保護眼鏡用レンズ
【課題】 装用性が良く、外観に優れ、色認識や色覚のずれが起こりにくく、かつレーザ遮光機能と防眩機能を併せ持つ保護眼鏡用レンズを提供する。
【解決手段】 この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。そして、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としている。
【解決手段】 この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。そして、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光線を遮光する機能を有すると共に、防眩機能を有した保護眼鏡用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ保護眼鏡用レンズに関するものとして、例えば、発振されているレーザビームの発振波長光に関するレーザビームの透過量を眼に対する許容透過量内に押えつつ、他の波長光は高率に透過する光学特性を有する色ガラスをフィルターとして用いたものが存在する(特許文献1)。
【0003】
さらに、レーザ保護眼鏡用レンズに関するものとして、レーザの発振波長域を吸収帯に有する吸収物質を含有するプラスチックレンズの少なくとも一方の面に、高屈折率層と低屈折率層の物質を、その光学的厚さが(2m+1)λ/4(m=0,1;λ=レーザ発振波長)となるように、交互(m=0又は1)に積層させたものが存在する(特許文献2)。
【0004】
また、従来、偏光眼鏡用レンズに関するものとして、例えば、界面で屈折率が異なる複数の透光性材料で構成されたレンズであって、前記界面が傾斜面を有し、かつ一方の方向に並設された複数の断面波形面で構成されているものが存在する(特許文献3)。
【0005】
さらに、偏光眼鏡用レンズに関するものとして、無機ガラス、熱可塑性の合成樹脂又は熱硬化性の合成樹脂からなる第一のレンズ要素と、熱可塑性の合成樹脂又は熱硬化性の合成樹脂からなる第二のレンズ要素と、偏光フィルムとを含み、その製造工程が、前記第一のレンズ要素と前記第二のレンズ要素とを該偏光フィルムを挟んだ状態で貼り合わせて接着する工程を含むものが存在する(特許文献4)。
【特許文献1】特開昭54−27451号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭62−231925号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平6−67125号公報(第1頁)
【特許文献4】特開2001−350122号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来には、前記レーザ遮光機能と防眩機能の両機能を兼ね備えた保護眼鏡用レンズは存在しなかった。
【0007】
そこで、レーザ保護眼鏡を使用中に防眩機能を付与する必要が生じた場合は、レーザ保護眼鏡のレンズの上に、例えば別注のクリップタイプやオーバグラスタイプの偏光眼鏡レンズを重ねる方式をとっていた。そのため、レーザ保護眼鏡は、装用性が悪く、外観も劣るものになるという欠点を有していた。
【0008】
また、レーザ光線の特質上、一般に高レベルで遮光することが求められるため、レーザ保護眼鏡レンズは、バンド幅が狭い光吸収剤を使用していたので、特別な色が付いている。そのため、このレンズを使用したレーザ保護眼鏡では、作業中の色認識を誤ったり、作業後の色覚が一時的にずれる現象が起こり、特にレーザを用いた外科手術の場合などには、対象を見誤る危険性があるという欠点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の欠点を解消することをその課題としており、保護眼鏡に用いた場合に、装用性が良く、外観に優れ、色認識や色覚のずれが起こりにくく、かつレーザ遮光機能と防眩機能を併せ持つ保護眼鏡用レンズを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。
【0011】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。
【0012】
そして、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としている。
【0013】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上の光学濃度を有するものとしている。
【0014】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第二レンズ要素2を、一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしている。
【0015】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが補色関係にあるものとしている。
【0016】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0017】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0018】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を射出成形により貼り付けたものとしている。
【発明の効果】
【0019】
この発明の保護眼鏡用レンズは、以上に述べたように構成されており、保護眼鏡に用いた場合に、装用性が良く、外観に優れ、色認識や色覚のずれが起こりにくく、かつレーザ遮光機能と防眩機能を併せ持つものとなるので、明るく照明された手術室などで使用されるレーザ手術用保護眼鏡、レーザ実験用の保護眼鏡、屋外で使用されるレーザ測量用保護眼鏡などとして、好適に使用されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の保護眼鏡用レンズを実施するための最良の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1〜図24は、この発明の保護眼鏡用レンズの各実施形態を示しており、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2とから成る。
