説明

便座昇降装置

【課題】 装置全体が小型であり、さらに、トイレ内のスペースを有効利用して車椅子の使用者でも使用の便が良く、かつ、見た目にコンパクトである便座昇降装置を提供する。
【解決手段】 便座昇降装置1は、洋式便器100の便器本体101の上に固定するベース部材10と、ベース部材10の上方に配置され、便座102が固設される便座受け20と、便座受け20を昇降可能にベース部材10に連結する昇降部30,40と、昇降部30,40を昇降するための動力を供給する動力部50とを備え、動力部50は、便器本体101の後部側に配置され、昇降部30,40は、便器本体101の側面側に配置された、X字状に構成されたリンク機構30と、リンク機構30を動力部50側に連動可能に連結する連結手段40とから成り、動力部50からの動力によってリンク機構30を昇降して、便座受け20を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器の便座を昇降するための便座昇降装置に関し、特に、動力部を備えた便座昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋式便器の便座を昇降するための便座昇降装置には動力部等の動力源ユニットを備えたものと、動力源を備えずに人力によるものとがある。動力源ユニットを備えたものとしては、本願出願人が提案した特許文献1に記載の昇降便座がある。
【0003】
すなわち、昇降便座は、便座を昇降するための昇降機構としてのX字状のリンク機構を便器の両側に配置し、このリンク機構に動力を供給するためのアクチュエータを便器の側面片側に配置し、リンク機構のリンク部材の後端部側に設けたプーリ部材、中継プーリ、ケーブルなどによってリンク機構とアクチュエータ側とを連結して動力の伝達を行っている。リンク機構は、リンク部材の後端部側が前後にスライド可能であり、動力によるこの後端部のスライドに連動させて昇降動作を行っている。
【0004】
昇降動作にともなってプーリ部材を経由したケーブルを動力源ユニット内に巻き取ったり、ケーブルを引き出したりする際に、プーリ部材を経由したケーブルは、略90度から180度の方向転換をしなければならず、このために中継プーリが使用されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−344631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、昇降機構と動力源ユニットとを便器の側面側に配置するので、便座昇降装置の横幅が広くなり、横方向の設置スペースが必要になるという問題点がある。さらに、見た目に仰々しく映る場合もある。
【0007】
また、中継プーリを使用するので、それを配置する分だけ便座昇降装置が大きくなるとともに部品点数が多くなるという問題点があった。
【0008】
また、トイレの使用者が車椅子を使用している場合には、車椅子から便器への移動は便座昇降装置が小さいほど邪魔にならずに楽になるので、便座昇降装置は、小型であることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、装置全体が小型であり、さらに、トイレ内のスペースを有効利用して車椅子の使用者でも使用の便が良く、かつ、見た目にコンパクトである便座昇降装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1] 洋式便器(100)の便座(102)を昇降させる便座昇降装置(1)において、
便器本体(101)の上に固定するベース部材(10)と、該ベース部材(10)の上方に配置され、前記便座(102)が固設される便座受け(20)と、前記便座受け(20)を昇降可能に前記ベース部材(10)に連結する昇降部(30,40)と、該昇降部(30,40)を昇降するための動力を供給する動力部(50)とを備え、
前記動力部(50)は、前記便器本体(101)の後部側に配置され、
前記昇降部(30,40)は、前記便器本体(101)の側面側に配置され、X字状に構成されたリンク機構(30)と、該リンク機構(30)を前記動力部(50)側に連動可能に連結する連結手段(40)とから成り、
前記動力部(50)からの動力によって前記リンク機構(30)を昇降して、前記便座受け(20)を昇降させることを特徴とする便座昇降装置(1)。
【0011】
[2] 洋式便器(100)の便座(102)を昇降させる便座昇降装置(1)において、
