説明

係止方向性を備えるスナップ

【課題】本発明は係止方向性を備えるスナップに関し、強い外力が雄スナップ材、または雌スナップ材に働いた場合に、雌スナップ材の係止孔に折角係合させた雄スナップ材の雄状突起の係止が一層外れないようになし、また、雄状突起の保持が確実になり、しかも、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率が高くする。
【解決手段】雌スナップ材6が、雄状突起4が挿入される挿入孔7が設けられ、挿入孔に隣接して雄状突起の移動方向Iの一端が開設された平面視横長であって係止部2の外径φ1より小径な幅W1をなすスライド係止孔5Aが連設され、スライド係止孔の内縁nに沿ってU字状のクリップばね8が内装され、クリップばねには、頸部3よりも小径な間隙Kを介して対向される係止突部9,9がスライド係止孔の内域に臨まれて突設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係止方向性を備えるスナップに関し、例えばシャツ、ジャケット、コート等の衣服、また、バッグ、ベルト、靴等の身回品に装着され、雌スナップ材の係止孔に対する雄スナップ材の雄状突起の係脱位置に係止方向性を有するとともに、雄状突起の保持に確実性が発揮され、さらには強度が高く、信頼性を向上させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服のような布地に装着されたり、またはバッグのような皮革製品に装着されるスナップは、一般的なものとして雄スナップ材と、雌スナップ材とからなり、雄スナップ材の一面に設けられた雄状突起を雌スナップ材の対向面に設けている係止孔内に係脱可能に係止されるものがあった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−224718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来のスナップでは、雄スナップ材に設けられた雄状突起を雌スナップ材に設けられた係止孔内に係入するものであるが、雄状突起に対する保持が不十分で弱いので、強い外力が雄スナップ材、または雌スナップ材に働いた場合に、雌スナップ材の係止孔に折角係合させた雄スナップ材の雄状突起の係止が外れてしまうという欠点があった。
【0004】
また、特許文献1に記載の上記従来のスナップでは、雄スナップ材に設けられた雄状突起と、雌スナップ材に設けられた係止孔との相互は、係止孔に対する雄状突起の挿入位置と、係脱位置とが、雄スナップ材、および雌スナップ材に対向して1個所に設けられているのにすぎないので、雄状突起を係止孔内に係入したり、または脱係させるという係脱操作を行うのに、1個所において雄状突起を係止孔内に係脱させものであり、係止孔に対する雄状突起の挿入位置と、係脱位置とを異にするという係脱操作に係止方向性を有するものではなかった。
【0005】
本発明は、上記従来の欠点を解決し、即ち強い外力が雄スナップ材、または雌スナップ材に働いた場合に、雌スナップ材の係止孔に折角係合させた雄スナップ材の雄状突起の係止が一層外れないようになし、また、雄状突起の保持が確実になり、しかも、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率が高いスナップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、膨出された部分よりなる係止部、及びこの係止部に続いて設けられた該係止部より小径の頸部よりなる雄状突起を有する雄スナップ材と、前記雄状突起が係入される係止孔を設けた雌スナップ材と、を備えたスナップにおいて、
(イ)前記雌スナップ材には、前記雄状突起が挿入される挿入孔が設けられ、
(ロ)前記挿入孔に隣接して前記雄状突起の移動方向の一端が開設された平面視横長であって前記係止部の外径より小径な幅をなすスライド係止孔が連設され、
(ハ)前記スライド係止孔の内縁に沿ってU字状のクリップばねが内装され、そして、
(ニ)前記クリップばねには、前記頸部よりも小径な間隙を介して対向される係止突部が前記スライド係止孔の内域に僅かに臨まれて突設されている
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記クリップばねには、複数対の前記係止突部が長手方向に設置位置を違えて設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2おいて、前記スライド係止孔が、1個の前記挿入孔に対し雄スナップ材の移動方向が平面視直交されて縦横に2個設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、(ホ)前記雌スナップ材における内面部材には、前記挿入孔および前記スライド係止孔が設けられるとともに、
