説明

信号品質に基づく予め設定されたフィルタパラメータの選択

【課題】生理学的パラメータを測定するためのシステムにおけるノイズ効果を軽減するための方法および装置を提供すること。
【解決手段】本発明の方法および装置は、入力信号を受信することと、入力信号の信号品質の査定を取得することと、信号品質の査定を用いて、デジタルフィルタのための係数を選択することと、フィルタの出力信号を入力信号と比較することなく、デジタルフィルタを用いて入力信号をフィルタリングすることとを含む。ある局面において、フィルタ係数は、複数の予め設定された不連続な値から選ばれる。ある実施形態において、不連続かつ予め設定された値は、固定的または変化しない値である。デジタルフィルタは、線形または好ましくは非線形の入出力関係を有する場合がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ノイズ効果を軽減するためにデジタルフィルタを用いて、パルス酸素濃度計などの医療診断装置から取得された信号を処理することに関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
典型的なパルス酸素濃度計は、2つの生理学的パラメータ、すなわち、動脈血ヘモグロビン(SpOまたは飽和度)のパーセント酸素飽和度と、脈拍数とを測定する。酸素飽和度は、様々な手法を用いて推定できる。一般的な一手法では、光検出器によって生成された光電流が調節および処理されて、赤色信号から赤外線信号への変調率の割合(割合率)を決定する。この変調率は、動脈酸素飽和度とよく相関することが観察されている。パルス酸素濃度計およびセンサは、患者、健康なボランティア、または動物の組に対して、生体内で測定された動脈酸素飽和度(SaO)の範囲に渡って変調率を測定することによって、経験的に較正される。観察された相関を逆のやり方で用いて、患者の変調率の測定値に基づいて血液酸素飽和度(SpO)を推定する。酸素飽和度を変調率を用いて推定することは、米国特許第5,853,364号であって、1998年12月29日発行の発明の名称「モデルに基づく適応フィルタリングを用いた生理学的パラメータを推定するための方法および装置」と、米国特許第4,911,167号であって、1990年3月27日発行の発明の名称「光パルスを検出するための方法および装置」とに説明されている。酸素飽和度と変調率との関係は、米国特許第5,645,059号であって、1997年7月8日発行の発明の名称「変調された符号化方式の医療用センサ」にさらに説明されている。パルス酸素濃度計の多くは、最初に決定された飽和度または脈拍数を有するプレスチモグラフィックな信号を抽出し、飽和度および脈拍数の両方は、障害の影響を受けやすい。
【0003】
パルス酸素濃度計における課題の1つは、データを分析する際に、大きな障害源がある状態で生理学的パラメータの信頼性のある測定値を取得することである。この課題に対する様々な解決策には、測定されたパラメータの品質を査定して、信号品質に基づいて信頼できると思われた場合には、測定値の表示を決定する方法が含まれていた。他の取り組みには、発見を基本とした信号抽出技術が含まれる。当該技術において、取得された信号は、割合についての一連の推量に基づいて処理され、未知の割合の推量を開始するにはアルゴリズムを必要とする。信号品質の決定および発見的な信号抽出技術は、両方共、信頼性のない信号から信頼性のある信号を分離する試行であり、一方の方法は現象学的なものであり、他方のものは発見的なものである。
【0004】
パルス酸素濃度計を含む医療診断装置におけるノイズを軽減するための既知の取り組みには、適応デジタルフィルタのような適応フィルタの利用が含まれる。適応フィルタは、実際には、データ処理アルゴリズムであり、最も典型的な応用において、フィルタは、中央プロセッサによって実行されるコンピュータプログラムである。このように、フィルタは、本質的に、継続する時間入力よりはむしろ、不連続な時間の測定サンプルを包含する。パルス酸素濃度計システムにおいて使用されるデジタルフィルタの種類の1つに、カルマンフィルタがある。一般的な従来の適応デジタルフィルタおよび特にカルマンフィルタは、医療診断システムにおいては同化されて、信号内のノイズ効果を軽減するのに役立ってきたが、医療診断装置において存在するノイズ効果のような、信号内のノイズ効果を軽減するために用いられる手法を改良するために、対処される必要のある課題がまだ多くある。カルマンフィルタを使用することの欠点の1つは、カルマンフィルタは、その機能が数学に基づくものであり、かつその目的が、フィルタの出力を所望の出力と比較して、継続的に変化するフィルタの係数の比較によってエラーを軽減することにあるという適応フィルタであるということである。よって、カルマンフィルタは、フィルタ係数を適応的なやり方で生成して、エラーを最小限にする。本方法が多くの人々によって採用されてきたが、本方法は、依然として、信号に関して、信号がフィルタリングされているということにやや無関心な方法である。そのような取り組みは、入力信号が有する可能性があり、かつ生理学的に基づく特有の属性を、考慮していない。カルマンフィルタリングの他の欠点は、カルマンフィルタは、その入出力関係が線形なことである。ある条件においては、フィルタの入出力関係が線形であるという要求は、強制的過ぎると理解される。カルマンフィルタのさらに他の欠点は、フィルタパラメータが継続的に調整されるので、計算的にコスト高となる場合があるということがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来の適応フィルタの上述の制約の影響を受けない、信号におけるノイズ効果の軽減するためのフィルタを開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な概要)
