説明

保存電池用の活性化機構

【課題】保存電池の活性化機構に対する外力の大きさを小さくする。
【解決手段】保存電池の活性化機構は概して、電解液を収容しているチャンバ902を有するハウジング102と、ハウジング102から電解液を放出するように構成された送出デバイスとを備えている。送出デバイスは、外力に応えて釈放され、ハウジング102から電解液の放出を開始するように構成された圧縮ばねを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、保存電池、特に保存電池用の活性化機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保存電池とは、負荷(例えば、ポンプ、電球またはコンピュータ)に供給する電力が必要とされるまで、不活性状態(すなわち、電力を発生も貯蔵もしない状態)に維持することができる電池のことである。保存電池を不活性状態に維持することによって、電池の発電及び貯蔵能力の特性は最大になる。結果として、保存電池の保管寿命は、活性化された電池(すなわち、電力を発生及び/または貯蔵している電池)に比べて相当長くなる。
【0003】
保存電池は、様々な異なる方法で、発電し、貯蔵することができる。例えば、ある特定の保存電池は、電解液を不活性状態において乾燥電極から隔離させて、電解液と電極との間で電力発生の化学反応を阻止しやすくした、電気化学的な保存電池である。このような電気化学的な電池を活性化するためには、電解液を電極と接触させて、それによって、電力を発生させる化学反応を開始させる。少なくとも幾つかの電気化学的な保存電池は、電解液と電極を分離する仕切りまたはバリアを利用している。必要とされる際には、仕切りに力を加えて破砕したり、仕切りを穿刺したりすることができる。ある既知の構成では、仕切りを破砕するのに、発射体(例えば発射弾)を発射することにより生じる外的な後退力を用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保存電池は、様々な異なる環境における、様々な異なる機器に電力を供給できるも、電力出力が望まれる際に、単独の活性化力とするのに十分な(すなわち、電解液と乾燥電極との間のバリアを破砕するのに十分な)大きさの外力を直ぐに利用できない。従って、外力を利用できるも、その大きさが単独活性化力とするには不十分な場合にも作動し得る、活性化機構が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、保存バッテリ用の活性化機構が、概して、電解液を収容しているチャンバを有するハウジングと、電解液をハウジングから放出するように構成された送出デバイスとを備える。送出デバイスは、外力に応えて釈放され、ハウジングから電解液の放出を開始するように構成された圧縮ばねを備える。
【0006】
本発明の別の態様では、保存電池の電解液を加圧する付勢機構が、概して、圧縮ばねと、圧縮ばねに動作可能に関連付けたトリガとを含む。トリガは圧縮ばねを釈放して、電解液を加圧するように構成される。
【0007】
本発明のさらに別の態様では、保存電池内の電解液放出用の付勢機構を組み立てる方法が、概して、ばねを圧縮するステップと、圧縮ばねにトリガを動作可能に関連付けるステップと含む。トリガは、圧縮ばねを釈放し、圧縮ばねが弛緩して、電解液を加圧するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態の活性化機構を有している、不活性状態にある保存電池の斜視図である。
【図2】図1の保存電池の縦断面図である。
【図3】保存電池の活性化機構の斜視図である。
【図4】図1の活性化機構の、第1の端部キャップの上面図である。
【図5】図4の第1の端部キャップの5−5線での断面図である。
【図6】活性化機構の送出デバイスの斜視図である。
【図7】送出デバイスの分解図である。
【図8】送出デバイスのピストンの側面図である。
【図9】図8のピストンの9−9線での断面図である。
【図10】送出デバイスのインジェクタの分解図である。
【図11】送出デバイスの付勢機構の分解図である。
【図12】付勢機構のラムの側面図である。
【図13】図12のラムの13−13での線断面図である。
【図14】ハウジングの第2の端部キャップに接続された付勢機構のトリガスリーブの側面図である。
