説明

便器洗浄装置

【課題】実際の使用状況に洗浄水の量を最適化した便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】電磁弁11と、人体検知センサ12と、リモコン装置14と、人体検知センサ12が使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に電磁弁11を開いて便器を洗浄する自動洗浄と、リモコン装置14に所定の操作が行われると電磁弁11を開いて便器を洗浄する意志洗浄とを行うコントローラ13を備える便器洗浄装置1において、コントローラ13は、自動洗浄から第1の所定時間内に意志洗浄を行うと、その後に行う自動洗浄に係る電磁弁11の開弁時間を、その前に行っていた自動洗浄に係る電磁弁11の開弁時間よりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄装置に関し、特に、便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、便器の使用者を検知するための検知部と、使用者の操作を受け付けるための操作部と、前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第1の制御と前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第2の制御とを行う制御部と、を備える便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の洗浄は、洗浄水を便器に供給(たとえば、放水)することにより行われる。ここで、便器の汚れ具合は利用形態(大使用、小使用等)や使用者の使用状況に応じて様々であり、便器の洗浄に必要な洗浄水は、便器の汚れ具合に応じて異なる。
【0003】
便器の洗浄のみが目的であれば大量の洗浄水を供給すれば一定レベル以上の洗浄度合いを実現できるが、昨今、地球環境保全や経済性の要望も高まっており、一定レベル以上の洗浄度合いに加えて、節水の要望も高まっている。従って、利用形態や使用状況に応じて洗浄水の供給量を適切に設定する技術の開発が望まれている。
【0004】
ここで、洗浄方法には、大別すると意志洗浄と自動洗浄の2種類がある。
意志洗浄は、使用者が所定の操作を操作部(リモコン等)に対して行ったときに便器を洗浄する手法である。意志洗浄においては、利用者が汚れ具合を視認して適切な洗浄水の量を判断するため、比較的適切な洗浄が為されることが予想され、仮に洗浄が不十分である場合は再度洗浄することも可能である。
【0005】
一方、自動洗浄は、利用者の操作に関わらず、使用者検知センサの検知結果に基づいて使用者の離座や退室を検知したときに便器を洗浄したり、便器の利用時間が一定時間を超えたときに便器を洗浄したりする手法である。自動洗浄においては、視認による判断に基づいて行われる訳ではないため、実際の汚れ度合いに応じた適切な洗浄水の量になっているか不明である。
【0006】
このような課題を解決するため、従来、便器の使用時間に応じて洗浄度合い、すなわち便器に対する洗浄水の供給量を自動的に変化させることが行われている。便器の使用時間は、たとえば使用者感知センサの検知結果に基づいて計時する。
【0007】
具体的には、大使用と小使用との使用時間の閾値をあらかじめ設定しておき、「便器の使用時間≧設定時間」の場合には大使用と判断して多めの洗浄水を供給し、「便器の使用時間<設定時間」の場合には小使用と判断して少なめの洗浄水を供給する。
【0008】
ただし、この技術を用いると、使用時間のみに基づいて一律に大使用と小使用を判断しているため、仮に小使用であっても便器の使用時間が設定時間を超えたら大用の多めの洗浄水が便器に供給されてしまう。このような問題に対処するため、特許文献1には、前後の使用者の使用状況も考慮して洗浄水の量を調整するトイレの洗浄装置が提案されている。
【0009】
具体的には、上述した技術と同様に便器の使用時間に基づいて大使用と小使用とを判断する手段を備えつつ、人体センサと洗浄用リモコンとを備えさせている。そして、大使用と判断されたときは、次回の洗浄時に大使用と同様の多めの洗浄水の供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−240378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術は、1人目の使用者が大使用であったときは、2人目の使用者が操作部に対して所定の操作を行ったときに必ず大使用と同様の多めの洗浄水を供給することになるが、小使用の少なめの洗浄水でも十分な場合もある。また、大使用と小使用の中間的な洗浄水の量が最適である可能性もある。従って、一律に大使用と同様の多めの洗浄水を供給すると、無駄水を流していることになる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、実際の使用状況に応じて洗浄水の量を最適化することが可能な便器洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本技術に係る便器洗浄装置の態様の1つは、便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、便器の使用者を検知するための検知部と、使用者の操作を受け付けるための操作部と、前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、を備える便器洗浄装置であって、前記制御部は、前記第1の制御から第1の所定時間内に前記第2の制御を行うと、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くする構成である。
【0014】
前記構成によれば、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、一定時間(前記第1の所定時間)内に、使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御が行われると、前記制御部は、前記第1の制御による洗浄時間(もしくは洗浄水の量)が不足していると判断し、自動的に第1の制御に係る電磁弁の開弁時間を、それまでの開弁時間よりも長くなるように調整する。従って、第1の制御に係る電磁弁の開弁時間が、便器洗浄装置の実際の使用状況に応じた時間に調整され、洗浄水の量が実際の使用状況に応じた量に最適化される。よって、管理者や使用者に煩わしい設定や調整を強いることなく、適切な洗浄度合いと、節水とを実現することができるようになる。
【0015】
本技術に係る便器洗浄装置の他の態様は、便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、便器の使用者を検知するための検知部と、使用者の操作を受け付けるための操作部と、前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて前記便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて前記便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、を備える便器洗浄装置であって、前記制御部は、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の第2の所定時間内または直後の第3の所定時間内に前記第2の制御を行うと、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くする構成である。