(ヘ)その外周には外縁部が設けられ、
(ト)前記内面部材に基板材が嵌入可能に設けられ、
(チ)前記基板材の内面には、前記クリップばねを押圧するばね押さえ部が設けられ、
(リ)前記基板材の外面にはリベットピンが突設され、
(ヌ)前記内面部材の前記外縁部が前記基板材にかしめられ、そして、
(ル)前記リベットピンと前記リベットピンの頭体とが前記リベットピンの先端にかしめられて、前記雌スナップ材における外面部材と前記雌スナップ材における前記内面部材とが結合されている
ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記内面部材が、断面略皿状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記雄スナップ材における内面部材の一側の略中央には、前記雄状突起が設けられ、前記内面部材の他側には、取付板にピン体部を有する断面T状のかしめピンがかしめ固定可能に設けられ、前記雄スナップ材の外面部材の裏面中央には、かしめ凹部が設けられ、そして、前記内面部材と前記外面部材とが、前記かしめピンを前記かしめ凹部内にかしめ固定することにより、一体的に取付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記外面部材が、断面略薄形伏椀状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1,2、または1〜7の何れか1項において、前記雌スナップ材が、平面視矩形に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項において、前記雌スナップ材が、平面視十字形に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れか1項において、前記雄スナップ材が、平面丸形、または平面正方形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、膨出された部分よりなる係止部、及びこの係止部に続いて設けられた該係止部より小径の頸部よりなる雄状突起を有する雄スナップ材と、前記雄状突起が係入される係止孔を設けた雌スナップ材と、を備えたスナップにおいて、前記雌スナップ材には、前記雄状突起が挿入される挿入孔が設けられ、前記挿入孔に隣接して前記雄状突起の移動方向の一端が開設された平面視横長であって前記係止部の外径より小径な幅をなすスライド係止孔が連設され、前記スライド係止孔の内縁に沿ってU字状のクリップばねが内装され、そして、前記クリップばねには、前記頸部よりも小径な間隙を介して対向される係止突部が前記スライド係止孔の内域に僅かに臨まれて突設されているので、強い外力が雄スナップ材、または雌スナップ材に働いた場合に、雌スナップ材の係止孔に折角係合させた雄スナップ材の雄状突起の係止が一層外れないようになる。また、雄状突起の保持が確実になり、しかも、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率が高く、製作および組付けが容易に行え、係止方向性を備える。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、前記クリップばねには、複数対の前記係止突部が長手方向に設置位置を違えて設けられているので、雄状突起が雌スナップ材の係止孔内に係止位置を変更して係脱可能になり、また、雄スナップ材の保持がクリップばねにて弾性的に保持されて確実になり、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率が高く、製作および組付けが容易に行え、係止方向性を備える。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、前記スライド係止孔が、1個の前記挿入孔に対し雄スナップ材の移動方向が平面視直交されて縦横に2個設けられているので、平面視直交されるように縦横に2個設けられたスライド係止孔おいて雄スナップ材の係止方向性を選択してスライドさせることにより雄状突起は雌スナップ材のスライド係止孔内に係止位置を変更して係脱可能になる。また、雄スナップ材の保持がクリップばねにて弾性的に保持されて確実になり、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率が高く、製作および組付けが容易に行え、係止方向性を備える。