説明

信号処理装置及び信号処理方法及びプログラム

【課題】地震計に備わっている機能にかかわらず、地震計からの正常でない信号を確実に検出する構成を実現する。
【解決手段】加速度信号パターン記憶部103は、地震が発生していない平常時に地震計200から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして記憶し、地震発生時に地震計200から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして記憶する。加速度信号受信部101は、地震計200から、地震計200で計測された加速度が示される加速度信号を受信する。加速度信号判定部102は、地震計200からの加速度信号を、平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンと比較し、地震計200からの加速度信号が平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、地震計200からの加速度信号が正常でないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震計からの加速度信号を処理する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1では、地震警報監視制御処理装置が、各地震計から震度警報を受信した際に、各地震計が故障中か否かを判定し、故障中であれば故障中の地震計からの震度警報を破棄する技術が示されている。
より具体的には、例えば、各地震計が、震度警報とともに故障信号を地震警報監視制御処理装置に送信し、地震警報監視制御処理装置が、地震計から受信した故障信号に基づいて地震計に故障が発生しているか否かを判定する方式が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−337655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、特許文献1の技術では、地震警報監視制御処理装置が、地震計から受信した故障信号に基づいて地震計に故障が発生しているか否かを判定している。
このため、地震計に、自身に故障が発生しているか否かを判断する機能、故障が発生していると判断した際に故障信号を送信する機能が備わっている必要がある。
しかしながら、地震警報監視制御処理装置が、必ずしも、このような機能が備わっている地震計と接続されているとは限らない。
地震警報監視制御処理装置が、このような機能のない地震計と接続されている場合には、故障信号を受信しないので、正常に稼動していない地震計から送信された不正確な震度警報を排除することができない。
また、地震警報監視制御処理装置が、上記の機能が備わっている地震計と接続されており、また、地震計が正常に稼動している場合でも、伝送途中でノイズ等により震度警報の信号値に乱れが生じ、実際の状況を反映しない不正確な震度警報が地震警報監視制御処理装置に到達する場合がある。
この場合に、故障信号から地震計が正常に動作していると確認できれば、このような不正確な震度警報を排除することができない。
このため、例えば、警告を発すべき状況でないにもかかわらず不正確な震度警報に基づいて外部機器に警報が発せられる、あるいは警告を発すべき状況にもかかわらず警告が発せられない、あるいは警告を発すべき状況に警告が発せられたが警告の内容が不正確であるという事態が生じ、外部機器において適正な処置がとれないおそれがある。
【0005】
本願は、これらの点に鑑み、地震計に備わっている機能にかかわらず、地震計からの正常でない信号を確実に検出する構成を実現することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る信号処理装置は、
地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして記憶し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして記憶する加速度信号パターン記憶部と、
管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信部と、
前記加速度信号受信部により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン記憶部に記憶されている前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定部とを有することを特徴とする。
【0007】
前記加速度信号パターン記憶部は、
前記地震時加速度信号パターンとして、地震発生時に地震計から送信される東西方向の加速度信号のパターン、南北方向の加速度信号のパターン及び上下方向の加速度信号のパターンを記憶し、前記平常時加速度信号パターンとして、東西方向、南北方向及び上下方向に共通のパターンを記憶し、
前記加速度信号受信部は、
前記管理対象地震計から、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のうちの少なくとも1つが、前記平常時加速度信号パターンに合致せず、更に、前記地震時加速度信号パターンの該当する方向の加速度信号のパターンに合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定することを特徴とする。
【0008】
前記信号処理装置は、更に、
地震計からの加速度信号を前記加速度信号判定部から入力し、入力した加速度信号に基づいて地震警報を生成する地震警報生成部を有し、
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定した場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に前記管理対象地震計からの加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【0009】
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの加速度信号が前記地震時加速度信号パターンに合致すると判定した後に前記加速度信号受信部により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号に対しては、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンとの比較を行わずに、前記地震警報生成部に出力することを特徴とする。
【0010】
前記加速度信号受信部は、
