説明

俎板

【課題】刻み食材の鍋等への投入に便利で、使用による経年変化(俎板側縁の浮き上がり)を防止している俎板を提供する。
【解決手段】薄板状の本体に、V字凹溝を設けて薄肉連結部とした折曲線部と、表裏貫通する分離線で各部を分画形成するものであって、本体の一方の端縁aから側縁cに添って直線状に側壁折曲線部22aを設けて、中央板部1と折曲可能とした側壁用板部2aとを備え、側壁折曲線部22aに直交して所定長さの保持分離線31a,31bの両端間に、側壁折曲線部と表裏逆のV字凹溝を設けて保持折曲線部33a,33bを形成し、中央板部と側壁用板部が水平状態と、所定角度で折曲した状態で安定する保持部3を備えさせてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種食材の切断調理に使用される俎板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
俎板は周知の通り、食材の切断調理を行うもので、木製や樹脂製のものが知られている。俎板上で調理した食材は、加熱調理のために鍋やフライパンに移し替えたり、皿に盛り付ける必要があり、前記の移し替えに際して、刻んだ食品をそのまま俎板上に載せて、鍋等の上まで運び、俎板上の食品を鍋内等に投入することが行われている。
【0003】
しかし木製俎板のように変形しない平板状の俎板においては、前記の運搬投入に際して俎板上の食材が零れ易いという問題が生ずる。
【0004】
また従前より樹脂製シート状の薄い俎板が提案されており、前記の俎板においては、俎板自体が容易に撓むので、前記の食材の運搬投入に際しては俎板を撓ませることで食材の零れを防止している(特許文献1)。
【0005】
また樹脂製俎板においては、特に刻んだ野菜の運搬に関しての開示はないが、V字凹溝と薄肉連結部で形成した折曲線部を設けて、折り畳み可能とした俎板も知られている(特許文献2)。
【0006】
また俎板においては、収納に便利なように、種々の自立式俎板が提案されている。例えば特許文献3,4には、俎板の端面を含む一部が回動して交叉底面を形成することで自立する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−210341号公報。
【特許文献2】特表2008−509744号公報。
【特許文献3】特開2007−14731号公報。
【特許文献4】登録実用新案3149396号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
刻んだ野菜の鍋等への投入作業に便利な薄い樹脂製シート状俎板は、撓みやすい半面撓めた方向に癖が付きやすく、調理台上に載置して刻み調理に使用する際に、経年変化によって側面が浮き上がり状態となってしまい使い難くなる。同様に薄肉連結部によって折曲を実現する俎板においても同様の問題がある。
【0009】
また回動脚を採用している自立式俎板においては、回動軸を組み込む相応の厚さを備える必要があり、木製俎板より一般に薄く形成されている樹脂製俎板(板状俎板)には、組み込むことが困難である。
【0010】
そこで本発明は、折曲可能とし、且つ使用時の浮き上がりを防止する新規な俎板を提案したものであり、合わせて薄板状でも自立可能な俎板を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)に係る俎板は、薄板状の本体に、裏面のV字凹溝と表面の薄肉連結部で形成される折曲線部と、表裏貫通する分離線で各部を分画形成するものであって、本体の一方の端縁から側縁に添って直線状に側壁折曲線部を設けて、本体に中央板部と折曲可能とした側壁用板部とを備えさせると共に、前記側壁折曲線部に直交して中央板部と側壁用板部に跨る所定長さの保持分離線の両端間に、前記側壁折曲線部と表裏逆で、且つ所定角度のV字凹溝を設けて保持折曲線部を形成し、中央板部と側壁用板部が水平状態と、所定角度で折曲した状態で安定する保持部を備えさせてなることを特徴とするものである。
【0012】
