信号処理装置、信号処理方法およびプログラム
【課題】ガンマ補正された画像の劣化を抑制可能な、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】入力輝度信号Yをガンマ補正して出力輝度信号Y´を生成するガンマ補正回路13と、入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´の比率(=Y´/Y)を輝度信号の入出力比pとして算出する入出力比算出回路14と、輝度信号の入出力比pを入力色差信号Cb、Crに乗じて出力色差信号Cb´、Cr´を生成する色差補正回路15とを備える。これにより、輝度信号の入出力比pを用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´を生成することができる。
【解決手段】入力輝度信号Yをガンマ補正して出力輝度信号Y´を生成するガンマ補正回路13と、入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´の比率(=Y´/Y)を輝度信号の入出力比pとして算出する入出力比算出回路14と、輝度信号の入出力比pを入力色差信号Cb、Crに乗じて出力色差信号Cb´、Cr´を生成する色差補正回路15とを備える。これにより、輝度信号の入出力比pを用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´を生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル入出力機器では、一般に、画像の明るさを調節するためにガンマ補正が行われる。ガンマ補正では、通常、画素の色を表すRGB3原色の各色信号が補正されるが、処理効率の観点から画素の明るさを表す輝度信号のみが補正されることがある。例えば下記特許文献1には、輝度信号のみを補正する信号処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−327496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガンマ補正では、画像中の黒色を際立たせること等を目的に、自由曲線として表される特性曲線が用いられる場合がある。ここで、各色信号を補正すると、相対的に高い処理負荷が要求されるが、黒色を際立たせた画像を適切に表示することができる。しかし、輝度信号のみを補正すると、処理負荷を抑制できるが、特に画像中の肌色が赤みを帯びて表示される等、画像が劣化してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、ガンマ補正された画像の劣化を抑制可能な、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成するガンマ補正回路と、入力輝度信号と出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出する入出力比算出回路と、輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成する色差補正回路とを備える信号処理装置が提供される。
【0007】
色差補正回路は、入力色差信号に応じて輝度信号の入出力比を修正し、修正後の輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成してもよい。
【0008】
輝度信号の入出力比は、入力色差信号により表される色差値の絶対値が小さいほど色差補正の影響を大きく受けるように修正されてもよい。
【0009】
入出力比算出回路は、輝度信号の入力値と、輝度信号の入力値と出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに輝度信号の入出力比を算出してもよい。
【0010】
ガンマ補正回路は、輝度信号の入力値と、輝度信号の出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに輝度信号の出力値を算出してもよい。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、入力輝度信号と出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成することを含む信号処理方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、上記信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。ここで、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体を用いて提供されてもよく、通信手段等を介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、ガンマ補正された画像の劣化を抑制可能な、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る信号処理装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図2】信号処理装置の動作手順を示すフロー図である。
【図3】ガンマ補正回路の構成を示すブロック図である。
【図4】ガンマ補正用の特性曲線の一例を示す図である。
【図5】入出力比の算出方法を示す図である。
【図6】入出力比の修正方法を示す図(1/2)である。
【図7】入出力比の修正方法を示す図(2/2)である。
【図8】信号処理結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
[1.信号処理装置1の構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る信号処理装置1の構成について説明する。図1には、信号処理装置1の主要な構成が示されている。
【0017】
信号処理装置1は、例えば、表示装置、画像記録・再生装置、映像記録・再生装置等、画像信号または映像信号をガンマ補正する装置に適用される。以下では、映像信号Sをガンマ補正する装置を一例として説明する。
【0018】
図1に示すように、信号処理装置1は、入力端子11、分離回路12、ガンマ補正回路13、入出力比算出回路14、色差補正回路15、RGB変換回路16を含んで構成されている。
【0019】
