説明

保存熟成されたホップを用いた、アルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法

【課題】原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を使用することによって、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を製造する方法、及び、かかる製造方法により製造される、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を提供する。
【解決手段】ホップ又はホップ成分を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法において、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を使用する。かかる製造方法によって、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ又はホップ成分を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法において、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分を空気に接触している状態で保存熟成させることによって、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を製造する方法、及び、かかる製造方法により製造される、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低アルコール発泡麦芽飲料は、通常のビール飲料同様、酵母による発酵を行うことで香味をビール風味に近づける一方で、発酵抑制又は発酵後のアルコール除去といった、単一もしくは複数の方法を用いてアルコール含有量を低減させて製造するのが一般的であった(例えば特許文献1参照)。すなわち、従来の低アルコール発泡麦芽飲料の製造は、いずれも酵母による発酵を行うことが一般的であった。
【0003】
発酵を伴う製造方法の場合、厳密な制御を行ってアルコール生成量を抑制したとしても、その抑制の程度には限界があり、アルコール含量0.00%(W/W)を達成するのは困難であった。そこで酵母による発酵を止め、麦芽により生成された麦汁にホップ香気を添加したものを最終製品とし、アルコール含量0.00%(W/W)の発泡麦芽飲料を達成した。
【0004】
ホップは、ビールなどの発酵アルコール麦芽飲料に爽快な苦味と香りを付与することが知られている。ホップに由来する香りはビールのキャラクター形成に大きな影響を与えている。ホップ由来の香気の特徴を表現する言葉として、フローラル、スパイシー、シトラス、フルーティー、ホッピー、マスカット等が一般的に用いられている(以下、非特許文献1〜5)。しかし、これらはいずれも酵母による発酵後の香気特徴であり、未発酵飲料での官能評価ではなかった。
【0005】
また、従来より、ホップの香気成分の改良、苦味特徴の改善には、ホップの保存条件を制御し、ホップ成分の酸化等、化学変化を促進させることが有効であることが知られてきた(特許文献2〜4)。例えば特許文献2では、望ましい苦味の質を得るには、30℃で12日から40日、40℃では8日から30日が必要であるとしている。しかし、特許文献2〜4における飲料は、酵母でアルコール発酵させたビール系飲料であり、本発明におけるアルコールゼロのビール風味発泡性飲料のように、アルコール発酵を行わない未発酵性ビール風味発泡性飲料において、どのように保存熟成されたホップを用いると、どのようなホップ香気の未発酵性ビール風味発泡性飲料が得られるかは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−068528号公報
【特許文献2】特開2008−212041号公報
【特許文献3】特開2007−89439号公報
【特許文献4】特開2008−228634号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Comparison of the Odor-Active Compounds in Unhopped Beer and Beers Hopped with Different Hop Varieties;TORU KISHIMOTO, AKIRA WANIKAWA, KATSUNORI KONO, AND KAZUNORI SHIBATA;J. Agric. Food Chem., 54, 8855-8861 8855, 2006
【非特許文献2】Comparison of Odor-Active Compounds in the Spicy Fraction of Hop (Humulus lupulus L.) Essential Oil from Four Different Varieties;GRAHAM T. EYRES, PHILIP J. MARRIOTT, AND JEAN-PIERRE DUFOUR;J. Agric. Food Chem., 55, 6252-6261, 2007
【非特許文献3】Hop Aroma in American Beer;Val E. Peacock, Max L. Deinzer, Lois A. McGill, and Ronald E. Wrolstad;J. Agric. Food Chem., 28, 774-777, 1980
