説明

便器

【課題】 構造を簡単にして掃除を容易にするとともに製造コストを低減する。
【解決手段】 汚物を受けうる上端開口2を有して略逆錘形に形成され下端部に汚物の出口3を設けた容器1と、容器1を回転可能に支持する支持体10と、容器1を回転駆動する駆動部40と、容器1の内面を洗浄する洗浄手段50とを備え、支持体10を、容器1の上端開口2側を露出させるとともに容器1の下端部を回転可能に支持する下端支持部11を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物を受ける容器を回転可能にして容器の内面の洗浄を確実に行なうことができるようにした便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便器としては、特許文献1記載の技術が知られている(特開昭57−201437号公報参照)。
図7に示すように、この便器Baは、着座タイプの便器であり、汚物を受ける上端開口101及び下端開口102を有する断面円形で略逆錘形の容器100と、容器100を覆う外筒104と、容器100を外筒104に対して回転可能に支持する伸縮螺旋105と、容器100内に水を噴射して容器100の内面を洗浄する洗浄装置106とを備えている。また、容器100の上端開口101には、使用者が座る体重受輪107が配置され、この体重受輪107と容器100の上端開口101に設けた鍔部との間にはスラスト球108が配列されている。
【0003】
そして、使用の際に、使用者が体重受輪107に座ると、その体重で体重受輪107が伸縮螺旋105を縮め、使用後に立ち上がると、縮まった伸縮螺旋105の旋回反転回転作動が起こり、容器100が自動的に反転回転させられる。この状態で、洗浄装置106からの洗浄液で容器100の内面を洗浄し、洗浄液を汚物とともに容器100の下端開口102から排出するようにしている。この洗浄の際には、容器100が回転するので洗浄液が容器100の内面に満遍なく行き渡り、洗浄が確実に行なわれるとともに、洗浄液が少なくても洗浄が可能になり省力化が図られる。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−201437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の便器Baにおいては、容器100及び外筒104が二重で構造が複雑なことから、容器100と外筒104の間等の掃除が難しくなってしまうという問題があった。また、構造が複雑なので、製造コストも高くなってしまうという問題もあった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、構造を簡単にして掃除を容易にするとともに製造コストを低減した便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の便器は、汚物を受けうる上端開口を有して略逆錘形に形成され下端部に汚物の出口を設けた容器と、該容器を回転可能に支持する支持体と、上記容器を回転駆動する駆動部と、上記容器の内面を洗浄する洗浄手段とを備えた便器において、上記支持体を、上記容器の上端開口側を露出させるとともに該容器の下端部を回転可能に支持する下端支持部を備えて構成している。
【0007】
これにより、容器は、その上端開口側が露出させられて下端支持部で支持されるので、支持体で容器の外側が全部覆われる場合に比較して、構造が簡単になり、便器の製造コストを低減することができる。
また、この便器を使用するときは、人が用を済ませた後、駆動部により容器を回転駆動させるとともに、洗浄手段で容器の内面を洗浄していく。
この場合、駆動部により容器が回転させられているので、洗浄手段が容器の内面を均一に洗浄できる。これにより、容器の内面に付着した汚物は、容器にはほとんど残らないので、悪臭の原因となる尿石の発生を抑制することができる。
【0008】
また、便器を掃除するときには、容器の外側に多少の汚物が飛散して付着した程度の汚れならば、容器の外側に付着した汚物を雑巾などで拭き取るようにする。この際、容器は、その上端開口側が露出させられて下端支持部で支持され、構造が簡単になっているので、容器の外側に多少汚物が飛散して付着しても、容器と支持体とを分離しなくても容器の外側を拭き取ることができ、便器の掃除を容易に行なうことができる。
【0009】