入力端子11は、入力された映像信号Sを分離回路12に供給する。分離回路12は、映像信号Sを入力輝度信号Yと入力色差信号Cb(=B−Y)、Cr(=R−Y)とに分離する。分離回路12は、入力輝度信号Yをガンマ補正回路13と入出力比算出回路14に供給し、入力色差信号Cb、Crを色差補正回路15に供給する。
【0020】
ガンマ補正回路13は、ガンマ補正用の特性曲線を用いて、分離回路12から供給された入力輝度信号Yをガンマ補正する。ガンマ補正回路13は、ガンマ補正後の出力輝度信号Y´を入出力比算出回路14とRGB変換回路16に供給する。
【0021】
入出力比算出回路14は、算出テーブルを用いて、入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´との比率を示す入出力比p(=Y´/Y)を算出する。入出力比算出回路14は、算出結果を色差補正回路15に供給する。
【0022】
色差補正回路15は、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに入出力比pを乗じて、入力色差信号Cb、Crを補正する。色差補正回路15は、色差補正後の出力色差信号Cb´、Cr´をRGB変換回路16に供給する。
【0023】
RGB変換回路16は、出力輝度信号Y´と出力色差信号Cb´、Cr´を供給されて、色信号R、G、Bに変換する。RGB変換回路16は、色信号R、G、Bを表示装置(不図示)や後段の処理装置等に出力する。
【0024】
なお、映像信号Sは、入力輝度信号Yと入力色差信号Cb、Crとして別々に入力されてもよく、この場合、分離回路12を省略することができる。また、信号処理後の映像信号Sは、出力輝度信号Y´と出力色差信号Cb´、Cr´として別々に出力されてもよく、この場合、RGB変換回路16を省略することができる。
【0025】
[2.信号処理装置1の動作]
つぎに、図2から図7を参照して、信号処理装置1の動作について説明する。
【0026】
まず、信号処理装置1の動作手順について説明する。図2には、信号処理装置1の動作手順が示されている。図2に示すように、信号処理装置1では、まず、分離回路12が映像信号Sを入力輝度信号Yと入力色差信号Cb、Crに分離する(ステップS11)。
【0027】
つぎに、ガンマ補正回路13が入力輝度信号Yをガンマ補正して出力輝度信号Y´を生成する(ステップS12)。つぎに、入出力比算出回路14が入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´の比率を輝度信号の入出力比p(=Y´/Y)として算出する(ステップS13)。そして、色差補正回路15が輝度信号の入出力比pを入力色差信号Cb、Crに乗じて出力色差信号Cb´、Cr´を生成する(ステップS14)。
【0028】
さらに、RGB変換回路16が出力輝度信号Y´および出力色差信号Cb´、Cr´を色信号R、G、Bに変換し、後段の装置または後段の処理のために出力する(ステップS15)。
【0029】
つぎに、ガンマ補正回路13の動作について説明する。図3には、ガンマ補正回路13の構成が示されている。図4には、ガンマ補正用の特性曲線の一例が示されている。
【0030】
図3に示すように、ガンマ補正回路13は、比較器21、係数算出回路22、各種演算器23、25、フリップフロップ24、26、29、27、オーバーフローリミッタ28を含んで構成されている。
【0031】
図4に示すように、特性曲線は、輝度信号の入力値x(横軸)と出力値b(縦軸)との関係を自由曲線により表している。輝度信号の入力値xおよび出力値bは、いずれも0〜255の値として表される。特性曲線では、特性曲線が所定数の区間に分割され、各区間での入出力関係が直線近似されている。
【0032】
図4に示す例では、特性曲線が12の区間に分割されている。入力値xは、0〜x1、x1〜x2、…、x11〜255の区間に分割され、出力値bは、入力値xの各区間に対応する0〜b1、b1〜b2、…、b11〜255の区間に分割されている。なお、入力値xの各区間は、任意の幅で分割されてもよく、一定の幅で分割されてもよい。
【0033】
ガンマ補正回路13には、分離回路12から入力輝度信号Yが供給される。入力輝度信号Yは、減算器23と比較器21に供給される。比較器21では、入力輝度信号Yの値(入力輝度値Yとも称する。)が特性曲線の区間と比較されて、入力輝度値Yが属する区間が特定される。区間の特定結果は、係数算出回路22に供給される。
【0034】
係数算出回路22では、特定された区間における入力値xの最小値xmin(例えばx5〜x6の区間では、xmin=x5)が求められる。また、特定された区間における近似曲線の傾きaと、特定された区間における出力値bの最小値bmin(例えばx5〜x6の区間に対応するb5〜b6の区間では、bmin=b5)が求められる。
【0035】
なお、近似曲線の傾きaは、特定された区間における入力値xの範囲と出力値bの範囲との比率(例えばa5=(b6−b5)/(x6−x5))として求められる。最小入力値xminは、減算器23に供給され、近似曲線の傾きaは、乗算器25に供給され、最小出力値bminは、加算器27に供給される。ここで、各区間の最小入力値xmin、最小出力値bminおよび各区間における近似曲線の傾きaは、係数算出データとしてテーブル化されてメモリ(不図示)等に記録されている。
【0036】
減算器23では、入力輝度値Yから最小入力値xminが減算され、減算結果(=Y−xmin)がフリップフロップ24を介して乗算器25に供給される。乗算器25では、減算結果に近似曲線の傾きaが乗算され、乗算結果(=a・(Y−xmin))がフリップフロップ26を介して加算器27に供給される。
【0037】
加算器27では、乗算結果に最小出力値bminが加算され、加算結果(=a・(Y−xmin)+bmin)がオーバーフローリミッタ28およびフリップフロップ29を介して、ガンマ補正回路13の後段に配置された入出力比算出回路14とRGB変換回路16に供給される。
【0038】
これにより、ガンマ補正回路13では、輝度値Yの入出力関係を規定する特性曲線を用いて、入力輝度信号Yをガンマ補正した出力輝度信号Y´が生成される。出力輝度信号Y´は、図4を用いて次式の通り直線補間される。
Y´=a・(Y−xmin)+bmin ・・・(1)
【0039】
