説明

便器用バルブ装置

【課題】流量制御弁を簡単に外すことのできる便器用バルブ装置を提供する。
【解決手段】第2バルブ装置B(便器用バルブ装置)は、連通部材10内にバルブユニット40を収容して構成される。連通部材10は、給水路9に連通する流入口13と、複数の分岐路61,75に個別に連通する複数の流出口14,15と、流入口13及び流出口14,15とは異なる位置に開口する着脱口121とを有する。バルブユニット40は、流入口13と流出口14,15を連通させるケース内流路45,46を有し、着脱口12において連通部材10に対する抜き挿しが可能なユニットケース41と、ケース内流路45,46に配置され、ケース内流路45,46における洗浄水の流量を調整する流量制御弁47,51を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁を備えた便器用バルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給水管の下流端に流量制御弁を設け、流量制御弁の下流側にリム用とジェット用の2本の分岐路を設け、便鉢の開口縁に沿ったリムから洗浄水を吐出させるとともに、便鉢の底部に配置してジェットノズルから洗浄水を吐出させるようにした給水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2833127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の給水構造においては、流量制御弁が、給水路を構成する上流側管路と下流側管路との繋ぎ目部分に配置されており、メンテナンスや修理などのために流量制御弁を外す場合には、上流側管路と下流側管路を分離する必要があるため、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、流量制御弁を簡単に外すことのできる便器用バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、給水路と、下流端が便器本体に接続された複数の分岐路との間に配置される便器用バルブ装置であって、連通部材内にバルブユニットを収容して構成され、前記連通部材は、前記給水路に連通する流入口と、前記複数の分岐路に個別に連通する複数の流出口と、前記流入口及び前記流出口とは異なる位置に開口する着脱口とを有し、前記バルブユニットは、前記流入口と前記流出口とを連通させるケース内流路を有し、前記着脱口において前記連通部材に対する抜き挿しが可能なユニットケースと、前記ケース内流路に配置され、前記ケース内流路における洗浄水の流量を調整する流量制御弁とを備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ユニットケース内には、複数の前記ケース内流路と複数の前記流量制御弁とが設けられ、前記複数のケース内流路は、その流動方向に沿った軸線が同軸状に並ぶように配置され、前記バルブユニットは、前記連通部材に対し前記ケース内流路の軸線と平行に抜き挿しされるようになっているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記ユニットケースは、前記流量制御弁の着脱が可能な形態に分離される複数のケース構成体を組み付けて構成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記流量制御弁は、移動可能な摺動体を備えており、前記複数のケース構成体のうち前記摺動体が摺接するケース構成体を、ポリアセタール樹脂製とし、前記複数のケース構成体のうち前記着脱口に嵌合されるケース構成体を、ポリフェニレンスルファイド樹脂製としたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記複数の分岐路のうちのいずれか1つは、前記便器本体の便鉢の底部に設けたジェットノズルに接続されるジェット用分岐路となっており、前記連通部材には、前記ジェット用分岐路に高圧の洗浄水を圧送するための蓄圧器が接続されており、前記バルブユニットには、前記蓄圧器と前記ジェット用分岐路とに連通するように配置され、前記流量制御弁側への逆流を防止する逆止弁が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
流量制御弁を外す際には、着脱口においてバルブユニットを連通部材外へ抜き取るだけでよく、給水路と分岐路とを分離させるといった面倒な作業が不要であり、作業性に優れている。
【0012】
<請求項2の発明>
複数のケース内流路は、その流動方向に沿った軸線が同軸状に並ぶように配置されており、その軸線方向に沿った並び方向は、連通部材に対するバルブユニットの抜き挿し方向と平行な方向となっている。したがって、バルブユニットは抜き挿し方向に沿った細長い形状とすることができる。