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、前記雌スナップ材における内面部材には、前記挿入孔および前記スライド係止孔が設けられるとともに、その外周には外縁部が設けられ、前記内面部材に基板材が嵌入可能に設けられ、前記基板材の内面には、前記クリップばねを押圧するばね押さえ部が設けられ、前記基板材の外面にはリベットピンが突設され、前記内面部材の前記外縁部が前記基板材にかしめられ、そして、前記リベットピンと前記リベットピンの頭体とが前記リベットピンの先端にかしめられて、前記雌スナップ材における外面部材と前記雌スナップ材における前記内面部材とが結合されているので、内面部材内にクリップばねを収容し、内面部材に基板材を嵌入してその内面に設けられたばね押さえ部によりクリップばねを押圧し、内面部材の外縁部を基板材にかしめるとともにリベットピンと、リベットピンの先端にリベット頭体がかしめられることにより外面部材と前記内面部材とは結合され、雌スナップ材は構造簡単であり、生産効率が高く、製作および組付けは容易に行え、構造的な強度が確保される。また、クリップばねは、基板材の裏面のばね押さえ部によりガタツキなく、保持され、組み付けは簡単に行える。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、前記内面部材が、断面略皿状に形成されているので、構造的な強度が確保され、製作および組付けが容易に行える。
【0021】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、前記雄スナップ材における内面部材の一側の略中央には、前記雄状突起が設けられ、前記内面部材の他側には、取付板にピン体部を有する断面T状のかしめピンがかしめ固定可能に設けられ、前記雄スナップ材の外面部材の裏面中央には、かしめ凹部が設けられ、そして、前記内面部材と前記外面部材とが、前記かしめピンを前記かしめ凹部内にかしめ固定することにより、一体的に取付けられているので、雄スナップ部材における内面部材と外面部材とはかしめ凹部内にかしめピンをかしめ固定することにより一体的に取付けられて補強され、構造的な強度が発揮される。このように、構造的な強度が発揮されるので、デザイン的にも薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0022】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、前記外面部材が、断面略薄形伏椀状に形成されているので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0023】
また、本発明の請求項8に記載の発明によれば、前記雌スナップ材が、平面視矩形に形成されているので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0024】
また、本発明の請求項9に記載の発明によれば、前記雌スナップ材が、平面視十字形に形成されているので、平面視直交されるように縦横に2個設けられたスライド係止孔おいて雄スナップ材を平面視十字形の2方向のうちから選択したスライド係止孔おいてスライドさせることにより雄状突起が雌スナップ材の係止孔内に係止位置を変更して係脱可能になる。
【0025】
また、本発明の請求項10に記載の発明によれば、前記雄スナップ材が、平面丸形、または平面正方形に形成されているので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0027】
<実施形態1>
図1は本発明の係止方向性を備えるスナップの実施形態1を示す長手方向の断面図、図2は同じく平面図、図3は同じく斜視図、図4は同じく図2のA−A断面図、図5は同じく外面部材を取除いて裏面側から見た斜視図、図6は同じく雄スナップ材の内面部材を示す断面図、図7は同じく平面図、図8は同じく下面図、図9は同じく雄状突起の外面部材を示す下面図、図10は同じく断面図、図11は同じく雌スナップ材の内面部材を示す平面図、図12は同じく雌スナップ材の基板材を示す下面図である。
【0028】
本実施形態1は、先端に設けた膨出された部分よりなる係止部2、及びこの係止部2に続いて設けられた係止部2より小径の頸部3よりなる雄状突起4を有する雄スナップ材1と、前記雄状突起4が係入される係止孔5を設けた雌スナップ材6と、を備えたスナップである点は、例えば特許文献1に記載の従来のスナップと同様の構成、作用である。
【0029】
