説明

保護カバー及びその製造方法、これを用いた管状器官の治療具

【課題】 本発明は、縮径ステントを収容し保護するための保護カバーと、管状器官の内腔壁を損傷させずに体内の管状器官の屈曲した場所に挿入することができるステントなどの管状器官の治療具を提供することである。
【解決手段】 錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、先端部と収容部が、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫うことにより設けられていることを特徴とする保護カバーを提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官内に挿入するステント等の治療具を収容し保護するため保護カバー及びその製造方法と、この保護カバーを用いた管状器官内にステント等の治療具を挿入するための管状器官の治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官における治療のため、それらの患部にカテーテルを通してカバー付きステントを挿入し配置することが行われている。例えば血管の狭窄部にカバー付きステントを配置して拡張したり、動脈瘤が形成された箇所にカバー付きステントを配置して動脈瘤の破裂を防止する治療方法が知られている。
【0003】
ステントのデリバリーシステムとしては、非特許文献1に、ダイレータを設けているシステムが記載されている。
【0004】
【非特許文献1】胸部・腹部大動脈瘤の治療2001年−ステントグラフティングを中心に−、江里健輔・竹中博昭監修、メディカルトリビューン、2001年1月31日(第1版第1刷)、13〜15頁、40〜53頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
縮径させたステントを体内の管状器官に挿入する場合、管状器官の内腔壁を損傷しないように、ステントを縮径させてシースに収容し、ステントの先端部にダイレータなどの保護具が使用されている。しかし、屈曲した場所に挿入する場合には、ダイレータ本体やステントやシースの先端部のエッジが管状器官の内腔壁を損傷させるおそれが考えられる。
本発明は、縮径ステントを収容し保護するための保護カバーと、管状器官の内腔壁を損傷させずに体内の管状器官の屈曲した場所に挿入することができるステントなどの管状器官の治療具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明らは、縮径保持したステントを収容する収容部と先端が閉塞状態の錐形状の先端部を、筒状チューブを糸で縫うことに設けた保護カバーを用い、この保護カバーに縮径保持したステントを収容して管状器官内に挿入することにより、体内の管状器官の屈曲した場所でも器官の内腔壁を損傷させずに挿入することができ、縮径保持したステントを留置目的の部位に安全に送達させることができることを見出しました。
【0007】
本発明は、
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫うことにより設けられていることを特徴とする保護カバーを提供することである。
好ましくは本発明は、
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫い、その後裏返すことにより設けられていることを特徴とする保護カバーを提供することである。
好ましくは本発明は、
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、紐材で縫う縫い目位置又は縫い目位置近傍より外の部分を縫い目位置の内側に収容して、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫うことにより設けられていることを特徴とする保護カバーを提供することである。
【0008】
本発明は、
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーの製造方法であり、
ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫い、その後裏返すことにより、先端部と収容部を設けることを特徴とする保護カバーの製造方法を提供することである。
さらに本発明は、
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーの製造方法であり、
ステントの長さより長い筒状のチューブを用いて、チューブを紐材で縫う縫い目位置又は縫い目位置近傍より外側のチューブ部分を縫い目位置又は縫い目位置近傍の内側に収容して、チューブの縫い目位置を紐材で縫うことにより、先端部と収容部とを設けることを特徴とする保護カバーの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の保護カバー及び保護カバーの製造方法の好ましい態様を以下に示す。以下に示す好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)紐材は、紐材の端部を引くことにより、チューブより抜糸できるように縫われていること。
