説明

便器装置

【課題】洗浄水の流量が変動しても、所定量の給水が行われる便器装置を提供する。
【解決手段】ボウル内に洗浄水を供給する洗浄水供給手段2と、下流端が回動自在なトラップ部とその駆動手段4と、制御部5と、を備える。下流端が上位置に位置してボウル内に溜水が貯留され、下流端が下位置に位置することで溜水が排出される。下流端が上位置から下位置へ移動する排出動作と、下位置から上位置へ移動する復元動作とが所定の動作で行われる。ボウル内に供給される洗浄水の単位時間当りの流量を検出する流量検出手段6と、計時手段7と、単位時間当りの流量と時間とから積算流量を算出する積算流量算出手段8と、が設けられる。下流端の動作の開始時点または終了時点からの時間と、その間の流量とから、洗浄水の供給量が算出され、所定の値に達すると洗浄水の供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在なトラップ部を備えた便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボウル内に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、ボウル内に連通し下流端が上下方向に回動自在なトラップ部と、を備えた便器装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この便器装置では、トラップ部の下流端が上位置に位置している時にボウル内に溜水が貯留され、下流端が下位置に位置することでボウル内の溜水と汚物が排出される。そして、トラップ部の下流端が下位置から上位置へ戻り、再びボウル内に溜水が貯留されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−47717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の便器装置においては、再びボウル内に溜水が貯留されるにあたり、洗浄水供給手段からボウル内に洗浄水が供給されるのであるが、この時、洗浄水が供給されている時間を計測し、その供給時間が所定の値に達すると洗浄水の供給が停止されるものであった。
【0006】
このため、洗浄水の元圧が変動したりして流量が変動した場合、供給時間が所定の値に達しても設計上の所定量の給水が行われず、溜水が不足したり、無駄に給水されたりする惧れがあった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、洗浄水の流量が変動しても、所定量の給水が行われる便器装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0009】
本発明の便器装置は、ボウル内に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記ボウル内に連通するように設けられ下流端が上下方向に回動自在なトラップ部と、前記トラップ部を駆動する駆動手段と、前記洗浄水供給手段と前記駆動手段とを制御する制御部と、を備え、前記トラップ部の前記下流端が上位置に位置することで前記ボウル内に溜水が貯留され、前記トラップ部の前記下流端が下位置に位置することで前記ボウル内の溜水が排出され、前記トラップ部の前記下流端が前記上位置から前記下位置へ移動する排出動作と前記下位置から前記上位置へ移動する復元動作とが所定の動作で行われる便器装置であって、前記洗浄水供給手段により前記ボウル内に供給される洗浄水の単位時間当りの流量を検出する流量検出手段と、計時手段と、単位時間当りの流量と時間とから積算流量を算出する積算流量算出手段と、が設けられ、前記下流端の動作の開始時点または終了時点から前記計時手段により計時された時間と、その間の前記流量検出手段により検知された流量とに基づいて前記積算流量算出手段により洗浄水の供給量が算出され、前記制御部は、算出された前記供給量が所定の値に達すると前記洗浄水供給手段による洗浄水の供給を停止することを特徴とする。
【0010】
本発明の便器装置では、前記下流端の動作が排出動作であることが好ましい。
【0011】
本発明の便器装置では、前記下流端の動作が復元動作であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の便器装置にあっては、洗浄水の流量が変動しても、所定量の給水が行われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における洗浄動作のタイムチャートである。
【図2】同上において、トラップ部の下端部が各位置にある場合を示し、(a)は上位置にある場合の断面図であり、(b)は上上位置にある場合の断面図であり、(c)は下位置にある場合の断面図である。
【図3】同上の制御部に関連する構成のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図1乃至図3に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