【非特許文献4】Aging of Hops and Their Contribution to Beer Flavor;Kai C. Lam, Robert T. Foster 11, and Max L. Deinzer;J. Agric. Food Chem., 34, 763-770 763, 1986
【非特許文献5】Floral Hop Aroma in Beer;Val E. Peacock, Max L. Deinzer, Sam T. Likens, Gail B. Nickerson, and Lois A. McGill;J. Agric. Food Chem., 29, 1265-1269, 1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を使用することによって、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を製造する方法、及び、かかる製造方法により製造される、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、未発酵の麦汁を用いたアルコール含量0.00%(W/W)のビール風味発泡性飲料において、ホップでフルーツ様香気を付与しようと試みたところ、ビール風味には程遠いアルコールゼロ発泡性飲料が得られる結果となった。すなわち、ホップの樹脂様、あるいはオイル様のオフフレーバーが顕在化してしまい、その飲料からフルーツ様香気を感じることはできなかった。
【0010】
また、アルコール発酵を行うビール系飲料にホップを用いる場合は、アルコール発酵中にホップ香気成分の一部が変化し、ホップ香気は和らぐ傾向があった。しかし、アルコール発酵を行わない未発酵性ビール風味発泡性飲料にホップを用いる場合は、ホップの香気が直接的に顕在化する傾向があるため、ビール系飲料にホップを用いる場合よりも、ホップ香気がホップの保存熟成条件により敏感に影響される可能性があった。
【0011】
本発明者らは、前述のオフフレーバーを低減させ、より好ましい風味に調整するために、ホップの保存熟成条件を詳細に検討した結果、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ、好ましくは、保存熟成する際の保存温度(℃)と保存期間(日)とが、特定の関係式を満たすような保存熟成がなされたホップ、他に好ましくは、ミルセンの含量が特定の数値未満であるホップ、を用いると、ホップ由来のオフフレーバー(特に樹脂様臭)を抑制しつつ、ホップ由来のフルーツ様香気を付与し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)ホップ又はホップ成分を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法において、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を使用することを特徴とする、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法や、
(2)原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分が、空気に接触している状態で保存熟成されたことによって、ホップ又はホップ成分中のミルセンの含量が、GC/MSによる以下の定量値の範囲を充足するように調整されていることを特徴とする、上記(1)に記載のビール風味発泡性飲料の製造方法:
内部標準物質ナフタレンのイオン128m/zのレスポンス値に対する、ミルセンのイオン93m/zのレスポンス値の比率が756.9%未満:や、
(3)原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分におけるホップの品種がマチュエカ種であって、かつ、前記ホップ又はホップ成分の保存熟成における保存温度(℃)及び保存期間(日)が、以下の数値範囲を充足するように調整されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のビール風味発泡性飲料の製造方法:
63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]>2487:
に関する。
【0013】
また、本発明は、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法により製造される、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を用いることによって、ホップ又はホップ成分由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ又はホップ成分由来のフルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料、及び、その簡便かつ効率的な製造方法を提供することができる。かかるフルーツ様香気は、従来のアルコールゼロのビール風味発泡性飲料にはなかった香気である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ホップの保存熟成度合いと、ミルセン含量(%)との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法