2)紐材は、1本の紐材のみ用いること。
3)保護カバーは、さらに収容部の基端側に、収容部よりも内周の大きな基端部を設けられていること。
4)基端部は、ステントの収容部側から基端部側に、開口する径が次第に大きくなるような部分を有すること。
5)収容部(基端側)と基端部の間に、収容部の内周の小さな部分を設けること。
6)先端部は、先端が閉塞又は閉塞状態であること。
7)筒状のチューブの内周は、収容部に収容する縮径保持されているステントの外周より大きいこと。
8)チューブの外面は、エンボス加工されていること。
9)チューブは、透明又は半透明であること。
【0010】
さらに本発明は、本発明の保護カバー又は本発明の保護カバーの製造方法により得られる保護カバーを用い、保護カバーの収容部に縮径保持されているステントを収容していることを特徴とする管状器官の治療具を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保護カバーは、器官の内腔壁を損傷させずに、体内の管状器官の屈曲した場所に、縮径保持したステントを挿入でき、さらに紐材を引き抜くことにより、管状器官から容易にチューブを除去できる構造である。
本発明の保護カバーは、安価に入手できるチューブと紐材を用いて、簡便な方法で製造できる。
本発明の保護カバーは、縮径保持させたステントの形状に合わせて容易に製造できる。
本発明の保護カバーは、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ナイロンなどの柔軟な筒状チューブを用いることにより、体内の管状器官の屈曲した場所への挿入が管状器官の内腔壁を損傷させることなく行うことが出来る。
【0012】
本発明の管状器官の治療具は、器官の内腔壁を損傷させずに、体内の管状器官の屈曲した場所に挿入でき、さらに紐材を引き抜くことにより、ステントを管状器官内に留置させ、さらに管状器官から容易にチューブを除去できる。
本発明の管状器官の治療具は、容易に安価に入手できるチューブと紐材を用いて、簡便な方法で製造させる保護カバーを用いることができる。
本発明の管状器官の治療具に用いる保護カバーは、縮径させたステントの形状に合わせて容易に製造することが出来る。
本発明の管状器官の治療具は、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ナイロンなどの柔軟な筒状チューブを用いることにより、体内の管状器官の屈曲した場所への挿入が管状器官の内腔壁を損傷させることなく行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
図1には、管状器官の保護具の一例を示す。管状器官の保護具17は、保護カバー15の収容部a2に縮径保持されているステント13を収容している。保護カバー15は、先端部a1、ステントの収容部a2、基端部(a3及びa4)で構成され、紐材3は矢印16方向に引っ張ることにより、紐材3は保護カバー15から容易に抜き去ることが出来るように縫われている。保護カバー15の基端部a4は設けていてもよく、設けなくてもどちらでもよい。
先端部a1の先端側は閉塞又は閉塞状態であり、基端部a4の基端側は開口している。
【0015】
図2には、保護カバー15の紐材3を矢印16方向に引き、紐材3を保護カバーから抜き取ることにより、保護カバー15が元のチューブに戻る状態を示している。
次に元のチューブ形態の保護カバーを管状器官から抜き取ることにより、縮径保持されているステントは、留置目的の部位に安全に送達させることができる。
【0016】
図3〜図5には、保護カバー15の製造方法の一例を示している。
保護カバー15の製造方法の一例として、
チューブ2は、チューブの内周が収容部に収容する縮径保持されているステントの外周より大きく、チューブの長さがステントの長さより長い筒状のチューブを用いる。
1)工程1(a1部の作成):チューブ2の内面を合わせ、先端側又は先端側近傍4からステント収容位置(先端側)5までの間を、先端側又は先端側近傍が錐形状になるように紐材3で縫う。この時、先端側又は先端側近傍4は閉塞又は閉塞状態である。
3)工程2(a2部の作成):さらに工程1に連続して、ステント収容位置(先端側)5からステント収容位置(基端側)6(ステントの長さと同じか、ステントの長さより少し短いか又は長いか)の間を、縮径されたステントを収容できるように紐材3で縫う。
4)工程3(a3部の作成):さらに工程2に連続して、ステント収容位置(基端側)6から基端側近傍7までの間を開口する径が次第に大きくなるように紐材3で縫う。基端側近傍7から基端側の間(a4)は紐材で縫われていない。ここでステント収容位置(基端側)6から基端側までの間を開口する径が次第に大きくなるように紐材3で縫ってもよい。ステント収容位置(基端側)6で、少し径を小さくしてから基端側近傍7までの間を開口する径が次第に大きくなるように紐材3で縫ってもよい。