便器本体(101)の上に固定するベース部材(10)と、該ベース部材(10)の上方に配置され、前記便座(102)が固設される便座受け(20)と、前記便器本体(101)の側面側に配設され、前記便座受け(20)を昇降可能に前記ベース部材(10)に連結する昇降部(30,40)と、該昇降部(30,40)を昇降するための動力を供給する動力部(50)とを備え、
前記動力部(50)は、前記便器本体(101)の後部側に配置され、
前記昇降部(30,40)は、前記便器本体(101)の側面側に配置され、X字状に構成されたリンク機構(30)と、前記便器本体(101)の前寄りで前記リンク機構(30)を前記動力部(50)側に連動可能に連結する連結手段(40)とから成り、
前記リンク機構(30)は、前記便器本体(101)の前寄り側が前後のスライドおよび回動を可能に前記ベース部材(10)および前記便座受け(20)に連結され、
前記動力部(50)からの動力によって前記リンク機構(30)が前後にスライドするとともに昇降して、前記便座受け(20)を昇降させることを特徴とする便座昇降装置(1)。
【0012】
[3] 洋式便器(100)の便座(102)を昇降させる便座昇降装置(1)において、
便器本体(101)の上に固定するベース部材(10)と、該ベース部材(10)の上方に配置され、前記便座(102)が固設される便座受け(20)と、前記便器本体(101)の側面側に配設され、前記便座受け(20)を昇降可能に前記ベース部材(10)に連結する昇降部(30,40)と、該昇降部(30,40)を駆動するための動力部(50)とを備え、
前記動力部(50)は、前記便器本体(101)の後部側に配置され、
前記昇降部(30,40)は、前記便器本体(101)の側面側に配置され、X字状に交差する第1リンク部材(31)および第2リンク部材(32)を有するリンク機構(30)と、前記便器本体(101)の前寄りで前記リンク機構(30)を前記動力部(50)側に連動可能に連結する連結手段(40)とから成り、
前記第1リンク部材(31)は、一端部(31a)が前記便座受け(20)の前部(21a)に前後のスライドおよび回動が可能に連結され、他端部(31b)が前記ベース部材(10)の後部寄りに回動可能に軸連結され、前記第2リンク部材(32)は、一端部(32a)が前記ベース部材(10)の前部(11a)に前後のスライドおよび回動が可能に連結されるとともに前記連結手段(40)に連結され、他端部(32b)が前記便座受け(20)の後部に回動可能に軸連結され、
前記第1リンク部材(31)と第2リンク部材(32)とは、互いの交差部分(33)を連結軸(34)によって軸連結され、
前記動力部(50)からの動力によって前記リンク機構(30)が前後にスライドするとともに昇降して、前記便座受け(20)を昇降させることを特徴とする便座昇降装置(1)。
【0013】
[4] 前記連結手段(40)は、前記第2リンク部材(32)のスライドする一端部(32a)に設けたプーリ(41)、および該プーリ(41)を介して前記第2リンク部材(32)と前記動力部(50)側とを連結するケーブル(42)を有し、
前記ケーブル(42)は、先端(42a)を前記ベース部材(10)に固定され、先端(42a)側を前記プーリ(41)の前側に掛けられて、後端(42b)側を前記動力部(50)側に巻き取り可能に収納され、
前記ケーブル(42)の巻き取りにより、前記プーリ(41)が後方に押されて前記第2リンク部材(32)の一端部(32a)が後方にスライドするとともに他端部(32b)が上昇し、このスライドおよび上昇に連動して前記第1リンク部材(31)の一端部(31a)が後方にスライドしながら上昇し、
前記ケーブル(42)の巻き取りを緩めると、前記第1リンク部材(31)の一端部(31a)が前方にスライドしながら下降し、このスライドおよび下降に連動して前記第2リンク部材(32)の一端部(32a)が前方にスライドして、前記便座受け(20)を昇降可能としたことを特徴とする[3]に記載の便座昇降装置(1)。
【0014】
[5] 前記昇降部(30,40)は前記便器本体(101)の両側に配置したことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の便座昇降装置(1)。
【0015】
前記本発明は次のように作用する。
洋式便器(100)の便器本体(101)の上に固定されたベース部材(10)と、このベース部材(10)の上方に配置された便座受け(20)とは、便器本体(101)の側面側に配設された昇降部(30,40)のリンク機構(30)によって連結されており、リンク機構(30)が昇降することにより、便座受け(20)が昇降する。洋式便器(100)の便座(102)は便座受け(20)に取り付けられるので、便座受け(20)が昇降することによって便座(102)が昇降する。便座(102)を昇降するための動力は動力部(50)から連結手段(40)を介してリンク機構(30)に供給される。