【図15】図14のトリガスリーブ及び第2の端部キャップの15−15線での断面図である。
【図16】付勢機構のトリガの斜視図である。
【図17】トリガのスペーサの側面図である。
【図18】トリガのプラグの斜視図である。
【図19】プラグの側面図である。
【図20】図2に似ているが、活性化機構が、保存電池を不活性状態から活性状態に変えるように作動させているプロセスにおける、保存電池の縦断面図である。
【図21】図2及び図20に似ているが、活性化機構を完全に作動させて、活性状態にした保存電池の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
それぞれの図面を通して、対応する参照符号は対応する部分を示している。
【0010】
図面、特に図1及び2を参照するに、活性化後に負荷に電気エネルギーを供給する保存電池を1にて総称してある。図示の実施形態において、保存電池1は、正及び負の電極5を収納する(すなわち空所に収納する)電極チャンバ11を画定する、概して円筒形のケース3と、下記に詳述するように、保存電池1を不活性状態から活性状態に変えるための、100にて総称する活性化機構とを備えている。ケース3は、中空のマンドレル13を備えており、このマンドレルは、電解液が電極5と接触するように、電解液をマンドレル13内に放出するように構成され、またケース3は、その一方の端部を閉じるディスク状の端壁7を備える。ケース3の反対側の端部は、活性化機構100によって閉じられる。保存電池1を負荷(図示せず)に作動的に接続する一対の電極コネクタ9が、ケース3の端壁7から外側に延在している。しかしながら、ケース3を他の適切な形状(例えばブロック状)にできることが理解されよう。
【0011】
次に、図3を参照するに、活性化機構100は、第1の端部108と第2の端部112とを有する円筒形のハウジング102を備える。第1の端部キャップ106が、ハウジング102の第1の端部108を閉じ、第2の端部キャップ110(図2、11、14、15、20及び21)がハウジング102の第2の端部112を閉じる。しかしながら、活性化機構100は、本発明の範囲を逸脱することなく、任意の適切な形状にすることができると理解されよう。加えて、活性化機構100のコンポーネントは、電解液の腐食作用に耐えるような、任意の適切な材料(例えばステンレス鋼材)で製造することが可能である。
【0012】
図4は、第1の端部キャップ106の上面図であり、図5は、図4の第1の端部キャップの5−5線での断面図である。概してディスク状の第1の端部キャップ106は、中央ボア116、内側の環状壁118及び外側の環状壁120を有する。外側の環状壁120は、第1の端部キャップ106をハウジング102に固定し易くする、外側に延在する環状リム122を有している。さらに、第1の端部キャップ106は、内部表面124、外部表面126、及び外部表面126から外側に延在する取り付け部128を有する。図4及び図5に見られるように、取り付け部128は中央ボア116と軸方向に整列する。
【0013】
図5に最も良く見られるように、第1のバリア136が取り付け部128を閉じて、第1のバリア136と、取り付け部128及び第1の端部キャップの外部表面126の一部との間にポケット140を画定する。第1のバリア136は、接着剤のような適切な結合剤または溶接によって取り付け部128に固定することができる。第1の端部キャップ106は、取り付け部128を含まないようにすることもできる。むしろ、第1のバリア136を、第1の端部キャップ106の外部表面126に直接接続することができる。第1のバリア136は、穿刺可能で、電解液に対して中性で、耐用年数が約20年間の任意の適切な材料(例えば、金属箔)で作ることができる。
【0014】
再び図4を参照するに、第1の端部キャップ106は、取り付け部128と外側壁120との間のほぼ中間に位置する、比較的小さな、円形のポート134を有している。しかしながら、ポート134は、ここに図示したものとは異なる大きさ、形状及び/または位置とすることができると理解されよう。幾つかの実施形態では、第1の端部キャップ106のポート134はなくすことができる。その代わりに、ポート134を、第1の端部キャップ106ではなく、ハウジング102に位置付けることもできる。