5)工程4:工程3で作成された紐材3で縫われたチューブ1を、内面側が外側になるように、先端部の先端12から矢印11方向に裏返すことにより、保護カバー15を製造することができる。
工程1、工程2又は工程3の前に、チューブ2の内面を合わせられているチューブに、紐材で縫う縫い目位置(a1からa3まで)を印すことができる。
上記の各工程では、紐材3は、引くことにより容易にチューブから抜き去ることができるように縫わなければならない。
【0017】
図6には、管状器官の保護具の別の一例を示す。管状器官の保護具51は、保護カバー30の収容部a2に縮径保持されているステント39を収容している。保護カバー30は、先端部a1、ステントの収容部a2、基端部(a3及びa4)で構成され、紐材23を引っ張ることにより、紐材23は保護カバー30から容易に抜き去ることが出来るように縫われている。
先端部a1の先端側は閉塞又は閉塞状態であり、基端部a4の基端側は開口している。保護カバー30の基端部a4は設けていてもよく、設けなくてもどちらでもよい。
【0018】
図7〜図9には、保護カバー30の製造方法の一例を示している。
保護カバー30の製造方法の一例として、
チューブ22は、チューブの内周が収容部に収容する縮径保持されているステントの外周より大きく、チューブの長さがステントの長さより長い筒状のチューブを用いる。
1)工程A(a1部の作成):チューブ22の内面を合わせ、先端側又は先端側近傍24からステント収容位置(先端側)25までの間を、先端側又は先端側近傍24が錐形状になるように、かつ紐材23で縫う縫い目位置41又は縫い目位置近傍より外側部分28を縫う目位置41又は縫い目位置近傍の内側に配置させて、紐材23で縫う。この時、先端側又は先端側近傍24は閉塞又は閉塞状態である。
3)工程B(a2部の作成):さらに工程Aに連続して、ステント収容位置(先端側)25からステント収容位置(基端側)26(ステントの長さと同じ、又はそれより少し長い)の間を、縮径保持されているステントを収容できるように、かつ紐材23で縫う縫い目位置42又は縫い目位置近傍より外側部分28を縫う目位置42又は縫い目位置近傍の内側に配置させて、紐材23で縫う。
4)工程C(a3部の作成):さらに工程Bに連続して、ステント収容位置(基端側)26から基端側近傍27までの間を開口する径が次第に大きくなるように、かつ紐材23で縫う縫い目位置43又は縫い目位置近傍より外側部分28を縫う目位置43又は縫い目位置近傍の内側に配置させて、紐材23で縫うことにより、図8に示す保護カバー30を製造することができる。ここでステント収容位置(基端側)6から基端側までの間(a3及びa4)を開口する径が次第に大きくなるように紐材3で縫ってもよい。またステント収容位置(基端側)26で、少し径を小さくしてから基端側近傍27までの間を開口する径が次第に大きくなるように紐材23で縫ってもよい。
工程A、工程B又は工程Cの前に、チューブ22の内面を合わせられているチューブに、紐材で縫う縫い目位置(a1からa3まで)を印すことができる。
上記の各工程では、紐材23は、引くことにより容易にチューブから抜き去ることができるように縫わなければならない。
図9は、図8の保護カバー30のV−V線に沿う縦断面図を示している。保護カバー30の内側に縫い目位置又は縫い目位置近傍より外側部分28が折り込まれ、収容されている。
【0019】
本発明の保護カバー及び管状器官の治療具を用いる方法としては、
1)チューブと紐材で縫うことにより、保護カバーを作成し、
2)保護カバーの収容部に縮径保持されているステントを収容して管状器官の治療具を作成し、
3)管状器官の治療具をステントの留置位置又はその近傍まで管状器官内に挿入して、
4)紐材を保護カバーから引き抜き、保護カバーを元のチューブ形状に戻し、
5)保護カバー(チューブ)を管状器官から除去させ、
6)縮径保持されているステントを管状器官内に置き、必要なら縮径保持されているステントを留置位置まで動かし、縮径状態のステントを拡張させることにより、ステントを留置させることができる。
【0020】
保護カバーの先端部は、錐形状にしているために、管状器官に挿入する時に、器官にスムーズに挿入することができ、内壁を傷つけることを防ぐことが出来る。
先端部は、先端側から次第に径が大きくなるような錐形状であればどのような形状でもよく、例えば、先端側又は先端側近傍からステント収容位置(先端側)までの間は、図3及び図7に示すような直線でもよく、また、直線よりも凸状でも凹状でもよい。
保護カバーの先端部の軸方向の長さは、用いるチューブ、ステントや挿入する管状器官により適宜決めることができる。
保護カバーの先端部の先端は、閉塞していることが好ましいが、ステントを支持するシャフトやワイヤなどが保護カバーから外に出ない程度の小さな穴が開いている閉塞状態でもよい。
【0021】
保護カバーのステント収容部は、縮径保持されているステントが収容できればよく、直円管形状、蛇腹形状などどのような形状でもよい。
収容部に収容するステントは、縮径保持されている。
保護カバーの収容部の軸方向の長さ及び内周は、用いる縮径保持されているステントや挿入する管状器官により適宜決めることができる。