而して調理台上に載置して表面側で通常通りの刻み調理を実施した後に、刻んだ食材を中央板部上に纏め、側壁用板部を折曲して起立させると、保持部は、中央板部と水平な状態から傾斜状態へ、やや引っ張られながら回動し、所定の折曲傾斜角度で安定するので、側壁用板部は当該保持部の傾斜角度に対応する折曲角度で安定することになり、そのまま鍋等の上に運び、中央板部上の食材を鍋等に投入するものである。そして使用状態とするために側壁用板部を中央板部と水平となる状態に戻すと、保持部は前記の水平状態で安定するので、側壁用板部の起立状態への移行が繰り返されても、刻み調理時に側壁用板部が浮きあがることが無く、全く支障なく俎板機能を発揮できるものである。
【0013】
またまた本発明(請求項2)に係る俎板は、前記の俎板において、保持部のV字凹溝形成面と反対面における保持折曲線部に添う左右に、補助凹溝を設けてなるものである。
【0014】
前記の保持部の折曲線部には、傾斜動作と復帰動作の移動に際して、折曲線部と直交する方向に引張力が作用するので、耐久力を高めるには当該折曲線部を厚く形成する必要がある。しかし反面厚く形成すると、俎板材質の樹脂の弾性に依存している折曲動作が困難になる。そこで前記のとおり補助凹溝を設けることで、折曲線部を厚く形成しても、充分な樹脂弾性を奏することができるものである。
【0015】
また本発明(請求項3)に係る俎板は、前記の俎板において、側壁用板部を本体の両側縁に形成してなるもので、両側壁用板部を折曲起立状態にすると、より以上野菜の零れが生じ難くなる。
【0016】
また本発明(請求項4)に係る俎板は、前記の俎板において、側壁折曲線部を他方端縁に直交する方向に設けてなるもので、側壁用板部を折曲起立状態にすると、そのまま端縁を台上に載置すると、俎板は直立状態で自立することになるので、収納に便利なものとなる。
【0017】
また本発明(請求項5)は、前記の自立機能を備える俎板において、側壁用板部の他方端縁の近傍で、側壁折曲線部の終端から中央板部方向に食い込み、他方端縁まで連続する足分離線を設けて、側壁用板部と一枚板状に連なる足用板部を備えさせてなるもので、側壁用板部を折曲した状態で、足用板部が本体の表裏に突出することになるので、俎板の自立が安定することになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成は上記のとおりで、中央板部の側方に側壁用板部を備えて、俎板上の食材を鍋等へ投入するに便利な器具としたものであり、且つ側壁用板部と中央板部の間に、所定の保持部を設けることで、側壁用板部の起立動作を繰り返しても、俎板での刻み調理時に側壁用板部が浮き上がることがなく、経年変化による支障を生じさせないようにしたものである。また同時に側壁用板部の折曲で自立機能をも備えさせたものであるから、薄い俎板の自立を実現し、俎板の収納保管が便利になったものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の平面図。
【図2】同要部斜視図。
【図3】同側壁用板部の折曲起立状態の斜視図(食材投入時状態)。
【図4】同自立状態の斜視図(表面側)。
【図5】同起立状態の要部拡大斜視図(裏面側)。
【図6】同保持部の折曲状態の説明図で、(イ)は水平時、(ロ)は傾斜時を示す。
【図7】同第二実施形態の要部平面図で、(イ)は表面、(ロ)は裏面を示す。
【図8】同要部斜視図で、(イ)は表面、(ロ)は裏面を示す。
【図9】同自立状態の斜視図(裏面側)。
【図10】同保持部の折曲状態の説明図で、(イ)は水平時、(ロ)は傾斜時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態の俎板は、通常の樹脂製俎板と同様に、ポリプロピレン等で形成されるもので、適宜な位置にV字凹溝と薄肉連結部で形成される折曲線部と、表裏貫通する分離線を設けたもので、俎板本体の厚さは、取り扱いの容易さの点から7〜4mm程度が最適で、後述する各部の折曲個所となる折曲線部は、型による一体成形で製造する場合の製造型の強度の点から、薄肉連結部の厚さを0.3〜1.0mm程度に形成し、V字凹溝は各折曲線部の目的によってその底辺幅が定められるもので、例えば側壁折曲線部を形成する側壁V字凹溝の底辺の幅は、1〜2mmである。