【0013】
<請求項3の発明>
ケース構成体を分離させれば、流量制御弁のみを外すことができるので、流量に関する規格が異なる複数種類の流量制御弁に対して、ユニットケースを共通化することができる。
【0014】
<請求項4の発明>
ポリアセタール樹脂は剛性が高く自己潤滑性を有しているので、摺動体を安定して摺接させるためのケース構成体の材料として好適である。また、ポリフェニレンスルファイド樹脂は機械的強度と剛性に優れるため、着脱口に嵌合したときにバルブユニットの姿勢と位置を安定させるさせるためのケース構成体の材料として好適である。
【0015】
<請求項5の発明>
蓄圧器から圧送された高圧の洗浄水は、流量制御弁側へ逆流することなく、ジェット用分岐路内へ流入する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1において便器装置の概要をあらわす側面図
【図2】第1バルブ装置、第2バルブ装置及び分岐路ユニットをあらわす背面図
【図3】第1バルブ装置と第2バルブ装置の構造をあらわす断面図
【図4】第2バルブ装置と分岐路ユニットの構造をあらわす断面図
【図5】第1バルブユニットの構造をあらわす断面図
【図6】第2バルブユニットの構造をあらわす断面図
【図7】分岐路ユニットの平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図7を参照して説明する。図1に示すのは、便器本体1と便座装置5とによって構成される便器装置である。便器本体1は便鉢2を有し、便鉢2の上面の開口縁部にはリム3が形成され、便鉢2の底部にはトラップ部に向けて洗浄水を吐出するためのジェットノズル4が設けられている。便座装置5は、便器本体1の後端部に取り付けられるベース部材6と、ベース部材6に揺動可能に支持された便座(図示省略)及び便蓋7を備えている。さらに、便座装置5のベース部材6には、周知構造の局部洗浄装置(図示省略)と、給水用バルブ装置8が設けられている。
【0018】
給水用バルブ装置8は、便器装置の後方に配索された給水路9の下流端に接続され、ジェットノズル4とリム3と局部洗浄装置に洗浄水を供給するものであり、第1バルブ装置Aと第2バルブ装置B(本発明の便器用バルブ装置)と分岐路ユニットCとを備えて構成されている。
【0019】
<第1バルブ装置A>
第1バルブ装置Aは、給水路9の下流端と、ジェット用分岐路61及びリム用分岐路75の上流端との間に配置されている。第1バルブ装置Aは、連通部材10と、第1バルブユニット20とによって構成されている。連通部材10は、合成樹脂製であって、軸線を左右方向(水平方向)に向けた略筒状をなし、その内部は後述するジェット用分岐路61とリム用分岐路75とを連通するための連通路11となっている。
【0020】
連通部材10の左端は奥面壁によって閉塞されており、連通部材10の右端は着脱口12として外部へ開口されている。連通部材10の長さ方向における中央位置には、下面壁から下方へ突出した形態の流入口13が形成され、連通部材10の左側の端部には、上面壁から上方へ突出した形態のジェット用流出口14が形成され、連通部材10の右側の端部には、上面壁から上方へ突出した形態のリム用流出口15が形成されている。
【0021】
また、奥端壁には、斜め左上方へ突出した形態の第3の分岐路16が、連通路11内に連通した形態で形成されている。第3の分岐路16は、便座装置5に設けた局部洗浄装置に洗浄水を供給する。さらに、連通部材10の左側の端部には、下面壁から下方へ突出した形態であって、ジェット用流出口14と同軸状に対応するジェット用連通口17が形成されている。
【0022】
第1バルブユニット20は、図5に示すように、第1逆止弁21とストレーナ26とを一体化させたものである。第1逆止弁21は、筒状流路22と、第1弁体23と、第1復帰バネ24とを備えて構成されている。筒状流路22は、軸線を上下方向に向けており、その上端面(下流側の端面)と下端面(上流側の端面)の双方が開口され、上端面の開口縁は弁シートとなっている。第1弁体23は、筒状流路22内で支持した軸線方向の第1弁杆25の上端に固着され、軸線と直角な水平な円板状をなす。
【0023】
第1逆止弁21は、常には、第1弁体23が第1復帰バネ24の付勢により弁シートに液密状に密着し、図5に示す閉弁状態に保持されているが、第1弁体23に対して上流側(下側)から水圧が付与されると、第1弁体23が第1復帰バネ24に抗して筒状流路22の上方(外方)へ移動し、第1逆止弁21が図3及び図4に示す開弁状態となる。
【0024】