例えば、入力輝度信号Y(x5<Y≦x6)の場合、特性曲線上で区間x5〜x6が特定され、最小入力値xmin=x5、最小出力値bmin=b5、近似曲線の傾きa5=(b6−b5)/(x6−x5)が算出される。よって、出力輝度信号Y´は、a5・(Y−x5)+b5となる。
【0040】
ここで、出力輝度信号Y´の算出に用いる係数xmin、bmin、aは、係数算出データとしてテーブル化されているので、除算演算なしに出力輝度信号Y´を算出することができる。よって、除算演算に用いる膨大な逆数値データを格納するテーブルが省略可能となり、回路規模を縮小することができる。
【0041】
つぎに、入出力比算出回路14の動作について説明する。図5には、入出力比pの算出方法が示されている。
【0042】
図5には、輝度信号の入力値Yと、輝度信号の入力値Yと出力値Y´の比率を示す入出力比p(=Y´/Y)との関係が示されている。横軸は、入力輝度値Yが属する区間の入力値x(図4を参照)を示し、縦軸は、横軸の入力値xに対応する入出力比pを示している。
【0043】
2つの入力値xa、xbは、ガンマ補正時に特定された区間における最小入力値xminと最大入力値xmax(例えばx5〜x6の区間では、xmax=x6)に相当する。また、2つの補正率pa、pbの各々は、ガンマ補正時に特定された区間における近似曲線の最小出力値bminを最小入力値xminにより除算した値paと、最大出力値bmax(例えばx5〜x6の区間に対応するb5〜b6の区間では、bmax=b6)を最大入力値xmaxにより除算した値pbに相当する。
【0044】
ここで、各区間の入力値xa、xb、入力値xa、xbに対応する入出力比pa、pbおよび各区間における入出力比pの傾きα(=(pb−pa)/(xb−xa))は、入出力比算出データとしてテーブル化されてメモリ(不図示)等に記録されている。
【0045】
入力輝度信号Yに対応する入出力比pは、図5を用いて次式のとおり直線補間される。
p=α(Y−xa)+pa ・・・(2)
ここで、α=(pb−pa)/(xb−xa)
【0046】
例えば、前述した入力輝度信号Y(x5<Y≦x6)の場合、xa=x5、xb=x6、pa=b5/x5、pb=b6/x6となる。よって、入力輝度信号Yに対応する入出力比pは、(b6/x6−b5/x5)・(Y−x5)+b5/x5となる。
【0047】
ここで、入出力比pの算出に用いる係数xa、xb、pa、pb、αは、入出力比算出データとしてテーブル化されているので、除算演算なしに入出力比pを算出することができる。よって、除算演算に用いる膨大な逆数値データを格納するテーブルが省略可能となり、回路規模を縮小することができる。
【0048】
つぎに、色差補正回路15の動作について説明する。色差補正回路15では、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに、ガンマ補正回路13から供給された入出力比pを乗算して、出力色差信号Cb´、Cr´が生成される。
【0049】
つまり、出力色差信号Cb´、Cr´は、次式のとおり算出される。
Cb´=p・Cb
Cr´=p・Cr ・・・(3)
【0050】
これにより、輝度信号の入出力比pを用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´が得られる。よって、輝度信号のみを補正する場合に比して、画像の劣化を抑制することができる。
【0051】
ところで、色差の大きい画素で入力色差信号Cb、Crに入出力比pを直接乗算すると、色差補正の影響が大きすぎて、画像が劣化してしまう場合がある。これは、色差の大きい画素では、入力色差信号Cb、Crに多くの輝度成分が含まれていることになるので、入力色差信号Cb、Crに入出力比pを直接乗算すると、輝度成分が過剰に補正されてしまうためであると考えられる。
【0052】
このため、図6および図7に示すように、出力色差信号Cb´、Cr´は、入力色差信号Cb、Crの値に応じて修正された入出力比p´を入力色差信号Cb、Crに乗算して生成されてもよい。なお、修正後の入出力比p´は、色差補正に用いられるものであり、ガンマ補正には用いられない。図6および図7には、入出力比pの修正方法が示されている。
【0053】
図6には、色差信号の入力値Cmaxと、入出力比pを修正するための修正係数kとの関係が示されている。横軸は、色差信号の入力値CbまたはCrのうち、色差の絶対値が最大となる値Cmax(=max(|Cb−128|、|Cr−128|)を示し、縦軸は、修正係数k(0.0≦k≦1.0)を示している。なお、色差は、入力値Cb、Crから128を減算した−128〜+127の値により正値または負値として表される。
【0054】
図6に示すように、修正係数kは、色差の絶対値Cmaxが小さいほど大きく設定される。修正係数kは、色差の絶対値Cmax=0でk=1.0となり、色差の絶対値Cmax128(または127)でk=0.0となる。
【0055】
図6に示す関係は、次式のとおり表される。
k=ka・Cmax+kb ・・・(4)
ここで、Ka:図6中の直線の傾き、kb:修正係数kの最大値(=1.0)、
Cmax:max(|Cb−128|、|Cr−128|))
【0056】
図7には、修正係数kと修正後の入出力比p´との関係が示されている。横軸は、図6に従って求められた修正係数k(0.0≦k≦1.0)を示し、縦軸は、修正係数kにより修正された入出力比p´(p≦p´≦1.0)を示している。
【0057】
図7に示すように、修正係数kが大きいほど、修正後の入出力比p´が小さくなる。修正後の入出力比p´は、色差の絶対値Cmax=0でp´=pとなり、色差の絶対値Cmax=128(または127)でp´=1.0となる。図7に示す関係は、次式のとおり表される。
p´=1−(1−p)・k ・・・(5)
【0058】
色差補正回路15では、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに、修正後の入出力比p´を乗算して、出力色差信号Cb´、Cr´が生成される。つまり、出力色差信号Cb´、Cr´は、次式のとおり算出される。
Cb´=p´・Cb
Cr´=p´・Cr ・・・(6)
【0059】
