31の周囲を回転する方向に大きな間隙を設けると、水面の波によるフロート部33の揺れによりテコ式レバー34がねじれの力を受けて、止水が不安定な状態になって吐水・止水を繰り返すいわゆるハンチングといわれる状態となり、最悪の場合には共振等により振動が大きくなって部品が破壊されることもある。
【0070】
そのため、給水管31の周囲を回転する方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙は、フロート部33が上下動するのに最低限必要な大きさに留めるとともに、給水管31の放射方向におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙は、かかる最低限必要な大きさよりも大きくし、テコ式レバー34の回転半径に応じた余裕を持たせてある。
【0071】
前者の間隙は、0.5mmであり、後者の間隙は、1.5mmである。図5には、フロート部33が下降し、給水管31に近接する方向に変位し、給水管31に対向する側の部分におけるフロート部33とフロートガイド36との間隙が大きくなった状態を示している。
【0072】
かかる1.5mmの間隔は、フロート部33が最も下降したときと、テコ式レバー34が水平となったときとにおける、給水管31に対するフロート部33の水平方向における移動距離に一致している。0.5mmの間隔は、フロート部33がフロートガイド36に密着して上下動が妨げられることのない、上下動に最低限必要な大きさである。これらの大きさの間隔により、がたつきが抑制され、フロート部33のハンチングの発生を防止している。
【0073】
なお、前者の間隙も後者の間隙も、その大きさは、テコ式レバー34の回転半径、フロート部33の上下方向における変位距離や範囲、その他フロート部33とフロートガイド36との摩擦の大きさ等に応じて適宜決められるものである。
【0074】
かかる間隙は、フロートガイド36に備えられた突部としてのリブ60によって規定されている。リブ60は、フロートガイド36の内周面に、フロート部33側に向けて複数突設されている。リブ60は、左右方向に幅狭であって、上下方向に延在している。
【0075】
かかる間隙をリブ60によって規定したのは、フロートガイド36とフロート部33との間の摩擦を可及的に減じるためである。そのために、リブ60は、左右方向に幅狭の形状とされている。
【0076】
リブ60は、左右方向に幅狭であればフロートガイド36とフロート部33との間の摩擦を減じる作用を生ずるため、必ずしも上下方向において延在する必要はなく、上下方向においても幅狭の形状としても良い。ただし、上下方向に延在する場合には、フロート部33の強度を向上し、フロート部33の変形を抑制してその作用を良好に奏する利点がある。
【0077】
また、リブ60は、フロートガイド36とフロート部33との少なくとも一方に備えられ、これらの何れか一方が他方に対向する位置に配設されていればよいため、本形態のようにフロートガイド36でなく、フロート部33側に形成しても良いし、フロートガイド36及びフロート部33に形成しても良い。
ただし、リブ60は、第2の排水口55からオーバーフローした水がエア抜き孔56を閉塞する妨げとならない位置に配設する。
【0078】
このような構成により、フロート部33は、便器洗浄水タンク10内の水位の変動に伴って滑らかに上下動する。
給水時には、フロート部33は便器洗浄水タンク10内の水位の上昇に伴って上動し、テコ式レバー34がほぼ水平となると、給水バルブ32が閉じ始め、吐水量が低下する。
【0079】
このとき、フロート部33の浮力と、テコ式レバー34がフロート部33を押し下げる力、言い換えると、止水のためにテコ式レバー34に与えて給水バルブ32を閉じるための力とでは、後者のほうが僅かに大きく、略等しい状態となっている。
【0080】
吐水量が低下すると第2の排水口55からオーバーフローする水の量も減少し、オーバーフローした水によって閉塞されていたエア抜き孔56が開放される。エア抜き孔56が開放されると、桶貯水部51内に蓄えられていた水は、第1の排水口54を通ってエア溜まり部52aに速やかに排出される。
【0081】
第1の排水口54は、排水量が、給水バルブ32の吐水時には過剰とならずに桶貯水部51に水が十分に蓄えられ、かつ、吐水を停止すべきときには桶貯水部51に蓄えられた水が速やかに排出されるようにその口径、形状等が設定されている。
【0082】
桶貯水部51内に水が蓄えられている状態では、フロート部33は、かかる水を錘とすることで、桶貯水部51が空の場合に比べて水に沈んだ状態となっているが、桶貯水部51から水が排出されると、排出された分の浮力を得て上昇する。
この排出された分の浮力が、フロート部33の浮力に加わるため、止水のためにテコ式レバー34に与えて給水バルブ32を閉じるための力よりも大きくなる。
【0083】