ストレーナ26は、筒状ホルダ27と、濾過網28とを備えて構成されている。筒状ホルダ27は、軸線を上下方向、即ち筒状流路22の軸線と同軸状に向けた状態で、筒状流路22の下端部に組み付けられている。第1バルブユニット20を組み付けた状態では、第1逆止弁21はストレーナ26よりも下流側に配置される。また、筒状ホルダ27の上端からは、筒状流路22の上半分領域と第1弁体23とが突出(露出)した状態となっている。
【0025】
筒状ホルダ27の上端面(下流側の端面)は開口していて、筒状流路22の下端の開口と連通している。筒状ホルダ27の下端は閉塞されている。筒状ホルダ27は、内周側と外周側とを連通させる複数の濾過孔を有しており、筒状ホルダ27の内周面に濾過網28が装着されている。
【0026】
また、筒状流路22の下端部には下向きの凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成され、筒状ホルダ27の上端部には上向きの凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成されており、双方の凸部を交互に嵌合させ、それらの凸部の外周の溝にリング(図示省略)を嵌合することにより、筒状ホルダ27と筒状流路22が同軸状に組み付けられている。したがって、リングを外せば、筒状ホルダ27(ストレーナ26)と筒状流路22(第1逆止弁21)とは簡単に分離させることができる。
【0027】
かかる第1バルブユニット20は、筒状ホルダ27の上端部を連通部材10の流入口13に取り付けた筒状取付部材29内に下から結合することにより、離脱可能に接続されている。筒状取付部材29には接続口30が形成されており、この接続口30には、給水路9の下流端が離脱可能に接続されている。接続口30を通して給水路9から筒状ホルダ27内に流入た水は、濾過網28を通過する際に異物を除去されて浄化され、内筒内を通って第1逆止弁21の筒状流路22内に流入するようになっている。
【0028】
第1バルブユニット20を連通部材10に取り付けた状態では、連通部材10の軸線方向(左右方向)に対して第1バルブユニット20の上下方向の軸線が直交するような位置関係となる。また、筒状流路22の下流端は連通部材10の連通路11に連通し、第1逆止弁21が閉弁しているときには、第1弁体23は連通路11の外(下方)に退避しているが、第1逆止弁21が開弁状態になると、第1弁体23は連通路11内に進出するようになっている。
【0029】
<第2バルブ装置B>
第2バルブ装置Bも、第1バルブ装置Aと同様に、給水路9の下流端と、ジェット用分岐路61及びリム用分岐路75の上流端との間に配置されている。第2バルブ装置Bは、第1バルブ装置Aと共有する部品である連通部材10と、連通部材10内に収容される第2バルブユニット40とを備えて構成されている。
【0030】
図6に示すように、第2バルブユニット40は、ユニットケース41と、リム用流量制御弁47と、ジェット用流量制御弁51と、第2逆止弁53とを備えている。ユニットケース41は、第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bと第3ケース構成体41cとを組み付けて構成され、全体として左右方向に細長い形態、即ち軸線を左右方向に向けた形態である。
【0031】
第1ケース構成体41aは、ポリフェニレンスルファイド樹脂製であって、全体として筒状をなし、左端が開口しているとともに、右端部が蓋部42によって閉塞されている。また、第1ケース構成体41aの周壁には、リム用流出口15に連通する連通孔43が形成されている。第2ケース構成体41bは、ポリアセタール樹脂製であって、全体として左右対称な筒状をなす。第2ケース構成体41bには、その左右両端部を除いた領域を上下方向に貫通させた形態の逃がし孔44が形成されている。この逃がし孔44は、流入口13と対応する大きさであり、第1弁体23の外径よりも大きい。第3ケース構成体41cは、ポリフェニレンスルファイド樹脂製であって、左右方向に貫通した筒状をなす。
【0032】
第1ケース構成体41aの左端部には左方へ突出する凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成され、第2ケース構成体41bの右端部には右方へ突出する凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成されており、双方の凸部を交互に嵌合させ、それらの凸部の外周の溝にリング(図示省略)を嵌合することにより、第1ケース構成体41aの左端部と第2ケース構成体41bの右端部が同軸状に組み付けられている。したがって、リングを外せば、第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bは簡単に分離させることができる。
【0033】
