説明

保持トレー、印刷治具、及び印刷方法

【課題】整列模様を視覚的に容易に把握することができ、小物品の汚染を招くおそれが少ない保持トレー、印刷治具、及び印刷方法を提供する。
【解決手段】支持板1と、支持板1の表面に着脱自在に配置され、フレーム11の中空部を緊張した透明の粘着保持層12により被覆した保持トレー10とを備え、保持トレー10に模様を印刷する治具であり、支持板1の中央部に、保持トレー10の粘着保持層12の表面13に対向する複数の吸着孔2を穿孔し、支持板1の平坦な表面には、保持トレー10のフレーム11が嵌合する嵌合溝4を切り欠き形成する。そして、嵌合溝4にフレーム11を嵌合させた保持トレー10における粘着保持層12の露出した裏面14に電子デバイス用の整列模様をスクリーン印刷する。緊張した粘着保持層12に電子デバイス用の整列模様を直接印刷するので、優れた視認性を得られる他、整列模様を適切に印刷できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着保持層に電子デバイス等からなる小物品用の整列模様を備えた保持トレー、印刷治具、及び印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小さな電子デバイスを保持して管理したり、搬送等する場合には、図示しない専用の保持トレーが使用されている(特許文献1、2参照)。この保持トレーは、例えば断面略皿形のトレー本体を備え、このトレー本体の表面に電子デバイス用の整列模様が複数印刷され、トレー本体の表面に、整列模様を被覆するメッシュが覆着されており、このメッシュ上には、電子デバイスを着脱自在に粘着保持する透明の粘着保持層が積層されている。各整列模様は、例えば電子デバイスの大きさや形に対応するマトリックスにスクリーン印刷され、電子デバイスの位置決めを容易化するよう機能する。
【0003】
上記において、電子デバイスを保持して管理したり、搬送等する場合には、保持トレーの整列模様を目安にして粘着保持層の表面に電子デバイスを粘着保持させ、位置決めすれば、電子デバイスを保持、管理、搬送等することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000‐95290号公報
【特許文献2】特開平08‐72974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における保持トレーは、以上のように構成され、トレー本体の表面に電子デバイス用の整列模様が単に印刷されるので、トレー本体の表面が凹凸の場合には、整列模様を適切に印刷することができないという問題がある。また、トレー本体の表面に、整列模様を覆うメッシュが覆着されるので、このメッシュの線条部により整列模様を視覚的に把握し難いという問題もある。
【0006】
係る問題を解消する手段としては、(1)整列模様とメッシュの色彩を異ならせ、整列模様に顕現色(白や黒等、明瞭に確認できる色彩)を塗布する方法、(2)トレー本体の表面ではなく、粘着保持層の表面に整列模様を印刷する方法があげられるが、(1)の方法の場合には、整列模様をメッシュが被覆する関係上、整列模様の全てを完全に視認することは容易でなく、整列模様の完全な把握はきわめて困難である。また、(2)の方法の場合には、印刷した整列模様と電子デバイスとが摺接するので、電子デバイスの粘着保持領域にコンタミネーションが発生して電子デバイスの汚染を招くおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、整列模様を視覚的に容易に把握することができ、小物品の汚染を招くおそれが少ない保持トレー、印刷治具、及び印刷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、枠体の中空部を張力の作用した粘着保持層により被覆し、この粘着保持層の表面に小物品を着脱自在に粘着保持するものであって、
粘着保持層に光透過性を付与してその裏面には小物品用の整列模様を印刷したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明においては上記課題を解決するため、支持板の表面に、枠体の中空部を張力の作用した光透過性の粘着保持層により被覆した保持トレーを着脱自在に配置し、この保持トレーの粘着保持層の裏面に模様を印刷するものであって、