【0016】
前記構成によれば、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、次の使用者が検知される前後所定時間(直前の前記第2の所定時間、直後の前記第3の所定時間)内に使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御が行われると、前記制御部は、前記第1の制御による洗浄時間(もしくは洗浄水の量)が不足していると判断し、自動的に第1の制御に係る電磁弁の開弁時間を、それまでの開弁時間よりも長くなるように調整する。従って、第1の制御に係る電磁弁の開弁時間が、便器洗浄装置の実際の使用状況に応じた時間に調整され、洗浄水の量が実際の使用状況に応じた量に最適化される。よって、管理者や使用者に煩わしい設定や調整を強いることなく、適切な洗浄度合いと、節水とを実現することができるようになる。
【0017】
本技術に係る便器洗浄装置の他の態様は、便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、便器の使用者を検知するための検知部と、使用者の操作を受け付けるための操作部と、前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて前記便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて前記便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、を備える便器洗浄装置であって、前記制御部は、前記第1の制御から第1の所定時間内に行われた前記第2の制御と、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の第2の所定時間内または直後の第3の所定時間内に行われる前記第2の制御と、の少なくとも一方の発生回数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合以上になると、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くする構成である。
【0018】
前記構成によれば、前記制御部は、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、一定時間(前記第1の所定時間)内に、使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御の発生回数と、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、次の使用者が検知される前後所定時間(直前の前記第2の所定時間、直後の前記第3の所定時間)内に使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御の発生回数と、の少なくとも一方をカウントしている。そして、このカウント数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合以上になると、前記制御部は、前記第1の制御による洗浄時間(もしくは洗浄水の量)が不足していると判断し、自動的に第1の制御に係る電磁弁の開弁時間を、それまでの開弁時間よりも長くなるように調整する。従って、第1の制御に係る電磁弁の開弁時間が、便器洗浄装置の実際の使用状況に応じた時間に調整され、洗浄水の量が実際の使用状況に応じた量に最適化される。よって、管理者や使用者に煩わしい設定や調整を強いることなく、適切な洗浄度合いと、節水とを実現することができるようになる。
【0019】
本技術に係る便器洗浄装置の選択的な態様の1つでは、前記制御部は、前記第1の制御から前記第1の所定時間内に行われた前記第2の制御、または、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の前記第2の所定時間内または直後の前記第3の所定時間内に行われる前記第2の制御、の発生回数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合未満になると、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも短く構成である。
【0020】
前記構成においても、前記制御部は、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、一定時間(前記第1の所定時間)内に、使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御の発生回数と、自動的に便器を洗浄する前記第1の制御が行われた後、次の使用者が検知される前後所定時間(直前の前記第2の所定時間、直後の前記第3の所定時間)内に使用者の操作に応じて便器を洗浄する前記第2の制御の発生回数と、の少なくとも一方をカウントしている。そして、このカウント数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合未満になると、前記制御部は、前記第1の制御による洗浄時間(もしくは洗浄水の量)が過剰であると判断し、自動的に第1の制御に係る電磁弁の開弁時間を、それまでの開弁時間よりも短くなるように調整する。従って、第1の制御に係る電磁弁の開弁時間が、便器洗浄装置の実際の使用状況に応じた時間に調整され、洗浄水の量が実際の使用状況に応じた量に最適化される。よって、管理者や使用者に煩わしい設定や調整を強いることなく、適切な洗浄度合いと、節水とを実現することができるようになる。
【0021】
なお、以上説明した便器洗浄装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記便器洗浄装置を備える便器洗浄システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する制御方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピュータに実現させるプログラム、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】便器洗浄装置の外観を示す斜視図である。
【図2】便器洗浄装置の機能を示すブロック図である。
【図3】便器洗浄処理の第1実施例に係るフローチャートである。
【図4】便器洗浄処理の第1実施例に係るフローチャートである。
【図5】便器洗浄処理の第1実施例を説明するタイミングチャートである。
【図6】洗浄回数の多寡を判断する閾値を説明する図である。
【図7】便器洗浄処理の第2実施例に係るフローチャートである。
【図8】便器洗浄処理の第2実施例に係るフローチャートである。
【図9】便器洗浄処理の第2実施例に係るフローチャートである。
【図10】便器洗浄処理の第2実施例を説明するタイミングチャートである。