本発明のオフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」と表示する。)は、ホップ又はホップ成分(以下、併せて「ホップ等」とも表示する。)を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造において、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分(以下、単に「本発明におけるホップ等」とも表示する。)を使用することを特徴とする。
【0017】
詳細なメカニズムは不明であるが、原料液煮沸工程時に用いるホップ等として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ等、好ましくは所定の保存温度及び保存期間で保存熟成されたホップ等を使用すると、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を製造することができる。従来、ホップ由来の香気の調整は、原料液中へのホップの添加時期や添加量等を調整し、所望の香気が得られているかを製造の都度確認することが一般的であったが、本発明のように、ホップ等自体を所望の香気が得られやすいように調整する方法によれば、所望の香気の飲料を非常に効率よく製造することができ、しかも、製品間の香気のバラつきも少なくすることができる。
【0018】
本明細書における「オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料」とは、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与され、かつ、ホップ等由来のオフフレーバー(好適には樹脂様臭、オイル様臭、より好適には樹脂様臭)が前述のフルーツ様香気を妨げるほど強くはないアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を意味し、中でも、フルーツ様香気及び樹脂様臭の強度をそれぞれ5段階のスコア(1:「感じない」、2:「僅かに感じる」、3:「感じる」、4:「やや強く感じる」、5:「強く感じる」)で表現した場合に、フルーツ様香気の強度のスコアが2以上(好ましくは3以上、より好ましくは4以上)であり、かつ、樹脂様臭の強度のスコアが4以下(好ましくは3以下、より好ましくは2以下)であり、かつ、樹脂様臭の強度のスコアがフルーツ様香気の強度スコアを超えないアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を好適に例示することができる。
【0019】
本明細書における「フルーツ様香気」としては、ホップ等由来のフルーツ様香気である限り特に制限されないが、爽快でみずみずしいフルーツ様香気を好適に例示することができ、中でも、マスカット様香気をより好適に例示することができる。なお、これらのフルーツ様香気などの香気や、オフフレーバーなどの臭いの有無や程度は、パネラーによる官能評価によって評価することができ、中でも、後述の実施例2に示すような、香気や臭いの強度を5段階で表現したスコアを用いた官能評価を好適に例示することができる。なお、本明細書における「アルコールゼロ」とは、アルコール分を含まないことを意味する。
【0020】
本発明における「空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分」とは、空気と接触している状態で一定期間保存することによって、熟成されたホップ又はホップ成分を意味する。通常、ホップ等は過度の酸化による劣化を防止するために、酸素と接触しないように密封されているが、空気と接触している状態で一定期間保存することによって、適度な酸化が生じ、本発明の方法に適したホップ等が得られる。したがって、そのようなホップ等が得られる限り、上記の「空気」は厳密な意味での空気には限られず、本発明における「空気」には、便宜上、酸素含有気体も含むが、密封されたホップ等の包装を開封するだけで簡便に接触させ得る点で、厳密な意味での空気、すなわち、「地球大気の対流圏を構成する気体」を好適に例示することができる。
【0021】
製造されるビール風味発泡性飲料において、ホップ等由来のオフフレーバーをより抑制しつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気をより多く付与する観点から、本発明の製造方法における上記の「空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分」としては、空気に接触している状態下で、
63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]>2487
という数式を満たすような保存温度(℃)と保存期間(日)の保存熟成をされたホップ等を好適に例示することができ、中でも、
63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]≧2660
という数式を満たすような保存温度(℃)と保存期間(日)の保存熟成をされたホップ等をさらに好適に例示することができ、中でも、