支持板に、保持トレーの粘着保持層の表面に対向する複数の吸着孔を穿孔し、支持板の表面を平坦に形成し、この表面には、保持トレーの枠体が嵌合する嵌合溝を形成し、この嵌合溝に枠体を嵌合させた保持トレーにおける粘着保持層の露出した裏面に小物品用の整列模様を印刷するようにしたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明においては上記課題を解決するため、支持板の表面に、枠体の中空部を張力の作用した光透過性の粘着保持層により被覆した保持トレーを着脱自在に配置し、この保持トレーの粘着保持層の裏面に模様を印刷する印刷方法であって、
支持板に、保持トレーの粘着保持層の表面に対向する複数の吸着孔を穿孔し、支持板の表面を平坦に形成し、この表面には、保持トレーの枠体が嵌合する嵌合溝を形成し、
支持板の嵌合溝に保持トレーの枠体を嵌合させ、この保持トレーにおける粘着保持層の露出した裏面に小物品用の整列模様を印刷することを特徴としている。
【0011】
なお、保持トレーと着脱自在に嵌まり合う断面略皿形の保持具を備え、この保持具の周縁部を除く表面に、粘着保持層の裏面に接触して緊張させる複数の支持突起を配列し、保持具の中央部には、粘着保持層の裏面に対向する複数の吸着孔を厚さ方向に穿孔することもできる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における保持トレーの枠体は、中空であれば、平面リング形や枠形等とすることができる。この保持トレーの粘着保持層は、透明や半透明を特に問うものではない。小物品には、少なくとも電気部品、電子部品、電子デバイス、半導体デバイス等が含まれる。また、支持板は、平面矩形、多角形、円形、楕円形等とすることができる。この支持板の吸着孔や保持トレーの整列模様は、単数でも良いし、複数でも良い。この整列模様の印刷に際しては、少なくともスクリーン印刷法やパッド印刷法等を採用することができる。
【0013】
本発明によれば、緊張した光透過性の粘着保持層に小物品用の整列模様を直接印刷するので、優れた視認性を得ることができる他、整列模様を適切に印刷することができる。また、整列模様を覆うメッシュを省略するので、メッシュの縦横に伸びる線条部により整列模様を把握し難くなるという問題を解消することができる。
【0014】
また、保持トレーに小物品用の整列模様を印刷する場合には、保持トレーの枠体に粘着保持層を固定し、支持板の嵌合溝に保持トレーの枠体を嵌めて支持板の表面に粘着保持層を揃え、粘着保持層の裏面を露出させる。支持板に保持トレーをセットしたら、粘着保持層の露出した裏面に整列模様を印刷すれば、保持トレーの粘着保持層に小物品用の整列模様を印刷することができる。印刷の際、複数の吸着孔に粘着保持層の表面を吸着すれば、位置ずれを招くことなく、粘着保持層の裏面に整列模様を印刷することができる。
【0015】
粘着保持層の裏面に整列模様を印刷したら、支持板の嵌合溝から保持トレーの枠体を取り外した後、保持トレーを反転し、整列模様を目安にして粘着保持層の表面に小物品を粘着保持させ、位置決めすれば、小物品を保持、管理、搬送等することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、整列模様を視覚的に容易に把握することができ、しかも、小物品の汚染を招くおそれが少ないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る保持トレー、印刷治具、及び印刷方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る印刷治具及びこれを用いた印刷方法の実施形態における支持板を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る保持トレーの実施形態を模式的に示す裏面説明図である。
【図4】本発明に係る保持トレーの第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る印刷治具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における印刷治具は、図1ないし図3に示すように、剛性の支持板1と、この支持板1に着脱自在に配置され、フレーム11の中空部を光透過性の粘着保持層12により被覆した保持トレー10とを備え、保持トレー10に電子デバイス用の整列模様20を複数パターン印刷する治具である。
【0019】
支持板1は、図1や図2に示すように、所定の材料を使用して保持トレー10よりも大きい平面矩形の板に形成され、表面が平坦化される。この支持板1の所定の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばガラエポと呼ばれるガラスエポキシ、紙フェノール、ポリカーボネート、塩化ビニル、アルミニウム等があげられる。
