説明

保護バイザの制御方法

本発明は、溶接装置(1)により保護シールド(29)を制御する方法を開示し、そこでは、溶接装置(1)により溶接ヘルメット(28)に信号が伝送され、すると、保護シールド(29)が溶接ヘルメット(28)に組み込んだ送受信装置(31)によって作動させられ、保護シールド(29)が暗転する。ここで、溶接プロセスの間、つまり、電気アーク(15)を点火した後に、保護シールド(29)は、送受信装置(30,31)を介して溶接装置(1)の制御装置(4)によって作動させられ、保護シールド(29)の暗転の強度および/または度合いは、溶接プロセスの間、保護シールド(29)を繰り返し、交互に明転および暗転することで、変化させられる。こうして、溶接工のために、よりよい溶接プロセスの観察が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置の保護シールド、例えば、溶接ヘルメットの制御方法に関し、そこでは、信号が溶接装置から送受信装置に伝達され、すると、保護シールドに接続された、例えば、溶接ヘルメットに組み込まれた送受信装置によって、電気的に作動可能な保護シールドが作動させられ、保護シールドが暗くなる。
【背景技術】
【0002】
EP1202832B1により、溶接装置とユーザのための溶接ヘルメットとを有する溶接プラントの制御プロセスが公知である。そこでは、溶接装置の制御手段に送るべき始動信号は、溶接トーチまたは溶接装置に設けた始動スイッチを作動することによって、溶接プロセスを作動させるために生成される。始動スイッチを作動させるとき、始動信号は、溶接ヘルメットに、送受信装置を介して伝達される。すると、電気的に制御可能な保護シールドが溶接ヘルメットによりエネルギを与えられることで作動し、続いて、溶接プロセスが、典型的にはアーク放電の点火装置が始動する。これは、保護シールドの作動が、(ここでは)溶接ヘルメットの保護シールドが全溶接プロセスの間殆ど同じ暗さを保つように、溶接プロセスの作動の前にしか、生じないという欠点を有する。
【0003】
US4638146Aは、電気アーク溶接の溶接光から溶接工の目を保護する方法および装置を示す。そこでは、溶接電力供給ケーブルの周りの磁場が、適切なときに溶接シールドの暗転を保証するためのトリガ要素として使用される。
【0004】
US5208688Aは、溶接工の目の保護を最適化することを保証するために、特定の種類の光を遮断する溶接ヘルメットを記載する。
【0005】
US3873804A、US6067129A、US4418267およびUS2005/0001155A1は、最適な保護を得るために、遅くとも電気アークが点火する時点でシールド装置を暗転するように制御され得る溶接ヘルメットおよび/または溶接用安全装置の異なる実施形態を示す。従来の方法および装置のいずれでも、溶接プロセスの間に溶接シールドの暗転の制御はなされていない。
【特許文献1】欧州特許第1202832号明細書
【特許文献2】米国特許第4638146号明細書
【特許文献3】米国特許第5208688号明細書
【特許文献4】米国特許第3873804号明細書
【特許文献5】米国特許第6067129号明細書
【特許文献6】米国特許第4418267号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0001155号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、溶接工がよりよく溶接プロセスを観察するために、溶接装置の溶接ヘルメットを制御する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、溶接プロセスの間、すなわち、電気アークの点火の後、溶接装置の制御装置により、送受信装置を介して保護シールドが作動させられることで達成される。そこでは、保護シールドの暗転の強さまたは度合いが、保護シールドの繰り返し、交互の暗転および明転によって、溶接プロセスの間に変化させられる。
【0008】
そうすることで、意図的に保護シールドを溶接プロセスの間に明るくすることにより、溶接工またはユーザが溶融金属を最適に観察できるという利点がある。こうして、試験溶接の間の異なるプロセス状態を正確に確認できるので、ユーザは溶接結果が悪い場合は、溶接装置を最適に調整できる。これにより、溶接工が、ギャップ幅、部品の位置などの周囲の状況をよく確認でき、そのため、溶接トーチを最適に案内可能となる。溶接シールドの明転により、ユーザは、また、まさに溶接されている部分のよりよい視界が与えられ、そのため、溶接の品質を直ちに評価できる。
【0009】
請求項2から16に規定した好ましい様式の手段は、溶接工の視覚がいかなる傷害からも保護され、特に、目の閃光熱傷を防止することを確実にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、添付の概略図によってより詳しく説明される。