第2ケース構成体41bの左端部には左方へ突出する凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成され、第3ケース構成体41cの右端部には右方へ突出する凸部(図示省略)が周方向に間隔を空けて形成されており、双方の凸部を交互に嵌合させ、それらの凸部の外周の溝にリング(図示省略)を嵌合することにより、第2ケース構成体41bの左端部と第3ケース構成体41cの右端部が同軸状に組み付けられている。したがって、リングを外せば、第2ケース構成体41bと第3ケース構成体41cは簡単に分離させることができる。
【0034】
組み付けられたユニットケース41の内部には、第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bの右端部とにより、逃がし孔44を介して流入口13に連通するとともに、連通孔43を介してリム用流出口15に連通するリム用ケース内流路45が形成されている。また、第2ケース構成体41bの左端部と第3ケース構成体41cとにより、逃がし孔44を介して流入口13に連通するとともに、後述する第2逆止弁53を介してジェット用流出口14に連通するジェット用ケース内流路46が形成されている。リム用ケース内流路45とジェット用ケース内流路46は、同軸状に配置されている。
【0035】
リム用ケース内流路45のうち第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bとの接続部分には、リム用流量制御弁47が設けられている。リム用流量制御弁47は、第1ケース構成体41aの内周に形成した段差部と第2ケース構成体41bの内周に形成したストッパとの間で第2ケース構成体41bの内周に摺接しながら左右方向(軸線方向)に移動する摺動体48と、摺動体48を左方へ付勢した形態であって圧力に応じて流量を制御するための圧縮コイルバネ49と、摺動体48に装着された弾性体50とから構成されている。
【0036】
ジェット用ケース内流路46のうち第2ケース構成体41bと第3ケース構成体41cとの接続部分には、ジェット用流量制御弁51が設けられている。ジェット用流量制御弁51は、第3ケース構成体41cの内周に形成した段差部と第2ケース構成体41bの内周に形成したストッパとの間で第2ケース構成体41bの内周に摺接しながら左右方向(軸線方向)に移動する摺動体48と、摺動体48を右方へ付勢した形態であって、圧力に応じて流量を制御するための圧縮コイルバネ49と、摺動体48に装着された弾性体50とから構成されている。
【0037】
リム用流量制御弁47の弾性体50とジェット用流量制御弁51の弾性体50は、いずれも、摺動体48に形成した流路に臨むように配置されており、流入口13から流入した水の圧力に応じて弾性変形することにより、摺動体48の流路を広げたり狭めたりするようになっている。水圧に応じて摺動体48が移動するとともに弾性体50が弾性変形することにより、リム用流量制御弁47を通過する水の流量とジェット用流量制御弁51を通過する水の流量がほぼ一定となる。
【0038】
また、リム用流量制御弁47の摺動体48と圧縮コイルバネ49は、第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bとの間で左右から挟まれるように組み付けられている。したがって、第1ケース構成体41aと第2ケース構成体41bを左右に離間させるように分離すれば、リム用流量制御弁47を外すことができる。同様に、ジェット用流量制御弁51の摺動体48と圧縮コイルバネ49は、第2ケース構成体41bと第3ケース構成体41cとの間で左右から挟まれるように取り付けられているので、第2ケース構成体41bと第3ケース構成体41cを左右に離間させるように分離すれば、ジェット用流量制御弁51を外すことができる。
【0039】
かかる第2バルブユニット40は、連通部材10に対し、その右方からケース内流路45,46の軸線方向(即ち、ユニットケース41の軸線方向)と平行に着脱口12内に差し込むことによって連通路11内に収容される。第2バルブユニット40を連通部材10内に収容した状態では、第1ケース構成体41aの外周と第3ケース構成体41cの外周が連通路11の内周に嵌合するとともに、蓋部42が着脱口12を閉塞する。逃がし孔44が流入口13と対応し、連通孔43がリム用流出口15と対応する。
【0040】
第2バルブユニット40の左端(第3ケース構成体41cの左端)は、ジェット用流出口14及びジェット用連通口17の右方近傍に位置し、ジェット用流出口14とジェット用連通口17とが直接対向する状態となる。また、第2バルブユニット40を連通部材10から外すときには、取付け時とは逆に、第2バルブユニット40をその軸線方向に沿って右方へ移動させ、着脱口12から抜き取ればよい。
