説明

便座又は便蓋の電動開閉装置

【課題】 便座又は便蓋の開動作開始直後に発生する慣性によるトルクを抑えると共にスムーズな開動作を行うことができる便座又は便蓋の電動開閉装置を提供する。
【解決手段】 便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路とから成り、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する便座又は便蓋の電動開閉装置において、便座又は便蓋を開方向へ駆動する際、前記駆動モータを便座又は便蓋が開動作し始めるまでの所定時間を低いDuty比で駆動し、その後段階的にDuty比を増幅させて次の所定時間の間にDuty比が100%となるようなモータ駆動制御を行う。このように制御することによって便座又は便蓋の開動作直後に発生する慣性トルクを抑制できると共に、使用者にとって違和感のないスムーズな開動作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器における便座又は便蓋の電動開閉装置に関し、詳しくは便座、便蓋を個々に電動開閉する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座又は便蓋の電動開閉装置は、便座又は便蓋の開放時には、開動作開始時から高加速回転を行い、その後便座又は便蓋の開放角度に応じて低加速回転、減速回転、等速回転といったように、駆動トルクを開動作開始後は高く設定し、その後段階的に低減させていくような制御が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。便座又は便蓋の開動作開始直後に、駆動モータから伝達軸までの伝達手段に加わるトルクは、もともと便座又は便蓋が持つ重量や重心位置に依存する負荷トルク、減速歯車列や回転軸などの伝達手段のひずみにより発生するトルク、停止状態のものが動き出す瞬間に発生する慣性トルクが合わさったものとなり、便座又は便蓋が開く瞬間に発生するトルクが最大トルクとなる。
【0003】
便座又は便蓋の電動開閉装置では、開動作開始直後から駆動トルクが高く設定されているため、便座又は/及び便蓋が開き始める瞬間の角加速度が大きくなり慣性トルクも最大となってしまう。そのため最大トルクがより大きいものとなり、便座又は便蓋の毎回の開動作で、駆動部や減速歯車列等の伝達手段に過度のストレスが発生し、破損や磨耗の原因となる問題があった。また、その対応として、過度のストレスに耐え得るような、より頑丈な材質や構造を持つ伝達手段を選定せざるを得ず、高価なものになってしまっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−265359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便座又は便蓋が開き始める瞬間に発生する慣性トルクを抑えることで伝達手段に加わる最大トルクを軽減させるとともに、使用者にとって違和感のないスムーズな開動作フィーリングが得られる便座又は便蓋の電動開閉装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明によれば、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路とから成り、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する便座又は便蓋の電動開閉装置において、便座又は便蓋を開方向へ駆動する際、開動作開始後は第一の所定時間まで前記駆動モータの最大駆動トルクよりも低い第一の駆動トルクにて前記駆動モータが動作するよう制御を行うことで、便座又は便蓋が開き始める瞬間の角加速度が小さくなり慣性トルクを抑制することができ、伝達手段に加わる最大トルクを軽減させることが可能となる。そのため、便座又は便蓋の開動作で、減速歯車列等の伝達手段にかかるストレスを軽減でき、寿命を延ばすことが可能となる。
【0007】
また、請求項2記載の発明によれば、前記第一の所定時間経過後は前記第一の駆動トルクより段階的に駆動トルクを増加させ、第二の所定時間で第二の駆動トルクまで到達させる制御を行うことで、第二の所定時間で第二の駆動トルクに到達するまで便座又は便蓋の開動作スピードが段階的に増加していくため、便座又は便蓋の開端位置までの開動作時間の遅れに対して第一の駆動トルクを低く設定してもほとんど影響を与えることがなく、使用者に違和感を与えず、スムーズな開動作フィーリングを得ることが可能となる。
【0008】
また、請求項3記載の発明によれば、前記第一の駆動トルクは、前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開動可能な駆動トルクを第一の駆動トルクとして出力するよう制御を行うことで、第一の駆動トルクでも確実に便座又は便蓋を開かせることができる。そのため、第一の駆動トルクを便座又は便蓋が開動可能な最小のトルクとすれば、慣性トルクを最小限に抑制することができ、前記第一の所定時間を伝達手段のガタや伝達軸と便座の嵌合部のガタ及び駆動モータの速度バラツキ等を考慮して長く設定しても、便座又は便蓋が第一の所定時間は開かないという現象をなくすことができ、使用者に違和感を与えることがなくなる。
【0009】
また、請求項4記載の発明によれば、前記第一の所定時間は、前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開き始めるまでに発生する前記減速歯車列を介した伝達手段に加わるトルクが最大となる時間よりも長い時間を前記第一の所定時間として制御を行うことで、慣性トルクが最も大きくなるポイントである便座又は便蓋が閉止状態から開き始める瞬間を確実に第一の駆動トルクにて動作させることが可能となる。
【0010】
また、請求項5記載の発明によれば、前記第二の所定時間は、前記第一の駆動トルクから前記第二の駆動トルクに段階的に駆動トルクが増加する間に、前記伝達手段に加わるトルクが前記第一の所定時間内で発生した前記伝達手段に加わる最大トルクを超えないような駆動トルクの変化量となる時間を前記第二の所定時間とすることで、前記第一の所定時間経過後も便座又は便蓋の開動作スピードが段階的に増加していくため、第二の所定時間の間も急激な速度変動がなくなり慣性トルクを抑制することが可能となる。
【0011】
また、請求項6記載の発明によれば、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路と、前記便座又は便蓋の開閉角度を検出する角度検出手段から成り、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する便座又は便蓋の電動開閉装置において、便座又は便蓋を開方向へ駆動する際、開動作開始後は第一の所定角度まで前記駆動モータの最大駆動トルクよりも低い第一の駆動トルクにて前記駆動モータが動作するよう制御を行うことで、便座又は便蓋が開き始める瞬間の角加速度が小さくなり慣性トルクを抑制することができ、伝達手段に加わる最大トルクを軽減させることが可能となる。そのため、便座又は便蓋の開動作で、減速歯車列等の駆動手段にかかるストレスを軽減でき、寿命を延ばすことが可能となる。