3239≧63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]≧2660
という数式を満たすような保存温度(℃)と保存期間(日)の保存熟成をされたホップ等を特に好適に例示することができ、より具体的には、20℃で5日間より長く12日間以内、30℃で5日間より長く11日間以内、あるいは、40℃で4日間以上6日間以内の保存熟成をされたホップ等を好適に例示することができる。なお、以上に列挙した保存温度や保存期間は、ホップ等におけるホップの品種がマチュエカ種である場合に特に好適に適用することができる。また、上記の「保存期間(日)」は、必ずしも正の整数でなくてもよく、小数点を含む数値であってもよい。
【0022】
上記の「空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分」として好適な他の例としては、空気に接触している状態で保存熟成されたことによって、ミルセンの含量が、ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(以下、「GC/MS」とも表示する。)による以下の定量値の範囲を充足するように調整されているホップ又はホップ成分を挙げることができる。ミルセンの含量が、以下の定量値の範囲を充足すると、樹脂様臭の強度をより低下させ得るなどの点で好ましいからである。
内部標準物質ナフタレンのイオン128m/zのレスポンス値に対する、ミルセンのイオン93m/zのレスポンス値の比率が756.9%未満(好ましくは414.1%以下、より好ましくは414.1%以下で26.2%以上):
ホップ等のミルセン含量(%)を、かかる範囲に調節する方法としては、先に列挙した数式を満たすような保存温度(℃)と保存期間(日)の保存熟成をホップに施す方法を好適に例示することができる。なお、前述のミルセン含量(%)の好適な範囲は、ホップ等におけるホップの品種がマチュエカ種である場合に特に好適に適用することができる。
【0023】
GC/MSとしては、市販の装置であれば問題なく使用可能である。また、GC/MSによる分析・測定方法としては、GC/MSの公知の分析・測定方法を用いることができるが、中でも、ナフタレン(Naphthalene)を内部標準物質とした分析・測定方法を好適に例示することができ、中でも、後述の実施例1に具体的に記載したホップサンプルの調製法、及び、GC/MSによる分析・測定方法をより好適に例示することができる。
【0024】
本発明の製造方法は、原料液煮沸工程時に用いるホップ等として、本発明におけるホップ等を使用すること以外は、ホップ等を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の従来の製法と特に異なることはなく、かかるビール風味発泡性飲料の原材料のうち、ホップ由来成分以外の原材料の一部又は全部を含む原料液でホップ等を抽出することができる。原料液としては、麦芽を含んだ麦汁を好適に例示することができるが、麦芽を含まない原料液(例えば麦芽エキスを含む原料液)であってもよい。
【0025】
本発明に用いるホップ等におけるホップの種類としては、本発明のビール風味発泡性飲料の製造に用い得るものである限り特に制限されないが、中でも、マチュエカ種のホップや、カスケード種のホップをより好適に例示することができ、中でも、より好適なフルーツ様香気を得る観点から、マチュエカ種のホップをさらに好適に例示することができ、中でも、ニュージーランド産のマチュエカ種のホップを特に好適に例示することができる。本発明の製造方法において用いるホップ等は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、上記のホップ成分とは、ホップ由来の香気成分を意味し、かかるホップ成分としては、ホップ抽出物やホップ精油を好適に例示することができる。
【0026】
本発明の製造方法において、本発明におけるホップ等を原料液中に添加する時期としては、かかるホップ等の香気成分が原料液中に溶出される限り特に制限されないが、好適なフルーツ様香気を得る観点から、煮沸中あるいは煮沸終了時の原料液に添加することを好適に例示することができる。なお、本発明においては、ホップ等を原料液中で煮沸してホップ成分を抽出した場合、あるいは原料液の煮沸終了時にホップ等を添加してホップ成分を抽出した場合と同等のホップ等抽出条件であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ホップ等を原料液とは別に煮沸・抽出して、その煮沸物あるいは抽出物を原料液と混合する等の方法も採用することができる。
【0027】
本発明の製造方法により製造されたビール風味発泡性飲料において、実際に、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されているかどうかは、プラントスケールで製造したビール風味発泡性飲料について官能評価することによって確認してもよいが、以下のように調製した試飲用サンプルについて官能評価することが簡便性の観点から好ましい。
【0028】
[試飲用サンプルの調製]