これにより、出力色差信号Cb´、Cr´は、色差の絶対値Cmaxが小さいほど色差補正の影響を大きく受け、色差の絶対値が大きいほど色差補正の影響を受け難くなる。よって、色差の大きい画素では、色差信号Cb、Crの補正が抑制され、過剰な補正による画像の劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、色差補正の影響を調節する場合、修正係数kの上限値または下限値を調整してもよい。つまり、色差補正の影響を小さくする場合には、上限値を小さく設定し、色差補正の影響を大きくする場合には、下限値を大きく設定してもよい。また、色差信号の入力値Cb、Crと修正係数kとの関係(図6に示した関係)を他の直線や曲線により規定してもよい。さらに、修正係数kと修正後の入出力比p´との関係(図7に示した関係)を、他の関係式により規定してもよい。
【0061】
図8には、信号処理装置1による信号処理結果の一例が示されている。以下では、第1の入力信号S1として[Y、Cb、Cr]=[32、150、160]、第2の入力信号S2として[Y、Cb、Cr]=[200、150、160]を信号処理する場合について説明する。なお、信号処理結果の値は、説明を簡略化するために小数点以下の値を省略して示されている。
【0062】
色信号をガンマ補正(第1の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、143、150]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、144、151]が生成される。
【0063】
なお、第1の方法では、入力信号[Y、Cb、Cr]が正規化され、正規化後の入力信号がITU−R BT.709 recommendation(Rec.709)の変換式を用いて色信号に変換される。そして、変換後の色信号がガンマ補正され、ガンマ補正後の色信号が出力信号[Y´、Cb´、Cr´]に変換される。
【0064】
一方、輝度信号のみをガンマ補正(第2の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、150、160]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、150、160]が生成される。
【0065】
他方、入出力比pを用いて色差補正(第3の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、141、147]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、143、150]が生成される。
【0066】
なお、第2および第3の方法では、色信号の変換は行われず、第1の方法と同様のガンマ補正用の特性曲線を用いて輝度信号のみがガンマ補正される。そして、第3の方法では、さらに輝度信号の入出力比pにより色差信号Cb、Crが色差補正される。
【0067】
第1の出力信号S1の輝度値Yは、いずれの方法でも[32]から[19]に補正されている。第1の出力信号S1´の色差値Cb、Crは、第1の方法では[150、160]から[143、150]に補正され、第2の方法では補正されず、第3の方法では[141、147]に補正されている。
【0068】
同様に、第2の出力信号S2の輝度値Yは、いずれの方法でも[200]から[140]に補正されている。第2の出力信号S2´の色差値Cb、Crは、第1の方法では[150、160]から[144、151]に補正され、第2の方法では補正されず、第3の方法では[143、150]に補正されている。
【0069】
よって、入出力比pを用いて色差補正(第3の方法)することで、輝度信号のみをガンマ補正(第2の方法)する場合に比して、色信号をガンマ補正(第1の方法)する場合に近い色差値Cb´、Cr´に補正されていることが確認される。
【0070】
[4.まとめ]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る信号処理装置1および信号処理方法によれば、輝度信号の入出力比p(または修正後の入出力比p´)を用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´を生成することができる。よって、輝度信号のみを補正する場合に比して、画像の劣化を抑制することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上記説明では、ガンマ補正回路13、入出力比算出回路14および色差補正回路1を含むハードウェア構成を用いて、本発明に係る信号処理方法を実施する場合について説明した。しかし、本発明に係る信号処理方法は、ハードウェア構成に代えてソフトウェア構成を用いて、実施されてもよい。この場合、CPU、DSP等のプロセッサ上で実行されるプログラムにより信号処理方法が実施されることになる。
【符号の説明】
【0073】
1 信号処理装置
11 入力端子
12 分離回路
13 ガンマ補正回路
14 入出力比算出回路
15 色差補正回路
16 RGB変換回路
17R、17G、17B A/D変換回路
S 映像信号
Y 入力輝度信号
Y´ 出力輝度信号
Cb、Cr 入力色差信号
Cb´、Cr´ 出力色差信号
p 輝度信号の入出力比
p´ 修正後の入出力比
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル入出力機器では、一般に、画像の明るさを調節するためにガンマ補正が行われる。ガンマ補正では、通常、画素の色を表すRGB3原色の各色信号が補正されるが、処理効率の観点から画素の明るさを表す輝度信号のみが補正されることがある。例えば下記特許文献1には、輝度信号のみを補正する信号処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−327496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガンマ補正では、画像中の黒色を際立たせること等を目的に、自由曲線として表される特性曲線が用いられる場合がある。ここで、各色信号を補正すると、相対的に高い処理負荷が要求されるが、黒色を際立たせた画像を適切に表示することができる。しかし、輝度信号のみを補正すると、処理負荷を抑制できるが、特に画像中の肌色が赤みを帯びて表示される等、画像が劣化してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、ガンマ補正された画像の劣化を抑制可能な、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成するガンマ補正回路と、入力輝度信号と出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出する入出力比算出回路と、輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成する色差補正回路とを備える信号処理装置が提供される。