【0011】
図1には、MIG/MAG溶接および/またはTIG溶接或いは保護ガス雰囲気の有無を問わない電気溶接プロセスなどの多くの異なる溶接プロセスのための、溶接プラントまたは溶接装置1が示されている。確かに、電流源および/または溶接電流源を有する、または、ロボット溶接プラントを有する、独創的な解決策を使用することができる。
【0012】
溶接装置1は、電源エレメント3を備える電流源2と、制御装置4と、電源エレメント3および/または制御装置4と接続されたスイッチング部材5とを含む。スイッチング部材5および/または制御装置4は、ガスリザーバ9と溶接トーチ10との間の、ガス8、特に、例えばCO、ヘリウム、アルゴンなどのような保護ガスの供給ラインに配設された制御弁6に接続されている。
【0013】
さらに、例えばMIG/MAG溶接で一般的なワイヤフィーダ11が制御装置4を介して作動させられ得る。そこでは、溶接ワイヤ13は、供給ドラム14から供給ライン12を介して溶接トーチ10の領域に供給される。当然ながら、従来技術から公知であるように、ワイヤフィーダ11を溶接装置1の中に、典型的には、基礎ハウジングの中に組み込んで、図1に示すように付属装置として設計しないことも可能である。
【0014】
溶接ワイヤ13と工作物16との間の電気アーク15を発生させるための電流は、電源エレメントから溶接トーチ10および/または溶接ワイヤ13に、溶接ライン17を介して供給され、溶接すべき工作物16もまた、溶接装置1、典型的には、電源エレメント3にさらなる溶接ライン18を介して接続され、それにより、電気回路が電気アーク15を介して構成される。
【0015】
溶接トーチ10を冷却するために、溶接トーチ10は、冷却回路19を介して液体リザーバと、典型的には水リザーバ21と、流量計20が介在して接続されることができ、溶接トーチ10が使用されたとき、液体ポンプ冷却回路19が、特に、水リザーバ21に存在する液体に使用される液体ポンプが始動され、それによって、溶接トーチ10および/または溶接ワイヤの冷却を達成できる。
【0016】
溶接装置1は、さらに、入出力装置22を含み、それを介して溶接装置1の多くの異なる溶接パターンおよび操作モードが調節され得る。そうすることにより、入出力装置22を介して調節された溶接パラメータは、制御装置4に送られ、続いて、制御装置4が、溶接プラントまたは溶接装置1の個々の構成要素を作動させる。
【0017】
さらに、図示した例示的実施形態において、溶接トーチ10は、溶接装置1または溶接プラントにホースパッケージ23を介して接続されている。ホースパッケージ23の中に、溶接装置1から溶接トーチ10に延伸するそれぞれのラインが配設されている。ホースパッケージ23は、従来の接続装置24によって溶接トーチ10に接続され、ホースパッケージ23の中のそれぞれのラインは、溶接装置1の個別の接点に、ジャックおよび/またはプラグ継手により接続されている。ホースパッケージ23の適切な張力緩和を確実にするために、ホースパッケージ23は、ハウジング26に、好ましくは、溶接装置1の基礎ハウジングに、張力緩和装置25を介して、接続されている。
【0018】
ユーザまたは溶接工が溶接プロセスを開始可能とするために、始動スイッチ27が溶接トーチ10に設けられている。つまり、溶接工が始動スイッチ27を作動させることによって信号が生成され、ガスの事前流出、電気アーク15の点火、ワイヤフィーダ11の作動等のような全ての必要なプロセス工程が制御装置4によって導かれ得るように、制御装置4が溶接プロセスおよびそれ故の電気アーク15の点火が開始されることを検出できるように、前記信号が少なくとも1本のラインを介して制御装置4に送られる。これらの個々のプロセス工程は、従来技術からそれ自体が既に公知であり、そのために、それらはさらに詳細には説明されない。確かに、始動スイッチ27を、溶接トーチ10に配置するのに代えて、入出力装置22に設けること、または、同様のものに追加して設けることが可能である。
【0019】
溶接工を、特に彼の目を、電気アーク15から、特に、電気アーク15の最も明るい部分の強度および/または発生する溶接スパッタから保護するために、溶接工は、適切な安全装置、典型的には、溶接ヘルメット28を使用する。溶接ヘルメット28は、従来技術から既に公知であり、支持構造によって溶接工の頭に取り付けられ、または、ハンドルによって、溶接工の顔の前、典型的には溶接工の目の前に保持される。溶接装置1および溶接ヘルメット28を備える図示した溶接プラントにおいて、溶接ヘルメット28は、電気的に制御可能な保護シールド29を含む。つまり、保護シールド29の暗転がエネルギ、典型的には電流および電圧の印加により引き起こされ、それによって、ユーザは、電気アーク15の光強度から保護され得る。
【0020】