そして、桶貯水部51からの排出が速やかに行われるため、フロート部33はかかる浮力を短時間に得てその浮上動作が促進されて一気に上昇し、テコ式レバー34を押し上げて給水バルブ32の止水を確実且つ強固に行なう。このようなテコ式レバー34を押し増しする動作を行うフロート部33を用いた給水装置30は、桶貯水式と呼ばれる。
【0084】
フロート部33は、桶貯水式であるため、給水バルブ32を閉じる作用が助長され、上述のように止水がより確実に行われるようになっているが、本形態では、かかる助長作用をさらに促進するため、給水時においては、給水バルブ32からの吐水の水圧を利用して、フロート部33を押し下げるようになっている。
【0085】
すなわち、吐水管37から吐水される、給水バルブ32からの水の圧力、言い換えると吐水圧により、桶貯水部51を押し下げる力を与え、これにより、フロート部33をさらに押し下げる。
【0086】
止水を行なうべきときには給水バルブ32からの吐水の圧力が減少するため、フロート部33はかかる圧力から開放され、その吐水圧力の反作用で生じる浮力がさらに大きくなって浮上動作が増加(アシスト)され、給水バルブ32の止水をより確実且つ強固に行なうようになっている。
【0087】
上述のように、吐水管37は先広がりの形状として吐出する水の流速を落としているが、その吐水圧は、かかるアシスト作用を十分に生ずる大きさとされている。
なお、このように給水バルブ32からの吐水の水圧によってフロート部33を押し下げるものを、以降「水圧アシストタイプ」と呼ぶ。
【0088】
また、ガイド部41は、給水によって便器洗浄水タンク10内の水面に生じる波が、フロート部33の上動に与える影響を抑制するようになっている。すなわち、ガイド部41は、かかる水面位置がガイド部41の上下方向における配設位置にあるときには、かかる波によってフロート部33が搖動することを防止することで、フロート部33の上動が安定して行われるようにする。
【0089】
このように、ガイド部41はフロート部33に対する防波作用を有する。この防波作用を大きくするには、ガイド部41の上下方向における幅を大きくすることが望ましい。しかし、リブ60を、本形態のように、ガイド部41の上下方向における全幅に亘って形成する場合には、リブ60とフロート部33との摩擦が大きくなり、フロート部33の上下動に影響を与えるため、ガイド部41の幅を大きくするにも限度がある。
【0090】
ただし、上述のように、リブ60を上下方向においても幅狭の形状とする場合には、ガイド部41の幅にかかわらず、リブ60による摩擦を抑制できるため、ガイド部41の幅は、リブ60をガイド部41の上下方向の全体に形成するときよりも、大きくできる。
【0091】
また、既に述べたように、フロート部33並びにガイド部41は、水平面での断面が略矩形状をなしているとともに、給水管31に対向した部分が給水管31の外面の形状に沿って円弧状に凹んだ形状をなしている。
【0092】
このように構成することで、給水管31に対するフロート部33及びガイド部41の距離を大きくすることなく、すなわち給水バルブ32を開閉するための力点であるテコ式レバー34の先端位置を給水バルブ32から遠ざけることなく、かかる断面形状を例えば円形状とする場合に比して、桶貯水部51及びエア溜まり部52の水平面での断面積を大きくし、これに伴ってこれらの体積を大きくして、桶貯水部51及びエア溜まり部52の上述した作用が大きく働くようになっている。
【0093】
例えば、桶貯水部51についていえば、これに貯えられ錘となる水の量が多く、よって、排水時に得られる浮力が大きい。またエア溜まり部52についていえば、これ自身による浮力が大きい。よって、給水バルブ32を開閉するための力点であるテコ式レバー34の先端位置を給水バルブ32から遠ざけず、給水装置30の大型化を抑制しながら、これらの作用が大きく得られる。
【0094】
以上述べた形態では、給水バルブ32からの吐水を全て一旦桶貯水部51で受けてから便器洗浄水タンク10に供給しているが、桶貯水部51は、給水バルブ32からの吐水の少なくとも一部を供給されるものであっても良い。
図8は、桶貯水部51が給水バルブ32からの吐水の一部を供給される構成とされた給水装置30の斜視図である。図9はかかる給水装置30の平面図である。
【0095】
この給水装置30は、吐水管37の代わりに、給水バルブ32からの吐水を受けるとともに、受けた吐水をオーバーフローさせながら桶貯水部51と便器洗浄水タンク10とに分岐させる注水ヘッダー61と、給水バルブ32からの吐水を注水ヘッダー61に供給する給水管62とを有している。
【0096】
図10は、注水ヘッダー61の斜視図である。図11は、注水ヘッダー61の構成を種々の態様で説明する図である。
注水ヘッダー61は、給水管62に接続される接続管63と、接続管63から供給された水が下方に落下する縦穴部64と、縦穴部64の底部に接続され縦穴部64に落下した水を水平方向に送るとともにオーバーフローさせる導水部65とを有している。
【0097】