【図11】便器洗浄処理の第2実施例を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)便器洗浄処理の第1実施例:
(3)便器洗浄処理の第2実施例:
【0024】
(1)本実施形態の構成:
図1は、便器洗浄装置の外観を示す斜視図であり、図2は、便器洗浄装置の機能を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の便器洗浄装置1は、便器2への吐水を行うことで便器2を洗浄する。便器洗浄装置1は、給水管3から供給される水を、便器2の洗浄水として、便器2に吐水する。給水管3によって供給される水は、止水栓4を介して流入管5によって便器洗浄装置1に供給されている。
【0026】
便器洗浄装置1は、後述する電磁弁11等をケーシング15に内蔵しており、流入管5によってケーシング15に供給される水は、電磁弁11が閉じると便器2に流れ込まず、電磁弁11が開くと便器洗浄装置1に流れ込む。便器洗浄装置1から吐水される洗浄水は、便器2に接続される流出管6により便器2に流れ込む。なお、本実施形態においては、給水管3、止水栓4,後述するケーシング15内の本体内通水路、流出管6、が給水路を構成する。
【0027】
図2に示すように、便器洗浄装置1は、電磁弁11を含む装置本体10と、人体検知センサ12と、コントローラ13と、リモコン装置14とを備える。便器洗浄装置1においては、装置本体10、人体検知センサ12、およびコントローラ13は、略直方体状の外形を有するケーシング15内に設けられる。
【0028】
リモコン装置14は、便器2の使用者(以下単に「使用者」という。)が便器に着座しつつ操作可能な位置に設けられるものであり、図1では、例えば便器2が設置される部屋の壁に取り付けられている。
【0029】
本実施形態の便器洗浄装置1においては、使用者がリモコン装置14において便器洗浄のための操作を行うことによって便器2に洗浄水が吐水される意思洗浄と、意思洗浄が行われなかった場合に自動的に便器2に洗浄水が吐水される自動洗浄とが行われる。
【0030】
ここで、自動洗浄としての便器2への吐水は、使用者の用便後等において、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した後に行われる。以下、便器洗浄装置1の各部の詳細について説明する。
【0031】
図2に示すように、装置本体10は、洗浄水の供給を受ける入水口16と、便器2へ吐水される洗浄水の流出口としての出水口17とを有する。入水口16には、給水管3(図1)によって供給される水を便器洗浄装置1に導く流入管5(図1)が接続される。出水口17には、洗浄水を便器2へと導く流出管6(図1)が接続される。
【0032】
装置本体10においては、給水管3から供給される洗浄水が、流入管5を介して入水口16から流れ込む(矢印A1参照)。入水口16から流れ込んだ洗浄水は、装置本体10内に形成される水の通路を通って、出水口17から流れ出て(矢印A2参照)、流出管6を介して便器2へと供給される。以下の説明では、装置本体10において入水口16と出水口17との間に設けられる洗浄水の通路を「本体内通水路」という。
【0033】
装置本体10は、ピストンバルブ18を有する。ピストンバルブ18は、本体内通水路において入水口16の下流側に設けられる。ピストンバルブ18は、本体内通水路内において上下方向に移動可能になっている。ここで、上下方向とは、便器2が設置される床面に対して略垂直方向、つまり略鉛直方向である。以下の説明では、ピストンバルブ18の移動方向である上下方向を、便器洗浄装置1における上下方向とする。
【0034】
ピストンバルブ18は、パッキン18aを有する。パッキン18aは、装置本体10においてピストンバルブ18の摺動面として形成される壁面と、ピストンバルブ18の外周面と、の間をシールする。
【0035】
装置本体10において、ピストンバルブ18の上側には、背圧室19が設けられている。背圧室19は、ピストンバルブ18の内部に形成される連通路18bを介して入水口16と連通する。
【0036】
ピストンバルブ18の下側には、二次側水路20が設けられている。二次側水路20に流れ込む水は、出水口17から流れ出る。入水口16と二次側水路20とは、ピストンバルブ18が最下端に位置することで非連通状態となり、ピストンバルブ18が最下端の位置から上昇することで連通状態となる。
【0037】
背圧室19は、バイパス流路21によって二次側水路20に連通する。このバイパス流路21に、電磁弁11が設けられる。電磁弁11は、バイパス流路21の開閉を行うものであり、電磁弁11が開閉されると、バイパス流路21を介する背圧室19と二次側水路20との連通状態・非連通状態が切り換えられる。
【0038】
このような構成を備える装置本体10においては、次のようにして、便器2への洗浄水の吐水が行われる。電磁弁11が閉じている状態では、給水管3から流入管5を介して入水口16に流れ込む水が、ピストンバルブ18の連通路18bを介して、電磁弁11の上流側の背圧室19に流れ込み、背圧室19内に溜まる。
【0039】
背圧室19内に水が溜まることにより、背圧室19内の水圧によって背圧室19内の圧力が二次側水路20内の圧力よりも高くなってピストンバルブ18が押し下げられる。これにより、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられる(非連通状態となる)。つまり、電磁弁11が閉じている状態においては、入水口16から流れこむ水が電磁弁11とピストンバルブ18とによってせき止められ、出水口17からの吐水は行われない。
【0040】
このように電磁弁11が閉状態であり、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられている状態から、電磁弁11が開状態とされると、背圧室19内の水がバイパス流路21を介して二次側水路20に流れ込む。これにより、背圧室19内の圧力が低下し、入水口16内の水によりパッキン18aが押し上げられることで、ピストンバルブ18が上昇(背圧室19側に移動)する。ピストンバルブ18が上昇することで、入水口16と二次側水路20とが連通状態となり、入水口16に流れ込む水が、二次側水路20へと流れ、出水口17から流れ出て便器2に供給される。
【0041】
そして、電磁弁11の開弁によって出水口17から水が流れ出ている状態から、電磁弁11が閉じられることで、入水口16から流れ込む水の一部は、ピストンバルブ18の連通路18bから背圧室19に流れ込み、背圧室19に溜まり始める。これにより、背圧室19内の圧力が上昇するとともに二次側水路20内の圧力が低下し、ピストンバルブ18が押し下げられる。そして、最終的には入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられ、出水口17からの吐水が行われない止水状態となる。
【0042】
このような電磁弁11の開閉による便器2への洗浄水の吐水においては、電磁弁11の開弁時間(厳密には励磁時間)の制御により、便器2へ吐水される洗浄水の水量が調整される。したがって、電磁弁11の開弁時間は、吐水量の少ない小便洗浄の場合に比べて、吐水量の多い大便洗浄の場合の方が長い。
【0043】
