説明

保持治具

【課題】多数の小型部品を高い均一性で保持できる保持治具を提供すること。
【解決手段】厚さ方向に貫通する多数の支持孔11が形成された支持孔集合領域12を有する基体5と、前記支持孔11それぞれの内部に前記支持孔集合領域12の表面13及び13と面一になるように配置され、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する管状弾性部材7とを備えてなることを特徴とする保持治具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持治具に関し、さらに詳しくは、多数の小型部品を高い均一性で保持できる保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、電話機、ゲーム機、自動車電装機器等の電子機器に用いられる集積回路等には、例えば、積層セラミックチップコンデンサ(単に、チップコンデンサと称することがある。)等の小型部品が搭載されている。このような小型部品を製造する際等には、通常、小型部品を製造可能な小型部品用部材等を保持する保持孔が形成された保持治具が用いられる。このような保持治具として、例えば、図6に示されるように、金属等から成り、枠部32aと枠部32aの内側に一体形成された薄肉部(図6に図示しない。)を有する矩形状の剛性板32と、前記剛性版32の薄肉部(図6に図示しない。)の上下面及び貫通孔内側を覆うようにして設けられたゴム等から成り、保持孔33aを有する弾性材33とから構成された部品保持具31が記載されている(例えば、特許文献1の0002欄〜0004欄、図5及び図6参照。)。
【0003】
ところで、このような部品保持具31の保持孔33aに小型部品用部材を圧入して保持すると、弾性材33に圧力が加わって弾性材33が変形することがある。このようにして弾性材33が変形すると、多数の小型部品用部材をほぼ均一な保持状態で保持することができず、この部品保持具1を用いて小型部品用部材から製造された小型部品の寸法均一性及び形状均一性が低下してしまう。また、弾性材33が変形すると、小型部品用部材を保持孔33a内で移動させるとき及び小型部品を部品保持具31から抜出するときの圧力が異なって作業性に劣ることがある。
【0004】
小型部品に導電ペーストをコーティングして外部電極を形成する場合に、「均一なコーティングを行うことを可能とする端部コーティング用電子パーツ保持具」が特許文献2に記載されている。具体的には、特許文献2に記載された端部コーティング用電子パーツ保持具は、「プレートの両面側に開口する並列された多数の通孔が形成され、該通孔は弾性壁で覆われ、小形電子パーツを前記通孔内に前記弾性壁の弾力で保持する端部コーティング用電子パーツ保持具において、前記弾性壁を構成する弾性部材の通孔の間に、前記通孔とは別に同弾性部材の一部が存在せず、且つ前記小形電子パーツを保持しない弾性変形可能な空隙部分が形成されたことを特徴とする」(請求項1等)。
【0005】
この特許文献2には、「プレート2の周辺部分では、周囲の枠体により、弾性壁5の圧力が逃げ場を失い、圧力が中央部に集中する。この結果、前記プレート2の中央部に近い通孔6に挿入された電子パーツ7とそれを保持する弾性壁5は、周辺部より強い圧力を受ける。このため、一様にレベリングした場合に、中央部での電子パーツ7の端部の突出寸法が、周辺部よりも大きくなる」と記載されているように([考案が解決しようとする課題]欄)、特許文献2の考案はプレートの周辺部分と中央部との不均一性を解消することを目的としている。
【0006】
ところが、保持治具を用いて小型部品用部材から小型部品を形成する場合には、プレートの周辺部分と中央部との保持状態だけでなく、例えば、中央部においても、また周辺部分においても、小型部品用部材の保持状態が不均一になることがある。特に、近年の小型部品はより高精密で高い均一性が求められているから、この要求に応えるためには、保持治具に保持した多数の小型部品用部材の保持状態を保持治具全体にわたってより一層均一にすることが重要になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−022841号公報
【特許文献2】実公平08−010181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、多数の小型部品を高い均一性で保持できる保持治具を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、厚さ方向に貫通する多数の支持孔が形成された支持孔集合領域を有する基体と、前記支持孔それぞれの内部に前記支持孔集合領域の表面と面一になるように配置され、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する管状弾性部材とを備えてなることを特徴とする保持治具であり、