しかしながら、本実施形態1では、前記雌スナップ材6には、前記雄状突起4が挿入される挿入孔7が設けられ、前記挿入孔7に隣接して前記雄状突起4の移動方向Iの一端が開設された平面視横長であって前記係止部2の外径φ1より小径な幅W1をなすスライド係止孔5Aが連設され、前記スライド係止孔5Aの内縁nに沿って平面視U字状のクリップばね8が内装され、前記クリップばね8には、前記頸部3よりも小径な間隙Kを介して対向される係止突部9,9が前記スライド係止孔5Aの内域に僅かに臨まれて突設されている(図2、図11参照)。
【0030】
前記雄スナップ材1における内面部材10の一側の略中央には、前記雄状突起4が設けられ、かつ前記内面部材10の他側には、取付板11にピン体部12を有する断面T状のかしめピン13がかしめ固定可能に設けられ、前記雄スナップ材1の外面部材14の裏面中央にはかしめ凹部15が設けられ、そして、前記内面部材10と前記外面部材14とが、前記かしめピン13を前記かしめ凹部15内にかしめ固定することにより、一体的に取付けられている(図1、図4参照)。また、前記雄スナップ材1は、図示では平面視円形に形成されているが、これは代表的な例示であり、図には示さないが、平面矩形、または平面正方形に形成されることにより、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりにしてもよい。
【0031】
前記外面部材14が、断面略薄形伏椀状に形成される。このように、外面部材14が、断面略薄形伏椀状に形成されるので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0032】
前記雌スナップ材6における内面部材16には、図1、図2、図4に示すように、前記挿入孔7および前記スライド係止孔5Aが設けられるとともに、その外周には外縁部16Aが設けられ、前記内面部材16に基板材17が嵌入可能に設けられ、前記基板材17の内面には、前記クリップばね8を背面から押圧する面状のばね押さえ部18が設けられ、前記基板材17の外面にはリベットピン19が突設され、前記内面部材16の前記外縁部16Aが前記基板材17にかしめられ、前記リベットピン19と、リベット頭体20とが、前記リベットピン19の先端にかしめられることにより前記雌スナップ材6における外面部材21と前記雌スナップ材6における前記内面部材16とが結合されている。
【0033】
このように、ダイカストにより形成された内面部材16内にクリップばね8を収容し、内面部材16に基板材17を嵌入してその内面に設けられた板状のばね押さえ部18によりクリップばね8を背面から押圧することによりガタツキが規制され、内面部材16の外縁部16Aを基板材17にかしめるとともにリベットピン19と、リベットピン19の先端にリベット頭体20をかしめることにより外面部材21と前記内面部材16とは結合されるので、内面部材16はダイカストにて形成され、また内面部材16に設けられ、リベットピン19が補強柱となることにより、雌スナップ材6は構造的な強度が確保され、しかも、構造簡単に製作が行え、生産効率が高く、製作および組付けを容易に行える。このようにして製作および組付けられた前記雌スナップ材6が、図2、および図11に示すように、平面視矩形に形成されるので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。ところで、図示では、雌スナップ材6は、平面視矩形に形成されているが、これに限ることなく、平面正方形に形成されるものであってもよい。また、前記内面部材16が、断面略皿状に形成されるので、構造的な強度が確保され、製作および組付けが容易に行える。
【0034】
前記クリップばね8は、鋼材または合成樹脂によりばね材により形成され、前述のように内面部材16に基板材17を嵌入してその内面に設けられたばね押さえ部18の背面側からの押圧により容易かつ確実に内面部材16内に組み付けられるとともに、図2、および図5に示されるように、クリップばね8は、内面部材16の裏面に、スライド係止孔5Aの他端内縁に沿って設けられた平面視半円状の内側位置規制壁部16aと、この内側位置規制壁部16aに対向して外側に設けられた短寸の外側位置規制壁部16bとにより内外から挟持されることにより内面部材16内への組付時に、前後方向、および左右方向の設置位置の位置決めが迅速かつ確実に精度が高く行われる。
【0035】
本実施形態1は以上の構成からなるので、雄スナップ材1に設けられた雄状突起4を雌スナップ材6に設けられた係止孔5内に係止するのには、先ず雌スナップ材6に設けられた挿入孔7内に雄スナップ材1の雄状突起4における膨出された部分よりなる係止部2を挿入する。
【0036】
