説明

便器洗浄装置

【課題】給水圧力の変化に拘わらず、高い洗浄能力を発揮でき、且つボウル部における水はねを防止できる便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器2のボウル部4に通じる給水路10を流れる水にエジェクター効果により気体を混入してボウル部4に吐出する便器洗浄装置である。給水路10に供給される気体の流量を調節する流量調整弁31と、給水路10への給水流量又は給水圧力を検知する検知手段を備える。検知手段で検知した給水路への給水流量又は給水圧力が増す程前記流量調整弁の開度を小さくする制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に気体を混入して便器のボウル部に吐出する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される便器洗浄装置は、便器のボウル部に通じる給水路に気体供給路が接続され、この気体供給路から給水路を流れる水にエジェクター効果により気体を混入して洗浄液としてボウル部に吐出するものである。この洗浄液は前記気体からなる気泡を多く含むため洗浄効果が高く、また、洗浄液の見かけの流量も多くて節水にもなる。
【0003】
ところで、前記給水路に供給される水の給水圧力は、便器を設置する地域や建物の階数等によって変化する。このため、前記給水路への給水圧力が小さい場合には、ボウル部への給水量が減少すると共にエジェクター効果により混入される気体の混入量が減少し、この結果、ボウル部に吐出される洗浄液の見かけの流量が減少して洗浄能力が低下する恐れがある。逆に前記給水路への給水圧力が大きい場合にはボウル部に吐出される洗浄液の見かけの流量が増加してボウル部における水はねの要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−138420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、給水圧力の変化に拘わらず、高い洗浄能力を発揮でき、且つボウル部における水はねを防止できる便器洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明の便器洗浄装置は、便器のボウル部に通じる給水路を流れる水にエジェクター効果により気体を混入して前記ボウル部に吐出する便器洗浄装置において、前記給水路に供給される気体の流量を調節する流量調整弁と、前記給水路への給水流量又は給水圧力を検知する検知手段と、この検知手段で検知した前記給水路への給水流量又は給水圧力が増す程前記流量調整弁の開度を小さくする制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にあっては、給水圧力の変化に拘わらず、高い洗浄能力を発揮でき、且つボウル部における水はねを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の便器洗浄装置の混入装置を示す断面図である。
【図2】同上の便器洗浄装置の説明図である。
【図3】同上の混入装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の便器洗浄装置1は便器2に設けられて図2に示される便器装置3を構成する。
【0010】
便器2は洋式便器であって、ボウル部4を有する便器本体5と、便器本体5に回動自在に取り付けられた便座6及び便蓋7を備えている。ボウル部4の下部には後方に突出する排水筒部8が形成され、排水筒部8には屈曲可能な筒状のトラップ9の一端部が接続されている。
【0011】
トラップ9の自由端側の開口は床に設けられる排水孔(図示せず)に通じる。トラップ9はモーター(図示せず)を駆動することにより、図2中実線で示される形体又は図2中破線で示される形体のいずれかに変形するよう設定されている。図2中実線で示されるトラップ9は自由端側が上方に位置するように屈曲し、ボウル部4内に水が溜められる状態となる。また、図2中破線で示されるトラップ9は自由端側が下方に位置するよう屈曲し、ボウル部4内の水がトラップ9を介して排水孔に排出される状態となる。
【0012】
便器洗浄装置1は、用便後において、気体を混入した水又はこれに洗剤を混入したもののうちの選択された一方を洗浄液としてボウル部4内に吐出し、これによってボウル部4の内面を洗浄する。
【0013】
便器洗浄装置1は、ボウル部4内に水を供給する給水路10と、給水路10に洗剤を供給する洗剤供給路11を備えている。
【0014】
給水路10には水道管が接続されて水道水が供給される。給水路10には電磁弁からなる給水弁12が設けられ、給水弁12を開閉することでボウル部4への給水の有無が切り替えられる。給水弁12よりも上流側の給水路10には流量センサー34が設けられ、該流量センサー34により給水路10への給水流量を検知する検知手段が構成されている。
【0015】
給水弁12よりも下流側の給水路10には、給水路10を流れる水に洗剤及び気体を混入するための混入装置13が設けられている。本実施形態の混入装置13は給水路10の下流側端部に設けられ、ボウル部4に洗浄液を吐出する吐出部を兼ねている。
【0016】