【0012】
また、請求項7記載の発明によれば、前記第一の所定角度到達後は前記第一の駆動トルクより段階的に駆動トルクを増加させ、第二の所定角度で第二の駆動トルクまで到達させる制御を行うことで、第二の所定角度で第二の駆動トルクに到達するまで便座又は便蓋の開動作スピードが段階的に増加していくため、便座又は便蓋の開端位置までの開動作時間の遅れに対して第一の駆動トルクを低く設定してもほとんど影響を与えることなく、使用者に違和感を与えず、スムーズな開動作フィーリングを得ることが可能となる。
【0013】
また、請求項8記載の発明によれば、前記第一の駆動トルクは、前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開動可能な駆動トルクを第一の駆動トルクとして出力するよう制御を行うことで、第一の駆動トルクでも確実に便座又は便蓋を開かせることができる。そのため、第一の駆動トルクを便座又は便蓋が開動可能な最小のトルクとすれば、慣性トルクを最小限に抑制することができ、且つ前記第一の所定角度まで確実に便座又は便蓋を開かせることができる。
【0014】
また、請求項9記載の発明によれば、前記第一の所定角度は、前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開き始めるまでに発生する前記減速歯車列を介した伝達手段に加わるトルクが最大となる角度よりも大きい角度を前記第一の所定角度として制御を行うことで、慣性トルクが最も大きくなるポイントである便座又は便蓋が閉止状態から開き始める瞬間を確実に第一の駆動トルクにて動作させることが可能となる。
【0015】
また、請求項10記載の発明によれば、前記第二の所定角度は、前記第一の駆動トルクから前記第二の駆動トルクに段階的に駆動トルクが増加する間に、前記伝達手段に加わるトルクが前記第一の所定角度内で発生した前記伝達手段に加わる最大トルクを超えないような駆動トルクの変化量となる角度を前記第二の所定角度とすることで、前記第一の所定角度後も便座又は便蓋の開動作スピードが段階的に増加していくため、第二の所定角度までの間も急激な速度変動がなくなり慣性トルクを抑制することが可能となる。
【0016】
また、請求項11記載の発明によれば、前記駆動モータは、Duty比でPWM制御するよう構成することで、前記第一の駆動トルクを前記Duty比を100%よりも小さいDuty比で制御し、前記第一の駆動トルクから前記第二の駆動トルクまで段階的にトルクを増加させる場合には、前記Duty比を段階的に増幅させることで、駆動モータのトルク制御が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、便座又は便蓋の開動作時に動作開始後の所定時間は、便座又は便蓋を開閉する駆動モータを低い駆動トルクにて出力するよう制御することで、駆動モータから減速歯車列を介した回転軸までの伝達手段にかかる負荷を軽減し、且つ所定時間経過後は、段階的に駆動トルクを増加させることで便座又は便蓋の開動作スピードが増し、使用者にとって違和感のないスムーズな開動作フィーリングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
便座又は便蓋の電動開閉装置は、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路を備えており、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する。前記駆動モータは、Duty比を変化させることで出力の制御を行うPWM制御とする。
【0019】
ここでは便座の電動開動作を主体に説明するが、便蓋の開動作についても同様である。
【0020】
便座の開動作時には、図21に示すように開動作要求があってから第一の所定時間まで第一の駆動トルクを出力するDuty比にてPWM制御を行う。第一の所定時間は、便座が開方向側へ開くときの最大トルクが発生するまでの時間よりも長い時間とし、さらに駆動モータから回転軸までの伝達手段のガタ、伝達軸と便座の嵌合部のガタ、駆動モータ自体の速度のバラツキ等を加味した上で時間を設定する。第一の駆動トルクは便座重量のバラツキや便座カバーを装着した際の重量付加分を加味した上で、便座が最も重くなった状態でも便座を開かせることが可能な最小駆動トルクを出力するDuty比とする。第一の所定時間経過後は第二の所定時間をかけて第二の駆動トルクに至るまで段階的にDuty比を増幅させていく。第二の駆動トルクは、その駆動モータの最大出力を発揮するDuty比100%とし、第二の所定時間は、便座の開動作フィーリングの許す限り長い時間を設定する。このようなPWM制御を行うことで、便座が開き始めるときの角加速度を必要最低限に抑え、便座が開く瞬間に発生する慣性トルクを抑制することで減速歯車列等の駆動手段にかかるストレスを軽減でき、その後便座の開動作スピードが段階的に増加していくため使用者に対して違和感を与えず、良好な開動作フィーリングを得ることができる。
【0021】
以上の実施形態では、第一の駆動トルクで制御する時間域、および第一の駆動トルクから第二の駆動トルクに至るまで段階的にDuty比を増幅させながら制御する時間域のそれぞれを、第一の所定時間、第二の所定時間として設定したが、便座又は便蓋の開閉角度を検出する角度検出手段を電動開閉装置に具備する場合には、図22に示すように、時間に代えて、検出した便座又は便蓋の開角度に基いて駆動モータのDuty比の制御を行うことで実現することができる。
【0022】
これらの実施形態においては、第一の駆動トルクを一定の値としているが、これに拘泥されず、経過時間あるいは開角度が大になるにつれて、第一の所定時間が経過するまで、あるいは第一の所定角度を超えるまでの間、駆動トルクを微小に大きくするように制御してもよい。なお、微小に駆動トルクを増大させる場合でも、本出願においてはそれを第一の駆動トルクと称することにする。
【0023】
さらに、第二の所定時間あるいは第一の所定角度から第二の所定角度に至るまでの間は、段階的にDuty比を増幅させて駆動トルクを増大させたが、駆動トルクをいきなり上げるような制御をすることもできる。
【0024】
また、本発明は、駆動モータをPWM制御するものに限定されるものではなく、駆動モータへの印加電圧を上下させるように制御して駆動トルクを調整してもよい。
【0025】
次に、本発明の特徴を明らかにするために、(1)開動作要求があってからDuty比100%一定で制御した場合(比較例)と、(2)第一の所定時間を180msec、第一の駆動トルクを出力するDuty比を60%、第二の所定時間を300msec、第二の駆動トルクを出力するDuty比を100%として制御した場合、のそれぞれの伝達手段に加わるトルクを実際に測定した結果を図23、図24を用いて説明する。なお、図23、図24は、開動作要求から500msec間だけのトルクを示したものであり、便座が全開角度まで開いたときの伝達手段に加わるトルクを示したものではない。
