説明

保冷容器

【課題】本発明は、収容効率や作業能率の低下を招くことなく十分な保冷性能を得ることができる保冷容器を提供することを目的とする。
【解決手段】断熱材(2)からなる周壁(101)と、その下端を閉鎖する底壁(100)とを備えた保冷容器(1)において、少なくとも上記周壁の一つが流通手段を備える。流通手段は、容器内の気体が通気可能な流通路(20)を有すると共に、容器内面側の少なくとも上側の流入口と下側の流出口とを開口した流通路の開放部を有する。流通路は周壁の内面に形成した縦溝により構成し、周壁内面を覆うカバーを取り付けると共に、このカバーには、少なくとも上記開放部の位置に、容器内の気体が流通路へ流入可能な通気窓(19)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容物と共に保冷剤を入れてフタをすれば、収容物の温度を一定の冷温に保つことができる保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷剤によって所定温度を維持可能な断熱性能を備えた保冷容器については、軽量の発泡スチロール箱や、本出願人による特許文献1が知られている。
【0003】
発泡スチロール箱は、軽量で剛性が高いため積み重ねての使用に耐える実用性を備えているが、不使用時に折り畳むことができず、空箱を運搬するなどのために輸送コストに問題があった。
【0004】
特許文献1に記載の保冷容器は上記のような問題点を解決したもので、有底箱形の外装シートとその内側に形成した保持シートからなる保持部材を備え、保持シートに断熱板を入れて箱形の保冷容器に構成される。容器を使用しないときには保持シートに入れたままでコンパクトに折畳み可能なうえに、積み重ねての使用に耐えうる剛性をも備えており、輸送の効率化とコストの削減を実現したものであった。
【0005】
このような保冷容器では、従来より、まず保冷すべき収容物を容器に詰めて、その収容物の上のスペースに保冷剤を入れ、この保冷剤の冷気により収容物を冷温に保持するようになっている。
【0006】
しかし、収容物を隙間なく大量に詰めると、冷気が収容物の間を通気せずに全体に行き渡らなくなってしまっていた。この場合、保冷剤の付近は十分に保冷されるものの、容器の底にまでは冷気が届かず、容器内の温度が不均一となって全体が十分に保冷されなかった。
【0007】
収容物の保冷温度を確保するために、現場においては、まず保冷容器の底に保冷剤を詰め、その上に収容物を載せて、さらにその上に保冷剤を詰めるなどの作業上の工夫がなされていることもあるが、保冷剤の使用量の増加によるコストの増加、保冷剤を分けて入れる工数の増加、底に保冷剤があることによる収容物の収容効率の低下などの問題が生じている。
【特許文献1】特開2000−203665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、従来の保冷容器においては、十分な保冷性能を確保するために、保冷すべき収容物の収容効率や作業能率の低下などの問題を生じていた点であり、本発明は、収容効率や作業能率の低下を招くことなく十分な保冷性能を得ることができる保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、断熱材からなる周壁とその下端を閉鎖する底壁とを備えた保冷容器において、上記周壁が流通手段を備え、この流通手段は、容器内の気体が通気可能な流通路を有すると共に、容器内面側の少なくとも上側の流入口と下側の流出口とを開口した流通路の開放部を有することを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、断熱材からなる周壁と底壁とにより形成した容器に収容物を入れて、その上に保冷剤を載せておくと、冷気が開放部を介して流通路に流出入する。
請求項2記載の発明は、請求項1の構成において、上記流通手段が上記断熱材と一体に形成され、上記周壁内面側に形成した縦溝により上記流通路及び開放部を構成したことを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、流通手段が断熱材と一体に形成され、冷気は容器内面側に形成した縦溝により構成された開放部と流通路とを通って容器下部まで行き渡る。