試飲用サンプルの調製は、1.5Lスケールの装置を用いて行うことができる。まず、仕込麦汁糖度1.0度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率67%,副原料(米・コーングリッツ・コーンスターチ)使用比率33%)をサンプル麦汁として用意することができる。このサンプル麦汁を電気ヒーターで加温煮沸することができる。その際、煮沸強度は一定で、60分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行うことができる。サンプル麦汁の煮沸終了時に、本発明におけるホップ等を2.5g/Lずつ添加することができる。煮沸終了後、蒸発量と同量の水をサンプル麦汁に追加した上で、95℃で60分間麦汁静置させることができる。ろ紙ろ過後のサンプルを試飲用サンプルとすることができる。
【0029】
官能評価の方法は特に制限されないが、例えば、3名の官能評価パネルが試飲用サンプルを試飲して、「フルーツ様香気の強度」、「樹脂様臭の強度」、及び、両強度の総合評価としての「好ましさ」を評価することにより行うことを好適に例示することができる。フルーツ様香気(フルーツ香)の強度、及び、樹脂様臭の強度の評価結果は、それぞれの強度をスコアし、1:「感じない」、2:「僅かに感じる」、3:「感じる」、4:「やや強く感じる」、5:「強く感じる」の5段階で表現することができる。また、フルーツ様香気と樹脂様臭の両強度の総合評価(すなわち、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与されていることの総合評価)としての「好ましさ」の評価結果は、1:「好ましくない」、2:「やや好ましい」、3:「好ましい」の3段階で表現することができる。これらのスコアで評価した場合に、フルーツ様香気の強度のスコアが2以上(好ましくは3以上、より好ましくは4以上)であり、かつ、樹脂様臭の強度のスコアが4以下(好ましくは3以下、より好ましくは2以下)であり、かつ、樹脂様臭の強度のスコアがフルーツ様香気の強度スコアを超えないアルコールゼロのビール風味発泡性飲料を、本発明における「オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料」と評価することができる。
【0030】
2.オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料
本発明のオフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料(以下、単に「本発明のビール風味発泡性飲料」とも表示する。)は、本発明の製造方法により製造されることを特徴とする。詳細なメカニズムは不明であるが、原料液煮沸工程時に用いるホップ等として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ等、好ましくは所定の保存温度及び保存期間で保存熟成されたホップ等を使用して製造されるビール風味発泡性飲料は、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料となる。
【0031】
本発明のビール風味発泡性飲料としては、麦芽を含んでいるビール風味発泡性麦芽飲料を好適に例示することができる。また、本発明のビール風味発泡性飲料は、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与されている限り、香料等が添加されていてもよい。
【0032】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
[ホップの保存熟成と、ホップ精油成分の関係]
ホップの保存熟成と、アルコールゼロのビール風味発泡性飲料の香気との関係を調べるのに先立ち、ホップの保存熟成と、ホップ精油成分の関係を調べた。密封されたニュージーランド産マチュエカ種のホップを開封し、ホップが空気に接触している状態で後述の表2記載の温度(℃)及び期間(日)、ホップを保管することによって、ホップの保存熟成を行った。ホップは保存熟成の温度(℃)及び期間(日)に応じて8つの試験区(試験区A〜H)を設けた。なお、試験区Aは保存熟成直前のホップを用いた試験区である。
【0034】
ホップサンプルの調製は以下のような方法で行った。保存熟成後の各試験区のホップから1gずつホップ片を採取した後、乳鉢で粉砕し、それぞれに20mLのジクロロメタンを添加すると共に、内部標準物質ナフタレンを2.5ppmになるように添加し、1時間振とうした。その後、各サンプルを無水硫酸ナトリウムで脱水し、ホップサンプルとした。これらの各ホップサンプルを、マススペクトロメーター検出器付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)に供した。かかるGC/MSによる分析条件(分析条件1)は以下の表1のとおりである。
【0035】
【表1】

【0036】