保護カバーの収容部に収容するステントは、縮径保持されているステント、シースに収容されている縮径保持されているステント又は縮径のステントを収容しているシースである。
【0022】
保護カバーには、ステントの収容部の基端側に基端部を設けてもよく、また設けなくても良い。
特に保護カバーに基端部を設ける場合、基端部は、a3に示すように、収容部(基端側)の径より次第に大きくなるような形状で、縫われていることにより、収容部にステントを挿入する場合容易に行うことができ、保護カバー製造時に容易に裏返すことができ、紐材の抜けやすさが向上するために好ましい。
保護カバーに基端部を設ける場合、a4に示す紐材で縫われていない部分は設けてもよく、また設けなくてもどちらでも良い。
保護カバーは、収容部と基端部の間に収容部より内径の小さな部分を設けることが出来る。この部分は収容部に収容されているステントの基端側への移動を防止するストッパーの役割をさせることができる。
本発明において、保護カバーは、a1側端部が先端側で、a4側端部が基端側としている。
【0023】
保護カバーは、縮径保持されているステントの外周より大きな内周とステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で、紐材の端部を引くことによりチューブより容易に抜き去るころができるように縫うことにより、先端部及び収容部、さらに必要に応じて基端部やストッパー部を設けることにより得ることができる。
保護カバーは、柔らかいものを用いることが好ましい。
【0024】
保護カバーに用いる筒状チューブは、縮径保持されているステントの外周より大きな内周とステントの長さより長い筒状のチューブであり、人体に影響を与えない素材もので、紐材で縫うことができ、紐材を引っ張って抜くことが出来、縮径保持されているステントを収容しても破損しない強度を有し、柔軟で管状器官に挿入できるものであれば、どのようなものでも用いることが出来る。
保護カバーは、透明、半透明又は不透明のどのようなものでも用いることができるが、好ましくは透明又は半透明のものが収容しているステント及びその基端部を視認できるために好ましい。
保護カバーはエンボス加工されていることが、挿入時に管状器官の接触部位との摩擦が軽減されるために好ましい。
【0025】
筒状チューブの厚みは、取り扱い可能で、管状器官に挿入可能で、適度な機械的特性を有するものであれば良く、好ましくは5〜1000μm、さらに好ましくは8〜800μm、特に好ましくは10〜500μmの物を用いることができる。
筒状チューブは、円筒状又は円筒に近い形状であればよく、例えば、織物などの布、フィルム又はシートを円筒状又は円筒に近い形状にしたものを用いることができる。
筒状チューブは、織物などの布、フィルム又はシートを円筒状又は円筒に近い形状に接着や熱融着などの方法によりはりあわせているもの、縫われているものなどを用いることができる。
筒状チューブの長さは、ステントを完全に収容できる長さで、取り扱い性及び管状器官に挿入可能なものであればよい。
【0026】
保護カバーに用いる筒状チューブの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフイン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが出来る。
特に筒状チューブの材質は、化学的に安定で耐久性が大きく、組織反応が少なく、柔軟で、表面の摩擦抵抗が小さなポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂、ポリエチレン、エチレン・α−オレフイン共重合体などのポリオレフィンなどを好ましく用いることができる。
【0027】
筒状チューブは、エンボス加工されているチューブを用いることが好ましい。
エンボス加工された筒状チューブを得る方法としては、公知のチューブ又はフィルムにエンボス加工できる成形方法や成形機を用いて成形したものを用いることが出来、例えば、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形などの成形加工方法で、チューブ又はフィルムを製膜した後、エンボスロールを備えたエンボス加工機を用いて成形しても良いし、Tダイ成形、カレンダー成形など溶融された樹脂をロールにて冷却固化する成形方法では、チルロール(冷却ロール)に金属製などのエンボスロールを使用しバックアップロールで押し付けることにより、チューブ成形又はフィルム成形とエンボス加工とを同時に行うことができる方法を用いることが出来る。
エンボスの形状としては、格子模様、紋(梨地)模様、台形模様、絹目模様、凹凸状、いずれであっても良い。
特にエンボスの形状としては、半透明の梨地模様が好ましい。
【0028】
保護カバーに用いる紐材は、筒状チューブを縫えて、紐材をチューブから引っ張ることにより抜き去ることが出来るものであれば、人体に好ましくない影響を与えないものであればどのようなものでも用いることが出来る。
【0029】
