説明

便器

【課題】使用者にとって足を置くべき位置を分かり易くすることができる便器を提供する。
【解決手段】便器1は、平面視で円弧状の正面を有するスカート部2と、このスカート部2の内部に配置されるボウル部3と、このボウル部3の上部とスカート部2の上部とをつなぐ便座載置面部24とを備えている。スカート部2の正面2aの左右両側位置には、スカート部2の手前の床11を照らす照明器具10が組み込まれている。この照明器具10の光軸は、正面方向を向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図9に示すように、スカート部20と、スカート部20の内部に配置されるボウル部30と、このボウル部30の上部とスカート部20の上部とをつなぐ便座載置面部(リム部)40とを備えた便器100がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3436004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような便器100においては、図10に示すように、使用者が便器100の手前に立って用を足すことがある。この場合、尿軌跡とボウル位置との関係から、予め定めた位置に使用者が足を置くことが望まれる。例えば、スカート部20の前方への張り出し寸法Lが150mm程度である場合には、便器100の先端から使用者のかかとまでの寸法Lは200mm程度である。
【0004】
そこで、スカート部20の正面20aの左右両側位置にそれぞれ照明器具を取り付けて、これらの照明器具でスカート部20の手前の床11を照らすことにより、使用者に対して足を置くべき位置を知らせることが考えられる。例えば、使用者のかかとから距離L(例えば270mm程度)の範囲を照らすようにする。
【0005】
ところが、スカート部20の正面20aは、平面視で円弧状になっているので、照明器具をそのまま取り付けたのでは、照明器具の光軸方向がスカート部の左右両側位置における正面の法線と一致し、図8(b)に示すように、床11に形成される照射形状Bが便器100から見て斜め前方に延びるようになる。そうすると、使用者にとっては照射形状Bにどのように合わせて足を置いたらよいのかが分かり難く、足を置くべき位置が不明確となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、使用者にとって足を置くべき位置を分かり易くすることができる便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、平面視で円弧状の正面を有するスカート部と、このスカート部の内部に配置されるボウル部と、このボウル部の上部と前記スカート部の上部とをつなぐ便座載置面部とを備えた便器において、前記スカート部の正面の左右両側位置には、スカート部の手前の床を照らす照明器具が組み込まれていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の便器において、前記照明器具の表面は、前記スカート部の正面と面一になるようになっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の便器において、前記照明器具の光軸方向は、略平行に設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1に記載の便器において、前記照明器具は、前記スカート部の正面から当該平面と略平行に窪む凹部を形成する筐体と、この筐体内に、平面視で前記凹部の底面に対して傾斜した状態で配設される基板と、この基板に実装されるLEDとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、スカート部の左右両側位置に照明器具を組み込んだから、照明器具の光軸を正面方向に向けることが可能になり、これにより使用者の足元を照らすことができるようになる。従って、使用者は、床に形成される照明器具の照射形状の位置に足を置けばよいことを一目で認識することができるようになり、使用者にとって足を置くべき位置を分かり易くすることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、照明器具の表面がスカート部の正面と面一になるようになっているので、意匠性に優れているとともに照明器具が障害物とならない。
【0013】
請求項3の発明によれば、スカート部の正面の左右両側位置に設けた照明器具の光軸方向を略平行にしたから、照射形状が便器から真っ直ぐに前方に延びるようになる。このため、使用者は、照射形状に重ね合わせるようにして足を置けばよいことを把握することができるようになる。
【0014】
請求項4の発明のように、照明器具が指向性の良いLEDを有していれば、照明器具の照射形状をはっきりさせることができる。また、請求項2の発明では、基板の向きによって照明器具の光軸方向を設定することができるとともに、筐体で基板およびLEDを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係る便器1を示す。この便器1は、上下方向に延在する筒状のスカート部2と、このスカート部2の内部に配置されるボウル部3と、このボウル部3の上部とスカート部2の上部とをつなぐ便座載置面部24とを備えている。また、便座載置面部24の下部には、リム状の中空部26が形成されている。
【0017】
前記スカート部2、ボウル部3、および便座載置面部24は、図2では、合成樹脂により一体に形成されているが、これらは、別々の部材で構成されていて、相互に接合されていてもよい。また、ボウル部3は、陶器製や金属製であってもよい。
【0018】
スカート部2の上方には、背面側に支持部25が設けられていて、この支持部25に便座4および便蓋5が上下に揺動可能となるように取り付けられている。そして、便座4が下方に揺動したときには、当該便座4が便座載置面部24に載置されるようになる。
【0019】
スカート部2の正面2aは、平面視で円弧状をなしたまま上方に向かうに連れて手前側に張り出しており、その下部の左右両側の左右対称な位置には、図3に示すように、縦長長方形状の開口21がそれぞれ形成されている。そして、各開口21の周縁部に、当該開口21を塞ぐ蓋部材6が外側から着脱可能に装着されている。なお、図3は、右側の蓋部材6を取り外した状態を示す。
【0020】
前記各蓋部材6は、スカート部2の正面2aに沿う板状に形成されているとともに、開口21の周縁部は一段落とし込まれていて、蓋部材6がスカート部2に装着されたときには、蓋部材6の表面がスカート部2の正面2aと面一となるようになっている。
【0021】
