保持器
第1の保持器部分(3)及び第2の保持器部分(4)を持つ特に転がり軸受用の保持器(1)。本発明によれば、第1の保持器部分(3)が少なくとも1つの第1の係合素子(6,16)を持ち、第2の保持器部分(4)が少なくとも1つの第2の係合素子(7,17)を持ち、これらの係合素子(6,16,7,17)が、第2の保持器部分(4)に対する第1の保持器部分(3)の相対運動により互いに係合して、第1の保持器部分(3)と第2の保持器部分(4)との間に少なくとも確実結合が行われるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保持器に関する。本発明は円筒ころ軸受用保持器に関して記載されるが、本発明は例えば球面ころ軸受又は心合わせころ軸受のような他の種類の軸受にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、2つ又はそれ以上の保持器部分から構成されかつ組立て中にまとめられる軸受が公知である。このような2部分又は数部分から成る保持器の種々の変形例が公知である。
【0003】
従来技術から公知の可能性は、保持器櫛と保持器蓋から成る一体の保持器を設けることである。その際保持器蓋は、保持器櫛に形成された鋲により鋲止めされる。この過程は、既に組立てを完了した軸受で行われる。この実施形態の欠点は、製造費が比較的高いことである。更に前述したように、この場合組立てられた軸受における保持器組立てが必要である。更にそれぞれの鋲結合部が裂き取られることがあり、それにより保持器の寿命が低下される。
【0004】
従来技術から公知の別の可能性は、保持器を削り込まれた窓輪郭を持つ一体の保持器として構成することである。この構成では、保持器の窓が外部からならいフライス又はエンドミルで形成される。それによりこの解決策では、フライスはすべての窓を個々に順次削らねばならない。更に窓の4つの隅に凹所を形成せねばならず、これらの凹所が保持器の側縁を事情によっては弱くする。従ってこれらの実施形態は時間のかかる加工を伴う。
【0005】
更に例えば球面ころ軸受のために一体の保持器を使用することも公知であり、この構成では2つの保持器部分が鋲で互いに結合される。そのためこれらの保持器部分を互いに対にまとめて、穴あけせねばならない。橋絡片を貫通して形成される鋲穴は、橋絡片の強度を低下させてはならない。このため橋絡片が比較的厚く形成され、それにより周囲の最大限の利用が最小限にされる。更にこのような保持器は製造に比較的費用がかかり、比較的低い負荷能力しか持たない。
【0006】
更に従来技術から分割された心合わせころ軸受が公知であり、保持器蓋がタッピンねじにより保持器櫛の橋絡片にねじ止めされる。この場合も高い製造費という問題があり、更にタッピンねじが使用中に引き裂かれるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の基礎になっている課題は、安価にかつ比較的速く製造できる軸受を利用可能にすることである。更に保持器の簡単な組立て、及び転動体の取付け中に確実又は簡単な取扱いに可能になるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、本発明によれば、請求項1に記載の保持器及び請求項11に記載の組立て方法によって達せられる。有利な実施形態及び展開が従属請求項の対象である。
【0009】
特に転がり軸受用の本発明による保持器は、第1の保持器部分及び第2の保持器部分を持っている。本発明によれば、第1の保持器部分が少なくとも1つの第1の係合素子を持ち、第2の保持器部分が少なくとも1つの第2の係合素子を持っている。これらの係合素子は、第2の保持器部分に対する第1の保持器部分の相対運動により互いに係合して、第1の保持器部分と第2の保持器部分との間に少なくとも確実結合が行われるようにする。
【0010】
保持器部分とは、組合わされて保持器全体を生じる部分を意味する。第1の保持器部分と第2の保持器部分との確実結合により、両方の保持器部分が、特に保持器の縦方向に、直接ではなく、即ち介在する別の運動過程なしに互いに分離されることのないようにすることができる。
【0011】
