説明

便器装置

【課題】 便器と便座装置との間の通信に搬送波にパルス列を重畳した無線信号を用いる便器装置において、受信部における無線信号の受信状態が良好か否かを判定することができる便器装置を提供する。
【解決手段】 送信側に無線信号を送信する送信部3を備え、受信側に前記無線信号を受信して電気信号に変換する受信部41と、前記電気信号を濾波する濾波部42と、波形整形する波形整形部43と、積分する積分部44と、閾値と比較して閾値より高い場合にパルスを出力する比較出力部45を備え、前記比較出力部45から出力されるパルス列からなる復元信号に応じて所定の動作を行う。送信部3から送信された所定幅のパルスを受信部41にて受信した際に比較出力部45から出力されるパルス幅により受信部41における受信状態を判定する判定部46を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器と便座装置との間の通信に搬送波にパルス列を重畳した無線信号を用いる便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器洗浄手段と便座装置とを備えた便器装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この従来例にあっては、便器洗浄手段と便座装置とが一つの装置ブロックとして便器に組み込まれており、この一つの装置ブロックに着座・離座検出手段を設けると共に制御部を設け、着座・離座検出手段による着座・離座を検出し、この検出結果に基づいて制御部により局部洗浄手段の制御と便器洗浄手段の制御を行っている。
【0003】
上記従来例にあっては、便器洗浄手段と便座装置とが一つの装置ブロックとして便器に組み込まれているため、便座装置のみを形状や色や機能の異なる他の便座装置と交換しようとしても不可能で、多様な顧客のニーズに対応できないという問題があり、また、便座装置は汚れやすいので取り外して掃除したりする場合、便座装置部分を取り外して簡単に掃除することができない、といった問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、便器洗浄手段を備えた便器に、これとは別体の着座・離座検出手段を備えた便座装置を取付け、便座装置と便器洗浄手段を備えた便器とを配線で接続し、便座装置に設けた着座・離座検出手段により検出したデータに基づき便器に設けた便器洗浄手段を制御することが考えられるが、この場合、便座装置と便器洗浄手段を備えた便器とを配線で接続してあるので、施工時に、便器洗浄手段を備えた便器と便座装置とを配線で接続する作業が必要であり、また、掃除をする際、上記接続するための配線が邪魔になるという問題があり、更に、水を使用するという便器装置の性質上、上記接続のための配線を伝って水が制御部に浸入するおそれあるので、制御部が絶縁構造でなければ有線化できないものであり、配線の接続部分を含めて防水構造が複雑となる、といった問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、便器と便座装置とを配線で接続するのではなく、便器と便座装置との間の通信に例えば赤外線等の無線信号を用いることが考えられるようになった。
【0006】
便器と便座装置との間の通信に無線信号を用いるにあたっては、無線信号として搬送波にパルス列を重畳したものを用いることが考えられる。この場合、例えば便座装置に無線信号を送信する送信部を設け、便器に無線信号を受信して電気信号に変換する受信部を備え、変換した電気信号を処理してパルス列からなる復元信号を生成し、この復元信号のパルス幅(又はパルス間隔)の長短を1ビットの情報に対応させて復元信号の情報を読み取って所定の動作を行うようにするものである。ここで、受信部にて変換した電気信号を処理してパルス列からなる復元信号を生成する過程について説明する。
【0007】
受信部にて変換した電気信号は、濾波部にて搬送波の周波数成分のみが抽出される。濾波部からの出力信号は、積分回路と比較器とで主体が構成される波形整形部にて波形整形された後、積分部にて積分される。積分部からの出力信号は、比較出力部にて閾値と比較されて、閾値より高い場合にパルスが発生して前記パルス列からなる復元信号が出力されるようになっている。
【0008】
ところで、受信部にて受信された無線信号はその受信強度に応じた大きさの電気信号に変換され、以降の濾波部、波形整形部を経由して積分部から出力される出力信号も前記受信強度に応じた大きさとなるが、この積分部からの出力信号が比較出力部にて処理されることで復元信号として出力されてその情報を読み取る際、復元信号のパルス幅(又はパルス間隔)が所定値よりも長いか短いかのみを1ビットの情報に対応させるため、積分部からの出力信号の大きさ(即ち受信部にて受信された無線信号の大きさ)は直接的には分からないものである。
【0009】
このため、便器装置が正常に動作していても、受信部にて受信されている無線信号の受信強度が便器装置が正常な動作をするための必要最小限程度なのか、あるいは受信強度がもっと強くて良好なのかが判定できず、必要最小限程度の場合、受信部の経年劣化や電池の消耗によって使用開始後まもなく便器と便座装置との間の通信が不可能となる惧れがあった。