【0022】
第一レンズ要素1は、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有したものとしており、可視光線波長域において透明な基材としている。このような基材としては、透明ガラスや透明樹脂があるが、射出成形可能な透明樹脂が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリウレタン樹脂などがあるが、保護眼鏡用レンズとして高い強靱性を有するポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0023】
そして、前記第一レンズ要素1は、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上、好ましくはLogε=5.0以上の光学濃度を有するものとしている。
【0024】
紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光としては、次のようなものがある。紫外線波長域では、アルゴンとフッ素の混合ガスを使ったエキシマレーザ、クリプトンとフッ素の混合ガスを使ったエキシマレーザ、ネオジウムヤグの第3高調波、第4高調波などがある。可視光線波長域では、ヘリウムカドミウムレーザ、アルゴンイオンレーザ、ネオジウムヤグの第2高調波などの青系、緑系レーザ、ヘリウムネオン、ルビーなどの赤系レーザなどがある。また、半導体レーザなどは、赤外光から可視光をカバーする。
【0025】
さらに、これらに用いられる紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系物質、フェニルサリチレート、4−テルト−ブチルフェニルサリチレートなどのサリチレート系物質、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系物質、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メンチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノンなどのベンゾトリアゾール系物質が用いられ、耐候性、加工性などから、ベンゾトリアゾール系が好ましく、その中でも2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メンチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノンが好ましい。
【0026】
青色、緑色光波長域の吸収剤としては、オキシインジゴ、イソオキシインジゴなどのインジゴ系色素、キノフタロン、3’−ヒドロキシキノフタロンなどのキノフタロン系色素、1−メトキシアントラキノンなどのキノン系色素、4−メチル−7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン系色素、クロロフィル系色素、ジフェニルメチリウムクロライドなどのジフェニルメタン系色素、7−カルボキシ−1’,3’3’−トリメチルスピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン〕などのスピロピラン系色素、2−アミノ−4−(2’−トリエチル)−6H−1,3−チアジン−6−シオンなどのチアジン系色素、トリフェニルメチリウム−クロライドなどのトリフェニルメタン系色素が用いられ、耐候性、透明度、加工性などから、キノフタロン系色素が好ましく、その中でも3’−ヒドロキシキノフタロンが好ましい。
【0027】
赤色光波長域の吸収剤としては、インジゴ、5,5’−ジブロムインジゴなどのインジゴ系色素、4−(4’−オキシドフェニルイミド)−1,4−ベンゾキノンなどのキノン系色素、クマリンフルオロセントダイなどのクマリン系色素、トリス(p−ジエチルアミノフェニル)−3−メチルメチリウムクロライドなどのトリフェニルメタン系色素、クロロフィル系色素、フェニルフェニルビニルメチルなどのジフェニルメタン系色素、3’−エチル−3−フェニル−6−ニトロスピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−ベンゾチアジン〕などのスピロピラン系色素、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系色素などが用いられ、耐候性、透明度、加工性などから、フタロシアニン系色素が好ましく、その中でも銅フタロシアニンが好ましい。
【0028】
また、主に近赤外線波長域に吸収をもつシアニン系、スクアリリウム系、メチン系、ナフトキノン系、キノンイミン系、フタロシアニン系、テトラデヒドロコリン系、エチレン1,2−ジチオール系金属錯体などの赤外線吸収剤においても、赤色系の吸収を兼ね備えたものもあり、その場合にこれらを用いることもある。
【0029】
前記レーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有させるには、レンズ要素1を形成する合成樹脂に練り込み法などで内部添加する方法、同吸収剤を含むコーティング溶液をレンズ要素1の表面にコーティングする方法などがあるが、レンズの厚みを薄くでき、比較的低濃度でも高い遮光性能が発揮できる内部添加法が好ましい。
【0030】
第二レンズ要素2は、通常一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしている。偏光子を保護する観点からは、一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとするのが好ましい。偏光子は、通常、ヨウ素あるいは二色性色素を染着したポリビニルアルコール系の一軸延伸フィルムであり、100μm以下の厚みである。保護樹脂板は、可視光線波長域で透明であることが必要であり、押し出し成形あるいは射出成形する場合は、第一レンズ要素1の基材と同じ基材が使用でき、熱溶着性の観点からしても、第一レンズ要素1の基材と同じ基材を使用するのが好ましい。この保護樹脂板は、一般的には厚さ数mm以下の延伸されたフィルム状の合成樹脂板としている。また、保護樹脂板は、キャスト成形する場合は、セルロースエステル樹脂も使用でき、一般的には厚さ数mm以下の延伸しないフィルム状の合成樹脂板としている。さらに、保護樹脂板には、レーザ光線を選択的に吸収する吸収剤が含有されていてもよい。なお、偏光子と保護樹脂板は、通常、接着剤または粘着剤によって貼り付けられる。