第1の保持器部分と第2の保持器部分との確実結合が、保持器の縦軸線の周りに1つの保持器部分を回すことによって行われるように、第1の係合素子及び第2の係合素子が形成されているのがよい。これは、一方の保持器部分に対して保持器の縦軸線の周りに回されることを意味する。この回転により、両方の係合素子の係合が行われ、それにより両方の保持器部分が保持器の縦方向の力の作用により互いに分離されるのを防止される。係合素子をこのように設けることにより、従来技術において上述した問題を伴う鋲又はねじのような別の結合素子が不要になる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、保持器が2つの保持器縁及びこれらの保持器縁の間に延びる多数の橋絡片を持ち、少なくとも1つの係合素子がこれらの橋絡片の1つの橋絡片部分に設けられている。これは、保持器部分の係合が少なくとも1つの橋絡片部分を介して行われることを意味する。すべての係合素子が橋絡片のそれぞれの橋絡片部分に設けられているのがよい。これは保持器部分が多数の第1の橋絡片部分を持ち、第2の保持器部分が多数の第2の橋絡片部分を持ち、第1及び第2の橋絡片部分を介して係合が行われることを意味する。
【0013】
すべての橋絡片部分がそれぞれ少なくとも1つの係合素子を持っているのがよい。これは、個々の橋絡片部分の間で多数の確実結合が行われ、こうして保持器全体の安定性が高められることを意味する。
【0014】
別の有利な実施形態では、係合素子が、橋絡片部分に設けられて互いにかみ合う溝及び突起である。溝と突起とのこの係合により保持器の縦方向における橋絡片部分の相対移動はもはや不可能である。
【0015】
1つの橋絡片部分のすべての溝が実質的に同じ輪郭を持っているのがよい。こうして適当な保持器部分の簡単な製造が、例えば旋削により可能である。別の利点は、第1の橋絡片部分が任意の第2の橋絡片部分と結合され、橋絡片部分を互いに取付けることができる複数の回転位置が可能なことである。溝は、円形断面だけでなく、多角形断面、楕円形断面、これらの断面の組合わせのような種々の幾何学的断面を持つことができる。
【0016】
別の好ましい実施形態では、溝が保持器の周方向に一定の断面を持っている。こうして一方の保持器部分に対して他方の保持器部分を特に有利なように回すことが可能である。しかし2〜3又はすべての溝が保持器の周方向に先細になるようにすることも可能である。それにより一方の保持器部分に対して他方の保持器部分を回すことによって、両方の保持器部分を確実結合することもできる。
【0017】
保持器が、真ちゅう、鋼、軽金属例えばアルミニウム、これらの組合わせ等を含む材料の群から選ばれる金属から製造されているのがよい。
【0018】
本発明は、更に上述した種類の保持器を持つ転がり軸受に向けられている。
【0019】
更に本発明は転がり軸受の組立て方法にも向けられ、1つの方法段階において第1の保持器部分が設けられ、別の方法段階において第2の保持器部分が第1の保持器部分に結合される。本発明によれば、軸受の縦軸線に関する回転運動によって、第2の保持器部分を第1の保持器部分に結合する。
【0020】
別の方法段階において保持器部分を互いに整列させるのがよい。この整列は、第2の保持器部分を第1の保持器部分に結合した後に行うのがよい。整列によって、個々の橋絡片がほぼ直線状に延びるようにすることができる。
【0021】
保持器部分の結合後多数の転動体を保持器へ入れるのがよい。
【0022】
それ以外の利点及び実施形態は添付図面からわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明による保持器1の第1実施例を示す。この保持器は第1の縁8及び第2の縁9を持っている。この実施例では、これらの縁はほぼ円形であり、縁8,9の間に、多数の橋絡片10が保持器の縦方向Lに延びている。縁8,9及び橋絡片10により、それぞれ転動体5用の保持器ポケット2が形成されている。第1の保持器部分3は、縁8及びこの縁8から保持器の縦方向Lに延びる橋絡片部分10aを持っている。第2の保持器部分4は、縁9及びこの縁9から保持器の縦方向Lに延びる橋絡片部分10bを持っている。それぞれの保持器部分10a及び10bは、保持器1を組立てるため互いに係合可能な溝6,7及び突起16,17を持っている。詳しく述べると、橋絡片部分10aの突起16は橋絡片部分10bの溝7に係合し、橋絡片部分10bの突起17は橋絡片部分10aの溝6に係合している。
【0024】
突起16はなるべく所定の方向例えば半径方向外方へ延び、突起17はこれに対して逆の方向即ち半径方向内方へ延びている。溝6,7も互いに逆の方向に延びている。
【0025】