このように、本実施形態の便器洗浄装置1においては、装置本体10が有する電磁弁11は、本体内通水路の開閉を行うための開閉弁であり、便器2に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁として機能する。すなわち、電磁弁11の開閉によって、本体内通水路の開閉、つまり便器洗浄装置1の吐水状態と止水状態とが切り換わる。
【0044】
電磁弁11は、コントローラ13に接続されており、コントローラ13が電磁弁11の開閉動作を制御する。電磁弁11は、コントローラ13からの制御信号に従って電気的に制御され、バイパス流路21の開閉を行う。電磁弁11によるバイパス流路21の開閉は、上述したような本体内通水路の開閉をともなう。
【0045】
人体検知センサ12は、使用者を検知する人体検知部として機能する。人体検知センサ12は、使用者の存在を自動で検知する非接触センサである。本実施形態では、人体検知センサ12は、赤外線センサである。このため、人体検知センサ12は、赤外線を発光する発光素子と、発光した赤外線の反射光を受光する受光素子とを有する。
【0046】
人体検知センサ12は、ケーシング15内において、赤外線を送受する側が使用者の方向を向くように配置される。ケーシング15には、使用者が位置する側の壁面に、人体検知センサ12による赤外線の送受を確保するための検知窓12aが設けられている(図1参照)。
【0047】
本実施形態では、人体検知センサ12により、便器2の便座2aに着座している使用者の存在の有無が検知される。したがって、便座2aに着座している使用者は、人体検知センサ12の検知範囲内に位置する。そして、人体検知センサ12によれば、使用者が人体検知センサ12の検知範囲内に存在すること、および便座2aに着座している使用者が離座し、人体検知センサ12の検知範囲から出たことが検知される。
【0048】
人体検知センサ12は、コントローラ13に接続される。人体検知センサ12から出力される信号が、コントローラ13に入力され、コントローラ13により、使用者の存在・非存在が検知される。
【0049】
なお、本実施形態では、人体検知センサ12は赤外線センサであるが、使用者を検知する人体検知部としては、赤外線センサの他、公知の非接触センサや接触センサ等の各種センサを採用することができる。また、使用者を検知する人体検知部は、本実施形態の人体検知センサ12のように、装置本体10等とともにケーシング15に収納されることなく、例えば便座2aに一体的に内蔵される構成等であってもよい。
【0050】
コントローラ13は、人体検知センサ12からの検知信号を受け、電磁弁11の開閉動作を制御する制御部として機能する。具体的には、コントローラ13は、人体検知センサ12から出力される信号や、リモコン装置14における操作等に基づいて、電磁弁11の動作を制御する。このため、コントローラ13には、人体検知センサ12からの検知信号、およびリモコン装置14からの操作信号が入力される。また、コントローラ13からは、電磁弁11に対する制御信号が出力される。
【0051】
コントローラ13は、データ通信用のバス等により互いに接続されるCPU(Central Processing Unit)やメモリや入出力インターフェイス等の各種機能部分を有する。コントローラ13は、入出力インターフェイスとして、人体検知センサ12およびリモコン装置14からの入力信号を受けるための入力インターフェイス、ならびに電磁弁11に対する制御信号を出力するための出力インターフェイスを有する。
【0052】
コントローラ13は、制御プログラムや後述するような自動洗浄についての制御に用いられる各種データ等を記憶する記憶部13aを有する。記憶部13aは、例えばCPUに接続されるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される。コントローラ13が有するCPUは、制御プログラム等に従って所定の演算を行う演算部として機能する。なお、コントローラ13は、図示せぬACアダプタを介して電力の供給を受ける。
【0053】
リモコン装置14は、コントローラ13に電磁弁11の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部として機能する。具体的には、リモコン装置14は、コントローラ13に供給する操作信号として、赤外線信号を発信する。このため、リモコン装置14は、赤外線信号を発信する発信部22を有する。本実施形態では、リモコン装置14は、図1に示すように、矩形厚板状の外形を有し、設置された状態で上側となる両側の角部の2箇所に、発信部22が設けられている。
【0054】
一方、図2に示すように、装置本体10は、リモコン装置14の発信部22から発信された赤外線信号を受信する受信部23を備える。受信部23は、コントローラ13に接続され、受信部23により受信された赤外線信号は、電気信号に変換される等してコントローラ13に入力される。
【0055】
リモコン装置14は、便器洗浄、つまり便器2への洗浄水の吐水を行うための操作スイッチとして、洗浄スイッチ24を有する。洗浄スイッチ24が使用者等によって操作されることで、上述したように電磁弁11が開いて便器洗浄装置1が吐水状態となり、入水口16から便器2への洗浄水の吐水が行われる。本実施形態では、洗浄スイッチ24は、大便洗浄用のスイッチとする。ただし、図示は省略するが、リモコン装置14は、例えば小便洗浄用のスイッチ等、他の操作スイッチも有する。
【0056】
リモコン装置14は、駆動電力の供給を受けるための電池を内蔵する。ただし、リモコン装置14の駆動電力は、便器洗浄装置1の外部に設けられる電源から供給されてもよい。また、本実施形態では、リモコン装置14からコントローラ13に供給される操作信号は、赤外線信号であるが、この方式に限定されない。リモコン装置14からの操作信号としては、例えば、他の波長の電磁波を利用した信号や、超音波を利用した信号や、有線方式により送信される信号等であってもよい。
【0057】
(2)便器洗浄処理の第1実施例:
次に、図3,4のフローチャートと図5のタイミングチャートを参照しつつ、便器洗浄装置が実施する便器洗浄処理の第1実施例を説明する。なお、本実施例1に係る便器洗浄処理は図3,4に分けて記載してあり、丸付き数字の1は図3と図4のフローチャートの接続点を示す。また、便器洗浄処理の制御主体はコントローラ13であり、便器洗浄装置1の電源の投入中は、便器洗浄処理を繰り返し実行しているものとする。
【0058】
[人体検知処理]
コントローラ13は、用便を目的として、便器2に着座したり、便器2に接近したり、便器2が設置された個室に入室したりする使用者を、上述した各種の検知手段によって検知することができる。以下では、用便を目的とする人を特に「使用者」と呼ぶことにする。本実施形態では、人体の継続検知時間が所定時間を超えた場合に、検知中の人体を使用者と判断する。以下、図3,4を参照しつつ、具体的に説明する。
【0059】
図3,4に示す例では、コントローラ13が、人体検知センサ12が人体を検知しているか判断しており(S100)、人体検知センサ12が人体を検知すると(S100:Yes)、人体の継続検知時間が所定時間を経過しているか判断する(S130)。この所定時間を、以下では「オンディレイ時間」と呼ぶことにする。なお、本実施形態では、オンディレイ時間に係る情報は、記憶部13aに記憶されている。
【0060】