従来技術から公知であるように、溶接ヘルメット28と溶接装置1との間に、公知の、特にデータ通信における有線または無線の信号接続があり、溶接ヘルメット28の保護シールド29は、溶接装置のデータ信号の伝達によって暗転する。このため、送受信装置30および/または31は、溶接装置1および溶接ヘルメット28の両方に配設され、溶接ヘルメット28の送受信装置31は、また、保護シールド29を作動させる。そうすることで、従来技術において、始動信号は、溶接プロセスの開始のために、溶接トーチ10または溶接装置1の始動スイッチ27を作動させることによって、溶接装置1の制御装置に送信される。データ信号および/または無線信号、或いは、始動命令は、溶接ヘルメット28のために、溶接装置1の制御装置4によって生成され、そして、このデータ信号は、溶接装置1に組み込まれた送受信装置30を介して、溶接ヘルメット28に組み込まれたさらなる送受信装置31に送信される。送受信装置31の中に設けられた作動装置が電気的に制御可能な保護シールド29を作動させ、保護シールド29の暗転を促し、続いて、好ましくは、その間保護シールド29が暗転している予め調節可能な事前流出時間および/またはガス予備流出時間の満了前に、溶接プロセス、典型的には、電気アーク15の点火が開始さる。ここで、電気アーク15が送受信装置31の応答の後にだけ点火されることも可能であり、前記応答は、送受信装置31による応答信号の単純な送出によって検知され、いかなる場合も、電気アーク15が点火されるときに、保護シールド29が既に暗転していることを保証する。
【0021】
本発明によれば、今、溶接プロセスの間、すなわち電気アーク15の点火の後、保護シールド29が、溶接装置1の制御装置4によって、送受信装置30,31を介して作動させられることが提供される。保護シールド29の暗さの強度および/または度合いが溶接プロセスの間に変化させられる。すなわち、例えば、電気アーク15が存在する場合に、保護シールド29は短時間だけ明転させられる。このため、異なる度合いの明るさのお陰で、視覚の閃光熱傷を起こすことなく、目のための保護シールド29の光学的明るさが提供される。このため、ユーザは、溶接プロセスをよりよく確認し、具体的な溶接状態を監視でき、従って、最適な調節および最適な溶接結果を達成できる。
【0022】
ユーザの目の傷害を避けるために、制御装置4が溶接プロセスを適切に制御する手順のような配慮がなされなければならない。基本的に、大電流を開いた後に続く、開いた後の非常に強く激しい電気アーク15を発生させる短絡のような制御されていない状態が溶接プロセスの間に発生する。よって、そのような非常に強く激しい電気アーク15は、溶接工の目を保護するために、制御装置4によって防止されなければならない。この目的のため、制御装置4は、溶接装置1の電流源2を適切に作動させる。そこでは、保護シールド29の弱い強度の暗転時、すなわち、保護シールド29のスクリーンが開いたときに、溶接装置1の電流源2による電流の増加が防止される。さらに、保護シールド29の暗転の強度の低減または変化に先立って、電流源2により与えられる電流レベルが制御装置4によって決定されることが提供される。これにより、制御装置4は、保護シールド29のための暗転の度合いを現在与えられている電流に応じて設定してもよく、制御装置4は、暗転の調整された度合いにおける暗さの度合いの変化が、ユーザに危険を及ぼすことなく、現在与えられ、供給されている電流レベルに影響するかを確認してもよい。実際にそうでなくても、制御装置4は、保護シールド29の暗転の度合いまたは強度の変化の手順を中止または延期してもよく、或いは、電流が暗転の調節された度合いまたは変化されるべき暗転の度合いに応じた値に減じられるように、電流源2を適切に作動させてもよい。
【0023】
結果として、それは、基本的に、保護シールド29が溶接プロセスのプロセス状態の機能として作動させられる、つまり、溶接プロセスの間、保護シールド29が保護シールドの暗転の度合いまたは強度を変化させるために繰り返し作動させられるものと説明され得る。そこでは、ある予め調節し得るプロセス状態において、保護シールド29が作動させられ、および/または、溶接プロセスが暗転の度合いを変えるために適切に制御される。当然に、保護シールド29が所定の時点で固定的に作動し、このために、現在のプロセス状態に注意を払わないこともまた可能である。好ましくは、ユーザの視覚の傷害が発生しないように、制御装置4が適切な監視をすることだけが、提言されなければならない。
【0024】
好ましくは、溶接プロセス中に保護シールド29が作動したとき、保護シールドの暗転の強度が、現在の溶接プロセスの出力に応じて変化する。そうすることで、保護シールド29が作動したとき、暗転の調整が2以上のステージの間で生じ、そこでは、暗転の度合いが、対応するデータ信号によって、溶接ヘルメット28の送受信装置31に送信される。ここで、溶接装置1と溶接ヘルメットとの間のデータ交換は、アナログまたはディジタル信号によって達成してもよい。
【0025】