洗剤供給路11は、洗剤を循環させる循環路15と、一端が循環路15に接続されると共に他端が混入装置13に接続された接続路18で構成されている。
【0017】
循環路15の両端は便器2に設けられた洗剤タンク17の内部に通じている。洗剤タンク17には洗剤を補給するための補給口32が形成されている。補給口32には当該補給口32を閉塞するキャップ35が脱着可能に取り付けられている。
【0018】
循環路15には、洗剤タンク17内の液状の洗剤を循環路15を介して循環させるポンプ16が設けられている。
【0019】
接続路18と混入装置13の接続部分には弁19が設けられている。弁19は弾性を有し、ポンプ16の停止時には閉じた状態を維持し、ポンプ16の運転時には循環路15を流れる洗剤の圧力によって弾性変形して開く。この弁19により、循環路15の洗剤はポンプ16の運転時にのみ給水路10に供給されるようになる。すなわち、本実施形態では、ポンプ16の運転・停止を切り替えることで、給水路10への洗剤供給の有無を切り替えられるようになっている。なお、前記弁19は、接続路18の途中や、循環路15と接続路18の接続部分に設けられてもよく、つまり、弁19は給水路10に洗剤を供給する流路に設けてあればよい。
【0020】
混入装置13には一端側を大気に開放した気体供給路14の他端が接続され、この気体供給路14から給水路10を流れる水に空気が混入される。気体供給路14には逆止弁30が設けられている。逆止弁30よりも下流側の気体供給路14には電動弁からなる流量調整弁31が設けられている。そして、本実施形態では、前記給水路10、洗剤供給路11、気体供給路14、給水弁12、流量センサー34、混入装置13、ポンプ16、洗剤タンク17、流量調整弁31、逆止弁30等で便器洗浄装置1が構成されている。
【0021】
次に混入装置13について詳述する。混入装置13は、図1に示されるように、一直線状に連結される、絞り管20、エジェクター管21、及び吐出管22で構成されている。これら絞り管20、エジェクター管21、吐出管22は、この順序で給水路10を流れる水の流れ方向において上流側から順に設けられ、本実施形態では後側から前側に向かって、絞り管20、エジェクター管21、及び吐出管22が順に設けられている。
【0022】
絞り管20の後部は混入装置13よりも上流側の給水路10が接続される接続管部23になっている。絞り管20の前端部は内径が接続管部23よりも小さい絞り管部24になっており、この絞り管部24がエジェクター管21の後端部内側に嵌め込まれることで絞り管20はエジェクター管21に接続される。
【0023】
エジェクター管21には、内径が絞り管部24よりも大きい上流側大径部25、内径が上流側大径部25よりも小さい小径部26、及び内径が小径部26よりも大きい下流側大径部27が、上流側となる後側から順に形成されている。エジェクター管21は、下流側大径部27を吐出管22の後部内側に嵌め込むことで吐出管22に接続される。
【0024】
上流側大径部25には気体供給口部28が形成され、気体供給口部28には前記気体供給路14が接続されている。気体供給口部28は絞り管部24の先端部と前後方向における同位置に形成され、絞り管部24の先端部近傍に位置している。
【0025】
給水弁12を開いた状態では、給水路10を流れる水は絞り管部24において減圧された後、図1中絞り管部24に描かれた矢印のように上流側大径部25に噴出し、この際、絞り管部24の先端部近傍では負圧が生じる。このエジェクター効果により、上流側大径部25を流れる水には、図1中気体供給路14に描かれた矢印のように気体供給路14及び気体供給口部28を介して外部の空気が混入される。すなわち、本実施形態では、絞り管部24の先端部が挿入された上流側大径部25により、給水路10を流れる水に気体を混入する気体混入部が構成されている。
【0026】
エジェクター管21の小径部26には洗剤供給口部29が形成され、洗剤供給口部29には前記接続路18が接続されている。従って、給水弁12を開いた状態でポンプ16を運転した際には、前述のように弁19が開くことにより、循環路15を流れる洗剤が接続路18を介して小径部26を流れる水に混入される。
【0027】
上流側大径部25において気体が混入された水はエジェクター管21の小径部26において減圧され、続いて下流側大径部27において増圧される。この時、当該水に含まれる気体からなる気泡は小径部26と下流側大径部27において生じる水圧の変化により剪断され、これによって当該水には多数の微小気泡が生成される。すなわち、小径部26及び下流側大径部27は微細気泡生成部を構成している。
【0028】
吐出管22の前部にはエジェクター管21の下流側大径部27に通じる吐出口部33が形成されている。吐出口部33はボウル部4の後端部の側部に設けられ、前方のボウル部4内に臨む。このため、吐出口部33から前方に吐出された洗浄液は平面視でボウル部4の内面に沿ってボウル部4の周方向に旋回する旋回流になる。
【0029】
便器洗浄装置1を用いて洗剤が混入されていない水でボウル部4を洗浄するには、図示しない操作部を操作することで、ポンプ16を停止した状態において給水弁12を所定時間開く。これによって水道管からの水が給水路10を経てボウル部4内へと水が吐出される。この際、前述のように混入装置13内に上流側から水が流れこむことで、エジェクター効果により外部の空気が気体供給路14を介して混入装置13内を流れる水に混入される。そして、この空気は混入装置13の小径部26及び下流側大径部27により微細化された後、ボウル部4に水と共に吐出される。