【0041】
連通部材10のジェット用連通口17には、後述するジェット用分岐路61に高圧の洗浄水を圧送するための手段として、蓄圧器52が接続されている。蓄圧器52は、給水路9に供給される水道圧が低い場合にオプションとして連通部材10に取り付けられる。また、水道圧が異なる場合には、第2バルブユニット40に設けた流量制御弁47,51に要求される流量特性も異なるため、蓄圧器52をオプションとして取り付ける場合には、第2バルブユニット40も所定の流量特性を有する流量制御弁47,51を備えた別の第2バルブユニット40に交換される。
【0042】
後述するジェット用開閉弁74が閉弁している状態では、ジェット用連通口17から蓄圧器52内に高圧の水が貯留されており、ジェット用開閉弁74が開弁すると、ジェット用分岐路16内の水圧が低下するのに伴い、蓄圧器52内の高圧の水がジェット用分岐路16内に圧送される。
【0043】
また、ジェット用開閉弁74が閉弁している状態でリム用開閉弁78が開弁した場合、連通路11内の水圧が低下するのに伴って蓄圧器52内の高圧の水がリム用分岐路75側へ流出することが懸念される。その対策として、蓄圧器52を取り付けた場合には、第2バルブユニット40の左端部には第2逆止弁53(本発明の構成要件である逆止弁)が取り付けられる。
【0044】
第2逆止弁53は、ジェット用流出口14と蓄圧器52に連通しており、第3ケース構成体41cの左端の開口に取り付けられる支持部材54と、支持部材54に左右方向の移動可能に支持した第2弁体55と、第2弁体55を第3ケース構成体41cの内周に形成したシート面に密着させる方向へ付勢する第2復帰バネ56とを備えて構成されている。支持部材54には、水の通過を許容する通水孔(図示省略)が形成されいる。第2逆止弁53は、常には、第2復帰バネ56の付勢により閉弁状態に保持されているが、ジェット用ケース内流路46側(上流側)から第2弁体55に対して水圧が作用すると、第2復帰バネ56の付勢に抗して開弁するようになっている。
【0045】
<分岐路ユニットC>
分岐路ユニットCは、第1バルブ装置Aよりも下流側に配置され、連通部材10、第2バルブユニット40、蓄圧器52、第3の分岐路16、ジェット用分岐路61、リム用分岐路75、ジェット用電動開閉弁装置66及びリム用電動開閉弁装置77とを備えて構成されている。連通部材10、第2バルブユニット40、蓄圧器52、第3の分岐路16については、上記第1バルブ装置A又は第2バルブ装置Bと供給する部品であるため、説明は省略する。
【0046】
図4に示すように、ジェット用分岐路61は、全体として軸線を上下方向(即ち、連通部材10の軸線と直角であり、第1バルブユニット20の軸線と平行な方向)に向けた筒状をなす。ジェット用分岐路61は、その下端部(上流端部)をジェット用流出口14に対して上から嵌合させるようにして連通部材10に取り付けられている。ジェット用分岐路61の下流端部(上端部)には、大気開放弁80を介してジェット用配管62の上流端が接続され、ジェット用配管62の下流端がジェットノズル4に接続されている。また、ジェット用分岐路61は、連通部材10から離脱することが可能となっている。ジェット用分岐路61の下端部には、その外周面に開口する弁口63が形成され、ジェット用分岐路61の内部のうち弁口63よりも上流側が一次側流路64となっているとともに、弁口63よりも下流側が二次側流路65となっている。
【0047】
ジェット用電動開閉弁装置66は、ジェット用分岐路61の外周に取り付けられて弁口63を覆うケーシング67と、ケーシング67内に設けられて弁口63を開閉するダイヤフラム板68と、ケーシング67内におけるダイヤフラム板68の上方に設けられたソレノイド69とを備えて構成されている。ケーシング67内には、ダイヤフラム板68を挟んで弁口63とは反対側に位置し、ダイヤフラム板68内に形成したオリフィスを介して一次側流路64に連通する圧力室70が形成されている。
【0048】
ダイヤフラム板68には、弁口63が開弁した状態においてダイヤフラム板68を閉弁方向へ付勢する復動バネ71が取り付けられている。また、ケーシング67には、圧力室70と二次側流路65を連通させるパイロット流路72が形成されている。パイロット流路72の途中には、常には閉弁状態に保たれ、ソレノイド69への通電により開弁するパイロット弁73が設けられている。以上により、ジェット用開閉弁74が構成されている。
【0049】