請求項3記載の発明は、請求項1の構成において、上記流通手段が上記断熱材と別体の流通路形成部材からなり、この流通路形成部材を断熱材の内側に配置して上記流通路及び開放部を形成したことを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、断熱材と別体の流通路形成部材を、この断熱材の内面側に配置することで容易に周壁に流通路が形成される。
請求項4記載の発明は、請求項1の構成において、上記底壁は第2の流通手段を備え、この第2の流通手段は、容器内の気体が通気可能な流通路を有すると共に容器内面側に開口した流通路の開放部を有し、この開放部は、少なくとも上記流通手段を備えた周壁の少なくとも一つの側の流入口と冷気を放出する流出口とを備えていることを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、底壁に形成した流通手段により容器底部での通気性が確保される。
請求項5記載の発明は、請求項1の構成において、上記周壁に、この内面側を保護可能なカバーを取り付けると共に、このカバーには上記開放部の少なくとも流出入口の位置に、容器内の気体が流通路へ流入可能な通気窓を設けたことを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、カバーによって周壁の内面側が保護されると共に、カバーに設けた通気窓によって流通路の通気性が確保される。
請求項6記載の発明は、請求項5の構成において、上記通気窓をメッシュで形成することを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、通気窓がメッシュで形成されており、流通路の通気性を確保しつつ、通気窓を形成した部分の容器内面側を保護する。
請求項7記載の発明は、請求項5の構成において、上記周壁及び底壁をそれぞれ別体の断熱性板材により構成し、上記カバーは、断熱性板材を平面視矩形状の箱形に保持可能であると共にこの断熱性板材を保持したままで折畳可能な可撓性の保持部材により構成したことを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、使用時には積重ね可能な箱形に保持されると共に、不使用時にはコンパクトに折り畳まれる。
請求項8記載の発明は、請求項1の構成において、上記周壁の上端に断面逆U字型の補強部材を備えることを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、周壁に形成した流通路により通気性が確保されると共に、補強部材により所定の剛性が得られる。
請求項9記載の発明は、平面視矩形状の有底箱形であって、可撓性の保持部材の各面に断熱性板材を組み合わせて蓋部、底壁および四側面の周壁を形成すると共に、周壁の相対する一対の側面および底壁を断熱性板材を保持した状態で折り畳み可能に形成し、前記周壁の少なくとも一つに容器内の気体が通気可能な縦溝を形成すると共に、この断熱性板材を保持する保持部材の内面の少なくとも流出入口に上記縦溝の流出入口を構成する通気窓をメッシュで形成したことを特徴とする。
上記構成の保冷容器は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれると共に使用時には積重ね可能な箱形容器に保持され、この容器に被保冷物を詰めてその上に保冷剤を載せておくと、冷気が保持部材の通気窓から流入又は流出する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のごとく構成した保冷容器は、容器に収容物を詰めた後この収容物の上に保冷剤を載せるという従来の方法で収容物と保冷剤を収容すれば、保冷剤の冷気は開放部を介して流通路に流入し、また流通路より流出する。その結果、容器上部の保冷剤の冷気が容器底部まで確実に行き渡って全体が十分に冷やされ、容器の下の方に詰めた収容物を十分な冷温で保持することが可能となる。
【0011】
請求項2記載のごとく構成した保冷容器は、周壁内面に形成した縦溝により冷気が通る流通路及び開放部が形成される。その結果、冷却性能に優れた保冷容器を容易な成形方法で安価に構成することができる。
【0012】