【0016】
昇降部(30,40)のリンク機構(30)は、第1リンク部材(31)と第2リンク部材(32)とを有し、これらがX字状に交差している。第1リンク部材(31)と第2リンク部材(32)との交差部分(33)が軸連結されているので、第1リンク部材(31)と第2リンク部材(32)はこの軸連結部分で互いに回動可能である。第1リンク部材(31)の両端部のうち、便座受け(20)の前部(21a)に連結した一端部(31a)は、前後にスライドおよび回動が可能であり、他端部(31b)はベース部材(10)の後部寄りに軸連結されているので、この軸連結部分を中心にして回動することができる。
【0017】
第2リンク部材(32)の両端部のうち、ベース部材(10)の前部(11a)に連結された一端部(32a)は前後にスライドおよび回動が可能であり、他端部(32b)は前記便座受け(20)の側面(21)の後端寄りに軸連結されているので、この軸連結部分を中心にして回動することができる。
【0018】
すなわち、昇降部(30,40)のリンク機構(30)は、第1リンク部材(31)および第2リンク部材(32)いずれも便器本体(101)の前側に位置する端部が前後にスライドできるとともに回動することができる。また、便器本体(101)の後ろ側に位置する端部は、それぞれの軸連結部分で回動できる。
【0019】
リンク機構(30)は、動力部(50)の動作によってケーブル(42)を巻き取ることにより上昇させることができる。ケーブル(42)は、先端(42a)がベース部材(10)の前部(11a)に固定されており、第2リンク部材(32)のスライドする一端部(32a)に設けたプーリ(41)の前側に掛けられてから後端(42b)側が動力部(50)側に収納されているので、ケーブル(42)を巻き取るとケーブル(42)がプーリ(41)を後方に押す。これによりプーリ(41)の設けられた第2リンク部材(32)の一端部(32a)が後方にスライドしながら他端部(32b)側が起き上がる方向に回動する。これにより、他端部(32b)の連結された便座受け(20)の後部(23)側が上昇する。
【0020】
このスライドおよび回動により、同時に第1リンク部材(31)は、連結軸(36)を中心にして起き上がる方向に回動する。一端部(31a)は後方にスライドしながら起き上がるので、この一端部(31a)が連結された便座受け(20)の前部(21a)が上昇する。このようにして、便座受け(20)とともに便座(102)を上昇させることができる。
【0021】
便座受け(20)が上昇した状態からケーブル(42)の巻き取りを緩めると、第1リンク部材(31)の一端部(31a)が前方にスライドしながら下降するとともに、第1リンク部材(31)は前方に倒れる方向に回動する。
【0022】
このスライドおよび回動により、第2リンク部材(32)の一端部(32a)は前方にスライドする。これにより、第2リンク部材(32)は後方に倒れる方向に回動して、第2リンク部材(32)の他端部(32b)は下降する。このようにして、便座受け(20)とともに便座(102)が下降する。
【0023】
昇降部(30,40)を便器本体(101)の両側に配置した場合には、昇降部(30,40)一つ当りの大きさが小さくなるとともに、便座受け(20)を左右両側で昇降させるので、昇降動作が安定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる[1],[2]および[3]の便座昇降装置によれば、ベース部材、便座受け、昇降部および動力部の全てが便器本体に配設されており、装置の幅方向を広げてしまう動力部は、デッドスペースとなっている便器本体の後部側に配置されているので、装置の横幅が小さくなって車椅子の使用者でも使用の便を良くすることができ、さらに、トイレ内のスペースを有効利用できるとともに見た目にコンパクトにすることができる。
【0025】
[4]の便座昇降装置のように、連結手段であるケーブルの先端を前記ベース部材に固定し、ベース部材の前部に前後にスライド可能に連結された第2リンク部材の一端部に設けたプーリの前側にケーブルの先端側を掛けて、後端側を動力部側に巻き取り可能に収納してもよく、これにより、昇降にともなう第2リンク部材のスライド位置にかかわらず、ケーブルの延びる方向は常に後方となるので、ケーブルの方向を転換するための中継プーリ等の方向転換部材が不要であり、その分、装置を小型化することができる。
【0026】