また、必要に応じ、上記容器を、上記下端支持部に対して着脱可能にしている。
これにより、容器と下端支持部の間に入り込んだ汚物による汚れが酷くなり、便器の掃除を念入りに行なう場合には、容器を下端支持部から取り外し、容器外側や下端支持部と容器との接触部分を雑巾で拭く等する。そのため、容器を下端支持部から取り外して掃除するので、容器全体の洗浄を容易に行なうことができる。また、構造が簡単なので、容器の取り外し作業を容易に行なうことができ、より一層便器の掃除を容易に行なうことができる。
【0010】
更に、必要に応じ、上記支持体を、上記下端支持部を床に対して支持するスタンドを備えて構成している。これにより、便器は、単に床に載置するだけで設置でき、設置作業を容易に行なうことができる。また、従来の陶器製の便器に比較して軽量になることから、便器の移動を極めて容易に行なうことができる。
更に、必要に応じ、上記スタンドに、上下方向に伸縮して上記容器の高さ調整を可能にする伸縮機構を備えて構成している。これにより、便器を使用する使用者等に合わせて容器の高さ位置を調整でき、便器を使用する人が容易に用を済ませることをできるようになる。
【0011】
また、必要に応じ、上記支持体を、上記下端支持部を壁に固定する取付部を備えて構成している。これにより、壁に便器を取り付けることができる。
次にまた、必要に応じ、上記支持体に、上記容器の上端開口の向く角度を調整する角度調整機構を設けている。これにより、便器を使用する使用者等に合わせて容器の上端開口の向く方向を調整でき、便器を使用する人が容易に用を済ませることをできるようになる。
【0012】
更にまた、必要に応じ、上記容器の下端部に軸部を形成し、上記下端支持部に該軸部を軸支する軸受部を設け、上記駆動部を、上記支持体に設けられ上記軸部を軸回りに回転するモータを備えて構成している。
上記容器の軸部が上記下端支持部の軸受部で軸支されて、モータで回転させられるので、回転が安定し、洗浄手段による容器の内面の洗浄を、容器の内面全体に亘って均一にできる。
【0013】
そしてまた、必要に応じ、上記容器の下端部に軸部及び該軸部を中心とするギアを設け、上記下端支持部に上記軸部を回転可能に受ける軸受部を形成し、上記駆動部を、上記支持体に回転可能に設けられ上記ギアと噛合するウォームギアと、該ウォームギアの軸を回転するモータとを備えて構成している。
これにより、下端支持部にモータを設けなくてもよくその場合、モータの電源が下端支持部にこないので、汚物等からの電源側の防水を下端支持部に設けなくてもよくなる。
【0014】
また、必要に応じ、上記容器及び支持体を複数設け、上記各容器のギアに噛合するウォームギアの軸を一体に形成し、該軸を1つのモータで回転させている。
これにより、1つのモータで複数の容器を回転させることができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記洗浄手段を、上記容器に流される洗浄液と、該洗浄液を上記容器の内面に向けて噴射する洗浄液噴射装置を備えて構成している。
これにより、容器を洗浄する際には、駆動部で容器を回転駆動させながら洗浄液噴射装置から洗浄液を容器の内面に噴射する。洗浄液は、容器の内側面に付着した汚物とともに容器の内壁を伝って容器の下端側に流れていく。そのため、容器が駆動部により回転させられた状態で洗浄液が容器の内面に噴射されるので、容器の内面に均一に洗浄液が吹きかけられ容器内全体を洗浄できる。また、洗浄手段による容器の洗浄時には、駆動部により容器が回転させられているので、洗浄手段が容器の内面を均一に洗浄でき、容器の内面に付着した汚物は、容器にはほとんど残らなくなり、悪臭の原因となる尿石の発生を抑制することができる。
【0016】
次にまた、必要に応じ、上記支持体に、上記容器の汚物の出口からの汚物を排出する排出管を設け、該排出管を流れる汚物を吸引する汚物吸引ポンプを設けている。