GC/MSによる各成分の定量の単位は、リナロール(Linalool)についてはppmで行い、ミルセン(Myrcene)、ネロール(Nerol)、ファルネセン(Farnesene)、及び、ゲラニルアセテート(Geranyl acetate)については、それらの各成分の定量イオンのレスポンス値を、内部標準ナフタレンのイオン128m/zのレスポンス値で除した比率(%)を定量値とした。試験区A〜Hのそれぞれの成分の定量値を以下の表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果から分かるように、ミルセンの成分値は、いずれの保存熟成温度でも、保存熟成期間が長くなるほど減少し、また、同程度の保存熟成期間(日)の下では保存熟成温度(℃)が上昇するにつれて減少した。すなわち、ミルセンの成分値に関しては、保存熟成期間(日)に反比例する傾向が見られ、また、同程度の保存熟成期間(日)の下では保存熟成温度(℃)に反比例する傾向が見られた。したがって、ミルセンは、ホップの保存熟成に伴う成分変化の指標として特に好適であると考えられた。また、保存熟成期間(日)と成分値の関係に若干のバラつきはあったものの、リナロールやファルネセンでも、ミルセンと同様の傾向が見られたので、これらの成分もホップの保存熟成に伴う成分変化の指標として用い得ると考えられた。一方、ネロールでは、保存熟成温度や保存熟成期間の違いによる変換はあまり見られなかった。他方、ゲラニルアセテートでは、20℃、30℃の保存熟成で顕著な差異は見られなかったものの、保存熟成期間が長くなるにしたがって、いずれの場合も成分値が減少した。しかし、ゲラニルアセテートは、40℃の保存熟成では、保存熟成期間が長くなったにもかかわらず、成分値が大きく上昇したため、保存熟成期間と成分値との間に一貫した傾向の関係を見出すことはできなかった。すなわち、ゲラニルアセテートは、ホップの保存熟成に伴う成分変化の明確な指標にはならないことが分かった。
【0039】
なお、先に述べたように、ミルセンは、ホップの保存熟成に伴う成分変化の指標として特に好適であると考えられた。そこで、上記表2の各試験区のうち、コントロールである試験区Aを除いた、試験区B〜Hについて、ホップ中のミルセン含量(%)と、ホップの保存熟成における保存温度(℃)・保存期間(日)との関係について、重回帰分析を試みた。その結果、以下のような重回帰式を得た。
[ミルセン含量(%)]=3184.94−63.616×[保存温度(℃)]−115.700×[保存期間(日)]
【0040】
かかる重回帰式の相関係数(γ)は0.97と、きわめて高かったことから、ミルセンが、ホップの保存熟成に伴う成分変化の指標としてきわめて好適であることが実証された。かかる重回帰式は、ホップの保存温度(℃)と保存期間(日)を調整することによって、ホップ中のミルセン含量(%)をコントロールし得ることを示している点で特に重要である。なお、ミルセン含量は保存熟成が進むにつれて減少することを考慮すると、ミルセンの減少度合いが、ホップの保存熟成度合いを表す指標として利用できることが理解できる。したがって、上記の重回帰式から、以下のような関係式が導かれる。
(ホップの保存熟成度合い)=63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]
【0041】
この「ホップの保存熟成度合い」の値を横軸に取り、縦軸にミルセン含量(%)取って、上記表2の試験区B〜Hの結果をプロットすると共に、上記の重回帰式を記した結果を図1に示す。
【0042】
図1によれば、ホップの保存熟成度合いが増加するにつれて、各試験区のミルセン含量(%)が上記の重回帰式の直線に沿って減少していくことが理解できる。
【実施例2】
【0043】
[保存熟成ホップの香気特徴の確認と化学成分からの検証]
保存熟成させたホップを用いたアルコールゼロのビール風味発砲性飲料の香気特徴を、官能的側面及び化学成分的側面から確認するために、実施例1で保存熟成させたホップを用いて試飲用サンプルの調製し、その試飲用サンプルの官能評価及び化学分析を行った。
【0044】
(1)試飲用サンプルの調製
試飲用サンプルの調製は、1.5Lスケールの装置を用いて行った。まず、仕込麦汁糖度1.0度に調整した仕込麦汁(仕込時の麦芽使用比率67%,副原料(米・コーングリッツ・コーンスターチ)使用比率33%)をサンプル麦汁として用意した。このサンプル麦汁を電気ヒーターで加温煮沸した。その際、煮沸強度は一定で、60分間で蒸発率が10%となるようにコントロールして行った。サンプル麦汁の煮沸終了時に、上記実施例1で保存熟成させた各試験区のホップを2.5g/Lずつ添加した。煮沸終了後、蒸発量と同量の水をサンプル麦汁に追加した上で、95℃で60分間麦汁静置させた。ろ紙ろ過後、サンプル麦汁を氷水で冷却し、蒸留水で5倍に希釈したサンプルを試飲用サンプルとした。なお、試験区Aのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#1とし、試験区Bのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#2とし、試験区Cのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#3とし、試験区Dのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#4とし、試験区Eのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#5とし、試験区Fのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#6とし、試験区Gのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#7とし、試験区Hのホップを用いて調製した試飲用サンプルの試験区を#8とした。
【0045】
(2)試飲用サンプルの官能評価