【0007】
色差補正回路は、入力色差信号に応じて輝度信号の入出力比を修正し、修正後の輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成してもよい。
【0008】
輝度信号の入出力比は、入力色差信号により表される色差値の絶対値が小さいほど色差補正の影響を大きく受けるように修正されてもよい。
【0009】
入出力比算出回路は、輝度信号の入力値と、輝度信号の入力値と出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに輝度信号の入出力比を算出してもよい。
【0010】
ガンマ補正回路は、輝度信号の入力値と、輝度信号の出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに輝度信号の出力値を算出してもよい。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、入力輝度信号と出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成することを含む信号処理方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、上記信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。ここで、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体を用いて提供されてもよく、通信手段等を介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、ガンマ補正された画像の劣化を抑制可能な、信号処理装置、信号処理方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る信号処理装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図2】信号処理装置の動作手順を示すフロー図である。
【図3】ガンマ補正回路の構成を示すブロック図である。
【図4】ガンマ補正用の特性曲線の一例を示す図である。
【図5】入出力比の算出方法を示す図である。
【図6】入出力比の修正方法を示す図(1/2)である。
【図7】入出力比の修正方法を示す図(2/2)である。
【図8】信号処理結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
[1.信号処理装置1の構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る信号処理装置1の構成について説明する。図1には、信号処理装置1の主要な構成が示されている。
【0017】
信号処理装置1は、例えば、表示装置、画像記録・再生装置、映像記録・再生装置等、画像信号または映像信号をガンマ補正する装置に適用される。以下では、映像信号Sをガンマ補正する装置を一例として説明する。
【0018】
図1に示すように、信号処理装置1は、入力端子11、分離回路12、ガンマ補正回路13、入出力比算出回路14、色差補正回路15、RGB変換回路16を含んで構成されている。
【0019】
入力端子11は、入力された映像信号Sを分離回路12に供給する。分離回路12は、映像信号Sを入力輝度信号Yと入力色差信号Cb(=B−Y)、Cr(=R−Y)とに分離する。分離回路12は、入力輝度信号Yをガンマ補正回路13と入出力比算出回路14に供給し、入力色差信号Cb、Crを色差補正回路15に供給する。
【0020】
ガンマ補正回路13は、ガンマ補正用の特性曲線を用いて、分離回路12から供給された入力輝度信号Yをガンマ補正する。ガンマ補正回路13は、ガンマ補正後の出力輝度信号Y´を入出力比算出回路14とRGB変換回路16に供給する。
【0021】
入出力比算出回路14は、算出テーブルを用いて、入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´との比率を示す入出力比p(=Y´/Y)を算出する。入出力比算出回路14は、算出結果を色差補正回路15に供給する。
【0022】
色差補正回路15は、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに入出力比pを乗じて、入力色差信号Cb、Crを補正する。色差補正回路15は、色差補正後の出力色差信号Cb´、Cr´をRGB変換回路16に供給する。
【0023】
RGB変換回路16は、出力輝度信号Y´と出力色差信号Cb´、Cr´を供給されて、色信号R、G、Bに変換する。RGB変換回路16は、色信号R、G、Bを表示装置(不図示)や後段の処理装置等に出力する。
【0024】
なお、映像信号Sは、入力輝度信号Yと入力色差信号Cb、Crとして別々に入力されてもよく、この場合、分離回路12を省略することができる。また、信号処理後の映像信号Sは、出力輝度信号Y´と出力色差信号Cb´、Cr´として別々に出力されてもよく、この場合、RGB変換回路16を省略することができる。
【0025】
[2.信号処理装置1の動作]
つぎに、図2から図7を参照して、信号処理装置1の動作について説明する。
【0026】
まず、信号処理装置1の動作手順について説明する。図2には、信号処理装置1の動作手順が示されている。図2に示すように、信号処理装置1では、まず、分離回路12が映像信号Sを入力輝度信号Yと入力色差信号Cb、Crに分離する(ステップS11)。
【0027】
つぎに、ガンマ補正回路13が入力輝度信号Yをガンマ補正して出力輝度信号Y´を生成する(ステップS12)。つぎに、入出力比算出回路14が入力輝度信号Yと出力輝度信号Y´の比率を輝度信号の入出力比p(=Y´/Y)として算出する(ステップS13)。そして、色差補正回路15が輝度信号の入出力比pを入力色差信号Cb、Crに乗じて出力色差信号Cb´、Cr´を生成する(ステップS14)。
【0028】
さらに、RGB変換回路16が出力輝度信号Y´および出力色差信号Cb´、Cr´を色信号R、G、Bに変換し、後段の装置または後段の処理のために出力する(ステップS15)。