また、本実施形態では、コントローラ13が人体の継続検知時間をカウントするカウンター機能を備えている。このカウンターを、以下では「人体検知カウンター」と呼ぶことにする。コントローラ13は、人体検知センサ12が現在検知中の人体を最初に検知した時に、人体検知カウンターのカウントを開始する。なお、人体検知センサ12が現在検知中の人体を最初に検知した時とは、たとえば、ステップS100において人体を検知しなかった便器洗浄処理の直後に実行される便器洗浄処理のステップS100において、人体を検知した時を指す。
【0061】
コントローラ13は、人体の継続検知時間がオンディレイ時間を経過している場合は(S130:Yes)、使用者を検知していると判断して所定のフラグを記憶部13aに記憶させ(S135)、人体の検知を継続した時間がオンディレイ時間を経過していない場合は(S130:No)、使用者を検知していないと判断して所定のフラグを記憶部13aに記憶させない。この所定のフラグを、以下では「オンディレイフラグ」と呼ぶことにする。
【0062】
本実施形態において、オンディレイフラグは、使用者を検知したことを示す情報であり、使用者が離座して自動洗浄が行われたり、使用者が離座してすぐにリモコンを用いて意志洗浄を行ったりするとクリアされる。従って、その後、繰り返し実行される便器洗浄処理の中で、コントローラ13は、記憶部13aにオンディレイフラグが記憶されている場合は、使用者の検知中と判断することができ、記憶部13aにオンディレイフラグが記憶されていない場合は、使用者を未検知、もしくは、検知中の人体が使用者か否か判断中、と判断することができる。
【0063】
[自動洗浄処理]
コントローラ13は、所定の条件が満たされると自動洗浄を行う。本実施形態では、この所定の条件は、オンディレイフラグがセットされている状態で人体検知センサ12が人体を非検知状態となり、この非検知状態になってから所定時間が経過することである。なお、ここで言う所定時間は、使用者が用を足した後、意志洗浄を行わずに離座や退室等したか判断するための時間であり、以下では「オフディレイ時間」と呼ぶことにする。
【0064】
<自動洗浄の開始タイミング>
図3,4に示すフローチャートでは、コントローラ13は、人体検知センサ12が人体を検知しているか判断し(S100)、人体検知センサ12が人体を検知していない場合は(S100:No)、オンディレイフラグの有無を確認する(S105)。
【0065】
ここで、オンディレイフラグが記憶部13aに記憶されていない場合は(S105:クリア中)、意志洗浄が為されたか否かの判断を行う(S140)。ステップS140では、オンディレイフラグがクリアされた後に意志洗浄が為されている場合は(S140:Yes)、その意志洗浄が電磁弁閉後時間内に行われた意志洗浄であるか判断し(S145)する。なお、電磁弁閉後時間の意味合いについては後述する。
【0066】
電磁弁閉後時間外に行われた意志洗浄の場合は(S145:No)、オフディレイ時間の判断処理(S110)や自動洗浄の開始処理(S115〜S125)をスキップする。また、オンディレイフラグがクリアされた後に意志洗浄が為されていない場合も(S140:No)、オフディレイ時間の判断処理(S110)や自動洗浄の開始処理(S115〜S125)をスキップする。
【0067】
このとき、ステップS110〜S125をスキップすると、電磁弁11の状態を確認する処理が行われるが(S155)、電磁弁11は閉じているため(S155:閉)、自動洗浄の終了処理(S160〜S170)もスキップされる。
【0068】
電磁弁閉後時間内に行われた意志洗浄の場合は(S145:Yes)、後述する電磁弁11の開弁時間の調整処理において使用する「洗浄不足回数カウンター」を1増加させる。この「洗浄不足回数カウンター」の意味合いについては後述する。
【0069】
一方、オンディレイフラグが記憶部13aに記憶されている場合は(S105:セット中)、オフディレイ時間の経過を判断する(S110)。
【0070】
オフディレイ時間が経過していない場合は(S110:No)、電磁弁11を開く処理を含む自動洗浄の開始処理(S115〜S125)をスキップし、このとき、意志洗浄が行われた場合を除いて電磁弁11は閉じているため(S155:閉)、電磁弁11が開いた状態を所定時間だけ継続させる処理と(S155,S160)、電磁弁11を閉じる処理(S165)はスキップされる。このように、本実施形態によれば、オフディレイ時間の経過前に自動洗浄が行われることを防止し、電磁弁11を閉じる処理が、電磁弁11が閉じている時に実行されることを防止できる。
【0071】
一方、オフディレイ時間が経過している場合は(S110:Yes)、自動洗浄にかかる処理(S115〜S125,S155〜S170)を実行することになる。自動洗浄に係る基本的な処理は、電磁弁11を開く処理と(S120)、電磁弁11が開いた状態をある時間継続させる処理と(S155,S160)、電磁弁11を閉じる処理と(S165)、で構成される。
【0072】
なお、図3,4に示す処理では、自動洗浄が開始されると、オフディレイフラグをクリアする(S115)。自動洗浄が開始時にオフディレイフラグをクリアすることにより、次に実行される便器洗浄処理の中で、ステップS110〜S125に処理が進むことはなく、自動洗浄の開始にかかる処理を重複実行せずに済む。従って、適量以上の吐水を行わずに済むし、便器洗浄処理が効率化される。
【0073】
また、図3、4に示す処理では、ステップS110とステップS120の間でオフディレイフラグをクリアしているが、オンディレイフラグをクリアするタイミングは様々に変更可能である。オンディレイフラグのクリアは、繰り返し実行される便器洗浄処理のうち、自動洗浄の開始処理を実行した回の便器洗浄処理において実行されればよく、たとえば、ステップS120の直後や、ステップS125の直後に実行してもよい。
【0074】
<自動洗浄における吐水量・吐水時間の制御>
次に、自動洗浄における吐水量(吐水時間)の制御に係る処理について説明する。自動洗浄における吐水量もしくは吐水時間は、電磁弁11を開いてから閉じるまでの時間により調整される。
【0075】
図3,4では、コントローラ13が、電磁弁11の開閉状態を確認し(S155)、電磁弁11が開いている間は(S155:開)、電磁弁11の開弁時間が一定時間を超えているか判断する(S160)。なお、電磁弁11が閉じている場合は(S155:閉)、自動洗浄が未開始もしくは終了していることを意味するため、電磁弁11を閉じるための処理(S160、S165)の実行はスキップされる。
【0076】
ここで、コントローラ13は、電磁弁11を開いた後に経過した時間をカウントするカウンターを備え、記憶部13aは、自動洗浄において電磁弁の開状態を継続させるべき時間を示す設定値を記憶している。
【0077】
以下では、このコントローラ13が備えるカウンターを「電磁弁開時間カウンター」と呼び、この記憶部13aが記憶している設定値を「電磁弁開時間設定値」と呼ぶことにする。なお、この電磁弁開時間設定値は、便器洗浄装置の使用状況に応じて、後述のステップS175〜S190の処理により適宜に調整される。
【0078】