これにより、排出管を流れる汚物は、汚物吸引ポンプにより吸引されて容器の外部に排出されていく。これにより、汚物が比較的高速で強制的に圧送されるので、汚物の流速が早くなり、容器及び排出管内に汚物が残りにくくなり、汚物中の尿が尿石となって堆積する事態が防止される。そのため、容器の内部に堆積する尿石の発生を防止できる。また、尿石による排出管の詰まりが防止され、排出管に堆積した尿石を取り除く高圧洗浄を行なう必要が無くなり、その結果、メンテナンスにかかる費用を軽減することができる。また、汚物吸引ポンプが設置されているので、汚物を高い場所に圧送することもでき、汚物の処理場所が遠距離であっても使用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の便器によれば、支持体を、容器の上端開口側を露出させるとともに容器の下端部を回転可能に支持する下端支持部を備えて構成したので、構造が簡単になり、便器の製造コストを低減することができる。また、便器を掃除するときには、容器の外側に多少の汚物が飛散して付着した程度の汚れならば、容器の外側に付着した汚物を雑巾などで拭き取るようにする。そのため、容器の外側に多少汚物が飛散して付着しても、容器と支持体とを分離しなくても拭き取ることができ、便器の掃除を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る便器について詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態の便器は、所謂、男性用の小便器であり、汚物を受けうる上端開口2を有して略逆錘形に形成され下端部に汚物の出口3を設けた容器1と、容器1を回転可能に支持する支持体10と、容器1を回転駆動する駆動部40と、容器1の内面を洗浄する洗浄手段50とを備えて構成されている。
【0020】
容器1は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂で形成され、上端開口2から下端開口に向けて縮径する逆錘形状の容器本体4と、容器本体4の下端に連続して設けられる横断面円形のカップ体5とを備えてなる。この容器1には、容器本体4の上端開口2から汚物(小便)である汚水が入れられる。汚物の出口3は、カップ体5の側壁に、カップ体5の軸回りに複数列設されている。
また、容器本体4の下端側からカップ体5の外周は、後述の下端支持部11に設けた軸受部16に軸支される軸部6に形成されている。
【0021】
支持体10は、容器1の上端開口2側を露出させるとともに容器1の下端部を回転可能に支持する下端支持部11と、下端支持部11を床に対して支持するスタンド20とを備えて構成されている。
下端支持部11は、容器1を着脱可能に支持しており、容器1の下端側が開放口12から遊挿されるとともにこの容器1の下端側を覆うカップ状に形成され、容器1の出口3から出てきた汚水を受けている。また、下端支持部11は、開放口12側が容器本体4の外形に沿って略逆錘形に形成されている。
【0022】
また、下端支持部11には、汚物である汚水を下端支持部11の外部に排出する排出管13が設けられている。この排出管13は、下端支持部11に設けた排出口13aに接続されている。排出管13は、排出口13aに接続された汚水が流れるチューブ14を備えて構成され、汚水等が溜められる汚水貯留槽92に連通している。チューブ14は、フレキシブルな素材で構成されている。また、排出管13には、排出管13内を流れる汚水を吸引して汚水貯留槽92側に送る汚物吸引ポンプ95が設けられている。
また、下端支持部11の内周面には、軸部6を軸支する軸受部16が形成されている。実施の形態においては、この軸受部16と軸部6との間にクリアランスが多少形成される。
【0023】
スタンド20は、床に載置されるベース21と、ベース21に立設される支柱22とを備えてなる。
ベース21は、板状に形成されている。
支柱22には、上下方向に伸縮して容器1の高さ調整を可能にする伸縮機構25が備えられている。伸縮機構25は、ベース21に一体に設けられる筒体26と、筒体26に挿通されるロッド27と、筒体26の上端近傍に設けた雌ネジ部28と、雌ネジ部28にネジ込まれ、筒体26に挿通されたロッド27を締め付けるネジ部材29とを備えてなる。
【0024】
筒体26は、その内部に、ロッド27が進出または後退可能に挿通される。ロッド27は、筒状に形成され、内部にチューブ14が挿通され、その上側に下端支持部11が取り付けられる。
このネジ部材29は、ロッド27の筒体26に対して進出または後退させる際に、ロッド27に対する締め付けをゆるめ、ロッド27を筒体26に対する適宜の進出位置で締め付けることにより、容器1の高さ位置が決められる。
【0025】
また、図3にも示すように、支持体10には、容器1の上端開口2の向く角度を調整する角度調整機構30が設けられている。角度調整機構30は、下端支持部11に設けられる突設体31と、ロッド27の上端に設けられ突設体31を保持する保持部材32とを備えて構成されている。
