説明

信号変換器の校正用電流発生装置

【課題】信号変換器の校正を行なう作業者の負担を軽減する。
【解決手段】所定範囲の信号電流値を他の信号値に変換する信号変換器の校正用電流発生装置であって、第1機能操作子と第2機能操作子と第3機能操作子と調整モード移行操作子とを含んだ操作部と、校正対象の信号変換器に伝送する信号電流値を所定範囲内で設定する電流制御部とを備え、電流制御部は、調整モード移行操作子の操作を受け付けると、第1機能操作子および第2機能操作子の操作に基づいて信号電流値を所定幅で増減させるステップモードと、第1機能操作子および第2機能操作子の操作に基づいて信号電流値を所定範囲の上限値と下限値とで切り換えるスパンモードとを、第3機能操作子の操作により切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式伝送器等からの電流信号を変換する信号変換器の校正用電流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等において差圧、温度、流量等の物理量を計測する場合に、2線式伝送器が広く用いられている。図5(a)に示すように、2線式伝送器300は、流量や差圧等の測定値を計装統一信号である4−20mAの電流値に変換し、2線による電源供給元である信号変換器(ディストリビュータ)400に、同じ2線を使用して伝送する。信号変換器400は、2線式伝送器300に24Vの直流電圧を供給するとともに、2線式伝送器300から伝送された4−20mAの電流値を、記録計、調節計、計算機等の後段装置が要求する信号に変換する。
【0003】
信号変換器400は、4−20mAの電流値を、4mAを0%、20mAを100%とした比例関係で正確に変換する必要がある。このための校正装置(キャリブレーター)として校正用電流発生装置200が用いられている。
【0004】
校正用電流発生装置200は、図5(b)に示すように、2線式伝送器300の代わりに信号変換器400に接続される。校正用電流発生装置200は、4−20mAの任意の値の電流を吸い込む(シンク)機能を有しており、校正用電流発生装置200が発生させた電流値と、信号変換器400で変換された信号値とを比較することで、信号変換器400の動作を確認し校正を行なうことができる。なお、校正用電流発生装置200は、単独の装置としてではなく、2線式伝送器の校正装置の1つの機能として構成されることも多い。
【0005】
信号変換器400の校正を行なう際には、4−20mAの任意の電流値で動作を確認するチェックに加え、図6(a)に示すように、4mA(0%)と20mA(100%)とを交互に出力して信号変換器400の動作を確認するスパンチェックと、図6(b)に示すように、出力値を4mAのステップ幅で、4mA→8mA→12mA→16mA→20mAと変更して信号変換器400の動作を確認するステップチェックとが広く行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−110057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7は、従来の校正用電流発生装置200の操作部分と表示部分の簡略図である。本図に示すように、校正用電流発生装置200は、ファンクションキー群211とカーソルキー212とを含む操作部210と、表示部220とを備えている。ただし、操作部210が備えるキーの種類や数、配置等は本図の例に限られない。
【0008】
本図では、ファンクションキー群211は、「F1」「F2」「F3」「F4」の4つのファンクションキーを備えており、カーソルキー212は、上下左右の4つのキーを備えている。また、表示部220は、液晶表示装置等により構成され、各ファンクションキーに割り当てられた機能を示す領域と、設定電流値を表示する領域とが設けられている。本図の例では、「20.000mA」が設定されており、最下位の桁(小数点第3位)にカーソルが位置している。
【0009】
従来の校正用電流発生装置200において、設定電流値の変更は、カーソルキー212の左右キーを操作して、変更する桁にカーソルを移動させ、上下キーでその桁の数値を増減させることで行なう。
【0010】
このため、例えば、信号変換器400に対するスパンチェックを行なうため、設定電流値を4mA(04.000mA)から20mA(20.000mA)に変更する場合には、カーソルキー212の操作により、1の位にカーソルを移動させて数値を4から0に変更し、さらに10の位にカーソルを移動させて数値を0から2に変更する必要があり、カーソルキー212を10数回操作しなければならない。
【0011】
一般に、スパンチェックは4mAと20mAとの切り替えを頻繁に行なうため、カーソルキー212の操作が極めて煩雑となる。ステップチェックも同様に、4mA←→8mA←→12mA←→16mA←→20mAの切り替えを行なうため、カーソルキー212の操作回数が多く、煩雑である。このため、信号変換器の校正を行なう作業者の負担が過大となっていた。
【0012】
そこで、本発明は、信号変換器の校正を行なう作業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、所定範囲の信号電流値を他の信号値に変換する信号変換器の校正用電流発生装置であって、第1機能操作子と第2機能操作子と第3機能操作子と調整モード移行操作子とを含んだ操作部と、校正対象の信号変換器に伝送する信号電流値を前記所定範囲内で設定する電流制御部とを備え、前記電流制御部は、前記調整モード移行操作子の操作を受け付けると、前記第1機能操作子および前記第2機能操作子の操作に基づいて前記信号電流値を所定幅で増減させるステップモードと、前記第1機能操作子および前記第2機能操作子の操作に基づいて前記信号電流値を前記所定範囲の上限値と下限値とで切り換えるスパンモードとを、前記第3機能操作子の操作により切り換える調整モードに移行すること特徴とする。