電磁弁開時間カウンターのカウントは、電磁弁11を開く処理を実行して便器洗浄装置1を吐水状態とした時に(S120)、コントローラ13が開始する。コントローラ13は、電磁弁11の状態を確認することにより吐水が継続していることを確認しつつ(S155)、電磁弁11が開いている場合は(S155:開)、電磁弁開時間カウンターのカウント値と電磁弁開時間設定値とを比較することにより、電磁弁開時間が経過しているか否かを判断する(S160)。
【0079】
ここで、電磁弁開時間カウンターのカウント値の示す時間が、電磁弁開時間を超えると(S160:Yes)、コントローラ13は、電磁弁11を閉じる処理を実行する(S165)。これにより、適宜に調整された電磁弁開時間に比例した量の洗浄水が便器2に吐水され、洗浄水の量に応じた度合いの洗浄が便器2に為される。
【0080】
一方、電磁弁開時間カウンターのカウント値の示す時間が、電磁弁開時間よりも小さい場合は(S160:No)、繰り返し実行される便器洗浄処理の中で、コントローラ13は、ステップS165の電磁弁11を閉じる処理をスキップする。これにより、便器2に対する吐水が継続される。
【0081】
[電磁弁開時間調整処理]
コントローラ13は、上述した人体検知処理や自動洗浄処理に加えて、電磁弁の開弁時間を、便器洗浄装置の使用状況に応じて適宜に調整する処理を実行している(S125,S150,S175〜S190)。これら処理を実行することにより、自動洗浄における吐水量を、使用状況に適した適切な量に自動的に調整することができる。よって、自動洗浄に係る吐水量の過不足を、自動的に解消することができる。
【0082】
本実施形態では、自動洗浄と意志洗浄のタイミング関係に応じて、電磁弁の開弁時間を調整している。特に、本実施例1では、自動洗浄が行われた直後の所定時間内に意志洗浄が行われた場合に、電磁弁の開弁時間を、その時点の開弁時間よりも、長くする調整を行うようになっている。
【0083】
図5には、自動洗浄と意志洗浄のタイミング関係の一例を示してある。同図では、人体検知センサ12が使用者の離座を検知すると、オフディレイ時間の経過後に、自動洗浄が行われる。この自動洗浄では、そのとき記憶部13aに設定されている電磁弁開時間設定値が示す時間に比例する量の水が吐水される。
【0084】
この自動洗浄が完了した後に、使用者が目視等によって便器洗浄の不足を発見すると、使用者は、リモコン操作を行って意志洗浄を行うことになる。たとえば、自動洗浄の完了から意志洗浄までの時間t1(またはt1’)が十分に短期間であれば、使用者が便器洗浄の不足を発見してリモコン操作を行ったと判断することができるし、自動洗浄の完了から意志洗浄までの時間が、十分に長い場合は、別の理由で意志洗浄を行ったと判断することができる。
【0085】
この判断を行うために、本実施形態では、自動洗浄の完了から経過した時間を計時している。以下では、この時間を「電磁弁閉後時間」と呼ぶことにする。本実施形態では、コントローラ13が電磁弁閉後時間を計時するためのカウンターの機能を備えている。このカウンターは、ステップS165において電磁弁11を閉じる処理を行ったときに、開始される。なお、以下では、このカウンターを「閉後時間カウンター」と呼ぶことにする。
【0086】
なお、電磁弁閉後時間が十分に短期間であるか否か判断するための所定時間は、例えば、経験的・実験的に決定される。以下では、この電磁弁閉後時間が十分に短期間であるかを判断するための所定時間を「洗浄不足判断時間」と呼ぶことにし、洗浄不足判断時間に係る設定値を「洗浄不足判断時間設定値」と呼ぶことにする。洗浄不足判断時間設定値は、例えば、記憶部13aに記憶される。なお、本実施形態においては、この洗浄不足判断時間が第1の所定時間を構成する。
【0087】
また、使用者がリモコンを介して意志洗浄を指示すると、意志洗浄の実行を示すデータと、意志洗浄を実行したときの電磁弁閉後時間と、が記憶部13aに記憶される。なお、意志洗浄の実行の有無を判断するタイミングは、使用者がリモコンを操作したタイミング(図5のt1経過時)でもよいし、このリモコン操作に応じて実際に意志洗浄を開始したタイミング(図5のt1’経過時)でもよい。
【0088】
<オンディレイフラグの確認>
図3,4に示すフローチャートでは、自動洗浄の完了後、繰り返し実行される便器洗浄処理の中で、次の使用者を検知してオンディレイフラグがセットされるまで、リモコンを介して行われる意志洗浄の有無を判断している(S140)。具体的には、人体が検知されず(S100:No)、オンディレイフラグがセットされていない状態であれば(S105:クリア中)、意志洗浄を指示するリモコン操作が行われたか判断する(S140)。
【0089】
ここで、コントローラ13は、記憶部13aを参照し、意志洗浄が実行されたことを示すデータの有無を判断する。このデータが記憶部13aに記憶されていれば、意志洗浄が行われたと判断し(S140:Yes)、意志洗浄が実行されたときの電磁弁閉後時間を、記憶部13aから取得する。
【0090】
そして、記憶部13aから取得した電磁弁閉後時間が、洗浄不足判断時間設定値の示す時間よりも短ければ、電磁弁閉後時間が十分に短期間であるものと判断し(S145:Yes)、自動洗浄による便器洗浄の洗浄度合いが不足していると判断された回数をカウントするカウンターのカウントを1増加させる(S150)。このカウンターは、本実施形態では、コントローラ13により実現されている。以下では、このカウンターを「洗浄不足回数カウンター」とよぶことにし、洗浄不足回数カウンターにてカウントされる数を「洗浄不足回数」と呼ぶことにする。
【0091】
一方、記憶部13aから取得した電磁弁閉後時間が、洗浄不足判断時間設定値の示す時間よりも長ければ、電磁弁閉後時間は短期間でなかったと判断し(S145:No)、ステップS150をスキップする。なお、ステップS150の実行後、または、ステップS145からステップS150をスキップした場合は、ステップS160へ進むが、このとき電磁弁11が閉じているため、ステップS160〜S170の処理もスキップされ、再びステップS100以降の処理が繰り返される。
【0092】
さらに、本実施形態では、洗浄不足回数をカウントする洗浄不足回数カウンターに加えて、自動洗浄の累積実行回数をカウントするカウンターを備えている。このカウンターも本実施形態では、コントローラ13により実現されている。以下では、このカウンターを「累積自動洗浄回数カウンター」と呼ぶことにする。累積自動洗浄回数カウンターのカウントは、自動洗浄が実行される都度、1増加されている(S125)。
【0093】
<電磁弁開時間の調整>
以上のようにして作成される洗浄不足回数カウンターと累積自動洗浄回数カウンターとのカウント値を利用して、コントローラ13は、洗浄不足と判断された自動洗浄の回数が多くなるほど、その時点の電磁弁開時間よりも電磁弁開時間が長くなるように調整する。これにより、自動洗浄における吐水量の不足を解消し、洗浄不足と解消することができる。
【0094】
また、逆に、コントローラ13は、洗浄不足と判断された自動洗浄の回数が少なくなるほど、その時点の電磁弁11の開弁時間よりも電磁弁11の開弁時間が短くなるように調整する。これにより、自動洗浄における吐水量の過剰を解消し、節水を実現することができる。
【0095】
図6は、洗浄回数の多寡を判断する閾値を説明する図である。同図において、閾値1、2は、自動洗浄の累積実行回数に対し、洗浄不足と判断された自動洗浄の回数の割合、に対応する量としてある。
【0096】