次いで、この挿入孔7に隣接して雄状突起4の移動方向Iに一端が開設され、雄状突起4の前記係止部2の外径φ1より小径な幅W1をなしている平面視横長のスライド係止孔5Aが設けられているので、雄状突起4の小径な頸部3をスライド係止孔5Aの開設された一端から対向されている係止突部9,9をばね力に抗して押し広げることによりスライド係止孔5A内を移動方向Iに摺動し、雄状突起4を係止孔5内に係止させる。
【0037】
この際、雄状突起4の頚部3が、平面視U字状のクリップばね8の対向されている係止突部9,9間をばね力に抗して押し広げて通り過ぎると、クリップばね8の弾性復元性によりクリップばね8は閉じ、復帰される。そして、スライド係止孔5Aの内縁nに沿って内装されたU字状のクリップばね8により雄状突起4の頚部3がスライド係止孔5A内に弾性的に保持されるので、雄状突起4は雌スナップ材6のスライド係止孔5Aにおいてクリップばね8の弾性保持により小径な頸部3が保持されるため、保持が確実になる。
【0038】
こうして、雄状突起4は、スライド係止孔5A内に係止される。従って、強い力が雄スナップ材1、または雌スナップ材6に働いた場合に、雄スナップ材1の膨出された部分よりなる係止部2を雌スナップ材6の挿入孔7内に挿入する挿入位置aと、係止部2が雌スナップ材6の係止孔5内に係止される係止位置bとに設置位置を異にして雄状突起4は挿入位置aから係止位置bへと移動されるという係止方向性を備えるため、雌スナップ材6のスライド係止孔5Aに折角係合させた雄スナップ材1の雄状突起4の係止が不用意に外れ、抜け出ることはない。
【0039】
そして、前記雄スナップ材1における内面部材10の一側の略中央には前記雄状突起4が設けられ、かつ前記内面部材10の他側には取付板11にピン体部12を有する断面T状のかしめピン13がかしめ固定可能に設けられ、前記雄スナップ材1の外面部材14の裏面中央にはかしめ凹部15が設けられ、前記内面部材10と前記外面部材14とが、前記かしめピン13を前記かしめ凹部15内にかしめ固定することにより一体的に取付けられるので、内面部材10と外面部材14とはかしめ凹部15内にかしめピン13をかしめ固定することにより一体的に取付けられて補強されることにより、構造的な強度が発揮される。このように、構造的な強度が発揮されるので、出来上がったスナップはデザイン的にも薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0040】
また、前記外面部材14が、断面略薄形伏椀状に形成されるので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。
【0041】
前記雌スナップ材6における内面部材16には、前記挿入孔7および前記スライド係止孔5Aが設けられるとともに、外周には外縁部16Aが設けられ、前記内面部材16に基板材17が嵌入可能に設けられ、前記基板材17の内面に前記クリップばね8を背面から押圧して保持するばね押さえ部18が設けられ、前記基板材17の外面にはリベットピン19が突設されているので、前記内面部材16の前記外縁部16Aを前記基板材17にかしめるとともに前記リベットピン19と、前記該リベットピン19の先端にリベット頭体20をかしめることにより前記雌スナップ材6における外面部材21と前記内面部材16とは結合され、雌スナップ材1は構造簡単であり、生産効率が高くなり、製作および組付けを容易に行える。しかも、内面部材16は、ダイカストにより形成され、そして、内面部材16に嵌入される基板材17に設けたリベットピン19,19が補強材となるので、構造的な強度が確保される。
【0042】
そして、この前記雌スナップ材6が平面視矩形に形成されるので、デザイン的に薄形であり、変化のある仕上がりになる。しかしながら、図示では、雌スナップ材6は、平面矩形に形成されているが、これに限ることなく、平面正方形に形成されるものであってもよい。また、前記内面部材16が、断面略皿状に形成されるので、構造的な強度が確保され、製作および組付けが容易に行える。
【0043】
この際、クリップばね8は、図2、および図5に示されるように、内面部材16におけるスライド係止孔5Aの他端内縁に沿って設けられた平面視半円状の内側位置規制壁部16aと、この内側位置規制壁部16aに対向して外側に設けられた短寸の外側位置規制壁部16bとにより内外から挟持されることにより前後方向、および左右方向の設置位置の位置決めが容易かつ確実に行われるとともに、クリップばね8は、前述のように内面部材16に基板材17を嵌入してその内面に設けられたばね押さえ部18により背面側から押付けられることにより容易かつ確実に内面部材16内に組み付けられるので、製作および組み付けは容易に精度良く行える。
【0044】