【0031】
そして、前記第二レンズ要素2は、可視光線の50%以上を吸収するものとすることができる。さらに、前記第二レンズ要素2は、可視光線波長域での前記レーザ光線の特定の波長域の可視光線の50%以上を吸収するものとするのができる。また、前記第二レンズ要素2は、可視光線波長域での前記レーザ光線の特定の波長域を除く波長域の可視光線の50%以上を吸収するものとするのができる。
【0032】
図1〜6に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。
【0033】
すなわち、図1に示した実施形態では、第一レンズ要素1の内面に第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図2に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面に第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。第一レンズ要素1および第二レンズ要素2は、それぞれプレス成形によりレンズ状にしたものとしている。
【0034】
さらに、図3に示した実施形態では、一枚の偏光子2aと一枚の保護樹脂板2bを構成骨子にする偏光板を作製し、この偏光板を適当な寸法に裁断したものをレンズ状にプレス成形し第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図4に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。
【0035】
また、図5に示した実施形態では、一枚の偏光子2aとこれを挟持する二枚の保護樹脂板2b、2bを構成骨子にする偏光板を作製し、この偏光板を適当な寸法に裁断したものをレンズ状にプレス成形し第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図6に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。
【0036】
図7〜18に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。
【0037】
すなわち、図7、8に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を熱溶着により貼り付けたものとし、図9、10に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。第一レンズ要素1および第二レンズ要素2は、それぞれプレス成形によりレンズ状にしたものとしている。なお、図9、10中の符号3は、接着剤層または粘着剤層を示している。
【0038】
図11に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を熱溶着により貼り付けたものとしている。図12に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0039】
図13に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を熱溶着により貼り付けたものとしている。図14に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0040】
図15に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。図16に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0041】
図17に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。図18に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面にこの第二レンズ要素2の内面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0042】
さらに、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付けたものとするには、第一レンズ要素1を第二レンズ要素2に射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0043】
すなわち、図19、20に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0044】
図21、22に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0045】
図23、24に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0046】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが、補色関係にあるものとするのが好ましい。このようにすることにより、作業中の色認識の誤りによって、例えばレーザを用いた外科手術の場合に対象を見誤る危険性がなく、作業後の色覚が一時的にずれる現象を防止することができる。
【0047】
なお、第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが、補色関係にあるものとするには、補色用補正色素を、第一レンズ要素1を構成する基材そのもの、または第二レンズ要素する保護樹脂板に添加したり、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付ける接着剤または粘着剤に添加したり、偏光子や保護樹脂板を貼り付ける接着剤または粘着剤に添加したりすることができる。
【0048】
以下、この発明の保護眼鏡用レンズの実施態様についての具体的な製造方法について、詳細に説明する。
【0049】