閾値1は、吐水量の不足を判断するための閾値であり、図6では、洗浄不足回数カウンターのカウント値が累積自動洗浄回数カウンターのカウント値のx%を超えるか否かを判断するための量である。閾値2は、吐水量の過剰を判断するための閾値であり、図6では、洗浄不足回数カウンターのカウント値が累積自動洗浄回数カウンターのカウント値のy%(x≧y)を下回るか否かを判断するための量である。なお、閾値1、閾値2は、本実施形態では、記憶部13aに記憶される。
【0097】
図6では、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が、x/100(閾値1)以上になると吐水不足を意味し、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が、y/100(閾値2)を下回ると吐水過剰を意味し、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が、y/100以上、x/100未満の場合は、吐水量が適切であることを意味する。
【0098】
図3,4では、コントローラ13は、閾値1および閾値2と、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]と、を順次に比較している。この比較の結果、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が閾値1を超えている場合は(S175:Yes)、電磁弁11の開弁時間を、その時点で設定されている電磁弁11の開弁時間よりも延長し(S180)、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が閾値2を下回る場合は(S175:No、S185:Yes)、電磁弁11の開弁時間を、その時点で設定されている電磁弁11の開弁時間よりも短縮し(S190)、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]が閾値1を下回りつつ閾値2よりも大きい場合は(S175:No,S185:No)、電磁弁11の開弁時間の調整は行わない。
【0099】
このように、便器洗浄装置の使用状況に応じて、電磁弁11の開弁時間を適宜に調整することにより、吐水量を適切に調整することができる。さらに、2つの閾値を設けて、その間に不感帯を設けることにより、吐水量が適切である場合には吐水量を調整しないようにし、吐水量の頻繁な変動を抑制している。
【0100】
むろん、不感帯を設けずに、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]がある閾値を超えた場合は、電磁弁11の開弁時間を、その時点で設定されている電磁弁11の開弁時間よりも延長し、[洗浄不足回数/累積自動洗浄回数]がある閾値を下回った場合は、電磁弁11の開弁時間を、その時点で設定されている電磁弁11の開弁時間よりも短縮してもよいことは言うまでも無い。
【0101】
(3)便器洗浄処理の第2実施例:
次に、図7,8,9のフローチャートと図10,11のタイミングチャートを参照しつつ、便器洗浄装置が実施する便器洗浄処理の第2実施例を説明する。なお、本実施例2に係る便器洗浄処理は図7,8,9に分けて記載してあり、丸付き数字の2,3は図7,8,9のフローチャートの接続点を示してある。また、便器洗浄処理の制御主体はコントローラ13であり、便器洗浄処理は便器洗浄装置の電源の投入中は繰り返し実行されているものとする。
【0102】
なお、図7,8,9に示すステップS200〜S225、S230、S240〜S275、S320,S325は、実施例1に係る図3,4に示すS100〜S125、S140、S155〜S190、S130,S135と、それぞれ共通するため、これらステップに係る人体検知処理や自動洗浄処理については、以下では、説明を省略する。
【0103】
コントローラ13は、第1実施例とは異なる方法で、電磁弁の開弁時間を、便器洗浄装置の使用状況に応じて適宜に調整する処理を実行している(S225,S235,S280〜S325)。この処理を実行することにより、上述した第1実施例と同様に、自動洗浄における吐水量を、使用状況に適した適切な量に自動的に調整することができる。よって、自動洗浄に係る吐水量の過不足を自動的に解消することができる。
【0104】
なお、第2実施例において説明する電磁弁11の開弁時間の調整と、上述した第1実施例で説明した調整とを併用すれば、自動洗浄に係る吐水量の過不足解消の効果は、相乗的に向上することは言うまでも無い。
【0105】
図10,11を参照しつつ、本実施例にかかる電磁弁の調整にかかる概念を説明する。実施例2では、順次に便器を利用する2人の使用者の使用状況を利用して、電磁弁の開弁時間を調整している。ここで利用する使用状況は、1人目の用便後に行われた自動洗浄が不十分であって、この使用者が自動洗浄の不足に気づかずに立ち去った場合である。
【0106】
このような場合、2人目の使用者は、1人目の使用者よりも洗浄不足に気づく可能性が高い。従って、この場合、2人目の使用者は用を足す前に意志洗浄を行うと考えられる。むろん、1人目の用便後に行われた自動洗浄が十分であれば、2人目は、意志洗浄を行うことなく用を足すと考えられる。
【0107】
具体的には、図10,11に示すように、1人目の使用者が用を足した後、その時点で設定されている電磁弁11の開弁時間に応じた吐水量で、自動洗浄が実行される。
【0108】
その後、図10に示すように、次の2人目の使用者を検知したときからさかのぼった所定時間t2の間に意志洗浄が行われた場合や、図11に示すように、次の2人目の使用者を検知してから所定時間t3が経過する前に意志洗浄が行われた場合が、上述した使用状況に該当する。なお、本実施形態においては、所定時間t2が第2の所定時間を構成し、所定時間t3が第3の所定時間を構成する。
【0109】
本実施例2では、このような使用状況を検知したときに、電磁弁11の開弁時間を、その時点で設定されている時間よりも長くなるように調整する。以下、図7,8,9を参照しつつ、具体的に説明する。
【0110】
まず、図7に示すように、人体検知センサ12が人体を検知する前に2人目の使用者がリモコンを操作して意志洗浄を行っていた場合、この意志洗浄が行われた時間も記憶部13aに格納されている。この時間も、本実施形態では、閉後時間カウンターのカウント値として記憶され、以下では、このカウント時間を「直前意志洗浄時間」と呼ぶことにする。
【0111】
具体的には、人体検知センサ12が人体を検知せず(S200:No)、1人目の自動洗浄が完了した時点で、オフディレイフラグもクリアされているため(S205:クリア中)、コントローラ13は、リモコン洗浄がされたときに(S230:有り)、閉後時間カウンターのカウント値を記憶部13aに格納する。
【0112】
次に、図7〜9に示すように、人体検知センサ12が人体を検知している場合(S200:Yes)、新規に検知された人体であるか否かを判断する(S280)。たとえば、ステップS200において人体を検知しなかった便器洗浄処理の直後に実行される便器洗浄処理のステップS200において人体が検知された場合、この人体は新規に検知された人体である。この新規に検知された人体は、図10,11に示す2人目の使用者に相当する。
【0113】