複数の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較して、各管理対象地震計からの加速度信号が正常であるか否かを判定し、正常でない加速度信号がある場合に、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【0011】
前記加速度信号受信部は、
3つ以上の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較した結果、特定の管理対象地震計からの加速度信号が、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれかに合致するものの、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない場合に、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない加速度信号を正常でないと判定し、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る信号処理方法は、
コンピュータが、所定の記憶装置から、地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして読み出し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして読み出す加速度信号パターン読出し処理と、
前記コンピュータが、管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信処理と、
前記コンピュータが、前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン読出し処理により読み出された前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定処理とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプログラムは、
所定の記憶装置から、地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして読み出し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして読み出す加速度信号パターン読出し処理と、
管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信処理と、
前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン読出し処理により読み出された前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
前記加速度信号パターン読出し処理において、
前記コンピュータに、
前記地震時加速度信号パターンとして、地震発生時に地震計から送信される東西方向の加速度信号のパターン、南北方向の加速度信号のパターン及び上下方向の加速度信号のパターンを読み出させ、前記平常時加速度信号パターンとして、東西方向、南北方向及び上下方向に共通のパターンを読み出させ、
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
前記管理対象地震計から、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のうちの少なくとも1つが、前記平常時加速度信号パターンに合致せず、更に、前記地震時加速度信号パターンの該当する方向の加速度信号のパターンに合致しない場合に、前記コンピュータに、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定させることを特徴とする。
【0015】
前記プログラムは、更に、
地震計からの加速度信号に基づいて地震警報を生成する地震警報生成処理を前記コンピュータに実行させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定された場合に、前記コンピュータに、前記管理対象地震計からの加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に前記管理対象地震計からの加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【0016】
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの加速度信号が前記地震時加速度信号パターンに合致すると判定された後に前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号に対しては、前記コンピュータに、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンとの比較を行わずに、前記地震警報生成処理に出力させることを特徴とする。
【0017】
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
複数の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記コンピュータに、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較して、各管理対象地震計からの加速度信号が正常であるか否かを判定させ、正常でない加速度信号がある場合に、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【0018】
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
3つ以上の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記コンピュータに、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較した結果、特定の管理対象地震計からの加速度信号が、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれかに合致するものの、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない場合に、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない加速度信号を正常でないと判定させ、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、信号処理装置は、管理対象地震計からの加速度信号が平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する。