ダイヤフラム板68において圧力室70に臨む受圧面積は、弁口63において二次側流路65に臨む受圧面積よりも大きく、圧力室70は、オリフィスを介して一次側流路64と同じ高圧状態となっているので、パイロット弁73が閉弁されているときには、弁口63がダイヤフラム板68で閉塞されて、ジェット用開閉弁74は閉弁状態に保たれる。閉弁状態において、ソレノイド69に通電してパイロット弁73を開弁させると、圧力室70内の水がパイロット流路72を通って二次側流路65内に流出して、圧力室70内の圧力が一次側流路64よりも低くなり、ダイヤフラム板68の外周縁に作用する一次流路側からの圧力により、ダイヤフラム板68が弁口63から離間してジェット用開閉弁74が開弁する。
【0050】
開弁状態において、パイロット弁73を閉弁すると、圧力室70内の圧力が上昇するので、ダイヤフラム板68が復動バネ71の付勢により弁口63側へ移動する。すると、弁口63の開度が小さくなって二次側流路65内の圧力が低下するので、ダイヤフラム板68に作用する一次側と二次側の圧力差が拡大し、ダイヤフラム板68が弁口63を閉じて閉弁状態となる。
【0051】
リム用分岐路75は、全体として軸線を上下方向(即ち、連通部材10の軸線と直角であり、第1バルブユニット20の軸線と平行な方向)に向けた筒状をなす。リム用分岐路75は、その下端部(上流端部)をリム用流出口15に対して上から嵌合させるようにして連通部材10に取り付けられている。リム用分岐路75の下流端部(上端部)には、大気開放弁81を介してリム用配管76の上流端が接続され、リム用配管76の下流端がリム3に接続されている。また、リム用分岐路75は、連通部材10から離脱することが可能となっている。リム用分岐路75の下端部には、その外周面に開口する弁口63が形成され、リム用分岐路75の内部のうち弁口63よりも上流側が一次側流路64となっているとともに、弁口63よりも下流側が二次側流路65となっている。
【0052】
リム用電動開閉弁装置77は、リム用分岐路75の外周に取り付けられて弁口63を覆うケーシング67と、ケーシング67内に設けられて弁口63を開閉するダイヤフラム板68と、ケーシング67内におけるダイヤフラム板68の上方に設けられたソレノイド69とを備えて構成されている。このリム用電動開閉弁装置77とリム用分岐路75とにより、リム用開閉弁78が構成されている。尚、リム用電動開閉弁装置77の構造、構成、機能、開閉動作等は、ジェット用電動開閉弁装置66と同じであり、また、リム用開閉弁78についてもジェット用開閉弁74と同じであるため、説明は省略する。
【0053】
次に、ジェット用分岐路61、リム用分岐路75、ジェット用電動開閉弁装置66及びリム用電動開閉弁装置77の配置について説明する。図7に示すように、ジェット用分岐路61、リム用分岐路75、ジェット用電動開閉弁装置66及びリム用電動開閉弁装置77は、1つの仮想平面79に沿うように配置されている。この仮想平面79は、上下方向及び左右方向に拡がる仮想的な平面であり、ジェット用分岐路61の軸線とリム用分岐路75の軸線は、いずれも、仮想平面79内に位置する。そして、ジェット用分岐路61とリム用分岐路75は、左右に並ぶように互いに平行に配置されている。また、第3の分岐路16も、この仮想平面79に沿うように配置されている。
【0054】
ジェット用分岐路61の上流端とリム用分岐路75の上流端とを連通する連通部材10は、その内部に機能部材として第2バルブユニット40を収容するようになっているため、左右方向に所定の長さを有する。これにより、ジェット用分岐路61とリム用分岐路75との間には、連通部材10の上方に配されて、連通部材10の長さに対応する十分な幅寸法を有するスペースが確保されている。そして、このスペース内には、ジェット用電動開閉弁装置66とリム用電動開閉弁装置77が配置されている。また、両電動開閉弁装置66,77の前後寸法は、両分岐路61,75の前後寸法よりも小さいので、前後方向において両電動開閉弁装置66,77が分岐路61,75の前方や後方へはみ出してはいない。つまり、電動開閉弁装置66,77は、前後方向において分岐路61,75の配置領域の範囲内に収まっている。
【0055】
便器本体1の便鉢2を洗浄する際には、リモコン操作などによって洗浄を指令する信号が便座装置5の回路基板(図示省略)に入力されると、まず、リム用開閉弁78が開弁し、給水路9、ストレーナ26、第1逆止弁21、リム用流量制御弁47、リム用ケース内流路45、リム用分岐路75、リム用配管76を順に通った洗浄水が、リム3に供給され、リム3から便鉢2の内壁に沿って洗浄水が流し込まれる。
【0056】
この後、リム用開閉弁78が閉弁し、その直後に、ジェット用開閉弁74が開弁し、給水路9、ストレーナ26、第1逆止弁21、ジェット用流量制御弁51、ジェット用ケース内流路46、第2逆止弁53、ジェット用分岐路61、ジェット用配管62を順に通った洗浄水が、ジェットノズル4に供給され、ジェットノズル4から便鉢2のトラップ部に向けて高圧の洗浄水が吐出される。また、これと同時に、蓄圧器52に貯留されていた高圧の洗浄水が、ジェット用ケース内流路46からジェット用分岐路61に流入する洗浄水と合流し、ジェットノズル4に供給される洗浄水の圧力が増強される。
