説明

便器洗浄装置

【課題】まとまった設置スペースを必要とせず、隔膜を有しない蓄圧装置を備えた便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】トイレルームへの入室や、便座への着座が検知されると、弁装置23が開弁し、止水栓10、給水ホース11及び分岐管30を介して水道水が静水圧にて貯水タンク31内に貯水される。その後、弁装置23,24が開弁し、貯水タンク31内の蓄圧水と給水ホース11からの水とがジェットノズル5を介してトラップ部に噴出する。これにより、トラップ部にサイホンが迅速かつ強力に発生する。貯水タンク31はエアータンク43と連通しており、水が流入すると貯水タンク31からエアータンク43内へのエアーが押し込まれ、エアー圧が上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置に係り、特に該洋風便器がサイホンジェット式洋風便器である場合に採用される便器洗浄装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ロータンクやハイタンクなどのタンクを設置せず、水道水の水圧によって洗浄水を洋風便器に供給する便器洗浄装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられてきた洋風便器は、便器本体の後部上面にロータンクを設置し、該ロータンク内の水をリム等へ供給するロータンク式のものが多い。
【0003】
このロータンク式洋風便器は、ロータンクの分だけ後方に出張るところから、近年、ロータンクを省略し、水道水圧によって洗浄水を給水することにより洋風便器の後方出張りを著しく小さくした洋風便器が急速に普及しつつある。この水道水圧による便器洗浄装置にあっては、便鉢内から汚物やペーパーを強力に排出するために、便器のトラップ部にジェット孔から水を噴出させてサイホン排出水流を形成するサイホンジェット式洗浄方式が採用されている。
【0004】
ところで、水道水圧によって便器に給水する場合、水道水圧が低いと十分な水勢によって洗浄水を便器に供給することができない。この対策として、水道配管の途中に蓄圧器を設けることが特開平7−300891号に記載されている。
【0005】
この蓄圧器は、所定の耐圧性を有する密閉容器の内腔を可撓性を有する隔膜(ブラダ)で圧気室と蓄水室に画成した周知の構造を有するものである。
【0006】
また、特開平6−158699号には、ロータンク内に、エアーコンプレッサ等の加圧装置を備えた圧力タンクが設けられ、該タンク内に水が貯まりはじめると圧力タンク内の空気が圧縮され、さらにエアーコンプレッサ等の加圧装置によってタンク内が加圧され、タンク内に蓄圧される旨が記載されている。便器洗浄時には、圧力タンク内の弁が一定時間開放し、該圧力タンク内の水が便器本体に流出して便器洗浄が行われる。便器洗浄後、該弁が閉弁し、圧力タンク内に貯水される。貯水に伴い、圧力タンク内の空気が圧縮される。貯水後、加圧装置によって圧力タンク内に空気が供給され、圧力タンク内がさらに加圧される。
【特許文献1】特開平7−300891号公報
【特許文献2】特開平6−158699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1.上記特開平7−300891号の洋風便器設備にあっては、蓄圧器内を圧気室と蓄水室に画成するために隔膜(ブラダ)を要するため、コスト高となる。
【0008】
2.上記特開平6−158699号の水洗便器にあっては、ロータンクを配置するための大きなスペースが必要となる。また、圧力タンク内に、貯水スペースの他に加圧空気用のスペースを必要とするため、圧力タンクが大型化する。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決し、まとまった設置スペースを必要とせず、隔膜を有しない蓄圧装置を備えた便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の便器洗浄装置は、洋風便器に水道水圧によって水を供給する給水手段と、該給水手段に対し蓄圧水を供給可能な蓄圧装置とを有する便器洗浄装置において、該蓄圧装置は、貯水タンクと、該貯水タンクとは別体に設けられたエアータンクと、該貯水タンクと該エアータンクとを連通する連通手段と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の便器洗浄装置は、請求項1において、前記蓄圧装置は、前記蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の便器洗浄装置は、請求項2において、前記蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー圧検知手段と、該エアー圧検知手段の検知圧力に基づいて蓄圧装置への水の流入又は前記エアーポンプの作動を制御する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の便器洗浄装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記エアータンクは、便器のスカート部内に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5