【0015】
図6及び7は、ハウジング102及び第1の端部キャップ106を取り外した活性化機構100の斜視図及び分解図をそれぞれ示す。図6及び7に見られるように、図示の活性化機構100は、ピストン300、このピストン300を通って延在するインジェクタ400及び、一部がピストン300内に着座する付勢機構500を備える。ピストン、インジェクタ及び付勢機構を、それぞれの参照番号により総称してある。
【0016】
図8は、ピストン300の側面図であり、図9は図8のピストン300の9−9線での断面図である。ピストン300は、一般に円筒形のボディ部302と、このボディ部302と間隔をあけた、概してディスク状のヘッド部304、及びボディ部302とヘッド部304との間に延在するネック部306を備えている。図8に見られるように、ボディ部302、ヘッド部304及びネック部306は一緒になって、適切なガスケット310を受け入れる環状の溝308を画定する。
図2、20及び21では、環状の溝308内にガスケット(例えばOリング)が受け入れるように示してある。ヘッド部304は、図9に見られるように、円形の中央ボア318を有している。
【0017】
図9を参照するに、ボディ部302は、開端316と、外側表面326と、ピストン300の内部チャンバ314の一部を画定する内側表面312とを有する。ネック部306及びヘッド部304も、内部チャンバ314の一部を画定する。図9に見られるように、ボディ部302は第1の内部環状肩部320を有し、ネック部306は第2の内部環状肩部322を有し、ヘッド部304は第三の内部環状肩部324を有する。結果として、ピストン300には、ボディ部302の内側表面312からヘッド部304におけるボア318までに、3つの段差がある。
【0018】
図10に見られるように、インジェクタ400は、402で総称するベース部と、このベース部402から延在する針404とを有する。中空の針404は、開放近位端408及び開放遠位端410を有する、概して円筒形のボディ部406を有する。遠位端410は、第1のバリア136に穴を開け易くする輪郭(例えば尖らせた、または先の尖った輪郭)を有する。ボディ部406は二つの、概して長方形の切り欠き部412を備える。図示の実施形態における切り欠き部412はボディ部406の長さに沿って配置され、概して互いに反対側に位置付けられる。しかしながら、切り欠き部412は、様々な形状及び大きさとし得ることが理解されよう。また、ボディ部406の切り欠き部412は、ここに図示し、記載したものも、多くしたり、または少なくしたりすることも理解されよう。
【0019】
インジェクタ400のベース部402は、概して円形のプレート416と、このプレート416から外側に延在する、概して円柱状のステム418とを有する。ステム418は、第1の直径Dの、第1ティア420と、この第1ティア420の第1の直径Dより小さい第2の直径Dの第2ティア422とを有し、第2ティア422は、針404の近位端408に挿入できるような大きさとする。インジェクタ400のボディ部406は、第2ティア422を針404内に挿入した時に、ステム418の第1ティア420に当隣する(図2)。
【0020】
図11は、付勢機構500の分解図である。付勢機構500は、第1の端506と第2の端510を有する管状のケーシング502、ケーシング502の第1の端506に(例えば接着剤のような適切な結合剤または溶接等によって)適切に固定させた第2のバリア504、及びケーシング502内に挿入されるドライバ508を含む。ドライバ508は第2の端部キャップ110に適切に固定される(例えば一体成形されたり、別個に形成さて溶接されたりする)。第2のバリア504は、穿刺可能で、電解液に対して中性で、耐用年数が約20年間の任意の適切な材料(例えば、金属箔)で作ることができる。ドライバ508は、ラム600、このラム600に挿入できる大きさのトリガスリーブ700、このトリガスリーブ700に挿入できる大きさのトリガ800、及びラム600の周りに配置し得る大きさの第1のばね900を備える。
【0021】