このため、管理対象地震計に備わっている機能にかかわらず、管理対象地震計から送信された正常でない加速度信号を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る信号処理装置及び周辺装置の構成例を示す図。
【図2】実施の形態1に係る初期微動と主要動の例を示す図。
【図3】実施の形態1に係る平常時加速度信号パターンの例を示す図。
【図4】実施の形態1に係る信号処理装置の加速度信号受信処理の例を示すフローチャート図。
【図5】実施の形態1に係る信号処理装置の加速度信号判定処理の例を示すフローチャート図。
【図6】実施の形態2に係る信号処理装置の加速度信号判定処理の例を示すフローチャート図。
【図7】実施の形態1に係る信号処理装置のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る信号処理装置100と周辺装置の構成例を示す。
信号処理装置100は、複数の管理対象地震計200と複数の外部装置300に接続されている。
管理対象地震計200a、管理対象地震計200b、管理対象地震計200cは、信号処理装置100が管理の対象とする地震計である。
管理対象地震計200a、管理対象地震計200b、管理対象地震計200cは、以降、地震計200a、地震計200b、地震計200cと表記する。
また、地震計200a、地震計200b、地震計200cを区別する必要がない場合は、これらを総称して地震計200と表記する。
信号処理装置100と地震計200との間、信号処理装置100と外部装置300との間は、所定の通信ネットワークで接続されていてもよい。
また、信号処理装置100と地震計200との間、信号処理装置100と外部装置300との間に、中継サーバ装置等が配置されていてもよい。
【0022】
信号処理装置100は、地震計200から、地震計200で計測された加速度信号を受信し、受信した加速度信号に基づき地震が発生しているか否かを判断し、地震が発生している場合は、震源地や地震の規模等を算出し、地震の影響を受ける可能性のある外部装置300に地震警報を送信する。
地震警報は、例えば、震源地、地震の規模等の情報を含み、また、後述するように、外部装置300が鉄道事業者の端末装置であれば、鉄道車両を緊急停車させるべき路線区間、鉄道車両を減速走行させるべき路線区間等を通知するようにしてもよい。
また、信号処理装置100は、地震計200から受信した加速度信号を解析し、受信した加速度信号が所定のパターンに合致しない場合には、受信した加速度信号は正常ではないと判定し、正常ではないと判定した加速度信号は、地震判定(震源地、地震規模の判定等)及び地震警報の生成には反映させないようにする。
【0023】
信号処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、磁気ディスク装置、通信インタフェース、表示ディスプレイ等を備える一般的なコンピュータで構成することができる。
この場合、加速度信号パターン記憶部103を磁気ディスク装置で、加速度信号受信部101及び地震警報送信部105を通信インタフェースで、表示部106を表示ディスプレイで、加速度信号判定部102及び地震警報生成部104をCPUで実行されるコンピュータプログラムとして実現することができる。
なお、信号処理装置100の内部構成の詳細については後述する。
【0024】
地震計200は、例えば、地面の動きを測定する加速度センサと、その加速度センサからの検出信号をディジタル信号に変換するAD(アナログーデジタル)変換器と、そのディジタル信号(加速度信号)を信号処理装置100に対して送信する送信手段とを備える。
なお、ディジタル伝送しない場合は、AD変換器を用いなくてもよい。
加速度センサは、東西方向、南北方向、上下方向の三方向において測定を行う。
このため、地震計200からは、東西方向、南北方向、上下方向の三方向の加速度信号が送信される。
また、地震計200は、例えば、所定の周波数(例えば、100MHz程度)で測定を行い、測定した加速度を通知する加速度信号を一定の周期(例えば、1秒に1回)で信号処理装置100に送信する。
つまり、地震計200が1秒に1回の割合で加速度信号を送信する場合には、加速度信号には地震計における1秒分の計測結果が含まれている。
【0025】
外部装置300は、例えば、鉄道事業者の端末装置である。
外部装置300が信号処理装置100からの地震警報を受信すると、鉄道事業者は、地震警報に基づいて、鉄道車両の走行制御を行う。
鉄道車両の走行制御とは、所定の路線区間内の鉄道車両を緊急停止させる制御や鉄道車両を減速運転させる制御、鉄道車両を安全なエリアに引き返させる制御等である。
【0026】
次に、信号処理装置100の内部構成例について説明する。
【0027】
加速度信号受信部101は、地震計200から、地震計200で計測された加速度が示される加速度信号を受信する。
【0028】
加速度信号判定部102は、地震計200からの加速度信号を、後述する加速度信号パターン記憶部103に記憶されている平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンと比較し、地震計200からの加速度信号が平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、地震計200からの加速度信号が正常でないと判定する。
前述したように、地震計200からは、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号を受信する。
このため、加速度信号パターン記憶部103には、これら三方向の各々に対応する地震時加速度信号パターンが記憶されている。
平常時加速度信号パターンとしては、三方向に共通する1つのパターンが記憶されている。
そして、加速度信号判定部102は、これら三方向の加速度信号のうち少なくとも1つが、平常時加速度信号パターンに合致せず、更に、地震時加速度信号パターンの該当する方向の加速度信号のパターンに合致しない場合に、地震計200からの加速度信号が正常でないと判定する。
そして、加速度信号判定部102は、正常であると判定した加速度信号は、後述する地震警報生成部104に出力し、正常でないと判定した加速度信号は地震警報生成部104に出力しない。
【0029】
加速度信号パターン記憶部103は、平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンを記憶する。
平常時加速度信号パターンは、地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンである。
地震時加速度信号パターンは、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンである。