図2〜5は本発明による保持器の製造方法を示す。図2には第1の保持器部分3及び第2の保持器部分4が認められ、これらは回転方向に互いにずれている。これは、両方の保持器部分3及び4の橋絡片部分10a及び10bがまだ互いに係合していないことを意味する。同時に第1の保持器部分3の溝6及び第2の保持器部分4の溝7が認められる。これらの溝6,7へ、それから他方の保持器部分の突起16及び17がはまる。それぞれの突起16,17及び対応する溝6,7も、それぞれの保持器部分3,4の周方向にほぼ同じ幅を持っていることがわかる。
【0026】
保持器櫛及び保持器蓋とも称することができるそれぞれの保持器部分3及び4又はその基本輪郭は、それぞれ旋削により製造することができる。互いに係合する図示した溝6,7も、旋削プロセスで製造することができる。それにより製造が全体として非常に簡単化される。
【0027】
図3は、保持器の製造における別の方法段階が示されている。この場合両方の保持器部分3,4が互いに引掛けられ、即ちそれぞれの突起16,17が溝6,7にはまっている。その際溝直径又はその幅は、両方の保持器部分3,4の間に僅かな間隙しか存在しないように、合わされている。
【0028】
図4に示す別の方法段階において、両方の保持器部分3,4が互いに整列される。これは、整列により保持器部分3,4の橋絡片部分10a,10bがほぼ角なしに互いに移行することを意味している。こうして挿入すべき転動体用の当接面12が形成される。これらの当接面12は円筒部分状の輪郭を持っている。更に当接面12は、導入される転動体の少なくとも一時的な停止を行う停止突起11を持っている。
【0029】
図4に示す実施例では、橋絡片部分10a及び10bはほぼ同じ長さである。即ち係合が行われる範囲は、ほぼ対象に保持器の縦方向中央にある。これは有利であるが、そうでなくてもよい。
【0030】
図5に示す方法段階では、転動体5が導入され、即ちこの場合内側から押込まれる。一般に保持器部分の整列後に転動体又はころ5は、外側から又は内側から、なるべく穴あけされるか又は削り込まれる保持器ポケット2へスナップばめされる。転動体5の取付け後に両方の保持器部分は、もはや互いに分離不可能である。なぜならば、転動体5が両方の保持器部分3,4の相対的なねじれを防止するからである。
【0031】
橋絡片の縦方向における両方の保持器部分3,4の分離は、上述したようにそれぞれの溝6,7及び突起16,17によって防止される。図示した解決策では、鋲止め、ねじ止め又は窓ポケットの費用がかかるフライス削りをやめることができる。
【0032】
図6aは本発明による保持器1の正面図を示す。保持器は多数の橋絡片10及び転動体が設けられる保持器ポケット2を持っていることがわかる。図6bは図6aの保持器の側面図を示している。この実施例は、上述したように、ほぼ対称に構成される保持器であり、両方の縁8及び9bの間で橋絡片部分10a及び10bが、保持器1の縦方向Lにほぼ同じ長さで延びている。
【0033】
図6cは図6bの部分Bの詳細図を示している。溝又は突起がほぼ長方形の輪郭を持っていることがわかる。
【0034】
図7a〜7cは本発明による保持器の別の実施例を示す。図6a〜6cに示す実施例と図7a〜7cに示す実施例との重要な相違は、溝6,7及び突起16,17の形状である。図7a〜7cに示す実施例では、溝は長方形でなく、少しV字状に形成されている。しかしそれぞれの溝の側方部分をもっと傾斜させることも可能である。例えば円弧状の輪郭を持つ溝のような異なる種類の溝を使用することも可能である。
【0035】
図8は、図7a〜7cに示す保持器の斜視図を示す。この場合突起16,17は、それらがそれぞれV字状溝6,7へはまることができるように形成されている。本発明の範囲を逸脱することなく、溝又は係合素子の他の構成も可能である。
【0036】
出願書類に開示されたすべての特徴は、それが個々に又は組合わせで従来技術に対して新規である限り、本発明にとって重要であるとして、権利を要求される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】 本発明による保持器の斜視図を示す。
【図2】 組立て方法を説明するための保持器の部分図を示す。
【図3】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図4】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図5】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図6a】 本発明による保持器の概略正面図を示す。