【0026】
図23は、便座の開動作要求直後から駆動のDuty比を100%としたときの伝達手段に加わるトルクを測定した比較例についてトルク波形と駆動Duty比を縦軸にとり、開動作要求後からの経過時間を横軸にとったものである。便座の開要求後からA点までの間は、駆動モータから回転軸までの伝達手段のガタや伝達軸と便座の嵌合部のガタにより伝達手段に負荷がかからず空転している領域で、A点で伝達軸と便座の嵌合部が衝突し負荷がかかり始める。A点からB点までは便座の重量による負荷トルク、減速歯車列や回転軸などの伝達手段のひずみにより発生するトルク、停止状態のものが動き出す瞬間に発生する慣性トルクの合計が伝達手段に加わり、最大トルクとなるB点(山の頂上)で便座が開き始める。B点以降のC点までは便座の負荷トルクとDuty比100%における駆動トルクのバランスが取れるまで駆動モータが加速し、C点以降は便座の重量と重心位置、その開放角度に応じた負荷トルクが駆動モータにかかる安定したトルク領域に入る。
【0027】
図24は、本発明について、第一の所定時間を180msec、第一の駆動トルクを出力するDuty比を60%、第二の所定時間を300msec、第二の駆動トルクを出力するDuty比を100%と設定し、伝達部に加わるトルクを測定したときのトルク波形と駆動Duty比を縦軸にとり、開動作要求後からの経過時間を横軸にとったものである。第一の所定時間を180msecとしたのは、駆動モータから回転軸までの伝達手段のガタと伝達軸と便座の嵌合部のガタ等のバラツキを考慮したときの最大の時間で、第一の駆動トルクを出力するDuty比を60%としたのは、便座重量のバラツキと便座カバーを装着したときの最大重量でも便座が閉止状態から開くことができる最小のDuty比を設定したものである。また、第二の所定時間を300msecとしたのは、第二の駆動トルクを出力するDuty比を100%としたときに便座の開動作スピードが使用者にとって違和感のないスムーズな動作をするための最長の時間を設定したものである。トルクの波形としては図23にて説明した比較例と同様の波形を示すが、第一の駆動トルクを出力するDuty比を60%としたことで、B点における最大トルク(山の高さ)が比較例における2.8N・mから2.1N・mまで0.7N・m減少していることがわかる。これが今回の発明における最大の効果であり、このB点の最大トルクは便座が閉止状態から電動で開動作する際に必ず発生するもので、この最大トルクを低減させることによって減速歯車列等の駆動手段にかかるストレスを軽減でき、寿命を延ばすことが可能となる。また、第一の駆動トルクを出力するDuty比を60%としたことで100%としたときより駆動モータの回転速度が遅くなり出力トルクも低下するため、その影響としてA点、B点、C点それぞれの開動作要求後からの経過時間やその後の便座が全開となるまでの時間に遅れが発生するが、約200〜300msec程度の遅れであり、使用者に違和感を与えることがない。
【実施例】
【0028】
以下図面を参照して実施例について説明する。
図1は本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置を内蔵した便座装置10の斜視図、図2は便座又は便蓋の電動開閉装置の取付け位置を説明する為の分解斜視図、図3は便座用電動開閉装置30を内蔵した便座装置10の断面図、図4は便蓋用電動開閉装置130を内蔵した便座装置10の断面図である。図において、便器本体1の背部側のリムの上面を利用して暖房便座装置10のケーシング11を固定し、このケーシング11前側中央に凸収納部11aを形成し、この収納部11aの側壁11bに便座用電動開閉ユニット30、便蓋用電動開閉ユニット130を取付け、該電動開閉ユニット30、130に便座12及び便蓋13を夫々取付けている。
【0029】
便座12及び便蓋13には、夫々の基端部に連結部12a、13a及び回動部12b、13bを設けており、連結部12aは後述するアシストユニット80を介して便座用電動開閉ユニット30の出力軸である回転軸40に回動不能に連結され、連結部13aは、便蓋用電動開閉ユニット130の出力軸140に連結した回転軸50に対し夫々回動不能に連結される。また、回動部12b、13bは、便座12及び便蓋13を開閉可能に支持するための支持軸50a(回転軸50の中途部に形成)、81a(回転軸40に連結した連結軸81の先端部81a)に対し夫々回動可能に連結される。なお図4中の符号150は電動開閉ユニット30、130を駆動するための駆動回路及びその回路を保護するためのポッティングケースである。
【0030】
次に、電動開閉ユニットの構造を、図5〜9にしたがって説明する。
図5に便座用電動開閉ユニット30の分解斜視図、図6に駆動モータ組品Aの分解斜視図、図7に遊星歯車組品Bの分解斜視図、図8に便座用電動開閉ユニットのケーシング31bを外した状態での平面図、図9にアシストユニット80の分解斜視図を示す。なお、図8の各歯車の歯数及び歯形状は実際のものとは異なる(例えば、小歯車32b、34bは実際には歯数7だが、図では歯数8として記載する)。
【0031】
図5に示すように、便座用電動開閉ユニット30は、外郭を形成するケーシング31(主ケース31a及び蓋ケース31bで構成)、駆動モータ組品A、駆動モータ組品内の小歯車34bと噛み合う大歯車37a及び次段へ動力を伝達する為の小歯車37bを有する第2歯車37、小歯車37bと噛み合う大歯車38a及び次段へ動力を伝達する為の太陽歯車38bを有する第3歯車38、遊星歯車組品B(図7に示すように遊星歯車組品Bは、回転軸40、回転軸40に固定され便座12の回転位置を検出するためのリング状磁石61、設定以上の荷重が回転軸40にかかった場合にキャリア63に荷重を伝達しないためにトルクリミッターとして機能するトレランスリング62、トレランスリング62を介して回転軸40に連結されるキャリア63、キャリア63に設けた遊星軸63aに回動自在に取付けられる遊星歯車64、遊星歯車64のスラスト方向の動きを規制する軸受65と、遊星歯車64と噛み合う内歯車66、ケーシング31aに遊星歯車機構を回動不能に固定する為の取付スペーサ67とで構成される。)とで構成される。
【0032】
なお、駆動モータ組品Aは、図6に示すように、DCブラシモータ等の直流モータにより構成される駆動モータ32、駆動モータ32の出力軸32aに圧入固定される小歯車32b、駆動モータ32にネジ等を用いて固定される第1歯車固定用スペーサ33、小歯車32bと噛み合う大歯車34a及び次段へ動力を伝達する為の小歯車34bを有する第1歯車34、第1歯車34の回動軸35、スペーサ33に固定される第1歯車34の軸受36から構成される。なお、大歯車34a表面(駆動モータ側)にはリング状磁石34cを接着或いはかしめ等で一体化する。
【0033】