【0057】
<実施形態の作用及び効果>
本実施形態では、第1バルブ装置Aを構成する第1バルブユニット20が、第1逆止弁21とストレーナ26とを一体化させた形態としている。したがって、第1逆止弁21とストレーナ26を同時にメンテナンスしようとした場合には、第1逆止弁21とストレーナ26を外す作業及び取り付ける作業を、夫々、ワンアクションで行うことがで、作業性に優れる。
【0058】
また、第1逆止弁21をストレーナ26よりも下流側に配置したので、第1逆止弁21における異物の噛み込みが生じ難い。
また、第1逆止弁21とストレーナ26を分離することにより、第1逆止弁21のメンテナンスとストレーナ26のメンテナンスを個別に行うことができるので、作業性がよい。
【0059】
また、第1逆止弁21が開弁したときには、第1弁体23が連通路11内へ移動するが、この第1弁体23の移動方向(上下方向)は連通路11の長さ方向(左右方向)と交差する方向なので、連通路11内における流路は、第1弁体23によって著しく狭められることはない。したがって、第1逆止弁21からジェット用分岐路61やリム用分岐路75に至る洗浄水の流量を大きく確保できる。
【0060】
第2バルブ装置Bは、定流量弁又は定圧弁等として機能する流量制御弁47,51を備える第2バルブユニット40を連通部材10内に収容して構成され、第2バルブユニット40は着脱口12において連通部材10に対して抜き挿しされる。ここで、着脱口12は、給水路9に連通する流入口13及び分岐路61,75に連通する流出口14,15とは異なる位置に形成されているので、流量制御弁47,51を外す際には、着脱口12において第2バルブユニット40を連通部材10外へ抜き取るだけでよい。つまり、給水路9と分岐路61,75とを分離させるといった面倒な作業が不要となるので、作業性に優れている。
【0061】
また、第2バルブユニット40のジェット用ケース内流路46とリム用ケース内流路45は、その流動方向に沿った軸線が同軸状に並ぶように配置されており、その軸線方向に沿った並び方向は、連通部材10に対する第2バルブユニット40の抜き挿し方向と平行な方向となっている。したがって、第2バルブユニット40は抜き挿し方向に沿った細長い形状とすることができる。
【0062】
また、ユニットケース41は、流量制御弁47,51の着脱が可能な形態に分離される第1〜第3ケース構成体41a,41b,41cを組み付けて構成されているので、これらのケース構成体41a,41b,41cを分離させれば、流量制御弁47,51のみを外すことができる。これにより、流量に関する規格が異なる複数種類の流量制御弁47,51に対して、ユニットケース41を共通化することができる。
【0063】
また、流量制御弁47,51は移動可能な摺動体48を備えているという点に鑑み、摺動体48が摺接する第2ケース構成体41bをポリアセタール樹脂製とした。ポリアセタール樹脂は剛性が高く自己潤滑性を有しているので、摺動体48を安定して摺接させるためのケース構成体の材料として好適である。
一方、着脱口12に嵌合される第1ケース構成体41aをポリフェニレンスルファイド樹脂製としたが、ポリフェニレンスルファイド樹脂は機械的強度と剛性に優れるため、着脱口12に嵌合したときに第2バルブユニット40の姿勢と位置を安定させるさせる第1ケース構成体41aの材料として好適である。
【0064】
また、連通部材10に、ジェット用分岐路61に高圧の洗浄水を圧送するための蓄圧器52が接続されていることに鑑み、第2バルブユニット40には、蓄圧器52とジェット用分岐路61とに連通するように第2逆止弁53を設けた。これにより、蓄圧器52から圧送された高圧の洗浄水は、ジェット用流量制御弁51側へ逆流することなく、ジェット用分岐路61内へ確実に流入する。
【0065】
本実施形態の分岐路ユニットCでは、ジェット用分岐路61、リム用分岐路75、ジェット用電動開閉弁装置66及びリム用電動開閉弁装置77の全てが、1つの仮想平面79に沿うように配置されている。したがって、分岐路ユニットCは、仮想平面79と直交する前後方向における寸法が小さく抑えられ、分岐路ユニットCを狭い空間内にも配置することが実現されている。
【0066】
また、ジェット用分岐路61とリム用分岐路75とを連通させる連通部材10は、内部に第2バルブユニット40を収容するための長さを有するので、両分岐路61,75の間には、連通部材10と対応するスペースが確保されている。この点に着目し、連通部材10と対応するスペースを、両電動開閉弁装置66,77を配置するためのスペースとして有効利用した。
【0067】