の便器洗浄装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記便器は陶器製であり、該便器と一体の陶器によって前記エアータンクを設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項6の便器洗浄装置は、請求項5において、便器のスカート部と鉢部との間に前記エアータンクが形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の便器洗浄装置は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが前記便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8の便器洗浄装置は、請求項7において、前記貯水タンクの底部に水の給排口が設けられており、前記エアー流出阻止手段は、該給排口に設けられており、上方から浮子が着座可能な弁座部と、該貯水タンク内の水面に浮上している浮子とを備えてなり、該貯水タンク内の水位が所定以下になると該浮子が該弁座に着座して該給排口が閉鎖されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9の便器洗浄装置は、請求項7又は8において、前記貯水タンク内の非貯水状態におけるエアー圧は、大気圧より高圧であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10の便器洗浄装置は、請求項1ないし9のいずれか1項において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内の水が前記エアータンク側に流出することを阻止する水流出阻止手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11の便器洗浄装置は、請求項10において、前記貯水タンクの上部に前記エアータンクへの連通口が設けられており、前記エアー流出阻止手段は請求項8に記載のものであり、前記水流出阻止手段は、該連通口に設けられた弁シート部を備えており、該貯水タンク内の水位が所要水位以上になると前記浮子が該弁シート部に着座して該連通口が閉鎖されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明(請求項1)の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置の貯水タンクとエアータンクとが別体に設けられているため、貯水タンク及びエアータンクを異なる場所に配置することができる。従って、まとまったスペースがなくても蓄圧装置を設置することができる。
【0022】
請求項2の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えているため、蓄圧装置内を所定圧に加圧することができる。また、蓄圧装置内のエアーの一部が水に溶出したとしても、溶出した分のエアーを補充することができる。
【0023】
請求項3の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー検知手段と、該エアー検知手段の検知圧に基づいて蓄圧装置内への水の流入又はエアーポンプの作動を制御する手段を備えているため、蓄圧装置を過剰に加圧して蓄圧装置が破損することが防止される。また、蓄圧装置内を確実に所定圧力に制御することができる。
【0024】
請求項4の便器洗浄装置にあっては、エアータンクは便器のスカート部内に配置されているため、エアータンクが便器使用者に視認されることがなく、便器洗浄装置がすっきりとした外観となり、美観に優れたものとなる。
【0025】
請求項5の便器洗浄装置にあっては、便器と一体の陶器によってエアータンクを設けたことから、部品点数が少なくなり、便器洗浄装置の設置作業が容易なものとなる。また、便器成形用の成形型を作成した後は、エアータンク付き便器を一般の陶器製便器と略同コストにて量産することができ、便器洗浄装置の製作コストも相当に低減される。
【0026】
なお、この場合、便器のスカート部と便鉢との間にエアータンクが形成されることが好ましい(請求項6)。このようにすれば、スカート部と便鉢とをエアータンクの側壁部分として利用することができる。
【0027】
請求項7の便器洗浄装置にあっては、貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられているため、貯水タンクから便器へ水を流出するときに、貯水タンク内のエアーまで便器側へ流出することがない。このため、蓄圧装置内にエアーを補給する頻度は少なくてすみ、エアーポンプのランニングコストが低いと共に、エアーポンプの要求性能が低くなり、エアーポンプの小型化、低騒音化、低コスト化が図られる。また、貯水タンクから便器へ水を流出するときに、貯水タンク内のエアーが便器側へ流出して異音が発生することが防止される。
【0028】
請求項8の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内の水位が所定以下になると、浮子が水の給排口に設けられた弁座部に着座して該給排口を閉鎖するため、蓄圧装置内のエアーが便器側に流出することが確実に防止される。また、構造が簡易であるため、蓄圧装置の低コスト化も可能である。