【図6b】 図6aのA−A線に沿う保持器の断面図を示す。
【図6c】 図6bの一部の詳細図を示す。
【図7a】 本発明による保持器の概略正面図を示す。
【図7b】 図7aのA−A線に沿う保持器の断面図を示す。
【図7c】 図7bの一部の詳細図を示す。
【図8】 本発明による保持器の別の実施例の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 保持器
2 保持器ポケット
3 第1の保持器部分
4 第2の保持器部分
5 転動体
6,7 溝
8 第1の縁
9 第2の縁
10 橋絡片
10a,10b 橋絡片部分
11 停止突起
12 当接面
16,17 突起
L 縦方向
【技術分野】
【0001】
本発明は保持器に関する。本発明は円筒ころ軸受用保持器に関して記載されるが、本発明は例えば球面ころ軸受又は心合わせころ軸受のような他の種類の軸受にも使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、2つ又はそれ以上の保持器部分から構成されかつ組立て中にまとめられる軸受が公知である。このような2部分又は数部分から成る保持器の種々の変形例が公知である。
【0003】
従来技術から公知の可能性は、保持器櫛と保持器蓋から成る一体の保持器を設けることである。その際保持器蓋は、保持器櫛に形成された鋲により鋲止めされる。この過程は、既に組立てを完了した軸受で行われる。この実施形態の欠点は、製造費が比較的高いことである。更に前述したように、この場合組立てられた軸受における保持器組立てが必要である。更にそれぞれの鋲結合部が裂き取られることがあり、それにより保持器の寿命が低下される。
【0004】
従来技術から公知の別の可能性は、保持器を削り込まれた窓輪郭を持つ一体の保持器として構成することである。この構成では、保持器の窓が外部からならいフライス又はエンドミルで形成される。それによりこの解決策では、フライスはすべての窓を個々に順次削らねばならない。更に窓の4つの隅に凹所を形成せねばならず、これらの凹所が保持器の側縁を事情によっては弱くする。従ってこれらの実施形態は時間のかかる加工を伴う。
【0005】
更に例えば球面ころ軸受のために一体の保持器を使用することも公知であり、この構成では2つの保持器部分が鋲で互いに結合される。そのためこれらの保持器部分を互いに対にまとめて、穴あけせねばならない。橋絡片を貫通して形成される鋲穴は、橋絡片の強度を低下させてはならない。このため橋絡片が比較的厚く形成され、それにより周囲の最大限の利用が最小限にされる。更にこのような保持器は製造に比較的費用がかかり、比較的低い負荷能力しか持たない。
【0006】
更に従来技術から分割された心合わせころ軸受が公知であり、保持器蓋がタッピンねじにより保持器櫛の橋絡片にねじ止めされる。この場合も高い製造費という問題があり、更にタッピンねじが使用中に引き裂かれるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の基礎になっている課題は、安価にかつ比較的速く製造できる軸受を利用可能にすることである。更に保持器の簡単な組立て、及び転動体の取付け中に確実又は簡単な取扱いに可能になるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、本発明によれば、請求項1に記載の保持器及び請求項11に記載の組立て方法によって達せられる。有利な実施形態及び展開が従属請求項の対象である。
【0009】
特に転がり軸受用の本発明による保持器は、第1の保持器部分及び第2の保持器部分を持っている。本発明によれば、第1の保持器部分が少なくとも1つの第1の係合素子を持ち、第2の保持器部分が少なくとも1つの第2の係合素子を持っている。これらの係合素子は、第2の保持器部分に対する第1の保持器部分の相対運動により互いに係合して、第1の保持器部分と第2の保持器部分との間に少なくとも確実結合が行われるようにする。
【0010】
保持器部分とは、組合わされて保持器全体を生じる部分を意味する。第1の保持器部分と第2の保持器部分との確実結合により、両方の保持器部分が、特に保持器の縦方向に、直接ではなく、即ち介在する別の運動過程なしに互いに分離されることのないようにすることができる。
【0011】