実施例2の上記(1)で調製した試験区#1〜#8の各試飲用サンプルについて官能評価を行った。官能評価は、3名の官能評価パネルが試飲用サンプルを試飲して、「フルーツ様香気の強度」、「樹脂様臭の強度」、及び、両強度の総合評価としての「好ましさ」を評価することにより行った。フルーツ様香気(フルーツ香)の強度、及び、樹脂様臭の強度の評価結果は、それぞれの強度をスコアし、1:「感じない」、2:「僅かに感じる」、3:「感じる」、4:「やや強く感じる」、5:「強く感じる」の5段階で表現した。また、フルーツ様香気と樹脂様臭の両強度の総合評価(すなわち、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与されていることの総合評価)としての「好ましさ」の評価結果は、1:「好ましくない」、2:「やや好ましい」、3:「好ましい」の3段階で表現した。この官能評価の結果を以下の表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
いずれの温度で保存熟成した場合も、保存熟成期間に応じて香気が変化した。例えば、20℃で保存熟成した場合(試験区#2、#3)、フルーツ様香気の強度はいずれの試験区(保存熟成5日間、12日間)でも4と比較的高く、また、樹脂様臭の強度は試験区#2(保存熟成5日間)では5と高かったが、試験区#3(保存熟成12日間)では3まで低下し、それと共に総合評価は2から3に上昇した。また、30℃で保存熟成した場合(試験区#4、#5、#6)、フルーツ様香気の強度はいずれの試験区(保存熟成期間5日間、8日間、11日間)でも4と比較的高く、また、樹脂様臭の強度は試験区#4(保存熟成期間5日間)では4と比較的高かったが、試験区#5(保存熟成期間8日間)や試験区#6(保存熟成期間11日間)では2まで低下し、それと共に総合評価は2から3に上昇した。また、40℃で保存熟成した場合(試験区#7、#8)、フルーツ様香気の強度は試験区#7(保存熟成期間4日間)では3であり、試験区#8(保存熟成期間6日間)では2であったが、いずれの試験区でも樹脂様臭の強度が2と比較的低かったため、総合評価はいずれの試験区でも3となった。これらの結果から、ホップ(好適にはマチュエカ種のホップ)を20℃で保存熟成させる場合の保存熟成期間としては5日間より長く12日間以内が好適であり、30℃の場合は5日間より長く11日間以内が好適であり、40℃の場合は4日間以上6日間以内が好適であることが示された。
【0048】
また、保存熟成したホップのホップ精油成分の測定結果を示す前述の表2と、それらのホップを用いて製造した試飲用サンプルの官能評価等の結果を示す前述の表3を照らし合わせた結果、試飲用サンプルにおいて総合評価3を得るためには、ホップ精油成分におけるミルセンの測定値(ミルセン含量(%))が756.9%(試験区Dのミルセン含量参照)未満、好ましくは414.1%(試験区Cのミルセン含量参照)以下、より好ましくは414.1%以下で26.2%(試験区Hのミルセン含量参照)以上であることが好適であることが分かった。また、ホップ中の好適なミルセン含量(%)の結果から、前述の「ホップの保存熟成度合い」の好適な範囲を導いたところ、ホップの保存熟成度合いの値が2487(試験区D:30℃、5日間)より大きく、好ましくは2660(試験区C:20℃、12日間)以上、より好ましくは2660以上3239(試験区H:40℃、6分)以下が好適であることが分かった。このような好適な保存熟成度合いのホップを用いると、ホップ中のミルセン含量(%)を好適な範囲内に制御することができ、ひいては、かかるホップを用いて製造した試飲用サンプルの官能評価が好適なものとなる。なお、総合評価3の試験区#3、#5、#6、#7及び#8の各試飲用サンプルからは、爽快でみずみずしいフルーツ様香気、特にマスカット様香気が感じられた。
【0049】
(3)試飲用サンプルの化学分析
本願発明者らはこれまでに行った別の実験により、アルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造において、飲料中のミルセン、リナロール及びネロールの含量をGC/MSによる以下の(a)〜(e)の定量値の数値範囲を充足するように調整すると、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料が得られるとの知見を得ている。
(a)内部標準物質ボルネオールのイオン110m/zのレスポンス値に対する、ミルセンのイオン93m/zのレスポンス値の比率が146.4%未満であり、かつ、
(b)リナロール濃度が3.8ppb以上であり、かつ、
(c)ネロール濃度が0.4ppbより高く、かつ、
(d)リナロール濃度の値(ppb)に対する上記(a)における比率の値(%)の比率が5.2661以下であり、かつ、
(e)ネロール濃度の値(ppb)に対する上記(a)における比率の値(%)の比率が59.7692以下である。
【0050】
保存熟成させたホップを用いた試飲用サンプル中のミルセン、リナロール及びネロールの含量が、上記の(a)〜(e)の5つの数値範囲とどのような関係になるかを念のため確認するために、実施例2の上記(1)で調製した試験区#1〜#8の各試飲用サンプルについて、GC/MSを用いた化学分析を行った。GC/MSによる分析は、各試験区の試飲用サンプル中の香気成分をC18固相カラムで抽出し、それをGC/MSに供することによって行った。成分の定量には内部標準法を用いた。内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、試料中で25ppbになるように添加した。GC/MSによる分析条件(分析条件2)を表4に記載する。