なお、小歯車32b、小歯車34b、小歯車37bは金属製、大歯車34a、大歯車37aは樹脂製とし、小歯車32bと大歯車34a、小歯車34bと大歯車37aはすば歯車とする。また、第3歯車38の大歯車38aと太陽歯車38bとを金属にて一体成形し、小歯車37bと大歯車38aは平歯車とする。更に遊星歯車64は金属製とし、内歯車66は樹脂製とする。なお、金属歯車はプレス焼結や射出焼結等の金属焼結や、冷間鍛造等によって成形することができる。また樹脂歯車との一体成形としてはインサート成形等で成形することができる。
このように平歯に比べ薄くても接触面積を確保できるはすば歯車を用いることで歯車自体を薄くしても歯車強度を確保することができ、減速歯車列をコンパクトすることができる。また接触面積の大きいはすば歯車を比較的高速回転となる第1、2列の減速歯車列に用いることでバックラッシュを小さくすることが可能となり伝達効率を上げることが出来る。また、はすば歯車部分の噛み合いを金属(小歯車)と樹脂(大歯車)にすることによって磨耗による熱の発生や騒音等を抑制することができる。また、比較的低速回転・高トルクとなる第3、4列の減速歯車を金属製とすることで歯車の破壊を抑制することができる。
【0034】
次に便座用電動開閉ユニット30の組み立て手順について図を用いて説明する。
図6に示すように駆動モータ組品Aの組み立ては以下の手順で行われる。まずスペーサ33の軸受孔33aに軸35の一端を差込み、軸35に第1歯車34を挿入し、軸受36の軸孔36aに軸35の他端を、位置決め孔36bに位置決めボス33bを挿入し固定孔36c、36cにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入固定し、スペーサ33に設けた下孔33cにねじ込むことで、スペーサ33、第1歯車34、軸35及び軸受36を一体化し、更に駆動モータ32の出力軸32a及び小歯車32bをスペーサ33の貫挿孔33eから第1歯車34と小歯車32bとの噛み合いに注意しながら貫挿し、ネジ挿通孔36d(軸受36)、固定孔33d(スペーサ33)からネジを差込み、駆動モータ32に設けたネジ孔32cにネジ込むことで組み立て完了する。なおネジ挿通孔36dはネジ頭よりも大きな径とし、ネジ挿通孔36d側の固定孔33dは途中(他方の固定孔33dと同一の肉厚となる位置)まではネジ頭よりも大きな径とし、途中からネジ部分が貫通する程度の径とすることで、駆動モータ32への固定用ネジ2本を共通化することができる。
このように減速歯車列の第1段目を駆動モータ32に一体化することで軸ブレ等を抑制することができ伝達効率を上げることができる。
【0035】
図7に示すように遊星歯車組品Bの組み立ては以下の手順で行われる。
まずキャリア63に設けた遊星軸63aに遊星歯車64を装着し、内歯車66を遊星歯車64との嵌め合いに注意しながら装着する。次に軸受65に設けた軸受凹部65aに軸63aの終端部を装着し、遊星歯車64の動作領域を確保するためにキャリア63に設けた締結スペーサ63bの細径円筒部63cを軸受65に設けた貫通孔65bに挿通しカシメることでキャリア63、遊星歯車64、軸受65及び内歯車66を一体化する(以下この一体化したものを『遊星歯車機構』という)。この遊星歯車機構の出力軸63dの外周にトレランスリング62を嵌装し、内歯車66の外周に所定間隔をおいて形成した回動防止用の複数の凹溝66aと略同一形状の凸部67e(図8参照)を有するスペーサ67を内歯車66に外装し、スペーサ67の開孔67bから出力軸63dを突出させた状態で、回転軸40の後端に設けた連結孔40a内にトレランスリング62の外周を嵌着することで遊星歯車組品Bの組み立ては完了する。なお回転軸40のフランジ40bには予めリング状の磁石61(N−Sが2つ形成されているもの)を止め輪等を用いて一体化しておく。またスペーサ67の奥側には後述するエリア検出回路71を保護する保護ブロック67cを一体に設け、67cの表面には配線処理用リブ67dを設ける。
【0036】
次に便座用電動開閉ユニット30の組み立て手順を図5を用いて説明する。
磁石34cの磁力を検知するホールIC70aを搭載した回転検出回路70の取付孔70bにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31eにネジ固定することでケーシング31aと回転検出回路70を一体化する。次に、磁石61の磁力を検知するホールIC71a、71bを搭載したエリア検出回路71の取付孔71cにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31fにネジ固定することでケーシング31aとエリア検出回路71を一体化する。なおエリア検出回路71には駆動モータ32への通電用配線(図示無)を半田付けしており、その通電用配線の一つに直列に接続される正特性サーミスタ71dを更に半田付けしておく。この正特性サーミスタは駆動モータ32へ過電流が流れることを防止するために設けている。次に、ケーシング31aの下端部に設けたモータ収納部31cに駆動モータ組品Aを収納し、スペーサ33に形成した取付孔33fにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31dにネジ固定することでケーシング31aと駆動モータ組品Aを一体化する。
【0037】
次に、遊星歯車組品Bをケーシング31aの円筒部31gに設けた凸条31r(図8参照)とスペーサ67の外周に設けた凹溝67aとが一致するよう、またスペーサ67の保護ブロック67cの外形とケーシング31aの内壁とが当接するようにして円筒部31g内に挿入固定する。なお、円筒部31gの奥壁には貫通孔31iを設け、この貫通孔31iの周壁31jと回転軸40に設けたOリング溝40に収納されるOリング40cにより貫通孔31iからの水侵入を防止するよう構成している。ここでスペーサ67を用いてケーシング31aを取付けた理由は、遊星歯車機構自体はその機能上真円度が必要となり、これを直接ケーシング31aに取り付けるにはケーシング31aの円筒部31gにも真円度が必要となり寸法公差が厳しく歩留まりが悪くなる為、スペーサ67の凸部67e、ケーシング31aの凸条31rで略点接触として製造公差をスペーサ67の弾性変形で吸収できる構造としてケーシング31aの円筒部31gの製造を容易とするためである。
【0038】
次に遊星歯車64と太陽歯車38bとの噛み合いに注意しながら第3歯車38を遊星歯車機構内に挿入し、小歯車37bと大歯車38aの噛み合いと大歯車37aと小歯車34bとの噛み合いに注意しながら第2歯車を軸31kに挿入固定する。最後にケーシング31bに設けた軸31lを第3歯車38の軸孔38c内に挿入すると共に、軸31kの先端を軸受31m内に挿入し、ケーシング31aに設けた取付孔31nにセルフタッピングネジを挿入し、ケーシング31bに設けた取付ボスの下孔31pにねじ込むことで便座用電動開閉ユニット30は組み立て完了する。