突設体31は、下端支持部11の下側に突設され、容器本体4の軸に平行な平面を有した板状に形成されている。また、突設体31には、貫通孔33が設けられている。
保持部材32は、突設体31を挾持する挾持部35により構成され、ロッド27に挿通される筒状のロッド取付部34を介してロッド27の上端に固定される。
【0026】
ロッド取付部34は、内部にロッド27が挿通される筒状に形成されている。
挾持部35は、ロッド取付部34の上側に設けられ突設体31が間に位置させられる一対の板体36と、この一対の板体36間に架設され貫通孔33に挿通される軸体37とを備えてなる。
軸体37は、一対の板体36の両方に貫通するボルトで構成されている。軸体37は、ボルトの頭及び軸体37の雄ネジに螺合するナット38により、一対の板体36と突設体31とを締め付け可能になっている。
そして、容器1の上端開口2の角度を調整する場合には、軸体37をナット38に対して緩めた状態で、軸体37を軸に下端支持部11を回転する。その後、適宜の位置で軸体37をナット38にネジ込み、軸体37のボルトの頭及びナット38で一対の板体36を挟み付けて、この板体36で板体36間の突設体31を挾持する。
図中、39は、角度調整機構30の軸体37であるボルト37aの頭及び軸体37に螺合するナットを保護するカバーである。
【0027】
駆動部40は、下端支持部11の底壁15の裏側に設けた収納空間42に設けられたモータ41で構成されている。モータ41が収納される収納空間42は、下端支持部11の底壁15側に下端支持部11に一体に設けられる有底筒状の収納ケース43により形成される。モータ41は、例えば、ギヤードモータで構成されている。
また、モータ41の駆動軸44は、下端支持部11の底壁15に貫通し、この底壁15に設けた軸受15aにより駆動軸44が回転可能に軸支される。また、駆動軸44は、容器1のカップ体5の底壁7の中心に設けた挿通孔17に挿通される。そして、駆動軸44の先端側に形成した雄ネジに螺合する固定ナット45により容器1が固定される。また、固定ナット45は、雄ネジに対してネジ戻して、駆動軸44からの取り外しが可能になっている。そのため、容器1は、下端支持部11に対して着脱可能になっている。
図中、46は、平ワッシャー,47はパッキンである。
【0028】
また、洗浄手段50は、容器1に流される洗浄液と、洗浄液を上記容器1の内面に向けて噴射する洗浄液噴射装置51とを備えて構成されている。
洗浄液は、例えば、水で構成されている。
洗浄液噴射装置51は、洗浄液を噴射するノズル52を有した洗浄液噴射部53と、洗浄液が溜められる洗浄液貯留槽54と、洗浄液貯留槽54の洗浄液を吸引するとともに送給管55を介してノズル52に洗浄液を送給する洗浄液吸引ポンプ56とを備えてなる。
洗浄液噴射部53は、樹脂等により略卵形に形成されている。また、洗浄液噴射部53は、ノズル52に洗浄液を送給し、かつ伸縮可能に下端支持部11に設けられる送給管55により上端開口2の上側近傍に支持される。また、洗浄液噴射部53には、容器1の上端開口2端縁が入り込む溝が形成されている。
また、洗浄液噴射部53には、例えば、送給管55を介して洗浄液が送給される。
【0029】
更にまた、便器には、洗浄液吸引ポンプ56及びモータ41を作動させる制御部60が設けられている。この制御部60は、洗浄液噴射部53に設けられ、便器の前に立った人を検知する人検知センサ61の検知に基づいてモータ41,洗浄液吸引ポンプ56及び汚物吸引ポンプ95を制御する。制御部60の制御については、後述する。
【0030】
この便器にあっては、容器1の外側全体が支持体10により覆われて2重になっているものに比較して、構造が簡単なので設置作業も容易でかつ、製造コストも低減できる。
また、この便器を設置するときは、スタンド20のベース21を床に載置し、筒体26にロッド27を挿通し、ロッド27上端に下端支持部11を取り付ける。この際、支持体10にスタンド20を備えたので、便器は、単に床に載置するだけで設置でき、設置作業を容易に行なうことができる。