また、[5]の便座昇降装置のように、昇降部を便器本体の両側に配置することが好ましく、これにより、昇降部ひとつ当りの大きさを小さくできるとともに、便座受けの両側で昇降させるので安定した昇降動作を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1から図8までの各図は本発明の一実施の形態を示している。
【0028】
図1および図2は、本実施の形態にかかる便座昇降装置を装着した洋式便器を示す斜視図である。図3から図8までは、本実施の形態に係る便座昇降装置からカバーを除いた状態の構造を示す図である。
【0029】
便座昇降装置1は、洋式便器100の便器本体101の上に配設して、便座102を昇降させるものである。便座昇降装置1は、便器本体101の上に固定するベース部材10と、このベース部材10の上方に配置して、便座102を上に固設する便座受け20と、便器本体101の側面側に配設して、便座受け20を昇降可能にベース部材10に連結する昇降部、およびこの昇降部による昇降の動力を提供するための動力部である動力源ユニット50を備えている。
【0030】
ベース部材10は、図1および図2に示した下カバー60によって隠されており、図3に示すように、正面から見た形状がコ字状であり、図示を省略したが、上方から見た形状もコ字状の板状部材である。このベース部材10は、正面から見たコ字状の平行に延びる側面11を下にして便器本体101の上を跨ぐように載置することができる。ベース部材10を載置する向きは、上方から見たときのコ字状の平行に延びる平面12の先端が便器本体101の前側になる向きである。
【0031】
側面11同士を繋ぐ後部13には、ボルトを差し込むための不図示のボルト穴が形成されており、このボルト穴に差し込んだボルトをナットで止めることにより、ベース部材10を便器本体101に固定することができる。後部13の下面側には、一方の側面11に寄せて後方に突き出すように後述する動力源ユニット50が取り付けられている。また、後部13の上面側には、動力源ユニット50からのケーブル42を動力源ユニット50から遠い側面側に配索するためのケーブル保持部15が両側面付近に1箇所ずつ立設されている。ケーブル保持部15は、その上端部に凹みが形成されており、この凹みに沿ってケーブル42を入れて保持させることができる。ケーブル42は動力源ユニット50寄りを管状カバーに通されており、ケーブル保持部15に保持される部分も管状カバーに通されている。
【0032】
図5および図6に示すように、ベース部材10の両側の側面11それぞれの前部11aには、後述するリンク機構30の一部を連結するためのスライド孔14が側面11の前後方向に横長に形成されている。動力源ユニット50に近い側の側面11は、後部13よりもさらに後方まで延びており、保護壁11bとして動力源ユニット50の側面側を保護している。
【0033】
ベース部材10に連結された便座受け20は、図1および図2に示した上カバー70によって隠されている。図3および図4に示すように、便座受け20は、正面から見た形状がコ字状であり、また、上方から見た形状もコ字状の板状部材である。この便座受け20は、正面から見たコ字状の平行に延びる側面21を下にして、かつ、上方から見たときのコ字状の平行に延びる平面22の先端が便器本体101の前側になる向きにして、リンク機構30によってベース部材10に連結されている。平面22それぞれの先端付近には便座102の下面側を受ける支持部材26が設けられている。
【0034】
この側面21同士を繋ぐ後部23には、ボルトを差し込むためのボルト穴25,25が形成されており、このボルト穴25,25に差し込んだ不図示のボルトにより、便座102を平面22に固定することができる。
【0035】
図5から図8までに示すように、便座受け20の側面21それぞれの前部21aには、リンク機構30の一部を連結するためのスライド孔24が側面21の前後方向に横長に形成されている。
【0036】
昇降部30,40は、ベース部材10と便座受け20を連結するリンク機構30、およびこのリンク機構30と動力源ユニット50側を連結して動力源ユニット50側の動力をリンク機構30に伝達する連結手段40から構成されている。
【0037】
リンク機構30は、便器本体101の両側面側にそれぞれ配置されている。リンク機構30は、X字状に交差する第1リンク部材31と第2リンク部材32とを有し、これらの交差部分33が連結軸34によって軸連結されている。
【0038】