図8に示すように、駆動モータ32の外形と遊星歯車機構の外形との投影面がなす2円(Ca,Cb)を隣接して配置し、更に、2円(Ca,Cb)及び2円の外接線(Lc,Ld)によって囲まれた投影面内に第1歯車34、第2歯車37の軸を配置することによって電動開閉ユニット30をコンパクトに設計することができる。更に本実施例では、2円(Ca,Cb)の中心を通る水平線(La,Lb)と外接線(Lc,Ld)に囲まれた投影面内に第1歯車34、第2歯車37の軸を配置しているので更にコンパクトに設計することが出来る。また水平線(La,Lb)に代えて、2円(Ca,Cb)の中心を結ぶ線に対し各円の中心を通る垂線を用いることでも良い。本実施例ではこの垂線も略水平となるため、然程大きな差異では無いが、減速歯車列を水平方向に配置する場合等はこのような設計とする方が望ましい。
【0039】
便蓋用電動開閉ユニット130も便座用電動開閉ユニット30と同様の部品構成、組み立て手順である為、相違点を除き説明は割愛する。以下に相違点を説明する。便座用電動開閉ユニット30と便蓋用電動開閉ユニット130とは左右対称の部品構成となる。図2、図4及び図8に示すように便蓋用電動開閉ユニット130の出力軸140には回転軸50が回動不能に挿入固定される略長方形状の連結孔141が設けられている。また便蓋用電動開閉ユニット130のケーシング131aにはケーシング11の側壁11bと所定間隔を保つ為のボス131b及びキャップ部材11dの受用突起131cが一体に設けられている。
【0040】
次にアシストユニット80について図3、図9を用いて説明する。
アシストユニット80は電動開閉ユニット30の回転軸40に回動不能に連結される連結軸81、便座12を開方向に付勢するために一端82aが連結軸81に固定されたアシストバネ82、アシストバネ82の他端82bが固定されると共にケーシング11に回動不能に連結される連結カバー83、連結カバー83と共にアシストバネ82を囲う蓋カバー84、便座12をケーシング11から着脱するための着脱レバー85、アシストユニット80を便座12に固定する為の固定部材86で構成される。
【0041】
連結軸81の先端部81a(便蓋13の支持軸)にはセレーションを形成し、略中央部分には連結軸81のスラスト方向の移動を規制するための大径部81bを形成する。また、蓋カバー84の内筒部84aとの間をシールする為のOリング溝81cを形成し、大径部81bとOリング溝81cとの間にアシストバネ82に一端を挿入するための挿入穴81dを形成する。また、カバー83の内筒部83aとの間をシールする為のOリング溝81eを形成し、末端部分には回転軸40の外形と略同一形状の溝81fを形成する。
【0042】
アシストバネ82の一端82aは中央に向けて折り曲げられ、挿入孔81dに挿入され、他端82bは中央に向けて折り曲げられ連結カバー83の内筒部83aの外周に形成した支持溝83bに固定される。なお支持溝83bの根元部分はやや底部83cの肉厚を増してアシストバネ82の他端82bの回動を防止する防止壁83dを形成する。また、連結カバー83の後端には便座用電動開閉ユニット30の外郭ケーシング31aに一体に形成した係合突起31qに嵌合して回動が規制される規制突起83eを形成し、規制突起の83eの周縁部分の一箇所に着脱レバーの回動を規制するストッパ83fを形成する。また、外筒部83gには若干径を細めた細径部83hを形成する。
連結カバー83の開口端には溶着用リブ83iを全周に形成し、蓋カバー84を超音波溶着等で一体化する。
【0043】
着脱レバー85は、上方が切り欠かれた支持円筒85aと下方が切り欠かれた着脱用円筒85bとで形成され、その間に内側及び外側に若干肉を増したリング状リブ85cを形成する。このリング状リブ85cの内径は細径部83hと略同一径で外筒部83gよりも小さい径としておく。また、着脱用円筒85bには把持用突起85dを形成する。
固定部材86には連結軸81の外形と略同一形状の連結用開口86a、便座12に回動不能に固定するために外周に沿って所定間隔毎に設けた突起86b、略L字形状の連結クランク86cを形成する。また、連結クランク86cには締結ネジ用の下孔86d、アシストユニット80(固定部材86を除く)のスラスト方向の移動を規制するストッパ86eを形成する。
【0044】
次にアシストユニット80の組み立て手順を説明する。連結軸81のOリング溝81c、81eにOリングを収要し、連結軸81の挿入孔81dにアシストバネ82の一端82aを挿入し、他端82bを連結カバー83の支持溝83bに係合させて連結軸81を連結カバー83の内筒部83a内に、内筒部83aの端部と連結軸81の大径部81bとが当接するまで挿入する。これによりアシストバネ82の他端82bは防止壁83d内に収容される。次に蓋カバー84の内筒部84a内に連結軸81の先端部81aを挿入し、蓋カバー84の裏側と連結カバー83の溶着用リブ83iとを当接させた状態で、蓋カバーを超音波振動させることで連結軸81、アシストバネ82、連結カバー83、蓋カバー84を一体化する。次に着脱レバー85を外筒部83gに挿入するが、外筒部83gはリング状リブ85cよりも若干大きな径としているので、リング状リブ85cが外筒部83gを乗り上げ細径部83hまで挿入されると連結カバー83と着脱レバー85とは一体化され、着脱レバー85は外筒部83gとリング状リブ85cとでスラスト方向の抜けは規制される。次に連結軸81を固定部材86の連結用開口86a内に挿入することでアシストユニット80は一体化される。
【0045】
このアシストユニット80の連結軸81を便座12の連結孔12d(図1参照)内に挿通し、アシストユニット80を便座12の連結部12a内に挿入した状態で、固定部材86の下孔86d及び便座12のネジ孔12c(図1参照)とをセルフタッピングネジで締結することで便座12とアシストユニット80は一体化される。なお、連結クランク86cは便座12に装着される前は外側に弾性変形可能であるため、アシストユニット80(固定部材86を除く)は固定部材86から着脱可能であるが、便座12に装着された後では便座12によって外側の変形は規制される為、ストッパ86eと連結カバー83のフランジ83jとによってアシストユニット80(固定部材86を除く)はスラスト方向の抜けが規制される。また、着脱レバー85も同様に連結クランク86cと外筒部83gとのクリアランスが小さく外筒部83gを乗り越える程外側に着脱レバー85が変形できないことでスラスト方向の抜けが防止される。
【0046】
次にトレランスリング62について図10の原理図を用いて説明する。トレランスリング62は図に示すように波形状をした部分をもつリングの形状をしており、各波はバネとして作用し、その作用力は波の変形量に比例する。組み立て時に必要な力をAF、半径方向力をRL(N)、摩擦係数をμ、波の数をn、波の変形量をc(mm)、バネ定数をK(N/mm)、伝達トルクをMt、軸直径をd(m)とすると、
RL=n・c・K
AF=RL・μ
Mt=AF・d/2
で算出することができる。
バネ定数は材料の厚さ、波のピッチ、幅、形状、高さを変更することで設定できるので、正常時に回転軸40,140に最大どの程度のトルクがかかるかを実験等で見極め、そのトルクに応じてトレランスリング62の形状を選択する。