【0014】
ここで、前記操作部は、第4機能操作子をさらに備え、前記電流制御部は、前記第4機能操作子の操作を受け付けると、前記調整モードを解除することができる。また、前記所定範囲は、4mA〜20mAであり、前記所定幅は4mAとすることができる。
【0015】
また、前記ステップモードにおいて前記第1機能操作子および前記第2機能操作子に対応させて25%増加および25%減少の旨の表示を行ない、前記スパンモードにおいて前記第1機能操作子および前記第2機能操作子に対応させて0%および100%の旨の表示を行なう表示部をさらに備えたことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、信号変換器の校正を行なう担当者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る校正用電流発生装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る校正用電流発生装置の操作部分と表示部分の簡略図である。
【図3】校正用電流発生装置のモードについて説明する図である。
【図4】スパン確認サブモードにおける表示状態を示す図である。
【図5】2線式伝送器と信号変換器との接続および信号変換器と校正用電流発生装置との接続を示す図である。
【図6】スパンチェックとステップチェックとを説明する図である。
【図7】従来の校正用電流発生装置の操作部分と表示部分の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る校正用電流発生装置100の機能構成を示すブロック図である。本図に示すように校正用電流発生装置100は、操作部110、表示部120、電流制御部130、電流発生部140を備えている。
【0019】
操作部110は、複数の操作キーを備えており、ユーザからの操作を受け付ける。操作キーには、ファンクションキー等のように、モードに応じて複数の機能が割り当てられたキーと、カーソルキー等のように単一の機能が割り当てられたキーとが含まれる。また、操作キーの他に、ノブやタッチパネル等を備えるようにしてもよい。
【0020】
表示部120は、液晶表示装置等により構成され、設定値やファンクションキーに割り当てられた機能等を表示する。本実施形態では、操作部110は、校正用に発生させる直流電流値の設定を受け付け、表示部120は、直流電流の設定値および直流電流値の設定のためにファンクションキーに割り当てられた機能を表示する。
【0021】
電流制御部130は、操作部110が受け付けた操作内容に対応した直流電流値を表示部120に表示させるとともに、操作部110が受け付けた設定にしたがって電流発生部140の動作を制御する。
【0022】
電流発生部140は、校正対象の信号変換器と2線によって接続し、信号変換器が供給する24Vの直流電圧を入力し、電流制御部130が指示する値の電流が2線を流れるように信号変換器から電流を吸い込む。ただし、校正対象の信号変換器は4線式、その他の方式であってもよい。
【0023】
なお、校正用電流発生装置100を2線式伝送器の校正装置の一機能として構成する場合には、さらに、2線式伝送器の電流信号を測定する電流測定部、2線式伝送器に電圧を供給する電源部、2線式伝送器の機種に応じた物理量測定部等を備えるようにする。
【0024】
図2は、校正用電流発生装置100の操作部分と表示部分の簡略図である。本図に示すように、校正用電流発生装置100は、ファンクションキー群211とカーソルキー112と電流発生値調整キー113とを含む操作部110と、表示部120とを備えている。
【0025】
ファンクションキー群111は、「F1」「F2」「F3」「F4」の4つのファンクションキーを備えており、カーソルキー112は、上下左右の4つのキーを備えている。「mA ADJ.」と記された電流発生値調整キー113は、後述する電流発生値調整モードに移行するためのキーである。
【0026】
表示部120は、液晶表示装置等により構成され、各ファンクションキーに割り当てられた機能を示す領域と、設定電流値を表示する領域とが設けられている。
【0027】
次に、本実施形態に係る校正用電流発生装置100の動作について説明する。図3(a)は、校正用電流発生装置100のモード遷移について説明する図である。本図に示すように校正用電流発生装置100は、従来設定モードと電流発生調性モードとを有している。電流発生調性モードは、さらに、ステップ確認サブモードとスパン確認サブモードとに分けられる。
【0028】
従来設定モードは、従来と同様の操作により、信号変換器の校正用として発生させる電流値を設定するモードである。すなわち、電流値の設定は、表示部120に表示されている設定電流値に対して、カーソルキー112の左右キーを操作して、変更する桁にカーソルを移動させ、上下キーで値を増減させることで行なう。
【0029】
従来設定モードにおいて、「mA ADJ.」と記された電流発生値調整キー113の操作を受け付けると、電流発生値調整モードに移行する。本例では、電流発生値調整モードのステップ確認サブモードに移行するものとする。ただし、スパン確認サブモードに移行するようにしてもよい。
【0030】
図2に示した簡略図の表示部120は、ステップ確認サブモードにおける表示状態を示している。すなわち、ファンクションキーF1に「+25%」が割り当てられ、ファンクションキーF2に「−25%」が割り当てられ、ファンクションキーF3に「SPAN MODE」が割り当てられ、ファンクションキーF4に「QUIT」が割り当てられている。
【0031】