前述したように、加速度信号パターン記憶部103には、東西方向、南北方向及び上下方向に共通の1つの平常時加速度信号パターン、東西方向、南北方向及び上下方向の3つの地震時加速度信号パターンが存在する。
なお、平常時加速度信号パターンは平常時パターンとも表記し、地震時加速度信号パターンは地震時パターンとも表記する。
【0030】
図2は、地震発生時に観測される加速度信号の一例を示す。
南北成分、東西成分、上下成分の各々において「P」と記されている部分が、P(Primary)波の開始を示しており、「S」と記されている部分が、S(Secondary)波の開始を示している。
P波の開始からS波の開始までが初期微動であり、S波の開始以降が主要動である。
加速度信号パターン記憶部103は、図2に例示される初期微動の範囲の加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして記憶している。
地震時加速度信号パターンのセット(東西方向、南北方向、上下方向のパターンのセット)は複数セット存在してもよい。
また、図3は、加速度信号パターン記憶部103が記憶している平常時加速度信号パターンの例である。
平常時加速度信号パターンは、地震が発生していない平常時の加速度信号のパターンなので、加速度値はゼロ付近で維持される。
【0031】
図1に戻り、地震警報生成部104は、加速度信号判定部102から入力した加速度信号に基づき、地震警報を生成する。
地震警報生成部104は、例えば、地震の震源地や地震の規模(マグニチュード、震度等)を算出し、算出した震源地や地震の規模を通知する地震警報を生成する。
震源地や地震規模の算出には、既存のアルゴリズムを用いることができる。
また、外部装置300が鉄道事業者の端末装置であれば、地震警報生成部104は、鉄道車両を緊急停車させるべき路線区間、鉄道車両を減速走行させるべき路線区間等を算出し、算出した路線区間を通知する地震警報を生成するようにしてもよい。
これらの走行制御の対象となる路線区間の算出にも、既存のアルゴリズムを用いることができる。
【0032】
地震警報送信部105は、地震警報生成部104により生成された地震警報を外部装置300に送信する。
【0033】
表示部106は、加速度信号判定部102により正常でないと判定された加速度信号の送信元の地震計200の識別情報を表示する。
【0034】
次に、本実施の形態に係る信号処理装置100の動作例を説明する。
【0035】
図4は、加速度信号受信部101が行う加速度信号受信処理の例を示す。
【0036】
加速度信号受信部101は、所定の周期で地震計200から送信された加速度信号を受信する(S401)。
次に、加速度信号受信部101は、S401で受信した加速度信号が、破棄対象の地震計200からの加速度信号であるか否かを判断する(S402)。
破棄対象の地震計200とは、後述する図5のS510において加速度信号判定部102から通知された地震計200である。
加速度信号には、送信元の地震計200の識別情報がヘッダとして含まれているので、加速度信号受信部101は加速度信号の送信元の地震計200を判別することができる。
S401で受信した加速度信号が破棄対象の地震計200からの加速度信号でなければ(S402でNO)、加速度信号受信部101は受信した加速度信号を加速度信号判定部102に出力する(S403)。
一方、S401で受信した加速度信号が破棄対象の地震計200からの加速度信号であれば(S402でYES)、加速度信号受信部101は受信した加速度信号を破棄する(S404)。
なお、S404では、受信した加速度信号を破棄することにしているが、必ずしも破棄しなくてもよく、例えば、後の解析のために、受信した加速度信号をログファイルに残しておいてもよい。
【0037】
図5は、加速度信号判定部102が行う加速度信号判定処理の例を示す。
図5の加速度信号判定処理は、地震計200ごとに個別に行う。
つまり、地震計200aからの加速度信号、地震計200bからの加速度信号、地震計200cからの加速度信号の各々に対して個別に図5の処理を行う。
以下では、地震計200aからの加速度信号を加速度信号受信部101から入力した場合を例にとりながら説明する。
なお、加速度信号判定部102は、図5の処理に先立って、加速度信号パターン記憶部103から平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンを読み出し(加速度信号パターン読出し処理)、ワークメモリやレジスタ等に格納しておく。
【0038】
加速度信号判定部102は、加速度信号受信部101から地震計200aからの加速度信号を入力する(S501)。
次に、加速度信号判定部102は、地震計200aについての地震発生フラグがONであるか否かを判断する(S502)。
地震発生フラグがONである場合は、加速度信号判定部102が既に地震計200aの設置地点で地震が発生していることを検知していることを意味する。
【0039】
地震フラグがONの場合(S502でYES)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号を地震警報生成部104に出力する(S506)。
つまり、地震計200aからの加速度信号に対して既にS501〜S507の処理が実施され、地震発生フラグがONになった後に地震計200aから受信した加速度信号に対しては、S501〜S505の処理を省略して即座に加速度信号を地震警報生成部104に出力する(S506)。
このようにするのは、既に地震計200aの設置地点で地震が発生していることが判明しており、また、地震計200aが正常に動作していることが判明しているので、S501〜S505の処理に時間を費やすよりも、即座に地震計200aからの加速度信号を地震警報生成部104に出力して、早期に地震警告を生成させることが望ましいからである。
【0040】
一方、地震発生フラグがONでない場合(S502でNO)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致するかを判定する(S503)。
なお、この判定は、1回の受信で取得した加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致するかを判定してもよいし、2回以上の受信で取得した加速度信号を連結させて平常時加速度信号パターンに合致するかを判定してもよい。
つまり、例えば、1秒に1回の割合で加速度信号を受信する場合は、1秒分の加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致するかを判定してもよいし、2秒分以上の加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致するかを判定してもよい。