請求項2は、前記管状弾性部材は、その外周面が前記支持孔の内周面全体に密着していることを特徴とする請求項1に記載の保持治具であり、
請求項3は、前記管状弾性部材は、前記支持孔の軸線と共通する軸線を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具であり、
請求項4は、前記支持孔は、少なくとも4000個であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る保持治具は、多数の支持孔が形成された支持孔集合領域を有する前記基体と前記支持孔それぞれの内部に前記支持孔集合領域の表面と面一になるように配置された前記管状弾性部材とを備えてなるから、管状弾性部材によって多数の小型部品それぞれを独立に保持でき、ある管状弾性部材に保持された小型部品の保持状態が他の小型部品を保持した管状弾性部材の変形等に影響を与えることはない。したがって、この発明によれば、多数の小型部品を高い均一性で保持できる保持治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を示す概略上面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線で切断した保持治具における断面の一部を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る保持治具を構成する基体の一実施例である基体を示す概略上面図である。
【図4】図4は、この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具を示す概略上面図である。
【図5】図5は、この発明に係る保持治具の製造方法の一例を説明する概略面図である。
【図6】図6は、従来の部品保持具の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る保持治具は、厚さ方向に貫通する多数の支持孔が形成された支持孔集合領域を有する基体と、前記支持孔それぞれの内部に前記支持孔集合領域の表面と面一になるように配置され、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する管状弾性部材とを備えてなることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る保持治具に保持される小型部品は、小型部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、チップコンデンサ、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
【0014】
このような小型部品は、例えば、その軸線長さが1.0〜3.2mmで軸線に垂直な平面における直径又は軸線に垂直な断面形状に外接する仮想外接円の直径が0.7〜2.3mmの寸法を有している。この発明に係る保持治具は後述するように小型部品を独立に保持できるから、この発明においては小型部品の寸法誤差が保持状態の均一性に大きく影響する前記寸法よりもさらに小型化された小型部品を用いることもできる。
【0015】
この発明に係る保持治具は、前記小型部品の保持用として好適であり、例えば、少なくとも二箇所に電極形成用の導電性ペーストを塗布する必要のある小型部品の保持用としてさらに好適である。
【0016】
この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1及び図2に示されるように、厚さ方向に貫通する多数の支持孔11が形成された支持孔集合領域12を有する基体5と、前記支持孔11それぞれの内部に前記支持孔集合領域12の表面13と面一になるように配置され、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する管状弾性部材7とを備えてなる。
【0017】
前記保持治具1は、図2に明確に示されるように、前記基体5における支持孔集合領域12の表面13、好ましくは支持孔集合領域12の両表面13及び13と管状弾性部材7とが実質的に面一となっている。この発明において、「面一」とは、高精度に面一になっているのが特に好ましいが、この発明において実質的に面一であればよく、例えば、この発明の目的を達成できる範囲で、保持する小型部品の軸線長さ等に応じて管状弾性部材7が前記表面13よりもわずかに突出していても凹陥していてもよい。具体的には、前記表面13に対する管状弾性部材7の突出量又は凹陥量は100μm以下であればよい。
【0018】
このように支持孔集合領域12の表面13と管状弾性部材7とが面一になっていると、図1及び図2に示されるように、基体5における支持孔集合領域12の両表面13及び13すなわち支持孔集合領域12内の支持孔11が形成されていない両表面13及び13、さらにいうと支持孔集合領域12内の支持孔11以外の部分が、保持治具1の表面まで露出して、前記管状弾性部材7と共に保持治具1の両表面を構成している。