また、この際、伸縮機構25のボルトを緩めて筒体26に対してロッド27を進出または後退して適宜の位置で、雌ネジ28に対してネジ部材29をネジ込んでロッド27を締め付け、容器1の高さ位置を調整する。また、軸体37であるボルト37aを緩めて、容器1の上端開口2の向く角度を調整し、適宜の角度でボルト37aを締め付けて、容器1の角度を調整する。これにより、普段便器を使用する使用者の体格等に合わせて、容器1の高さを調整したり、容器1の上端開口2の向きの角度を調整したりし、便器を使用する人が容易に用を済ませられるようになる。
【0031】
次に、便器を使用する場合について説明する。
この便器の前に人が立つと、人検知センサ61が、この人を検知する。
人が排尿する等し、汚水が上端開口2から容器1内に入れられると、容器1の内側面を伝って容器1の下端側に流れていき、汚物の出口3から汚水が出て行く。
その後、人が排尿等を終えて便器の前から立ち去ると、これを人検知センサ61が便器の前から人がいなくなったことを検知する。この際、制御部60は、洗浄液吸引ポンプ56、汚物吸引ポンプ95及びモータ41を作動させる。
【0032】
この際、モータ41が作動すると、モータ41の駆動軸44により、容器1が容器1の軸周りに回転を始め、ノズル52から噴射させられた洗浄液が、容器1の内側面に付着した汚水とともに容器1の内壁を伝って容器1の下端側に流れていく。そして、この汚水と洗浄液の混ざった液体は、汚物の出口3から出て行く。汚物の出口3からの汚水と洗浄液の混ざった液体は、汚物吸引ポンプ95の吸引により汚水貯留槽92に至る。
また、この際、ノズル52からの洗浄液は、容器1がモータ41により回転させられ、容器1の内面に均一に洗浄液が吹きかけられるので、容器1内全体を洗浄できる。これにより、容器1の内面に付着した汚れが、洗浄液で流されて容器1にはほとんど残らないので、悪臭の原因となる尿石の発生を抑制することができる。
更に、ノズル52から噴射された洗浄液により、容器1内面の汚水等が流されるので、洗浄を確実に行なうことができる。
更にまた、容器1の回転時には、下端支持部11に設けた軸受部16が容器1の軸部6を軸支しているので、容器1の回転が安定する。
【0033】
また、この際、排出管13を流れる汚水は、汚物吸引ポンプ95により吸引されて下端支持部11の外部に排出されていく。これにより、汚物が比較的高速で強制的に圧送されるので、汚物の流速が早くなり、容器1,下端支持部11及び排出管13内に汚水が残りにくくなり、汚水中の尿が尿石となって堆積する事態が防止される。そのため、容器1の内部及び下端支持部11の内部に堆積する尿石の発生を防止できる。また、尿石による排出管13の詰まりが防止され、排出管13に堆積した尿石を取り除く高圧洗浄を行なう必要が無くなり、その結果、メンテナンスにかかる費用を軽減することができる。また、汚物吸引ポンプ95が設置されているので、汚水を高い場所に圧送することもでき、汚物の処理場所が遠距離であっても使用できる。
その後、所定時間経過したならば、洗浄液吸引ポンプ56を停止させ、モータ41を停止させる。
【0034】
次に、便器の掃除について説明する。
例えば、容器1の外側に多少の汚水が飛散して付着した程度の汚れならば、容器1の外側に付着した汚水を雑巾などで拭き取るようにする。
この際、容器1は、その上端開口2側が露出させられて支持体10に支持されるので、支持体10で容器1の外側が全部覆われる場合に比較して、構造が簡単なので、容器1の外側に多少汚水が飛散して付着しても、すぐに拭き取ることができ、尿石等汚臭の原因となる物質の発生を抑制できる。
【0035】
次に、容器1と下端支持部11の間に入り込んだ汚水等により汚れが酷くなり、便器の掃除を念入りに行なう場合には、まず、モータ41の駆動軸44に螺合された固定ナット45を駆動軸44から取り外し、容器1を下端支持部11から取り外し、容器1や下端支持部11を雑巾などでふき取るようにする。
この際、容器1が下端支持部11に対して着脱可能なので、容器1全体の洗浄を容易に行なうことができる。また、構造が簡単なので、容器1の取り外し作業を容易に行なうことができ、より一層便器の掃除を容易に行なうことができる。
【0036】
次に、本発明の別の実施の形態に係る便器について説明する。
図4乃至図9に示すように、この便器は、上記のものと異なり、複数の便器を並べて便器のシステムを構築して使うタイプのものである。
また、支持体10には、スタンド20が無く、替わりに、下端支持部11を壁に固定する取付部70が備えられている。下端支持部11と取付部70とは、角度調整機構30を介して取り付けられる。
取付部70は、平面を有した一対の板状体71で構成されている。