なお、S502の判定は、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のすべてについて行い、1つでも平常時加速度信号パターンに合致していないとS503で「NO」の判定となる。
【0041】
入力した三方向すべての加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致する場合(S503でYES)は、地震が発生していない状況で地震計200aが正常に動作していると推定できるので、加速度信号判定部102は既定の通常処理を行う(S504)。
通常処理は、例えば、入力した加速度信号をログファイルに残す等の処理である。
また、一方向以上において加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致しない場合(S503でNO)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致するかを判定する(S505)。
なお、S505の判定は、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のすべてについて行い、1つでも地震時加速度信号パターンに合致していないとS505で「NO」の判定となる。
【0042】
入力した三方向すべての加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致する場合(S505でYES)は、地震計200aが正常に動作しており、また、地震計200aの設置地点で地震が発生していると推定できるので、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号を地震警報生成部104に出力する(S506)。
また、地震が発生していると考えられるので、加速度信号判定部102は、地震計200aについての地震発生フラグがOFFであれば、地震発生フラグをONにする(S507)。
【0043】
一方向以上において加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致しない場合(S505でNO)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号は正常でないと判定し、地震警報生成部104の地震警報の生成に当該加速度信号を反映させないために、加速度信号判定部102は当該加速度信号を地震警報生成部104に出力しない(S508)。
加速度信号判定部102は、当該加速度信号を破棄してもよいし、後の解析のためにログファイルに含ませるようにしてもよい。
更に、加速度信号判定部102が、信号処理装置100のオペレータに対する通知メッセージを生成し、表示部106が、通知メッセージを表示画面に表示する(S509)。
地震計200aからの加速度信号が正常でなく、地震計200aが正常に動作していない可能性があるため、通知メッセージでは、地震計200aの識別情報と、地震計200aが正常に動作していない可能性をオペレータに通知する。
当該通知メッセージを見たオペレータは、例えば、地震計200aや地震計200aとの伝送路についての解析を行うことができ、また、地震計200aに作業員を派遣することができる。
また、加速度信号判定部102は、通知メッセージの表示の代わりに、または通知メッセージの表示とともに、地震計200aの保守を担当する作業員の端末装置に通知メッセージを例えば電子メールの形式にて送信してもよい。
更に、加速度信号判定部102は、加速度信号受信部101に対して、S508で正常でないと判断した加速度信号の送信元である地震計200aを破棄対象の地震計200として通知する(S510)。
そして、加速度信号受信部101において、破棄対象と通知された地震計200aからの加速度信号は、図4のS404において破棄される。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、加速度信号判定部102は、地震計200からの加速度信号が平常時加速度信号パターン及び地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、地震計200からの加速度信号が正常でないと判定する。
このため、地震計200に備わっている機能にかかわらず、正常でない加速度信号、すなわち不正確な加速度信号を検出することができる。
そして、加速度信号判定部102は、正常でない加速度信号を地震警報生成部104に出力しないので、地震警報生成部104による地震判定及び地震警報の生成に当該加速度信号を反映させないようにすることができる。
この結果、警告を発すべき状況でないにもかかわらず不正確な震度警報に基づいて外部装置に警報が発せられる、警告を発すべき状況にもかかわらず警告が発せられない、又は警告を発すべき状況に警告が発せられたが警告の内容が不正確であるという事態を回避することができる。
【0045】
なお、図5のフローでは、S502における判定において地震発生フラグがONの場合は、S506において即座に地震警報生成部104に加速度信号を出力する例を示しているが、これに代えて、S501で入力した加速度信号のすべてをS503以降の処理の対象としてもよい。
S501で入力した加速度信号のすべてをS503以降の処理の対象とする場合は、例えば、正常な加速度信号を送信した地震計がその後、変調をきたし、正常でない加速度信号を送信し出した場合に、正常でない加速度信号を検出することができる。
また、例えば、正常な加速度信号を送信した地震計からの後続の加速度信号が伝送中でノイズの影響を受けて正常でない加速度信号となった場合に、この正常でない加速度信号を検出することができる。
このため、図5の処理例よりも、地震判定の信頼性を上げることができる。
【0046】
また、図4のフローでは、S402において破棄対象の地震計200からの加速度信号であるか否かを判定し、破棄対象の地震計200からの加速度信号であれば、破棄し、加速度信号判定部102に出力しないようにしているが、これに代えて、S401で受信した加速度信号のすべてを加速度信号判定部102に出力するようにしてもよい。
S401で受信した加速度信号のすべてを加速度信号判定部102に出力する場合は、例えば、正常に動作していなかった地震計がその後、正常な状態に復帰し、正常な加速度信号を送信し出した場合に、これら正常な加速度信号を地震判定に反映させることができる。
また、例えば、正常な地震計から送信された加速度信号がノイズの影響を受けて正常でない加速度信号と判定された後に、ノイズの発生原因が除去されて、正常な加速度信号が受信された出した場合に、これら正常な加速度信号を地震判定に反映させることができる。
このため、図4の処理例よりも、地震判定の信頼性を上げることができる。
【0047】
実施の形態2.