本発明は、生理学的パラメータを測定するためのシステムにおけるノイズ効果を軽減するための方法および装置であって、入力信号を受信することと、入力信号の信号品質の査定を取得することと、信号品質の査定を用いて、デジタルフィルタのための係数を選択することと、フィルタの出力信号を入力信号と比較することなく、デジタルフィルタを用いて入力信号をフィルタリングすることとを含む方法および装置に関する。
【0007】
ある局面において、フィルタ係数は、複数の予め設定された不連続な値から選ばれる。ある実施形態において、不連続かつ予め設定された値は、固定的または変化しない値である。デジタルフィルタは、線形または好ましくは非線形の入出力関係を有する場合がある。
【0008】
パルス酸素測定の応用において、入力信号の品質は、信号の時間微分のスキュー、互いに異なる波長からの信号間の相関、信号振幅の変動などを含む信号パラメータを取得または測定することによって、査定されてもよい。最大値またはスペクトルピーク周波数などの他の査定を用いて、フィルタパラメータを決定してもよい。
【0009】
ある実施形態においては、フィルタパラメータまたは係数の選択は、デジタルフィルタの係数が現在の入力サンプルを用いて決定されつつ、リアルタイムで行われる。他のある実施形態においては、フィルタパラメータの選択は、既に記憶された入力信号サンプルを用いて行われる。
【0010】
パルス酸素測定の応用において、入力信号は、酸素飽和度の関数または脈拍数である場合がある。さらに、これらの信号は、複数の波長からの感知された光エネルギーに一致する。
【0011】
本発明の本質および利点をさらに理解するためには、添付の図面と共に以下の説明を参照されたい。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
生理学的パラメータを測定するためのシステムにおけるノイズ効果を軽減する方法であって、
入力信号を受信することと、
前記入力信号の信号品質の査定を取得することと、
信号品質の前記査定を用いて、デジタルフィルタのための係数を選択することと、
前記デジタルフィルタを用いて、前記フィルタの出力信号を前記入力信号と比較することなく、前記入力信号をフィルタリングすることとを含む、方法。
(項目2)
前記選択は、複数の不連続な予め設定された値から係数を選択することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記選択は、複数の一定の予め設定された値から係数を選択することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記フィルタリングは、線形入出力関係を有するデジタルフィルタを操作することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記フィルタリングは、非線形入出力関係を有するデジタルフィルタを操作することを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記信号品質の査定の前記取得は、入力信号の時間微分のスキューという測定単位を取得することを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記受信は、1つより多くの波長を形成する入力信号を受信することを含み、前記信号品質の査定の前記取得は、互いに異なる波長からの信号間の相関という測定単位を取得することを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記信号品質の査定の前記取得は、入力信号の振幅の変動という測定単位を取得することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記信号品質の査定の前記取得は、入力信号の最大値という測定単位を取得することを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記信号品質の査定の前記取得は、入力信号の単数または複数のスペクトルピーク周波数という測定単位を取得することを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記選択は、前記デジタルフィルタの前記係数が現在の入力サンプルを用いて決定されつつ、リアルタイムで行われる、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記選択は、既に記憶された入力信号サンプルを用いて行われる、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記受信は、酸素濃度計から信号を受信することを含み、前記信号は、酸素飽和度の関数である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記受信は、酸素濃度計から信号を受信することを含み、前記信号は、脈拍数の関数である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記入力信号の前記受信は、複数の波長からの感知された光エネルギーに対応する信号を受信することを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