【0020】
支持板1の中央部には、保持トレー10の粘着保持層12の表面13に対向接触する複数の吸着孔2が厚さ方向に穿孔され、この複数の吸着孔2がスクリーン印刷装置の真空ポンプ等からなる外部の排気装置3に着脱自在に接続されており、この排気装置3の駆動に伴う空気(図1の矢印参照)の排気により複数の吸着孔2に粘着保持層12の表面13が真空吸着される。
【0021】
支持板1の表面には、支持板1の中央部を包囲する平面リング形の嵌合溝4が切り欠き形成され、この嵌合溝4内に保持トレー10のフレーム11が上方から着脱自在に嵌合して支持板1の表面に保持トレー10の粘着保持層12を略面一に揃えるよう機能する。嵌合溝4の外周面は、フレーム11の外周面との間に隙間5を区画形成し、この隙間5が保持トレー10の取り出しを容易化する。
【0022】
保持トレー10は、図1や図3に示すように、平面リング形のフレーム11を備え、このフレーム11の丸い中空部が緊張した透明の粘着保持層12により被覆される。フレーム11は、例えば耐熱性や耐衝撃性に優れるポリカーボネートやABS樹脂等を用いて表裏面が平坦に成形される。
【0023】
粘着保持層12は、例えば透明性や粘着性を有するシリコーン系のエラストマー等を使用して可撓性の平面円形の薄膜に形成され、フレーム11の裏面に再剥離タイプの粘着テープや粘着剤等を介して粘着固定されており、フレーム11の中空部に囲まれる表面13に複数の電子デバイスを着脱自在に粘着保持するよう機能する。
【0024】
各整列模様20は、図3に示すように、粘着保持層12の露出した裏面14に図示しないスクリーン印刷装置により直接スクリーン印刷される。この整列模様20は、電子デバイスの大きさや形に対応するマトリックスのマス目にスクリーン印刷され、電子デバイスの位置決めや整列を容易化するよう機能する。整列模様20は、視覚的に明瞭に把握できる顕現色のインキにより印刷することができる。
【0025】
上記構成において、保持トレー10に電子デバイス用の整列模様20をスクリーン印刷する場合には、先ず、保持トレー10のフレーム11の裏面に延伸して張力の作用させた粘着保持層12を粘着固定し、印刷治具の支持板1の嵌合溝4にフレーム11を上方から遊嵌(遊びを介して嵌める)して支持板1の表面に粘着保持層12をフラットに揃え、粘着保持層12の裏面14を上方に露出させる。
【0026】
こうして支持板1に保持トレー10をセットしたら、印刷治具をスクリーン印刷装置にセットして粘着保持層12の露出した裏面14に複数の整列模様20をマトリックスのマス目にそれぞれスクリーン印刷すれば、粘着保持層12に電子デバイス用の整列模様20をパターン印刷することができる。
【0027】
スクリーン印刷の際、排気装置3を駆動して複数の吸着孔2の開口端部に粘着保持層12の表面13を隙間なく真空吸着すれば、前後左右に位置ずれを招くことなく、粘着保持層12の裏面14に複数の整列模様20をスクリーン印刷することができる。
【0028】
粘着保持層12の裏面14に整列模様20をスクリーン印刷したら、印刷治具をスクリーン印刷装置から取り外し、支持板1の嵌合溝4から保持トレー10のフレーム11を取り外した後、保持トレー10を上下逆に反転し、透けて見える整列模様20の位置を目安にして粘着保持層12の表面13に電子デバイスを粘着保持させ、位置決めすれば、電子デバイスを保持、管理、搬送等することができる。
【0029】
上記構成によれば、緊張した透明の粘着保持層12に電子デバイス用の整列模様20を直接印刷するので、優れた視認性を得ることができる他、整列模様20を適切かつ正確に印刷することができる。また、整列模様20を覆うメッシュを省略するので、メッシュの縦横に伸びる線条部により整列模様20を把握し難くなるという問題を確実に解消でき、整列模様20を鮮明に把握することができる。
【0030】
また、粘着保持層12の表面13ではなく、電子デバイスに触れることのない裏面14に整列模様20をスクリーン印刷するので、印刷した整列模様20のインキと電子デバイスとが摺接することがなく、電子デバイスの粘着保持領域にコンタミネーションが発生して電子デバイスの汚染を招くおそれもない。さらに、整列模様20をスクリーン印刷するので、複数の整列模様20のパターンの位置精度を向上させ、しかも、整列模様20の膜厚を容易に制御することが可能になる。
【0031】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、整列模様20の印刷された保持トレー10をそのまま使用するのではなく、保持具30に保持トレー10を着脱自在に嵌合し、剛性を高めた状態で使用するようにしている。