本実施の形態では、信号処理装置100において、複数の地震計200からの加速度信号を照合して、加速度信号が正常であるかを判断する例を説明する。
なお、本実施の形態では、信号処理装置100は3台以上の地震計200と接続され、3台以上の地震計200からの3つ以上の加速度信号を照合する。
【0048】
本実施の形態に係る信号処理装置100の内部構成例は、図1に示した通りであるが、加速度信号判定部102の動作が、実施の形態1と異なる。
【0049】
本実施の形態では、加速度信号判定部102は、正常であると判定された加速度信号が平常時パターン及び地震時パターンのいずれに合致しているのかを、地震計ごとにレジスタ等に記憶させる機能を有する。
例えば、地震計200aと地震計200bと地震計200cとが近隣に配置されている場合に、地震計200bと地震計200cについて加速度信号を検査した結果、これらの地震計の加速度信号は平常時パターンに合致して正常であった場合には、加速度信号判定部102は、地震計200bと地震計200cの加速度信号は平常時パターンに合致するとレジスタ等に記憶させる。
一方、地震計200bと地震計200cの加速度信号が地震時パターンに合致して正常であった場合には、加速度信号判定部102は、地震計200bと地震計200cの加速度信号は地震時パターンに合致するとレジスタ等に記憶させる。
そして、地震計200bと地震計200cの近隣に配置されている地震計200aの加速度信号が正常かどうかを判定する際に、地震計200aからの加速度信号が平常時パターンに合致するか、地震時パターンに合致するかを判定するとともに、地震計200bと地震計200cの加速度信号のパターンとも整合するかを判定する。
例えば、地震計200aからの加速度信号が平常時パターンに合致する場合に、レジスタ等に記憶させている地震計200bと地震計200cの加速度信号のパターンが平常時パターンであれば、地震計200aからの加速度信号は正常であると判定する。
一方、地震計200bと地震計200cの加速度信号のパターンが地震時パターンであれば、地震計200aからの加速度信号は平常時パターンに合致するものの、正常であると判定する。
なお、加速度信号判定部102は、予め、近隣に配置されている3つ以上の地震計200をグルーピングしておき、同じグループに属する地震計200の間で加速度信号の照合を行う。
【0050】
以下では、本実施の形態に係る加速度信号判定部102の加速度信号判定処理を図6を参照して説明する。
なお、本実施の形態でも、地震計200aからの加速度信号を加速度信号受信部101から入力した場合を例にとりながら説明する。
また、加速度信号受信部101の加速度信号受信処理は、図4に示した通りである。
【0051】
図6において、図5と同じ符号が付されている処理は、原則として図5に示したものと同じである。
すなわち、加速度信号判定部102は、加速度信号受信部101から地震計200aからの加速度信号を入力する(S501)。
次に、加速度信号判定部102は、地震計200aについての地震発生フラグがONであるか否かを判断する(S502)。
【0052】
地震フラグがONの場合(S502でYES)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号を地震警報生成部104に出力する(S506)。
地震発生フラグがONでない場合(S502でNO)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致するかを判定する(S503)。
【0053】
地震計200aからの加速度信号が三方向すべてで平常時加速度信号パターンに合致する場合(S503でYES)は、加速度信号判定部102は、更に、入力した加速度信号が、同じグループ内の他の地震計200(地震計200b、地震計200c等)からの加速度信号と整合するかを判断する(S601)。
【0054】
地震計200aからの加速度信号が、他の地震計200からの加速度信号と整合する場合(S601でYES)、つまり、他の地震計200からの加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致している場合は、地震が発生していない状況で、地震計200aが正常に動作していると推定できるので、加速度信号判定部102は既定の通常処理を行う(S504)。
なお、本実施の形態では、S504において、地震計200aが平常時加速度信号パターンに合致している旨をレジスタ等に記録する。
これにより、地震計200aの近隣に配置されている同じグループ内の別の地震計200(例えば、地震計200d(図1には不図示))についてS601又はS602の判定を行う際に、地震計200aからの加速度信号についての判定結果を反映させることができる。
【0055】
一方、地震計200aからの加速度信号が、他の地震計200からの加速度信号と整合しない場合(S601でYES)、つまり、他の地震計200からの加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致している場合は、入力した加速度信号は正常でないと判定し、地震警報生成部104の地震警報の生成に当該加速度信号を反映させないために、加速度信号判定部102は当該加速度信号を地震警報生成部104に出力しない(S508)。
【0056】
地震計200aからの加速度信号が一方向以上において平常時加速度信号パターンに合致しない場合(S503でNO)は、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致するかを判定する(S505)。
【0057】
地震計200aからの加速度信号が一方向以上において地震時加速度信号パターンに合致しない場合(S505でNO)は、入力した加速度信号は正常でないと判定し、地震警報生成部104の地震警報の生成に当該加速度信号を反映させないために、加速度信号判定部102は当該加速度信号を地震警報生成部104に出力しない(S508)。
【0058】
地震計200aからの加速度信号が三方向すべてで地震時加速度信号パターンに合致する場合(S505でYES)は、加速度信号判定部102は、更に、入力した加速度信号が、他の地震計200からの加速度信号と整合するかを判断する(S602)。
【0059】
入力した加速度信号が、他の地震計200からの加速度信号と整合する場合(S602でYES)、つまり、他の地震計200からの加速度信号が地震時加速度信号パターンに合致している場合は、地震計200aが正常に動作しており、また、地震計200aの設置地点及び近隣にて地震が発生していると推定できるので、加速度信号判定部102は、入力した加速度信号を地震警報生成部104に出力する(S506)。
また、地震が発生していると考えられるので、加速度信号判定部102は、地震計200aについての地震発生フラグがOFFであれば、地震発生フラグをONにする(S507)。
なお、本実施の形態では、S506又はS507において、地震計200aが地震時加速度信号パターンに合致している旨をレジスタやワークメモリに記録する。
これにより、地震計200aの近隣に配置されている同じグループ内の別の地震計200(例えば、地震計200d(図1には不図示))についてS601又はS602の判定を行う際に、地震計200aからの加速度信号についての判定結果を反映させることができる。
【0060】
一方、入力した加速度信号が、他の地震計200からの加速度信号と整合しない場合(S602でNO)、つまり、他の地震計200からの加速度信号が平常時加速度信号パターンに合致している場合は、入力した加速度信号は正常でないと判定し、地震警報生成部104の地震警報の生成に当該加速度信号を反映させないために、加速度信号判定部102は当該加速度信号を地震警報生成部104に出力しない(S508)。
【0061】
以降は、実施の形態1と同様に、加速度信号判定部102が通知メッセージを生成し、表示部106が通知メッセージを表示画面に表示する(S509)。
更に、加速度信号判定部102は、加速度信号受信部101に対して、S508で正常でないと判断した加速度信号の送信元の地震計200を破棄対象の地震計200として通知する(S510)。
【0062】
例えば、地震計200aが正常に動作していないものの、何らかの理由により、地震計200aからの加速度信号が平常時加速度信号パターン又は地震時加速度信号パターンに一致している場合は、実施の形態1では、地震計200aからの加速度信号を排除できない。
この点、本実施の形態では、地震計200aからの加速度信号が、平常時加速度信号パターン又は地震時加速度信号パターンに合致するものの、近隣の2つ以上の地震計200からの加速度信号と整合していない場合に、近隣の2つ以上の地震計200からの加速度信号と整合していない地震計200aからの加速度信号を正常でないと判定し、地震警報生成部104による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることができる。