この設定トルク以上のトルクが回転軸40に発生した場合には、トレランスリング62の波形状部62aが回転軸40、140の連結孔に食い込み固定されており、トレランスリングのリング状縁部62bがキャリア63の出力軸63dの外周を滑り、設定トルク以上の過重が電動開閉ユニット30、130内部にかかることがなく、歯車の破損等を防止することが出来る。
【0047】
駆動モータ32の断面図を図11に示す。図示のように駆動モータ32のシャフトはモータ内部を貫通しており、その径は内部では比較的太く、露出した部分は細径としている。この先端部32aを細径としたのは、小歯車32bの歯数をできるだけ少なくして減速比を大きくとりたいためである。なお、シャフト自体を細径とすることも考えられるが、シャフト長に対してシャフトが細いと駆動モータ32の軸ぶれが大きくなるためにシャフト自体を細径とはせず、小歯車32bが取付けれる部分のみを細径とするのである。
【0048】
次に上記構成の便座用電動開閉ユニット30による動作の説明を行う。
図12に本発明の便座装置の制御ブロック図、図13に駆動モータ32のドライバ回路図、図14にスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4への通電信号波形、図15にエリア検出回路71に設けたホールIC71a、71bの出力信号波形、図16に回転検出回路に設けたホールIC70aの出力信号波形、図17〜図20に動作フローを示す。
【0049】
図12に示すように駆動モータ32の制御はドライバ回路150で行われる。
ドライバ回路150は、図13を参照して、回転方向及び回転量を制御するためにトランジスタ等で構成するスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4と、過電流が駆動モータ32へ流れることを防止するための正特性サーミスタ71dと、電動開閉制御用CPU等へブレーキ制御時の逆起電力等が加わらないようにする為の保護手段としてダイオードd1、d2で構成される。今回の電動開閉モータの構造では出力側(=便座・便蓋)から回されると多段(544段)でDCモータを使用しているため、モータの発電電圧が高くなる(70V程度まで上昇)。
駆動モータ32を正転する際はTr1とTr4とをオン状態、Tr2とTr3をオフ状態とし、反転の際はTr1とTr4とをオフ状態、Tr2とTr3をオン状態とし、ブレーキをかける際はTr3とTr4をオン状態、Tr1とTr2をオフ状態とする(ショートブレーキ)。また、負荷をフリーする際は、Tr1及びTr2、Tr3、Tr4をすべて、オフ状態とする(フリー制御)。ブレーキをかける際は便座若しくは便蓋の自重で駆動モータ32のシャフトが回転させられ駆動モータ32は発電機として作用するため前述のダイオードd1、d2で電動開閉制御用CPU等へ逆起電力が加わらないようにする。また、図示しないが、Tr3、Tr4へ逆起電力が加わらないよう、別のダイオードを設けるようにする。
【0050】
また、夫々のオン時間を図14に示すような通電信号波形でDuty制御することで駆動モータ32の回転速度を制御する。なお、正転、逆転時はGを1ms(PWM駆動周波数1kHz)とし、ブレーキ時はGを8ms(PWM駆動周波数125Hz)とする。なお、ON−DutyがH%とは1周期(Gms)中にオンする時間がH%であることを示しており、例えばG=1ms、H=30%であれば1周期中に0.3ms(1ms*30%)オンすることを意味する。なお、このHは回転検出回路70及びエリア検出回路71によって検知される便座若しくは便蓋の検知位置に応じた夫々の設定とする。(以下30%Duty等として記載する。)また、便座・便蓋の開位置を、図15のように、エリアA(閉端エリア)、エリアB(動作エリア)、エリアC(開端エリア)、エリアD(異常エリア)の4つのエリアに区分けしておく。
【0051】
図17には便蓋開要求が有った際のフローチャートを示す。例えば人体検知センサによる人体接近検知若しくはリモコン等に設けられる便蓋開スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋開要求がなされると蓋開端位置を記憶しているかを確認し、蓋開端の位置の記憶がなされていると、駆動モータが第一の駆動トルクにて動作するようTr1、Tr4を低Duty(ここでは60%Duty、G=1ms)でオン状態として便蓋が確実に持ち上がるまでの第一の所定時間(ここでは180msec)低Dutyにて開動作を継続し、第二の所定時間(ここでは300msec)で60%Dutyから第二の駆動トルクを出力するDuty(ここでは100%Duty)に到達するまで段階的にDutyを増幅し、100%Dutyに到達した後は100%Dutyを継続し、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がLowからHiへ切り替わる(80°検知)と、Tr1、Tr4を50%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−15°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−10°に相当するパルス数)に達するとTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)で0.1秒間オン状態とし、続いてTr3、Tr4を50%Duty(G=8ms)で0.4秒間間欠的にオン状態とし、その後再度Tr1、Tr4を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態として駆動モータ32を駆動し、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合にロータンク等の障害物によって便蓋13開動作が停止した(停止検知)と判断して駆動モータ32への通電を停止する。なお、停止検知が得られない場合にも8°相当のパルス数をホールIC70aから得ることができた時点で通電停止する。このようにして便蓋用電動開閉ユニット130内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸140を介して駆動モータ32の回転が回転軸50に伝達し、便蓋13を開放し、80°を超える開端付近では蓋の自重による逆起電力の発生を利用してブレーキをかけることでロータンク等の障害物との衝突音を小さくすることが出来る。また最後に再度20%Dutyで便蓋を駆動するのは次の閉止動作の準備の為である。
【0052】