角度調整機構30は、下端支持部11の下側に軸が略水平に設けられる円筒状の回転軸73と、板状体71に設けられる軸受孔74と、容器1の角度を固定するストッパ72とを備えてなる。
ストッパ72は、ピン75と、下端支持部11の上側に設けられピン75を挿入可能な挿入孔76と、取付部70に設けられ挿入孔76とともにピン75が挿入される固定孔77とを備えて構成されている。
【0037】
また、上記のものとは駆動部も異なる。
図9に示すように、駆動部40aは、回転軸73の内部に設けられるウォーム80と、容器1の下端外側に設けられウォーム80と噛合するウォームホイール81と、ウォーム80を回転駆動するモータ41aとを備えてなる。ウォーム80は、隣り合う便器のウォーム80と同動するように互いに回動軸82を介して連結されている。ウォームホイール81は、容器1の下端外側に設けられている。また、容器1とウォームホイール81との取り付けは、カップ体5の外周に、カップ体5の軸周りに複数の列設される凸部83を設け、ウォームホイール81に、内周に凸部83が夫々着脱可能に嵌合する複数の凹部84を有した孔85を設け、ウォームホイール81の孔85にカップ体5を挿通して凹部84に凸部83を嵌合してなされる。モータ41aは、その駆動軸(図示せず)が回動軸82に接続され、回動軸82を回動させる。
【0038】
また、図7及び図8に示すように、容器1のカップ体5の底壁7は、ボルト8により、下端支持部11の底壁15に対して回転可能にかつ着脱可能に軸支される。ボルト8は、底壁15に設けた雌ネジ18にネジ込まれる。更に、軸部6は、容器本体4の外側斜面に形成され、軸受部16は、下端支持部11の開放孔12側の内周面のみに形成される。
【0039】
次に、複数の便器の全体のシステムについて説明する。
このシステムには、各便器の排出管13に連通する複数の汚水管91と、複数の汚水管91が接続される汚水本管90と、汚水管13の汚水本管90の末端が接続される汚水貯留槽92とを備えている。
また、汚水管91には、各チューブ14との接続部付近に、汚水管91を開閉する電磁バルブ91aが設けられている。この電磁バルブ91aは、バルブコントローラ93によりその開閉が制御される。このバルブコントローラ93は、人検知センサ61の検知及び後述の制御部60の制御信号に基づいて、電磁バルブ91aの開閉の制御を行なう。
【0040】
汚水本管90の末端側には、汚水本管90内部を流れる汚水中のゴミ等の異物を濾し取るストレーナ90aが介装されている。このストレーナ90aには、目詰まりセンサを備えている。
汚水貯留槽92にためられた汚水は、汚水吸引ポンプ97により吸引されて汚水処理装置94に送給され、汚水処理装置94で浄化処理される。
また、汚水貯留槽92には、汚水貯留槽92中の気体を吸引することにより、排出管13を流れる汚物を吸引する汚物吸引ポンプ95が接続されている。
【0041】
また、便器システムには、洗浄液が貯留される洗浄液貯留槽54と、洗浄液貯留槽54の洗浄液を吸引する洗浄液吸引ポンプ56と、洗浄液吸引ポンプ56から各便器の洗浄液噴射部のノズル52に分岐して接続され、各ノズル52に洗浄液を送給する送給管55とが備えられている。
更にまた、システムには、モータ41a,洗浄液吸引ポンプ56,バルブコントローラ93,汚物吸引ポンプ95及び汚水吸引ポンプ97に接続され、これらの作動を制御する制御部60が設けられている。
【0042】
制御部60は、間欠的に各便器を洗浄可能なように、モータ41a,洗浄液吸引ポンプ56,汚物吸引ポンプ95及びバルブコントローラ93を間欠作動させる時間を設定する設定パネル(図示せず)を備えている。また、制御部60は、汚水貯留槽92の汚水の水位を検知する水位検知センサ98の検知に基づいて、汚水吸引ポンプ97を作動させる。また、制御部60には、ストレーナ90aの目詰まり検知センサが接続されており、ストレーナ90aの目詰まりを表示できるようになっている。
その他の構成は上記実施の形態のものと同様である。
【0043】
この便器を設置するには、予め、取付部70を壁に設けておく。次に、この取付部70に下端支持部11を取り付け、下端支持部11に容器1の下端側を挿入するとともにウォームホイール81の孔85に容器1の下端側を挿通して凹部84に凸部83を嵌合し、カップ体5の底壁7にボルト8を挿通して下端支持部11の底壁15の雌ネジ18にネジ込む。次に、隣り合う便器同士のウォーム80を回動軸82により連結し、回動軸82にモータ41aを接続する。