生理学的パラメータを測定するためのシステムにおけるノイズ効果を軽減するための装置であって、
入力信号を受信するための手段と、
前記入力信号の信号品質の査定を取得するための手段と、
信号品質の前記査定を用いて、デジタルフィルタのための係数を選択するための手段と、
前記デジタルフィルタを用いて、前記フィルタの出力信号を前記入力信号と比較することなく、前記入力信号をフィルタリングするための手段とを備える、装置。
(項目17)
前記選択手段は、複数の不連続な予め設定された値から係数を選択するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目18)
選択のための前記手段は、複数の一定の予め設定された値から係数を選択するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目19)
フィルタリングのための前記手段は、線形入出力関係を有するデジタルフィルタをさらに備える、項目16に記載の装置。
(項目20)
フィルタリングのための前記手段は、非線形入出力関係を有するデジタルフィルタをさらに備える、項目16に記載の装置。
(項目21)
前記信号品質の査定を取得するための前記手段は、前記入力信号の時間微分のスキューという測定単位を取得するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目22)
受信のための前記手段は、1つより多くの波長を形成する入力信号を受信するように構成され、前記信号品質の査定を取得するための前記手段は、互いに異なる波長からの信号間の相関という測定単位を取得することを含む、項目16に記載の装置。
(項目23)
前記信号品質の査定を取得するための前記手段は、前記入力信号の振幅の変動という測定単位を取得するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目24)
前記信号品質の査定を取得するための前記手段は、前記入力信号の最大値という測定単位を取得するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目25)
前記信号品質の査定を取得するための前記手段は、前記入力信号の単数または複数のスペクトルピーク周波数という測定単位を取得するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目26)
選択のための前記手段は、前記デジタルフィルタの前記係数が現在の入力サンプルを用いて決定されつつ、前記係数をリアルタイムで選択するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目27)
選択のための前記手段は、既に記憶された入力信号サンプルを用いて、前記係数を選択するように構成される、項目16に記載の装置。
(項目28)
受信のための前記手段は、酸素濃度計から信号を受信するように構成され、前記信号は、酸素飽和度の関数である、項目16に記載の装置。
(項目29)
受信のための前記手段は、酸素濃度計から信号を受信するように構成され、前記信号は、脈拍数の関数である、項目16に記載の装置。
(項目30)
受信のための前記手段は、複数の波長からの感知された光エネルギーに対応する信号を受信するように構成される、項目16に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、酸素濃度計の一例のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る、信号品質に基づくフィルタ動作の動作を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態に係る方法および装置は、デジタルフィルタのパラメータを選択および調節をフィルタに対する入力信号の品質の査定に基づいて行うことに向けられている。本発明は、パルス酸素濃度計測モニタおよびパルス酸素計測センサにおけるような、動脈血および患者の脈拍数におけるヘモグロビンの酸素飽和度の測定値に特に適用可能であり、当該測定値を参照して説明されることとなる。しかしながら、本発明は、EGG、血圧、体温などの任意の一般的な患者用モニタおよび関連する患者用センサに等しく適用可能であり、酸素測定またはパルス酸素測定と共にのみ使用されるように制限されるものではないことが理解されるべきである。
【0014】
図1は、本発明の実施形態を履行するように構成されうるパルス酸素濃度計の一実施形態のブロック図である。本発明のフィルタ実施形態は、以下に説明する、マイクロプロセッサ122によって実行されるデータ処理アルゴリズムの場合がある。光源110からの光は、患者の組織112を通過して、光検出器114によって散乱および検出される。光源および光検出器を収容するセンサ100は、光源110の波長を示す信号を与えて酸素濃度計が酸素飽和度を計算するための適切な較正係数を選択できるようにするエンコーダ116をも収容してもよい。エンコーダ116は、例えば、抵抗器であってもよい。
【0015】