請求項3記載のごとく構成した保冷容器は、断熱材と別体の流通路形成部材を取り付けることで周壁に流通手段が形成される。その結果、簡易な構成により安価に流通路が形成されると共に、この流通路形成部材により保冷容器の剛性を向上させることができる。
【0013】
請求項4記載のごとく構成した保冷容器は、底壁が第2の流通手段を備え、この第2の流通手段の流通路とその開放部とにより容器底部における通気性が確保される。その結果、容器底部の周壁から遠い位置まで確実に冷気が行き渡り、容器全体が十分な冷温で保持される。
【0014】
請求項5記載のごとく構成した保冷容器は、カバーによって周壁の内面が保護されて収容物によって傷つくことを抑制すると共に、開放部の位置に配置した通気窓によって通気性が確保される。その結果、周壁が備える流手段により容器上部の保冷剤から容器の底部まで確実に冷気が行き渡って十分な冷却性能を有するうえに、軽量の断熱材を使用することにより運搬性能を向上しうると共に耐久性に優れる。
【0015】
請求項6記載のごとく構成した保冷容器は、通気窓を構成するメッシュにより、通気窓を形成した部分の容器内面側を保護する。その結果、容器に詰めた収容物等が通気窓から流通路へ入り込むのが防止され、流通路が収容物等によって塞がれることがなく、保冷剤の冷気が確実に流通路を通って全体を十分に保冷することができる。
【0016】
請求項7記載のごとく構成した保冷容器は、使用時には積み重ね可能な箱形に形成されると共に、不使用時には折り畳んでコンパクトにすることができる。その結果、十分な保冷性能と収容効率を兼ね備えたうえに輸送効率にも優れる。
【0017】
請求項8記載のごとく構成した保冷容器は、周壁の上端に補強部材を取り付けたことにより積み重ねての使用に耐えうる所定の剛性が確保される。その結果、十分な冷気の流通に必要な広さの流通路を形成して容器全体を確実に保冷可能なうえに、作業能率や輸送効率の向上を図れる。
【0018】
請求項9記載のごとく構成した保冷容器は、不使用時には折畳み可能であると共に使用時には箱形容器に保持され、保持部材に形成した通気窓と断熱性板材に形成した縦溝とにより、容器内の通気性が確保される。その結果、輸送効率に優れると共に、通気窓と縦溝とにより容器内の冷気の流通が確保され、全体が十分に保冷される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明に係る保冷容器の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る保冷容器の一部を分解した部分破断斜視図であり、図2はその周壁上部の拡大断面図であり、図3はその周壁下部の拡大断面図である。
【0020】
本実施形態の保冷容器1は、図1に示すように、底面、四側面および蓋を備えた箱形の外装シート10と、この外装シート10の内側に設けた保持シート11とからなる保持部材を備え、これに断熱性板材2を保持して有底箱形の容器を形成している。まず、断熱性板材2について説明する。
【0021】
断熱性板材2は、ポリプロピレン、ポリエチレン、発泡ポリスチレンなどの十分な断熱性を備えた合成樹脂材料により形成される。この断熱性板材2に、容器内の気体が通気可能な流通路と容器内面側に開口した流通路の開放部とを備えた流通手段を形成する。
【0022】
本実施形態では、流通手段は断熱性板材2と一体に形成されている。流通手段は、断熱性板材2の内面側に形成した複数の縦溝20、20からなり、この縦溝20により流通路および開放部を構成している。流通手段はこのような縦溝に限られない。他の実施形態の詳細については後述する。
【0023】
次に、保持部材について説明する。外装シート10の相対する両側面外側には、保冷容器1の運搬作業性向上のための持ち手12が設けられている。また、側面の外側上縁部に設けられた連結片13は面ファスナ14を備え、積み重ねたときに他の保冷容器の側面外側下縁部に設けらた面ファスナ15に連結して積重ね時の荷崩れ防止のために用いるほかに、最上段に置かれたものや積み重ねないときには、蓋の上面両側縁に設けた面ファスナ(図示しない)に連結して蓋の閉鎖性向上に用いる。また、蓋は、この蓋を閉鎖状態で保持するための面ファスナを有する閉鎖片16を備えている。
【0024】