この場合、一つのモータ41aで複数の容器1を回転させるようにしたので、便器毎にモータ41aを設けなくてもよく、それだけ構造が簡単になり、便器の設置を容易に行なうことができる。
【0044】
この便器を使用すると次のようになる。
各便器において、便器の前に人いることを人検知センサ61が検知すると、バルブコントローラ93が電磁バルブ91aを開作動させて汚水管91を開にし、制御部60が汚物吸引ポンプ95を作動させる。この状態で、人が放尿し、容器1の上端開口2から汚水が流れ込むと、この汚水は、汚物の出口3から流出し、汚物吸引ポンプ95の汚水貯留槽92の気体の吸引により、排出管13であるチューブ14,汚水管91,汚水本管90を通って汚水貯留槽92に流れ込み、汚水貯留槽92に貯留される。
その後、人が放尿を終えて便器の前から人が立ち去ると、人検知センサ61が便器の前から人をいなくなったことを検知し、この検知に基づいてバルブコントローラ93が電磁バルブ91aを閉作動させて汚水管91を閉にする。
【0045】
このように便器が使用されて、制御部60に設定された設定時間が経過すると、制御部60は、全てのバルブコントローラ93を制御して、電磁バルブ91aを夫々開作動させて汚水管91を開にする。次に、洗浄液吸引ポンプ56で洗浄液貯留槽54の洗浄液を吸引し、各洗浄液噴射部のノズル52に送給するとともに、モータ41aを駆動させてウォーム80を回転させ、このウォーム80と噛合するウォームホイール81を介して各便器の容器1が回転させられる。
更に、制御部60に予め設定された洗浄時間が経過すると、洗浄液吸引ポンプ56を停止し、モータ41aを停止し、バルブコントローラ93を制御して電磁バルブ91aを夫々閉作動させて汚水管91を閉にする。
【0046】
このように便器の使用が繰り返され、汚水及び洗浄液が、汚水貯留槽92に貯留され一定以上の水位になったことを水位検知センサが検知すると、制御部60は、汚水吸引ポンプ97を作動させて汚水貯留槽92中の汚水を汚水処理装置94に送給する。
【0047】
この便器を掃除する際には、上記と同様にして、多少、容器1の外側に汚水が飛散した程度であれば、雑巾等で拭き取るようにする。また、容器1と、下端支持部11の間を掃除する場合には、容器1のカップ体5の底部に挿通されたボルトを取り外し、容器1を下端支持部11から取り外して行なう。
【0048】
また、便器の容器1に吐瀉物等の粘度が高くて流れない汚物あるいは比較的大きな固形の汚物が入れられる等し、汚物の出口3がこれらで詰まった場合には、角度調整機構30のピン75を挿入口及び固定孔77から引き抜き、回転軸73を軸に容器1を回転して容器1を傾ける。そして、汚物を、容器1の上端開口2から取り出し、例えば、便器前に置いたバケツ等に入れる。
これにより、上端開口2の向きを調整できるので、容器1に溜まった汚物にあまり手を触れることなく、簡単に除去でき、便器の掃除を容易に行なうことができる。
その後、上記と同様にして下端支持部11から容器1を取り外して容器1の掃除を行ない、汚物の出口3に詰まったものを取り除き、あるいは、チューブ14を交換する等する。その後、上記と同様にして、容器1を下端支持部11に取り付ける。
その他の作用効果は上記実施の形態のものと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る便器を示す半断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る便器を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る便器の角度調整機構を示す斜視図である。
【図4】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す斜視図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す一部切り欠き斜視図である。
【図7】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す断面図である。
【図8】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す断面図である。
【図9】本発明の別の実施の形態に係る便器全体のシステムを示す図である。