【0029】
つぎに、ガンマ補正回路13の動作について説明する。図3には、ガンマ補正回路13の構成が示されている。図4には、ガンマ補正用の特性曲線の一例が示されている。
【0030】
図3に示すように、ガンマ補正回路13は、比較器21、係数算出回路22、各種演算器23、25、フリップフロップ24、26、29、27、オーバーフローリミッタ28を含んで構成されている。
【0031】
図4に示すように、特性曲線は、輝度信号の入力値x(横軸)と出力値b(縦軸)との関係を自由曲線により表している。輝度信号の入力値xおよび出力値bは、いずれも0〜255の値として表される。特性曲線では、特性曲線が所定数の区間に分割され、各区間での入出力関係が直線近似されている。
【0032】
図4に示す例では、特性曲線が12の区間に分割されている。入力値xは、0〜x1、x1〜x2、…、x11〜255の区間に分割され、出力値bは、入力値xの各区間に対応する0〜b1、b1〜b2、…、b11〜255の区間に分割されている。なお、入力値xの各区間は、任意の幅で分割されてもよく、一定の幅で分割されてもよい。
【0033】
ガンマ補正回路13には、分離回路12から入力輝度信号Yが供給される。入力輝度信号Yは、減算器23と比較器21に供給される。比較器21では、入力輝度信号Yの値(入力輝度値Yとも称する。)が特性曲線の区間と比較されて、入力輝度値Yが属する区間が特定される。区間の特定結果は、係数算出回路22に供給される。
【0034】
係数算出回路22では、特定された区間における入力値xの最小値xmin(例えばx5〜x6の区間では、xmin=x5)が求められる。また、特定された区間における近似曲線の傾きaと、特定された区間における出力値bの最小値bmin(例えばx5〜x6の区間に対応するb5〜b6の区間では、bmin=b5)が求められる。
【0035】
なお、近似曲線の傾きaは、特定された区間における入力値xの範囲と出力値bの範囲との比率(例えばa5=(b6−b5)/(x6−x5))として求められる。最小入力値xminは、減算器23に供給され、近似曲線の傾きaは、乗算器25に供給され、最小出力値bminは、加算器27に供給される。ここで、各区間の最小入力値xmin、最小出力値bminおよび各区間における近似曲線の傾きaは、係数算出データとしてテーブル化されてメモリ(不図示)等に記録されている。
【0036】
減算器23では、入力輝度値Yから最小入力値xminが減算され、減算結果(=Y−xmin)がフリップフロップ24を介して乗算器25に供給される。乗算器25では、減算結果に近似曲線の傾きaが乗算され、乗算結果(=a・(Y−xmin))がフリップフロップ26を介して加算器27に供給される。
【0037】
加算器27では、乗算結果に最小出力値bminが加算され、加算結果(=a・(Y−xmin)+bmin)がオーバーフローリミッタ28およびフリップフロップ29を介して、ガンマ補正回路13の後段に配置された入出力比算出回路14とRGB変換回路16に供給される。
【0038】
これにより、ガンマ補正回路13では、輝度値Yの入出力関係を規定する特性曲線を用いて、入力輝度信号Yをガンマ補正した出力輝度信号Y´が生成される。出力輝度信号Y´は、図4を用いて次式の通り直線補間される。
Y´=a・(Y−xmin)+bmin ・・・(1)
【0039】
例えば、入力輝度信号Y(x5<Y≦x6)の場合、特性曲線上で区間x5〜x6が特定され、最小入力値xmin=x5、最小出力値bmin=b5、近似曲線の傾きa5=(b6−b5)/(x6−x5)が算出される。よって、出力輝度信号Y´は、a5・(Y−x5)+b5となる。
【0040】
ここで、出力輝度信号Y´の算出に用いる係数xmin、bmin、aは、係数算出データとしてテーブル化されているので、除算演算なしに出力輝度信号Y´を算出することができる。よって、除算演算に用いる膨大な逆数値データを格納するテーブルが省略可能となり、回路規模を縮小することができる。
【0041】
つぎに、入出力比算出回路14の動作について説明する。図5には、入出力比pの算出方法が示されている。
【0042】
図5には、輝度信号の入力値Yと、輝度信号の入力値Yと出力値Y´の比率を示す入出力比p(=Y´/Y)との関係が示されている。横軸は、入力輝度値Yが属する区間の入力値x(図4を参照)を示し、縦軸は、横軸の入力値xに対応する入出力比pを示している。
【0043】
2つの入力値xa、xbは、ガンマ補正時に特定された区間における最小入力値xminと最大入力値xmax(例えばx5〜x6の区間では、xmax=x6)に相当する。また、2つの補正率pa、pbの各々は、ガンマ補正時に特定された区間における近似曲線の最小出力値bminを最小入力値xminにより除算した値paと、最大出力値bmax(例えばx5〜x6の区間に対応するb5〜b6の区間では、bmax=b6)を最大入力値xmaxにより除算した値pbに相当する。
【0044】
ここで、各区間の入力値xa、xb、入力値xa、xbに対応する入出力比pa、pbおよび各区間における入出力比pの傾きα(=(pb−pa)/(xb−xa))は、入出力比算出データとしてテーブル化されてメモリ(不図示)等に記録されている。
【0045】
入力輝度信号Yに対応する入出力比pは、図5を用いて次式のとおり直線補間される。
p=α(Y−xa)+pa ・・・(2)
ここで、α=(pb−pa)/(xb−xa)
【0046】
例えば、前述した入力輝度信号Y(x5<Y≦x6)の場合、xa=x5、xb=x6、pa=b5/x5、pb=b6/x6となる。よって、入力輝度信号Yに対応する入出力比pは、(b6/x6−b5/x5)・(Y−x5)+b5/x5となる。
【0047】
ここで、入出力比pの算出に用いる係数xa、xb、pa、pb、αは、入出力比算出データとしてテーブル化されているので、除算演算なしに入出力比pを算出することができる。よって、除算演算に用いる膨大な逆数値データを格納するテーブルが省略可能となり、回路規模を縮小することができる。
【0048】
つぎに、色差補正回路15の動作について説明する。色差補正回路15では、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに、ガンマ補正回路13から供給された入出力比pを乗算して、出力色差信号Cb´、Cr´が生成される。
【0049】
つまり、出力色差信号Cb´、Cr´は、次式のとおり算出される。