紐材の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフイン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエテレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが出来る。
特に紐材の材質は、化学的に安定で耐久性が大きく、組織反応が少なく、柔軟で、程度な強度を有するポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂、ポリエチレン、エチレン・α−オレフイン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミドなどを好ましく用いることができる。
【0030】
ステントは、縮径保持可能なステントであればどのような構造の物でも用いることが出来る。ジグザグ状の線材からなる筒状構造体、1又は複数の線材の編物、織物又は組物、或いはこれらを複数組み合わせた筒状の構造体、金属製の筒状の構造体をレーザー加工などで加工した筒状構造体などを用いることが出来る。
【0031】
ステントに用いる線材及び金属製の筒状の構造体の材料としては、ステンレス、タンタル、チタン、白金、金、タングステンなど、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などの形状記憶合金などの金属線材などを用いることが出来る。用いる金属の表面に金、白金などをメッキ等の手段で被覆したものも用いることが出来る。
ステントに用いる線材及び金属製の筒状の構造体の材料としては、熱処理による形状記憶効果や、超弾性が付与される形状記憶合金を好ましく用いることが出来る。
ステントに用いる線材の太さは、特に限定されないが、例えば血管用ステント等の場合には、0.08〜1mmが好ましい。
ステントに用いる金属製の筒状の構造体の厚さは、特に限定されないが、例えば血管用ステント等の場合には、0.08〜1mmが好ましい。
【0032】
ステントを縮径保持させる方法としては、公知の方法を用いることが出来る。
ステントを縮径保持させる方法の一例として、(1)紐などの線材を用いて、ステント外周を縮径保持させる方法、(2)紐などの線材と棒を用いて、ステント外周を縮径保持させる方法、例えば、線材を引き解け結びの状態で棒に結ぶ方法など、(3)ステントを縮径させ、シースに挿入する方法、などを挙げることが出来る。
【0033】
ステントは、筒状カバーを有する筒状カバー付きステントを用いることが出来る。
筒状カバー付きステントは、縮径可能なステントの外面、内面、又は外面と内面の両面に、筒状カバーを有するものである。
筒状カバー付きステントは、縮径可能なステントの外周、内周、又は外周と内周の両側、好ましくは外周、内周、又は外周と内周の両側の全面に筒状カバーを有するものが好ましい。
【0034】
筒状カバーは、熱可塑性樹脂を押出し成形、ブロー成形などの成形方法で円筒状に形成したもの、円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物、円筒状に形成した熱可塑性樹脂の不織布、円筒状に形成した可擁性樹脂のシートや多孔質シートなどを用いることができる。さらに、編織物としては、平織、綾織などの公知の編物や織物を用いることができる。
また筒状カバーは、クリンプ加工などのヒダの付いたものを使用することもできる。
筒状カバーは、継ぎ目のない筒状の構造体であることが好ましい。
【0035】
筒状カバーは、特に円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物、さらに円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の平織の織物が、強度及び有孔度、生産性に優れるために好ましい。
【0036】
筒状カバーは、ステントの一部又は全部に接続させることができる。筒状カバーをステントに連結させる方法としては、縫い付ける方法、接着剤を用いて付ける方法、熱可塑性樹脂などでは融着させる方法などを挙げることが出来る。
【0037】
筒状カバーの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフイン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエテレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂、シリコーン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂を用いることが出来る。
特に筒状カバーの材質は、化学的に安定で耐久性が大きく、組織反応の少ない、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ弗化エチレンやポリ弗化プロピレンなどのフッ素樹脂を好ましく用いることができる。
【0038】
筒状カバーは、有孔度が0〜1000[ml/(cm・min・120mmHg)、37℃]であることが好ましい。
筒状カバーは、壁厚が30〜2000μmであることが好ましい。
筒状カバーは、ステントと、1又は複数の部分で固定されていてもよい。