図18には便座開要求が有った際のフローチャートを示す。例えばリモコン等に設けられる便座開スイッチ(図示無し)が操作されて便座開要求がなされると座開端位置を記憶しているかを確認し、座開端の位置の記憶がなされていると、駆動モータが第一の駆動トルクにて動作するようTr1、Tr4を低Duty(ここでは60%Duty、G=1ms)でオン状態として便蓋が確実に持ち上がるまでの第一の所定時間(ここでは180msec)低Dutyにて開動作を継続し、第二の所定時間(ここでは300msec)で60%Dutyから第二の駆動トルクを出力するDuty(ここでは100%Duty)に到達するまで段階的にDutyを増幅し、100%Dutyに到達した後は100%Dutyを継続し、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がLowからHiへ切り替わる(80°検知)と、Tr1、Tr4を50%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−15°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−10°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態として駆動モータ32を駆動し、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合にロータンク等の障害物によって便座12開動作が停止した(停止検知)と判断して駆動モータ32への通電を停止する。なお、エリアDに移行した後35°駆動(回転検出回路70の35°に相当するパルス数をカウント)しても停止検知できない場合にはその時点で通電を停止する。この停止位置が140°以上である場合には異常とみて、後述する異常時制御フローへ移行する。このようにして便座用電動開閉ユニット30内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸40を介して駆動モータ32の回転が伝達し、便座12を開放する。なお、便蓋13の開放時にはブレーキ制御を行い緩やかな閉止動作を行うようにしたが便座12では行っていない。これは、便蓋13裏面にはクッション脚が設けられており、便座12を勢い良く開放しても、このクッション脚により衝突音はもともと抑制されるからである。
【0053】
例えばリモコン等に設けられる便蓋・便座同時開スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋及び便座開要求がなされると、図17及び図18に示したフローチャートの通りに便蓋用開閉ユニット130、便座用開閉ユニット30の夫々の駆動モータ32を同時に制御することで便座12及び便蓋13の開放動作が行われる。
【0054】
図19には、便蓋(便座)開端位置を記憶するための概略のフローチャートを示す。例えばリモコン等に設けられる便蓋(便座)開スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋(便座)開要求がなされると便蓋(便座)開端位置を記憶しているかを確認し、便蓋(便座)開端の位置の記憶がなされていないと、駆動モータが第一の駆動トルクにて動作するようTr1、Tr4を低Duty(ここでは60%Duty、G=1ms)でオン状態として便蓋が確実に持ち上がるまでの第一の所定時間(ここでは180msec)低Dutyにて開動作を継続し、第二の所定時間(ここでは300msec)で60%Dutyから第二の駆動トルクを出力するDuty(ここでは100%Duty)に到達するまで段階的にDutyを増幅し、100%Dutyに到達した後は100%Dutyを継続し、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がLowからHiへ切り替わる(80°検知)と、Tr1、Tr4を50%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合にロータンク等の障害物によって便蓋(便座)開動作が停止した(停止検知)と判断して駆動モータ32への通電を停止する。なお、エリアCに移行した後の回転検出回路70の出力パルス数をカウントしてそのカウント値を便蓋(便座)開端位置として記憶する。なお、停止検知が得られない場合には、図17に示したように8°駆動した時点で便蓋駆動を停止する。便座も同様に停止検知が得られない場合には図18に示したように140°の位置まで駆動するようにして便座用電動開閉ユニット30内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸40を介して駆動モータ32の回転が伝達し、便座12を開放する。なお、便蓋13の開放時にはブレーキ制御を行い緩やかな閉止動作を行うようにしたが便座12では行っていない。これは、便蓋13裏面にはクッション脚が設けられており、便座12を勢い良く開放しても、このクッション脚により衝突音はもともと抑制されるからである。
【0055】
図20には異常時制御フローを示す。通常時には便座12はケーシング11と当接するため110°以上回転することは無い。しかし、便座12及び便蓋13を取り外した状態で、便座開スイッチ若しくは便座・便蓋同時開スイッチが操作されるとケーシング11に当接することは無いので、制御上の限界角度140°まで回転してしまう(図18参照)。このような状態で便座12及び便蓋13を取付けようとしても電動開閉ユニットの回転軸40、50と便座・便蓋の基端部に設けた連結部12a、13a及び回動部12b、13bとが噛み合わないために取り付かない。このため、便座用電動開閉ユニット30の回転軸40の位置が140°以上を検知すると座蓋が外された状態での駆動であるとみなし、90°近辺まで出力軸を移動させて便座12の取付ができるようにする。便座側で140°以上を検知すると便蓋側電動開閉ユニット130も同様に90°近辺まで回転軸50を移動させて便蓋13の取付が出来るようにする。なお、便蓋13がどのエリアにあるかはその時々で異なるため、何れのエリアにあっても、一端エリアDへ移動させてそこから制御を行うことで確実に90°近辺へ便蓋用開閉ユニット130の回転軸50を移動することができる。
【0056】
ところで便座12は内部に暖房用のヒータが設けられており、比較的重いため、便蓋用電動開閉ユニット130と同一の構造の便座用電動開閉ユニット30だけでは便座12を持ち上げることができない。そのために図3に示したようなアシストユニット80が設けられる。このアシストユニット80は一端がケーシング11に一体化され、他端が便座12に一体化されるアシストバネ82を内蔵している。このアシストバネ82は便座12が略垂直状態で自然長とされており、便座12閉塞時には捩れた状態となっている。
従って、便座12閉塞時には開放側のトルクを発生することができ、これにより、便蓋用電動開閉ユニット130と略同一の構造でも便座12を持ち上げることが可能となっている。
【0057】
なお、アシストバネ82の一端82aは連結ケース83の規制突起83eとケーシング11に取付けられる便座用電動開閉ユニット30の係合突起31qとの係合によってケーシング11に一体化されており、アシストバネ82の他端82bは連結軸81、固定部材86を介して便座12に一体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置を内蔵した便座装置10の斜視図
【図2】本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置の取付け位置を説明する為の分解斜視図