図12及び13を参照するに、ラム600は、第1の開端604、第2の開端606、及び内部表面608を有する、概して円筒形のボディ部602を含む。ボディ部602は、このボディ部602の反対側にて互いにほぼ整列する2つの円形孔610も含む。ラム600は、ボディ部602の第2の開端606と一体に形成され、且つボディ部602の第2の開端606から同心的に外方に延在する、612にて総称するインパクトディスクをさらに有する。インパクトディスク612は、外側表面614、内側面616、及び第2のバリア504を穿刺するように構成した接触面618を有する。図示の接触面618は、複数の歯形の鋸歯状部622を有しているが、接触面618は、第2のバリア504に穿刺するのに適した、1つ以上の他の構造を有するように形成し得ることが理解されよう。
【0022】
図14及び15について、トリガスリーブ700は、閉端704から開端706まで延在し、キャビティ708を画定する、概して円筒状の側壁702を含む。側壁702は、ラム600内に適合する大きさの直径を有する。側壁702は、図14に示すように、二つの対向する孔712を有する。活性化機構100の第2の端部キャップ110は、側壁702から外側に延在する。第2の端部キャップ110は、外側面714、内側面716、及び内側面716と外側面714との間に延在する周囲面718を有する。外側面714内には外側条溝720が形成され、内側面716には内側条溝が形成されている。外側条溝720は、内側条溝722より周囲面718に近い。図14及び15に見られるように、周囲面718は、内側面716に近づくにつれて、わずかに内側にテーパーが付いている。
【0023】
図16は、トリガ800の斜視図である。この図に示すように、トリガ800は、802にて総称するスペーサと、第2のばね804と、スペーサ802に係合するように構成した、806にて総称するプラグと、スペーサ802に着座する大きさの、一対のボール808とを含む。図17を参照するに、スペーサ802は、ベース面810、頂部面812、及び側面814を有する。側面814は、一対の互いに反対側の傾斜した(例えばアーチ状)部分818を有している。傾斜部分818は、各ボール808を、傾斜部分818の対応する1つに着座させ、且つそれに沿って転がすことができように形成される。
【0024】
図18及び19を参照するに、プラグ806は、ヘッド部820、ボディ部822及び、ヘッド部820とボディ部822との間に延在して、ガスケット828(例えば図2、20及び21に示すようなOリング)を受け入れるような大きさの周囲条溝826を画定するネック部824を含む。ヘッド部820、ボディ部822、及びネック部824は、それぞれの参照番号によって総称してある。ボディ部822は、ベース部830及び、このベース部830から外側に延在する一対の対向アーム832を備える。それぞれのアーム832は、ベース部830に取り付けられた近位端834、及びベース部830から離間した遠位端836を有する。それぞれのアーム832は、一組の突起838を有し、遠位端836に隣接する突起838間に対応する陥凹領域840を有している。陥凹領域840は、突起838間にスペーサ802の頂部面812を受け入れて、スペーサ802が、図2に示すように、両アーム832に同時に接触するような大きさとする。図18及び19に見られるように、アーム832の間に通路842が画定されている。
【0025】
図2は、組み立てた活性化機構100の断面図である。この組み立てた活性化機能100は、第2の端部キャップ110とハウジング102との間を気密にシールするために、任意の適切な接続方法(例えば溶接、ボルト締めまたはスナップ式係合)によりハウジング102の第2の端部キャップ110に接続された付勢機構500を含む。加えて、ケーシング502の第2の端510は、第2の端部キャップ110の内側条溝722内に適切に(例えば溶接により)接続される。第2のバリア504は、ケーシング502の第1の端506に(例えば接着剤のような結合剤または溶接により)適切に接続して、ドライバ508がケーシング内に気密にシールされるようにする。結果として、第2のバリア504は、第1のバリア136及びガスケット310と一緒に、活性化機構100のコンポーネントが悪環境の影響(湿気等)により劣化するのを防ぐ手助けをするが、プラグ・ガスケット828は保存電池1の活性化に関する臭気を封じ込める手助けをする。
【0026】