Cb´=p・Cb
Cr´=p・Cr ・・・(3)
【0050】
これにより、輝度信号の入出力比pを用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´が得られる。よって、輝度信号のみを補正する場合に比して、画像の劣化を抑制することができる。
【0051】
ところで、色差の大きい画素で入力色差信号Cb、Crに入出力比pを直接乗算すると、色差補正の影響が大きすぎて、画像が劣化してしまう場合がある。これは、色差の大きい画素では、入力色差信号Cb、Crに多くの輝度成分が含まれていることになるので、入力色差信号Cb、Crに入出力比pを直接乗算すると、輝度成分が過剰に補正されてしまうためであると考えられる。
【0052】
このため、図6および図7に示すように、出力色差信号Cb´、Cr´は、入力色差信号Cb、Crの値に応じて修正された入出力比p´を入力色差信号Cb、Crに乗算して生成されてもよい。なお、修正後の入出力比p´は、色差補正に用いられるものであり、ガンマ補正には用いられない。図6および図7には、入出力比pの修正方法が示されている。
【0053】
図6には、色差信号の入力値Cmaxと、入出力比pを修正するための修正係数kとの関係が示されている。横軸は、色差信号の入力値CbまたはCrのうち、色差の絶対値が最大となる値Cmax(=max(|Cb−128|、|Cr−128|)を示し、縦軸は、修正係数k(0.0≦k≦1.0)を示している。なお、色差は、入力値Cb、Crから128を減算した−128〜+127の値により正値または負値として表される。
【0054】
図6に示すように、修正係数kは、色差の絶対値Cmaxが小さいほど大きく設定される。修正係数kは、色差の絶対値Cmax=0でk=1.0となり、色差の絶対値Cmax128(または127)でk=0.0となる。
【0055】
図6に示す関係は、次式のとおり表される。
k=ka・Cmax+kb ・・・(4)
ここで、Ka:図6中の直線の傾き、kb:修正係数kの最大値(=1.0)、
Cmax:max(|Cb−128|、|Cr−128|))
【0056】
図7には、修正係数kと修正後の入出力比p´との関係が示されている。横軸は、図6に従って求められた修正係数k(0.0≦k≦1.0)を示し、縦軸は、修正係数kにより修正された入出力比p´(p≦p´≦1.0)を示している。
【0057】
図7に示すように、修正係数kが大きいほど、修正後の入出力比p´が小さくなる。修正後の入出力比p´は、色差の絶対値Cmax=0でp´=pとなり、色差の絶対値Cmax=128(または127)でp´=1.0となる。図7に示す関係は、次式のとおり表される。
p´=1−(1−p)・k ・・・(5)
【0058】
色差補正回路15では、分離回路12から供給された入力色差信号Cb、Crに、修正後の入出力比p´を乗算して、出力色差信号Cb´、Cr´が生成される。つまり、出力色差信号Cb´、Cr´は、次式のとおり算出される。
Cb´=p´・Cb
Cr´=p´・Cr ・・・(6)
【0059】
これにより、出力色差信号Cb´、Cr´は、色差の絶対値Cmaxが小さいほど色差補正の影響を大きく受け、色差の絶対値が大きいほど色差補正の影響を受け難くなる。よって、色差の大きい画素では、色差信号Cb、Crの補正が抑制され、過剰な補正による画像の劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、色差補正の影響を調節する場合、修正係数kの上限値または下限値を調整してもよい。つまり、色差補正の影響を小さくする場合には、上限値を小さく設定し、色差補正の影響を大きくする場合には、下限値を大きく設定してもよい。また、色差信号の入力値Cb、Crと修正係数kとの関係(図6に示した関係)を他の直線や曲線により規定してもよい。さらに、修正係数kと修正後の入出力比p´との関係(図7に示した関係)を、他の関係式により規定してもよい。
【0061】
図8には、信号処理装置1による信号処理結果の一例が示されている。以下では、第1の入力信号S1として[Y、Cb、Cr]=[32、150、160]、第2の入力信号S2として[Y、Cb、Cr]=[200、150、160]を信号処理する場合について説明する。なお、信号処理結果の値は、説明を簡略化するために小数点以下の値を省略して示されている。
【0062】
色信号をガンマ補正(第1の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、143、150]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、144、151]が生成される。
【0063】
なお、第1の方法では、入力信号[Y、Cb、Cr]が正規化され、正規化後の入力信号がITU−R BT.709 recommendation(Rec.709)の変換式を用いて色信号に変換される。そして、変換後の色信号がガンマ補正され、ガンマ補正後の色信号が出力信号[Y´、Cb´、Cr´]に変換される。
【0064】
一方、輝度信号のみをガンマ補正(第2の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、150、160]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、150、160]が生成される。
【0065】
他方、入出力比pを用いて色差補正(第3の方法)すると、第1の入力信号S1から第1の出力信号S1´として[Y´、Cb´、Cr´]=[19、141、147]が生成され、第2の入力信号S2から第2の出力信号S2´として[Y´、Cb´、Cr´]=[140、143、150]が生成される。
【0066】
なお、第2および第3の方法では、色信号の変換は行われず、第1の方法と同様のガンマ補正用の特性曲線を用いて輝度信号のみがガンマ補正される。そして、第3の方法では、さらに輝度信号の入出力比pにより色差信号Cb、Crが色差補正される。
【0067】
第1の出力信号S1の輝度値Yは、いずれの方法でも[32]から[19]に補正されている。第1の出力信号S1´の色差値Cb、Crは、第1の方法では[150、160]から[143、150]に補正され、第2の方法では補正されず、第3の方法では[141、147]に補正されている。
【0068】