便器装置は、図2、図3に示すように、便器本体と、洗浄水供給手段2と、回動自在なトラップ部3と、洗浄水供給手段2とトラップ部3の駆動を制御する制御部5と、を備えている。
【0016】
便器本体は、図2に示すように、ボウル1を備えており、後部に後部外殻となるケース11が装着され、ケース11内に洗浄水供給手段2、トラップ部3、制御部5等が収納される。ボウル1の下部の後壁には、トラップ部3に連通する排出口が形成されている。
【0017】
洗浄水供給手段2は、ボウル1内に洗浄水を供給するもので、図示しないが、水道等の給水源に接続されボウル1に連通する給水路と、給水路の途中に設けられる定流量弁と、電磁弁からなる開閉弁と、を備えている。
【0018】
トラップ部3は、ボウル1内に連通し、その下流端31が上下方向に回動自在となるように設けられるもので、モータ等の駆動手段4により駆動される。
【0019】
制御部5は、マイクロコンピュータからなり、洗浄水供給手段2の開閉弁と駆動手段4とを制御するものである。
【0020】
また、ボウル1内に洗浄水を供給する際に使用者が操作する洗浄操作部9(図3参照)が設けられている。
【0021】
本実施形態では、ケース11が設置される箇所の床面に開口が形成され、トラップ部3から排出される溜水10や汚物はこの開口を介して排出されるが、床面ではなく壁面に開口が形成されて横引式で排出されてもよく、特に限定されない。
【0022】
この便器装置の基本的な動作について説明する。
【0023】
図2(a)に示すように、トラップ部3の下流端31がその回動範囲のうちの上部の所定位置(これを上位置Uという)に位置する状態で、封水としての溜水10が貯留される。溜水10は、水位が所定の値となるように、所定量が供給されるように設計されるものである。
【0024】
また、溜水10に溜まった汚物を排出する場合、図2(c)に示すように、トラップ部3の下流端31がその回動範囲のうちの下部の所定位置(これを下位置Lという)に位置
することで、ボウル1内の溜水10と汚物とが排出される。
【0025】
便器装置が使用されていない時には、下流端31が上位置Uにあり、便器装置が使用されてボウル1内に溜まった汚物と溜水10とが排出される時に、下流端31が上位置U(本実施形態は図2(b)に示す上上位置UUであり、後述する)から下位置Lへと移動する排出動作が行われる(図1中の時間T4参照)。排出動作は所定の動作で行われるもので、所定の動作は、一定速度で移動したり、所定のパターンで移動したり、毎回同じ動作が行われればよく、特に限定されない。このため、排出動作にかかる時間は図1に示すように所定の時間T4となる。なお、この所定の動作は、以下のステップも含めて、制御部5が駆動手段4等に制御信号を送るパターンであり、毎回同じパターンで制御信号を送っても、駆動手段4にかかる負荷等によって、実際の時間にはばらつきが発生する場合がある。そのため、下記のような制御を行うようになっている。
【0026】
なお、本実施形態においては、排出動作に先立って、図2(a)に示す下流端31が上位置Uにある状態から、図2(b)に示す下流端31が一旦更に上方の所定位置(これを上上位置UUという)に、図1に示す所定の時間T2かけて移動し、所定の時間T3保持されるという予備動作が行われる。その後、排出動作が行われるため、本実施形態における排出動作は、下流端31が上上位置UUから下位置Lへ移動する動作となる。
【0027】
排水動作が終了して下流端31が下位置Lに達してから所定の時間T5、下位置Lを保持する保持動作が行われる。
【0028】
保持動作の後、下流端31が下位置Lから上位置Uへ移動する復元動作が行われる。復元動作は所定の動作で所定の時間T6かけて行われるもので、所定の動作は、一定速度で移動したり、所定のパターンで移動したり、毎回同じ動作が行われればよく、特に限定されない。
【0029】
上記排出動作と保持動作と復元動作は、一連の動作として制御部5によりシーケンス制御されるものである。
【0030】
また、トラップ部3の動作に対応して、洗浄水供給手段2によりボウル1内に洗浄水が供給される。本実施形態では、洗浄操作部9が操作されると洗浄動作が開始され、洗浄水の供給が開始されるが、トラップ部3は、初めの所定時間T1はトラップ部3が上位置Uで保持される。なお、洗浄操作部9が操作されると同時に洗浄水の供給が開始されなくてもよい。
【0031】
そして、洗浄水供給手段2によりボウル1内に供給される洗浄水の流量が変動した場合でも、復元動作が行われた時に溜水10として所定量が給水されるように、便器装置には、図3に示すように、流量検出手段6と、計時手段7と、積算流量算出手段8と、が設けられる。
【0032】
流量検出手段6は、洗浄水供給手段2によりボウル1内に供給される洗浄水の単位時間当りの流量を検出するもので、洗浄水供給手段2の給水路の途中に設けられる。このような流量検出手段6としては、筒状のセンサケース内に羽根車が収納され、センサケースに設けられたホール素子等により羽根の通過数がカウントされて流量が求められる流量センサ等、既存のものが利用可能であって特に限定されず、詳細な説明は省略する。
【0033】