【0029】
ところで、貯水タンク内の非貯水状態におけるエアー圧が大気圧である場合、洗浄時に貯水を吐出し、貯水タンク内の水量が少なくなると、貯水タンク内が大気圧近くまで減圧し、洗浄に必要な吐出圧力を維持することができなくなる。従って、貯水タンク内の総ての貯水を便器洗浄のために有効に使用することはできない。このように、貯水タンク内に、便器洗浄に寄与する有効水量に加えて便器洗浄に寄与しない水量が貯水されるため、貯水タンクが大型化すると共にタンクの要求強度が高いものとなる。
【0030】
請求項9の便器洗浄装置にあっては、非貯水状態において、貯水タンク内のエアー圧は大気圧より高圧となっている。このため、便器洗浄に伴って貯水タンク内の貯水量が少なくなり、貯水タンク内が減圧しても、便器洗浄に必要な吐出圧力が維持される。従って、貯水タンク内の貯水の多く又は総てが便器洗浄に有効に寄与する。このため、貯水タンクを小型化することができると共に、タンクの要求強度も小さなものとなる。なお、非貯水状態において貯水タンク内のエアー圧が大気圧より高くても、貯水タンク内のエアーが便器側に流出することがエアー流出阻止手段によって防止されるため、貯水タンク内のエアー圧は高圧のまま保持される。
【0031】
請求項10の便器洗浄装置にあっては、水流出阻止手段によって貯水タンク内の水がエアータンク内に流入することが阻止されるため、蓄圧装置の水流出性能の低下が防止される。
【0032】
請求項11の便器洗浄装置にあっては、浮子が1個で足り、構造が簡易なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0034】
[第1の実施の形態]
第1図は第1の実施の形態に係る便器洗浄装置の斜視図、第2図は第1図の洋風便器の斜視図、第3図は第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【0035】
陶器製の洋風便器1は、前部に鉢部2を備え、この鉢部2の上部内周にリム3が設けられている。このリム3へはリムノズル4を介して洗浄水が供給される。このリムノズル4は、洋風便器1の正面向って左側にのみ配置されており、所謂「片側給水方式」となっている。このリムノズル4から水がリム3に供給されることにより、鉢面には旋回流が形成される。
【0036】
鉢部2のトラップ部には、該トラップ部にサイホン排出流を誘起するための水(ジェット水)を噴出するジェットノズル5が設けられている。このトラップ部は、鉢部2の底部から斜め上方に立ち上がる上昇部と、該上昇部に連なり、下方に立ち下がる立下部とを有しており、この立下部が排水管(図示略)に連なっている。このトラップ構造自体は周知のものである。
【0037】
洋風便器1の後部上面に便座ボックス6が設置されている。この便座ボックス6の後部は洋風便器1よりも若干後方に張り出し、その下側にアンダーケース7が連なっている。便座ボックス6に対し便座8及び便蓋9が起倒回動しうるように支持されている。
【0038】
トイレルームの壁面には給水管の末端が突出しており、この給水管の末端に止水栓10が取り付けられている。この止水栓10は給水ホース11を介して洋風便器1の後部に設置されたストレーナ12に接続されている。給水ホース11には、便器1側から止水栓10側への水の流出を阻止し、その逆を許容する逆止弁11aが設けられている。このストレーナ12を通過した水は電動弁ユニット20へ供給されている。
【0039】
電動弁ユニット20は、内部に弁装置22,23,24を備えている。弁装置22,23はそれぞれ、リムノズル4及びジェットノズル5へ水を供給する。リムノズル4に調圧弁4aが設けられている。ジェットノズル5から分岐管30が分岐しており、ジェットノズル5の該分岐点より下流側に、弁装置24及び調圧弁5aが設けられている。これら弁装置22,23,24は、電気配線を介して図示しない制御手段に接続されている。
【0040】
該分岐管30は、貯水タンク31の下部の水の給排口31aに接続されている。この貯水タンク31の上部には、連通口31bが設けられ、該連通口31bに連通管40が接続されている。
【0041】
貯水タンク31内には、該水給排口31aに周設された漏斗形状の弁座33と、該連通口31bに周設された逆漏斗形状の弁シート部34と、パンチングメタルや金網などよりなる円筒状の浮子ガイドと、該ガイド35内に上下動自在に配置された浮子32とを有している。このガイド35は、浮子32を弁座33及び弁シート部34に案内するためのものであり、筒軸方向を鉛直方向にして配置されている。
【0042】
貯水タンク31の連通口31bと、エアータンク43とは、耐圧ホースよりなる連通管40を介して接続されている。この連通管40に、エアーポンプ41及びエアー圧検知手段としての圧力センサ42が接続されている。これら貯水タンク31、連通管40、エアーポンプ41、圧力センサ42及びエアータンク43により蓄圧装置が構成されている。
【0043】
圧力センサ42の検知圧は、電気信号として、電気配線を介して制御手段に送信可能となっている。また、制御手段とエアーポンプ41は電気配線を介して接続されており、制御手段からの信号によってエアーポンプ41が作動可能となっている。この電動ユニット20、貯水タンク31、エアーポンプ41及び圧力センサ42は、便座ボックス6からアンダーケース7内に配置されている。エアータンク43は、洋風便器1のスカート部1a内に配置されている。