保持具30は、例えば保持トレー10のフレーム11よりも一回り大きい断面略皿形に形成され、周縁部を除く表面の中央部には、粘着保持層12の裏面14に対向接触して緊張させる複数の支持突起31が間隔をおいて配列されており、各支持突起31が円錐台形に形成される。
【0032】
保持具30の中央部には、粘着保持層12の裏面14に対向する複数の吸着孔32が厚さ方向に穿孔され、この複数の吸着孔32が真空ポンプ等からなる外部の排気装置33に着脱自在に接続されており、この排気装置33の駆動に伴う空気(図4の矢印参照)の排気により平坦な粘着保持層12が複数の支持突起31に応じて凹凸に変形し、粘着保持層12上に粘着した電子デバイス40が容易に取り外し可能となる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0033】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、保持トレー10の構成の多様化が大いに期待できるのは明らかである。
【0034】
なお、上記実施形態では粘着保持層12の裏面14に整列模様20をマトリックスのマス目に印刷したが、文字、図形、記号、色彩を適宜組み合わせて整列模様20を印刷しても良い。また、上記実施形態では粘着保持層12の裏面14に複数の整列模様20をスクリーン印刷したが、何らこれに限定されるものではなく、印刷精度や再現性に優れるパッド印刷法を採用しても良い。
【0035】
また、上記実施形態では保持具30の支持突起31を円錐台形に形成したが、支持突起31を角錐台形、円柱形、ピン形等に形成しても良い。また、保持具30の表面中央部に複数の支持突起31を配列するのではなく、凹凸のメッシュを積層して複数の支持突起31の代わりとすることもできる。
【0036】
さらに、使用済みの保持トレー10の粘着保持層12を再利用したい場合には、例えば粘着保持層12の表面に、整列模様20に重なる光透過性の粘着層を両面接着層等を介して積層接着し、この整列模様20付きの粘着層の周縁部に沿って粘着保持層12をカットし、小さく切り出した整列模様20付きの粘着層を保持具30に相当する小型の保持具に緊張状態で取り付ければ、電子デバイスの粘着保持や位置決めに整列模様20を再利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 支持板
2 吸着孔
3 排気装置
4 嵌合溝
10 保持トレー
11 フレーム(枠体)
12 粘着保持層
13 粘着保持層の表面
14 粘着保持層の裏面
20 整列模様
30 保持具
40 電子デバイス(小物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の中空部を張力の作用した粘着保持層により被覆し、この粘着保持層の表面に小物品を着脱自在に粘着保持する保持トレーであって、
粘着保持層に光透過性を付与してその裏面には小物品用の整列模様を印刷したことを特徴とする保持トレー。
【請求項2】
支持板の表面に、枠体の中空部を張力の作用した光透過性の粘着保持層により被覆した保持トレーを着脱自在に配置し、この保持トレーの粘着保持層の裏面に模様を印刷する印刷治具であって、
支持板に、保持トレーの粘着保持層の表面に対向する複数の吸着孔を穿孔し、支持板の表面を平坦に形成し、この表面には、保持トレーの枠体が嵌合する嵌合溝を形成し、この嵌合溝に枠体を嵌合させた保持トレーにおける粘着保持層の露出した裏面に小物品用の整列模様を印刷するようにしたことを特徴とする印刷治具。
【請求項3】
支持板の表面に、枠体の中空部を張力の作用した光透過性の粘着保持層により被覆した保持トレーを着脱自在に配置し、この保持トレーの粘着保持層の裏面に模様を印刷する印刷方法であって、
支持板に、保持トレーの粘着保持層の表面に対向する複数の吸着孔を穿孔し、支持板の表面を平坦に形成し、この表面には、保持トレーの枠体が嵌合する嵌合溝を形成し、
支持板の嵌合溝に保持トレーの枠体を嵌合させ、この保持トレーにおける粘着保持層の露出した裏面に小物品用の整列模様を印刷することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195413(P2010−195413A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40573(P2009−40573)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】