センサ100は、パルス酸素濃度計120に接続される。酸素濃度計は、内部バス124に接続されたマイクロプロセッサ122を含む。RAMメモリ126およびディスプレイ128も、バスに接続される。時間処理部(TPU)130は、光源110が照光された際に制御を行う光ドライブ回路132に対して、タイミング制御信号を与え、複数の光源が使用される場合には、互いに異なる光源に対して多重化されたタイミングを与える。また、TPU130は、増幅器133および切替回路134を介した光検出器114から信号のゲートインを制御する。これらの信号は、複数の光源が使用される場合には、複数の光源のうちどの光源が照光されるかによって、適時にサンプリングされる。受信された信号は、増幅器136、低域フィルタ138、およびアナログデジタル変換器140を通過する。その後、デジタルデータは、待ち行列シリアルモジュール(QSM)142に記憶され、後に、QSM142が一杯になる際にRAM126へダウンロードされる。一実施形態において、受領された複数の光波長またはスペクトルについて、別個の増幅器フィルタおよびA/D変換器の複数の並行パスがあってもよい。
【0016】
光検出器114によって受信された光に対応して受信された信号の値に基づいて、マイクロプロセッサ122は、様々なアルゴリズムを用いて酸素飽和度を計算することになる。これらのアルゴリズムは、係数を必要とし、係数は、例えば使用される光の波長に対応して経験的に決定されてもよい。これらはROM146に記憶される。2波長システムにおいて、波長スペクトルの任意の対について選ばれた係数の特定の組は、特定のセンサ100内の特定の光源に対応するエンコーダ116によって示された値によって決定される。一実施形態において、複数の抵抗値が、係数の互いに異なる組を選択するために割り当てられてもよい。他の実施形態において、同一の抵抗器を用いて、ほぼ赤色源または赤色には程遠い源と一対となった赤外線源に適切な係数のうちから選択する。ほぼ赤色の組または赤色には程遠い組のいずれを選ぶかの選択は、制御入力154からの制御入力によって選択される場合がある。制御入力154は、例えば、パルス酸素濃度計上のスイッチ、キーボード、または遠隔ホストコンピュータからの命令を与えるポートであってもよい。さらに、任意の数の方法またはアルゴリズムを用いて、患者の脈拍数、酸素飽和度、または任意の他の所望の生理学的パラメータを決定してもよい。
【0017】
上述のパルス酸素濃度計についての簡単な説明は、以下に説明する本発明の実施形態に係る、受信信号におけるノイズ効果を軽減するための方法を説明するための背景構造となる。入力信号の品質の査定を用いて信号内のノイズ効果を軽減するために用いられる本発明の実施形態を、図2のブロック図と共に以下に説明する。
【0018】
信号品質指標は、信号の信頼性および精度を推定することが可能な、測定されたパラメータである。例えば、血液酸素飽和度をパルス酸素濃度計を用いて測定する場合には、信号品質指標は、血液酸素飽和度の値の測定値が正確なものであるかどうかを間接的に査定することができる。精度についてのこの決定は、測定された大量の値および様々な指標を完全かつ詳細に検討することによって可能となり、どの指標が信号品質を示しているか、および、指標と推定値の精度との間の相関があるとするならばどのようなものであるかを決定する。
【0019】
パルス酸素測定において、信号品質指標の例には、信号の時間微分のスキュー、互いに異なる波長からの信号間の相関、信号振幅の変動などが含まれる。また、最大値またはスペクトルピーク周波数などの他の査定を、フィルタパラメータを決定するのに用いてもよい。これらの信号品質指標に加えて、フィルタ係数の選択のために他の信号品質指標も用いてもよい。パルス酸素測定において、これらのさらなる信号品質指標には、赤外線波形および赤色波形の類似度を示す信号測定単位と、低光レベルを示す信号測定単位と、動脈パルス形状を示す信号測定単位と、測定値における高周波信号成分を示す信号測定単位と、パルス形状の一貫性を示す信号測定単位と、動脈波の振幅を示す信号測定単位と、赤色から赤外線への変調の変調率を示す信号測定単位と、動脈波の周期を示す信号測定単位とが含まれる。これらの様々な指標は、パルス酸素測定における既知のエラー源の存在の間接的な査定を規定し、エラー源には、センサと組織位置との間の光障害と、患者の拍動組織層以外による光変調と、患者の物理的な動きと、センサの組織に対する不適切な位置決めとが含まれる。これらのさらなる信号品質指標については、同時係属の米国特許出願であって、代理人事件番号009103−017600USの発明の名称「生理学的モニタのためのデータを限定するための信号品質計量値設計」にさらに詳細に説明されており、その開示内容全体は、あらゆる目的のために、引用により本明細書に引用されたものとする。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る、フィルタパラメータの信号品質を基本とした選択の動作を示すブロック図200である。一実施形態において、デジタルフィルタは、線形フィルタである。線形フィルタが選択される場合、フィルタは、有限または無限のインパルス応答を有しうる。交互に、フィルタは、非線形フィルタであってもよい。入力202が、デジタルフィルタ204と、入力にどの程度ノイズがあるように見えるかを査定する信号品質査定サブシステム206とに与えられる。サブシステム206は、様々な信号品質計量値を計算して、情報を選択サブシステム208に提供し、選択サブシステム208は、信号品質サブシステム206によって計算された基準に従って、フィルタパラメータを選択する。記憶サブシステム210は、サブシステム206および208をインターフェースして、信号品質計量値およびフィルタパラメータを記憶および提供する。一実施形態において、フィルタパラメータの選択は、フィルタパラメータが現在の入力サンプルを用いて決定されつつ、リアルタイムで行われる。