ドライバ508に関して、トリガ800はトリガスリーブ700内に挿入され、トリガー・スレーブ700は、ラム・ボディ部602の内部表面608が、トリガスリーブ700の側壁702に隣接して位置付けられるように、ラム600内に挿入される。第1のばね900は、ラム・ボディ部602の周りに配置され、インパクトディスク612と第2の端部キャップ110との間で圧縮される。第2のばね804は、トリガスリーブ700の閉端704とスペーサ802のベース面810との間に適切に配置される。ボール808は、対応するトリガスリーブの孔712を経てラムの孔610に挿入されて、ラム600をばね荷重位置に保持(すなわち第1のばね900をインパクトディスク612と第2の端部キャップ110との間に圧縮維持)する。そのため、インパクトディスク612は、シールされたケーシング502内で、第2のバリア504から離間される。
【0027】
ボール808は、スペーサ802の傾斜部分818に着座し、ラムの孔610は、トリガスリーブの孔712と整列して、ラムの孔610がボール808をスペーサ802に対して内側に押し当てるようにする。これは、ラム600が第1のばね900によってばね付勢されるからである。従って、ボール808にかかる600の下向きの力が、ボール808をスペーサ802に押し当てて、スペーサ802をボール808の間に維持し、第1のばね900を圧縮状態のままにする。スペーサ802がボール808の間に保持されると、プラグ806は、キャビティ708内でスペーサ802の上に摺動変位し、プラグ・ガスケット828は周囲条溝826内に挿入される。
【0028】
ピストン300は、このピストン300の外側表面326(つまり、ピストンのボディ部302及びピストンのヘッド部304の外側表面)が、ハウジング102に対して摺動し得るように、ハウジング102内に配置される。ケーシング502は、ピストンのボディ部302の内側表面312から離間され、且つケーシング502の第1の端506及び/または第2のバリア504が、ピストン300の第1の肩部320に隣接するか、または接触するように、ピストン300の内部チャンバ314内に挿入される。加えて、ガスケット310は、環状条溝308内に配置され、ピストン300とハウジング102との間に電解液が流れないようにする。
【0029】
インジェクタ400は、そのベース部402のプレート416が第2のバリア504に隣接して、第一ティア420に隣接する第2ティア422に接続された針404の開放近位端408が、ピストン300のボア318を経て、電解液を保持しているチャンバ902内に延在するように、ピストン300のボア318を経て挿入される。針404の開放遠位端410は、第1の端部キャップ106のボア116を経て第1のバリア136と第1の端部キャップ106との間に画定されたポケット140内に延在する。このように、針404は、電解液を収容するチャンバ902を経て延在する。
【0030】
図20及び21は、活性化機構100が、電解液をハウジング102から放出し、保存電池1の電極5に接触させている様子を示す断面図である。活性化機構100は、チャンバ902内の電解液が第1のバリア136により、隣り合う電極チャンバ11内の電極5から孤立され、また、第1のバリア136に穿刺して開けた開口部を経て、チャンバ902から、隣接する電極チャンバ11内に電解液を放出できるように、任意の適切な方法にて(例えば、取り付け部128および/またはマンドレル13を介して)電極チャンバ11に接続されるように構成する。電解液をチャンバ902から、隣接する電極チャンバ11に放出すると、電解液と電極5との間に発電化学反応が起こり、負荷に所望の電力を供給する。
【0031】
チャンバ902から電解液を放出するためには、プラグ・ヘッド820に(例えば、ユーザがプラグ806の上部を押すことによって)外力Fを与えて、プラグ806をトリガスリーブ700のキャビティ708内に押し込んで、プラグ806が第2のばね804の付勢に打ち勝って、ボール808の間からスペーサ802を押しのけるようにする。プラグ806の通路842はボール808の直径よりも大きいので、アーム832は、ボール808に触れることなく陥凹部840内で、スペーサ802の頂部面812に係合することができる。プラグ806がボール808に捕らえられていたスペーサ802を押しのけた後(図20)には、インパクトディスク612に対して圧縮された第1のばね900の力(つまり、ボール808に対するラム孔610の下向きの力)がボール808をトリガスリーブ700のキャビティ708内に押し込み、これにより、ばね荷重されたラム600を釈放し、第1のばね900を弛緩させてラム600をピストン300の方へと動かす。ばね荷重されたラム600が釈放され、外力Fがもはや印加されなくなった後には、第2のばね804がスペーサ802をキャビティ708内で上方に付勢し、スペーサ802は再びボール808の間に位置付けられるようになる(図21)。