保持シート11は、外装シート10の底面、各側面および蓋のそれぞれに形成されており、この保持シート11に、底壁100、周壁101および蓋部102を構成する断熱性板材2(詳細は後述する。)を入れて、所定の断熱性能と剛性とを備えた平面視矩形状の有底箱形に形成する。本実施形態では、この保持シート11により底壁100、周壁101および蓋部102の内面を覆うカバーとする。この保持シートは通気窓19を備えている。通気窓19の詳細については後述する。
【0025】
次に、保冷容器1の周壁101の構成について説明する。図2に断面で示すように、側面の保持シート11は上端が開閉するように形成されており、この開閉端17には面ファスナを取り付ける。また、外装シート10の上部から、面ファスナを備えた保持片18を内側に突設し、この保持片18と開閉端17の面ファスナにより保持シート11の上端を閉じて、外装シート10と保持シート11との間に差し込んだ断熱性板材2を保持する。断熱性板材2は、この開閉端より出し入れする。
【0026】
側面の保持シート11の内面には、図1に示すように、通気窓19が形成されている。この通気窓19は、図2および図3に示すように、少なくとも保持シート11の内面の上部と下部とに形成して、流通手段の流入口と流出口とを構成する。上部の通気窓19を形成する位置は、保持シート11の最上端部でなくともよいが、少なくとも、保冷容器に被保冷物を詰めたときに、通気窓19が被保冷物によって隠れない程度の位置に形成するのが好ましい。
【0027】
この通気窓19はメッシュ状の通気部材により構成するのが好ましい。メッシュ状の通気部材は、保冷容器1に収容する被保冷物が通過しない程度の粗さの網目を備えた布地等により構成するとよい。
【0028】
本実施形態の通気窓19は、保持シート11の上部と下部とに形成しているが、さらに保持シート11の中央部などの位置にも通気窓を形成して流出口を構成してもよい。また、保持シート11をメッシュ状の通気部材で構成することにより、保持シート11の内面全体を通気窓19としてもよい。
【0029】
図例では、保冷容器1の各側面のうち一側面にのみ保持シート11に通気窓を設けているが、通気窓は全ての側面に設けてもよい。またさらに、底面にも通気窓を設けてもよい。
【0030】
次に、保冷容器1の蓋部102の構成について説明する。蓋部102は、図2に示すように、外装シート10と、その内側に設けた保持シート11とを備え、保持シート11の開口端に設けた面ファスナ(図示しない)と外装シート10より内向きに突設した保持片18とにより保持シート11の開口端を閉鎖して、両シート10、11の間に断熱性板材2を保持している。
【0031】
周壁101を構成する外装シート10は保持シート11に保持された断熱性板材2の上面よりも上方に突き出た突片10aを備えている。この突片10aは蓋部102の厚さ程度だけ上方に突き出ており、周壁101の上端部は段状になっている。蓋部102は、この段状部にはめ込まれる。外装シート10の先端側は、面ファスナ(図示しない)を備えた閉鎖片16に形成され、周壁101の外装シート10の上部に設けた面ファスナ(図示しない)とにより、蓋部102を閉鎖する。
【0032】
次に、保冷容器1の底壁100の構成について説明する。底壁100は、図3に示すように、外側の保持シート110と内側の保持シート111を備えている。両保持シート110、111は一側端側が開閉すると共に不図示の面ファスナにより閉鎖可能に構成され、この開閉端より断熱性板材2を出し入れして保持する。開口する側端の反対側の側端は周壁に取り付けられており、断熱性板材2を保持したままで、両保持シート110、111を引き起こして折りたたみ可能に構成されている。
【0033】
外装シート10を可撓性の部材で形成すると共に、この底壁100の保持シート110、111に加えて、図1において左奥側面および右手前側面、すなわち短辺側の周壁の保持シートも同様に二枚の保持シートにより構成すると共に端縁を縫製等して他の周壁に取り付けることにより、左奥側面、右手前側面および底面の保持シートを折畳み可能に構成できる。
【0034】
本実施形態の底壁100は第2の流通手段を備えている。すなわち、底壁100の内側の保持シート111には、図3に示すように、通気窓19が形成されている。この通気窓19は、流通手段を備える周壁101の少なくとも一つの近傍に形成して第2の流通手段の流入口を構成する。また第2の流通手段の流出口を構成する通気窓19を、容器の中央部や反対側の周壁の近傍などに形成する。
【0035】
流入口を構成する通気窓19は、周壁101に近い位置に形成するのが好ましい。この通気窓19はメッシュ状の通気部材により構成するのが好ましい。メッシュ状の通気部材は、保冷容器1に収容する被保冷物が通過しない程度の粗さの網目を備えた布地等により構成するとよい。
【0036】
次に、流通手段の他の実施形態について説明する。まず縦溝の他の実施形態について説明する。図1では、断熱性板材2の一端から他端まで達する縦溝を複数形成しているが、流入口を構成する通気窓19から流出口を構成する通気窓19まで達する縦溝が形成されていればよい。また、縦溝20はその全面が開放部となりうるが、流入口および流出口は通気窓19に臨む部分となる。また図1では、断熱性板材2の内側全面に縦溝を形成しているが、内側面の左側のみ、または中央部のみなど断熱性板材の内側の一部に縦溝を形成する構成としてもよい。
【0037】
この縦溝20は、その幅に広狭を形成してもよい。すなわち、縦溝20の流入口側から流出口側にかけて、その幅を徐々に広く形成してもよい。縦溝20の幅に広狭を形成することで、保冷剤の冷気が縦溝20の流出口側に流通しやすくなり、保冷容器1の底の方をより確実に保冷することができる。
【0038】
流通路の他の実施形態としては、縦溝のほかに、横溝や斜めの溝を断熱性板材の内面に形成し、流入口を形成する通気窓19から流出口を形成する通気窓19まで冷気が流通するようにこれらの溝同士を連通して流通路としてもよい。図1では、底面に対して垂直方向の縦溝のみを示しているが、縦溝は流入口から流出口に達するものであればよく、図例のような、底面に対して垂直方向の溝に限られない。つまり、流入口から流出口に達する斜めの溝や、斜めの溝と横溝を連通させることにより流入口から流出口に達するような溝であってもよい。
【0039】
また、流通路のさらに他の実施形態としては、板厚を超えない大きさの孔を断熱性板材2の内部に形成して流通路とすると共に、断熱性板材2の内面に、この流通路の開放部となる流入口と流出口とを開口する構成としてもよい。
【0040】
また、流通手段は、断熱性板材2と別体の流通路形成部材21により形成してもよい。図4に、その概略を平面断面で示す。図例では、断熱性板材2と共に流通路形成部材21を保持手段によって保持し、この流通路形成部材21により周壁に流通路と開放部とを形成している。
【0041】
図4に示した流通路形成部材21は屏風状に山谷の折り目を有する板材からなり、この折り目部分の凹凸により流通路を形成する。流通路形成部材の形状としては、図4に示した屏風状の凹凸形状のものに限られず、そのほかに波板状、のこぎり状、かまぼこ状などの凹凸形状のものを用いてもよい。
【0042】
また、流通路形成部材の別の実施形態の概略を図5に示す。図例では、断熱性板材2を保持手段によって保持する一方、別体の流通路形成部材22を容器の内面側に配置して流通路と開放部とを形成している。図例の流通路形成部材22は凸凹形状の板材により形成されているが、上述のような屏風状のものや波板状のものを用いてもよい。
【0043】
また、流通路形成部材のさらに別の実施形態の概略を図6に示す。本実施形態の流通路形成部材23は、流入出口を構成する開放部231を備えた板体230と、この板体230と断熱性板材2との間に隙間を形成するスペーサ232とからなる。
【0044】
図例のスペーサ232は、板体230と一体に形成されており、図4のように断熱性板材2と共に保持部材により保持するようにしてもよいし、図5のように保持部材に保持せず、容器の内面側に配置するようにしてもよい。流通路形成部材23を断熱性板材2と共に保持部材により保持する場合には、板体230とスペーサ232を別体としてもよい。また、スペーサを断熱性板材に設けてもよい。
【0045】
図4乃至図6に示した流通路形成部材21、22、23は、プラスチックの板材やアルミの薄板材などを加工することにより形成することができる。また、図4及び図5に示した流通路形成部材21、22は、プラスチックなどの厚板部材の内面側に屏風状や波形状の凸凹を形成したものを用いてもよい。
【0046】