注水ヘッダー61はまた、導水部65からオーバーフローした水を桶貯水部51に向けて落下させる給水孔66と、導水部65からオーバーフローしたものの給水孔66から落下しきれない余剰の水を溢れさせ便器洗浄水タンク10に直接落下させる開口67とを有している。
【0098】
注水ヘッダー61はまた、図に示すように、開口67をカバーするとともに開口67から溢れ出た水を便器洗浄水タンク10に向けて落下させる図示しない開口を備えたカバー部68を有している。
【0099】
なお、説明の便宜のため、カバー部68の図示は、図10及び図11においては省略している。また、図8ないし図11において、注水ヘッダー61の各部の大きさは必ずしも一致しない。
【0100】
開口67は、かかる余剰の水を落下させるものであるため、図11(d)において符号69で示すように、導水部65から給水孔66に向けて水がオーバーフローする位置よりも、その下端が高い位置を占めている。
【0101】
このような構成の給水装置30では、給水バルブ32からの吐水は、注水ヘッダー61を経た上で、桶貯水部51、フロート部33を介して間接的に、また開口67から直接的に、便器洗浄水タンク10に供給される。
【0102】
この際、注水ヘッダー61では、給水バルブ32からの吐水を受けるとともに、受けた吐水をオーバーフローさせてから桶貯水部51に供給するので、給水バルブ32からの吐水の流勢が弱められて桶貯水部51に至るため、給水源からの給水圧が変動しても、常に略一定圧(ヘッド圧)が桶貯水部51に供給される。
【0103】
給水圧は一般に地域によって変動するため、上述の水圧アシストタイプの給水装置30では、給水圧によってフロート部33の上下方向における止水時の位置が水面位置に対して変動する、いわゆる止水変動といわれる現象が生じる。この止水変動が生じると、便器洗浄水タンク10内の排水量が変化して、便器の洗浄力に影響を与えることとなるため、止水変動は少ないほうが望ましい。
【0104】
しかしながら、注水ヘッダー61を用いたこの構成の給水装置30では常に略一定圧の水が桶貯水部51に供給されるため、地域に拠らず、便器洗浄水タンク10内の水面に対するフロート部33の止水時の位置を略一定に保ち、給水バルブ32の開閉動作、言い換えると吐水・止水動作が行われる。
【0105】
よって、給水源からの給水圧が変動しても、フロート部33の上下方向における位置は水面位置に対して安定しており、便器に対して一定量の水が供給されるため、便器の洗浄性能が安定している。
【0106】
このように、かかる構成の給水装置30では、給水バルブ32からの吐水圧を止水時におけるフロート部33の浮上動作の促進に利用することがないため、上述の給水装置30とは異なっている。
【0107】
かかる構成の給水装置30は、上述の水圧アシストタイプの給水装置30に対してヘッダータイプと呼ばれ、一般的に水圧アシストタイプの給水装置がハイシルエットの便器洗浄水供給装置に用いられるのに対し、ヘッダータイプの給水装置は止水変動の要求が厳しいローシルエットの便器洗浄水供給装置に用いられる。
【0108】
これは、ハイシルエットの給水装置は、便器洗浄水タンクの高さが高いので、その分、同タンクの水平面における断面積が小さくなるため、止水変動の影響を受けにくく、止水変動を抑制する必要性が低いのに対し、ローシルエットの給水装置は、便器洗浄水タンクの高さが低いので、その分、同タンクの水平面における断面積が大きくなるため、止水変動の影響を抑制する必要があるからである。
【0109】
また、このヘッダータイプの構成の給水装置30は、桶貯水部51への吐水圧が比較的低いので、桶貯水部51での水の飛散や騒音が生じにくいため、上述の給水装置30に備えられている蓋58を備えていないが、かかる飛散や騒音をよりいっそう低減するために、蓋58を備えていても良い。
【0110】
なお、このヘッダータイプの給水装置30は、上述のアシストタイプの給水装置30よりも、フロート部33が縦長となっているが、フロート部33の長さ、幅、体積等は、必要とされる浮力、アシスト力、上下動のストローク等に応じて適時選択される。
【0111】
以上説明した給水装置30では、第2の排水口55が形成されているフロート部33の外壁面の外面は平面をなしているが、第2の排水口55からオーバーフローした水によってエア抜き孔56をより確実に閉塞するため、かかる外面は、第2の排水口55からオーバーフローした水をエア抜き孔56に導く形状とすることがより好ましい。
【0112】
図12は、フロート部33の外面形状を、第2の排水口55からオーバーフローした水をエア抜き孔56に導くように構成した例を示す斜視図である。
同図に示すフロート部33は、第2の排水口55からその外面に沿って排出された水をエア抜き孔56に導く導水部70を同外面に有している。
【0113】
図12(a)において、導水部70は、第2の排水口55の下端部から鉛直下方に向けて延びる態様でフロート部33の外面に凹設された溝71によって構成された形状となっている。