先ず、平均分子量18,000〜30,000のビスフェノールタイプのポリカーボネート樹脂パウダー100部に対して、紫外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤(シーソーブ201、シプロ化成社製)3部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、旭電化社製)0.1部を添加し、ミキサーにて十分に拡散し、押し出し成形機にてコンパウンド化し、平均径3mmのペレット樹脂を得た。次に、曲率半径を50〜150mm、厚みを1.2〜4.0mmに調整し、80〜130°Cに熱したレンズモールドに、ポリカーボネート樹脂板により挟持した偏光フィルム(厚み:0.2〜1.0mm)をレンズ形状にし、予備的に70〜200mmの曲率に成形したものを、吸引強度100,000Paで固化させる。その後、偏光フィルムの片面に200〜350°Cで溶融した前記ペレット樹脂を流し込み、冷却・再硬化して保護眼鏡用レンズを得る。
【0050】
上記方法により製造された保護眼鏡用レンズは、可視光線の透過率が20〜50%となり、偏光度が90%以上と防眩効果に優れたものとなった。
【0051】
そして、上記保護眼鏡用レンズを眼鏡形状に加工し、これにつる等を装着して、保護眼鏡を得た。この保護眼鏡は、眼に危険なレーザ光線を遮光し、輻射光を効果的にカットするので、レーザを用いた外科手術などに使用すれば、快適な作業環境が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の保護眼鏡用レンズの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明の保護眼鏡用レンズの第2実施形態を示す断面図である。
【図3】この発明の保護眼鏡用レンズの第3実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明の保護眼鏡用レンズの第4実施形態を示す断面図である。
【図5】この発明の保護眼鏡用レンズの第5実施形態を示す断面図である。
【図6】この発明の保護眼鏡用レンズの第6実施形態を示す断面図である。
【図7】この発明の保護眼鏡用レンズの第7実施形態を示す断面図である。
【図8】この発明の保護眼鏡用レンズの第8実施形態を示す断面図である。
【図9】この発明の保護眼鏡用レンズの第9実施形態を示す断面図である。
【図10】この発明の保護眼鏡用レンズの第10実施形態を示す断面図である。
【図11】この発明の保護眼鏡用レンズの第11実施形態を示す断面図である。
【図12】この発明の保護眼鏡用レンズの第12実施形態を示す断面図である。
【図13】この発明の保護眼鏡用レンズの第13実施形態を示す断面図である。
【図14】この発明の保護眼鏡用レンズの第14実施形態を示す断面図である。
【図15】この発明の保護眼鏡用レンズの第15実施形態を示す断面図である。
【図16】この発明の保護眼鏡用レンズの第16実施形態を示す断面図である。
【図17】この発明の保護眼鏡用レンズの第17実施形態を示す断面図である。
【図18】この発明の保護眼鏡用レンズの第18実施形態を示す断面図である。
【図19】この発明の保護眼鏡用レンズの第19実施形態を示す断面図である。
【図20】この発明の保護眼鏡用レンズの第20実施形態を示す断面図である。
【図21】この発明の保護眼鏡用レンズの第21実施形態を示す断面図である。
【図22】この発明の保護眼鏡用レンズの第22実施形態を示す断面図である。
【図23】この発明の保護眼鏡用レンズの第23実施形態を示す断面図である。
【図24】この発明の保護眼鏡用レンズの第24実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 第一レンズ要素
2 第二レンズ要素
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光線を遮光する機能を有すると共に、防眩機能を有した保護眼鏡用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ保護眼鏡用レンズに関するものとして、例えば、発振されているレーザビームの発振波長光に関するレーザビームの透過量を眼に対する許容透過量内に押えつつ、他の波長光は高率に透過する光学特性を有する色ガラスをフィルターとして用いたものが存在する(特許文献1)。
【0003】
さらに、レーザ保護眼鏡用レンズに関するものとして、レーザの発振波長域を吸収帯に有する吸収物質を含有するプラスチックレンズの少なくとも一方の面に、高屈折率層と低屈折率層の物質を、その光学的厚さが(2m+1)λ/4(m=0,1;λ=レーザ発振波長)となるように、交互(m=0又は1)に積層させたものが存在する(特許文献2)。
【0004】
また、従来、偏光眼鏡用レンズに関するものとして、例えば、界面で屈折率が異なる複数の透光性材料で構成されたレンズであって、前記界面が傾斜面を有し、かつ一方の方向に並設された複数の断面波形面で構成されているものが存在する(特許文献3)。
【0005】
さらに、偏光眼鏡用レンズに関するものとして、無機ガラス、熱可塑性の合成樹脂又は熱硬化性の合成樹脂からなる第一のレンズ要素と、熱可塑性の合成樹脂又は熱硬化性の合成樹脂からなる第二のレンズ要素と、偏光フィルムとを含み、その製造工程が、前記第一のレンズ要素と前記第二のレンズ要素とを該偏光フィルムを挟んだ状態で貼り合わせて接着する工程を含むものが存在する(特許文献4)。
【特許文献1】特開昭54−27451号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭62−231925号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平6−67125号公報(第1頁)
【特許文献4】特開2001−350122号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来には、前記レーザ遮光機能と防眩機能の両機能を兼ね備えた保護眼鏡用レンズは存在しなかった。
【0007】
