説明

信号発生装置

【課題】初期スキャン又は再スキャンにおいて、特定の周波数帯域のチャンネルだけを確実にプリセットするために好適な信号発生装置を提供する。
【解決手段】本発明による信号発生装置(2)は、地上デジタル放送の物理チャンネルである13チャンネル〜62チャンネルに対応する周波数帯域の地上デジタル放送信号が入力する信号入力部(10)と、特定の周波数帯域の放送信号の信号品質を選択的に劣化させるスイープ信号を周期的に発生するスイープ信号発生装置(14)と、前記信号入力部に入力した地上デジタル放送信号とスイープ信号発生装置から出力されたスイープ信号とを混合する混合手段(13)とを具える。混合手段(13)は、特定の物理チャンネルの放送信号の信号品質が選択的に劣化されている地上デジタル放送信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送信号をプリセットする際に行われる初期スキャン又は再スキャン操作において用いられる信号発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送はUHF13〜62チャンネルで放送されているが、53チャンネル〜62チャンネルを使用する放送局の無線局免許については、周波数割当計画(平成12年11月30日郵政省告示第746号)により、使用期限が2012年7月24日までと規定されている。そして、該当するチャンネルは2011年7月25日から1年以内に52チャンネル以下のチャンネルに再編される予定である。尚、該当する中継局数及びチャンネル数については、それぞれ73局所で合計167チャンネルである(2008年3間か31日現在の予定)。
【0003】
チャンネル再編の手順として、再編される53〜62チャンネルの旧チャンネルを停波すると同時に再編後の新チャンネル(13チャンネル〜52チャンネル)の放送を開始する切替方式と、一定期間中にわたって新チャンネルと旧チャンネルの両方を同時に並行して放送し、その後旧チャンネルを停波するサイマル方式が想定される。
【0004】
地上デジタル放送を視聴するには、受信機に各放送事業者のチャンネル(周波数)をプリセット(リモコン番号への割り当て)する必要があり、一般的には受信機に実装されている初期スキャン又は再スキャン機能により実行される。この初期スキャン又は再スキャンでは、地上デジタル放送信号の周波数帯域にわたってスキャンを実行し、各地域において受信可能な地上デジタル放送信号を検出し、検出された物理チャンネルとリモコンのキー番号との関連付けが行われる(例えば、特許文献1参照)。従って、チャンネル再編が実施される際、各世帯では地上デジタル放送受信機のプリセットを新チャンネルに変更する必要があり、再度初期スキャン又は再スキャンを実行することになる。
【特許文献1】特開2007−142604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したサイマル方式は、新旧チャンネルが同時に放送されている期間中にプリセット変更作業を行えば、放送を継ぎ目なく視聴できるメリットがある。しかしながら、同時放送中に初期スキャンを実行すると、必ずしも新チャンネルがプリセットされるとは限らず、旧チャンネルがプリセットされる問題が生じてしまう。すなわち、多くのデジタル受信機では、同一の放送事業者のチャンネルが複数存在する場合、新旧チャンネルに関わらず電波品質の良好なチャンネルが優先的にプリセットされるように構成されているため、旧チャンネルがプリセットされる問題が生じてしまう。このような問題が発生すると、新チャンネルの放送番組を視聴できない事態が発生してしまう。この課題を解決する方法として、低域通過フィルタを用いて、デジタル受信機に入力する電波から旧チャンネルに相当する53チャンネル以上をカットする方法が想定される。しかしながら、52チャンネルと53チャンネルとの境目の遮断特性を急峻に製作することは困難なため、52チャンネルが遮断される問題が生じていた。さらに、13チャンネル〜52チャンネルの帯域にわたって平坦な遮断特性を実現することは困難なため、新チャンネルの電波品質が劣化してプリセットを確実にできない問題も生じている。
【0006】