図2から7において、独創的な溶接プロセス中の保護シールド29の暗転のシーケンス図が簡略化して示されている。そこでは、工作物16に対する溶接ワイヤの移動32が示されており、そこでは、供給方向が矢印33に対応して示されている。さらに、電流の流れ方34が公知の異なる溶接プロセスのためのものが示され、そこでは、電気アーク15の点火およびそれによる保護シールド29の最初の暗転は省略されており、つまり、溶接プロセスの間の電流の流れ方34の一部が示されている。図の次の行には、溶接装置1によって保護シールド29の作動のために溶接ヘルメット28に送信されるデータ信号35が示されており、図2から7の続く記載には、保護シールド29の明るさの度合い36が、概略的に説明されている。そこでは、狭いハッチングは、高度の暗転を意味し、広いハッチングまたはハッチングがないのは、低い度合いの暗転を意味する。
【0026】
図2には、パルス溶接プロセスが簡略化して図示されている。正確な電流の流れ方34は、それが従来技術から公知であるので、より詳しくは示されていない。
【0027】
パルス溶接プロセスの場合、保護シールド29は、パルス段階37では、基礎段階38でよりも強く暗転させられる。つまり、現在のプロセスの状況を知らされた制御装置4は、破線で示すように、液滴の分離が完了した後の、ある決まった時点39にデータ信号35を変化させ、それにより、溶接ヘルメット28に設けられた送受信装置によって、溶接電流が再び増加し、続いて電気アークの強度が増加する次のパルス段階37に先立って、ユーザの目の保護を提供するために、データ信号35が再び異なる時点40に変化させられ、そして保護シールド29の暗転が作動し、そして次のパルス段階37が実行される。
【0028】
結果として、保護シールド29は、基礎段階38において、パルス段階よりも低い強度の電流が印加され、それ故、電気アーク強度が低いので、常に、基礎段階38の間中、繰り返し明転させられる。
【0029】
図3に、再びパルス溶接プロセスを示すが、保護シールド29の明転が異なるプロセス状況および時点で作動する。
【0030】
ここで、保護シールド29の明転のパラメータは、ユーザの目に傷害を起こさないように、つまり、高い電流強度のときに保護シールド29が明転しないように、図3の期間41と比べて、非常に短い時間だけ明るくなるように選択するよう、注意をしなければならない。こういった事情で、期間41は電流のレベルに応じて変化させること、つまり、期間41における電流のレベルの従属関係が明転に設けられることも可能である。
【0031】
図3に見られるように、保護シールドは、それぞれの場合に、繰り返されるプロセスサイクル全体の間に、プロセスの異なる時点およびプロセスの状況で明転させられる。つまり、例えば、最初の明転が、(図3の最初の時点39と比べて)パルス段階37の実行の少し前に開始され、パルス段階37の電流レベルに到達した後の時点40に明転が停止するように、所定の期間41の間作用する。今、次の続くパルス段階37において、しかし、先のパルス段階37と比べてオフセットした時点39,40に、次の保護シールド29の明転が再度作用する。そのようなタイミングのよいオフセットした保護シールド29の明転は、溶接プロセスの全体にわたって繰り返され、それにより、保護シールド29は、全ての異なるプロセスの状況において短く開放され、このようにしてユーザは異なるプロセスの状況をよりよく観察できる。確かに、そのようなタイミングのよいオフセットした明転は、パルス段階37においてのみ作用させ、基本段階38には明転を作用させないことも可能である。
【0032】
そのようなタイミングのよいプロセスの異なる時点での明転のシフトまたはオフセットにより、ユーザが高速なビデオの場合のような印象を受けることが達成される。
【0033】
図4に、さらに、それ自体従来技術の溶接プロセスである、短絡プロセスが図示されている。
【0034】
そのような短絡プロセスにおいて、溶接ワイヤ13と工作物16との間の短絡は、通常、不規則な間隔で発生する(最適なプロセスのシーケンスが図示されている)。ここで、短絡は、通常、従来技術では、溶接電流を増加することで開放される。
【0035】
ここで、保護シールド29の明転のために、溶接装置1は、例えば、保護シールド29が各短絡段階42において明転させられるように調節されているので、それは共通のプロセス制御にどのようにかして介在する。このため、電流源2は、短絡が発生した後に電流が減少するような短絡を検出した後、今、制御装置4により作動させられる。すると、データ信号35は保護シールド29の暗転の度合いまたは強度を変化させるために変更され、こうして保護シールド29は明転させられる。明転は、予め調節した時間41の間維持され、すると、保護シールド29は、対応する電流の増加によって短絡が開放されるように、溶接プロセスを制御する制御装置4によって、再び暗転させられ、再び解放される。
【0036】