【0030】
一方、便器洗浄装置1を用いてボウル部4に洗剤を混入した洗浄液を供給するには、前記操作部を操作して給水弁12を開くと共にポンプ16を運転する。このようにすることで、水道管から給水路10に流れこんだ水に気体供給路14を介して空気が混入されると共に循環路15を循環する洗剤の一部が接続路18を介して混入され、かくして洗剤及び微細化された気泡を含む水が洗浄液としてボウル部4に吐出される。
【0031】
このように微細気泡を含む洗浄液をボウル部4に吐出することで、ボウル部4の内面に微細気泡が衝突してこの際に高周波振動を引き起こし、ボウル部4の内面が綺麗に洗浄される。また、ボウル部4に吐出されるの洗浄液が洗剤を含む場合には、洗剤が有する洗浄効果によりボウル部4の内面が一層綺麗に洗浄される。
【0032】
ここで、前記給水路10に設けられる流量センサー34で検知した情報は、ポンプ16等を制御する制御部に伝送される。そして、前記制御部は流量調整弁31を制御する制御手段を構成し、この制御部により、前記流量センサー34で検知された給水路10への給水流量に基づいて以下のように流量調整弁31が制御される。
【0033】
すなわち、前記ボウル部4に洗浄液を吐出する際には、洗剤を含む場合、含まない場合のいずれの場合も、流量センサー34により給水路10への給水流量を検知する。そして、前記制御部は前記検知した給水流量が増す程前記気体供給路14に設けられた流量調整弁31の開度が小さくなるように制御する。なお、この流量調整弁31の開度の調節は段階的に行われるものであってもよいし、無段階的に行われるものであってもよい。
【0034】
以上のように本実施形態の便器洗浄装置1は、給水路10への給水流量が増す程給水路10への気体の供給流量を調整する流量調整弁31の開度を小さくするので、給水路10からボウル部4に吐出される洗浄液の気泡を含めた見かけの流量は、水道管から給水路10への給水圧力に拘わらず略一定のものになる。
【0035】
すなわち、水道管から給水路10への給水圧力が小さいときには流量調整弁31の開度が大きくなり、気体供給路14から給水路10を流れる水に供給される気体の流量が多くなる。従って、ボウル部4に吐出される洗浄液の見かけの流量が増し、洗浄能力が高まる。
【0036】
逆に水道管から給水路10への給水圧力が大きいときには流量調整弁31の開度が小さくなって、気体供給路14から給水路10を流れる水に供給される気体の流量が前記給水圧力が小さいときよりも少なくなる。従って、ボウル部4に吐出される洗浄液の見かけの流量が減り、水はねが生じ難くなる。
【0037】
なお、本実施形態の流量センサー34は給水弁12よりも上流側の給水路10に設けられているが、給水路10において前記気体が混入される箇所となる上流側大径部25よりも上流側であれば、流量センサー34を給水弁12よりも下流側に設けてもよい。また、同じ水道管から分岐されて他の部分に水を供給する機器で流量を検出して代用することにより、給水路10への給水流量を検知しても構わない。
【0038】
また、本実施形態では、検知手段として流量センサー34を設け、この流量センサー34で検知した給水路10への給水流量が増す程流量調整弁31の開度が小さくなるように制御した。しかし、前記検知手段として流量センサー34に代えて給水路10に圧力センサーを設け、この圧力センサーで検知した給水路10への給水圧力が増す程流量調整弁31の開度が小さくなるように制御しても構わない。この場合も上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0039】
また、本実施形態の流量調整弁31は逆止弁30よりも下流側の気体供給路14に設けられているが、逆止弁30よりも上流側の気体供給路14に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 便器洗浄装置
2 便器
4 ボウル部
10 給水路
14 気体供給路
31 流量調整弁
34 流量センサー(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器のボウル部に通じる給水路を流れる水にエジェクター効果により気体を混入して前記ボウル部に吐出する便器洗浄装置において、前記給水路に供給される気体の流量を調節する流量調整弁と、前記給水路への給水流量又は給水圧力を検知する検知手段と、この検知手段で検知した前記給水路への給水流量又は給水圧力が増す程前記流量調整弁の開度を小さくする制御手段を備えたことを特徴とする便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−107390(P2012−107390A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255132(P2010−255132)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】