本発明の目的は、デジタル放送受信機において行われる初期スキャン又は再スキャンにおいて、特定の周波数帯域のチャンネルだけを確実にプリセットするために好適な信号発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による信号発生装置は、地上デジタル放送信号を初期スキャン又は再スキャンする際に用いられる信号発生装置であって、
地上デジタル放送の物理チャンネルである13チャンネル〜62チャンネルに対応する周波数帯域の地上デジタル放送信号が入力する信号入力部と、特定の周波数帯域の放送信号の信号品質を選択的に劣化させるスイープ信号を周期的に発生するスイープ信号発生装置と、前記信号入力部に入力した地上デジタル放送信号とスイープ信号発生装置から出力されたスイープ信号とを混合する混合手段とを具え、特定の物理チャンネルの放送信号の信号品質が選択的に劣化されている地上デジタル放送信号を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明では、13チャンネル〜62チャンネルの地上デジタル放送信号に対して、特定の周波数帯域の放送信号の品質を選択的に劣化させるスイープ信号を重畳しているので、初期スキャン又は再スキャンにおいて、選択された特定の周波数帯域の放送信号の信号品質が相当低下し、残りの周波数帯域の放送信号は良好な信号品質に維持された地上デジタル放送信号が出力する。すなわち、放送信号にスイープ信号が重畳されると、スイープ信号が妨害信号として作用するため、スイープ信号の周波数帯域の放送信号についてだけ信号品質が選択的に劣化する。この結果、不要なチャンネルがプリセットされる不具合が解消される。特に、スイープ信号の周波数制御は高精度に行うことができるので、周波数割当計画に基づき再編される予定の旧チャンネルと新チャンネルとの境目の周波数を正確に制御することが可能である。
【0009】
本発明による信号発生装置の好適実施例は、スイープ信号発生装置は、単一周波数信号を発生する信号発生部と、信号発生部から出力される信号の周波数帯域を制御する周波数制御手段とを有し、
前記信号発生部は、特定の周波数帯域にわたって周波数が連続的に変化し又は段階的に変化するスイープ信号を、初期スキャン又は再スキャンの1周期中に複数回周期的に出力することを特徴とする。一例として、53チャンネル〜62チャンネルに相当する710〜770MHzの周波数帯域を50m秒以下の周期でスイープする。スイープ信号発生装置からの信号出力レベルは、一例として100dBμVが目安となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による信号発生装置では、特定の周波数帯域の放送信号だけを選択的に劣化させるので、初期スキャン又は再スキャンにおいて、不要なチャンネルの放送信号の信号品質だけが選択的に劣化し、残りの周波数帯域の放送信号の信号品質は良好なレベルに維持することができる。この結果、初期スキャン又は再スキャンにおいて、再編される予定のチャンネルがプリセットされる不具合が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明による信号発生装置が使用される配置例を示す図である。本例では、前述した周波数割当計画において、チャンネル再編の手順として、サイマル方式が採用された場合のプリセットにおいて本発明の信号発生装置を利用する場合について説明する。サイマル方式の場合、新チャンネルと旧チャンネルとが混在するため、新たに初期スキャンを行い、新チャンネルとリモコンのキー番号とを関連づけるプリセット操作が必要である。プリセットに当たり、アンテナ1とデジタル放送受信機3との間に同軸ケーブルを介して本発明による信号発生装置2を接続する。
【0012】
アンテナ1は、物理チャンネルである13チャンネル〜63チャンネルの地上デジタル放送信号を受信する。受信された地上デジタル放送信号は本発明による信号発生装置2に入力し、特定の物理チャンネルに対応する周波数帯域の放送信号の信号品質が選択的に劣化して出力される。出力される地上デジタル放送信号は、デジタル放送受信機3に供給され、信号発生装置2から出力される地上デジタル放送信号を用いて初期スキャンが実行される。
【0013】
初期スキャンは、デジタル放送受信機3及びリモコンを用いて行われ、13チャンネルから63チャンネルにわたって1チャンネルづつチューナを周波数に合わせて地上デジタル信号を検出し、各チャンネル毎に受信レベルが検出される。そして、受信可能なチャンネルが検出された際、当該物理チャンネルとリモコンのキー番号との対応付けが行われる。この際、デジタル放送受信機3は、各チャンネルの放送信号のうち受信品質の良好なチャンネルをプリセットする。すなわち、現在市販されているデジタル放送受信機においては、同一の放送事業者のチャンネルが複数存在する場合、信号品質の良好なチャンネルをプリセットする特性がある。このため、初期スキャンにおいて、新チャンネルだけがプリセットされるとは限らず、旧チャンネルがプリセットされる事態が生じてしまう。そこで、本発明では、53チャンネル〜62チャンネルの旧チャンネルの放送信号についてだけ選択的に信号品質を劣化させ、旧チャンネルの放送信号がプリセットされないようにする。具体的には、53チャンネル〜62チャンネルに対応する周波数帯域のデジタル放送信号を選択的に劣化させるスイープ信号を発生させ、13チャンネル〜62チャンネルに対応する周波数帯域のデジタル放送信号にスイープ信号を混合し、53チャンネル〜62チャンネルの放送信号を選択的に劣化させる。
【0014】
図2は本発明による信号発生装置の一例を示す図である。13〜62チャンネルの地上デジタル放送信号は信号入力部10に入力する。入力した地上デジタル放送信号は、信号減衰器11に入力し、信号レベルが低下する。この信号減衰器11を設けることにより、放送信号とスイープ信号とのレベル差を大きくすることができる。信号減衰器11を通過した放送信号は、方向性結合器12を介して混合器13に入力する。方向性結合器12を接続することにより、テレビ共同受信設備にスイープ信号が逆流することが防止される。
【0015】
混合器13の他方の入力端子はスイープ信号発生装置14に接続する。スイープ信号発生装置14は、バッテリー15から供給される駆動電力により駆動され、53チャンネル〜62チャンネルに相当する周波数帯域(710〜770MHz)の放送信号を選択的に劣化させるスイープ信号を発生する。図2(B)は、スイープ信号発生装置の一例を示す回路図である。信号発生部20は単一周波数信号を発生する。この信号発生部20は、例えば電圧制御発振器(VCO)で構成することができる。信号発生部20には、電圧制御部21及び周波数制御部22を接続し、信号発生部20から出力されるスイープ信号の周波数帯域及びその周期を制御することができる。本例では、53〜62チャンネルに相当する710〜770MHzの周波数帯域のスイープ信号を50m秒の周期で繰り返し出力する。1回の初期スキャンは数分の時間周期であるから、1回の初期スキャン中に710〜770MHzのスイープ信号が多数回出力されることになる。また、スイープ信号発生装置から出力されるスイープ信号の出力信号レベルは、100dBμVを目安とし、それ以上の出力レベルのスイープ信号を出力する。
【0016】
信号入力部10に入力した13チャンネル〜63チャンネルの地上デジタル放送信号とスイープ信号発生装置14から出力されるスイープ信号とは混合器13において混合され、周波数制御部22により指定された特定の周波数帯域の放送信号、すなわち53チャンネル〜63チャンネルに相当する周波数帯域の放送信号が選択的に劣化した地上デジタル放送信号が信号出力部15に出力され、デジタル放送受信機3に供給される。すなわち、初期スキャン中に、スイープ信号発生装置14から13チャンネル〜52チャンネルに相当する周波数帯域のスイープ信号は出力されないため、当該周波数帯域の放送信号は劣化することなくデジタル受信機3に出力され、これらチャンネルの放送信号が順次検出される。そして、デジタル受信機3側において良好な受信品質が検出され、デジタル受信機にプリセットされる。一方、初期スキャン中にスイープ信号発生装置から53チャンネル〜63チャンネルに相当する周波数帯域のスイープ信号が周期的に出力されるため、当該周波数帯域においては放送信号とスイープ信号とが混合された信号が発生し、デジタル受信機3に供給される。この場合、スイープ信号の繰り返し周期は、1回の初期スキャンの周期よりもはるかに短いため、デジタル受信機3では、当該周波数帯域についてスイープ信号が混合された信号が入力する時間率が高く、結果として信号品質が劣化した信号を検出することになる。この結果、当該周波数帯域について良好な受信品質の放送信号が検出されず、当該周波数帯域には放送信号が存在しないものと判断し、プリセットしないことになる。
【0017】
図3はスイープ信号の周波数変化を示す時間線図である。本例では、53チャンネル〜63チャンネルに相当する710〜770MHzの周波数帯域に割って周波数変化するスイープ信号を示す。図3(A)は、周波数が時間と共に連続的に変化するスイープ信号を示す。図3(B)は、周波数が時間と共に離散的に変化するスイープ信号を示す。例えば、13〜63チャンネルの各帯域のワンセグ帯域のみをスイープすることができる。地上デジタル受信機の初期スキャン時には、ワンセグ帯域のPSI(Program Specific information)を観測しているので、スイープ信号の滞在時間をその帯域に限定することで、プリセットの確実性が高まる利点がある。さらに、図3(C)に示すように、オペレータにより選択された所望の周波数帯域だけをスイープすることも可能である。
【0018】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。上述した実施例では、周波数割当計画に基づくチャンネル再編時におけるプリセット操作を例にして説明したが、本発明による信号発生装置は、チャンネル再編以外の各種初期スキャンや再スキャンを行う場合にも勿論使用することが可能である。例えば、13〜52チャンネルのうち、任意のチャンネルがプリセットされないようにすることも可能である。この場合、スイープ信号を13〜52チャンネルの当該任意のチャンネルに発生させればよい。
【0019】
さらに、上述した実施例では、初期スキャンを例にして説明したが、本発明による信号発生装置は再スキャンする場合にも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による信号発生装置の配置例を示す図である。
【図2】本発明による信号発生装置の一例を示す回路図である。
【図3】スイープ信号発生装置から出力されるスイープ信号を示す時間線図である。
【符号の説明】
【0021】
1 アンテナ
2 信号発生装置
3 デジタル放送受信機
10 信号入力部
11 信号減衰器
12 方向性結合器
13 混合器
14 スイープ信号発生装置
15 バッテリー
16 信号出力部
20 信号発生部
21 電圧制御部
22 周波数制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタル放送信号を初期スキャン又は再スキャンする際に用いられる信号発生装置であって、
地上デジタル放送の物理チャンネルに対応する周波数帯域の地上デジタル放送信号が入力する信号入力部と、特定の周波数帯域の放送信号の信号品質を選択的に劣化させるスイープ信号を周期的に発生するスイープ信号発生装置と、前記信号入力部に入力した地上デジタル放送信号とスイープ信号発生装置から出力されたスイープ信号とを混合する混合手段とを具え、特定の物理チャンネルの放送信号の信号品質が選択的に劣化されている地上デジタル放送信号を出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号発生装置において、前記スイープ信号発生装置は、単一周波数信号を発生する信号発生部と、信号発生部から出力される信号の周波数帯域を制御する周波数制御手段とを有し、
前記信号発生部は、特定の周波数帯域にわたって周波数が連続的に変化し又は離散的に変化するスイープ信号を、初期スキャン又は再スキャンの1周期中に複数回周期的に出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の信号発生装置において、前記スイープ信号発生装置は、周波数割当計画により再編される予定の53チャンネル〜63チャンネルに対応する周波数帯域にわたって順次変化するスイープ信号を周期的に出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の信号発生装置において、前記スイープ信号発生装置は、ワンセグ放送の周波数帯域に対応する周波数帯域のスイープ信号を発生し、又はオペレータにより指定された周波数帯域のスイープ信号を発生することを特徴とする信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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