そこで、レーザ保護眼鏡を使用中に防眩機能を付与する必要が生じた場合は、レーザ保護眼鏡のレンズの上に、例えば別注のクリップタイプやオーバグラスタイプの偏光眼鏡レンズを重ねる方式をとっていた。そのため、レーザ保護眼鏡は、装用性が悪く、外観も劣るものになるという欠点を有していた。
【0008】
また、レーザ光線の特質上、一般に高レベルで遮光することが求められるため、レーザ保護眼鏡レンズは、バンド幅が狭い光吸収剤を使用していたので、特別な色が付いている。そのため、このレンズを使用したレーザ保護眼鏡では、作業中の色認識を誤ったり、作業後の色覚が一時的にずれる現象が起こり、特にレーザを用いた外科手術の場合などには、対象を見誤る危険性があるという欠点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の欠点を解消することをその課題としており、保護眼鏡に用いた場合に、装用性が良く、外観に優れ、色認識や色覚のずれが起こりにくく、かつレーザ遮光機能と防眩機能を併せ持つ保護眼鏡用レンズを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。
【0011】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。
【0012】
そして、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としている。
【0013】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1を、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上の光学濃度を有するものとしている。
【0014】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第二レンズ要素2を、一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしている。
【0015】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが補色関係にあるものとしている。
【0016】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0017】
さらに、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0018】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、前記第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を射出成形により貼り付けたものとしている。
【発明の効果】
【0019】
この発明の保護眼鏡用レンズは、以上に述べたように構成されており、保護眼鏡に用いた場合に、装用性が良く、外観に優れ、色認識や色覚のずれが起こりにくく、かつレーザ遮光機能と防眩機能を併せ持つものとなるので、明るく照明された手術室などで使用されるレーザ手術用保護眼鏡、レーザ実験用の保護眼鏡、屋外で使用されるレーザ測量用保護眼鏡などとして、好適に使用されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の保護眼鏡用レンズを実施するための最良の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1〜図24は、この発明の保護眼鏡用レンズの各実施形態を示しており、レーザ光遮光用の第一レンズ要素1と、防眩用の第二レンズ要素2とから成る。
【0022】
第一レンズ要素1は、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有したものとしており、可視光線波長域において透明な基材としている。このような基材としては、透明ガラスや透明樹脂があるが、射出成形可能な透明樹脂が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリウレタン樹脂などがあるが、保護眼鏡用レンズとして高い強靱性を有するポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0023】
そして、前記第一レンズ要素1は、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上、好ましくはLogε=5.0以上の光学濃度を有するものとしている。
【0024】
紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光としては、次のようなものがある。紫外線波長域では、アルゴンとフッ素の混合ガスを使ったエキシマレーザ、クリプトンとフッ素の混合ガスを使ったエキシマレーザ、ネオジウムヤグの第3高調波、第4高調波などがある。可視光線波長域では、ヘリウムカドミウムレーザ、アルゴンイオンレーザ、ネオジウムヤグの第2高調波などの青系、緑系レーザ、ヘリウムネオン、ルビーなどの赤系レーザなどがある。また、半導体レーザなどは、赤外光から可視光をカバーする。
【0025】
さらに、これらに用いられる紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系物質、フェニルサリチレート、4−テルト−ブチルフェニルサリチレートなどのサリチレート系物質、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系物質、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メンチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノンなどのベンゾトリアゾール系物質が用いられ、耐候性、加工性などから、ベンゾトリアゾール系が好ましく、その中でも2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メンチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノンが好ましい。
【0026】