【0032】
第1のばね900が弛緩すると、ラム600の接触面618が、歯形の鋸歯状部622により第2のバリア504を穿刺し、インジェクタ400のプレート416に当たり、プレート416がピストンボディ部302の第2肩部322に接触するまで、ベース部402のステム418をピストン300のボア318を経て推し進める(図21)。いったんプレート416がピストンボディ部302の第2肩部322に接触すると、ラム600は圧縮解除してピストンヘッド部304をチャンバ902内に押し込み続け、チャンバ902内の電解液を加圧する。加えて、第1のばね900が弛緩すると、針404の開放遠位端410が第1のバリア136を穿刺し、針404は第1の端部キャップ106のボア116を経てケース3内(例えば、マンドレル13内に)突き抜ける。
【0033】
第1のバリア136が穿刺されるのに伴い、第1のばね900はさらに弛緩し、針404はさらにボア116を通って突き進む。加圧された電解液はチャンバ902からボア116を経て放出される。より正確に言えば、電解液は切り欠き部412を経て針のボディ部406に入り、開放遠位端410から出るので、針404は、加圧された電解液がチャンバ902から放出され易くする。結果として、加圧電解液は、隣接する電極チャンバ11内に注入される。ガスケット310はピストン300とハウジング102との間に加圧電解液が流れるのを防ぎ、これにより、第2のバリア504が穿刺され、もはやケーシング502の第1端部506を覆わなくなっても、ドライバ508が電解液によって浸食されないようにする。
【0034】
活性化機構100のトリガ800は、潜在的なエネルギー(例えば、第1のばね900の圧縮力)を持っているため、活性化機構100を作動させるために、この活性化機構100に供給するのに必要な外部エネルギーの量は、最小限度に抑えることができる。そのため、活性化機構100は、従来の保存電池よりも、広く様々な用途及び環境にて用いることができる(つまり、活性化機構100は、直ぐに利用できる外力の大きさが小さくて済む用途及び/または環境にて利用できる)。例えば、ある適切な実施形態では、活性化機構100は約5〜10ポンドの範囲の外力に応えて作動可能である。
【0035】
活性化機構100を作動させるために必要とされる外部エネルギーの量を増加させたり、減少させたりするために、活性化機構100を様々な態様に変更することができ(例えば、傾斜部分818の輪郭を調整して、傾斜を大きくしたり、小さくしたり、また、第1のばね900または第2のばね804のばね定数を調整して、トリガ800を作動させるのに必要な、最小限の印加外力を増やしたり、減らしたりすることができ)、これにより、活性化機構100を所望の外力で作動させるようにカスタマイズすることを可能とし、また、手違いや、外部ショック、または輸送時の振動による偶発的な活性化のリスクを最小限に抑えることができる。
【0036】
本発明またはその好適実施形態にて用いている構成要素の単数形には、該構成要素が1つ以上存在することも意味している。また、「備える」、「含む」、及び「有する」とは、記載した構成要素以外の付加の要素が存在したり、含まれたりするものとする。
【0037】
上述した構成は、発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更がなされるので、上述の記載に含まれ、または添付した図面に示される、すべての事項は例示に過ぎず、限定的な意味合いのものではないと解釈されることを意図する。
【符号の説明】
【0038】
1 保存電池
3 ケース
5 電極
7 端壁
9 電極コネクタ
11 電極チャンバ
13 マンドリル
100 活性化機構
102 ハウジング
106 第1の端部キャップ
108 第1の端部
110 第2の端部キャップ
112 第2の端部