【図3】便座用電動開閉装置30を内蔵した便座装置10の断面図
【図4】便蓋用電動開閉装置130を内蔵した便座装置10の断面
【図5】便座用電動開閉ユニット30の分解斜視図
【図6】駆動モータ組品Aの分解斜視図
【図7】遊星歯車組品Bの分解斜視図
【図8】便座用電動開閉ユニットのケーシング31bを外した状態での平面図
【図9】アシストユニット80の分解斜視図
【図10】トレランスリング62の原理図
【図11】駆動モータ32の断面図
【図12】本発明の便座装置の制御ブロック図
【図13】駆動モータ32のドライバ回路図
【図14】スイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4への通電信号波形
【図15】エリア検出回路71に設けたホールIC71a、71bの出力信号波形
【図16】回転検出回路に設けたホールIC70aの出力信号波形
【図17】便蓋開要求が有った際のフローチャート
【図18】便座開要求が有った際のフローチャート
【図19】便蓋(便座)開端位置を記憶するためのフローチャート
【図20】便座及び便蓋が取り外された状態で電動開閉ユニットの出力軸が開方向に移動した際の異常時制御フローチャート
【図21】便座及び便蓋の開動作時の駆動トルクを制御するための駆動Dutyと開要求からの時間の関係を示す図
【図22】便座及び便蓋の開動作時の駆動トルクを制御するための駆動Dutyと開要求からの便座又は便蓋の角度の関係を示す図
【図23】便座の開動作時の駆動Dutyを100%一定で制御した比較例における伝達部にかかる負荷トルクを示す図
【図24】本発明に関し、便座の開動作時の駆動Dutyを180msec間60%で制御し、その後駆動Duty100%まで300msecかけて段階的に増幅させたときの伝達部にかかる負荷トルクを示す図
【符号の説明】
【0059】
10…便座装置
11…ケーシング
12…便座
13…便蓋
30…便座用電動開閉装置
31…電動開閉ケーシング
32…駆動モータ
33…スペーサ
34…第1歯車
35…第1歯車用軸
36…第1歯車用軸受
37…第2歯車
38…第3歯車
40…便座用回転軸
50…便蓋用回転軸
A…駆動モータ組品
B…遊星歯車組品



【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路とから成り、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する便座又は便蓋の電動開閉装置において、便座又は便蓋を開方向へ駆動する際、開動作開始後は第一の所定時間まで前記駆動モータの最大駆動トルクよりも低い第一の駆動トルクにて前記駆動モータが動作するよう制御を行うことを特徴とする便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項2】
前記第一の所定時間経過後は前記第一の駆動トルクより段階的に駆動トルクを増加させ、第二の所定時間で第二の駆動トルクまで到達させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項3】
前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開動可能な駆動トルクを前記第一の駆動トルクとして出力するよう制御を行うことを特徴とする請求項1記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項4】
前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開き始めるまでに発生する前記減速歯車列を介した伝達手段に加わるトルクが最大となる時間よりも長い時間を前記第一の所定時間として制御を行うことを特徴とする請求項1記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項5】
前記第一の駆動トルクから前記第二の駆動トルクに段階的に駆動トルクが増加する間に、前記伝達手段に加わるトルクが前記第一の所定時間内で発生した前記伝達手段に加わる最大トルクを超えないような駆動トルクの変化量となる時間を前記第二の所定時間としたことを特徴とする請求項2記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項6】
便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、この回転軸をそれぞれ正逆方向に回転させる直流モータと、前記モ−タを駆動するための駆動回路と、前記便座又は便蓋の開閉角度を検出する角度検出手段から成り、該モータの駆動力を減速歯車列を介して前記回転軸に伝達して便座又は便蓋を開閉する便座又は便蓋の電動開閉装置において、便座又は便蓋を開方向へ駆動する際、開動作開始後は第一の所定角度まで前記駆動モータの最大駆動トルクよりも低い第一の駆動トルクにて前記駆動モータが動作するよう制御を行うことを特徴とする便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項7】
前記第一の所定角度到達後は前記第一の駆動トルクより段階的に駆動トルクを増加させ、第二の所定角度で第二の駆動トルクまで到達させる制御を行うことを特徴とする請求項6記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項8】
前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開動可能な駆動トルクを第一の駆動トルクとして出力するよう制御を行うことを特徴とする請求項6記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項9】
前記便座又は便蓋が閉止状態から開方向側に開き始めるまでに発生する前記減速歯車列を介した伝達手段に加わるトルクが最大となる角度よりも大きい角度を前記第一の所定角度として制御を行うことを特徴とする請求項6記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項10】
前記第一の駆動トルクから前記第二の駆動トルクに段階的に駆動トルクが増加する間に、前記伝達手段に加わるトルクが前記第一の所定角度内で発生した前記伝達手段に加わる最大トルクを超えないような駆動トルクの変化量となる角度を前記第二の所定角度としたことを特徴とする請求項7記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項11】
前記駆動モータは、Duty比でPWM制御するよう構成したことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−101933(P2006−101933A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289250(P2004−289250)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】