【特許文献1】特開平9−195356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、便器と便座装置との間の通信に搬送波にパルス列を重畳した無線信号を用いる便器装置において、受信部における無線信号の受信状態が良好か否かを判定することができる便器装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、便器1側と便座装置2側との間の通信に搬送波にパルス列を重畳した無線信号を用いる便器装置であって、送信側に前記無線信号を送信する送信部3を備えると共に、受信側に無線信号を受信して電気信号に変換する受信部41と、前記電気信号を濾波する濾波部42と、濾波部42からの出力信号を波形整形する波形整形部43と、波形整形部43からの出力信号を積分する積分部44と、積分部44からの出力信号を閾値と比較して閾値より高い場合にパルスを出力する比較出力部45を備え、前記比較出力部45から出力されるパルス列からなる復元信号に応じて所定の動作を行う便器装置において、送信部3から送信された所定幅のパルスを受信部41にて受信した際に比較出力部45から出力されるパルス幅により受信部41における受信状態を判定する判定部46を設けて成ることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、受信部41における無線信号の受信状態を判定部46によって判定することが可能となる。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、送信部3から送信された所定幅のパルスを受信部41にて受信した際に比較出力部45から出力されるパルス幅が設定値より長い時に受信状態が良好であると判定すると共に設定値より短い時に受信状態が良好でないと判定する判定部46を設けて成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、受信部41における無線信号の受信状態が良好であるか否かを判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、受信部における無線信号の受信状態を判定部によって判定することが可能となり、受信状態が良好でない場合にはこれを検知して受信状態を良好にすることができて、受信部の経年劣化や電池の消耗によって使用開始後まもなく便器と便座装置との間の通信が不可能となるといったことを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明の便器装置は、便器洗浄手段11を備えた便器1と、便器1のリム上に載置されて使用者が着座する便座装置2とで主体が構成される。
【0016】
便器1は、図2に示すように、便器本体10にそのボウル部10aを水で洗浄するための便器洗浄手段11を内装したもので、本実施形態では便器洗浄手段11としてターントラップ11aを便器本体10の後部に内装しており、便器本体10の後部上面には便器制御部ケース12が設けてある。便器制御部ケース12内にはターントラップ11aを駆動するための便器側制御部13が収納されると共に、後述する無線信号を受信するための受信部41が配設してある。
【0017】
便座装置2は、使用者の局部を洗浄するための局部洗浄手段、局部を洗浄した後に送風して使用者の局部を乾燥させるための乾燥手段、便器1内の脱臭を行うための脱臭手段等の便座側機能部(図示せず)と、前記便座側機能部を制御するための便座側制御部21、使用者が便座側制御部21に指令を入力するための操作部22、無線信号を便器1側へ送信するための送信部3、便座への着座・離座を検出するための着座・離座検出手段(図示せず)が設けてある。
【0018】
便器装置の制御動作の一例を説明する。まず、使用者が便座装置2の便座に着座すると、着座・離座検出手段により着座が検出され、着座後離座すると離座が検出される。着座・離座検出手段により着座、離座が検出されると、便座側制御部21に着座信号や離座信号が入力され、この着座信号や離座信号により便座側制御部21により複数の便座側機能部のうち一つ又は複数が制御される。例えば、着座信号が入力されると便座側機能部の一つである脱臭手段がオンとなって脱臭を開始し、その後、離座信号が入力されると、離座信号の入力後一定時間経過後に脱臭手段がオフとなるように制御される。また、着座信号が入力されると使用者の局部を洗浄するための局部洗浄手段の動作受け付け可能モードとなり、その後、離座信号が入力されると局部洗浄手段の動作受け付け可能モードが終了するように制御されるものであり、便座制御部ケースに設けた操作部22より指令を入力すると、便座側制御部21により上記動作受け付け可能モードの間だけ(つまり着座している期間だけ)局部洗浄手段を動作させるように制御し、上記動作受け付け可能モードでない時(つまり着座していない時)は局部洗浄手段を動作させないようになっている。これにより着座していない時に誤って局部洗浄手段が動作して温水のような洗浄水を誤噴出することがないようにしている。
【0019】
また、使用者が着座後離座して着座・離座検出手段により着座、離座が検出されると、便座側制御部21の送信部3から無線信号が送信されて便器1の受信部41にて受信され、便器洗浄手段11が作動して便器洗浄が自動で行われる。なお、便座装置2の操作部22より使用者が便器洗浄指令を自分で入力することでも、便座側制御部21の送信部3から無線信号が送信されて便器1の受信部41にて受信され、便器洗浄手段11が作動して便器洗浄が行われる。このように、便器1側と便座装置2側との間の通信を無線信号で行っており、以下に無線信号による通信について説明する。
【0020】
本実施形態では、無線信号は例えばキャリア周波数が38kHzの赤外線からなるキャリアを用い、キャリアのパルス幅又はパルス間隔の長・短を1ビットの情報に対応させ、前記パルス列によって所定の情報をのせている。便座装置2側の送信部3からは、前記無線信号が便器1側の受信部41に向けて送信される。
【0021】
便器1側には、図1に示すように、無線信号を受信して電気信号に変換する受信部41と、前記電気信号を濾波する濾波部42と、濾波部42からの出力信号を波形整形する波形整形部43と、波形整形部43からの出力信号を積分する積分部44と、積分部44からの出力信号を閾値と比較して閾値より高い場合にパルスを出力する比較出力部45を備えている。