【0019】
前記したように、支持孔集合領域12の表面13と管状弾性部材7とが面一になっていると、例えば、特許文献2の図4に記載された保持治具に対して、ゴムのたわみが小さいことから小型部品を挿入し易いという効果を奏する。
【0020】
前記支持孔集合領域12は、多数の支持孔11が形成される領域であり、形成された多数の支持孔11が集合してなる領域である。この支持孔集合領域12は、図3に示されるように、基体5に穿孔された最外列に配列された複数の支持孔11で囲繞される領域であり、図3に示されるように基体5全体であっても基体5の一部の領域であってもよい。
【0021】
前記基体5は、図2に示されるように、保持治具1の強度を維持してその平坦性を確保する補強部材として機能する。この基体5は、図2及び図3に示されるように、多数の支持孔11が穿設された矩形の支持孔集合領域12を有する平坦な板状をなしている。この基体5は保持治具1のベースとなるので均一な厚さを有しているのが好ましく、例えば、その厚さは8.9〜10.0mmに設定される。
【0022】
基体5は、支持孔11が多数、例えば、4000個以上が形成される(図3において、支持孔11の一部を図示していない。)。この発明においては後述するように多孔化できる。例えば、保持治具1において、多孔化する場合には、支持孔11は、少なくとも6000個、好ましくは少なくとも7000個を基体5に形成できる。このように基体5に多数の支持孔11が形成されると、保持治具1を用いた小型部品の製造方法における生産性が著しく向上し、均一性の高い大多数の小型部品を一挙に製造できる。
【0023】
前記支持孔11は、図3に示されるように、所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、支持孔11は、この例において、図3に図示した基体5の短辺方向である第1配列方向に沿って、奇数行に配列された第1支持孔11Aと、偶数行に配列された第2支持孔11Bとからなる。さらに具体的には、支持孔11は、前記第1配列方向及びこの第1配列方向に交差する第2配列方向、この例において図3に図示した基体5の長辺方向に沿って配列された第1支持孔11Aと、前記第1配列方向に沿って隣接する2つの第1支持孔11A、並びに、前記第2配列方向の同じ側に前記2つの支持孔に隣接する2つの第1支持孔11Aで囲繞される領域に、好ましくはその中心に配列された第2支持孔11Bとからなる。そして、前記第1配列方向の最外列に前記第1支持孔11Aが配列され、前記第2配列方向の最外列に前記第2支持孔11Bが配列されている。このような所謂「千鳥状」の配列において、対角に位置する第1保持孔11A及びこれらの間に配列された第2支持孔11Bとはそれらの軸線が同一直線上にあって、これらの直線と第1配列方向及び第2配列方向それぞれとの角度は約45°になっている。このように多数の支持孔11が所謂「千鳥状」に配列されていると、前記のような所謂「千鳥状」の配列は、同じ領域であれば、例えば図4に示す碁盤目状の配列等に対してより多数の、すなわち、高密度で支持孔11を形成することができるので、保持治具1の生産性を大きく向上させることができる。したがって、より多数の小型部品を保持するには、支持孔11は所謂「千鳥状」に配列されているのが好ましい。
【0024】
前記支持孔11は、第1配列方向及び第2配列方向ともに一定の間隔をおいて配列されている。第1支持孔11A及び第2支持孔11Bそれぞれにおいて互いに隣接する支持孔11同士の軸線距離である間隔それぞれは、支持孔11の開口径等を考慮のうえ調整され、例えば、1.8〜5.5mmの範囲内に設定される。
【0025】
基体5の表面に開口する支持孔11の開口部の形状、及び、支持孔11を基体5に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部の形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この例において、支持孔11は、開口部の形状及び前記断面形状が同一の円形であり、略同一の直径を有している。支持孔11の開口径は、前記間隔等を考慮のうえ調整され、例えば、1.3〜2.6mmの範囲内に設定される。
【0026】
基体5は、小型部品の生産性、支持孔11の形成数、小型部品の寸法及び保持治具1の強度等を考慮して、その寸法が調整される。
【0027】
前記管状弾性部材7は、図1及び図2に示されるように、支持孔11それぞれの内部に配置され、自身に形成された貫通孔15に挿入された小型部品を弾発的に保持する。したがって、多数の管状弾性部材7すなわち保持孔15は支持孔11と同様に所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、保持孔15は、前記第1配列方向に沿って、奇数行に配列された第1保持孔15Aと、偶数行に配列された第2保持孔15Bとからなる。そして、前記第1配列方向の最外列に前記第1保持15Aが配列され、前記第2配列方向の最外列に前記第2保持孔15Bが配列されている。