また、雄スナップ材1に設けられた雄状突起4を雌スナップ材6に設けられた係止孔5から脱係するのには、スライド係止孔5Aに係止部2が係止されている雄状突起4を前述の係入操作とは逆方向にスライド係止孔5A内を移動させることにより、係止突部9,9をばね性に抗して頚部3が通過されることにより押し広げ、その後挿入孔7まで戻し、脱係させればよい。
【0045】
<実施形態2>
図13に示すものは、本発明の実施形態2を示すものであり、この実施形態2では、前記クリップばね8には、複数対の前記係止突部9,9が長手方向に設置位置を違えて、例えば図13では2対設けられている構成により、雄状突起4が雌スナップ材6の係止スライド孔5A内に係止位置を変更して係脱可能になる構成である。
【0046】
このように、クリップばね8に、複数対の前記係止突部9,9が長手方向に設置位置を違えて、図13では2対設けられ、雄状突起4が雌スナップ材6の係止スライド孔5A内に係止位置を変更して係脱可能になる構成を採用することにより、例えば本実施形態2のスナップをジャケット、コート等の衣服に用いたり、また、ベルト、靴等の身回品に装着した場合、またバッグに用いた場合には、収容する内容物の多少により、雄スナップ材1における雄状突起4の係止部2と、雌スナップ材6における係止孔5との係止時の締付力を前述のように、長手方向に設置位置を違えて複数対設けた係止突部9,9を押し広げて係止位置を変更することができるという実施形態1にはない優れた作用・効果を奏するほかは、前記実施形態1と同様の構成、作用・効果である。なお、図示では係止突部9,9が2対、図示されているが、これは例示であり、増減変更は自由に行える。
【0047】
<実施形態3>
図14に示すものは、本発明の実施形態3を示すものであり、この実施形態3では、前記スライド係止孔5Aが、1個の前記挿入孔7に対し雄スナップ材1の移動方向Iが平面視直交されるように、縦横に2個設けられている。具体的には、前記雌スナップ材6が平面視十字形に形成される構成である。
【0048】
そして、本実施形態3では、平面視直交されるように、平面視十字形の2方向に縦横に2個設けられたスライド係止孔5Aのうち、何れかのスライド係止孔5Aを選択してから、雄スナップ材1をスライド係止孔5A内にスライドさせることにより雄状突起4が雌スナップ材6のスライド係止孔5A内に係止位置を変更して係脱させ、前記実施形態1、および実施形態2のように、雄状突起4の挿入孔7に対する挿入位置aと、雄状突起4のスライド係止孔5Aへの係止位置bとが、前記実施形態1、および実施形態2のように、係止部2がスライド係止孔5A内に1方向への係止方向性を有するのとは異なり、本実施形態3では、2方向に係止方向性を発揮する。従って、本実施形態2では、高齢者、幼齢者、手や指が不自由な障害者にとって雄状突起4のスライド係止孔5Aに対する係脱操作が簡単かつ確実に行えるという優れた作用、効果であるほかは、前記実施形態1、および実施形態2と同様の構成、作用・効果である。なお、図14では平面視直交されるように、縦横に2個のスライド係止孔5Aを設けた場合について代表的に平面視十字形の2方向に縦横に2個のスライド係止孔5Aを設けた場合が示されているが、これに限定すのものではなく、例えば平面視L字状の2方向に縦横に2個のスライド係止孔5Aを設けた場合も本実施形態の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、強い外力が雄スナップ材、または雌スナップ材に働いた場合に、雌スナップ材の係止孔に折角係合させた雄スナップ材の雄状突起の係止が一層外れないようになし、また、雄状突起の保持が確実になり、しかも、構造的な強度が確保され、さらには、構造簡単であり、生産効率を高くする用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の係止方向性を備えるスナップの実施形態1を示す長手方向の断面図である。
【図2】図2は同じく平面図である。
【図3】図3は同じく斜視図である。
【図4】図4は同じく図2のA−A断面図である。
【図5】図5は同じく外面部材を取除いて裏面側から見た斜視図である。
【図6】図6は同じく雄スナップ材の内面部材を示す断面図である。
【図7】図7は同じく平面図である。
【図8】図8は同じく下面図である。
【図9】図9は同じく雄状突起の外面部材を示す下面図である。
【図10】図10は同じく断面図である。
【図11】図11は同じく雌スナップ材の内面部材を示す平面図である。
【図12】図12は同じく雌スナップ材の基板材を示す下面図である。
【図13】図13は同じく本発明の係止方向性を備えるスナップの実施形態2を示す平面図である。
【図14】図14は同じく本発明の係止方向性を備えるスナップの実施形態3を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 雄スナップ材