図3(b)は、ステップ確認サブモードにおける校正用電流発生装置100の動作を説明する図である。本図に示すように、ステップ確認サブモードでは、ファンクションキーF1を押す度に、設定電流値が4mA(25%)増加していく。また、ファンクションキーF2を押す度に、設定電流値が4mA(25%)減少していく。なお、いずれの設定値においても、従来と同様のカーソルキー112の操作により、任意の値に変更することができる。
【0032】
このように、ステップ確認サブモードでは、ファンクションキーF1とファンクションキーF2の操作だけで、4mA→8mA→12mA→16mA→20mA→16mA→12mA→8mA→4mAのように4mAのステップ幅での電流値設定を容易に行なうことができ、ステップチェックにおけるキー操作の煩雑さを解消することができる。
【0033】
ステップ確認サブモードにおいて、「SPAN MODE」が割り当てられたファンクションキーF3の操作を受け付けると、スパン確認サブモードに移行する。
【0034】
図4は、スパン確認サブモードにおける表示状態を示す図である。本図に示すように、ステップ確認サブモードでは、ファンクションキーF1に「0%」が割り当てられ、ファンクションキーF2に「100%」が割り当てられ、ファンクションキーF3に「STEP MODE」が割り当てられ、ファンクションキーF4に「QUIT」が割り当てられている。
【0035】
図3(c)は、スパン確認サブモードにおける校正用電流発生装置100の動作を説明する図である。本図に示すように、スパン確認サブモードでは、ファンクションキーF1を押すと、設定電流値が4mA(0%)になる。また、ファンクションキーF2を押すと、設定電流値が20mA(100%)になる。なお、いずれの設定値においても、従来と同様のカーソルキー112の操作により、任意の値に変更することができる。
【0036】
このように、スパン確認サブモードでは、ファンクションキーF1とファンクションキーF2の操作だけで、4mA→20mA→4mA→20mAのように4mAと20mAとを交互に発生させる設定を容易に行なうことができ、スパンチェックにおけるキー操作の煩雑さを解消することができる。
【0037】
図3(a)に示すように、ステップ確認サブモード、スパン確認サブモードのいずれにおいても、「QUIT」が割り当てられたファンクションキーF4の操作を受け付けると、電流発生値調整モードを抜けて、従来設定モードに遷移する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の校正用電流発生装置100では、「mA ADJ.」と記された電流発生値調整キー113の操作により、電流発生値調整モードに移行する。電流発生値調整モードでは、ファンクションキーF3の操作により、簡易にステップ確認サブモードとスパン確認サブモードとを切り換えることができる。
【0039】
そして、ステップ確認サブモードでは、少ないキー操作回数で4mAのステップ幅での電流値設定を容易に行なうことができ、ステップ確認サブモードでは、少ないキー操作回数で4mAと20mAとの頻繁な切り換えを容易に行なうことができるため、信号変換器の校正を行なう作業者の負担が軽減される。
【符号の説明】
【0040】
100…校正用電流発生装置、110…操作部、111…ファンクションキー群、112…カーソルキー、113…電流発生値調整キー、120…表示部、130…電流制御部、140…電流発生部、200…校正用電流発生装置、210…操作部、211…ファンクションキー群、212…カーソルキー、220…表示部、300…2線式伝送器、400…信号変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の信号電流値を他の信号値に変換する信号変換器の校正用電流発生装置であって、
第1機能操作子と第2機能操作子と第3機能操作子と調整モード移行操作子とを含んだ操作部と、
校正対象の信号変換器に伝送する信号電流値を前記所定範囲内で設定する電流制御部とを備え、
前記電流制御部は、前記調整モード移行操作子の操作を受け付けると、前記第1機能操作子および前記第2機能操作子の操作に基づいて前記信号電流値を所定幅で増減させるステップモードと、前記第1機能操作子および前記第2機能操作子の操作に基づいて前記信号電流値を前記所定範囲の上限値と下限値とで切り換えるスパンモードとを、前記第3機能操作子の操作により切り換える調整モードに移行すること特徴とする信号変換器の校正用電流発生装置。
【請求項2】
前記操作部は、第4機能操作子をさらに備え、
前記電流制御部は、前記第4機能操作子の操作を受け付けると、前記調整モードを解除することを特徴とする請求項1に記載の信号変換器の校正用電流発生装置。
【請求項3】
前記所定範囲は、4mA〜20mAであり、前記所定幅は4mAであることを特徴とする請求項1または2に記載の信号変換器の校正用電流発生装置。
【請求項4】
前記ステップモードにおいて前記第1機能操作子および前記第2機能操作子に対応させて25%増加および25%減少の旨の表示を行ない、前記スパンモードにおいて前記第1機能操作子および前記第2機能操作子に対応させて0%および100%の旨の表示を行なう表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の信号変換器の校正用電流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92971(P2013−92971A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235907(P2011−235907)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【Fターム(参考)】