青色、緑色光波長域の吸収剤としては、オキシインジゴ、イソオキシインジゴなどのインジゴ系色素、キノフタロン、3’−ヒドロキシキノフタロンなどのキノフタロン系色素、1−メトキシアントラキノンなどのキノン系色素、4−メチル−7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン系色素、クロロフィル系色素、ジフェニルメチリウムクロライドなどのジフェニルメタン系色素、7−カルボキシ−1’,3’3’−トリメチルスピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン〕などのスピロピラン系色素、2−アミノ−4−(2’−トリエチル)−6H−1,3−チアジン−6−シオンなどのチアジン系色素、トリフェニルメチリウム−クロライドなどのトリフェニルメタン系色素が用いられ、耐候性、透明度、加工性などから、キノフタロン系色素が好ましく、その中でも3’−ヒドロキシキノフタロンが好ましい。
【0027】
赤色光波長域の吸収剤としては、インジゴ、5,5’−ジブロムインジゴなどのインジゴ系色素、4−(4’−オキシドフェニルイミド)−1,4−ベンゾキノンなどのキノン系色素、クマリンフルオロセントダイなどのクマリン系色素、トリス(p−ジエチルアミノフェニル)−3−メチルメチリウムクロライドなどのトリフェニルメタン系色素、クロロフィル系色素、フェニルフェニルビニルメチルなどのジフェニルメタン系色素、3’−エチル−3−フェニル−6−ニトロスピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−ベンゾチアジン〕などのスピロピラン系色素、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系色素などが用いられ、耐候性、透明度、加工性などから、フタロシアニン系色素が好ましく、その中でも銅フタロシアニンが好ましい。
【0028】
また、主に近赤外線波長域に吸収をもつシアニン系、スクアリリウム系、メチン系、ナフトキノン系、キノンイミン系、フタロシアニン系、テトラデヒドロコリン系、エチレン1,2−ジチオール系金属錯体などの赤外線吸収剤においても、赤色系の吸収を兼ね備えたものもあり、その場合にこれらを用いることもある。
【0029】
前記レーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有させるには、レンズ要素1を形成する合成樹脂に練り込み法などで内部添加する方法、同吸収剤を含むコーティング溶液をレンズ要素1の表面にコーティングする方法などがあるが、レンズの厚みを薄くでき、比較的低濃度でも高い遮光性能が発揮できる内部添加法が好ましい。
【0030】
第二レンズ要素2は、通常一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしている。偏光子を保護する観点からは、一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとするのが好ましい。偏光子は、通常、ヨウ素あるいは二色性色素を染着したポリビニルアルコール系の一軸延伸フィルムであり、100μm以下の厚みである。保護樹脂板は、可視光線波長域で透明であることが必要であり、押し出し成形あるいは射出成形する場合は、第一レンズ要素1の基材と同じ基材が使用でき、熱溶着性の観点からしても、第一レンズ要素1の基材と同じ基材を使用するのが好ましい。この保護樹脂板は、一般的には厚さ数mm以下の延伸されたフィルム状の合成樹脂板としている。また、保護樹脂板は、キャスト成形する場合は、セルロースエステル樹脂も使用でき、一般的には厚さ数mm以下の延伸しないフィルム状の合成樹脂板としている。さらに、保護樹脂板には、レーザ光線を選択的に吸収する吸収剤が含有されていてもよい。なお、偏光子と保護樹脂板は、通常、接着剤または粘着剤によって貼り付けられる。
【0031】
そして、前記第二レンズ要素2は、可視光線の50%以上を吸収するものとすることができる。さらに、前記第二レンズ要素2は、可視光線波長域での前記レーザ光線の特定の波長域の可視光線の50%以上を吸収するものとするのができる。また、前記第二レンズ要素2は、可視光線波長域での前記レーザ光線の特定の波長域を除く波長域の可視光線の50%以上を吸収するものとするのができる。
【0032】
図1〜6に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を重ね合わせたものとしている。
【0033】
すなわち、図1に示した実施形態では、第一レンズ要素1の内面に第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図2に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面に第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。第一レンズ要素1および第二レンズ要素2は、それぞれプレス成形によりレンズ状にしたものとしている。
【0034】
さらに、図3に示した実施形態では、一枚の偏光子2aと一枚の保護樹脂板2bを構成骨子にする偏光板を作製し、この偏光板を適当な寸法に裁断したものをレンズ状にプレス成形し第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図4に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。
【0035】
また、図5に示した実施形態では、一枚の偏光子2aとこれを挟持する二枚の保護樹脂板2b、2bを構成骨子にする偏光板を作製し、この偏光板を適当な寸法に裁断したものをレンズ状にプレス成形し第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。図6に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を隙間なく重ね合わせ、眼鏡枠(図示せず)等で固定したものとしている。
【0036】
図7〜18に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付けたものとしている。
【0037】
すなわち、図7、8に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を熱溶着により貼り付けたものとし、図9、10に示した実施形態では、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。第一レンズ要素1および第二レンズ要素2は、それぞれプレス成形によりレンズ状にしたものとしている。なお、図9、10中の符号3は、接着剤層または粘着剤層を示している。
【0038】
図11に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を熱溶着により貼り付けたものとしている。図12に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0039】
図13に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を熱溶着により貼り付けたものとしている。図14に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を熱溶着により貼り付けたものとしている。
【0040】
図15に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。図16に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第一レンズ要素1の外面に前記第二レンズ要素2の内面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0041】
図17に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。そして、第一レンズ要素1の内面にこの第二レンズ要素2の外面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。図18に示した実施形態では、第一レンズ要素1の外面にこの第二レンズ要素2の内面を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしている。
【0042】
さらに、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付けたものとするには、第一レンズ要素1を第二レンズ要素2に射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0043】
すなわち、図19、20に示した実施形態では、プレス成形によりレンズ状にした第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0044】
図21、22に示した実施形態では、図3に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0045】
図23、24に示した実施形態では、図5に示した実施形態と同様にして第二レンズ要素2を得る。次に、この第二レンズ要素2をインサート射出成形機にセットし、第一レンズ要素1をインサート射出成形することにより貼り付けたものとしている。
【0046】
また、この発明の保護眼鏡用レンズは、第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが、補色関係にあるものとするのが好ましい。このようにすることにより、作業中の色認識の誤りによって、例えばレーザを用いた外科手術の場合に対象を見誤る危険性がなく、作業後の色覚が一時的にずれる現象を防止することができる。
【0047】
なお、第一レンズ要素1の色相と第二レンズ要素2の色相とが、補色関係にあるものとするには、補色用補正色素を、第一レンズ要素1を構成する基材そのもの、または第二レンズ要素する保護樹脂板に添加したり、第一レンズ要素1と第二レンズ要素2を貼り付ける接着剤または粘着剤に添加したり、偏光子や保護樹脂板を貼り付ける接着剤または粘着剤に添加したりすることができる。
【0048】
以下、この発明の保護眼鏡用レンズの実施態様についての具体的な製造方法について、詳細に説明する。
【0049】
先ず、平均分子量18,000〜30,000のビスフェノールタイプのポリカーボネート樹脂パウダー100部に対して、紫外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤(シーソーブ201、シプロ化成社製)3部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、旭電化社製)0.1部を添加し、ミキサーにて十分に拡散し、押し出し成形機にてコンパウンド化し、平均径3mmのペレット樹脂を得た。次に、曲率半径を50〜150mm、厚みを1.2〜4.0mmに調整し、80〜130°Cに熱したレンズモールドに、ポリカーボネート樹脂板により挟持した偏光フィルム(厚み:0.2〜1.0mm)をレンズ形状にし、予備的に70〜200mmの曲率に成形したものを、吸引強度100,000Paで固化させる。その後、偏光フィルムの片面に200〜350°Cで溶融した前記ペレット樹脂を流し込み、冷却・再硬化して保護眼鏡用レンズを得る。
【0050】
上記方法により製造された保護眼鏡用レンズは、可視光線の透過率が20〜50%となり、偏光度が90%以上と防眩効果に優れたものとなった。
【0051】
そして、上記保護眼鏡用レンズを眼鏡形状に加工し、これにつる等を装着して、保護眼鏡を得た。この保護眼鏡は、眼に危険なレーザ光線を遮光し、輻射光を効果的にカットするので、レーザを用いた外科手術などに使用すれば、快適な作業環境が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の保護眼鏡用レンズの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明の保護眼鏡用レンズの第2実施形態を示す断面図である。
【図3】この発明の保護眼鏡用レンズの第3実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明の保護眼鏡用レンズの第4実施形態を示す断面図である。
【図5】この発明の保護眼鏡用レンズの第5実施形態を示す断面図である。
【図6】この発明の保護眼鏡用レンズの第6実施形態を示す断面図である。
【図7】この発明の保護眼鏡用レンズの第7実施形態を示す断面図である。
【図8】この発明の保護眼鏡用レンズの第8実施形態を示す断面図である。
【図9】この発明の保護眼鏡用レンズの第9実施形態を示す断面図である。
【図10】この発明の保護眼鏡用レンズの第10実施形態を示す断面図である。
【図11】この発明の保護眼鏡用レンズの第11実施形態を示す断面図である。
【図12】この発明の保護眼鏡用レンズの第12実施形態を示す断面図である。
【図13】この発明の保護眼鏡用レンズの第13実施形態を示す断面図である。
【図14】この発明の保護眼鏡用レンズの第14実施形態を示す断面図である。
【図15】この発明の保護眼鏡用レンズの第15実施形態を示す断面図である。
【図16】この発明の保護眼鏡用レンズの第16実施形態を示す断面図である。
【図17】この発明の保護眼鏡用レンズの第17実施形態を示す断面図である。
【図18】この発明の保護眼鏡用レンズの第18実施形態を示す断面図である。
【図19】この発明の保護眼鏡用レンズの第19実施形態を示す断面図である。
【図20】この発明の保護眼鏡用レンズの第20実施形態を示す断面図である。
【図21】この発明の保護眼鏡用レンズの第21実施形態を示す断面図である。
【図22】この発明の保護眼鏡用レンズの第22実施形態を示す断面図である。
【図23】この発明の保護眼鏡用レンズの第23実施形態を示す断面図である。
【図24】この発明の保護眼鏡用レンズの第24実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 第一レンズ要素
2 第二レンズ要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光遮光用の第一レンズ要素(1)と、防眩用の第二レンズ要素(2)を重ね合わせたことを特徴とする保護眼鏡用レンズ。
【請求項2】
レーザ光遮光用の第一レンズ要素(1)と、防眩用の第二レンズ要素(2)を貼り付けたことを特徴とする保護眼鏡用レンズ。
【請求項3】
前記第一レンズ要素(1)を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項4】
前記第一レンズ要素(1)を、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上の光学濃度を有するものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項5】
前記第二レンズ要素(2)を、一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項6】
前記第一レンズ要素(1)の色相と第二レンズ要素(2)の色相とが補色関係にあるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項7】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を熱溶着により貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項8】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項9】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を射出成形により貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項1】
レーザ光遮光用の第一レンズ要素(1)と、防眩用の第二レンズ要素(2)を重ね合わせたことを特徴とする保護眼鏡用レンズ。
【請求項2】
レーザ光遮光用の第一レンズ要素(1)と、防眩用の第二レンズ要素(2)を貼り付けたことを特徴とする保護眼鏡用レンズ。
【請求項3】
前記第一レンズ要素(1)を、紫外線波長域、可視光線波長域あるいは赤外線波長域で特定の波長を有するレーザ光線を選択的に吸収する吸収剤を含有すると共に、可視光線波長域において透明な基材としたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項4】
前記第一レンズ要素(1)を、前記レーザ光線の特定の波長において、Logε=2.0以上の光学濃度を有するものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項5】
前記第二レンズ要素(2)を、一枚の偏光子からなる偏光レンズ、または一枚の偏光子と一枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズ、あるいは一枚の偏光子とこれを挟持する二枚の保護樹脂板を構成骨子にする偏光レンズとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項6】
前記第一レンズ要素(1)の色相と第二レンズ要素(2)の色相とが補色関係にあるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項7】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を熱溶着により貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項8】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を接着剤または粘着剤を用いて貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【請求項9】
前記第一レンズ要素(1)と第二レンズ要素(2)を射出成形により貼り付けたものとしたことを特徴とする請求項2記載の保護眼鏡用レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−184596(P2006−184596A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378503(P2004−378503)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
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