【0114】
エア抜き孔56は、溝71の延在方向における中途部において、溝71内に位置している。この導水部70では、第2の排水口55からオーバーフローした水が溝71に沿って落下し、効率よくエア抜き孔56に導かれ、エア抜き孔56をより確実に閉塞する。
【0115】
図12(b)において、導水部70は、第2の排水口55の下端部から鉛直下方に向けて延びる態様でフロート部33の外面にエア抜き孔56の径と略同じ大きさの間隔をもって突設された1対のリブ72によって構成された形状となっている。
【0116】
エア抜き孔56は、リブ72の延在方向における中途部において、1対のリブ72の間に位置している。この導水部70では、第2の排水口55からオーバーフローした水がリブ72の間を落下し、効率よくエア抜き孔56に導かれ、エア抜き孔56をより確実に閉塞する。
【0117】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0118】
例えば、図12(b)に示した導水部70を構成するリブ72を、リブ60として説明した突部として用いてもよい。第2の排水口55、エア抜き孔56はフロート部33の上下動を安定して行うための必須の要件ではない。
【0119】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明を適用した便器洗浄水供給装置の外観図であって、(a)は断面の斜視図、(b)は断面の正面図である。
【図2】図1に示した便器洗浄水供給装置に備えられた給水装置の斜視図である。
【図3】図2に示した給水装置に備えられたフロート部の斜視図であって、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
【図4】図3に示したフロート部の形状を示す図であって、(a)は側断面図、(b)は平面図である。
【図5】図2に示した給水装置の平面図である。
【図6】図3に示したフロート部の動作を説明するための図であって、給水時における側断面図である。
【図7】図3に示したフロート部の動作を説明するための図であって、給水停止時における側断面図である。
【図8】図1に示した便器洗浄水供給装置に搭載可能な別の形態の給水装置を示す斜視図である。
【図9】図8に示した給水装置の平面図である。
【図10】図8に示した給水装置に備えられた給水ヘッダーを示す斜視図であって、(a)は外観の斜視図、(b)は断面の斜視図である。
【図11】図10に示した給水ヘッダーの形状を示す図であって、(a)は平面図、(b)はその一部を背面から見た斜視図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図である。
【図12】他の形態のフロート部の一部の斜視図である。
【符号の説明】
【0121】
10 便器洗浄タンク
31 給水管
32 給水バルブ
33 フロート部
36 フロートガイド
37 吐水管
51 桶貯水部
57 桶貯水部の開口
58 蓋
60 突部
61 注水ヘッダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源に接続された給水管と、
前記給水管から便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替える給水バルブと、
上下動に伴って前記給水バルブによる前記吐水・止水の切替えを行うフロート部とを有する便器洗浄水供給装置において、
前記給水管に固定され、前記フロート部の外周を囲繞し、前記フロート部の上下動をガイドするフロートガイドを有することを特徴とする便器洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記給水管の放射方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隙は、前記給水管を回る方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項3】
前記フロートガイドと前記フロート部との少なくとも一方は、何れか一方が他方に対向する位置に、左右方向に幅狭の複数の突部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記フロート部は、水平面での断面が略矩形状であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記フロート部は、前記給水管に対向する部分が前記給水管の外面に沿った形状をなしていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項6】
前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、