図5に、新規な溶接プロセス、特に、短絡の中で溶けた溶接ワイヤ材料が工作物16に移動させられるCMTプロセスが図示されており、そこでは、材料を分離する電流の増加は起きないが、ワイヤ供給方向を反転することによって溶けた材料が溶接ワイヤ13から分離される。ここで、保護シールド29の明転が、短絡段階42において再度適切になされてもよく、それにより、溶接工は、材料の分離をハッキリと確認、または、短絡が開放された後の低い電流時の同様の事象を確認してもよい。
【0037】
図6に、それ自身は一般的なWIGプロセスが示され、このため、それが保護シールド29を明転させるいつものプロセス制御に介在し、つまり、ある調節可能な時間間隔41で明転が行われ、そこでは、この目的のために、溶接電流が減少するように、制御装置4によって電流源2が作動させられ、すると、データ信号35が変更され、保護シールド29は規定された時間41だけ明転する。ここで、明転が、多くの異なる時間間隔で、定期的または一致してなされることが可能である。
【0038】
図7は、AC−WIGプロセスを示し、そこでは、保護シールド29の異なる度合いの暗転および/または異なる強さの暗転が、正および負の期間44,46のために行われる。このため、異なるハッチングで図示するように、保護シールド29の明るさの度合いを時間と同時に変更できる。
【0039】
結果として、保護シールド29の明転が、公知の、先に説明した例示的実施形態に限定されない全ての溶接プロセスに使用され得る異なる調節に基づいてなされ得ることを基本的に明言し得る。ここで、各期間に周期的に出現するプロセスの状況において保護シールド29を対応して作動させること、または、制御装置4が溶接プロセスの中の短絡の発生を検出し、そして、短絡の間または短絡が開放した直後まで或いは電気アーク15が点火するまで、保護シールド29の暗さの強度を低減することが可能である。制御装置4が、電極および/または溶接ワイヤ13に正または負のいずれの電圧が印加されているかによって、正の電圧の場合には、負の電圧の場合よりも暗さの程度が低いように、暗転の強度を変化させることも可能である。高速ビデオの効果を達成するために、保護シールド29を溶接プロセスの状況の異なる時点において明転することが公知の全ての溶接プロセスに適用可能である。
【0040】
そのような保護ヘルメット28の保護シールド29の制御により、ユーザのために光学的に効果的な保護シールド29の明転が調節/到達されることが、明転の継続時間および/または最も異なる暗転の強度によって達成される。そこでは、制御装置4は、対応するプロセスの状況、特に、明転の状況を、保護シールド29の明転のために導入し、明転の段階の導入の間、制御装置4は、それぞれ保管された調節可能なパラメータを、溶接プロセスの制御のために電流源2に、および、保護シールド29の明るさの調節のために溶接ヘルメット28に対して送信する。
【0041】
当然に、溶接ヘルメット28に、溶接装置1の制御装置4に接続された別々の制御装置を配設することも可能である。従って、溶接ヘルメット28の中でさらなる機能、例えば、保護シールド29への溶接パラメータの視覚表示を実行してもよい。それは、溶接装置1を有するロボットが、大抵、ロボットセルの中に配置されており、ロボットセルが覗き窓を含むため、ロボットプラントに使用してもよい。もしこの覗き窓が保護シールド29として設計されていれば、覗き窓は、溶接装置1の手段で対応して作動することができる。
【0042】
保護ヘルメット28に追加的に、実際の明るさを検出するように設計されたフォトセンサを設けることがさらに可能である。ここで、溶接ヘルメット28により、対応するデータを溶接装置1に転送することが可能である。この目的のために、フォトセンサは、もしも、例えば保護シールド29の後ろに設けられていたなら、安全機能のために使用され得、それ故、シャッタ速度の制御と最適化に使用され得る。フォトセンサは、例えば、明るさがある値を超えた場合、停止非常要素として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】溶接装置およびそれに接続された溶接ヘルメットを備える溶接プラントの概略図。
【図2】パルス溶接プロセスの概略図。
【図3】明転の異なる方法を備えるさらなるパルス溶接プロセスの概略図。
【図4】短絡溶接プロセスの概略図。
【図5】CMT溶接プロセスの概略図。
【図6】WIG溶接プロセスの概略図。
【図7】AC−WIG溶接プロセスの概略図。
【符号の説明】
【0044】
1…溶接装置
4…制御装置
15…電気アーク
28…溶接ヘルメット
29…保護シールド
30…送受信装置
31…送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接装置(1)の、例えば溶接ヘルメット(28)上の保護シールド(29)の制御方法であって、信号が前記溶接装置(1)により送受信装置(30)に伝送され、すると、電気的に作動可能な前記保護シールド(29)が、例えば前記溶接ヘルメット(28)に組み込まれた前記保護シールド(29)に接続した送受信装置(31)によって作動させられ、前記保護シールドが暗転させられる方法において、