【0063】
最後に、実施の形態1及び2に示した信号処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
図7は、実施の形態1及び2に示す信号処理装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
なお、図7の構成は、あくまでも信号処理装置100のハードウェア構成の一例を示すものであり、信号処理装置100のハードウェア構成は図7に記載の構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0064】
図7において、信号処理装置100は、プログラムを実行するCPU911(中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。
CPU911は、バス912を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)913、RAM914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
更に、CPU911は、FDD904(Flexible Disk Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続していてもよい。また、磁気ディスク装置920の代わりに、SSD(Solid State Drive)、光ディスク装置、メモリカード(登録商標)読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
実施の形態1及び2で説明した「加速度信号パターン記憶部103」は、例えば、磁気ディスク装置920等により実現される。
通信ボード915、キーボード902、マウス903、スキャナ装置907などは、入力装置の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力装置の一例である。
【0065】
通信ボード915は、ネットワークに接続されている。
例えば、通信ボード915は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネット、WAN(ワイドエリアネットワーク)、SAN(ストレージエリアネットワーク)などに接続されている。
【0066】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
プログラム群923のプログラムは、CPU911がオペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922を利用しながら実行する。
【0067】
また、RAM914には、CPU911に実行させるオペレーティングシステム921のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。
また、RAM914には、CPU911による処理に必要な各種データが格納される。
【0068】
また、ROM913には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが格納され、磁気ディスク装置920にはブートプログラムが格納されている。
信号処理装置100の起動時には、ROM913のBIOSプログラム及び磁気ディスク装置920のブートプログラムが実行され、BIOSプログラム及びブートプログラムによりオペレーティングシステム921が起動される。
【0069】
上記プログラム群923には、実施の形態1及び2の説明において「〜部」(「加速度信号パターン記憶部103」以外、以下同様)として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0070】
ファイル群924には、実施の形態1及び2の説明において、「〜の判断」、「〜の判定」、「〜の比較」、「〜の照合」、「〜の設定」、「〜の登録」、「〜の選択」、「〜の入力」、「〜の出力」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。
ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出される。
そして、読み出された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1及び2で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示す。
データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録される。
また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0071】
また、実施の形態1及び2の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。
すなわち、実施の形態1及び2で説明したフローチャートに示すステップ、手順、処理により、本発明に係る「信号処理方法」を実現することができる。
また、「〜部」として説明しているものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。
或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。
プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。
すなわち、プログラムは、実施の形態1及び2の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1及び2の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【符号の説明】
【0072】
100 信号処理装置、101 加速度信号受信部、102 加速度信号判定部、103 加速度信号パターン記憶部、104 地震警報生成部、105 地震警報送信部、106 表示部、200 地震計、300 外部装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして記憶し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして記憶する加速度信号パターン記憶部と、
管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信部と、
前記加速度信号受信部により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン記憶部に記憶されている前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定部とを有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記加速度信号パターン記憶部は、
前記地震時加速度信号パターンとして、地震発生時に地震計から送信される東西方向の加速度信号のパターン、南北方向の加速度信号のパターン及び上下方向の加速度信号のパターンを記憶し、前記平常時加速度信号パターンとして、東西方向、南北方向及び上下方向に共通のパターンを記憶し、
前記加速度信号受信部は、
前記管理対象地震計から、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のうちの少なくとも1つが、前記平常時加速度信号パターンに合致せず、更に、前記地震時加速度信号パターンの該当する方向の加速度信号のパターンに合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記信号処理装置は、更に、
地震計からの加速度信号を前記加速度信号判定部から入力し、入力した加速度信号に基づいて地震警報を生成する地震警報生成部を有し、
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定した場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に前記管理対象地震計からの加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記加速度信号判定部は、