新規に人体を検知すると(S280:Yes)、閉後時間カウンターのカウント時間を記憶部13aに格納する(S285)。この閉後時間カウンターは、上述した実施例1で説明したものと同様であり、自動洗浄が完了して電磁弁11を閉じたときに、閉後時間カウンターのカウントが開始されている。以下では、ステップS285において記憶部13aに格納されるカウント時間を「2人目検知時間」と呼ぶことにする。
【0114】
2人目検知時間をメモリに格納すると、直前意志洗浄時間と2人目検知時間との差分が、閾値3以下であるか判断する(S290)。この閾値3は、図10に示した所定時間t2に対応するものである。
【0115】
コントローラ13は、直前意志洗浄時間と2人目検知時間との差分が閾値3以下の場合は(S290:Yes)、2人目の使用者が便器を使用する前に意志洗浄を行った者と判断し、洗浄不足回数カウンターを1増加させる(S295)。この洗浄不足回数カウンターは、上述した実施例1における洗浄不足回数カウンターと同様のカウンターであり、ステップS260〜S275において吐水量の過不足を調整するために利用される。
【0116】
逆に、直前意志洗浄時間と2人目検知時間との差分が閾値3より大きい場合は(S290:No)、直前意志洗浄時間に行われた意志洗浄は、この2人目が行った意志洗浄ではないと判断し、ステップS295をスキップする。
【0117】
また、人体検知センサ12が人体を検知した後に2人目の使用者がリモコンを操作して意志洗浄を行った場合、この意志洗浄が行われた時間が記憶部13aに格納される。この時間も、本実施形態では、閉後時間カウンターのカウント値として記憶され、以下では、このカウント時間を「直後意志洗浄時間」と呼ぶことにする。
【0118】
具体的には、リモコン洗浄がされたときに(S300:有り)、閉後時間カウンターのカウント値を記憶部13aに格納する(S305)。
【0119】
直後意志洗浄時間をメモリに格納すると、2人目検知時間と直後意志洗浄時間との差分が、閾値4以下であるか判断する。この閾値4は、図11に示した所定時間t3に対応する時間である。
【0120】
コントローラ13は、2人目検知時間と直後意志洗浄時間との差分が閾値4以下の場合は(S310:Yes)、2人目の使用者が便器を使用する前に意志洗浄を行った者と判断し、洗浄不足回数カウンターを1増加させる(S315)。
【0121】
逆に、2人目検知時間と直後意志洗浄時間との差分が閾値4より大きい場合は(S310:No)、直後意志洗浄時間に行われた意志洗浄は、1人目の使用者が用を足した後に行われた自動洗浄の過不足には関係ないと判断し、ステップS315をスキップする。
【0122】
以上のようにして、洗浄不足回数カウンターを利用して、上述した実施例1のステップS175〜S190と同様の、ステップS260〜S275を実行すると、便器洗浄装置の使用状況に応じて電磁弁11の開弁時間を適宜に調整し、吐水量を適切に調整することができる。
【0123】
なお、本技術は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。むろん、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1…便器洗浄装置、2…便器、2a…便座、3…給水管、4…止水栓、5…流入管、6…流出管、10…装置本体、11…電磁弁、12…人体検知センサ、12a…検知窓、13…コントローラ、13a…記憶部、14…リモコン装置、15…ケーシング、16…入水口、17…出水口、18…ピストンバルブ、18a…パッキン、18b…連通路、19…背圧室、20…二次側水路、21…バイパス流路、22…発信部、23…受信部、24…洗浄スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、
便器の使用者を検知するための検知部と、
使用者の操作を受け付けるための操作部と、
前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、
を備える便器洗浄装置であって、
前記制御部は、前記第1の制御から第1の所定時間内に前記第2の制御を行うと、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くすることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、
便器の使用者を検知するための検知部と、
使用者の操作を受け付けるための操作部と、
前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、
を備える便器洗浄装置であって、
前記制御部は、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の第2の所定時間内または直後の第3の所定時間内に前記第2の制御を行うと、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くすることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項3】
便器に洗浄水を供給する給水路を開閉するための電磁弁と、
便器の使用者を検知するための検知部と、
使用者の操作を受け付けるための操作部と、
前記検知部が前記使用者による便器の使用の終了を検知すると自動的に前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第1の制御と、前記操作部に所定の操作が行われると前記電磁弁を開いて便器を洗浄する第2の制御と、を行う制御部と、
を備える便器洗浄装置であって、
前記制御部は、前記第1の制御から第1の所定時間内に行われた前記第2の制御と、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の第2の所定時間内または直後の第3の所定時間内に行われる前記第2の制御と、の少なくとも一方の発生回数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合以上になると、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも長くすることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の制御から前記第1の所定時間内に行われた前記第2の制御、または、前記第1の制御を行った後、前記検知部が次の使用者を検知する直前の前記第2の所定時間内または直後の前記第3の所定時間内に行われる前記第2の制御、の発生回数が、前記第1の制御の発生回数に対して所定割合未満になると、その後に行う前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間を、その前に行っていた前記第1の制御に係る前記電磁弁の開弁時間よりも短くする請求項3に記載の便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−76224(P2013−76224A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215291(P2011−215291)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】