【0028】
前記管状弾性部材7それぞれは、支持孔11の直径と略同一又はわずかに大きな外径と、小型部品における前記直径よりもわずかに小さな内径と、前記基体5の厚さと略同一の軸線長さとを有する、軸線方向に貫通する貫通孔15が形成された管状体に成形されている。前記貫通孔15の開口径は、通常、小型部品の前記直径に対して70〜90%の範囲内に設定される。この管状弾性部材7が支持孔11内に配置されると、図2に明確に示されるように、管状弾性部材7の端面16、好ましくは両端面16及び16が前記支持孔集合領域12の表面13と面一になる。このように、保持治具1は支持孔11の内部特に内周面のみ弾性部材が設けられている。したがって、この管状弾性部材7は、図1及び図2に示されるように、小型部品を保持する貫通孔15すなわち保持孔15を有する、壁厚の略均一な管状体を成している。保持治具1において、管状弾性部材7の形状は略円筒体になっているが、支持孔11の形状に応じて、例えば、楕円筒体、多角形筒体等になっていてもよい。
【0029】
このような管状弾性部材7は、支持孔11の内部に1つずつ独立に配置され、保持治具1において単独で存在し、他の管状弾性部材7と接していない。このように管状弾性部材7が独立に支持孔11の内部に配置されていると、隣接する他の管状弾性部材7に影響されることなく、自身の貫通孔15で小型部品を独立に保持できるから、たとえ管状弾性部材7同士の間隔が狭くても、この発明の目的をよく達成できる。
【0030】
前記管状弾性部材7は、支持孔11の内部に配置されていればよく、図2に示されるように小型部品の保持状態をより均一にできる点で支持孔11の軸線Cと共通する軸線Cを有しているのが好ましく、小型部品を挿入したときに管状弾性部材7の変形が偏在することなく小型部品の所定の保持状態を実現できるうえ、管状弾性部材7の支持孔11からの脱落を高度に防止できる点でその外周面が支持孔11の内周面全体に密着又は接着しているのが好ましい。前記所定の保持状態としては、例えば、保持孔15と小型部品の軸線とが一致している状態等が挙げられる。
【0031】
管状弾性部材7は、小型部品を挿入及び/又は抜き取る際に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)は、200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましく、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は、5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は、20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。前記JIS K6249に規定の切断時伸び及び引張強さは、23℃、湿度50%の環境下で、3号ダンベル形状の試験片を作製して、切断時伸びはつかみ具間隔を標線距離で20mmに設定して、実施する。
【0032】
この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具2を、図面を参照して、説明する。この保持治具2は、図4に示されるように、支持孔11及び保持孔15の配列が異なること以外は、前記保持治具1と基本的に同様である。すなわち、保持治具2における支持孔11及び保持孔15は、図4に示されるように、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に沿って縦横に整列された碁盤目状に配列されている。
【0033】
保持治具1及び2は、例えば、小型部品の軸線が保持孔15の軸線Cと略平行となる状態、好ましくは一致する状態に、小型部品を保持孔15に挿入して、その弾性力で弾発的に保持する。保持治具1及び2に小型部品を保持させるには、例えば、保持孔15と同数の貫通孔が保持孔15と同じ間隔で同様に整列された整列板を準備し、貫通孔と保持孔15とが一致するように、整列板を保持治具1及び2の上に重ね合わせる。次いで、整列板の貫通孔それぞれに小型部品を挿入し、小型部品を平坦な板状部材で均一に保持治具側に押圧する。そうすると、小型部品は保持孔15に前記状態となるように挿入され、弾発的に保持される。このような方法の例として、例えば特許第4337498号明細書には、従来の各種方法(例えば0004欄〜0009欄及び図9〜14参照。)と、これらの各種方法を改良した方法(特許請求の範囲及び図1及び図2等参照。)とが記載されている。このように、保持治具1及び2に小型部品を保持させると、管状弾性部材7は他の管状弾性部材7と独立しているから、例えば小型部品の寸法精度が低くても他の管状弾性部材7の変形等に影響を与えることなく小型部品を保持することができ、小型部品の管状弾性部材7からの突出量をほぼ均一となるように多数の小型部品を保持することができる。