第1リンク部材31は、両端部のうちスライド端部31a(一端部)が前後方向のスライドおよび回動が可能に便座受け20のスライド孔24に連結されている。この連結は、脱落しないようにスライド孔24に差し込まれた連結軸35にスライド端部31aを回動可能に取り付けることによってなされている。もう一方の端部である回動端部31b(他端部)は、ベース部材10の側面11で後部13寄りに連結軸36によって回動可能に軸連結されている。
【0039】
一方、第2リンク部材32は、両端部のうちスライド端部32a(一端部)がベース部材10の前部11aに前後方向のスライドおよび回動が可能に連結されている。この連結は、脱落しないようにスライド孔14に差し込まれた連結軸37にスライド端部32aを回動可能に取り付けることによってなされている。もう一方の端部である回動端部32b(他端部)は、便座受け20の側面21で後部23寄りに連結軸38によって回動可能に軸連結されている。
【0040】
スライド端部32aには、さらに、次に説明する連結手段40が連結されている。連結手段40は、第2リンク部材32のスライド端部32aに設けたプーリ41、および該プーリ41を介して第2リンク部材32と動力源ユニット50側とを連結するケーブル42から構成されている。
【0041】
プーリ41は、連結軸37を回転の中心軸にして回転可能に取り付けられている。一方、ケーブル42は、先端42aがベース部材10の前部11aに固定されている。ケーブル42は、固定ピン43によって前部11aに固定されている。この固定ピン43の位置は、スライド孔14の上方で、かつ、連結軸37がスライド孔14内を最も後方に下がったときの位置よりもさらに後方にある。なお、連結軸37がスライド孔14内を最も後方に下がったときとは、後述するように便座受け20が最も上昇したときである。
【0042】
先端42aを固定ピン43に固定されたケーブル42は、前方に向けてプーリ41の前側に掛けられており、後端42b側が保護壁11bの後端を回り込むようにして動力源ユニット50に向けて配索されている。後端42bは、動力源ユニット50内に引き込まれており、動力源ユニット50内に巻き取ったり、引き出したりすることができる。
【0043】
動力源ユニット50には、不図示のモータが内蔵されている。また、動力源ユニット50内にはモータによって駆動して、ケーブル42を巻き取る、不図示の巻き取り手段が設けられている。動力源ユニット50の動作は、不図示の操作スイッチを操作することにより行わせることができる。
【0044】
図2に示したように、保護壁11bに保護された動力源ユニット50は、貯水タンク103の下方に位置している。この貯水タンク103の下方の空間は、従来からトイレ内のデッドスペースになっており、このデッドスペースに動力源ユニット50を配置することによってトイレ内のスペースを有効に利用することができるとともに便座昇降装置1の横幅を狭くできるので、使用者の目につく部分がコンパクトになる。このことは、車椅子を使用する人が車椅子から便座102に移る際など、トイレ使用者のトイレ内での動作がし易くなって、使用の便が良くなる。
【0045】
動力源ユニット50から遠い側面側のリンク機構30に動力を伝達するためのケーブル42は、ベース部材10の後部13の上面側に形成されたケーブル保持部15の凹みに入れて保持することにより、動力源ユニット50から遠い側面側まで保持した状態で配索することができる。
【0046】
次に作用を説明する。
図5および図6は、便座受け20が最も上昇した位置にあるときの便座昇降装置1を示し、図7は、便座受け20が最も下降した位置から少し上がっているときの便座昇降装置1を示し、図8は、便座受け20が最も下降した位置にあるときの便座昇降装置1を示している。
【0047】
洋式便器100の便器本体101の上に固定されたベース部材10と、このベース部材10の上方に配置された便座受け20とは、便器本体101の側面側に配設されたリンク機構30によって連結されており、動力源ユニット50からの動力によってケーブル42を収納したり、引き出したりすることにより、便座受け20を昇降させて便座102を昇降することができる。
【0048】
図8に示した状態では、第2リンク部材32の連結軸37がスライド孔14内を前方の端までスライドしており、プーリ41は最も前方に位置している。このとき、第2リンク部材32は連結軸37を回動の中心にして後方に最も倒れた状態まで回動している。このとき、ケーブル42は動力源ユニット50から最も長く引き出された状態にある。一方、第1リンク部材31は、連結軸35がスライド孔24内を前方の端までスライドしており、連結軸36を回動の中心にして前方に最も倒れた状態まで回動している。このとき第1リンク部材31と第2リンク部材32とに連結されている便座受け20の位置は、最も低くかつ最も前方にある。