断熱性板材と別体の流通路形成部材を断熱性板材の内側に配置することにより、断熱性板材に加工を施すことなく容易に流通路を形成することができると共に、流通路形成部材により保冷容器の剛性を向上することができる。
【0047】
周壁の上端には断面U字型の補強部材3を取り付ける。この補強部材3はアルミなどにより形成するのが好ましい。この補強部材3は、流通路を形成した周壁の断熱性板材2の上端のすべてに取り付けるのが好ましいが、長辺となる周壁の断熱性板材2だけに取り付けるだけでも十分な剛性を得ることができる。
【0048】
図例では、流通手段を一体に形成した断熱性板材の上端に補強部材3を取り付けているが、流通手段を断熱性板材と別体に形成した場合にも、断熱性板材の上端、又は断熱性板材と流通路形成手段の上端に補強部材を取り付けてもよい
【0049】
本実施形態の保冷容器1は、断熱性板材2を外装シート10と保持シート11とからなる保持部材によって箱状に保持して容器を構成しているが、本発明は上記実施形態に限られない。すなわち、箱形に形成した発泡スチロールなどからなる断熱性容器の側壁や底壁の内面に流通路となる溝等を形成して、本発明に係る保冷容器を構成することも可能である。
【0050】
以下に、上記構成による保冷容器の作用と効果について説明する。
【0051】
図2に示すように、保冷容器1に被保冷物Aを詰めてその上にドライアイス等の保冷剤Bを載せると、被保冷物Aを密に詰め込んでいても、保冷剤Bの冷気は、図2に矢線図示したごとく、保持シート11の上部に形成した通気窓19(流入口)から断熱性板材2に形成した縦溝20(流通路)に流れ込む。
【0052】
そして、この冷気が縦溝20を流通し、図3に矢線図示したごとく、保持シート11の下部に形成した通気窓19(流出口)より流出して保冷容器1の底にまで到達し、底に詰めた被保冷物Aを冷やす。
【0053】
図3に示したように、底壁100にも通気窓19と流通路20からなる第2の流通手段を形成しておけば、周壁101を介して保冷容器1の下部に到達した冷気は、さらにこの通気窓19と流通路20を介して、周壁101より離れた位置にまで到達する。
【0054】
その結果、保冷容器に被保冷物を詰めてその上に保冷剤を載せるという従来と同様の作業によって、作業能率の低下や保冷剤の使用量の増加に伴うコスト増を招くことなく、保冷容器の上部にある保冷剤の冷気が容器底部まで行き渡って、保冷容器に詰めた被保冷物を十分な冷温に保持することが可能となる。そのうえ、保持シートに通気窓を形成すると共に断熱性板材に流通路を形成しているため、収容効率が低下することもない。
【0055】
さらに、本実施形態の流通路は断熱性板材の内面に形成した溝により構成されるため、容易かつ安価に形成することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の断熱性板材は保持カバーによって内面が覆われているため、断熱性板材の内面が破損しないように保護され、耐久性に優れる。さらに本実施形態のごとく流通路を縦溝により構成した場合は、この保持カバーによって、縦溝に被保冷物が詰まるのを防止するため冷気の流通が妨げられることがなく、確実に冷気を容器底部まで行き渡らせることができる。
【0057】
さらに、通気窓をメッシュで形成したことにより、容器に詰めた収容物等が、通気窓から流通路へ入り込むのを防止することができ、収容物等によって流通路が塞がれることがなく、保冷剤の冷気が確実に流通路を通って全体を十分に保冷することができる。
【0058】
さらに、断熱性板材を二枚の保持シートで覆って折りたたみ可能に構成したことにより、積み重ね可能な箱形に形成されると共に、不使用時には折り畳んでコンパクトにすることができ、十分な保冷性能と収容効率を兼ね備えたうえに輸送効率にも優れる。
【0059】
さらに、周壁の上端に断面U字型の補強部材を取り付けたことにより、保冷容器は積み重ねての使用に耐えうる所定の剛性を備え、十分な冷気の流通に必要な広さの流通路を形成して容器全体を確実に保冷可能なうえに、作業能率や輸送効率の向上を図れる。
【0060】
さらに、底壁にも流通路と通気窓を形成したことにより、容器底部の周壁から遠い位置まで確実に冷気が到達し、容器全体を十分な冷温に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る保冷容器の一部を分解した部分破断斜視図である。