第1の保持器部分と第2の保持器部分との確実結合が、保持器の縦軸線の周りに1つの保持器部分を回すことによって行われるように、第1の係合素子及び第2の係合素子が形成されているのがよい。これは、一方の保持器部分に対して保持器の縦軸線の周りに回されることを意味する。この回転により、両方の係合素子の係合が行われ、それにより両方の保持器部分が保持器の縦方向の力の作用により互いに分離されるのを防止される。係合素子をこのように設けることにより、従来技術において上述した問題を伴う鋲又はねじのような別の結合素子が不要になる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、保持器が2つの保持器縁及びこれらの保持器縁の間に延びる多数の橋絡片を持ち、少なくとも1つの係合素子がこれらの橋絡片の1つの橋絡片部分に設けられている。これは、保持器部分の係合が少なくとも1つの橋絡片部分を介して行われることを意味する。すべての係合素子が橋絡片のそれぞれの橋絡片部分に設けられているのがよい。これは保持器部分が多数の第1の橋絡片部分を持ち、第2の保持器部分が多数の第2の橋絡片部分を持ち、第1及び第2の橋絡片部分を介して係合が行われることを意味する。
【0013】
すべての橋絡片部分がそれぞれ少なくとも1つの係合素子を持っているのがよい。これは、個々の橋絡片部分の間で多数の確実結合が行われ、こうして保持器全体の安定性が高められることを意味する。
【0014】
別の有利な実施形態では、係合素子が、橋絡片部分に設けられて互いにかみ合う溝及び突起である。溝と突起とのこの係合により保持器の縦方向における橋絡片部分の相対移動はもはや不可能である。
【0015】
1つの橋絡片部分のすべての溝が実質的に同じ輪郭を持っているのがよい。こうして適当な保持器部分の簡単な製造が、例えば旋削により可能である。別の利点は、第1の橋絡片部分が任意の第2の橋絡片部分と結合され、橋絡片部分を互いに取付けることができる複数の回転位置が可能なことである。溝は、円形断面だけでなく、多角形断面、楕円形断面、これらの断面の組合わせのような種々の幾何学的断面を持つことができる。
【0016】
別の好ましい実施形態では、溝が保持器の周方向に一定の断面を持っている。こうして一方の保持器部分に対して他方の保持器部分を特に有利なように回すことが可能である。しかし2〜3又はすべての溝が保持器の周方向に先細になるようにすることも可能である。それにより一方の保持器部分に対して他方の保持器部分を回すことによって、両方の保持器部分を確実結合することもできる。
【0017】
保持器が、真ちゅう、鋼、軽金属例えばアルミニウム、これらの組合わせ等を含む材料の群から選ばれる金属から製造されているのがよい。
【0018】
本発明は、更に上述した種類の保持器を持つ転がり軸受に向けられている。
【0019】
更に本発明は転がり軸受の組立て方法にも向けられ、1つの方法段階において第1の保持器部分が設けられ、別の方法段階において第2の保持器部分が第1の保持器部分に結合される。本発明によれば、軸受の縦軸線に関する回転運動によって、第2の保持器部分を第1の保持器部分に結合する。
【0020】
別の方法段階において保持器部分を互いに整列させるのがよい。この整列は、第2の保持器部分を第1の保持器部分に結合した後に行うのがよい。整列によって、個々の橋絡片がほぼ直線状に延びるようにすることができる。
【0021】
保持器部分の結合後多数の転動体を保持器へ入れるのがよい。
【0022】
それ以外の利点及び実施形態は添付図面からわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明による保持器1の第1実施例を示す。この保持器は第1の縁8及び第2の縁9を持っている。この実施例では、これらの縁はほぼ円形であり、縁8,9の間に、多数の橋絡片10が保持器の縦方向Lに延びている。縁8,9及び橋絡片10により、それぞれ転動体5用の保持器ポケット2が形成されている。第1の保持器部分3は、縁8及びこの縁8から保持器の縦方向Lに延びる橋絡片部分10aを持っている。第2の保持器部分4は、縁9及びこの縁9から保持器の縦方向Lに延びる橋絡片部分10bを持っている。それぞれの保持器部分10a及び10bは、保持器1を組立てるため互いに係合可能な溝6,7及び突起16,17を持っている。詳しく述べると、橋絡片部分10aの突起16は橋絡片部分10bの溝7に係合し、橋絡片部分10bの突起17は橋絡片部分10aの溝6に係合している。