【0049】
この状態で操作スイッチを操作して動力源ユニット50を動作させると、ケーブル42が動力源ユニット50内に巻き取られる。ケーブル42は、第2リンク部材32に取り付けられたプーリ41の前方側に掛けられているので、動力源ユニット50内に巻き取られることによってプーリ41をベース部材10の後方に向けて(矢印A方向に向けて)押す。これにより、連結軸37がスライド孔14内を矢印A方向にスライドすると、第2リンク部材32は、同時に連結軸37を回動の中心にして起き上がる向きに回動する。このとき、連結軸34によって第2リンク部材32に連結されている第1リンク部材31は、第2リンク部材32の回動と同時に連結軸36を回動の中心にして起き上がる向きに回動する。これと同時に、第1リンク部材31のスライド端部31aに連結された連結軸35はスライド孔24内を矢印A方向にスライドする。
【0050】
第1リンク部材31は、連結軸35がスライド孔24内をスライドしても連結軸35を回動の中心にして回動し、また、第2リンク部材32は、連結軸38を回動の中心にして回動するので、第1リンク部材31および第2リンク部材32が起き上がるように回動したときに、便座受け20は傾くことなく上昇する。
【0051】
図7に示したように、連結軸35がスライド孔24内を矢印Aの方向に途中までスライドしたときは、第1リンク部材31および第2リンク部材32が図8に示した場合よりも起き上がっており、便座受け20は傾くことなく、第1リンク部材31および第2リンク部材32が起き上がった分だけ上昇している。
【0052】
ケーブル42がさらに巻き取られると、第2リンク部材32は、さらに連結軸37がスライド孔14内を矢印A方向にスライドするとともに起き上がる向きに回動する。同時に第1リンク部材31は、さらに連結軸35がスライド孔24内を矢印A方向にスライドするとともに起き上がる方向に回動する。連結軸37および連結軸35がそれぞれスライド孔14およびスライド孔24内を矢印A方向に端までスライドして止まると、第1リンク部材31および第2リンク部材32は、起き上がる方向の回動が止まる。このときの状態が図5および図6に示されており、便座受け20は傾くことなく最も上昇した位置に在る。
【0053】
この状態から、動力源ユニット50がケーブル42の巻き取りを緩めてケーブル42が引き出されるようにすると、リンク機構30は、上記の説明とは逆の動作をして便座受け20を傾けることなく下降させる。このリンク機構30は、便器本体101の両側に配置されており、以上の動作を同時に行うので安定した昇降動作が得られる。
【0054】
このようにして、便座昇降装置1は、便座受け20を傾けることなく図5および図6に示した位置と図8に示した位置との間でスムーズに昇降させることができる。すなわち、便座受け20に取り付けられた便座102を傾けることなくスムーズに昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる便座昇降装置によって便座が上昇した状態の洋式便器を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかる便座昇降装置によって便座が下降した状態の洋式便器を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかる便座昇降装置を示す正面図である。
【図4】図3の便座昇降装置を示す平面図である。
【図5】図3の便座昇降装置の便座受けが最も上昇した位置にあるときの右側面図である。
【図6】図3の便座昇降装置の便座受けが最も上昇した位置にあるときの左側面図である。
【図7】図3の便座昇降装置の便座受けが最も下降した位置からやや上昇した位置にあるときの右側面図である。
【図8】図3の便座昇降装置の便座受けが最も下降した位置にあるときの右側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…便座昇降装置
10…ベース部材
11…側面
11a…前部
11b…保護壁
12…平面
13…後部
14…スライド孔
15…ケーブル保持部
20…便座受け
21…側面
21a…前部
22…平面
23…後部
24…スライド孔
25…ボルト穴
26…支持部材
30…リンク機構
31…第1リンク部材
31a…スライド端部
31b…回動端部
32…第2リンク部材
32a…スライド端部
32b…回動端部
33…交差部分
34,35,36,37,38…連結軸
40…連結手段
41…プーリ
42…ケーブル
42a…先端
42b…後端
43…固定ピン