【0039】
筒状カバー、筒状カバーを構成する繊維など及びステントを構成する線材や金属製の筒状の構造体は、ヘパリン、コラーゲン、アセチルサリチル酸、ゼラチンなどの生体適合性のある材料で被覆処理されているものを用いることができる。
【0040】
筒状カバー付きステントの適当な場所、例えばステントや筒状カバーの両端部、縮径保持部の先端部や起端部には、X線不透過材料が回着されていてもよい。X線不透過材料としては、例えば金、白金、イリジウム、タンタル、タングステン、銀などや、それらを含有する合金などが好ましく使用される。X線不透過材料は、ステントに半田付け、ろう付け、溶着、接着、カシメなどの手段で固着することができる。
【0041】
シャフトは、金属や樹脂などを用いることが出来る。
【0042】
本発明の保護カバーは、例えば血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官内に挿入するステント等の治療具を収容し保護するため保護カバーである。
本発明の管状器官の治療具は、例えば血管、尿管、胆管、気管などの人体の管状器官内にステント等の治療具を挿入するための保護カバーを用いる管状器官の治療具である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】管状器官の保護具の一実施形態を示す模式図である。
【図2】管状器官の保護具の紐材を引き抜いた状態を示す模式図である。
【図3】保護カバーの製造を説明する模式図である。
【図4】保護カバーの製造を説明する模式図である。
【図5】保護カバーの一実施形態を示す模式図である。
【図6】管状器官の保護具の別の一実施形態を示す模式図である。
【図7】保護カバーの製造を説明する模式図である。
【図8】保護カバーの別の一実施形態を示す模式図である。
【図9】保護カバーのV−V線に沿う縦断面の模式図である。
【符号の説明】
【0044】
2,22:筒状チューブ、
3,23:紐材、
4,24:先端側又は先端側近傍、
5,25:ステント収容位置(先端側)、
6,26:ステント収容位置(基端側)、
7,27:基端側又は基端側近傍、
13,39:ステント、
14,40:シャフト、
15,30:保護カバー、
17,51:管状器官の治療具、
28:折り返し部分
32:縫い目部分、
33:保護カバー表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫うことにより設けられていることを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫い、その後裏返すことにより設けられていることを特徴とする保護カバー。
【請求項3】
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーであり、
先端部と収容部が、紐材で縫う縫い目位置又は縫い目位置近傍より外の部分を縫い目位置の内側に収容して、ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫うことにより設けられていることを特徴とする保護カバー。
【請求項4】
紐材は、紐材の端部を引くことにより、チューブより抜糸できるように縫われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護カバー。
【請求項5】
保護カバーは、さらに収容部の基端側に、収容部よりも内周の大きな基端部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護カバー。
【請求項6】
保護カバーが請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護カバーであり、
保護カバーの収容部に縮径保持されているステントを収容していることを特徴とする管状器官の治療具。
【請求項7】
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーの製造方法であり、
ステントの長さより長い筒状のチューブを紐材で縫い、その後裏返すことにより、先端部と収容部を設けることを特徴とする保護カバーの製造方法。
【請求項8】
錐形状の先端部と縮径保持されているステントを収容する収容部とを有する保護カバーの製造方法であり、
ステントの長さより長い筒状のチューブを用いて、チューブを紐材で縫う縫い目位置又は縫い目位置近傍より外側のチューブ部分を縫い目位置又は縫い目位置近傍の内側に収容して、チューブの縫い目位置を紐材で縫うことにより、先端部と収容部とを設けることを特徴とする保護カバーの製造方法。
【請求項9】
紐材は、紐材の端部を引くことにより、チューブより抜糸できるように縫われていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の保護カバーの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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