【0044】
次に、このように構成された便器洗浄装置の作動内容について、以下に説明する。
【0045】
[初期設定(空気供給)]
弁装置22,23,24が閉弁され、貯水タンク31内に水が貯留されていない状態において、制御手段がエアーポンプ41を作動させる。蓄圧装置内のエアー圧が所定圧に達すると、圧力センサ42が制御手段に信号を送信し、制御手段がエアーポンプ41を停止する。
【0046】
この所定圧は、水道水の静水圧よりも低く、かつ後述の通り、貯水タンク31内に貯水され、蓄圧装置のエアータンク43内のエアーが圧縮されたときに、エアータンク43内のエアー圧が所定の十分に高い圧力となるように設定される。
【0047】
[非洗浄時]
弁装置22,23,24は閉弁されている。貯水タンク31内は貯水されておらず、蓄圧装置内は、上記所定圧となっている。
【0048】
[貯水タンク31内への静水圧による蓄水]
便器使用者のトイレルームへの入室や、便座への着座が検知されると、制御手段が弁装置23を開弁する。これにより、止水栓10、給水ホース11及び分岐管30を介して水道水が静水圧にて貯水タンク31内に流入し、貯水される。
【0049】
この貯水タンク31内への水の流入に伴って、貯水タンク31内のエアーがエアータンク43内へ押し込まれ、該エアータンク43内のエアー圧が上昇する。このエアー圧が設定圧に達すると、圧力センサ42からの信号により、制御手段が弁装置23を閉弁する。これにより、貯水タンク31内に所定量の水が貯留されると共に、エアータンク43内に設定圧の加圧エアーが貯えられた状態が保たれる。
【0050】
なお、水道水圧が急激に変化し、貯水タンク31に水が急激に流入する等により、貯水タンク31が上限水位以上になると、浮子32が弁シート部34を閉鎖する。これにより、貯水タンク31からエアータンク43に水が流入することが阻止されると共に、エアータンク43に過大な圧力が加わることが防止される。
【0051】
[便器洗浄]
1.リム洗浄
便器使用者が便器洗浄スイッチ(図示略)を操作すると、制御手段が弁装置22を開弁する。これにより、止水栓10、リムノズル4を介してリム3へ給水され、鉢部2の内面が洗浄される。
【0052】
所定時間経過後、制御手段が弁装置22を閉弁し、リム洗浄が停止される。
【0053】
2.ジェット起動
次いで、制御手段が弁装置23,24を開弁する。これにより、貯水タンク31内の蓄圧水と給水ホース11からの水とがジェットノズル5を介してトラップ部に噴出する。これにより、トラップ部にサイホンが迅速かつ強力に発生する。
【0054】
なお、ジェット水として、上記のように給水ホース11側からの水と貯水タンク31内の蓄圧水との双方を噴出させる代りに、貯水タンク31内の蓄圧水のみを噴出させるようにしてもよい。
【0055】
3.ジェット停止、溜水面の形成
やがて、貯水タンク31内が所定水位以下になると、浮子32が弁座33に着座し、蓄圧装置内のエアーが蓄圧装置から流出することが防止される。これによってジェット水噴出が停止する。
【0056】
その後、鉢部2内の汚水が排出され、サイホンがブレークされる。そこで、制御手段が弁装置23,24を閉弁すると共に、弁装置22を所定の短時間だけ開弁し、鉢部2内に所定量の水を供給し、溜水面を形成する。
【0057】
鉢部2内に十分な溜水面が形成された後、制御手段が弁装置22を閉弁し、洗浄が終了する。
【0058】
[エアーの補充]
貯水タンク31内に蓄圧水を貯留した状態において、何らかの原因によりエアーがリークしたり、エアーが水へ溶け込んだりすることにより、エアータンク43内のエアー圧が規定の圧力よりも低下した場合には、圧力センサ42からの信号に基づき、制御手段がエアーポンプ41を作動させ、エアータンク43内のエアー圧を所定圧まで回復させることが望ましい。
【0059】
[第2の実施の形態]
第4図(a)は第2の実施の形態に係る便器洗浄装置を前後方向に切断した状態を示す縦断面図、第4図(b)は第4図(a)のB−B線断面図である。
【0060】
この実施の形態では、陶器製の洋風便器1’にエアータンク52を一体に形成している。即ち、鉢部2の外面からスカート部50の下部にわたり、タンク形成壁51が形成されている。このタンク形成壁51、スカート部50及び鉢部2によって囲まれた囲室が、エアータンク52となっている。このタンク形成壁51に形成された小孔にホース取付ノズル40aが取り付けられ、このホース取付ノズル40aに連通管(耐圧ホース)40が接続されている。
【0061】
なお、洋風便器1’は陶器製であり、タンク形成壁51も含めて、成形型を用いたスリップキャスティング(泥しょう鋳込み法)により成形され、乾燥後、施釉され、焼成されて製造されたものである。この成形型を一回作成してしまえば、その後は、エアータンク付き洋風便器1’を量産することができる。
【0062】
その他の構成は第1〜3図の便器洗浄装置と同一であり、第1〜3図と同一の符号は同一の部分を示している。
【0063】
この実施の形態においても、エアータンク52内に所定空気圧の与圧を与えた状態で、弁装置24を閉、弁装置23を開とすると、貯水タンク31内に水が静水圧にて流入すると共に、エアータンク52内のエアー圧が昇圧し、貯水タンク31内に蓄圧水が貯留される。
【0064】
この第4図の便器洗浄装置の洗浄時の動作は前記第1実施の形態の便器洗浄装置と同じとなる。