50…動力源ユニット
60…下カバー
70…上カバー
100…洋式便器
101…便器本体
102…便座
103…貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器の便座を昇降させる便座昇降装置において、
便器本体の上に固定するベース部材と、該ベース部材の上方に配置され、前記便座が固設される便座受けと、前記便座受けを昇降可能に前記ベース部材に連結する昇降部と、該昇降部を昇降するための動力を供給する動力部とを備え、
前記動力部は、前記便器本体の後部側に配置され、
前記昇降部は、前記便器本体の側面側に配置され、X字状に構成されたリンク機構と、該リンク機構を前記動力部側に連動可能に連結する連結手段とから成り、
前記動力部からの動力によって前記リンク機構を昇降して、前記便座受けを昇降させることを特徴とする便座昇降装置。
【請求項2】
洋式便器の便座を昇降させる便座昇降装置において、
便器本体の上に固定するベース部材と、該ベース部材の上方に配置され、前記便座が固設される便座受けと、前記便器本体の側面側に配設され、前記便座受けを昇降可能に前記ベース部材に連結する昇降部と、該昇降部を昇降するための動力を供給する動力部とを備え、
前記動力部は、前記便器本体の後部側に配置され、
前記昇降部は、前記便器本体の側面側に配置され、X字状に構成されたリンク機構と、前記便器本体の前寄りで前記リンク機構を前記動力部側に連動可能に連結する連結手段とから成り、
前記リンク機構は、前記便器本体の前寄り側が前後のスライドおよび回動を可能に前記ベース部材および前記便座受けに連結され、
前記動力部からの動力によって前記リンク機構が前後にスライドするとともに昇降して、前記便座受けを昇降させることを特徴とする便座昇降装置。
【請求項3】
洋式便器の便座を昇降させる便座昇降装置において、
便器本体の上に固定するベース部材と、該ベース部材の上方に配置され、前記便座が固設される便座受けと、前記便器本体の側面側に配設され、前記便座受けを昇降可能に前記ベース部材に連結する昇降部と、該昇降部を駆動するための動力部とを備え、
前記動力部は、前記便器本体の後部側に配置され、
前記昇降部は、前記便器本体の側面側に配置され、X字状に交差する第1リンク部材および第2リンク部材を有するリンク機構と、前記便器本体の前寄りで前記リンク機構を前記動力部側に連動可能に連結する連結手段とから成り、
前記第1リンク部材は、一端部が前記便座受けの前部に前後のスライドおよび回動が可能に連結され、他端部が前記ベース部材の後部寄りに回動可能に軸連結され、前記第2リンク部材は、一端部が前記ベース部材の前部に前後のスライドおよび回動が可能に連結されるとともに前記連結手段に連結され、他端部が前記便座受けの後部に回動可能に軸連結され、
前記第1リンク部材と第2リンク部材とは、互いの交差部分を連結軸によって軸連結され、
前記動力部からの動力によって前記リンク機構が前後にスライドするとともに昇降して、前記便座受けを昇降させることを特徴とする便座昇降装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記第2リンク部材のスライドする一端部に設けたプーリ、および該プーリを介して前記第2リンク部材と前記動力部側とを連結するケーブルを有し、
前記ケーブルは、先端を前記ベース部材に固定され、先端側を前記プーリの前側に掛けられて、後端側を前記動力部側に巻き取り可能に収納され、
前記ケーブルの巻き取りにより、前記プーリが後方に押されて前記第2リンク部材の一端部が後方にスライドするとともに他端部が上昇し、このスライドおよび上昇に連動して前記第1リンク部材の一端部が後方にスライドしながら上昇し、
前記ケーブルの巻き取りを緩めると、前記第1リンク部材の一端部が前方にスライドしながら下降し、このスライドおよび下降に連動して前記第2リンク部材の一端部が前方にスライドして、前記便座受けを昇降可能としたことを特徴とする請求項3に記載の便座昇降装置。
【請求項5】
前記昇降部は前記便器本体の両側に配置したことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の便座昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−14517(P2007−14517A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198305(P2005−198305)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】