【0034】
この発明に係る保持治具の製造方法を説明する。この発明に係る保持治具は種々の方法で製造できる。例えば、図5に示されるように成形金型20を用いて製造できる。この成形金型20は、第1金型21と第2金型22とを備え、これらを重ね合せたときに基体5を収納可能な収納凹部25が形成されるようになっている。前記第1金型21には、収納凹部25に収納された基体5の各支持孔11を貫通するように、支持孔11と同様の配列で同数の成形ピン23が立設されている。この成形ピン23は、例えば図5に示されるように、成形金型20に基体5を収納したときに、基体5の支持孔11の軸線と一致する軸線を有するように、整列されている。成形ピン23は収納凹部25の深さに一致する軸線長さと、保持する小型部品の保持孔15に挿入される部分の前記直径等よりも小さな直径とを有している。
【0035】
まず、基体5を作製する。基体5は、自身の厚さと同じ又はそれよりも厚い金属又は樹脂等製の板体から所望寸法の板状体を切り出す。この板状体の支持孔集合領域12に多数の支持孔11を研削、切削、やすり仕上げ等によって穿設して、基体5を作製する。穿孔された支持孔11の内周面には、支持孔11と管状弾性部材7との密着性を高めることを目的として、例えば、支持孔11の内周面に、プライマー、接着剤等を塗布することができる。
【0036】
次いで、図5に示されるように、成形金型20の収納凹部25に、成形ピン23それぞれが支持孔11それぞれを貫通するように、基体5を収納する。収納凹部25に基体5を収納すると、管状弾性部材7が形成される部分に成形金型20及び基体5で画成されたキャビティ24が形成される。次いで、前記第1金型21に形成された注入口から前記キャビティ24に管状弾性部材7を形成可能な液状の弾性材料を注入して管状弾性部材7を成形する。弾性材料の成形方法は特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて任意に調整される。このようにして、この発明に係る保持治具を製造できる。
【0037】
なお、この発明に係る保持治具は、前記方法の他に、例えば、成形ピン23が立設されていない第1金型21と第2金型22とを用いて前記方法と基本的に同様にして支持孔11内に弾性体を成形し、この弾性体に穴あけ加工を施すことによって、製造することもでき、また、前記基体5と前記管状弾性部材7とをそれぞれ別々に作製し、基体5に穿孔された支持孔11に密着又は接着して製造することもできる。管状弾性部材7は例えば押出成形等の各種成形方法で管状体に成形した後に所定の軸線長さに切断して作製できる。
【0038】
前記基体5と前記管状弾性部材7とを備えてなる保持治具1及び2は、管状弾性部材7によって多数の小型部品それぞれを独立に保持でき、ある管状弾性部材7に保持された小型部品の保持状態が他の小型部品を保持した管状弾性部材7の変形等に影響を与えることはない。したがって、この保持治具1及び2は、多数の小型部品をほぼ同様の保持状態、例えば、小型部品の保持孔15からの突出量がほぼ一定の状態すなわち高い均一性で保持することができる。このように保持治具1及び2に保持された多数の小型部品は高い均一性で保持されるから、小型部品を製造する際に保持治具1及び2を用いると、寸法均一性及び形状均一性等の均一性の高い多数の小型部品を一挙に製造できる。したがって、この発明によれば、均一性の高い多数の小型部品を一挙に製造できる保持治具を提供するという目的を達成できる。
【0039】
また、この保持治具1及び2は、多数の小型部品を、突出量がほぼ一定の状態に加え小型部品の軸線と保持孔15の軸線とが一致する保持姿勢で保持することもできる。したがって、この発明によれば、均一性の高い多数の小型部品を一挙に製造できる保持治具を提供するという目的を達成できる。
【0040】
さらに、この保持治具1及び2は、図1及び図2に示されるように、保持孔15同士の間隔が狭くなるような保持孔15の多孔化、すなわち、従来の保持治具よりも大幅に保持孔15を多く形成した場合にも、これら多数の小型部品それぞれを独立に保持する。したがって、保持治具1及び2は、極めて多数の小型部品をほぼ同様の保持状態に高い均一性で保持することができる。故に、この発明によれば、均一性の高い極めて多数の小型部品を高い生産性で一挙に製造できる保持治具を提供するという目的を達成できる。
【0041】
この発明に係る保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、保持治具1及び2において、支持孔11はその内周面が平坦に形成され、管状弾性部材7はその外周面が平坦に形成されているが、この発明において、支持孔の内周面及び管状弾性部材の外周面は、互いに密着するように形成されているのが好ましく、管状弾性部材が支持孔から脱落しないように、例えば、係合突起及び係合凹部が形成されていてもよく、支持孔の開口部にテーパ部を有し、管状弾性部材はこのテーパ部に密着する膨出部を有していてもよい。