【0065】
この第2実施の形態では、陶器製の便器1’と一体の陶器によってエアータンク52を設けることにより、部品点数が少なくなり、製造コストが低下すると共に、便器洗浄装置の組立作業が容易なものとなる。
【0066】
[別の態様]
I.上記実施の形態では、蓄圧水をジェットノズル5にのみ供給するよう構成しているが、ジェットノズル5と共に又はジェットノズル5の代りに、リムノズル4に蓄圧水を供給するようにしてもよい。
【0067】
II.また、例えば浮子32に玉鎖を取り付け、玉鎖を吊り上げ可能としたり、弁座33を迂回するバイパス弁を設け、このバイパス弁を開弁させたりするようにしてもよい。この場合、弁装置24を開弁させ、弁装置22,23を閉弁させた状態で、浮子32の着座を強制的に解除するか、バイパス弁を開弁すると共に、エアーポンプ41を作動させることにより、貯水タンク31内に残留した水を完全に排出することができる。これにより、寒冷地における貯水タンク31内の水の凍結を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施の形態に係る便器洗浄装置の斜視図である。
【図2】第1図の洋風便器の斜視図である。
【図3】第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【図4】(a)は第2の実施の形態に係る便器洗浄装置を前後方向に切断した状態を示す縦断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 洋風便器
2 鉢部
3 リム
4 リムノズル
5 ジェットノズル
11 給水ホース
22,23,24 弁装置
30 分岐管
31 貯水タンク
31a 水給排口
31b 連通口
32 浮子
33 弁座
34 弁シート部
40 連通管
41 エアーポンプ
42 圧力センサ
43,52 エアータンク
44 制御手段
50 スカート部
51 タンク形成壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器に水道水圧によって水を供給する給水手段と、該給水手段に対し蓄圧水を供給可能な蓄圧装置とを有する便器洗浄装置において、
該蓄圧装置は、
貯水タンクと、
該貯水タンクとは別体に設けられたエアータンクと、
該貯水タンクと該エアータンクとを連通する連通手段と、
を有することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記蓄圧装置は、前記蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー圧検知手段と、該エアー圧検知手段の検知圧力に基づいて蓄圧装置への水の流入又は前記エアーポンプの作動を制御する手段を備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記エアータンクは、便器のスカート部内に配置されていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記便器は陶器製であり、該便器と一体の陶器によって前記エアータンクを設けたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項6】
請求項5において、便器のスカート部と鉢部との間に前記エアータンクが形成されていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが前記便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項8】
請求項7において、前記貯水タンクの底部に水の給排口が設けられており、
前記エアー流出阻止手段は、
該給排口に設けられており、上方から浮子が着座可能な弁座部と、
該貯水タンク内の水面に浮上している浮子と
を備えてなり、
該貯水タンク内の水位が所定以下になると該浮子が該弁座に着座して該給排口が閉鎖されることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記貯水タンク内の非貯水状態におけるエアー圧は、大気圧より高圧であることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内の水が前記エアータンク側に流出することを阻止する水流出阻止手段が設けられていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項11】
請求項10において、前記貯水タンクの上部に前記エアータンクへの連通口が設けられており、
前記エアー流出阻止手段は請求項8に記載のものであり、
前記水流出阻止手段は、該連通口に設けられた弁シート部を備えており、
該貯水タンク内の水位が所要水位以上になると前記浮子が該弁シート部に着座して該連通口が閉鎖されることを特徴とする便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−169767(P2006−169767A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361638(P2004−361638)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】