【図10】従来の便器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 容器
2 上端開口
3 汚物の出口
4 容器本体
5 カップ体
6 軸部
7 カップ体の底壁
10 支持体
11 下端支持部
12 開放口
13 排出管
13a 排出口
14 チューブ
15 下端支持部の底壁
16 軸受部
17 挿通孔
20 スタンド
21 ベース
22 支柱
25 伸縮機構
26 筒体
27 ロッド
28 雌ネジ部
29 ネジ部材
30 角度調整機構
31 突設体
32 保持部材
33 貫通孔
34 ロッド取付部
35 挾持部
36 板体
37 軸体
37a ボルト
38 ナット
39 カバー
40,40a 駆動部
41,41a モータ
42 収納空間
43 収納ケース
44 駆動軸
45 固定ナット
46 平ワッシャー
47 パッキン
50 洗浄手段
51 洗浄液噴射装置
52 ノズル
53 洗浄液噴射部
54 洗浄液貯留槽
55 送給管
56 洗浄液吸引ポンプ
60 制御部
61 人検知センサ
70 取付部
71 板状体
72 ストッパ
73 回転軸
74 軸受孔
75 ピン
76 挿入孔
77 固定孔
80 ウォーム
81 ウォームホイール
82 回動軸
83 凸部
84 凹部
85 孔
90 汚水本管
90a ストレーナ
91 汚水管
91a 電磁バルブ
92 汚水貯留槽
93 バルブコントローラ
94 汚水処理装置
95 汚物吸引ポンプ
96 脱臭装置
97 汚水吸引ポンプ
98 水位検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けうる上端開口を有して略逆錘形に形成され下端部に汚物の出口を設けた容器と、該容器を回転可能に支持する支持体と、上記容器を回転駆動する駆動部と、上記容器の内面を洗浄する洗浄手段とを備えた便器において、
上記支持体を、上記容器の上端開口側を露出させるとともに該容器の下端部を回転可能に支持する下端支持部を備えて構成したことを特徴とする便器。
【請求項2】
上記容器を、上記下端支持部に対して着脱可能にしたことを特徴とする請求項1記載の便器。
【請求項3】
上記支持体を、上記下端支持部を床に対して支持するスタンドを備えて構成したことを特徴とする請求項1または2記載の便器。
【請求項4】
上記スタンドに、上下方向に伸縮して上記容器の高さ調整を可能にする伸縮機構を備えて構成したことを特徴とする請求項3記載の便器。
【請求項5】
上記支持体を、上記下端支持部を壁に固定する取付部を備えて構成したことを特徴とする請求項1または2記載の便器。
【請求項6】
上記支持体に、上記容器の上端開口の向く角度を調整する角度調整機構を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の便器。
【請求項7】
上記容器の下端部に軸部を形成し、上記下端支持部に該軸部を軸支する軸受部を設け、上記駆動部を、上記支持体に設けられ上記軸部を軸回りに回転するモータを備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の便器。
【請求項8】
上記容器の下端部に軸部及び該軸部を中心とするギアを設け、上記下端支持部に上記軸部を回転可能に受ける軸受部を形成し、
上記駆動部を、上記支持体に回転可能に設けられ上記ギアと噛合するウォームギアと、該ウォームギアの軸を回転するモータとを備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の便器。
【請求項9】
上記容器及び支持体を複数設け、
上記各容器のギアに噛合するウォームギアの軸を一体に形成し、該軸を1つのモータで回転させたことを特徴とする請求項8記載の便器。
【請求項10】
上記洗浄手段を、上記容器に流される洗浄液と、該洗浄液を上記容器の内面に向けて噴射する洗浄液噴射装置を備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の便器。
【請求項11】
上記支持体に、上記容器の汚物の出口からの汚物を排出する排出管を設け、該排出管を流れる汚物を吸引する汚物吸引ポンプを設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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