同様に、第2の出力信号S2の輝度値Yは、いずれの方法でも[200]から[140]に補正されている。第2の出力信号S2´の色差値Cb、Crは、第1の方法では[150、160]から[144、151]に補正され、第2の方法では補正されず、第3の方法では[143、150]に補正されている。
【0069】
よって、入出力比pを用いて色差補正(第3の方法)することで、輝度信号のみをガンマ補正(第2の方法)する場合に比して、色信号をガンマ補正(第1の方法)する場合に近い色差値Cb´、Cr´に補正されていることが確認される。
【0070】
[4.まとめ]
以上説明したように、本発明の実施形態に係る信号処理装置1および信号処理方法によれば、輝度信号の入出力比p(または修正後の入出力比p´)を用いて入力色差信号Cb、Crを補正することで、ガンマ補正の影響を考慮して色差補正された出力色差信号Cb´、Cr´を生成することができる。よって、輝度信号のみを補正する場合に比して、画像の劣化を抑制することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上記説明では、ガンマ補正回路13、入出力比算出回路14および色差補正回路1を含むハードウェア構成を用いて、本発明に係る信号処理方法を実施する場合について説明した。しかし、本発明に係る信号処理方法は、ハードウェア構成に代えてソフトウェア構成を用いて、実施されてもよい。この場合、CPU、DSP等のプロセッサ上で実行されるプログラムにより信号処理方法が実施されることになる。
【符号の説明】
【0073】
1 信号処理装置
11 入力端子
12 分離回路
13 ガンマ補正回路
14 入出力比算出回路
15 色差補正回路
16 RGB変換回路
17R、17G、17B A/D変換回路
S 映像信号
Y 入力輝度信号
Y´ 出力輝度信号
Cb、Cr 入力色差信号
Cb´、Cr´ 出力色差信号
p 輝度信号の入出力比
p´ 修正後の入出力比
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成するガンマ補正回路と、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出する入出力比算出回路と、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成する色差補正回路と
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記色差補正回路は、前記入力色差信号に応じて前記輝度信号の入出力比を修正し、前記修正後の輝度信号の入出力比を前記入力色差信号に乗じて前記出力色差信号を生成する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記輝度信号の入出力比は、前記入力色差信号により表される色差値の絶対値が小さいほど色差補正の影響を大きく受けるように修正される、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記入出力比算出回路は、前記輝度信号の入力値と、輝度信号の入力値と出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに前記輝度信号の入出力比を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記ガンマ補正回路は、前記輝度信号の入力値と、輝度信号の出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに前記輝度信号の出力値を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成すること
を含む信号処理方法。
【請求項7】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成すること
を含む信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成するガンマ補正回路と、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出する入出力比算出回路と、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成する色差補正回路と
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記色差補正回路は、前記入力色差信号に応じて前記輝度信号の入出力比を修正し、前記修正後の輝度信号の入出力比を前記入力色差信号に乗じて前記出力色差信号を生成する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記輝度信号の入出力比は、前記入力色差信号により表される色差値の絶対値が小さいほど色差補正の影響を大きく受けるように修正される、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記入出力比算出回路は、前記輝度信号の入力値と、輝度信号の入力値と出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに前記輝度信号の入出力比を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記ガンマ補正回路は、前記輝度信号の入力値と、輝度信号の出力値の比率との関係を規定する算出テーブルを用いて、除算演算なしに前記輝度信号の出力値を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成すること
を含む信号処理方法。
【請求項7】
入力輝度信号をガンマ補正して出力輝度信号を生成し、
前記入力輝度信号と前記出力輝度信号の比率を輝度信号の入出力比として算出し、
前記輝度信号の入出力比を入力色差信号に乗じて出力色差信号を生成すること
を含む信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−49627(P2012−49627A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187372(P2010−187372)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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