【0024】
突起16はなるべく所定の方向例えば半径方向外方へ延び、突起17はこれに対して逆の方向即ち半径方向内方へ延びている。溝6,7も互いに逆の方向に延びている。
【0025】
図2〜5は本発明による保持器の製造方法を示す。図2には第1の保持器部分3及び第2の保持器部分4が認められ、これらは回転方向に互いにずれている。これは、両方の保持器部分3及び4の橋絡片部分10a及び10bがまだ互いに係合していないことを意味する。同時に第1の保持器部分3の溝6及び第2の保持器部分4の溝7が認められる。これらの溝6,7へ、それから他方の保持器部分の突起16及び17がはまる。それぞれの突起16,17及び対応する溝6,7も、それぞれの保持器部分3,4の周方向にほぼ同じ幅を持っていることがわかる。
【0026】
保持器櫛及び保持器蓋とも称することができるそれぞれの保持器部分3及び4又はその基本輪郭は、それぞれ旋削により製造することができる。互いに係合する図示した溝6,7も、旋削プロセスで製造することができる。それにより製造が全体として非常に簡単化される。
【0027】
図3は、保持器の製造における別の方法段階が示されている。この場合両方の保持器部分3,4が互いに引掛けられ、即ちそれぞれの突起16,17が溝6,7にはまっている。その際溝直径又はその幅は、両方の保持器部分3,4の間に僅かな間隙しか存在しないように、合わされている。
【0028】
図4に示す別の方法段階において、両方の保持器部分3,4が互いに整列される。これは、整列により保持器部分3,4の橋絡片部分10a,10bがほぼ角なしに互いに移行することを意味している。こうして挿入すべき転動体用の当接面12が形成される。これらの当接面12は円筒部分状の輪郭を持っている。更に当接面12は、導入される転動体の少なくとも一時的な停止を行う停止突起11を持っている。
【0029】
図4に示す実施例では、橋絡片部分10a及び10bはほぼ同じ長さである。即ち係合が行われる範囲は、ほぼ対象に保持器の縦方向中央にある。これは有利であるが、そうでなくてもよい。
【0030】
図5に示す方法段階では、転動体5が導入され、即ちこの場合内側から押込まれる。一般に保持器部分の整列後に転動体又はころ5は、外側から又は内側から、なるべく穴あけされるか又は削り込まれる保持器ポケット2へスナップばめされる。転動体5の取付け後に両方の保持器部分は、もはや互いに分離不可能である。なぜならば、転動体5が両方の保持器部分3,4の相対的なねじれを防止するからである。
【0031】
橋絡片の縦方向における両方の保持器部分3,4の分離は、上述したようにそれぞれの溝6,7及び突起16,17によって防止される。図示した解決策では、鋲止め、ねじ止め又は窓ポケットの費用がかかるフライス削りをやめることができる。
【0032】
図6aは本発明による保持器1の正面図を示す。保持器は多数の橋絡片10及び転動体が設けられる保持器ポケット2を持っていることがわかる。図6bは図6aの保持器の側面図を示している。この実施例は、上述したように、ほぼ対称に構成される保持器であり、両方の縁8及び9bの間で橋絡片部分10a及び10bが、保持器1の縦方向Lにほぼ同じ長さで延びている。
【0033】
図6cは図6bの部分Bの詳細図を示している。溝又は突起がほぼ長方形の輪郭を持っていることがわかる。
【0034】
図7a〜7cは本発明による保持器の別の実施例を示す。図6a〜6cに示す実施例と図7a〜7cに示す実施例との重要な相違は、溝6,7及び突起16,17の形状である。図7a〜7cに示す実施例では、溝は長方形でなく、少しV字状に形成されている。しかしそれぞれの溝の側方部分をもっと傾斜させることも可能である。例えば円弧状の輪郭を持つ溝のような異なる種類の溝を使用することも可能である。
【0035】
図8は、図7a〜7cに示す保持器の斜視図を示す。この場合突起16,17は、それらがそれぞれV字状溝6,7へはまることができるように形成されている。本発明の範囲を逸脱することなく、溝又は係合素子の他の構成も可能である。
【0036】
出願書類に開示されたすべての特徴は、それが個々に又は組合わせで従来技術に対して新規である限り、本発明にとって重要であるとして、権利を要求される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】 本発明による保持器の斜視図を示す。
【図2】 組立て方法を説明するための保持器の部分図を示す。