【図2】保冷容器の周壁上部の拡大断面図である。
【図3】保冷容器の周壁下部の拡大断面図である。
【図4】流通路形成部材の実施形態の概略を示す平面断面図である。
【図5】流通路形成部材の別の実施形態の概略を示す平面断面図である。
【図6】流通路形成部材のさらに別の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 保冷容器
10 外装シート
100 底壁
101 周壁
102 蓋部
10a 突片
11 保持シート
110 外側の保持シート
111 内側の保持シート
12 持ち手
13 連結片
14、15 面ファスナ
16 閉鎖片
17 開口上端
18 保持片
19 通気窓
2 断熱性板材
20 縦溝
21〜23 流通路形成部材
230 板体
231 開放部
232 スペーサ
3 補強部材
A 被保冷物
B 保冷剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材からなる周壁とその下端を閉鎖する底壁とを備えた保冷容器において、
上記周壁が流通手段を備え、この流通手段は、容器内の気体が通気可能な流通路を有すると共に、容器内面側の少なくとも上側の流入口と下側の流出口とを開口した流通路の開放部を有することを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
上記流通手段が上記断熱材と一体に形成され、上記周壁内面側に形成した縦溝により上記流通路及び開放部を構成したことを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項3】
上記流通手段が上記断熱材と別体の流通路形成部材からなり、この流通路形成部材を断熱材の内側に配置して上記流通路及び開放部を形成したことを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項4】
上記底壁が第2の流通手段を備え、この第2の流通手段は、容器内の気体が通気可能な流通路を有すると共に、容器内面側に開口した流通路の開放部を有し、この開放部は、少なくとも上記流通手段を備えた周壁の少なくとも一つの側の流入口と冷気を放出する流出口とを備えていることを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項5】
上記周壁に、この内面側を保護可能なカバーを取り付けると共に、このカバーには上記開放部の少なくとも流出入口の位置に、容器内の気体が流通路へ流入可能な通気窓を設けたことを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項6】
上記通気窓をメッシュで形成することを特徴とする請求項5記載の保冷容器。
【請求項7】
上記周壁及び底壁をそれぞれ別体の断熱性板材により構成し、上記カバーは、断熱性板材を平面視矩形状の箱形に保持可能であると共にこの断熱性板材を保持したままで折畳可能な可撓性の保持部材により構成したことを特徴とする請求項5記載の保冷容器。
【請求項8】
上記周壁の上端に断面U字型の補強部材を備えることを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項9】
平面視矩形状の有底箱形であって、可撓性の保持部材の各面に断熱性板材を組み合わせてその箱形の蓋部、底壁および四側面の周壁を形成すると共に、その周壁の相対する一対の側面および底壁を、断熱性板材を保持した状態で折り畳み可能に形成し、前記周壁の少なくとも一つに容器内の気体が通気可能な縦溝を形成すると共に、この断熱性板材を保持する保持部材の内面の少なくとも流出入口に上記縦溝の流出入口を構成する通気窓をメッシュで形成したことを特徴とする保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161237(P2009−161237A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2591(P2008−2591)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(391054187)株式会社三洋 (8)
【Fターム(参考)】