また、ジェット用分岐路61は連通部材10に対して分離できるようになっており、また、リム用分岐路75も連通部材10に対して分離できるようになっている。このように、分岐路61,75と連通部材10を分離するようにしたことにより、各分岐路61,75のメンテナンスや連通部材10のメンテナンスの作業が行い易くなっている。
【0068】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では1つの第2バルブユニットに2つの流量制御弁を収容したが、1つの第2バルブユニットに設ける流量制御弁の数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
(2)複数のケース内流路は、その流動方向に沿った軸線が互いに平行に並ぶような配置や、軸線が互いに異なる方向を向くような配置であってもよい。
(3)連通部材に対する第2バルブユニットの抜き挿し方向は、ケース内流路の軸線に対して直角の方向又は斜めの方向であってもよい。
(4)第2バルブユニットは、流量制御弁をユニットケースに対して着脱できない形態であってもよい。
(5)流量制御弁は、流量を低下させる方向へ付勢するための圧縮コイルバネを備えていない形態であってもよい。
(6)上記実施形態では蓄圧器を設けたが、蓄圧器を設けない形態であってもよい。この場合、第2バルブユニットには第2逆止弁を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0069】
B…第2バルブ装置(便器用バルブ装置)
1…便器本体
9…給水路
10…連通部材
12…着脱口
13…流入口
14…ジェット用流出口
15…リム用流出口
40…第2バルブユニット
41…ユニットケース
41a,41b,41c…ケース構成体
45…リム用ケース内流路
46…ジェット用ケース内流路
47…リム用流量制御弁
48…摺動体
51…ジェット用流量制御弁
52…蓄圧器
53…第2逆止弁
61…ジェット用分岐路
75…リム用分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路と、下流端が便器本体に接続された複数の分岐路との間に配置される便器用バルブ装置であって、
連通部材内にバルブユニットを収容して構成され、
前記連通部材は、
前記給水路に連通する流入口と、
前記複数の分岐路に個別に連通する複数の流出口と、
前記流入口及び前記流出口とは異なる位置に開口する着脱口とを有し、
前記バルブユニットは、
前記流入口と前記流出口とを連通させるケース内流路を有し、前記着脱口において前記連通部材に対する抜き挿しが可能なユニットケースと、
前記ケース内流路に配置され、前記ケース内流路における洗浄水の流量を調整する流量制御弁とを備えていることを特徴とする便器用バルブ装置。
【請求項2】
前記ユニットケース内には、複数の前記ケース内流路と複数の前記流量制御弁とが設けられ、
前記複数のケース内流路は、その流動方向に沿った軸線が同軸状に並ぶように配置され、
前記バルブユニットは、前記連通部材に対し前記ケース内流路の軸線と平行に抜き挿しされるようになっていることを特徴とする請求項1記載の便器用バルブ装置。
【請求項3】
前記ユニットケースは、前記流量制御弁の着脱が可能な形態に分離される複数のケース構成体を組み付けて構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の便器用バルブ装置。
【請求項4】
前記流量制御弁は、移動可能な摺動体を備えており、
前記複数のケース構成体のうち前記摺動体が摺接するケース構成体を、ポリアセタール樹脂製とし、
前記複数のケース構成体のうち前記着脱口に嵌合されるケース構成体を、ポリフェニレンスルファイド樹脂製としたことを特徴とする請求項3記載の便器用バルブ装置。
【請求項5】
前記複数の分岐路のうちのいずれか1つは、前記便器本体の便鉢の底部に設けたジェットノズルに接続されるジェット用分岐路となっており、
前記連通部材には、前記ジェット用分岐路に高圧の洗浄水を圧送するための蓄圧器が接続されており、
前記バルブユニットには、前記蓄圧器と前記ジェット用分岐路とに連通するように配置され、前記流量制御弁側への逆流を防止する逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の便器用バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−203061(P2010−203061A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46750(P2009−46750)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】