【0022】
受信部41は、例えばフォトトランジスタやフォトダイオードからなり、受信した無線信号の受信強度に応じて電気信号を出力する。濾波部42は帯域フィルターからなり、受信した電気信号のキャリア周波数成分を抽出して出力する。波形整形部43は、積分回路と比較器とで主体が構成され、濾波部42からの出力信号を積分回路にて積分して平均値を求めると共に、前記平均値と濾波部42からの出力信号とを比較器にて比較して濾波部42からの出力信号が大きい時にこれを出力する。積分部44は、前記波形整形部43からの出力信号を積分してその値を出力する。比較出力部45は、前記積分部44からの出力信号を閾値と比較し、閾値より高い場合にハイレベルの電圧を出力すると共に閾値より低い場合にローレベルの電圧を出力し、これにより矩形状のパルス列からなる復元信号が出力される。そして、便器側制御部13において復元信号の情報を読み取って所定の動作を行うものである。
【0023】
更に本発明では、受信部41における無線信号の受信状態が良好か否かを判定する判定部46が便器側制御部13に設けてある。
【0024】
受信部41にて受信された無線信号は、その受信強度に応じた大きさの電気信号に変換され、以降の濾波部42、波形整形部43を経由して積分部44から出力される出力信号も前記受信強度に応じた大きさとなる。すなわち、受信状態が良好でない場合、受信部41から出力される電気信号、波形整形部43から出力される出力信号、積分部44から出力される出力信号、はそれぞれ図3(a)、図4(a)、図5(a)に示すような大きさとなり、受信状態が良好である場合、受信部41から出力される電気信号、波形整形部43から出力される出力信号、積分部44から出力される出力信号、はそれぞれ図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すような大きさとなる。
【0025】
そして、積分部44からの出力信号は比較出力部45にて閾値(図5の破線のレベル)と比較され、閾値より高い場合にハイレベルの電圧を出力し、閾値より低い場合にローレベルの電圧を出力して矩形状のパルスが出力される。図6(a)に、受信状態が良好でない場合に図5(a)に示す出力信号が比較出力部45に入力された時に比較出力部45から出力される復元信号を示し、図6(b)に、受信状態が良好である場合に図5(b)に示す出力信号が比較出力部45に入力された時に比較出力部45から出力される復元信号を示す。この時、図6(a)のt1<図6(b)のt2となり、受信部41にて受信された無線信号の受信強度が強いと、比較出力部45より出力されるパルスのパルス幅が長くなることが分かる。そこで判定部46では、前記比較出力部45より出力されるパルスのパルス幅を計測し、その結果により受信部41における受信状態を判定している。特に本実施形態では、比較出力部45から出力されるパルス幅が設定値より長い時に受信状態が良好であると判定し、設定値より短い時に受信状態が良好でないと判定している。
【0026】
これにより、受信部41における無線信号の受信状態を判定部46によって判定することが可能となり、受信状態が良好でない場合には、これを検知して受信部41と送信部3の向きを修正する等することで受信状態を良好にすることができて、受信部41の経年劣化や電池の消耗によって使用開始後まもなく便器1と便座装置2との間の通信が不可能となるといったことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の受信側の構成図である。
【図2】便座装置の全体断面図である。
【図3】無線信号を受信した受信部から出力される電気信号であり、(a)は受信状態が良好でない場合を示し、(b)は受信状態が良好である場合を示す。
【図4】波形整形部から出力される出力信号であり、(a)は受信状態が良好でない場合を示し、(b)は受信状態が良好である場合を示す。
【図5】積分部から出力される出力信号であり、(a)は受信状態が良好でない場合を示し、(b)は受信状態が良好である場合を示す。
【図6】比較出力部から出力される出力信号であり、(a)は受信状態が良好でない場合を示し、(b)は受信状態が良好である場合を示す。
【符号の説明】
【0028】
1 便器
2 便座装置
3 送信部
41 受信部
42 濾波部
43 波形整形部
44 積分部
45 比較出力部
46 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器側と便座装置側との間の通信に搬送波にパルス列を重畳した無線信号を用いる便器装置であって、送信側に前記無線信号を送信する送信部を備えると共に、受信側に無線信号を受信して電気信号に変換する受信部と、前記電気信号を濾波する濾波部と、濾波部からの出力信号を波形整形する波形整形部と、波形整形部からの出力信号を積分する積分部と、積分部からの出力信号を閾値と比較して閾値より高い場合にパルスを出力する比較出力部を備え、前記比較出力部から出力されるパルス列からなる復元信号に応じて所定の動作を行う便器装置において、送信部から送信された所定幅のパルスを受信部にて受信した際に比較出力部から出力されるパルス幅により受信部における受信状態を判定する判定部を設けて成ることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
送信部から送信された所定幅のパルスを受信部にて受信した際に比較出力部から出力されるパルス幅が設定値より長い時に受信状態が良好であると判定すると共に設定値より短い時に受信状態が良好でないと判定する判定部を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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