【0021】
代替実施形態において、フィルタパラメータは、現在の入力サンプルのバッファ212を用いて計算される。加えて、信号査定基準およびフィルタパラメータは、記憶装置210に保持されて、新規の値の計算の際に参照または使用されることもできる。
【0022】
上述のように、様々な信号品質指標を用いて、フィルタパラメータを選択してもよい。加えて、フィルタパラメータの選択は、1つより多くの信号品質指標に基づいてもよい。さらに、フィルタパラメータの選択は、いくつかの信号品質指標を組み合わせるアルゴリズムの出力に基づいてもよい。酸素濃度計システムにおける一実施形態において、未処理の飽和度値の変化を用いて、フィルタの平滑係数を決定する。本実施形態において、選択は、未処理の飽和度信号の変化をいくつかの閾値と比較することによって達成され、フィルタの平滑係数は、変化がどの範囲に収まるかによって選択される。
【0023】
平均パルス推定のために用いられる酸素濃度計における代替実施形態において、フィルタパラメータ選択アルゴリズムは、様々な信号品質計量値の組み合わせZを用いて、デジタルフィルタのためのフィルタ係数の値を選択する。ここで、
Z=w*SQ1+w*SQ2+w*SQ3であって、式中、
、wおよびwは、重みづけ係数であり、
SQ1は、未処理の飽和度信号の変動性という測定単位であり、
SQ2は、互いに異なる波長からの信号間の相関という測定単位であり、
SQ3は、微分波形のスキューという測定単位である。
【0024】
また交互に、Zを用いてフィルタ係数を選択する代わりに、Zの非線形関数を用いて、フィルタについての1つまたは複数の係数を選択することもできる。動作時に、選択アルゴリズムは、特定の診断システムにおいて完全に実施される前に調整されてもよい。(複数の)選択アルゴリズムの調整は、発見的な取り組み方で手動で行われてもよい。交互に、選択アルゴリズムは、ニュートラルネットワークを調整するのと同様なやり方で、統計的に調整されてもよい。
【0025】
本発明の実施形態は、従来の適応フィルタよりも有利な点をいくつか提供する。従来の適応フィルタリングは、線形フィルタにおける係数を継続的に調整することによって、いくつかの出力基準を最適化しようすることが知られている。本発明によって具体化されるような取り組み方は、従来の適応フィルタリングよりも、以下の理由で有利である。第1に、本発明の実施形態に係るフィルタパラメータは、継続的に変化または調整されるというよりも、いくつかの予め設定され、または固定された値の中で切り換えることによって選択される。デジタルフィルタのパラメータを固定的な予め設定された値内で切り換えることにより、本発明の実施形態は、計算の節約と、実施の簡素化とを実現する。第2に、デジタルフィルタのパラメータは、フィルタの出力をその入力と比較するというよりも、フィルタによって受信された入力信号の査定に基づいて選択される。これもまた、計算の節約と、実施の簡素化とを実現する。第3に、フィルタは線形フィルタである必要はなく、すなわち、フィルタは、その入出力関係が線形である必要はない。本発明の実施形態に係るフィルタは線形という制約を受けないので、フィルタの設計は、従来の適応フィルタリング手法において求められるような数学的な必要性よりも、生理学的必要性に一層対応することができる。この生理学を基本としたフィルタパラメータ選択を用いて、例えば、閾値を上回るパルス振幅を減衰させるか、または血液酸素飽和度の増加よりも減少に対して一層迅速に応答してもよい。
【0026】
したがって、当業者によって理解されるように、生理学的パラメータを測定するためのシステムにおけるノイズ効果を軽減することに関する本発明は、その本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形式で実施されてもよい。例えば、脈拍数、血圧、体温、または他の生理学的変数のような、酸素飽和度以外の任意の生理学的パラメータを示す信号を、本発明の手法を用いてフィルタリングすることもできる。さらに、入力信号の品質の他の数多くの指標を、フィルタ係数の選択のための基礎として用いることもできる。さらに、本実施形態は、時間領域において説明してきたが、周波数に基づいた方法も、本発明の実施形態に等しく該当する。したがって、前述の開示は、以下の請求項に記載された発明の範囲を例示するものであって、制限するものではないことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227602(P2010−227602A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136550(P2010−136550)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2004−566955(P2004−566955)の分割
【原出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【出願人】(591191572)ネルコー ピューリタン ベネット エルエルシー (22)
【Fターム(参考)】