前記給水バルブからの吐水を受けるとともに、同吐水をオーバーフローさせながら前記桶貯水部と便器洗浄水タンクとに分岐させる注水ヘッダーを有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項7】
前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、
前記給水バルブからの吐水の水圧によって前記フロート部を押し下げることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項8】
前記給水バルブからの吐水を行う吐水管を有し、前記吐水管は、吐水を行う方向に向けて口径が広がった形状をなしていることを特徴とする請求項7記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項9】
前記フロート部は、その上部に位置し上方に向けた開口を備え前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を前記開口から供給される桶貯水部と、前記開口の少なくとも一部を塞ぐ蓋とを有し、
前記蓋は、前記給水バルブから吐水される位置の周辺において前記開口を塞ぐことを特徴とする請求項7又は8記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項1】
給水源に接続された給水管と、
前記給水管から便器洗浄水タンクへ向けた吐水・止水を切替える給水バルブと、
上下動に伴って前記給水バルブによる前記吐水・止水の切替えを行うフロート部とを有する便器洗浄水供給装置において、
前記給水管に固定され、前記フロート部の外周を囲繞し、前記フロート部の上下動をガイドするフロートガイドを有することを特徴とする便器洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記給水管の放射方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隙は、前記給水管を回る方向における前記フロート部と前記フロートガイドとの間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項3】
前記フロートガイドと前記フロート部との少なくとも一方は、何れか一方が他方に対向する位置に、左右方向に幅狭の複数の突部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記フロート部は、水平面での断面が略矩形状であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記フロート部は、前記給水管に対向する部分が前記給水管の外面に沿った形状をなしていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項6】
前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、
前記給水バルブからの吐水を受けるとともに、同吐水をオーバーフローさせながら前記桶貯水部と便器洗浄水タンクとに分岐させる注水ヘッダーを有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項7】
前記フロート部は、前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を供給される桶貯水部を上部に有し、
前記給水バルブからの吐水の水圧によって前記フロート部を押し下げることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つに記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項8】
前記給水バルブからの吐水を行う吐水管を有し、前記吐水管は、吐水を行う方向に向けて口径が広がった形状をなしていることを特徴とする請求項7記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項9】
前記フロート部は、その上部に位置し上方に向けた開口を備え前記給水バルブからの吐水の少なくとも一部を前記開口から供給される桶貯水部と、前記開口の少なくとも一部を塞ぐ蓋とを有し、
前記蓋は、前記給水バルブから吐水される位置の周辺において前記開口を塞ぐことを特徴とする請求項7又は8記載の便器洗浄水供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−57160(P2008−57160A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233571(P2006−233571)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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