計時手段7は、本実施形態では制御部5が一機能として備えるものであるが、別に設けられてもよい。
【0034】
積算流量算出手段8は、単位時間当りの流量と時間とから積算流量を算出するもので、本実施形態では制御部5が一機能として備えるものであるが、別に設けられてもよい。
【0035】
溜水10が貯留されるにあたり、制御部5は、排出動作のいずれかの時点から計時手段7による計時を開始する。本実施形態では、図1に示すように所定の時間T4を要する排出動作が開始された時点で、計時が開始される。
【0036】
そして、計時手段7により計測された時間と、その間の流量検出手段6により検知された流量とに基づいて、積算流量算出手段8により洗浄水の供給量が算出される。制御部5は、算出された供給量が所定の値に達すると、洗浄水供給手段2による洗浄水の供給を停止する。
【0037】
この結果、溜水10の水位は、図2(a)の下流端31の上位置Uとなる。仮に、供給量が所定の値を超えている場合には、溜水10の水位は上位置Uが限界であるため、下流端31より溢れ出て開口より排出されてしまい、水の使用量が増加してしまうものである。また、仮に、供給量が所定の値に満たない場合には、溜水10の水位は上位置Uよりも低い位置となり、溜水10の量が不足し、場合によっては封水能力が損なわれる惧れがある。
【0038】
本実施形態では、洗浄水の単位時間当りの流量を直接的に検出し、この流量に基づいて積算流量を算出するため、流量が変動しても、所定量の給水が行われる。
【0039】
また、図示しないが、所定の時間T4を要する排出動作が終了した時点で、計時が開始されるようにしてもよく、排出動作のいずれかの時点で計時が開始されるようにしてもよい。また更に、図示しないが、所定の時間T6を要する復元動作が開始した時点で計時が開始されるようにしたり、復元動作が終了した時点で計時が開始されてもよく、復元動作のいずれかの時点で計時が開始されるようにしてもよい。
【0040】
すなわち、溜水10の形成に寄与する洗浄水は、所定の時間T6が完了するタイミングである、トラップ部3の下流端31が上位置Uに到達するタイミングより少し前に供給された洗浄水も寄与するため、計時の開始は、溜水10の形成に寄与する洗浄水が供給され始める時点とし、その時点までに供給され溜水10の形成に寄与せずに排水される洗浄水が積算流量に勘定されないようにするものである。この場合、供給量の所定の値は、図2(a)の上位置Uにおける溜水10の量そのものである。しかしながら、溜水10が所定量形成されるには、必ずしも前記のようになされなくてもよく、例えば、計時の開始を早くしても、排水される洗浄水が積算流量に勘定されるものの、供給量の所定の値を大きくすれば前記所定量の溜水10の形成が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ボウル
10 溜水
2 洗浄水供給手段
3 トラップ部
31 下流端
4 駆動手段
5 制御部
6 流量検出手段
7 計時手段
8 積算流量算出手段
U 上位置
L 下位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル内に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記ボウル内に連通するように設けられ下流端が上下方向に回動自在なトラップ部と、前記トラップ部を駆動する駆動手段と、前記洗浄水供給手段と前記駆動手段とを制御する制御部と、を備え、前記トラップ部の前記下流端が上位置に位置することで前記ボウル内に溜水が貯留され、前記トラップ部の前記下流端が下位置に位置することで前記ボウル内の溜水が排出され、前記トラップ部の前記下流端が前記上位置から前記下位置へ移動する排出動作と前記下位置から前記上位置へ移動する復元動作とが所定の動作で行われる便器装置であって、
前記洗浄水供給手段により前記ボウル内に供給される洗浄水の単位時間当りの流量を検出する流量検出手段と、
計時手段と、
単位時間当りの流量と時間とから積算流量を算出する積算流量算出手段と、
が設けられ、
前記下流端の動作の開始時点または終了時点から前記計時手段により計時された時間と、その間の前記流量検出手段により検知された流量とに基づいて前記積算流量算出手段により洗浄水の供給量が算出され、
前記制御部は、算出された前記供給量が所定の値に達すると前記洗浄水供給手段による洗浄水の供給を停止することを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記下流端の動作が排出動作であることを特徴とする請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記下流端の動作が復元動作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79565(P2013−79565A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148689(P2012−148689)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】