【図3】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図4】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図5】 組立て方法を説明するための別の部分図を示す。
【図6a】 本発明による保持器の概略正面図を示す。
【図6b】 図6aのA−A線に沿う保持器の断面図を示す。
【図6c】 図6bの一部の詳細図を示す。
【図7a】 本発明による保持器の概略正面図を示す。
【図7b】 図7aのA−A線に沿う保持器の断面図を示す。
【図7c】 図7bの一部の詳細図を示す。
【図8】 本発明による保持器の別の実施例の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 保持器
2 保持器ポケット
3 第1の保持器部分
4 第2の保持器部分
5 転動体
6,7 溝
8 第1の縁
9 第2の縁
10 橋絡片
10a,10b 橋絡片部分
11 停止突起
12 当接面
16,17 突起
L 縦方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保持器部分(3)及び第2の保持器部分(4)を持つ特に転がり軸受用の保持器(1)において、第1の保持器部分(3)が少なくとも1つの第1の係合素子(6,16)を持ち、第2の保持器部分(4)が少なくとも1つの第2の係合素子(7,17)を持ち、これらの係合素子(6,16,7,17)が、第2の保持器部分(4)に対する第1の保持器部分(3)の相対運動により互いに係合して、第1の保持器部分(3)と第2の保持器部分(4)との間に少なくとも確実結合が行われるようにすることを特徴とする、保持器。
【請求項2】
第1の保持器部分(3)と第2の保持器部分(4)との確実結合が、保持器(1)の縦軸線(L)の周りに1つの保持器部分(3,4)を回すことによって行われるように、第1の係合素子(6,16)及び第2の係合素子(7,17)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保持器。
【請求項3】
保持器が2つの保持器縁(8,9)及びこれらの保持器縁(8,9)の間に延びる多数の橋絡片(10)を持ち、少なくとも1つの係合素子(6,16,7,17)がこれらの橋絡片(10)の1つの橋絡片部分(10a)に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項4】
すべての係合素子(6,16,7,17)が橋絡片(10)の複数の橋絡片部分(10a,10b)に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の保持器。
【請求項5】
すべての橋絡片部分(10a,10b)がそれぞれ少なくとも1つの係合素子(6,16,7,17)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項6】
係合素子(6,16,7,17)が、橋絡片部分(10a,10b)に設けられて互いにかみ合う溝(6,7)及び突起(16,17)であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項7】
1つの橋絡片部分(10a,10b)のすべての溝(6,7)が実質的に同じ輪郭を持っていることを特徴とする、請求項6に記載の保持器。
【請求項8】
溝(6,7)が、保持器の周方向に一定の断面を持っていることを特徴とする、請求項6〜7の1つに記載の保持器。
【請求項9】
保持器(1)が、真ちゅう、鋼、軽金属特にアルミニウム、これらの組合わせ等を含む材料の群から選ばれる金属から製造されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項10】
先行する請求項の1つに記載の保持器を持つ転がり軸受。
【請求項11】
第1の保持器部分(3)を設けかつ第2の保持器部分(4)を第1の保持器部分(3)に結合する段階を含む転がり軸受の組立て方法において、軸受の縦軸線(L)に関する回転運動によって、第2の保持器部分(4)を第1の保持器部分(3)に結合することを特徴とする、方法。
【請求項12】
別の方法段階において保持器部分(3,4)を互いに整列させることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保持器部分の結合後多数の転動体(5)を保持器へ入れることを特徴とする、請求項11〜12の1つに記載の方法。