【0051】
【表4】

【0052】
GC/MSによる各成分の定量の単位は基本的にはppbで行ったが、ミルセン(Myrcene)については、その定量イオンのレスポンス値を、内部標準ボルネオールのイオン110m/zのレスポンス値で除した比率(%)を定量値とした。試験区#1〜#8の各試飲用サンプルにおける上記の(a)〜(e)の5つの数値範囲の定量値を前述の表3に示す。なお、試飲用サンプルの成分の定量値が、上記の(a)〜(e)のいずれかの数値範囲を満たしている場合は、その項目の数値を太字とし、下線を引いて示した。
【0053】
表3における成分の定量値の結果を、表3における官能評価の結果と照らし合わせると、ホップの保存熟成に伴う成分変化の指標として好適なミルセンの含有量は、保存熟成期間が長くなるにつれて低下し、この変化は官能評価における樹脂様臭の強度の低下と一致した傾向を示した。一方、リナロールはミルセンほどではないが、保存熟成期間が長くなるにつれ、あるいは保存温度が上がるにつれて、含有量が少しずつ低下する傾向がみられ、それに対し、ネロールは保存熟成による変化がほとんど見られなかった。リナロールやネロールの含量が保存熟成によりあまり低下しなかったことは、官能評価のフルーツ様香気の強度があまり低下しなかったことと一致し、特に、保存熟成温度が20℃又は30℃の場合(試験区#2〜#6)はリナロールやネロールの含量がほとんど低下しなかったことは、それらの試験区の官能評価のフルーツ様香気がいずれも4であったことと一致した。また、30℃で保存熟成した場合(試験区#4〜#6)、試験区#4(保存熟成期間5日間)ではミルセンが187.8%と高く、かつ、リナロールやネロールとの比率がそれぞれ5.90及び105.5と高かった。ミルセン含量が高いため、官能評価でも樹脂様臭の強度が4と高く、そのために総合評価は2となった。試験区#5(保存熟成期間8日間)や試験区#6(保存熟成期間11日間)では、ミルセンの含量が低く、樹脂様臭の強度が2に低下したため、総合評価も3に上昇した。また、40℃で保存熟成した場合(試験区#7、#8)は、リナロールやネロールの含量がそれほど高くなく、フルーツ様香気の強度は3(試験区#7)又は2(試験区#8)にとどまったが、いずれの試験区でもミルセン含量が低く、樹脂様臭の強度はいずれも2となったため、総合評価ではいずれの試験区でも3となった。
【0054】
なお、現状のアルコール含量0.00%(w/w)のビール風味発泡性飲料の市販品について官能検査を行ったが、本発明において新たに見いだされたような香気、すなわち、ホップ等由来のフルーツ様香気を明確に感じる市販品はなく、さらには、ホップ等由来のオフフレーバーが抑制されつつ、ホップ等由来のフルーツ様香気が付与された市販品もなかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ホップ又はホップ成分を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の分野に利用することができる。より詳細には、本発明は、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の分野や、かかるビール風味発泡性飲料の製造方法の分野に好適に例示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ又はホップ成分を用いたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法において、原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分として、空気に接触している状態で保存熟成されたホップ又はホップ成分を使用することを特徴とする、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料の製造方法。
【請求項2】
原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分が、空気に接触している状態で保存熟成されたことによって、ホップ又はホップ成分中のミルセンの含量が、GC/MSによる以下の定量値の範囲を充足するように調整されていることを特徴とする、請求項1に記載のビール風味発泡性飲料の製造方法:
内部標準物質ナフタレンのイオン128m/zのレスポンス値に対する、ミルセンのイオン93m/zのレスポンス値の比率が756.9%未満。
【請求項3】
原料液煮沸工程時に用いるホップ又はホップ成分におけるホップの品種がマチュエカ種であって、かつ、前記ホップ又はホップ成分の保存熟成における保存温度(℃)及び保存期間(日)が、以下の数値範囲を充足するように調整されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のビール風味発泡性飲料の製造方法:
63.616×[保存温度(℃)]+115.700×[保存期間(日)]>2487。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造される、オフフレーバーが抑制されつつ、フルーツ様香気が付与されたアルコールゼロのビール風味発泡性飲料。

【図1】
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