【0043】
保持治具1及び2は、基体5における前記支持孔集合領域12の両表面13及び13が前記管状弾性部材7と共に保持治具1及び2の両表面を構成しているが、この発明においては、基体における前記支持孔集合領域の両表面、さらには管状弾性部材の両端部にフッ素樹脂の各種樹脂で形成された保護層を有していてもよい。
【0044】
保持治具1及び2の基体5は平坦な板状に形成されているが、この発明において、所望により、基体はその板状体の端縁の少なくとも1つに厚さ方向に突出する堰堤状の鍔部を有していてもよい。
【0045】
前記保持治具1は、図1〜図3に示されるように、支持孔及び保持孔が所謂「千鳥状」に配列され、前記保持治具2は、図4に示されるように、支持孔及び保持孔が碁盤目状に配列されているが、この発明において、支持孔及び保持孔の配列は、特に限定されず、例えば、前記碁盤目状の配列を45度回転した傾斜スクエア配列、正六角形が最密に配置されるハニカム状の配列、同心円状の配列等が挙げられる。
【0046】
前記保持治具1において、図1に示されるように、第1保持孔15Aは前記第1配列方向の最外列になるように配列され、第2保持孔15Bは前記第2配列方向の最外列になるように配列されているが、この発明において、第1保持孔又は第2保持孔が前記第1配列方向及び第2配列方向の少なくとも1つの最外列又はすべての最外列になるように配列されてもよい。具体的には、第1保持孔が前記第2配列方向の最外列になるように配列され、第2保持孔が前記第1配列方向の最外列になるように配列されてもよく、また、特許文献2の図6に示される非対称型千鳥状であってもよく、特許文献2の図7に示される最外列対称型千鳥状であってもよく、特許文献2の図8に示される逆抜千鳥状であってもよい。この発明においては支持孔の配列も保持孔と同様である。
【0047】
前記保持治具1の所謂「千鳥状」の配列において、対角に位置する第1保持孔11A及びこれらの間に配列された第2支持孔11Bとの軸線は同一直線上にあって、これらの直線と第1配列方向及び第2配列方向それぞれとの角度が約45°になっているが、この発明において、前記角度は同じでも互いに異なっていてもよく、任意の角度、例えば、15〜75°に設定することができる。例えば、前記角度を60°に設定すると、支持孔及び保持孔を最密状態の千鳥状に配列することができる。
【0048】
前記保持治具1及び2は、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に沿う支持孔11の間隔が同一間隔に設定され、かつ、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に沿う保持孔15の間隔が同一間隔に設定されているが、この発明において、第1配列方向及び第2配列方向に沿う支持孔の間隔は異なる間隔に設定されていてもよく、また、第1配列方向及び第2配列方向に沿う保持孔の間隔は異なる間隔に設定されていてもよい。
【0049】
保持治具1及び2において、図1〜図4に示されるように、支持孔11は、保持孔15の開口部と同様の開口部形状に穿孔されているが、この発明においては、支持孔は、保持孔の開口部と異なる開口部形状に穿孔されてもよい。支持孔11は円形の開口部を有する必要はなく、開口部の形状として前記した種々の形状の中から任意に選択することができる。
【0050】
この発明に係る保持治具の製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0051】
前記成形金型20において、成形ピン23は、第1金型21に立設されているが、この発明において、成形ピンは、第2金型に立設されていてもよく、第1金型及び第2金型に立設されていてもよい。成形ピンが第1金型及び第2金型の両方に立設されている場合には、保持治具を成形金型から脱型するときに、補強部材の変形をより一層効果的に防止することができる。第1金型及び第2金型に立設される成形ピンの数は任意に設定されることができる。第1金型及び第2金型の両方に成形ピンが立設されている場合には、例えば、第1金型に立設された成形ピン数と第2金型に立設された成形ピン数との比が10:90〜90:10の範囲内で設定されることができ、50:50に設定されることもできる。また、成形ピンが第1金型及び第2金型の両方に立設されている場合には、第1配列方向及び第2配列方向に沿って隣接する成形ピンは第1金型と第2金型とに任意又は交互に立設されていてもよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