【0021】
勿論型による一体成形で製造する他に、薄肉連結部を構成するシート体と、折曲線部で分離してシート体の裏面に貼着されるベース体で形成するようにしても良い。
【0022】
前記のとおり任意の手段で製造される本発明に係る俎板は、刻み食材投入機能及び自立機能を発揮するために、本体を分画した中央板部1及び側壁用板部2a,2bと、前記側壁用板部2a,2bの水平状態及び折曲状態の維持安定を図る保持部3を備えてなるものである。
【0023】
側壁用板部2a,2bは、中央板部1の両側に形成されるもので、裏面の側壁V字凹溝21a,21bを設けることで表面側に薄肉連結部として形成される側壁折曲線部22a,22bで分画されると共に、特に一方の側壁用板部2bは側壁折曲線部21bと足分離線23で分画形成される。
【0024】
側壁V字凹溝21a(=側壁折曲線部22a)は、本体の一方の端縁aから側縁cに添って直線状にして、且つ他方端縁bに直交したものである。また 側壁V字凹溝21b(=側壁折曲線部22b)も、本体Aの一方の端縁aから側縁dに添って他方端縁bに直交する方向で直線状にして、他方端縁bの近傍において、側壁折曲線部22bの終端から中央板部1の方向に食い込み、他方端縁bまで連続する足分離線23を設けて、側壁用板部2bと一枚板状に連なる足用板部24を備えさせてなるものである。
【0025】
保持部3は、各々の側壁用板部2a,2bに対応して設けたもので、側壁折曲線部22a,22b(=側壁V字凹溝21a,21b)と直交する適宜幅(2〜5cm程度)で、且つ中央板部1と側壁用板部2a,2bに跨る所定の長さの2本の保持分離線31a,31bと、保持分離線31a,31bの両端間に結び且つ側壁折曲線部22a,22bと表裏逆で大きな角度の保持V字凹溝32a,32bを設けることで形成された保持折曲線部33a,33bで各々分画形成されるものである。
【0026】
更に保持V字凹溝32a,32bは、俎板の表面側に形成されるので、保持折曲線部33a,33bには水抜き透孔34を穿設しておくものである。
【0027】
また前記の保持分離線31a,31bの長さAや、保持V字凹溝32a,32bの角度は、本体の厚みBと、中央板部1と側壁用板部2a,2bの安定起立角度によって定められる。
【0028】
図6で説明すると、中央板部1を固定状態として、側壁用板部2aを折曲回動すると、側壁用板部2aは、側壁折曲線部22a(薄肉連結部C)を中心に回動することになり、保持部3は、保持折曲線部33a(薄肉連結部D)を中心に回動することになる。
【0029】
そこでそれぞれの回動中心における保持折曲線部33b(薄肉連結部E)の回動軌跡をみると、水平状態と、起立状態で一致するが、その移動途中にはズレがある。即ち回動途中においては、保持部3が引っ張られ、薄肉連結部DEの伸長(弾性)で前記のズレを吸収することになり、これによって、側壁用板部2a(=2b)は、水平状態と折曲起立状態で安定するものである。
【0030】
特に側壁用板部2a,2bの折曲角度を90度に設定して、保持部3が45度の傾斜で保持する場合には、保持分離線31a,31bは、側壁折曲線部22a,22bから左右それぞれ厚さの約2.4倍(√2+1倍)となる。また保持V字凹溝32a,32bの溝角度も、当該折曲起立時に当接若しくは近接する角度に設定しておく。
【0031】
而して調理台上に載置して表面側で通常通りの刻み調理を実施できるもので、刻んだ食材をそのまま運搬して鍋などに投入する場合には、刻んだ食材を中央板部1上に纏め、側壁用板部2a,2bを折曲起立させると、保持部3も一緒に回動するが、保持部3は前記した通り中央板部1と水平状態から傾斜状態に移行する際には、やや引っ張られながら回動し、所定の折曲傾斜角度で安定するので、側壁用板部2a,2bも当該保持部3の傾斜安定角度に対応した角度で安定することになる。そこで俎板を鍋等の上に運び、中央板部1上の食材を鍋等に投入するものである。
【0032】