116 中央ボア
118 内側の環状壁
120 外側の環状壁
122 環状リム
124 内部表面
126 外部表面
128 取り付け部
134 ポート
136 第1のバリア
140 ポケット
300 ピストン
302 ボディ部
304 ヘッド部
306 ネック部
308 環状の溝
310 ガスケット
312 内部表面
314 内部チャンバ
316 開端
318 中央ボア
320 第1の内部環状肩部
322 第2の内部環状肩部
324 第3の内部環状肩部
326 外部表面
400 インジェクタ
402 ベース部
404 針
406 ボディ部
408 開放近位端
410 開放遠位端
412 切り欠き部
416 プレート
418 ステム
420 第1ティア
422 第2ティア
500 付勢機構
502 ケーシング
504 第2のバリア
506 第1の端
508 ドライバ
510 第2の端
600 ラム
602 ボディ部
604 第1の開端
606 第2の開端
608 内部表面
610 円形孔
612 インパクトディスク
614 外側表面
616 内側面
618 接触面
622 鋸歯状部
700 トリガスリーブ
702 側壁
704 閉端
706 開端
708 キャビティ
712 孔
714 外側面
716 内側面
718 周囲面
720 外側条溝
722 内側条溝
800 トリガ
802 スペーサ
804 第2のばね
806 プラグ
808 ボール
810 ベース面
812 頂部面
814 側面
818 傾斜部分
820 ヘッド部
822 ボディ部
824 ネック部
826 周囲条溝
828 ガスケット
830 ベース部
832 アーム
834 近位端
836 遠位端
838 突起
840 陥凹領域
842 通路
900 第1のばね
902 チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存電池用の活性化機構であって、該活性化機構は、
電解液を収容しているチャンバを有するハウジングと、
前記ハウジングから前記電解液を放出するように構成された送出デバイスとを備え、前記送出デバイスは、外力に応えて釈放されて、前記ハウジングから前記電解液の放出を開始するように構成された圧縮ばねを備えていることを特徴とする、
保存電池用の活性化機構。
【請求項2】
前記送出デバイスは、前記圧縮ばねに動作可能に関連付けられると共に、前記圧縮ばねが釈放された後に、前記チャンバ内に付勢されて、前記電解液を加圧し、且つ前記ハウジングから放出するように構成されたピストンをさらに備える、
請求項1に記載の活性化機構。
【請求項3】
前記送出デバイスは、前記ピストンと前記ハウジングとの間に配置されて、前記ピストンと前記ハウジングとの間に前記加圧された電解液が流れるのを防ぐガスケットをさらに備える、
請求項2に記載の活性化機構。
【請求項4】
前記ハウジングは、ボア及び該ボアを覆う第1のバリアを備え、
前記送出デバイスは、前記第1のバリアを穿刺して、前記加圧された電解液を前記ハウジングから前記ボアを経て放出するように構成される、
請求項2に記載の活性化機構。
【請求項5】
前記送出デバイスは、針を備え、該針を経て前記加圧された電解液を前記ハウジングから、放出できるようにした、
請求項4に記載の活性化機構。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記加圧された電解液を前記ハウジングから前記電極チャンバ内へ放出することができるように、電極チャンバと流体連通で接続されるように構成される、
請求項1に記載の活性化機構。
【請求項7】
前記圧縮ばねに動作可能に関連付けられたラムを有する付勢機構をさらに備え、前記ラムは、前記圧縮ばねの釈放に応えて、前記ピストンと接触するように変位して、前記ピストンを前記チャンバ内へ付勢するように構成される、
請求項1に記載の活性化機構。
【請求項8】
前記付勢機構は、開口部と、該開口部を覆う第2のバリアとを有するケーシングをさらに備え、
前記ラムは、前記第2のバリアを穿刺して、前記ケーシングにおける前記開口部を経て前記ピストンに接触するように構成される、
請求項7に記載の活性化機構。
【請求項9】
前記付勢機構は、前記ラムに画定された一対の孔内に挿入されて、前記ラムにばね荷重をかける一対のボールを有するトリガをさらに備え、