溶接プロセスの間、つまり、電気アーク(15)の点火の後、前記保護シールド(29)を、前記溶接装置(1)の制御装置(4)によって、送受信装置(30,31)を介して作動させ、溶接プロセスの間、前記保護シールド(29)を繰り返し、交互に暗転および明転することによって、前記保護シールド(29)の暗転の強度および/または度合いを変化させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記保護シールド(29)の低い強度の暗転において、つまり、前記保護シールド(29)のスクリーンが開放されているとき、前記溶接装置(1)の電流源(2)による電流の増加が前記制御装置(4)によって防止されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項3】
暗転の強度を減少または変化させる前に、前記電流源(2)により与えられる電流レベルを前記制御装置(4)によって定めることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記保護シールド(29)の暗転は、前記溶接プロセスのプロセス状況に応じて変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記保護シールド(29)は、固定された所定の時点(39,40)で作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記保護シールド(29)の暗転は、現在の溶接プロセスの出力に応じて変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記保護シールド(29)の暗転は、2以上の暗転の強度の状態の間で変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記制御装置(4)は、溶接プロセスにおいて、短絡、つまり、短絡段階(42)がいつ発生したかを検出し、前記短絡の間、または、好ましくは僅かに前記短絡が開放した後まで、或いは、前記電気アーク(15)の点火まで、前記保護シールド(29)を明転させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記保護シールド(29)の暗転の強度は、電極に印加される正または負の電圧に応じて、明転段階と暗転段階とを切り換え、正の期間(44)の間の正の電圧の場合、負の期間(46)の間の負の電圧の場合の暗転よりも、暗転が強いことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記保護シールド(29)は、周期的に起こる溶接プロセスのプロセス状況に応じて作動されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
パルス段階(37)と基礎段階(38)とが周期的に交互に切り替わるパルス溶接プロセスの場合は、前記保護シールド(29)は、前記基礎段階(38)の間、明転されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ユーザに光学的に作用する前記保護シールド(29)の明転は、前記保護シールド(29)の明転段階の継続時間によって調節することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ユーザに光学的に作用する前記保護シールド(29)の明転は、暗転の強度によって調節されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対応するプロセス状況、典型的には明転の状況を、前記制御装置(4)によって前記保護シールド(29)の明転のために実施することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
明転の状況を実施する間に、前記制御装置(4)によって、それぞれ保管された調節可能なパラメータを、電流源(2)に伝送することを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記保護シールド(29)は、繰り返されるプロセス状況の異なる時点に明転されることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−505755(P2009−505755A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528290(P2008−528290)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/AT2006/000327
【国際公開番号】WO2007/025315
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH