説明

信号処理方法、信号処理装置、及び情報記録再生装置

【課題】振幅制御が不安定になったり、発散して破綻するのを防止する。
【解決手段】入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する処理と、第1の信号に対し、オフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果を第2の信号として出力する処理と、第2の信号に対して検波を行うことにより、ピークレベルを示すピーク検波情報と、ボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波処理とを実行する。第2の信号が検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び第2の信号が検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する。レベル異常が検出されていない場合には、ピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて振幅補正量を取得する一方、レベル異常が検出されている場合には、ピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに振幅補正量を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号に対して振幅補正処理とオフセット補正処理とを実行する信号処理方法、信号処理装置、及び情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたAGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)装置は、入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正するアンプと、当該アンプの出力に対してA/D変換を行うA/D変換部と、当該A/D変換部の出力に所定のオフセット補正量を加算する加算器とを備える。このAGC装置では、前記加算器の出力のエネルギーと所定の基準値との差分に基づいて前記アンプの振幅補正量が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−199961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、A/D変換部への入力が当該A/D変換部の入力ダイナミックレンジに収まっていない場合、A/D変換部の出力が誤ったものとなる。したがって、この誤った出力に基づいてアンプの振幅補正量が求められることにより、振幅の制御が不安定になったり、発散して破綻するおそれがある。
【0005】
また、上記特許文献1のようなAGC装置において、加算器の出力を検波することにより検波情報を取得する検波部を設け、検波部により取得した検波情報に基づいて上記振幅補正量とオフセット補正量とを算出する場合がある。このようにした場合、AGC装置にA/D変換部を設けずにアンプの出力を直接加算器に入力させたとしても、検波部への入力が検波部の入力ダイナミックレンジから逸脱することにより、誤った検波情報に基づいて振幅補正量とオフセット補正量とが算出され、振幅制御やオフセット制御が不安定になったり、発散して破綻するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、入力信号に対して振幅補正処理とオフセット補正処理とを実行する信号処理において、振幅制御が不安定になったり、発散して破綻するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する振幅補正処理と、前記第1の信号に対し、所定のオフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果を第2の信号として出力するオフセット補正処理と、前記第2の信号に対して検波を行うことにより、前記第2の信号のピークレベルを示すピーク検波情報と、前記第2の信号のボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波処理と、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する異常検出処理と、前記異常検出処理によりレベル異常が検出されていない場合は、前記振幅補正処理によって前記第1の信号の振幅が目標振幅に近づくように、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて前記振幅補正量を取得する正常取得動作を実行する一方、前記異常検出処理によりレベル異常が検出されている場合は、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに前記振幅補正量を取得する異常取得動作を実行する振幅補正量取得処理とを有していることを特徴とする。
【0008】
この態様によると、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方では、検波処理により取得されるピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに振幅補正量を取得する。したがって、誤った検波情報に基づいて振幅補正量が算出されることにより振幅制御が不安定になったり、発散して破綻することを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、誤った検波情報に基づいて振幅補正量が算出されることにより振幅制御が不安定になったり、発散して破綻することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る信号処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施形態2に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る信号処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態3に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る信号処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態4に係る情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る情報記録再生装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
《実施形態1》
本発明の実施形態1に係る信号処理装置100は、振幅補正部110、オフセット補正部120、検波部130、異常検出部140、振幅補正量取得部150、及びオフセット補正制御部160を備えている。
【0013】
振幅補正部110は、入力信号Sinの振幅を振幅補正量に応じて補正(増幅)し、補正後の信号を第1の信号S1として出力する。振幅補正量は、振幅補正量取得部150によって算出される。その算出方法については後述する。
【0014】
オフセット補正部120は、加算器120’を備え、振幅補正部110によって出力された第1の信号S1に対し、所定のオフセット補正量の加算を行い、加算結果を第2の信号S2として出力する。
【0015】
検波部130は、オフセット補正部120により出力された第2の信号S2に対して検波を行うことにより、第2の信号S2のピークレベルを示すピーク検波情報S31と、第2の信号S2のボトムレベルを示すボトム検波情報S32とを取得する。
【0016】
異常検出部140は、オフセット補正部120により出力された第2の信号S2から高周波成分を除去して検出信号S41を生成し、生成した検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の両方でレベル異常を検出する。入力ダイナミックレンジとは、入力部が許容する電圧レベルの範囲である。
【0017】
異常検出部140は、信号検出部141、基準部142、比較部143、及び検出処理部144を備えている。
【0018】
信号検出部141は、高域遮断フィルタ処理を行うLPF(Low Pass Filter)であり、オフセット補正部120により出力された第2の信号S2に対して高周波成分の除去を行うことにより検出信号S41を生成する。信号検出部141は、検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値及び下限値を検出可能なように、検波部130よりも広い範囲の入力電圧を検波可能になっている。すなわち、信号検出部141の入力部が許容する電圧レベルの範囲の上限値は、検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値よりも高く、信号検出部141の入力部が許容する電圧レベルの範囲の下限値は、検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値よりも低い。
【0019】
基準部142は、検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値と下限値を示す基準情報S42を出力する。この基準情報S42は、固定値にしてもよいし、検波部130の周波数特性やオフセット特性、振幅補正処理の周波数特性やオフセット特性等の様々な特性が温度変化や素子のばらつきにより変化することに対応して、処理中に変更できるようにしてもよい。
【0020】
比較部143は、信号検出部141により生成された検出信号S41が基準部142により出力された基準情報S42により示される上限値以下であり、かつ下限値以上であるか否か、すなわち検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっているか否かを示す比較信号S43を出力する。比較信号S43は、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっている場合にはL(Low)レベル、収まっていない場合にはH(High)レベルとなる。
【0021】
検出処理部144は、比較部143により出力された比較信号S43をそのまま異常検出信号S4として出力する。詳しくは、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっていない場合には、Hレベルの異常検出信号S4を出力し、それ以外の場合には、Lレベルの異常検出信号S4を出力する。なお、異常検出信号S4がHレベルの状態が、異常検出部140がレベル異常を検出している状態である。
【0022】
振幅補正量取得部150は、異常検出部140によりレベル異常が検出されていない場合には、検波部130により取得されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32とに基づいて振幅補正量S5を取得する正常取得動作を実行する。一方、異常検出部140によりレベル異常が検出されている場合には、検波部130により取得されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32のいずれにも基づかずに振幅補正量S5を取得する異常取得動作を実行する。
【0023】
振幅補正量取得部150は、振幅検出部151、基準部152、比較部153、及び補正部154を備えている。
【0024】
振幅検出部151は、検波部130によって出力されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32とに基づいて、第2の信号S2の振幅S51を求める。振幅S51は、ピーク検波情報S31よりボトム検波情報S32を減算することにより求められる。
【0025】
基準部152は、目標振幅S52を出力する。
【0026】
比較部153は、振幅検出部151により求められた振幅S51と基準部152により出力された目標振幅S52とを比較する。比較部153は、異常検出部140によってHレベルの異常検出信号S4が出力されている場合には、比較処理を一時停止し、停止直前の値を出力し続ける。
【0027】
補正部154は、異常検出信号S4がLレベルを示している場合には、比較部153による比較結果に基づいて、振幅補正部110による補正によって第1の信号S1の振幅が目標振幅S52に近づくように(振幅検出部151により求められた振幅S51が目標振幅S52に近づくように)振幅補正量S5を算出する。異常検出信号S4がHレベルを示している場合には、補正部154も算出処理を停止し、補正部154により出力される振幅補正量S5は、異常検出信号S4がHレベルを示す直前、すなわちレベル異常が検出され始める直前の値に固定される。なお、このとき、振幅補正量S5がレベル異常の検出直前の値以外の値に固定されるようにしてもよい。
【0028】
オフセット補正制御部160は、オフセット検出部161、基準部162、比較部163、及び補正部164を備えている。
【0029】
オフセット検出部161は、検波部130によって出力されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32とに基づいて、実際のオフセットを示すオフセット情報S61を生成する。なお、本実施形態では、オフセット検出部161は、ピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32の両方に基づいてオフセット情報S61を生成するが、いずれか一方のみに基づいてオフセット情報S61を生成するようにしてもよい。
【0030】
基準部162は、目標オフセットS62を出力する。
【0031】
比較部163は、オフセット情報S61により示されるオフセットと目標オフセットS62とを比較する。
【0032】
補正部164は、比較部163による比較結果に基づいて、オフセットを目標オフセットS62に補正するためのオフセット補正量S6を算出する。
【0033】
図2は、上記のように構成された信号処理装置100の動作中の各信号のレベルを例示するタイミングチャートである。
【0034】
図2では、入力信号Sinに対して振幅補正処理およびオフセット補正処理を施して生成された第2の信号S2が、時刻Aまでは検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっている。しかし、時刻Aにおいて何らかの原因(急激な温度変化、入力信号Sinの外乱による変位等)によって第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超えている。
【0035】
時刻Aでは、第2の信号S2が、検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超えている。そのため、異常検出部140の信号検出部141における高周波成分の除去処理を経た検出信号S41を比較部143が上記入力ダイナミックレンジの上限値と比較し、検出処理部144がHレベルの異常検出信号S4を出力する。そして、振幅補正量取得部150が、Hレベルの異常検出信号S4を受け、振幅補正量取得部150の補正部154が、振幅補正量S5の算出処理を停止する。これにより、オフセット制御及び振幅制御の破綻が防止される。振幅補正量S5の算出処理は、検波部130の入力ダイナミックレンジに第2の信号S2が収まり、振幅補正処理を正常に行えるようになるまで一時停止される。この間、振幅補正量取得部150の振幅検出部151は、検波部130からのピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32に基づく振幅検出処理を続行して振幅S51を出力する。振幅検出部151が異常検出部140により異常が検出されている間も振幅検出処理を続行しているので、異常検出信号S4がHレベルからLレベルに切り替わった際(時刻B)にも、振幅が途切れることなく検出される。第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジを越えると、検波部130により出力されるピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32が誤ったものとなるおそれがある。図2では、異常検出信号S4がHレベルの間には、振幅S51が小さくなっている。
【0036】
オフセット補正部120及びオフセット補正制御部160は、異常検出部140によりレベル異常が検出されている間、すなわち検波部130の入力が入力ダイナミックレンジに収まっていない間も、処理を一時停止することなく続行している。第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジを逸脱している場合、この第2の信号S2を検波して得られるピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32が誤ったものとなるおそれがある。しかし、オフセット補正制御部160による制御の方向(極性)、すなわちオフセットを上げるか又は下げるかという制御の方向は正しくなる。したがって、レベル異常が検出されている間にオフセット補正制御部160を動作させ続けたとしても、制御の破綻を招くことはなく、安定性は損なわれない。よって、図2に示すように、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超えた場合、オフセットを下げる方向に補正処理が行われ、振幅補正量S5が固定されているので、一定期間(図2においては時刻B)で入力部の一定範囲内へ収束させることが可能である。
【0037】
本実施形態に係る信号処理装置100は、検波部130の入力である第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっていない場合には、検波部130により取得されるピーク検波情報S31とボトム検波情報S32のいずれにも基づかずに振幅補正量S5として固定値を取得する。したがって、誤った検波情報に基づいて振幅補正量S5が算出されることによりオフセット制御や振幅制御が不安定になったり、発散して破綻することを防止できる。
【0038】
また、異常検出部140が信号検出部141により第2の信号S2から高周波成分を除去するので、第2の信号S2にノイズ等の高周波信号成分が重畳されることにより第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジを頻繁に瞬間的に逸脱する場合に、異常検出部140が頻繁に異常を検出して振幅補正量S5の算出処理が頻繁に停止することを防止できる。この結果、オフセット制御及び振幅制御の応答特性の低下を防止できる。
【0039】
《実施形態2》
図3は、本発明の実施形態2に係る信号処理装置200を示す。本実施形態の信号処理装置200は、実施形態1の異常検出部140及び振幅補正量取得部150に代えて、異常検出部240及び振幅補正量取得部250を備えている。上記異常検出部240は、実施形態1の異常検出部140の構成に加え、振幅判定部241、及び振幅異常制御部242を備えている。
【0040】
振幅判定部241は、基準部142により出力された基準情報S42に基づいて、信号検出部141によって生成された検出信号S41が、基準情報S42により示される上限値(検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値)を越え、かつ基準情報S42により示される下限値(検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値)を下回っている場合に、Hレベルの振幅異常信号S44を出力する一方、そうでない場合にはLレベルの振幅異常信号S44を出力する。
【0041】
振幅異常制御部242は、振幅判定部241により出力された振幅異常信号S44がHレベルである場合に、検出処理部144にLレベルの異常検出信号S4を出力させるとともに、振幅異常有りを示すHレベルの制御信号S7を出力する。振幅異常制御部242は、振幅異常信号S44がLレベルである場合には、振幅異常無しを示すLレベルの制御信号S7を出力する。
【0042】
なお、制御信号S7がHレベルの状態が、異常検出部240が振幅異常を検出している状態であり、異常検出信号S4及び制御信号S7の一方がHレベルになっている状態が、異常検出部240がレベル異常を検出している状態である。
【0043】
また、上記振幅補正量取得部250は、実施形態1の振幅補正量取得部150の補正部154に代えて、補正部251を備えている。
【0044】
補正部251は、振幅異常制御部242により出力された制御信号S7が振幅異常有りを示している場合には、第1の信号S1の振幅を下げるように振幅補正部110を動作させる振幅補正量S5を出力する。制御信号S7が振幅異常無しを示している場合の補正部251の動作は、実施形態1の補正部154と同じである。
【0045】
そのほかの構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
図4は、上記のように構成された信号処理装置200の動作中の各信号のレベルを例示するタイミングチャートである。
【0047】
図4では、異常検出部240により検出される第2の信号S2が、時刻Cと時刻Dの間で検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を越え、かつ下限値を下回っている。
【0048】
時刻Cと時刻Eの間では、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっていないので、比較信号S43はHレベルとなる。一方、時刻Cと時刻Dの間では、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を越え、かつ当該入力ダイナミックレンジの下限値を下回っているので、振幅異常信号S44はHレベルとなる。検出処理部144は、振幅異常信号S44がHレベルの間、Lレベルの異常検出信号S4を出力する。したがって、振幅補正量取得部250は、時刻Cと時刻Dの間で、検波部130によって出力されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32とに基づく振幅補正量S5の算出を停止しない。
【0049】
また、時刻Cと時刻Dの間では、振幅異常信号S44がHレベルとなっているので、振幅異常制御部242は、振幅異常有りを示す制御信号S7を出力する。したがって、振幅補正量取得部250は、第1の信号S1の振幅を下げるように振幅補正部110を動作させる振幅補正量S5を出力する。制御信号S7が振幅異常有りを示している状態で、オフセット補正制御部160は、一時停止することなく、通常のオフセット補正処理を行う。
【0050】
第1の信号S1の振幅を下げるように振幅補正部110を動作させる処理は、時刻Dにおいて、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を下回り、振幅異常信号S44がLレベルとなるのに応じて停止する。時刻Dと時刻Eの間では、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回っているので、振幅補正量取得部250が、ピーク検波情報S31とボトム検波情報S32とに基づく振幅補正量S5の算出を停止する。このとき、オフセット補正制御部160は、通常の動作を継続する。
【0051】
本実施形態によると、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、第2の信号S2の振幅が大きい場合には、第1の信号S1の振幅を下げるように振幅補正部110を動作させる振幅補正量S5が出力されるので、オフセット制御や振幅制御が不安定になったり、発散して破綻することをより確実に防止できる。
【0052】
《実施形態3》
図5は、本発明の実施形態3に係る信号処理装置300を示す。本実施形態の信号処理装置300は、実施形態1の信号処理装置100のオフセット補正部120に代えて、オフセット補正部320を備えている。
【0053】
オフセット補正部320は、実施形態1のオフセット補正部120の加算器120’に加えてA/D(Analog to Digital)変換器301を備え、加算器120’の加算結果に対してA/D変換器301によりA/D変換処理を行って第2の信号S2として出力する。
【0054】
また、異常検出部140の基準部142は、基準情報S42として、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジ(A/D変換が可能な入力信号の許容範囲)の上限値及び下限値を示す情報を出力する。異常検出部140の信号検出部141は、第2の信号S2に対して検波処理を行うものであり、ピーク検波情報S45及びボトム検波情報S46を出力する。信号検出部141は、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジの上限値の正確なピーク検波、及びA/D変換器301の入力ダイナミックレンジの下限値の正確なボトム検波が可能である。
【0055】
比較部143は、基準部142により出力された基準情報S42により示される上限値とピーク検波情報S45とを比較するとともに、基準部142により出力された基準情報S42により示される下限値とボトム検波情報S46とを比較し、両比較結果に基づいて、第2の信号S2がA/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まっているか否かを示す比較信号S43を出力する。比較信号S43は、第2の信号S2がA/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まっている場合にはL(Low)レベル、収まっていない場合にはH(High)レベルとなる。
【0056】
また、検出処理部144は、比較部143により出力された比較信号S43が所定時間連続してHレベルとなった場合に、レベル異常を検出する。
【0057】
そのほかの構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
図6は、上記のように構成された信号処理装置300の動作中の各信号のレベルを例示するタイミングチャートである。図6では、時刻Fと時刻Gの間で、A/D変換器301の入力信号に何らかの要因によってオフセットが発生し、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジの上限値を超えている。
【0059】
A/D変換器301は、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まった入力信号のみをデジタル信号に変換して第2の信号S2として出力する。第2の信号S2は、検波部130に入力される。
【0060】
A/D変換器301が、入力ダイナミックレンジに収まらない入力信号を変換できるのであれば、検波部130は、正確なピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32を出力する。しかし、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まらない入力信号に対応する出力値(第2の信号S2)は、当該入力ダイナミックレンジの上限値又は下限値に固定される。したがって、A/D変換器301は、入力ダイナミックレンジに収まらない入力信号を受信すると、例えば図6に示すように不正確な第2の信号S2を出力する。かかる場合、第2の信号S2に対して検波を行って得られるピーク検波情報S31とボトム検波情報S32の少なくとも一方が、不正確なものとなる。
【0061】
ピーク検波情報S31とボトム検波情報S32の少なくとも一方が不正確になると、ピーク検波情報S31とボトム検波情報S32が入力されるオフセット補正制御部160において、オフセット検出部161が不正確なオフセット情報S61を生成し、このオフセット情報S61に基づいて、比較部163と補正部164が不正確なオフセット補正量S6を算出する。また、ピーク検波情報S31とボトム検波情報S32が入力される振幅補正量取得部150においては、振幅検出部151が不正確な振幅S51を出力し、この不正確な振幅S51に基づいて比較部153及び補正部154が不正確な振幅補正量S5を算出する。
【0062】
図6では、時刻Fと時刻Gの間で、実際のピーク検波情報S31は、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジの上限値に固定された信号をピーク検波して得られた情報となり、理想的なピーク検波情報S31とは異なっている。一方、ボトム検波情報S32は、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まった信号を正確にボトム検波した情報となっている。振幅検出部151がこのような不正確なピーク検波情報S31と正確なボトム検波情報S32とに基づいて振幅S51を求めると、振幅S51は時刻Fと時刻Gの間で実際よりも小さく不正確なものとなる。
【0063】
振幅S51が実際よりも小さくなった場合、振幅補正量取得部150は、入力信号Sinの振幅が小さくなっているものと判断し、振幅を大きくする振幅補正量S5を算出する。図6では、A/D変換器301の入力信号の振幅は常に一定に保たれ、オフセットのみが何らかの要因によって時刻Fで加えられている。しかし、A/D変換器301の入力ダイナミックに限りがあるため、振幅補正量取得部150は、誤った振幅補正量S5を振幅補正部110に出力する。誤った振幅補正量S5を受信した振幅補正部110は、入力信号Sinを増幅して第1の信号S1として出力する。この第1の信号S1は、加算器120’によるオフセット補正量S6の加算後、A/D変換器301に入力される。しかし、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まらない入力信号に対応する第2の信号S2は所定の上限値又は下限値に固定されるため、ピーク検波情報S31又はボトム検波情報S32が不正確な情報となり、振幅補正量取得部150において、不正確な振幅S51が求められ、オフセット補正制御部160において不正確なオフセット情報S61が生成され、不正確な振幅補正量S5及び不正確なオフセット補正量S6が算出される。このように、不正確な振幅補正量S5及びオフセット補正量S6の算出が繰り返されることにより、オフセット制御及び振幅制御が不安定となり、場合によっては制御が発散又は破綻する。
【0064】
本実施形態では、図6に示すように、異常検出部140が異常を検出した場合には振幅補正量取得部150により出力される振幅補正量S5を固定し、これにより、振幅補正部110による振幅補正によってオフセット制御及び振幅制御が不安定になることを防止している。
【0065】
図6では、時刻Fにおいて、ピーク検波情報S45がA/D変換器301の入力ダイナミックレンジの上限値を超えた状態が所定時間連続したことを検出処理部144が比較信号S43に基づいて検知し、Hレベルの異常検出信号S4を出力している。
【0066】
振幅補正量取得部150は、時刻Fにおいて、Hレベルの異常検出信号S4を受け、振幅S51を用いた比較部153における比較処理、及び振幅補正量S5の算出を停止する。補正部154は、時刻Fと時刻Gの間、時刻F直前の振幅補正量S5を保持し、図6に示すように、振幅補正量S5は、時刻Fと時刻Gの間、時刻F直前の値に固定される。ただし、時刻Fと時刻Gの間、振幅検出部151は、異常検出信号S4がHレベルからLレベルに切り替わってすぐに正確な振幅S51を出力できるよう、動作を継続している。
【0067】
信号処理装置300は、異常検出信号S4がHレベルになると、振幅補正部110を停止させる一方、オフセット補正部320及びオフセット補正制御部160には正常な処理を継続させている。したがって、時刻Fにおける入力信号Sinのオフセットの影響は、時刻Gにおいて解消され、かつ、時刻G直後からオフセット補正部320によるオフセット補正処理、及び振幅補正部110による振幅補正処理を時刻Fの前の正常な状態に復帰させることができる。
【0068】
《実施形態4》
図7は、本発明の実施形態4に係る情報記録再生装置を示す。この情報記録再生装置は、情報記録媒体としての光ディスク401に対してデータの記録再生を行う。光ディスク401にはグルーブ(案内溝とも呼ぶ)が形成され、このグルーブは一定の周波数で半径方向に蛇行している。この蛇行はウォブルと呼ばれ、このウォブルに基づいて得られるウォブル信号が、情報の記録及び再生に用いられるクロック信号を生成するためのリファレンス信号、及び光ディスク401の回転制御信号として用いられる。
【0069】
本実施形態の情報記録再生装置は、図7に示すように、光ピックアップ402、加算増幅器405a、405b、減算増幅器406、上記実施形態3に係る信号処理装置300、ウォブル抽出部407、ウォブルPLL部408、変調部410、記録波形生成部411、モータ制御部412、及びディスクモータ413を備えている。
【0070】
光ピックアップ402には、光ビームを光ディスク401に照射するレーザダイオード403と、光ディスク401からの反射光を4分割された受光領域により受光する受光素子404が内蔵されている。
【0071】
受光素子404は、光ディスク401からの反射光を受光し、各分割領域に生じた電流を電圧に変換する(I−V変換)。そして、加算増幅器405aが内周側の分割領域の電圧を加算して加算結果を示す加算信号を出力するとともに、加算増幅器405bが外周側の分割領域の電圧を加算して加算結果を示す加算信号を出力する。減算増幅器406は、内周側の加算信号と外周側の加算信号との差を求める減算を行い、差信号をプッシュプル信号として出力する。このプッシュプル信号は、記録時には記録パルス成分が除去された信号となる一方、記録済み領域の再生時には再生信号からなるRF(Radio Frequency)成分が除去された信号となる。また、このプッシュプル信号には、ウォブル信号成分に加え、記録パルスの残留成分、RFの残留成分、光ディスク401の回転周期に同期して生じるオフセットが含まれている。上記記録パルスの残留成分、及びRFの残留成分は、受光素子404の各分割領域が受ける反射光のずれやI−V変換のばらつき、又は加算増幅器405a及び加算増幅器405bの振幅の相対ばらつきに起因して減算増幅器406が除去できなかった成分である。また、上記オフセットは、光スポットをトラックに追従させるサーボ動作における残差に起因して生じる。上記加算増幅器405a、405b及び減算増幅器406によって演算部が構成されている。
【0072】
信号処理装置300は、減算増幅器406により出力されたプッシュプル信号を、入力信号Sinとして受信する。信号処理装置300では、プッシュプル信号をA/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収めるために、振幅補正及びサーボ動作における残差により生じるオフセットの除去が行われる。
【0073】
ウォブル抽出部407は、バンドパスフィルタで構成され、信号処理装置300によって出力される第2の信号S2から、記録動作時の記録パルスの残留成分や再生動作時のRFの残留成分からなる高周波成分と、サーボ制御及び信号処理装置300により除去しきれない直流的に変動するオフセットからなる低周波成分とを除去し、ウォブル信号として出力する。
【0074】
ウォブルPLL部408は、ウォブル抽出部407により出力されたウォブル信号に基づいて、記録クロックを生成する。
【0075】
変調部410は、ウォブルPLL部408により生成された記録クロックを動作クロックとして使用して記録データを変調し、変調後データを出力する。
【0076】
記録波形生成部411は、変調部410によって出力された変調後データに基づいて記録パルスを生成する。レーザダイオード403は、この記録パルスに応じて光ビームを照射する。また、記録波形生成部411は、ウォブルPLL部408により生成された記録クロックを動作クロックとして使用する。
【0077】
また、光ディスク401の内周から外周にかけて線速度が一定となるように回転制御としてCLV制御(Constant Linear Velocity)が行われている場合、ウォブル抽出部407により出力されたウォブル信号は、モータ制御部412に入力される。モータ制御部412は、ウォブル信号の周期が一定となるようにディスクモータ413を制御する。なお、モータ制御部412に入力される信号は、ウォブル信号に限らず、光ディスク401のウォブル周期が反映されたものであれば、記録クロック等、他の信号であってもよい。
【0078】
ここで、図8は、異常検出部140により異常が検出されたときにもピーク検波情報S31及びボトム検波情報S32に基づく振幅補正量S5の算出を停止しない場合に、A/D変換器301の入力ダイナミックレンジの範囲に収まらないプッシュプル信号を例示する。
【0079】
図8では、プッシュプル信号が、サーボ動作残差により生じるオフセットに起因してA/D変換器301の入力ダイナミックレンジに収まっていない。したがって、振幅補正が過剰に行われ、信号処理装置300により出力される第2の信号S2に歪みが生じ、ウォブル抽出部407から出力されるウォブル信号にも欠落や周期ズレが生じ、ウォブルPLL部408により出力される記録クロックにジッタが生じる。その結果、ディスクモータ413の回転数制御が正しく行われなくなったり、記録時の記録パルスにジッタが生じ、その結果、再生時のリーダビリティを低下させるおそれがある。
【0080】
また、記録クロックを信号処理装置300やウォブル抽出部407のデジタル回路の動作クロックに用いると、信号処理装置300における検波処理、振幅補正処理及びオフセット補正処理の応答特性や、ウォブル抽出部407の中心周波数(デジタル回路によるバンドパスフィルタで構成されていた場合)を、光ディスク401の回転倍速によって変更させずに済む。その反面、記録クロックがフィードバック制御されているため、記録クロックにジッタがあると、前記諸特性にズレが生じ、記録クロックを用いる各ブロックの動作状態をさらに悪化させるおそれがある。
【0081】
したがって、本実施形態によると、プッシュプル信号に図8に示したようなオフセット変動が生じている場合は、オフセット補正が行われ、オフセットが所定値以下になるまで振幅補正を停止させるので、過剰な振幅補正が行われず、A/D変換器301の出力が正しくなる。その結果、ウォブル信号および記録クロックが安定するので、再生時のリーダビリティを向上させることができるとともに、ループ構成となっている回路を安定して動作させることができる。
【0082】
なお、上記実施形態4では、受光素子404の受光領域が4分割されていたが、必ずしも4分割されていなくてもよく、グルーブからなるトラックからの反射光を光ディスク401の内周側と外周側から受光できるように少なくとも2つ以上に分割されていればよい。
【0083】
また、上記実施形態1〜4では、オフセット補正部120が、第1の信号S1に対して所定のオフセット補正量S6の加算を行うようになっていたが、減算を行い、減算結果を第2の信号S2として出力するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態1、2では、異常検出部140が、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の両方でレベル異常を検出した。しかし、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合のいずれか一方のみでレベル異常を検出するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態3、4では、異常検出部140が、第2の信号S2がA/D変換部301の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び第2の信号S2がA/D変換部301の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の両方でレベル異常を検出した。しかし、第2の信号S2がA/D変換部301の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び第2の信号S2がA/D変換部301の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合のいずれか一方のみでレベル異常を検出するようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態1、2では、異常検出部140が、第2の信号S2から高周波成分を除去した検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジを逸脱した場合にレベル異常を検出した。しかし、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっていない時間が所定時間に達した場合、あるいは第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジから所定時間内に所定回数逸脱したことを検出した場合に、レベル異常を検出するようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態1では、信号検出部141をLPFにより構成したが、第2の信号S2に対して検波処理を行ってピーク値及びボトム値を検出するものにし、検出したピーク値及びボトム値に基づいてレベル異常が検出されるようにしてもよい。また、信号検出部141を設けず、比較部143に第2の信号S2が直接入力され、異常検出部140が、第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジに収まっていない時間が所定時間に達した場合、あるいは第2の信号S2が検波部130の入力ダイナミックレンジから所定時間内に所定回数逸脱したことを検出した場合に、レベル異常を検出するようにしてもよい。また、異常検出部140が、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超える状態が所定時間連続している場合、及び検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る状態が所定時間連続している場合のいずれか一方のみでレベル異常を検出するようにしてもよい。また同様に、異常検出部140が、検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの上限値を所定時間内に所定回数超える場合、及び検出信号S41が検波部130の入力ダイナミックレンジの下限値を所定時間内に所定回数下回る場合のいずれか一方のみでレベル異常を検出するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態1〜4において、異常検出部140に、オフセット補正制御部160において生成されたオフセット情報S61が第2の信号S2の代わりに入力され、異常検出部140が、オフセット情報S61により示されるオフセットが所定の範囲を逸脱することを検出した場合に、レベル異常を検出するようにしてもよい。上記所定の範囲は、固定値であってもよいし、検波部130の周波数特性やオフセット特性、振幅補正処理の周波数特性やオフセット特性等の様々な特性が温度変化や素子のばらつきにより変化することに対応して、処理中に変更できるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態1において、オフセット補正制御部160は、検波部130によって出力されたピーク検波情報S31とボトム検波情報S32に基づいてオフセット情報S61を生成した。しかし、オフセット補正部120により出力された第2の信号S2に基づいてオフセット情報S61を生成するようにしてもよい。このようにした場合でも、異常検出部140が、オフセット情報S61により示されるオフセットが所定の範囲を逸脱することを検出した場合に、レベル異常を検出するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態2において、異常検出部140は、第2の信号S2から高周波成分を除去した検出信号S21が、検出部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超え、かつ検出部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回っている場合に、振幅異常を検出した。しかし、第2の信号S2が所定時間内に検出部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超える回数と、第2の信号S2が所定時間内に検出部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る回数との合計が所定回数を超えた場合、または第2の信号S2が検出部130の入力ダイナミックレンジの上限値を超え、かつ検出部130の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る状態が所定時間以上連続した場合に振幅異常を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る信号処理方法、信号処理装置、及び情報記録再生装置は、振幅制御が不安定になったり、発散して破綻するのを防止できるという効果を有し、入力信号に対して振幅補正処理とオフセット補正処理とを実行する信号処理方法、信号処理装置、及び情報記録再生装置として有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 信号処理装置
110 振幅補正部
120 オフセット補正部
130 検波部
140 異常検出部
150 振幅補正量取得部
200 信号処理装置
240 異常検出部
250 振幅補正量取得部
300 信号処理装置
301 A/D変換器
320 オフセット補正部
401 光ディスク(情報記録媒体)
403 レーザダイオード(照射部)
404 受光素子
405a、405b 加算増幅器(演算部の一部)
406 減算増幅器(演算部の一部)
407 ウォブル抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する振幅補正処理と、
前記第1の信号に対し、所定のオフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果を第2の信号として出力するオフセット補正処理と、
前記第2の信号に対して検波を行うことにより、前記第2の信号のピークレベルを示すピーク検波情報と、前記第2の信号のボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波処理と、
前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する異常検出処理と、
前記異常検出処理によりレベル異常が検出されていない場合は、前記振幅補正処理によって前記第1の信号の振幅が目標振幅に近づくように、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて前記振幅補正量を取得する正常取得動作を実行する一方、前記異常検出処理によりレベル異常が検出されている場合は、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに前記振幅補正量を取得する異常取得動作を実行する振幅補正量取得処理とを有していることを特徴とする信号処理方法。
【請求項2】
請求項1の信号処理方法において、
前記異常検出処理は、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の両方でレベル異常を検出することを特徴とする信号処理方法。
【請求項3】
請求項1の信号処理方法において、
前記異常検出処理は、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える状態が所定時間連続している場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る状態が所定時間連続している場合の少なくとも一方でレベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理方法。
【請求項4】
請求項1の信号処理方法において、
前記異常検出処理は、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を所定時間内に所定回数超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を所定時間内に所定回数下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理方法。
【請求項5】
請求項1の信号処理方法において、
前記異常検出処理は、前記第2の信号から取得したオフセット量が所定の範囲を逸脱することを検出した場合に、レベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理方法。
【請求項6】
請求項1の信号処理方法において、
前記異常検出処理は、前記第2の信号が前記入力ダイナミックレンジの上限値を越え、かつ前記入力ダイナミックレンジの下限値を下回っている場合に、振幅異常を検出する振幅異常検出処理をさらに実行するものであり、
前記異常取得動作は、前記異常検出処理により振幅異常が検出された場合に、第1の信号の振幅を下げるように前記振幅補正量を取得するものであることを特徴とする信号処理方法。
【請求項7】
請求項6の信号処理方法において、
前記振幅異常検出処理は、前記第2の信号が所定時間内に前記入力ダイナミックレンジの上限値を越える回数と、当該第2の信号が前記所定時間内に前記入力ダイナミックレンジの下限値を下回る回数との合計が所定回数を超えた場合に、振幅異常を検出するものであることを特徴とする信号処理方法。
【請求項8】
入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する振幅補正処理と、
前記第1の信号に対し、所定のオフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果に対してA/D変換処理を行って第2の信号として出力するオフセット補正処理と、
前記第2の信号に対して検波を行うことにより、前記第2の信号のピークレベルを示すピーク検波情報と、前記第2の信号のボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波処理と、
前記第2の信号が前記A/D変換処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記A/D変換処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する異常検出処理と、
前記異常検出処理によりレベル異常が検出されていない場合は、前記振幅補正処理によって前記第1の信号の振幅が目標振幅と近づくように、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて前記振幅補正量を取得する正常取得動作を実行する一方、前記異常検出処理によりレベル異常が検出されている場合は、前記検波処理により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに前記振幅補正量を取得する異常取得動作を実行する振幅補正量取得処理とを有していることを特徴とする信号処理方法。
【請求項9】
入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する振幅補正部と、
前記第1の信号に対し、所定のオフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果を第2の信号として出力するオフセット補正部と、
前記第2の信号に対して検波を行うことにより、前記第2の信号のピークレベルを示すピーク検波情報と、前記第2の信号のボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波部と、
前記第2の信号が前記検波部の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波部の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部によりレベル異常が検出されていない場合は、前記振幅補正部による補正によって前記第1の信号の振幅が目標振幅に近づくように、前記検波部により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて前記振幅補正量を取得する正常取得動作を実行する一方、前記異常検出部によりレベル異常が検出されている場合は、前記検波部により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに前記振幅補正量を取得する異常取得動作を実行する振幅補正量取得部とを備えていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項10】
請求項9の信号処理装置において、
前記異常検出部は、前記第2の信号が前記検波部の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記検波部の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の両方でレベル異常を検出することを特徴とする信号処理装置。
【請求項11】
請求項9の信号処理装置において、
前記異常検出部は、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える状態が所定時間連続している場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る状態が所定時間連続している場合の少なくとも一方でレベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項12】
請求項9の信号処理装置において、
前記異常検出部は、前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの上限値を所定時間内に所定回数超える場合、及び前記第2の信号が前記検波処理の入力ダイナミックレンジの下限値を所定時間内に所定回数下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項13】
請求項9の信号処理装置において、
前記異常検出部は、前記第2の信号から取得したオフセット量が所定の範囲を逸脱することを検出した場合に、レベル異常を検出するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項14】
請求項9の信号処理装置において、
前記異常検出部は、前記第2の信号が前記入力ダイナミックレンジの上限値を越え、かつ前記入力ダイナミックレンジの下限値を下回っている場合に、振幅異常を検出する振幅異常検出処理をさらに実行するものであり、
前記異常取得動作は、前記異常検出部により振幅異常が検出された場合に、前記第1の信号の振幅を下げるように前記振幅補正量を取得するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項15】
請求項14の信号処理装置において、
前記振幅異常検出処理は、前記第2の信号が前記入力ダイナミックレンジの上限値を越え、かつ前記入力ダイナミックレンジの下限値を下回った状態が所定時間以上連続した場合に、振幅異常を検出するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項16】
請求項14の信号処理装置において、
前記振幅異常検出処理は、前記第2の信号が所定時間内に前記入力ダイナミックレンジの上限値を越える回数と、当該第2の信号が前記所定時間内に前記入力ダイナミックレンジの下限値を下回る回数との合計が所定回数を超えた場合に、振幅異常を検出するものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項17】
入力信号の振幅を振幅補正量に応じて補正し、補正後の信号を第1の信号として出力する振幅補正部と、
前記第1の信号に対し、所定のオフセット補正量の加算又は減算を行い、加算又は減算結果に対してA/D変換処理を行って第2の信号として出力するオフセット補正部と、
前記第2の信号に対して検波を行うことにより、前記第2の信号のピークレベルを示すピーク検波情報と、前記第2の信号のボトムレベルを示すボトム検波情報とを取得する検波部と、
前記第2の信号が前記A/D変換処理の入力ダイナミックレンジの上限値を超える場合、及び前記第2の信号が前記A/D変換処理の入力ダイナミックレンジの下限値を下回る場合の少なくとも一方でレベル異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部によりレベル異常が検出されていない場合には、前記振幅補正部による補正によって前記第1の信号の振幅が目標振幅に近づくように、前記検波部により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報とに基づいて前記振幅補正量を取得する正常取得動作を実行する一方、前記異常検出部によりレベル異常が検出されている場合には、前記検波部により取得されたピーク検波情報とボトム検波情報のいずれにも基づかずに前記振幅補正量を取得する異常取得動作を実行する振幅補正量取得部とを備えていることを特徴とする信号処理装置。
【請求項18】
請求項9〜17のいずれか1項の信号処理装置と、
蛇行したグルーブが形成された情報記録媒体に対してレーザ光を照射する照射部と、
当該レーザ光の情報記録媒体からの反射光を、少なくとも2つ以上の分割領域に分割された受光領域により受光し、各分割領域に生じた電流を電圧に変換して出力する受光素子と、
前記受光素子により出力された電圧に基づいてプッシュプル信号を前記入力信号として生成する演算部と、
前記第2の信号から所定の周波数帯域の成分をウォブル信号として抽出するウォブル抽出部とを備えた情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41631(P2013−41631A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274678(P2009−274678)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】