【請求項1】
第1の保持器部分(3)及び第2の保持器部分(4)を持つ特に転がり軸受用の保持器(1)において、第1の保持器部分(3)が少なくとも1つの第1の係合素子(6,16)を持ち、第2の保持器部分(4)が少なくとも1つの第2の係合素子(7,17)を持ち、これらの係合素子(6,16,7,17)が、第2の保持器部分(4)に対する第1の保持器部分(3)の相対運動により互いに係合して、第1の保持器部分(3)と第2の保持器部分(4)との間に少なくとも確実結合が行われるようにすることを特徴とする、保持器。
【請求項2】
第1の保持器部分(3)と第2の保持器部分(4)との確実結合が、保持器(1)の縦軸線(L)の周りに1つの保持器部分(3,4)を回すことによって行われるように、第1の係合素子(6,16)及び第2の係合素子(7,17)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保持器。
【請求項3】
保持器が2つの保持器縁(8,9)及びこれらの保持器縁(8,9)の間に延びる多数の橋絡片(10)を持ち、少なくとも1つの係合素子(6,16,7,17)がこれらの橋絡片(10)の1つの橋絡片部分(10a)に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項4】
すべての係合素子(6,16,7,17)が橋絡片(10)の複数の橋絡片部分(10a,10b)に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の保持器。
【請求項5】
すべての橋絡片部分(10a,10b)がそれぞれ少なくとも1つの係合素子(6,16,7,17)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項6】
係合素子(6,16,7,17)が、橋絡片部分(10a,10b)に設けられて互いにかみ合う溝(6,7)及び突起(16,17)であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項7】
1つの橋絡片部分(10a,10b)のすべての溝(6,7)が実質的に同じ輪郭を持っていることを特徴とする、請求項6に記載の保持器。
【請求項8】
溝(6,7)が、保持器の周方向に一定の断面を持っていることを特徴とする、請求項6〜7の1つに記載の保持器。
【請求項9】
保持器(1)が、真ちゅう、鋼、軽金属特にアルミニウム、これらの組合わせ等を含む材料の群から選ばれる金属から製造されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の保持器。
【請求項10】
先行する請求項の1つに記載の保持器を持つ転がり軸受。
【請求項11】
第1の保持器部分(3)を設けかつ第2の保持器部分(4)を第1の保持器部分(3)に結合する段階を含む転がり軸受の組立て方法において、軸受の縦軸線(L)に関する回転運動によって、第2の保持器部分(4)を第1の保持器部分(3)に結合することを特徴とする、方法。
【請求項12】
別の方法段階において保持器部分(3,4)を互いに整列させることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保持器部分の結合後多数の転動体(5)を保持器へ入れることを特徴とする、請求項11〜12の1つに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【公表番号】特表2009−531638(P2009−531638A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503399(P2009−503399)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000460
【国際公開番号】WO2007/107146
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000460
【国際公開番号】WO2007/107146
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】
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