前記管理対象地震計からの加速度信号が前記地震時加速度信号パターンに合致すると判定した後に前記加速度信号受信部により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号に対しては、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンとの比較を行わずに、前記地震警報生成部に出力することを特徴とする請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記加速度信号受信部は、
複数の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較して、各管理対象地震計からの加速度信号が正常であるか否かを判定し、正常でない加速度信号がある場合に、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項3又は4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記加速度信号受信部は、
3つ以上の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信し、
前記加速度信号判定部は、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較した結果、特定の管理対象地震計からの加速度信号が、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれかに合致するものの、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない場合に、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない加速度信号を正常でないと判定し、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成部に出力せず、前記地震警報生成部による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、所定の記憶装置から、地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして読み出し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして読み出す加速度信号パターン読出し処理と、
前記コンピュータが、管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信処理と、
前記コンピュータが、前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン読出し処理により読み出された前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定処理とを有することを特徴とする信号処理方法。
【請求項8】
所定の記憶装置から、地震が発生していない平常時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを平常時加速度信号パターンとして読み出し、地震発生時に地震計から送信される正常な加速度信号のパターンを地震時加速度信号パターンとして読み出す加速度信号パターン読出し処理と、
管理対象である管理対象地震計から、前記管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信する加速度信号受信処理と、
前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号を、前記加速度信号パターン読出し処理により読み出された前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較し、前記管理対象地震計からの加速度信号が前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれにも合致しない場合に、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定する加速度信号判定処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
前記加速度信号パターン読出し処理において、
前記コンピュータに、
前記地震時加速度信号パターンとして、地震発生時に地震計から送信される東西方向の加速度信号のパターン、南北方向の加速度信号のパターン及び上下方向の加速度信号のパターンを読み出させ、前記平常時加速度信号パターンとして、東西方向、南北方向及び上下方向に共通のパターンを読み出させ、
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
前記管理対象地震計から、東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの東西方向の加速度信号、南北方向の加速度信号及び上下方向の加速度信号のうちの少なくとも1つが、前記平常時加速度信号パターンに合致せず、更に、前記地震時加速度信号パターンの該当する方向の加速度信号のパターンに合致しない場合に、前記コンピュータに、前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定させることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記プログラムは、更に、
地震計からの加速度信号に基づいて地震警報を生成する地震警報生成処理を前記コンピュータに実行させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの加速度信号が正常でないと判定された場合に、前記コンピュータに、前記管理対象地震計からの加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に前記管理対象地震計からの加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項8又は9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記加速度信号判定処理において、
前記管理対象地震計からの加速度信号が前記地震時加速度信号パターンに合致すると判定された後に前記加速度信号受信処理により受信された前記管理対象地震計からの加速度信号に対しては、前記コンピュータに、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンとの比較を行わずに、前記地震警報生成処理に出力させることを特徴とする請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
複数の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記コンピュータに、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較して、各管理対象地震計からの加速度信号が正常であるか否かを判定させ、正常でない加速度信号がある場合に、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項10又は11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記加速度信号受信処理において、
前記コンピュータに、
3つ以上の管理対象地震計から、各管理対象地震計で計測された加速度が示される加速度信号を受信させ、
前記加速度信号判定処理において、
前記コンピュータに、
各管理対象地震計からの加速度信号を前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンと比較した結果、特定の管理対象地震計からの加速度信号が、前記平常時加速度信号パターン及び前記地震時加速度信号パターンのいずれかに合致するものの、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない場合に、他の2つ以上の管理対象地震計からの加速度信号と整合していない加速度信号を正常でないと判定させ、当該正常でない加速度信号を前記地震警報生成処理に出力させず、前記地震警報生成処理による地震警報の生成に当該正常でない加速度信号を反映させないようにすることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96774(P2013−96774A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238251(P2011−238251)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)