前記トリガは、前記ばね荷重をかけたラムが前記ボールを前記孔から押し出して、前記ラムを前記ピストンの方へと変位させることができるように構成される、
請求項8に記載の活性化機構。
【請求項10】
前記付勢機構は、キャビティと一対の孔を有するボディ部を備える、トリガスリーブをさらに備え、前記トリガはさらに、ばねにより前記キャビティ内に付勢されるスペーサも備え、該スペーサは前記ボール間に保持されて、前記ボールを前記トリガスリーブの前記孔を経て前記ラムの前記孔内に挿入されるようにし、
前記スペーサは、前記ばねの前記付勢に打ち勝つ前記外力に応えて前記ボールの間から押しのけられ、前記ばね荷重をかけたラムが前記ピストンの方へ変位する時に、前記ボールが前記キャビティ内に押し込められるようにした、
請求項9に記載の活性化機構。
【請求項11】
前記トリガは、プラグをさらに備え、該プラグは、当該プラグに印加される外力に応えて、前記ボールの間から前記スペーサを押しのけることができる、
請求項10に記載の活性化機構。
【請求項12】
前記トリガは、前記プラグの周りに配置されて、該プラグと前記トリガスリーブとの間のキャビティから流体が流れるのを防ぐガスケットをさらに備える、
請求項11に記載の活性化機構。
【請求項13】
保存電池の電解液を加圧するための付勢機構であって、
圧縮ばねと、
該圧縮ばねに動作可能に関連付けられたトリガとを備え、前記トリガは、前記圧縮ばねを釈放して、前記電解液を加圧するように構成されることを特徴とする、
保存電池の電解液を加圧するための付勢機構。
【請求項14】
前記付勢機構は、
開口部を有するケーシングと、
該ケーシングにおける前記開口部を覆うバリアと、
前記圧縮ばねにより、前記ケーシング内にてばね荷重されるラムとをさらに備え、
前記ラムは、前記圧縮ばねが釈放されると、前記バリアを穿刺するように変位し得る、
請求項13に記載の付勢機構。
【請求項15】
前記ラムは一対の孔を備え、且つ前記トリガは、前記孔内に挿入されて、前記ラムにばね荷重をかける一対のボールを備え、前記トリガは、前記ボールを前記ラムによって前記孔から押し出して、前記圧縮ばねを釈放し得るように構成される、
請求項14に記載の付勢機構。
【請求項16】
前記付勢機構は、キャビティ及び一対の孔を画定するボディ部を有するトリガスリーブを備え、前記トリガは、前記キャビティ内にばねによって付勢されるスペーサをさらに備え、該スペーサは前記ボールの間に保持されて、前記ボールを前記トリガスリーブの前記孔を経て前記ラムの前記孔内に挿入されるようにし、
前記スペーサは、前記ボールが前記ラムによって前記キャビティ内に押し込まれるように、外力に応えて、前記ばねの付勢に打ち勝つように、前記ボールの間から押しのけられるように構成される、
請求項15に記載の付勢機構。
【請求項17】
前記トリガは、プラグをさらに備え、該プラグは、当該プラグに印加される前記外力に応えて、前記ボールの間から前記スペーサを押しのけることができる、
請求項16に記載の付勢機構。
【請求項18】
前記トリガは、前記プラグの周りに配置されて、前記プラグと前記トリガスリーブとの間の、前記キャビティから流体が流れないようにするガスケットをさらに備える、
請求項17に記載の付勢機構。
【請求項19】
前記プラグは、互いに離間され、且つ前記スペーサに係合するように構成された一対のアームを備える、
請求項17に記載の付勢機構。
【請求項20】
保存電池内の電解液放出用付勢機構の組み立て方法であって、
ばねを圧縮するステップと、
前記圧縮ばねにトリガを動作可能に関連付けるステップとを備え、
前記トリガは、前記圧縮ばねを釈放し、該圧縮ばねを弛緩して前記電解液を加圧するように構成される、
保存電池内の電解液放出用付勢機構の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−233520(P2011−233520A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−91453(P2011−91453)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(510238959)イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】