説明

便座

【課題】便座表部材と便座裏部材との合わせ面の筋状部に汚れが入り込んで付着することを十分に防止することができる便座を提供する。
【解決手段】便座1は、それぞれ合成樹脂製の便座表部材2の下端面2aと便座裏部材3の上端面3aとを超音波溶着によって接合することにより、便座表部材2と便座裏部材3とを一体化してなるものである。下端面2aと上端面3aとの合わせ面は、便座1の側面に位置し、浅溝状の筋状部となって便座1の側面を周方向に延在している。この筋状部に塗料5を塗着することにより、筋状部を隠蔽している。塗料5は、透明であってもよく、便座表部材2及び便座裏部材3の色と同色であってもよく、異色であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座に係り、特に便座表部材と便座裏部材とを接合してなる便座に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座等においては、便座表部材と便座裏部材とを接合し、内部が中空状となっているものが多い。この便座表部材と便座裏部材との接合合わせ面(界面)は、便座の側面や下面に露呈して筋状部を構成している。この筋状部には汚れが入り込み易い。この合わせ面に汚れが入り込むと、拭いても取れず、筋状の汚れが残ってしまう。
【0003】
特に、合成樹脂製の便座表部材及び便座裏部材は射出成形により成形されることが一般的であるが、射出成形品にバリが発生しないようにするために、通常、便座表部材及び便座裏部材の角縁に丸み(アール)付けしている。このように角縁にアール付けすることにより、便座表部材と便座裏部材の合わせ面が比較的大きな幅の筋状部となって便座の側面又は下面に露呈する。なお、この筋状部は、便座表部材と便座裏部材とを超音波溶着しても解消しない。
【0004】
この便座表部材と便座裏部材との合わせ面に汚れが付着することを防止するために、合わせ面を傾斜面とすることが特開2001−149269に記載されている。
【特許文献1】特開2001−149269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2001−149269の便座にあっては、汚れが合わせ面に入り込むことが抑制されるが、合わせ面自体は便座の側面に露呈しており、汚れが侵入し、長期にわたって使用していると筋状の汚れがこびりついて取れなくなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決し、便座表部材と便座裏部材との接合合わせ面の筋状部に汚れが入り込んで付着することを十分に防止することができる便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の便座は、便座表部材と便座裏部材とが接合された便座において、該便座表部材と便座裏部材との合わせ面が便座外面に露呈した筋状部を塗料によって隠蔽したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の便座は、請求項1において、該便座表部材及び便座裏部材の該筋状部に沿う縁部に凹部が設けられており、前記塗料は該凹部に塗着されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の便座は、請求項1又は2において、前記筋状部は便座の側面に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の便座は、請求項3において、前記便座表部材と便座裏部材との合わせ面の間に、前記塗料を兼ねた弾性接着剤が介在していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便座にあっては、便座表部材と便座裏部材との合わせ面が露呈した筋状部を塗料によって隠蔽しているので、この筋状部に汚れが入り込まない。このため、長期にわたって、汚れが付かない。また、筋状部が隠蔽されるので美観も良好である。
【0012】
請求項2の便座にあっては、塗料の厚みが大きくなり、隠蔽効果が高いものとなる。
【0013】
請求項3の通り、本発明は、筋状部が便座の側面に位置する場合に採用するのに好適である。
【0014】
請求項4の便座によると、弾性接着剤によって、便座に座ったときの衝撃が吸収されるようになり、腰を降ろしたときの感触がソフトなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係る便座の一部の縦断面図、第1図(b)は第1図(a)のB付近の拡大図、第2図はこの便座の斜視図である。
【0017】
この便座1は、それぞれ合成樹脂製の便座表部材2の下端面2aと便座裏部材3の上端面3aとを超音波溶着によって接合することにより、便座表部材2と便座裏部材3とを一体化してなるものである。この便座1は暖房便座であり、便座表部材2の内面の天井面にはヒータ(図示略)が取り付けられている。便座裏部材3の下面にはゴム足4が取り付けられている。
【0018】
上記の便座表部材下端面2a及び便座裏部材上端面3aはいずれも平坦面である。この下端面2a及び上端面3aの便座外面側の縁部2b,3bと便座内面側の縁部2c,3cとはいずれも曲率半径0.5〜1.5mm程度のアール面(凸に湾曲した曲面)となっている。この下端面2aと上端面3aとの合わせ面は、便座1の側面に位置し、浅溝状の筋状部となって便座1の側面を周方向に延在している。
【0019】
この実施の形態では、この筋状部に塗料5を塗着することにより、筋状部を隠蔽している。この塗料5は、便座表部材2及び便座裏部材3の側面から若干(例えば2mm以下、具体的には0.5〜1mm程度)盛り上がっているが、便座表部材2及び便座裏部材3の側面と面一状であってもよい。塗料5の幅(第1図(b)における上下方向の幅員)は3〜10mm特に4〜5mm程度が好適である。
【0020】
塗料5は、透明であってもよく、便座表部材2及び便座裏部材3の色と同色であってもよく、異色であってもよい。異色とした場合には、塗料5が細い帯状の意匠部として視認されるようになる。
【0021】
このように構成された便座1にあっては、合わせ面の筋状部が塗料5で隠蔽されており、筋状部に汚れが進入することが無いので、長期にわたって美観が保たれる。また、上記の通り、塗料5を便座表部材2及び便座裏部材3と異色とした場合には、塗料5を細帯状の意匠部として視認させることもできる。
【0022】
[塗料の材料等について]
以下に、塗料5の好適な組成等について説明する。