2 係止部
3 頸部
4 雄状突起
5 係止孔
5A スライド係止孔
6 雌スナップ材
7 挿入孔
8 クリップばね
9 係止突部
10 内部部材
11 取付板
12 ピン体部
13 かしめピン
14 外面部材
15 かしめ凹部
16 内面部材
17 基板材
18 ばね押さえ部
19 リベットピン
20 リベット頭体
21 外面部材
K 間隙
W1 幅
n 内縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨出された部分よりなる係止部、及びこの係止部に続いて設けられた該係止部より小径の頸部よりなる雄状突起を有する雄スナップ材と、前記雄状突起が係入される係止孔を設けた雌スナップ材と、を備えたスナップにおいて、
(イ)前記雌スナップ材には、前記雄状突起が挿入される挿入孔が設けられ、
(ロ)前記挿入孔に隣接して前記雄状突起の移動方向の一端が開設された平面視横長であって前記係止部の外径より小径な幅をなすスライド係止孔が連設され、
(ハ)前記スライド係止孔の内縁に沿ってU字状のクリップばねが内装され、そして、
(ニ)前記クリップばねには、前記頸部よりも小径な間隙を介して対向される係止突部が前記スライド係止孔の内域に僅かに臨まれて突設されている
ことを特徴とする係止方向性を備えるスナップ。
【請求項2】
前記クリップばねには、複数対の前記係止突部が長手方向に設置位置を違えて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項3】
前記スライド係止孔が、1個の前記挿入孔に対し雄スナップ材の移動方向が平面視直交されて縦横に2個設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項4】
(ホ)前記雌スナップ材における内面部材には、前記挿入孔および前記スライド係止孔が設けられるとともに、
(ヘ)その外周には外縁部が設けられ、
(ト)前記内面部材に基板材が嵌入可能に設けられ、
(チ)前記基板材の内面には、前記クリップばねを押圧するばね押さえ部が設けられ、
(リ)前記基板材の外面にはリベットピンが突設され、
(ヌ)前記内面部材の前記外縁部が前記基板材にかしめられ、そして、
(ル)前記リベットピンと前記リベットピンの頭体とが前記リベットピンの先端にかしめられて、前記雌スナップ材における外面部材と前記雌スナップ材における前記内面部材とが結合されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに1項に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項5】
前記内面部材が、断面略皿状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項6】
前記雄スナップ材における内面部材の一側の略中央には、前記雄状突起が設けられ、前記内面部材の他側には、取付板にピン体部を有する断面T状のかしめピンがかしめ固定可能に設けられ、前記雄スナップ材の外面部材の裏面中央には、かしめ凹部が設けられ、そして、前記内面部材と前記外面部材とが、前記かしめピンを前記かしめ凹部内にかしめ固定することにより、一体的に取付けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項7】
前記外面部材が、断面略薄形伏椀状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項8】
前記雌スナップ材が、平面視矩形に形成されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項9】
前記雌スナップ材が、平面視十字形に形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の係止方向性を備えるスナップ。
【請求項10】
前記雄スナップ材が、平面丸形、または平面正方形に形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の係止方向性を備えるスナップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−29440(P2010−29440A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194804(P2008−194804)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000195188)清原株式会社 (9)
【Fターム(参考)】