更に前記の側壁用板部2a,2bを折曲起立状態から使用状態(水平状態)とするために側壁用板部2a,2bを中央板部1と水平状態に戻すと、保持部3は前記の傾斜状態と同様に、水平状態で安定するので、側壁用板部2a,2bも水平状態に移行し、安定することになる。
【0033】
また側壁用板部2a,2bを折曲起立状態にすると、そのまま端縁bを台上に当接して載置すると、俎板は自立することになるので、収納に便利なものとなる。
【0034】
以上の説明は、図1乃至6に示した実施形態(第一実施形態)について示したが、次に図7〜10に示した保持部3の変更構造(付加構造)の実施形態(第二実施形態)について説明する。
【0035】
第二実施形態は、保持部3において、補助凹溝35a,35bを付加したものである。補助凹溝35a,35bは、保持V字凹溝32a,32bを形成した面の裏面において、保持折曲線部33a,33bの左右に添うように、前記保持折曲線部33a,33bが、多少厚みがあったとしても折曲可能な弾性を備えるような細幅板形態となることができるように設けたものである。
【0036】
尚保持折曲線部33a,33bが多少の幅を備えることになり、折曲に対する弾性範囲を広げるために、保持分離線31a,31bも前記第一実施形態(理論上必要な長さ)よりも僅かに長く形成しておく。
【0037】
従って前記の第二実施形態においては、保持部3が傾斜動作と復帰動作の移動に際して、保持折曲線部33a,33bに折曲による撓みと共に、直交する方向の引張力が作用するが、保持折曲線部33a,33bが細幅板形態を備えることで、当該個所の耐久性を向上させることができるものである。
【0038】
尚本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、側壁用板部は、一方の側縁の身に設けても良いし、且つ足用板部も、前記の一方の側縁にのみに設けた側壁用板部に付設しても良いし、或いは両側縁に設けた側壁用板部に各々足板用板部を付設しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 中央板部
2a,2b 側壁用板部
21a,21b 側壁V字凹溝
22a,22b 側壁折曲線部
23 足分離線
24 足用板部
3 保持部
31a,31b 保持分離線
32a,32b 保持V字凹溝
33a,33b 保持折曲線部
34 水抜き透孔
35a,35b 補助凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の本体に、裏面のV字凹溝と表面の薄肉連結部で形成される折曲線部と、表裏貫通する分離線で各部を分画形成するものであって、本体の一方の端縁から側縁に添って直線状に側壁折曲線部を設けて、本体に中央板部と折曲可能とした側壁用板部とを備えさせると共に、前記側壁折曲線部に直交して中央板部と側壁用板部に跨る所定長さの保持分離線の両端間に、前記側壁折曲線部と表裏逆で且つ所定角度のV字凹溝を設けて保持折曲線部を形成し、中央板部と側壁用板部が水平状態と、所定角度で折曲した状態で安定する保持部を備えさせてなることを特徴とする俎板。
【請求項2】
保持部のV字凹溝形成面と反対面における保持折曲線部に添う左右に、補助凹溝を設けてなる請求項1記載の俎板。
【請求項3】
側壁用板部を、本体の両側縁に形成してなる請求項1又は2記載の俎板。
【請求項4】
側壁折曲線部を、他方端縁に直交する方向に設けてなる請求項1乃至3記載の何れかの俎板。
【請求項5】
側壁用板部の他方端縁の近傍において、側壁折曲線部の終端から中央板部方向に食い込み、他方端縁まで連続する足分離線を設けて、側壁用板部と一枚板状に連なる足用板部を備えさせてなる請求項4記載の俎板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−147751(P2011−147751A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60167(P2010−60167)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(592234698)株式会社森井 (5)
【Fターム(参考)】