【0023】
塗料5は、便座表部材2及び便座裏部材3への付着性が良好な接着剤組成物よりなることが好ましい。便座表部材2及び便座裏部材3は、ポリプロピレン樹脂(PP)や、ABS樹脂製とされることが多いが、これらの樹脂に対してはウレタン系接着剤組成物、アクリル系接着剤組成物、シリコン系接着剤組成物のいずれも用いることが出きる。なお、便座表部材2及び便座裏部材3がPPの場合、プライマー処理してから塗料5を塗着するのが好ましい。
【0024】
塗料として、シリコン系のパテ状のものを用いると、便座表部材2及び便座裏部材3から剥し易いので、便座1を廃品としてリサイクルすべく便座表部材2と便座裏部材3とに分解するに際し、塗料を剥し易く、好適である。
【0025】
シリコン系の塗料は、撥水性があるので、汚れが付着しにくく、好適である。
【0026】
塗料5を塗着するときには、便座表部材2及び便座裏部材3にマスキングを行ってから塗装を行い、その後、マスキングを剥すのが好ましい。
【0027】
塗着した塗料が硬化した後、塗料5を研磨して塗料5をフラットにし、周囲の便座表部材2及び便座裏部材3と面一状としてもよいが、研磨によって光沢が失われるおそれがあるので、研磨せずに塗着したままの面を残すようにするのが好ましい。
【0028】
[第2の実施の形態」
第3図の便座1Aは、便座表部材2A及び便座裏部材3Aの合わせ面の外面側の縁部にカット面状の斜面2d,3dを設けることにより、合わせ面の外面側にV溝状部を形成し、このV溝状部に塗料5を塗着したものである。
【0029】
なお、第3図は第1図(b)と同様の部分の断面図である。
【0030】
このV溝状部のV字の開き角度は70〜110°特に80〜100°程度が好適である。V溝状部の深さは0.5〜2mm程度、特に1〜1.5mm程度が好適である。
【0031】
この便座1Aのその他の構成は便座1と同様である。
【0032】
[第3の実施の形態]
第4図の便座1Bは、便座表部材2B及び便座裏部材3Bの合わせ面の外面側の縁部にL字断面形状の段部2e,3eを設けることにより、合わせ面の外面側にコ字形断面形の溝状凹部を形成し、この溝状凹部に塗料5を塗着したものである。
【0033】
なお、第4図は第1図(b)と同様の部分の断面図である。
【0034】
この溝状凹部の幅(第4図における上下方向の幅員)は3〜8mm特に4〜6mm程度が好適である。溝状部の深さは0.5〜2mm程度、特に1〜1.5mm程度が好適である。このように溝状凹部を設けたことにより、塗料5の厚みが大きくなり、隠蔽効果が向上する。
【0035】
この便座1Bのその他の構成は便座1と同様である。
【0036】
[第4の実施の形態]
第5図の便座1Cは、便座表部材2Cと便座裏部材3Cとの合わせ面に塗料を兼ねた弾性接着剤6を介在させたものである。
【0037】
なお、便座裏部材3Cの合わせ面の内縁からは上方に向って突脚3fが立設されており、この突脚3fの上端にフック部3gが設けられている。便座表部材2Cの合わせ面近傍の内縁には段部2fが設けられている。フック部3gを段部2fに掛止することにより、便座表部材2Cと便座裏部材3Cとが離反しないように結合される。この便座表部材2Cと便座裏部材3Cとは、それらの合わせ面が弾性接着剤6によって接着されることにより、一体化される。なお、弾性接着剤6は、フック部3gと段部2fとの掛止前に、予め便座表部材2C及び便座裏部材3Cの少なくとも一方の合わせ面に塗着されている。
【0038】
弾性接着剤6は、フック部3gと段部2fとを掛止させるように便座表部材2C及び便座裏部材3Cの合わせ面同士を接近させると、弾性接着剤の一部が合わせ面同士の間から押し出されるような塗着量とされ、これにより、押し出された弾性接着剤6によって合わせ面の筋状部が隠蔽される。なお、弾性接着剤6の塗着量を上記よりも少なくし、フック部3gと段部2fとを掛止した後、筋状部に弾性接着剤を塗着してもよい。
【0039】
この弾性接着剤6を便座表部材2Cと便座裏部材3Cとの合わせ面に介在させたことにより、便座1Cに着座したときに弾性接着剤6がクッションの如く弾性的に圧縮変形するようになり、着座したときの衝撃が吸収され、着座感がソフトなものとなる。
【0040】
なお、合わせ面間に介在させる弾性接着剤としては、シリコン系又はウレタン系のものが好適であり、その介在厚みは0.5〜3mm特に1〜2mm程度が好適である。
【0041】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、便座表部材と便座裏部材とはビスによって連結されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)図は第1の実施の形態に係る便座の一部の縦断面図、(b)図は(a)図のB付近の拡大図である。
【図2】図1の便座の斜視図である。
【図3】第2の実施の形態を示す断面図である。
【図4】第3の実施の形態を示す断面図である。
【図5】第4の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B,1C 便座
2,2A,2B,2C 便座表部材
3,3A,3B,3C 便座裏部材
5 塗料
6 塗料を兼ねる弾性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座表部材と便座裏部材とが接合された便座において、該便座表部材と便座裏部材との合わせ面が便座外面に露呈した筋状部を塗料によって隠蔽したことを特徴とする便座。
【請求項2】
請求項1において、該便座表部材及び便座裏部材の該筋状部に沿う縁部に凹部が設けられており、前記塗料は該凹部に塗着されていることを特徴とする便座。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記筋状部は便座の側面に位置していることを特徴とする便座。
【請求項4】
請求項3において、前記便座表部材と便座裏部材との合わせ面の間に、前記塗料を兼ねた弾性接着剤が介在していることを特徴とする便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−100788(P2009−100788A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272732(P2007−272732)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】