ここで、スカート部2が陶器製であってもかまわないが、陶器製とした場合には、開口21の周縁部の落とし込みにより形成されるコーナー部分が丸みを帯びた形状になって、蓋部材6との間に隙間が形成されることになるため、スカート部2は樹脂製であることが好ましい。
【0022】
また、各蓋部材6の下部には、当該蓋部材6を貫通する窓61が設けられているとともに、各蓋部材6の裏面側には、図4に示すように、照明器具10が取り付けられている。そして、蓋部材6がスカート部2に取り付けられることにより、照明器具10が光軸を正面方向(スカート部2から前方)に向けた状態でスカート部に組み込まれるようになる。
【0023】
前記照明器具10は、窓61を通じてスカート部2の手前の床11を照らすものである(図8(a)参照)。図5および図6は、左側の照明器具10を示す図である。なお、右側の照明器具10は、図5および図6に示すものと勝手反対のものであるため、図示を省略する。
【0024】
照明器具10は、前方に開口する横長直方体容器状の筐体7と、上方に開口する収納部81を有し、筐体7内に配設される基板保持部材75と、この基板保持部材75の収納部81内に収納される基板8とを有している。そして、基板保持部材75が透光性のある材料で構成されていて、基板8に光源であるLED9が上下に並んで2つ実装されている。
【0025】
前記筐体7の大きさは、蓋部材6の窓61の大きさよりも僅かに小さく設定されていて、筐体7の前端部が窓61内に嵌り込み可能となっている。また、筐体7の両側面には、中央よりも少し前側位置に固定部71が設けられていて、この固定部71が蓋部材6にねじ止めされることにより、筐体7の前端部が窓61に嵌り込んだ状態で筐体7が蓋部材6に取り付けられるようになっている。すなわち、筐体7は、蓋部材6がスカート部2に装着されたときには、図7に示すように、スカート部2の左右両側位置における正面2aの法線L2方向に開口して、スカート部2の正面2aから当該平面2aと略平行に窪む凹部を形成するようになる。そして、筐体7の底面72が、前記凹部の底面を構成する。
【0026】
なお、図示は省略するが、筐体7の開口には、透光性を有するとともに乳白色またはスカート部2と同系色に着色されたカバーが装着されるようになっており、このカバーの表面で構成される照明器具10の表面がスカート部2の正面2aと面一になるようになっている。そして、LED9から放射される光は、前記カバーを透過して床11に到達する。
【0027】
前記基板保持部材75は、右側の照明器具10の光軸方向L1と左側の照明器具10の光軸方向L1とが略平行になるように、基板8を筐体7の底面72に対して平面視で所定角度傾斜した状態で保持するものである。このため、図8(a)に示すように、床11に形成される照明器具10の照射形状Aが便器1から真っ直ぐに前方に延びるようになって、床11には、便器1の中心線に対して左右対称でかつ互いに略平行な一対の照射形状Aが形成される。
【0028】
このように、本実施形態の便器1では、スカート部2の左右両側位置に、光軸を正面方向に向けた状態で照明器具10を組み込んだから、使用者の足元を照らすことができる。従って、使用者は、床11に形成される照明器具10の照射形状Aの位置に足F(図7参照)を置けばよいことを一目で認識することができるようになり、使用者にとって足Fを置くべき位置を分かり易くすることができる。
【0029】
また、照明器具10の光軸方向L1を略平行にしたから、床11に便器1から真っ直ぐに前方に延びる左右一対の照射形状Aが形成されるため、使用者は、照射形状Aに重ね合わせるようにして足Fを置けばよいことを把握することができるようになる。
【0030】
さらに、図略のカバーの表面で構成される照明器具10の表面がスカート部2の正面2aと面一になるようになっているので、意匠性に優れているとともに照明器具10が障害物とならない。なお、このカバーを省略すれば、照明器具10でスカート部2の手前の床11をスポット状に照らすことも可能である。
【0031】
また、照明器具10の光源は、指向性の良いLED9であるので、照射形状Aをはっきりさせることができる。さらに、LED9が実装された基板8が筐体7内に配設されているので、基板8の向きによって照明器具10の光軸方向L1を設定することができるとともに、筐体7で基板8およびLED9を保護することができる。
【0032】
なお、前記実施形態では、照明器具10がLED9等で構成された形態を示したが、照明器具としては、例えばスポットライト等を採用することも可能である。この場合は、左右のスポットライトを光軸方向が略平行になるようにスカート部2に組み込めばよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る便器の斜視図である。
【図2】便器の側面断面図である。
【図3】スカート部の正面図である。
【図4】スカート部の照明器具が取り付けられた部分を内側から見た斜視図である。
【図5】照明器具の斜視図である。
【図6】照明器具の分解斜視図である。
【図7】図2のVII−VII線での概略的な断面図である。
【図8】照明器具が床を照らす状態を示す平面図であり、(a)は本発明の一実施形態の場合、(b)は従来の便器に照明器具をそのまま付けた場合を示す。
【図9】従来の便器の斜視図である。
【図10】従来の便器の使用図である。
【符号の説明】
【0034】
1 便器
2 スカート部
24 便座載置部
3 ボウル部
6 蓋部材
7 筐体
8 基板
9 LED
10 照明器具
11 床
A 照射形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で円弧状の正面を有するスカート部と、このスカート部の内部に配置されるボウル部と、このボウル部の上部と前記スカート部の上部とをつなぐ便座載置面部とを備えた便器において、
前記スカート部の正面の左右両側位置には、スカート部の手前の床を照らす照明器具が組み込まれていることを特徴とする便器。
【請求項2】
前記照明器具の表面は、前記スカート部の正面と面一になるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記照明器具の光軸方向は、略平行に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項4】
前記照明器具は、前記スカート部の正面から当該平面と略平行に窪む凹部を形成する筐体と、この筐体内に、平面視で前記凹部の底面に対して傾斜した状態で配設される基板と、この基板に実装されるLEDとを有することを特徴とする請求項1に記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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