厚さ5.9mmのアルミニウム板を縦(短辺方向とも称する。)180mm×横(長辺方向とも称する。)270mmに切り出し、その縦160mm×横257mmの長方形の支持孔集合領域12に、開口径2.0mmの円形の支持孔11を、第1支持孔11A及び第2支持孔11B共に横方向を2.2mm、縦方向に3.9mmの間隔となるように、第1支持孔11Aを縦39行及び横110列に配列し、第2支持孔11Bを縦40行及び横109列に配列した図3に示される所謂「千鳥状」の配列となるように、8650個穿孔した。このようにして、図3に示される基体5を作製した。穿孔した各支持孔11の内周面にプライマーを塗布した後に、前記成形金型20の収納凹部25に、直径0.71mmの成形ピン23が支持孔11を貫通するように、基体5を収納した。成形金型20及び基体5で形成されたキャビティ24にシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を注入して、120℃で10分間加熱し、基体5とシリコーンゴムとを一体成形した。次いで、成形金型20から一体成形体を脱型して、支持孔11と管状弾性部材7とが軸線Cを共有する実施例1の保持治具1を製造した。
【0053】
この管状弾性部材7の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度として、前記管状弾性部材7を形成する前記シリコーンゴムを同様に成形してJIS K6249及びJIS K6253に記載のゴム試験片をそれぞれ作製し、前記測定方法に準拠して、ゴム試験片の切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度をそれぞれ測定した。その結果、切断時伸び、引張強さ及びJIS A硬度はいずれも前記範囲内であった。
【0054】
(実施例2)
支持孔11の配列を、図4に示されるように、縦方向及び横方向いずれも2.3mmの間隔で縦110行及び横67列の碁盤目状に合計7370個穿孔したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして実施例2の保持治具を製造した。
【0055】
(比較例1)
厚さ8.9mmのアルミニウム板を縦180mm×横270mmに切り出し、その縦160mm×横257mmの長方形の領域を、両表面から深さ1.5mmまでの部分を切削して、周囲に枠部32aを有する厚さが5.9mmの薄肉部(図6に図示しない。)を形成した。この薄肉部に、開口径2.0mmの円形の支持孔(図6に図示しない。)を、縦方向及び横方向いずれも2.3mmの間隔となるように、碁盤目状に縦110行及び横67列に、合計7370個、穿孔した。このようにして剛性板32を作製した。成形金型20の収納凹部25に直径0.71mmの成形ピン23が支持孔を貫通するように剛性板32を収納した。成形金型20及び剛性板32で形成されたキャビティにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を注入して、120℃で10分間加熱し、剛性板32とシリコーンゴムとを一体成形した。次いで、成形金型20から一体成形体を脱型して、保持孔15と支持孔とが軸線を共有する従来の部品保持具31を製造した。
【0056】
(保持状態の評価)
実施例1及び2の保持治具並びに比較例1の部品保持具31それぞれに、軸線長さ1.6mmで前記直径が0.8mmの直方体状の小型部品を軸線方向に挿入保持させて、小型部品の保持状態を評価した。小型部品は、各保持治具の支持孔集合領域12又は薄肉部における中央部及び隅部に形成された複数の保持孔15に、挿入した。保持させた複数の小型部品の保持孔15からの突出量を目視にて確認したところ、実施例1及び2の保持治具はいずれも比較例1の部品保持具31に比べて小型部品の突出量がほぼ一定であり、その均一性が高かった。
【符号の説明】
【0057】
1、2 保持治具
5 基体
7 管状弾性部材
11 支持孔
12 支持孔集合領域
13 表面
15 貫通孔(保持孔)
16 端面
20 成形金型
21 第1金型
22 第2金型
23 成形ピン
24 キャビティ
25 収納凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する多数の支持孔が形成された支持孔集合領域を有する基体と、
前記支持孔それぞれの内部に前記支持孔集合領域の表面と面一になるように配置され、自身に挿入された小型部品を弾発的に保持する管状弾性部材とを備えてなることを特徴とする保持治具。
【請求項2】
前記管状弾性部材は、その外周面が前記支持孔の内周面全体に密着していることを特徴とする請求項1に記載の保持治具。
【請求項3】
前記管状弾性部材は、前記支持孔の軸線と共通する軸線を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具。
【請求項4】
前記支持孔は、少なくとも4000個であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate